(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】光走査システムの製造方法、光走査装置の製造方法及びデータ取得方法
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20240501BHJP
H02K 15/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
H02K15/00
G02B26/10 A
(21)【出願番号】P 2019165162
(22)【出願日】2019-09-11
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大幾
(72)【発明者】
【氏名】藁科 禎久
(72)【発明者】
【氏名】北浦 隆介
(72)【発明者】
【氏名】河岡 秀宜
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/138964(WO,A1)
【文献】特開2012-068349(JP,A)
【文献】特開2012-011529(JP,A)
【文献】特開2006-133643(JP,A)
【文献】特開2011-150055(JP,A)
【文献】特開2005-345904(JP,A)
【文献】特開2016-118603(JP,A)
【文献】特開2019-015934(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0131557(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10,26/08
B81B 3/00,7/02
H02K 33/18,15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー及び第1駆動用コイルが設けられた第1可動部、第2駆動用コイルが設けられ、X軸に沿った第1軸を中心軸として前記ミラーが揺動可能となるように前記第1可動部を支持する第2可動部、並びに、前記X軸と交差するY軸に沿った第2軸を中心軸として前記ミラーが揺動可能となるように前記第2可動部を支持する支持部を有するミラーデバイスと、
前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルに作用する磁場を発生させる磁石と、
前記ミラーデバイス及び前記磁石の使用温度を測定する温度センサと、
前記X軸を中心軸として第1目的振れ角及び第1目的周波数で前記ミラーを揺動させるための第1電流信号を前記第1駆動用コイルに入力し、前記Y軸を中心軸として第2目的振れ角及び第2目的周波数で前記ミラーを揺動させるための第2電流信号を前記第2駆動用コイルに入力する演算部と、
データを記憶する記憶部と、を備える光走査システムの製造方法であって、
前記ミラーデバイスと、前記磁石と、をそれぞれが備える複数の装置構造を組み立てる工程と、
前記複数の装置構造のそれぞれについて、前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルのそれぞれに入力される電流信号の周波数の変化に対する前記ミラーの振れ角の変化を補正するための第1データ、並びに、
前記第2駆動用コイルに電流信号を入力せずに前記第1駆動用コイルに電流信号を入力した場合に前記第1軸を中心軸として揺動する前記ミラーの前記Y軸からのずれ及び
前記第1駆動用コイルに電流信号を入力せずに前記第2駆動用コイルに電流信号を入力した場合に前記第2軸を中心軸として揺動する前記ミラーの前記X軸からのずれの少なくとも一方を補正するための第2データを取得する工程と、
前記複数の装置構造のうちの少なくとも1つの装置構造について、前記使用温度の変化に対する前記ミラーの振れ角の変化を補正するための第3データを取得する工程と、
前記複数の装置構造のそれぞれについて取得された前記第1データ及び前記第2データを、前記複数の装置構造のそれぞれと前記第1データ及び前記第2データとの対応関係が保持された状態で、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査システムを構成する前記記憶部に保存し、前記少なくとも1つの装置構造について取得された前記第3データを、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査システムを構成する前記記憶部に保存する工程と、を備える、光走査システムの製造方法。
【請求項2】
前記第3データを取得する前記工程においては、前記複数の装置構造のうちの代表の装置構造について前記第3データを取得し、
前記第1データ、前記第2データ及び前記第3データを保存する前記工程においては、前記複数の装置構造のそれぞれについて取得された前記第1データ及び前記第2データを、前記複数の装置構造のそれぞれと前記第1データ及び前記第2データとの対応関係が保持された状態で、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査システムを構成する前記記憶部に保存し、前記代表の装置構造について取得された前記第3データを、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査システムを構成する前記記憶部に保存する、請求項1に記載の光走査システムの製造方法。
【請求項3】
前記第3データを取得する前記工程においては、前記複数の装置構造のそれぞれについて前記第3データを取得し、
前記第1データ、前記第2データ及び前記第3データを保存する前記工程においては、前記複数の装置構造のそれぞれについて取得された前記第1データ、前記第2データ及び前記第3データを、前記複数の装置構造のそれぞれと前記第1データ、前記第2データ及び前記第3データとの対応関係が保持された状態で、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査システムを構成する前記記憶部に保存する、請求項1に記載の光走査システムの製造方法。
【請求項4】
前記第1目的振れ角及び前記第1目的周波数、前記第2目的振れ角及び前記第2目的周波数、前記使用温度、並びに、前記記憶部によって記憶されている前記第1データ、前記第2データ及び前記第3データに基づいて、前記第1電流信号及び前記第2電流信号を生成するように、前記演算部を構成する工程を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の光走査システムの製造方法。
【請求項5】
ミラー及び第1駆動用コイルが設けられた第1可動部、第2駆動用コイルが設けられ、X軸に沿った第1軸を中心軸として前記ミラーが揺動可能となるように前記第1可動部を支持する第2可動部、並びに、前記X軸と交差するY軸に沿った第2軸を中心軸として前記ミラーが揺動可能となるように前記第2可動部を支持する支持部を有するミラーデバイスと、
前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルに作用する磁場を発生させる磁石と、
前記X軸を中心軸として第1目的振れ角及び第1目的周波数で前記ミラーを揺動させるための第1電流信号を前記第1駆動用コイルに入力し、前記Y軸を中心軸として第2目的振れ角及び第2目的周波数で前記ミラーを揺動させるための第2電流信号を前記第2駆動用コイルに入力する演算装置と、
データを記憶する記憶装置と、を備える光走査装置の製造方法であって、
前記ミラーデバイスと、前記磁石と、をそれぞれが備える複数の装置構造を組み立てる工程と、
前記複数の装置構造のそれぞれについて、
前記第2駆動用コイルに電流信号を入力せずに前記第1駆動用コイルに電流信号を入力した場合に前記第1軸を中心軸として揺動する前記ミラーの前記Y軸からのずれ及び
前記第1駆動用コイルに電流信号を入力せずに前記第2駆動用コイルに電流信号を入力した場合に前記第2軸を中心軸として揺動する前記ミラーの前記X軸からのずれの少なくとも一方を補正するための第2データを取得する工程と、
前記複数の装置構造のうちの少なくとも1つの装置構造について、前記ミラーデバイス及び前記磁石の使用温度の変化に対する前記ミラーの振れ角の変化を補正するための第3データを取得する工程と、
前記複数の装置構造のそれぞれについて取得された前記第2データを、前記複数の装置構造のそれぞれと前記第2データとの対応関係が保持された状態で、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査装置を構成する前記記憶装置に保存し、前記少なくとも1つの装置構造について取得された前記第3データを、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査装置を構成する前記記憶装置に保存する工程と、を備える、光走査装置の製造方法。
【請求項6】
前記第3データを取得する前記工程においては、前記複数の装置構造のうちの代表の装置構造について前記第3データを取得し、
前記第2データ及び前記第3データを保存する前記工程においては、前記複数の装置構造のそれぞれについて取得された前記第2データを、前記複数の装置構造のそれぞれと前記第2データとの対応関係が保持された状態で、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査装置を構成する前記記憶装置に保存し、前記代表の装置構造について取得された前記第3データを、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査装置を構成する前記記憶装置に保存する、請求項5に記載の光走査装置の製造方法。
【請求項7】
前記第3データを取得する前記工程においては、前記複数の装置構造のそれぞれについて前記第3データを取得し、
前記第2データ及び前記第3データを保存する前記工程においては、前記複数の装置構造のそれぞれについて取得された前記第2データ及び前記第3データを、前記複数の装置構造のそれぞれと前記第2データ及び前記第3データとの対応関係が保持された状態で、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査装置を構成する前記記憶装置に保存する、請求項5に記載の光走査装置の製造方法。
【請求項8】
前記複数の装置構造のそれぞれについて、前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルのそれぞれに入力される電流信号の周波数の変化に対する前記ミラーの振れ角の変化を補正するための第1データを取得する工程と、
