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特許7481119有機電界発光素子及び有機電界発光素子用多環化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】有機電界発光素子及び有機電界発光素子用多環化合物
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20240501BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240501BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
C07F5/02 A CSP
H05B33/14 B
C07B61/00 300
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020012498
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2020121971
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0011417
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】弁理士法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】須崎 裕司
(72)【発明者】
【氏名】山谷 昭徳
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109134520(CN,A)
【文献】国際公開第2018/216990(WO,A1)
【文献】特開2017-126606(JP,A)
【文献】国際公開第2017/195669(WO,A1)
【文献】特表2013-526548(JP,A)
【文献】米国特許第07279704(US,B1)
【文献】特表2017-518288(JP,A)
【文献】特表2016-500917(JP,A)
【文献】特表2016-516085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される多環化合物。
【化1】

(前記化学式1において、
及びRはそれぞれ独立して重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、シロキシ基、シリル基、ホスホリル基、チオホスホリル基、置換若しくは無置換のチオール基、スルフィニル基、スルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、 隣接するR と結合して環を形成するか又は形成せず、 は隣接するR と結合して環を形成するか又は形成せず、
Lは単結合、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基であり、
Arは置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
m及びnはそれぞれ独立して0以上4以下の整数であり、
Xは下記化学式2-1~化学式2-8のうちのいずれか一つで表され、
【化2】

【化3】

【化4】

前記化学式2-1~化学式2-8において、
a~cはそれぞれ独立して1以上4以下の整数であり、
はO、S、またはNAr10であり、
及びYはそれぞれ独立してNまたはCRであり、Y及びYのうち少なくとも一つはNであり、
~Wはそれぞれ独立してNまたはCRであり、W~Wのうち少なくとも一つはNであり、
Ar~Ar10はそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下ヘテロアリール基であり、隣接する基と単結合で、或はC(炭素)原子又はO(酸素)、S(硫黄)、N(窒素)原子などのヘテロ原子を介して結合して環を形成するか、又は形成せず、
及びRはそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、オキシ基、シロキシ基、シリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、スルフィニル