前記第1目的振れ角及び前記第1目的周波数と、前記第2目的振れ角及び前記第2目的周波数と、前記第1データと、に基づくデータを取得し、取得した前記データ及び前記使用温度、並びに、前記記憶装置によって記憶されている前記第2データ及び前記第3データに基づいて、前記第1電流信号及び前記第2電流信号を生成するように、前記演算装置を構成する工程と、を更に備える、請求項5~7のいずれか一項に記載の光走査装置の製造方法。
【請求項9】
前記光走査装置は、前記使用温度を測定する温度センサを更に備える、請求項5~8のいずれか一項に記載の光走査装置の製造方法。
【請求項10】
ミラー及び第1駆動用コイルが設けられた第1可動部、第2駆動用コイルが設けられ、X軸に沿った第1軸を中心軸として前記ミラーが揺動可能となるように前記第1可動部を支持する第2可動部、並びに、前記X軸と交差するY軸に沿った第2軸を中心軸として前記ミラーが揺動可能となるように前記第2可動部を支持する支持部を有するミラーデバイスと、
前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルに作用する磁場を発生させる磁石と、
前記X軸を中心軸として第1目的振れ角及び第1目的周波数で前記ミラーを揺動させるための第1電流信号を前記第1駆動用コイルに入力し、前記Y軸を中心軸として第2目的振れ角及び第2目的周波数で前記ミラーを揺動させるための第2電流信号を前記第2駆動用コイルに入力する演算部と、を備える光走査システムにおいて、前記演算部が前記第1電流信号及び前記第2電流信号の生成に用いるデータを予め取得するためのデータ取得方法であって、
前記磁石に対する前記ミラーデバイスの位置を固定する工程と、
前記磁石に対する前記ミラーデバイスの位置が固定された状態で、前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルのそれぞれに入力される電流信号の周波数の変化に対する前記ミラーの振れ角の変化を補正するための第1データ、並びに、
前記第2駆動用コイルに電流信号を入力せずに前記第1駆動用コイルに電流信号を入力した場合に前記第1軸を中心軸として揺動する前記ミラーの前記Y軸からのずれ及び
前記第1駆動用コイルに電流信号を入力せずに前記第2駆動用コイルに電流信号を入力した場合に前記第2軸を中心軸として揺動する前記ミラーの前記X軸からのずれの少なくとも一方を補正するための第2データを取得する工程と、を備える、データ取得方法。
【請求項11】
前記磁石に対する前記ミラーデバイスの位置が固定された状態で、前記ミラーデバイス及び前記磁石の使用温度の変化に対する前記ミラーの振れ角の変化を補正するための第3データを取得する工程を更に備える、請求項10に記載のデータ取得方法。
【請求項12】
ミラー及び第1駆動用コイルが設けられた第1可動部、第2駆動用コイルが設けられ、X軸に沿った第1軸を中心軸として前記ミラーが揺動可能となるように前記第1可動部を支持する第2可動部、並びに、前記X軸と交差するY軸に沿った第2軸を中心軸として前記ミラーが揺動可能となるように前記第2可動部を支持する支持部を有するミラーデバイスと、
前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルに作用する磁場を発生させる磁石と、
前記ミラーデバイス及び前記磁石の使用温度を測定する温度センサと、
前記X軸を中心軸として第1目的振れ角及び第1目的周波数で前記ミラーを揺動させるための第1電流信号を前記第1駆動用コイルに入力し、前記Y軸を中心軸として第2目的振れ角及び第2目的周波数で前記ミラーを揺動させるための第2電流信号を前記第2駆動用コイルに入力する演算部と、
データを記憶する記憶部と、を備える光走査システムの製造方法であって、
前記ミラーデバイスと、前記磁石と、をそれぞれが備える複数の装置構造を組み立てる工程と、
前記複数の装置構造のそれぞれについて、前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルのそれぞれに入力される電流信号の周波数の変化に対する前記ミラーの振れ角の変化を補正するための第1データ、並びに、前記第1軸を中心軸として揺動する前記ミラーの前記Y軸からのずれ及び前記第2軸を中心軸として揺動する前記ミラーの前記X軸からのずれの少なくとも一方を補正するための第2データを取得する工程と、
前記複数の装置構造のうちの少なくとも1つの装置構造について、前記使用温度の変化に対する前記ミラーの振れ角の変化を補正するための第3データを取得する工程と、
前記複数の装置構造のそれぞれについて取得された前記第1データ及び前記第2データを、前記複数の装置構造のそれぞれと前記第1データ及び前記第2データとの対応関係が保持された状態で、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査システムを構成する前記記憶部に保存し、前記少なくとも1つの装置構造について取得された前記第3データを、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査システムを構成する前記記憶部に保存する工程と、を備え、
前記第3データを取得する前記工程においては、前記複数の装置構造のうちの代表の装置構造について前記第3データを取得し、
前記第1データ、前記第2データ及び前記第3データを保存する前記工程においては、前記複数の装置構造のそれぞれについて取得された前記第1データ及び前記第2データを、前記複数の装置構造のそれぞれと前記第1データ及び前記第2データとの対応関係が保持された状態で、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査システムを構成する前記記憶部に保存し、前記代表の装置構造について取得された前記第3データを、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査システムを構成する前記記憶部に保存する、光走査システムの製造方法。
【請求項13】
ミラー及び第1駆動用コイルが設けられた第1可動部、第2駆動用コイルが設けられ、X軸に沿った第1軸を中心軸として前記ミラーが揺動可能となるように前記第1可動部を支持する第2可動部、並びに、前記X軸と交差するY軸に沿った第2軸を中心軸として前記ミラーが揺動可能となるように前記第2可動部を支持する支持部を有するミラーデバイスと、
前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルに作用する磁場を発生させる磁石と、
前記X軸を中心軸として第1目的振れ角及び第1目的周波数で前記ミラーを揺動させるための第1電流信号を前記第1駆動用コイルに入力し、前記Y軸を中心軸として第2目的振れ角及び第2目的周波数で前記ミラーを揺動させるための第2電流信号を前記第2駆動用コイルに入力する演算装置と、
データを記憶する記憶装置と、を備える光走査装置の製造方法であって、
前記ミラーデバイスと、前記磁石と、をそれぞれが備える複数の装置構造を組み立てる工程と、
前記複数の装置構造のそれぞれについて、前記第1軸を中心軸として揺動する前記ミラーの前記Y軸からのずれ及び前記第2軸を中心軸として揺動する前記ミラーの前記X軸からのずれの少なくとも一方を補正するための第2データを取得する工程と、
前記複数の装置構造のうちの少なくとも1つの装置構造について、前記ミラーデバイス及び前記磁石の使用温度の変化に対する前記ミラーの振れ角の変化を補正するための第3データを取得する工程と、
前記複数の装置構造のそれぞれについて取得された前記第2データを、前記複数の装置構造のそれぞれと前記第2データとの対応関係が保持された状態で、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査装置を構成する前記記憶装置に保存し、前記少なくとも1つの装置構造について取得された前記第3データを、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査装置を構成する前記記憶装置に保存する工程と、を備え、
前記第3データを取得する前記工程においては、前記複数の装置構造のうちの代表の装置構造について前記第3データを取得し、
前記第2データ及び前記第3データを保存する前記工程においては、前記複数の装置構造のそれぞれについて取得された前記第2データを、前記複数の装置構造のそれぞれと前記第2データとの対応関係が保持された状態で、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査装置を構成する前記記憶装置に保存し、前記代表の装置構造について取得された前記第3データを、前記複数の装置構造のそれぞれと共に前記光走査装置を構成する前記記憶装置に保存する、光走査装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査システムの製造方法、光走査装置の製造方法及びデータ取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミラーが設けられた第1可動部、X軸に沿った第1軸を中心軸としてミラーが揺動可能となるように第1可動部を支持する第2可動部、及びY軸に沿った第2軸を中心軸としてミラーが揺動可能となるように第2可動部を支持する支持部を有するミラーデバイスと、第1可動部に設けられた第1駆動用コイル、及び第2可動部に設けられた第2駆動用コイルに作用する磁場を発生させる磁石と、を備える光走査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような光走査装置では、第1軸及び第2軸のそれぞれを中心軸としてリニアモードでミラーを揺動させる場合がある。なお、第1軸を中心軸として揺動するミラーについて、リニアモードとは、第1駆動用コイルに入力される電流信号の周波数が、第1軸を中心軸として揺動するミラーの共振周波数よりも低く、且つ、第1軸を中心軸として揺動するミラーの振れ角が、当該電流信号の電流値に比例するモードである。また、第2軸を中心軸として揺動するミラーについて、リニアモードとは、第2駆動用コイルに入力される電流信号の周波数が、第2軸を中心軸として揺動するミラーの共振周波数よりも低く、且つ、第2軸を中心軸として揺動するミラーの振れ角が、当該電流信号の電流値に比例するモードである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような光走査装置が、例えば、3Dプリンタ、光干渉断層計、レーザ走査顕微鏡等に用いられる場合には、目的振れ角に対する誤差を例えば±0.1°以下に抑える必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、第1軸及び第2軸のそれぞれを中心軸としてリニアモードでミラーを揺動させる場合に高精度な動作を実現することができる光走査システムの製造方法、光走査装置の製造方法及びデータ取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光走査システムの製造方法は、ミラー及び第1駆動用コイルが設けられた第1可動部、第2駆動用コイルが設けられ、X軸に沿った第1軸を中心軸としてミラーが揺動可能となるように第1可動部を支持する第2可動部、並びに、X軸と交差するY軸に沿った第2軸を中心軸としてミラーが揺動可能となるように第2可動部を支持する支持部を有するミラーデバイスと、第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルに作用する磁場を発生させる磁石と、ミラーデバイス及び磁石の使用温度を測定する温度センサと、X軸を中心軸として第1目的振れ角及び第1目的周波数でミラーを揺動させるための第1電流信号を第1駆動用コイルに入力し、Y軸を中心軸として第2目的振れ角及び第2目的周波数でミラーを揺動させるための第2電流信号を第2駆動用コイルに入力する演算部と、データを記憶する記憶部と、を備える光走査システムの製造方法であって、ミラーデバイスと、磁石と、をそれぞれが備える複数の装置構造を組み立てる工程と、複数の装置構造のそれぞれについて、第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルのそれぞれに入力される電流信号の周波数の変化に対するミラーの振れ角の変化を補正するための第1データ、並びに、第1軸を中心軸として揺動するミラーのY軸からのずれ及び第2軸を中心軸として揺動するミラーのX軸からのずれの少なくとも一方を補正するための第2データを取得する工程と、複数の装置構造のうちの少なくとも1つの装置構造について、使用温度の変化に対するミラーの振れ角の変化を補正するための第3データを取得する工程と、複数の装置構造のそれぞれについて取得された第1データ及び第2データを、複数の装置構造のそれぞれと第1データ及び第2データとの対応関係が保持された状態で、複数の装置構造のそれぞれと共に光走査システムを構成する記憶部に保存し、少なくとも1つの装置構造について取得された第3データを、複数の装置構造のそれぞれと共に光走査システムを構成する記憶部に保存する工程と、を備える。
【0007】
本発明者らは、第1軸及び第2軸のそれぞれを中心軸としてリニアモードでミラーを揺動させる場合、第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルのそれぞれに入力される電流信号の周波数の変化に対するミラーの振れ角の変化が個体ごとに(すなわち、ミラーデバイス及び磁石の組合せごとに)ばらつくこと、第1軸を中心軸として揺動するミラーのY軸からのずれ及び第2軸を中心軸として揺動するミラーのX軸からのずれが個体ごとにばらつくこと、並びに、ミラーデバイス及び磁石の使用温度の変化に対するミラーの振れ角の変化が主に磁石の温度特性に起因して生じることを見出した。そこで、上述したように光走査システムを製造することで、製造された光走査システムにおいて、X軸を中心軸として第1目的振れ角及び第1目的周波数でミラーを揺動させることができ、且つY軸を中心軸として第2目的振れ角及び第2目的周波数でミラーを揺動させることができる。以上により、この光走査システムの製造方法によれば、第1軸及び第2軸のそれぞれを中心軸としてリニアモードでミラーを揺動させる場合に高精度な動作を実現し得る光走査システムを製造することができる。
【0008】
本発明の光走査システムの製造方法では、第3データを取得する工程においては、複数の装置構造のうちの代表の装置構造について第3データを取得し、第1データ、第2データ及び第3データを保存する工程においては、複数の装置構造のそれぞれについて取得された第1データ及び第2データを、複数の装置構造のそれぞれと第1データ及び第2データとの対応関係が保持された状態で、複数の装置構造のそれぞれと共に光走査システムを構成する記憶部に保存し、代表の装置構造について取得された第3データを、複数の装置構造のそれぞれと共に光走査システムを構成する記憶部に保存してもよい。これにより、第1軸及び第2軸のそれぞれを中心軸としてリニアモードでミラーを揺動させる場合に高精度な動作を実現し得る光走査システムを効率良く製造することができる。なお、複数の装置構造のうちの代表の装置構造について、ミラーデバイス及び磁石の使用温度の変化に対するミラーの振れ角の変化を補正するための第3データを取得し、代表の装置構造について取得された第3データを、複数の装置構造のそれぞれと共に光走査システムを構成する記憶部に保存するのは、上述したように、ミラーデバイス及び磁石の使用温度の変化に対するミラーの振れ角の変化が主に磁石の温度特性に起因して生じるからである。
【0009】
本発明の光走査システムの製造方法では、第3データを取得する工程においては、複数の装置構造のそれぞれについて第3データを取得し、第1データ、第2データ及び第3データを保存する工程においては、複数の装置構造のそれぞれについて取得された第1データ、第2データ及び第3データを、複数の装置構造のそれぞれと第1データ、第2データ及び第3データとの対応関係が保持された状態で、複数の装置構造のそれぞれと共に光走査システムを構成する記憶部に保存してもよい。これにより、第1軸及び第2軸のそれぞれを中心軸としてリニアモードでミラーを揺動させる場合に、より高精度な動作を実現し得る光走査システムを製造することができる。
【0010】
本発明の光走査システムの製造方法は、第1目的振れ角及び第1目的周波数、第2目的振れ角及び第2目的周波数、使用温度、並びに、記憶部によって記憶されている第1データ、第2データ及び第3データに基づいて、第1電流信号及び第2電流信号を生成するように、演算部を構成する工程を更に備えてもよい。これにより、製造された光走査システムにおいて、正確な第1電流信号及び第2電流信号を容易に得ることができる。
【0011】
本発明の光走査装置の製造方法は、ミラー及び第1駆動用コイルが設けられた第1可動部、第2駆動用コイルが設けられ、X軸に沿った第1軸を中心軸としてミラーが揺動可能となるように第1可動部を支持する第2可動部、並びに、X軸と交差するY軸に沿った第2軸を中心軸としてミラーが揺動可能となるように第2可動部を支持する支持部を有するミラーデバイスと、第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルに作用する磁場を発生させる磁石と、X軸を中心軸として第1目的振れ角及び第1目的周波数でミラーを揺動させるための第1電流信号を第1駆動用コイルに入力し、Y軸を中心軸として第2目的振れ角及び第2目的周波数でミラーを揺動させるための第2電流信号を第2駆動用コイルに入力する演算装置と、データを記憶する記憶装置と、を備える光走査装置の製造方法であって、ミラーデバイスと、磁石と、をそれぞれが備える複数の装置構造を組み立てる工程と、複数の装置構造のそれぞれについて、第1軸を中心軸として揺動するミラーのY軸からのずれ及び第2軸を中心軸として揺動するミラーのX軸からのずれの少なくとも一方を補正するための第2データを取得する工程と、複数の装置構造のうちの少なくとも1つの装置構造について、ミラーデバイス及び磁石の使用温度の変化に対するミラーの振れ角の変化を補正するための第3データを取得する工程と、複数の装置構造のそれぞれについて取得された第2データを、複数の装置構造のそれぞれと第2データとの対応関係が保持された状態で、複数の装置構造のそれぞれと共に光走査装置を構成する記憶装置に保存し、少なくとも1つの装置構造について取得された第3データを、複数の装置構造のそれぞれと共に光走査装置を構成する記憶装置に保存する工程と、を備える。
【0012】
この光走査装置の製造方法によれば、上述した理由と同様の理由により、第1軸及び第2軸のそれぞれを中心軸としてリニアモードでミラーを揺動させる場合に高精度な動作を実現し得る光走査装置を製造することができる。
【0013】
本発明の光走査装置の製造方法では、第3データを取得する工程においては、複数の装置構造のうちの代表の装置構造について第3データを取得し、第2データ及び第3データを保存する工程においては、複数の装置構造のそれぞれについて取得された第2データを、複数の装置構造のそれぞれと第2データとの対応関係が保持された状態で、複数の装置構造のそれぞれと共に光走査装置を構成する記憶装置に保存し、代表の装置構造について取得された第3データを、複数の装置構造のそれぞれと共に光走査装置を構成する記憶装置に保存してもよい。これにより、第1軸及び第2軸のそれぞれを中心軸としてリニアモードでミラーを揺動させる場合に高精度な動作を実現し得る光走査装置を効率良く製造することができる。
【0014】
本発明の光走査装置の製造方法では、第3データを取得する工程においては、複数の装置構造のそれぞれについて第3データを取得し、第2データ及び第3データを保存する工程においては、複数の装置構造のそれぞれについて取得された第2データ及び第3データを、複数の装置構造のそれぞれと第2データ及び第3データとの対応関係が保持された状態で、複数の装置構造のそれぞれと共に光走査装置を構成する記憶装置に保存してもよい。これにより、第1軸及び第2軸のそれぞれを中心軸としてリニアモードでミラーを揺動させる場合に、より高精度な動作を実現し得る光走査装置を製造することができる。
【0015】
本発明の光走査装置の製造方法は、複数の装置構造のそれぞれについて、第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルのそれぞれに入力される電流信号の周波数の変化に対するミラーの振れ角の変化を補正するための第1データを取得する工程と、第1目的振れ角及び第1目的周波数と、第2目的振れ角及び第2目的周波数と、第1データと、に基づくデータを取得し、取得したデータ及び使用温度、並びに、記憶装置によって記憶されている第2データ及び第3データに基づいて、第1電流信号及び第2電流信号を生成するように、演算装置を構成する工程と、を更に備えてもよい。これにより、製造された光走査装置において、正確な第1電流信号及び第2電流信号を容易に得ることができる。
【0016】
本発明の光走査装置の製造方法では、光走査装置は、使用温度を測定する温度センサを更に備えてもよい。これにより、製造された光走査装置において、適切な使用温度を取得することができる。
【0017】
本発明のデータ取得方法は、ミラー及び第1駆動用コイルが設けられた第1可動部、第2駆動用コイルが設けられ、X軸に沿った第1軸を中心軸としてミラーが揺動可能となるように第1可動部を支持する第2可動部、並びに、X軸と交差するY軸に沿った第2軸を中心軸としてミラーが揺動可能となるように第2可動部を支持する支持部を有するミラーデバイスと、第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルに作用する磁場を発生させる磁石と、X軸を中心軸として第1目的振れ角及び第1目的周波数でミラーを揺動させるための第1電流信号を第1駆動用コイルに入力し、Y軸を中心軸として第2目的振れ角及び第2目的周波数でミラーを揺動させるための第2電流信号を第2駆動用コイルに入力する演算部と、を備える光走査システムにおいて、演算部が第1電流信号及び第2電流信号の生成に用いるデータを予め取得するためのデータ取得方法であって、磁石に対するミラーデバイスの位置を固定する工程と、磁石に対するミラーデバイスの位置が固定された状態で、第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルのそれぞれに入力される電流信号の周波数の変化に対するミラーの振れ角の変化を補正するための第1データ、並びに、第1軸を中心軸として揺動するミラーのY軸からのずれ及び第2軸を中心軸として揺動するミラーのX軸からのずれの少なくとも一方を補正するための第2データを取得する工程と、を備える。
【0018】
このデータ取得方法では、磁石に対するミラーデバイスの位置が固定された状態で、第1データ及び第2データが取得されるため、個体ごとにばらつく第1データ及び第2データを精度良く取得することができる。
【0019】
本発明のデータ取得方法は、磁石に対するミラーデバイスの位置が固定された状態で、ミラーデバイス及び磁石の使用温度の変化に対するミラーの振れ角の変化を補正するための第3データを取得する工程を更に備えてもよい。これにより、第3データを精度良く取得することができる。また、上述したように、ミラーデバイス及び磁石の使用温度の変化に対するミラーの振れ角の変化が主に磁石の温度特性に起因して生じるため、精度良く取得した第3データを、他の光走査装置、他の光走査システム等において利用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1軸及び第2軸のそれぞれを中心軸としてリニアモードでミラーを揺動させる場合に高精度な動作を実現することができる光走査システムの製造方法、光走査装置の製造方法及びデータ取得方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態の光走査システムの構成図である。
【
図2】電流信号の周波数とミラーの振れ角の規格値との関係を示すグラフである。
【
図3】第1軸を中心軸として揺動するミラーのY軸からのずれ及び第2軸を中心軸として揺動するミラーのX軸からのずれを示す図である。
【
図4】使用温度とミラーの振れ角との関係を示すグラフである。
【
図5】
図1に示される光走査システムにおいて実施される第1電流信号及び第2電流信号の生成方法のフローチャートである。
【
図10】
図1に示される光走査システムの製造方法のフローチャートである。
【
図11】
図1に示される光走査装置の一部分の断面図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する部分を省略する。
[光走査システムの構成]
【0023】
図1に示される光走査システム100は、例えば、3Dプリンタ、光干渉断層計、レーザ走査顕微鏡等に適用されるシステムである。
図1に示されるように、光走査システム100は、光走査装置1と、コンピュータ装置10と、光源20と、を備えている。
【0024】
コンピュータ装置10は、例えばPC(Personal Computer)であり、演算装置(演算部)11と、記憶装置(記憶部)12と、入力受付部13と、を有している。演算装置11は、例えばCPU(Central Processing Unit)等によって構成されている。記憶装置12は、例えばHD(Hard Disk)等によって構成されている。入力受付部13は、例えば、キーボード、マウス、GUI(Graphical User Interface)等によって構成されている。光源20は、例えば、LD(Laser Diode)、LED(Light Emission Diode)等によって構成されている。光走査装置1は、コンピュータ装置10と電気的に接続可能である。光走査装置1は、光源20から出射されたレーザ光Lを、X軸に平行な方向及びX軸と交差するY軸に平行な方向のそれぞれの方向に沿って走査可能である。なお、本実施形態では、X軸及びY軸は直交している。
[光走査装置の構成]
【0025】
光走査装置1は、ミラーデバイス2と、磁石3と、温度センサ4と、演算装置(演算部)5と、記憶装置(記憶部)6と、を備えている。
【0026】
ミラーデバイス2は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術によって形成されたデバイスである。ミラーデバイス2は、第1可動部21と、第2可動部22と、支持部23と、を有している。第1可動部21には、ミラー24及び第1駆動用コイル25が設けられている。第2可動部22には、第2駆動用コイル26が設けられている。
【0027】
第2可動部22は、X軸に沿った第1軸A1を中心軸としてミラー24が揺動可能となるように第1可動部21を支持している。本実施形態では、第2可動部22は、第1可動部21を包囲するように枠状に形成されており、第1軸A1上に配置された1対のトーションバー27を介して第1可動部21と連結されている。支持部23は、Y軸に沿った第2軸A2を中心軸としてミラー24が揺動可能となるように第2可動部22を支持している。本実施形態では、支持部23は、第2可動部22を包囲するように枠状に形成されており、第2軸A2上に配置された1対のトーションバー28を介して第2可動部22と連結されている。
【0028】
ミラー24は、光源20から出射されたレーザ光Lを反射する。ミラー24は、例えば、第1可動部21の表面に形成された金属膜である。第1駆動用コイル25は、例えば、第1可動部21に埋設された金属配線であり、第1可動部21の外縁に沿ってスパイラル状に延在している。第2駆動用コイル26は、例えば、第2可動部22に埋設された金属配線であり、第2可動部22の外縁に沿ってスパイラル状に延在している。
【0029】
磁石3は、第1駆動用コイル25及び第2駆動用コイル26に作用する磁場を発生させる。本実施形態では、
図11の(a)及び(b)に示されるように、複数の磁石部材3aがハルバッハ配列で配列されることで、磁石3が構成されており、例えばパッケージ状の保持部材31によって磁石3が保持されることで、磁石ユニット30が構成されている。更に、例えばセラミックからなるベース32を介してミラーデバイス2が磁石ユニット30に固定されることで、装置構造Sが構成されている。具体的には、保持部材31に形成された開口31aを塞ぐように、ベース32が例えば接着等によって保持部材31に固定されており、ミラーデバイス2が例えば接着等によってベース32に固定されている。装置構造Sにおいては、磁石3が発生する磁場Bの方向がX軸及びY軸のそれぞれに対して45°の角度を成している。なお、
図11の(a)及び(b)に示される装置構造Sでは、ミラーデバイス2が磁石3の間接的に(保持部材31及びベース32を介して)固定されていたが、ミラーデバイス2が磁石3の直接的に固定されていてもよい。
【0030】
温度センサ4は、ミラーデバイス2及び磁石3の使用温度(使用温度に対応するデータを含む)を測定する。ミラーデバイス2及び磁石3の使用温度(以下、単に「使用温度」という)とは、光走査装置1においてミラーデバイス2及び磁石3が配置された領域の温度、磁石3が接続された部材の温度、磁石3の温度等であり、光走査装置1が動作している状態でのそれらの温度である。本実施形態では、温度センサ4は、ミラーデバイス2の支持部23に設けられた抵抗体(配線)である。一例として、当該抵抗体は、コイルとして構成されており、支持部23の外縁に沿ってスパイラル状に延在している。当該抵抗体は、温度に応じて抵抗値が変化する材料(例えば、タングステン、アルミニウム、金、銀、銅又はアルミニウム系合金等の金属材料)からなる。光走査装置1では、記憶装置6が、温度センサ4における温度と抵抗値との関係を記憶しており、演算装置5が、当該関係と、温度センサ4の抵抗値と、に基づいて、使用温度を取得する。つまり、この場合には、温度センサ4の抵抗値が、使用温度に対応するデータである。
【0031】
演算装置5は、例えばFPGA(field-programmable gate array)等によって構成されている。演算装置5は、例えば定電流回路(図示省略)を介して、第1電流信号を第1駆動用コイル25に入力する。演算装置5は、例えば定電流回路(図示省略)を介して、第2電流信号を第2駆動用コイル26に入力する。演算装置5は、例えばアンプ(図示省略)を介して、使用温度(使用温度を示す信号)を温度センサ4から取得する。記憶装置6は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性メモリである。記憶装置6は、各種のデータを記憶している。
【0032】
第1駆動用コイル25に入力される第1電流信号は、リニアモードの第1目的振れ角及び第1目的周波数で、X軸を中心軸としてミラー24を揺動させるための電流信号である。第2駆動用コイル26に入力される第2電流信号は、リニアモードの第2目的振れ角及び第2目的周波数で、Y軸を中心軸としてミラー24を揺動させるための電流信号である。本実施形態では、第1目的周波数は、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24の共振周波数よりも低く、第2目的周波数は、第2軸A2を中心軸として揺動するミラー24の共振周波数よりも低い。
【0033】
第1電流信号が第1駆動用コイル25に入力されると、磁石3が発生する磁場との相互作用によって、第1駆動用コイル25にローレンツ力が作用する。当該ローレンツ力と1対のトーションバー27の弾性力とのつり合いを利用することで、X軸を中心軸としてリニアモードでミラー24を揺動させることができる。第2電流信号が第2駆動用コイル26に入力されると、磁石3が発生する磁場との相互作用によって、第2駆動用コイル26にローレンツ力が作用する。当該ローレンツ力と1対のトーションバー28の弾性力とのつり合いを利用することで、Y軸を中心軸としてリニアモードでミラー24を揺動させることができる。
[第1電流信号及び第2電流信号の生成方法]
【0034】
最初に、ミラーデバイス2と、磁石3と、を備える装置構造S(
図1及び
図11参照)の特性について、
図2、
図3及び
図4を参照して説明する。本実施形態では、磁石3を含む磁石ユニット30(
図11参照)にミラーデバイス2が例えば接着等によって固定されることで、装置構造Sが組み立てられている。
【0035】
図2の(a)及び(b)は、電流信号の周波数とミラー24の振れ角の規格値との関係を示すグラフである。
図2の(a)及び(b)において、実線は、第1駆動用コイル25に入力される電流信号の周波数と、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24の振れ角の規格値との関係を示しており、破線は、第2駆動用コイル26に入力される電流信号の周波数と、第2軸A2を中心軸として揺動するミラー24の振れ角の規格値との関係を示している。なお、
図2の(b)には、
図2の(a)において電流信号の周波数が100Hz以下の部分が拡大して示されている。
【0036】
ここでのミラー24の振れ角の規格値とは、電流信号の振幅を一定として電流信号の周波数を変化させた場合に、電流信号の周波数が基準周波数(例えば、0Hz)のときのミラー24の振れ角を1として規格化した値である。第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24の共振周波数は1000Hz程度であり、第2軸A2を中心軸として揺動するミラー24の共振周波数は470Hz程度であるから、電流信号の周波数が100Hz以下のときには、ミラー24はリニアモードで揺動し(すなわち、ミラー24の振れ角が電流信号の振幅に比例し)、理想的には、ミラー24の振れ角の規格値が1になるはずである。しかし、
図2の(b)に示されるように、現実的には、ミラー24の振れ角の規格値が1にならない。例えば、3Dプリンタ、光干渉断層計、レーザ走査顕微鏡等に光走査システム100が適用される場合には、目的振れ角に対する誤差を例えば±0.1°以下に抑える必要があり、その場合には、電流信号の周波数の変化に対するミラー24の振れ角の規格値の変化を補正する必要がある。
【0037】
図3は、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24のY軸からのずれ及び第2軸A2を中心軸として揺動するミラー24のX軸からのずれを示す図である。
図3において、実線は、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24のY軸からのずれを示しており、破線は、第2軸A2を中心軸として揺動するミラー24のX軸からのずれを示している。
【0038】
第2駆動用コイル26に電流信号を入力せずに第1駆動用コイル25に電流信号を入力し、X軸及びY軸に垂直な方向に沿ってミラー24にレーザ光Lを入射させると、ミラー24によって反射されたレーザ光Lの走査方向がY軸からずれる場合がある。この場合におけるレーザ光Lの走査方向のY軸からのずれが、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24のY軸からのずれに相当する。第1駆動用コイル25に電流信号を入力せずに第2駆動用コイル26に電流信号を入力し、X軸及びY軸に垂直な方向に沿ってレーザ光Lをミラー24に入射させると、ミラー24によって反射されたレーザ光Lの走査方向がX軸からずれる場合がある。この場合におけるレーザ光Lの走査方向のX軸からのずれが、第2軸A2を中心軸として揺動するミラー24のX軸からのずれに相当する。なお、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24のY軸からのずれは、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24によって走査されるレーザ光Lの走査方向のY軸からのずれに相当し、第2軸A2を中心軸として揺動するミラー24のX軸からのずれは、第2軸A2を中心軸として揺動するミラー24によって走査されるレーザ光Lの走査方向のX軸からのずれに相当する。
【0039】
装置構造Sにおいては、理想的には、磁石3が発生する磁場の方向がX軸及びY軸のそれぞれに対して45°の角度を成している。そのため、
図3に示されるように、第2軸A2を中心軸として揺動するミラー24のX軸からのずれがなくなるように装置構造Sを配置すると、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24のY軸からのずれθが生じる。このずれθは、磁石3を含む磁石ユニット30にミラーデバイス2が固定される際の位置ずれによってばらつく。例えば、3Dプリンタ、光干渉断層計、レーザ走査顕微鏡等に光走査システム100が適用される場合には、目的振れ角に対する誤差を例えば±0.1°以下に抑える必要があり、その場合には、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24のY軸からのずれθを補正する必要がある。
【0040】
図4は、使用温度と第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24の振れ角との関係を示すグラフである。
図4に示されるように、使用温度が25℃のときにミラー24の振れ角が10°となる電流値を第1駆動用コイル25に入力しても、使用温度が変化すると、ミラー24の振れ角が変化する。つまり、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24の振れ角は、使用温度の変化によって変化する。同様に、第2軸A2を中心軸として揺動するミラー24の振れ角も、使用温度の変化によって変化する。
【0041】
例えば、3Dプリンタ、光干渉断層計、レーザ走査顕微鏡等に光走査システム100が適用される場合には、目的振れ角に対する誤差を例えば±0.1°以下に抑える必要があり、その場合には、使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の変化を補正する必要がある。なお、使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の変化は、主に、磁石3が発生する磁場が使用温度の変化によって変化することに起因している。揺動するミラー24の共振周波数、当該共振周波数のQ値等も、使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の変化に影響を与えているが、それらの影響の度合いは、使用温度の変化に対する磁場の変化の影響の度合いを1とすると、例えば1/100程度である。
【0042】
以上の装置構造Sの特性についての知見から、光走査システム100では、光走査装置1の製造工程において第1データ、第2データ及び第3データが取得され、第1データがコンピュータ装置10の記憶装置12に保存されて、第2データ及び第3データが光走査装置1の記憶装置6に保存される(詳細については後述する)。第1データは、電流信号の周波数の変化に対するミラー24の振れ角の規格値の変化を補正するためのデータである。第2データは、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24のY軸からのずれθを補正するためのデータである。第3データは、使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の変化を補正するためのデータである。なお、第1データは、X軸を中心軸として揺動するミラー24の第1目的振れ角及びY軸を中心軸として揺動するミラー24の第2目的振れ角に含まれる「リンギングを誘起する共振周波数成分」を補正するためのデータともいえる。また、第1データは、第1軸A1及び第2軸A2を中心軸として揺動するミラー24の振れ角と周波数との関係を表す「振れ角-周波数特性」を補正するためのデータともいえる。
【0043】
以下、光走査システム100において実施される第1電流信号及び第2電流信号の生成方法について、
図5を参照して説明する。なお、第1電流信号は、第1駆動用コイル25に入力される電流信号であって、リニアモードの第1目的振れ角及び第1目的周波数で、X軸を中心軸としてミラー24を揺動させるための電流信号である。また、第2電流信号は、第2駆動用コイル26に入力される電流信号であって、リニアモードの第2目的振れ角及び第2目的周波数で、Y軸を中心軸としてミラー24を揺動させるための電流信号である。
【0044】
まず、使用者が、コンピュータ装置10の入力受付部13を用いて、第1目的振れ角及び第1目的周波数、並びに、第2目的振れ角及び第2目的周波数を入力する。すなわち、入力受付部13が、第1目的振れ角及び第1目的周波数、並びに、第2目的振れ角及び第2目的周波数の入力を受け付ける(S01)。
【0045】
続いて、コンピュータ装置10の演算装置11が、第1目的振れ角及び第1目的周波数、第2目的振れ角及び第2目的周波数、並びに、第1データ(電流信号の周波数の変化に対するミラー24の振れ角の規格値の変化を補正するためのデータ)に基づいて、第1トルクの規格値及び第2トルクの規格値(第1目的振れ角及び第1目的周波数と、第2目的振れ角及び第2目的周波数と、第1データと、に基づくデータ)を演算し、第1トルクの規格値及び第2トルクの規格値を生成する(S02)。このとき、演算装置11は、第1目的振れ角及び第1目的周波数、並びに、第2目的振れ角及び第2目的周波数を入力受付部13から取得し、第1データを記憶装置12から取得する。
【0046】
第1トルクの規格値は、第2駆動用コイル26に電流信号を入力せずに第1駆動用コイル25に電流信号を入力した場合に1対のトーションバー27に生じるトルクに相当し、式(1)によって演算される。第2トルクの規格値は、第1駆動用コイル25に電流信号を入力せずに第2駆動用コイル26に電流信号を入力した場合に1対のトーションバー28に生じるトルクに相当し、式(2)によって演算される。
【数1】
【数2】
【0047】
式(1)において、T´1X:第1トルクの規格値、θ1X:第1目的振れ角、である。式(2)において、T´2Y:第2トルクの規格値、θ2Y:第2目的振れ角、である。なお、「(t)」は、時間の関数であることを示し、「(f)」は、周波数の関数であることを示す。また、「F」は、フーリエ変換を施すこと示し、「F-1」は、逆フーリエ変換を施すことを示す。
【0048】
したがって、式(1)において、θ1X(t)は、第1目的振れ角及び第1目的周波数によって決定される信号に相当し、M´1X(f)は、第2駆動用コイル26に電流信号を入力せずに第1駆動用コイル25に電流信号を入力した場合における「第1駆動用コイル25に入力される電流信号の周波数の変化に対するミラー24の振れ角の規格値の変化」(すなわち、第1データ)に相当する。また、式(2)において、θ2Y(t)は、第2目的振れ角及び第2目的周波数によって決定される信号に相当し、M´2Y(f)は、第1駆動用コイル25に電流信号を入力せずに第2駆動用コイル26に電流信号を入力した場合における「第2駆動用コイル26に入力される電流信号の周波数の変化に対するミラー24の振れ角の規格値の変化」(すなわち、第1データ)に相当する。
【0049】
続いて、光走査装置1の演算装置5が、第1トルクの規格値及び第2トルクの規格値、使用温度、並びに、第2データ(第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24のY軸からのずれθを補正するためのデータ)及び第3データ(使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の変化を補正するためのデータ)に基づいて、第1電流信号及び第2電流信号を演算し、第1電流信号及び第2電流信号を生成する(S03)。このとき、演算装置5は、第1トルクの規格値及び第2トルクの規格値をコンピュータ装置10の演算装置11から取得し、使用温度を温度センサ4から取得し、第2データ及び第3データを記憶装置6から取得する。
【0050】
一例として、第1可動部21、第1駆動用コイル25、及び1対のトーションバー27に着目すると、第1駆動用コイル25に入力される電流信号、及び1対のトーションバー27に生じるトルク、第1駆動用コイル25に作用する磁場には、式(3)の関係が成立する。
【数3】
【0051】
式(3)において、I:電流信号、T:トルク、L:Y軸に平行な方向における1対のトーションバー27と第1駆動用コイル25との距離、B:磁場、B´:磁場の規格値、θ:振れ角、である。式(3)において、M(f)は、第1駆動用コイル25に入力される電流信号の周波数の変化に対するミラー24の振れ角の変化に相当し、M´(f)は、第1駆動用コイル25に入力される電流信号の周波数の変化に対するミラー24の振れ角の規格値の変化に相当する。なお、「(θ(t))」は、ミラー24の振れ角の関数であることを示す。
【0052】
第1電流信号は、式(3)の関係を前提として、式(4)によって演算される。第2電流信号は、式(3)の関係を前提として、式(5)によって演算される。
【数4】
【数5】
【0053】
式(4)及び(5)において、I1:第1電流信号、I2:第2電流信号、ΔT:使用温度と基準温度(例えば、25℃)との差(以下、「温度差」という)、である。なお、「(t,ΔT)」は、時間及び温度差の関数であることを示し、「(ΔT)」は、温度差の関数であることを示す。また、「(θ1X(t))」は、第1目的振れ角及び第1目的周波数によって決定される信号の関数であること示し、「(θ2Y(t))」は、第2目的振れ角及び第2目的周波数によって決定される信号の関数であること示す。
【0054】
式(4)及び(5)において、B´
1Y(θ
1X(t))は、第2駆動用コイル26に電流信号を入力せずに第1駆動用コイル25に電流信号を入力した場合における「Y軸に沿って第1駆動用コイル25に作用する磁場の成分の規格値」であり(第2データに相当する)、例えば、式(6)の3次多項式(a
1,a
2,a
3:定数)で示される。式(5)において、B´
2X(θ
2Y(t))は、第1駆動用コイル25に電流信号を入力せずに第2駆動用コイル26に電流信号を入力した場合における「X軸に沿って第2駆動用コイル26に作用する磁場の成分の規格値」であり(第2データに相当する)、例えば、式(7)の3次多項式(b
1,b
2,b
3:定数)で示される。式(5)において、B´
1X(θ
2Y(t))は、第2駆動用コイル26に電流信号を入力せずに第1駆動用コイル25に電流信号を入力した場合における「X軸に沿って第1駆動用コイル25に作用する磁場の成分の規格値」であり(第2データに相当する)、例えば、式(8)の3次多項式(c
1,c
2,c
3:定数)で示される。
【数6】
【数7】
【数8】
【0055】
式(4)及び(5)において、G
1X(ΔT)は、第2駆動用コイル26に電流信号を入力せずに第1駆動用コイル25に電流信号を入力した場合における「X軸を中心軸として揺動するミラー24の振れ角の規格値」の温度特性を補正するための係数であり(第3データに相当する)、例えば式(9)の2次多項式(d
1,d
2:定数)で示される。式(5)において、G
2Y(ΔT)は、第1駆動用コイル25に電流信号を入力せずに第2駆動用コイル26に電流信号を入力した場合における「Y軸を中心軸として揺動するミラー24の振れ角の規格値」の温度特性を補正するための係数であり(第3データに相当する)、例えば式(10)の2次多項式(e
1,e
2:定数)で示される。式(5)において、G
1Y(ΔT)は、第2駆動用コイル26に電流信号を入力せずに第1駆動用コイル25に電流信号を入力した場合における「Y軸を中心軸として揺動するミラー24の振れ角の規格値」の温度特性を補正するための係数であり(第3データに相当する)、例えば式(11)の2次多項式(g
1,g
2:定数)で示される。
【数9】
【数10】
【数11】
[光走査システム及び光走査装置の作用及び効果]
【0056】
本発明者らは、第1軸A1及び第2軸A2のそれぞれを中心軸としてリニアモードでミラー24を揺動させる場合、第1駆動用コイル25及び第2駆動用コイル26のそれぞれに入力される電流信号の周波数の変化に対するミラー24の振れ角の規格値の変化が個体ごとに(すなわち、ミラーデバイス2及び磁石3の組合せごとに)ばらつくこと、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24のY軸からのずれ及び第2軸A2を中心軸として揺動するミラー24のX軸からのずれが個体ごとにばらつくこと、並びに、使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の変化が主に磁石3の温度特性に起因して生じることを見出した。そこで、上述したように光走査システム100を構成し、上述したように第1電流信号及び第2電流信号を生成することで、X軸を中心軸として第1目的振れ角及び第1目的周波数でミラー24を揺動させることができ、且つY軸を中心軸として第2目的振れ角及び第2目的周波数でミラー24を揺動させることができる。よって、光走査システム100によれば、第1軸A1及び第2軸A2のそれぞれを中心軸としてリニアモードでミラー24を揺動させる場合に高精度な動作を実現することができる。
【0057】
また、光走査システム100では、コンピュータ装置10の記憶装置12が第1データを記憶しており、コンピュータ装置10の演算装置11が第1データを記憶装置12から取得する。また、光走査装置1の記憶装置6が第2データ及び第3データを記憶しており、光走査装置1の演算装置5が第2データ及び第3データを記憶装置6から取得する。これらにより、システム構造の簡潔化を図ることができる。
【0058】
また、光走査システム100では、コンピュータ装置10の入力受付部13が、第1目的振れ角及び第1目的周波数、並びに、第2目的振れ角及び第2目的周波数の入力を受け付け、コンピュータ装置10の演算装置11が、第1目的振れ角及び第1目的周波数、並びに、第2目的振れ角及び第2目的周波数を入力受付部13から取得する。これにより、使用者が、第1目的振れ角及び第1目的周波数、並びに、第2目的振れ角及び第2目的周波数を容易に設定することができる。
【0059】
また、光走査システム100では、第2データが、第2軸A2をY軸とみなした場合に、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24のY軸からのずれを補正するためのデータであり、光走査装置1の演算装置5が、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24のY軸からのずれが補正されるように第2電流信号を生成する。これにより、演算装置5が第1電流信号及び第2電流信号を生成する際の処理負荷を軽減することができる。
【0060】
また、光走査装置1によれば、上述した理由と同様の理由により、第1軸A1及び第2軸A2のそれぞれを中心軸としてリニアモードでミラー24を揺動させる場合に高精度な動作を実現することができる。
【0061】
また、光走査装置1では、温度センサ4が使用温度を測定し、演算装置5が使用温度を温度センサ4から取得する。これにより、適切な使用温度を取得することができる。
【0062】
ここで、実施例について、
図6及び
図7を参照して説明する。
図6の(a)には、Y軸を中心軸として揺動するミラー24の目的の動作波形が示されており、
図7の(a)には、X軸を中心軸として揺動するミラー24の目的の動作波形が示されている。いずれの目的の動作波形も、使用者が入力した目的振れ角(±10°)及び目的周波数(40Hz)によって決定されたものである。これらの場合において、式(4)を用いて第1電流信号を生成して当該第1電流信号を第1駆動用コイル25に入力し、式(5)を用いて第2電流信号を生成して当該第2電流信号を第2駆動用コイル26に入力すると、Y軸を中心軸として揺動するミラー24の実際の動作波形は、
図6の(b)に示されるとおりとなり、X軸を中心軸として揺動するミラー24の実際の動作波形は、
図7の(b)に示されるとおりとなった。いずれの実際の動作波形についても、
図6の(c)及び
図7の(c)に示されるように、目的の動作波形に対する誤差(目的振れ角との誤差)は±0.05°以下に抑えられた(それぞれの動作波形における立ち上がり期間(1ms)及び立ち下がり期間(1ms)を除く)。
【0063】
次に、比較例について、
図8及び
図9を参照して説明する。
図8の(a)には、Y軸を中心軸として揺動するミラー24の目的の動作波形が示されており、
図9の(a)には、X軸を中心軸として揺動するミラー24の目的の動作波形が示されている。いずれの目的の動作波形も、使用者が入力した目的振れ角(±10°)及び目的周波数(40Hz)によって決定されたものであり、
図6の(a)及び
図7の(a)のそれぞれに示された目的の動作波形と同一の動作波形である。これらの場合において、第1データ、第2データ及び第3データを用いずに電流信号を生成して当該電流信号を第1駆動用コイル25及び第2駆動用コイル26のそれぞれに入力すると、Y軸を中心軸として揺動するミラー24の実際の動作波形は、
図8の(b)に示されるとおりとなり、X軸を中心軸として揺動するミラー24の実際の動作波形は、
図9の(b)に示されるとおりとなった。いずれの実際の動作波形についても、
図8の(c)及び
図9の(c)に示されるように、目的の動作波形に対する誤差(目的振れ角との誤差)は±0.1°を大きく超えた(それぞれの動作波形における立ち上がり期間(1ms)及び立ち下がり期間(1ms)を除く)。
【0064】
以上の実施例及び比較例により、上述した光走査システム100の有効性が実証された。光走査システム100では、使用者が目的の動作波形に関するデータを入力するだけで、目的の動作波形に対する誤差が±0.1°以下に抑えられた実際の動作波形が得られる。したがって、光走査システム100利便性は、使用者にとって極めて高い。
[光走査システムの製造方法等]
【0065】
光走査システム100の製造方法について、
図10を参照して説明する。まず、ミラーデバイス2と、磁石3と、をそれぞれが備える複数の装置構造Sを組み立てる工程が実施される(S11)。本実施形態では、磁石3を含む磁石ユニット30にミラーデバイス2が例えば接着等によって固定されることで、複数の装置構造Sが組み立てられる。つまり、ここでは、磁石3に対するミラーデバイス2の位置を固定する工程が実施される。本実施形態では、磁石3に対するミラーデバイス2の位置を不可逆的に(すなわち、磁石3を含む磁石ユニット30からミラーデバイス2を取り外したり、磁石3を含む磁石ユニット30に対するミラーデバイス2の取付状態を調整したりすることが不可能となるように)固定する。なお、複数の装置構造Sのぞれぞれは、少なくともミラーデバイス2及び磁石3を備えていれば、温度センサ4、演算装置5及び記憶装置6の少なくとも1つを備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0066】
続いて、複数の装置構造Sのそれぞれについて、第1データ(電流信号の周波数の変化に対するミラー24の振れ角の規格値の変化を補正するためのデータ)及び第2データ(第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24のY軸からのずれθを補正するためのデータ)を取得する工程が実施される(S12)。つまり、ここでは、磁石3に対するミラーデバイス2の位置が固定された状態で、第1データ及び第2データを取得する工程が実施される。第1データ及び第2データは、複数の装置構造Sのそれぞれにおいて、磁石3に対するミラーデバイス2の位置が固定された状態で、実際にミラーデバイス2を動作させることで、取得される。
【0067】
続いて、複数の装置構造Sのうちの代表の装置構造Sについて、第3データ(使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の変化を補正するためのデータ)を取得する工程が実施される(S13)。つまり、ここでは、磁石3に対するミラーデバイス2の位置が固定された状態で、第3データを取得する工程が実施される。第3データは、代表の装置構造Sにおいて、磁石3に対するミラーデバイス2の位置が固定された状態で、実際にミラーデバイス2を動作させることで、取得される。なお、S12の工程及びS13の工程は、いずれの工程が先に実施されてもよいし、同時進行で実施されてもよい。
【0068】
続いて、第1データ、第2データ及び第3データを保存する工程が実施される(S14)。具体的には、複数の装置構造Sのそれぞれについて取得された第1データは、複数の装置構造Sのそれぞれと第1データとの対応関係が保持された状態で、複数の装置構造Sのそれぞれと共に光走査システム100を構成するコンピュータ装置10の記憶装置12に保存される。複数の装置構造Sのそれぞれについて取得された第2データは、複数の装置構造Sのそれぞれと第2データとの対応関係が保持された状態で、複数の装置構造Sのそれぞれと共に光走査システム100を構成する光走査装置1の記憶装置6に保存される。代表の装置構造Sについて取得された第3データは、複数の装置構造Sのそれぞれと共に光走査システム100を構成する光走査装置1の記憶装置6に保存される。
【0069】
続いて、コンピュータ装置10の演算装置11及び光走査装置1の演算装置5を構成する工程が実施される(S15)。具体的には、コンピュータ装置10の演算装置11は、第1目的振れ角及び第1目的周波数、第2目的振れ角及び第2目的周波数、並びに、第1データに基づいて、第1トルクの規格値及び第2トルクの規格値を生成するように、構成される。光走査装置1の演算装置5は、第1トルクの規格値及び第2トルクの規格値を取得するように、且つ、第1トルクの規格値及び第2トルクの規格値、使用温度、並びに、第2データ及び第3データに基づいて、第1電流信号及び第2電流信号を生成するように、構成される。なお、S15の工程は、プログラミングの工程であるから、いずれのタイミングで実施されてもよく、コンピュータ装置10の演算装置11の構成と光走査装置1の演算装置5の構成とが別々のタイミングで実施されてもよい。
【0070】
以上により、複数の光走査システム100が製造される。なお、以上の光走査システム100の製造方法は、光走査装置1の製造方法と、第1データ、第2データ及び第3データを予め取得するためのデータ取得方法と、を含んでいる。
【0071】
本実施形態では、光走査装置1の製造方法は、複数の装置構造Sを組み立てる工程と、複数の装置構造Sのそれぞれについて、第1データ及び第2データを取得する工程と、複数の装置構造Sのうちの代表の装置構造Sについて、第3データを取得する工程と、複数の装置構造Sのそれぞれについて取得された第2データを、複数の装置構造Sのそれぞれと第2データとの対応関係が保持された状態で、複数の装置構造Sのそれぞれと共に光走査装置1を構成する記憶装置6に保存し、代表の装置構造Sについて取得された第3データを、複数の装置構造Sのそれぞれと共に光走査装置1を構成する記憶装置6に保存する工程と、第1トルクの規格値及び第2トルクの規格値を取得し、第1トルクの規格値及び第2トルクの規格値、使用温度、並びに、第2データ及び第3データに基づいて、第1電流信号及び第2電流信号を生成するように、演算装置5を構成する工程と、を備える。
【0072】
また、本実施形態では、データ取得方法は、磁石3に対するミラーデバイス2の位置を固定する工程と、磁石3に対するミラーデバイス2の位置が固定された状態で、第1データ及び第2データを取得する工程と、磁石3に対するミラーデバイス2の位置が固定された状態で、第3データを取得する工程を更に備える。
[光走査システムの製造方法等の作用及び効果]
【0073】
本発明者らは、第1軸A1及び第2軸A2のそれぞれを中心軸としてリニアモードでミラー24を揺動させる場合、第1駆動用コイル25及び第2駆動用コイル26のそれぞれに入力される電流信号の周波数の変化に対するミラー24の振れ角の規格値の変化が個体ごとに(すなわち、ミラーデバイス2及び磁石3の組合せごとに)ばらつくこと、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24のY軸からのずれ及び第2軸A2を中心軸として揺動するミラー24のX軸からのずれが個体ごとにばらつくこと、並びに、使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の変化が主に磁石3の温度特性に起因して生じることを見出した。そこで、上述したように光走査システム100を製造することで、製造された光走査システム100において、X軸を中心軸として第1目的振れ角及び第1目的周波数でミラー24を揺動させることができ、且つY軸を中心軸として第2目的振れ角及び第2目的周波数でミラー24を揺動させることができる。なお、複数の装置構造Sのうちの代表の装置構造Sについて、使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の変化を補正するための第3データを取得し、代表の装置構造Sについて取得された第3データを、複数の装置構造Sのそれぞれと共に光走査装置1を構成する記憶装置6に保存するのは、上述したように、使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の変化が主に磁石3の温度特性(磁石3が発生する磁場が使用温度の変化によって変化すること)に起因して生じるからである。以上により、光走査システム100の製造方法によれば、第1軸A1及び第2軸A2のそれぞれを中心軸としてリニアモードでミラー24を揺動させる場合に高精度な動作を実現し得る光走査システム100を製造することができる。
【0074】
また、光走査システム100の製造方法では、コンピュータ装置10の演算装置11が、第1目的振れ角及び第1目的周波数、第2目的振れ角及び第2目的周波数、並びに、第1データに基づいて、第1トルクの規格値及び第2トルクの規格値を生成するように、構成される。また、光走査装置1の演算装置5が、第1トルクの規格値及び第2トルクの規格値を取得するように、且つ、第1トルクの規格値及び第2トルクの規格値、使用温度、並びに、第2データ及び第3データに基づいて、第1電流信号及び第2電流信号を生成するように、構成される。これらにより、製造された光走査システム100において、正確な第1電流信号及び第2電流信号を容易に得ることができる。
【0075】
また、光走査装置1の製造方法によれば、上述した理由と同様の理由により、第1軸A1及び第2軸A2のそれぞれを中心軸としてリニアモードでミラー24を揺動させる場合に高精度な動作を実現し得る光走査装置1を製造することができる。
【0076】
また、データ取得方法では、磁石3に対するミラーデバイス2の位置が固定された状態で、第1データ及び第2データが取得されるため、個体ごとにばらつく第1データ及び第2データを精度良く取得することができる。
【0077】
また、データ取得方法では、磁石3に対するミラーデバイス2の位置が固定された状態で、第3データが取得される。これにより、第3データを精度良く取得することができる。また、上述したように、ミラーデバイス2及び磁石3の使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の変化が主に磁石3の温度特性に起因して生じるため、精度良く取得した第3データを、他の光走査装置1、他の光走査システム100等において利用することができる。
【0078】
特に、磁石3に対するミラーデバイス2の位置が不可逆的に固定された状態で、第1データ、第2データ及び第3データが取得されるので、光走査装置1の出荷後であっても、光走査装置1の特性が変化せず、その結果、光走査装置1において高精度な制御を実施することができる。
[変形例]
【0079】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、第2データが、第2軸A2をY軸とみなした場合に、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24のY軸からのずれを補正するためのデータであり、第2電流信号が、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24のY軸からのずれが補正されるように生成された。しかし、第2データは、例えば、第1軸A1をX軸とみなした場合に、第2軸A2を中心軸として揺動するミラー24のX軸からのずれを補正するためのデータであってもよく、その場合、第2軸A2を中心軸として揺動するミラー24のX軸からのずれが補正されるように第1電流信号が生成されてもよい。このように、第2データは、第1軸A1を中心軸として揺動するミラー24のY軸からのずれ及び第2軸A2を中心軸として揺動するミラー24のX軸からのずれの少なくとも一方を補正するためのデータであればよい。
【0080】
また、上述したように、使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の変化は、主に、磁石3が発生する磁場が使用温度の変化によって変化することに起因している。そこで、使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の変化を補正するための第3データとして、使用温度の変化に対する磁石3の磁場の変化を補正するためのデータが用いられてもよい。また、第3データ(使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の変化を補正するためのデータ)として、使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の規格値の変化に着目してもよい。ここでのミラー24の振れ角の規格値とは、電流値を一定とした場合に、使用温度が基準温度(例えば、25℃)のときのミラー24の振れ角を1として規格化した値である。
【0081】
また、上記実施形態の光走査システム100では、演算装置5及び演算装置11によって演算部が構成されており、記憶装置6及び記憶装置12によって記憶部が構成されていた。しかし、例えば、光走査装置1に演算装置5及び記憶装置6が設けられておらず、コンピュータ装置10の演算装置11のみによって演算部が構成されており、コンピュータ装置10の記憶装置12のみによって記憶部が構成されていてもよい。
【0082】
また、上記実施形態の光走査システム100では、記憶装置6及び記憶装置12によって構成された記憶部に、第1データ、第2データ及び第3データが記憶されていた。しかし、第1データ、第2データ及び第3データの少なくとも1つは、例えば、光走査システム100外に設けられたサーバに記憶されていてもよく、その場合に、演算装置5及び演算装置11によって構成された演算部が、第1データ、第2データ及び第3データの少なくとも1つをサーバから取得してもよい。
【0083】
また、上記実施形態の光走査システム100では、演算装置5及び演算装置11によって構成された演算部が、第1目的振れ角及び第1目的周波数、並びに、第2目的振れ角及び第2目的周波数をコンピュータ装置10の入力受付部13から取得した。しかし、演算装置5及び演算装置11によって構成された演算部は、例えば、光走査システム100外に設けられた他のコンピュータ装置から、第1目的振れ角及び第1目的周波数、並びに、第2目的振れ角及び第2目的周波数を取得してもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、ミラーデバイス2に温度センサ4が設けられていたが、ミラーデバイス2とは別体として温度センサ4が設けられていてもよい。その場合には、例えば、サーミスタ、熱電対等を温度センサ4として用いることができる。また、光走査装置1が温度センサ4を備えず、使用温度を測定する温度センサが光走査装置1外に設けられていてもよい。また、上記実施形態では、光走査システム100が光源20を備えていたが、光源20は、光走査システム100外に設けられていてもよい。また、上記実施形態では、光源20が光走査装置1外に設けられていたが、光走査装置1が光源20を備えていてもよい。
【0085】
また、第1目的振れ角及び第1目的周波数によって決定される目的の駆動波形、並びに、第2目的振れ角及び第2目的周波数によって決定される目的の駆動波形は、矩形波以外の波形を有していてもよい。その場合、第1電流信号及び第2電流信号も、矩形波以外の波形を有していてもよい。
【0086】
また、上記実施形態の光走査システムの製造方法では、第1データ(電流信号の周波数の変化に対するミラー24の振れ角の規格値の変化を補正するためのデータ)が、実際にミラーデバイス2を動作させることで取得されたが、第1データは、ミラー24の共振周波数及びそのQ値に基づいて理論的に(演算によって)取得されてもよい。
【0087】
また、第1データは、電流信号の周波数の変化に対するミラー24の振れ角の変化を補正するためのデータであれば、上記実施形態のように、電流信号の周波数の変化に対する「規格化されたミラー24の振れ角(すなわち、ミラー24の振れ角の規格値)」の変化を補正するためのデータであってもよいし、或いは、電流信号の周波数の変化に対する「規格化されていないミラー24の振れ角」の変化を補正するためのデータであってもよい。ただし、上記実施形態のように、電流信号の周波数の変化に対するミラー24の振れ角の規格値の変化を用いると、演算装置11での演算の容易化を図ることができる。
【0088】
また、第3データは、使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の変化を補正するためのデータであれば、上記実施形態のように、使用温度の変化に対する「規格化されていないミラー24の振れ角」の変化を補正するためのデータであってもよいし、或いは、使用温度の変化に対する「規格化されたミラー24の振れ角(すなわち、ミラー24の振れ角の規格値)」の変化を補正するためのデータであってもよい。ただし、使用温度の変化に対するミラー24の振れ角の規格値の変化を用いると、演算装置5での演算の容易化を図ることができる。
【0089】
また、上記実施形態では、代表の装置構造Sについて第3データを取得したが、複数の装置構造Sのそれぞれについて第3データを取得してもよい。その場合、複数の装置構造Sのそれぞれについて取得された第2データ及び第3データを、複数の装置構造Sのそれぞれと第2データ及び第3データとの対応関係が保持された状態で、複数の装置構造Sのそれぞれと共に光走査装置1を構成する記憶装置6に保存してもよい。上記実施形態のように、代表の装置構造Sについて第3データを取得する場合には、光走査システムの製造方法、光走査装置の製造方法及びデータ取得方法において、第3データを取得する工程の容易化を図ることができ、結果として、高精度な動作を実現し得る光走査システム100及び光走査装置1を効率良く製造することができる。複数の装置構造Sのそれぞれについて第3データを取得する場合には、演算装置5において高精度な演算を実施することができ、結果として、より高精度な動作を実現し得る光走査システム100及び光走査装置1を製造することができる。
【0090】
また、上記実施形態では、第1電流信号が直接的に第1駆動用コイル25に入力され、第2電流信号が直接的に第2駆動用コイル26に入力されたが、第1駆動用コイル25及び第2駆動用コイル26のそれぞれに電圧が印加されることで、第1電流信号が第1駆動用コイル25に入力され、第2電流信号が第2駆動用コイル26に入力されてもよい。
【0091】
また、光走査装置1及び光走査システム100は、レーザ光Lを2次元に走査するものに限定されず、レーザ光Lを1次元に走査するものであってもよい。例えば、X軸に沿った第1軸A1を中心軸として第1可動部21を揺動させることでレーザ光LをY軸に沿って1次元に走査し、Y軸に沿った第2軸A2を中心軸として第2可動部22を揺動させることでY軸に沿った方向からのレーザ光Lのずれを補正するように、光走査装置1及び光走査システム100が構成されていてもよい。このとき、第1駆動用コイル25に入力される第1電流信号は、X軸を中心軸として「0よりも大きい値の第1目的振れ角」及び「0よりも大きい値の第1目的周波数」でミラー24を揺動させるための電流信号であり、第2駆動用コイル26に入力される第2電流信号は、Y軸を中心軸として「0の第2目的振れ角」及び「0の第2目的周波数」でミラー24を揺動させるための(つまり、Y軸を中心軸としてミラー24を揺動させないための)電流信号である。また、Y軸に沿った第2軸A2を中心軸として第2可動部22を揺動させることでレーザ光LをX軸に沿って1次元に走査し、X軸に沿った第1軸A1を中心軸として第1可動部21を揺動させることでX軸に沿った方向からのレーザ光Lのずれを補正するように、光走査装置1及び光走査システム100が構成されていてもよい。このとき、第2駆動用コイル26に入力される第2電流信号は、Y軸を中心軸として「0よりも大きい値の第2目的振れ角」及び「0よりも大きい値の第2目的周波数」でミラー24を揺動させるための電流信号であり、第1駆動用コイル25に入力される第1電流信号は、X軸を中心軸として「0の第1目的振れ角」及び「0の第1目的周波数」でミラー24を揺動させるための(つまり、X軸を中心軸としてミラー24を揺動させないための)電流信号である。以上のように、Y軸を中心軸として第2目的振れ角及び第2目的周波数でミラー24を揺動させるための第2電流信号には、Y軸を中心軸として「0の第2目的振れ角」及び「0の第2目的周波数」でミラー24を揺動させるための(つまり、Y軸を中心軸としてミラー24を揺動させないための)電流信号が含まれる。また、X軸を中心軸として第1目的振れ角及び第1目的周波数でミラー24を揺動させるための第1電流信号には、X軸を中心軸として「0の第1目的振れ角」及び「0の第1目的周波数」でミラー24を揺動させるための(つまり、X軸を中心軸としてミラー24を揺動させないための)電流信号が含まれる。
【0092】
また、複数の装置構造Sのそれぞれについて取得された第1データ及び第2データ、並びに、代表の装置構造Sについて取得された第3データは、複数の装置構造Sのそれぞれと第1データ及び第2データとの対応関係が保持された状態で、複数の装置構造Sに対して設けられた1つの記憶部に保存されてもよい。また、複数の装置構造Sのそれぞれについて取得された第1データ、第2データ及び第3データは、複数の装置構造Sのそれぞれと第1データ、第2データ及び第3データとの対応関係が保持された状態で、複数の装置構造Sに対して設けられた1つの記憶部に保存されてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…光走査装置、2…ミラーデバイス、3…磁石、4…温度センサ、5…演算装置(演算部)、6…記憶装置(記憶部)、11…演算装置(演算部)、12…記憶装置(記憶部)、21…第1可動部、22…第2可動部、23…支持部、24…ミラー、25…第1駆動用コイル、26…第2駆動用コイル、100…光走査システム、A1…第1軸、A2…第2軸、S…装置構造。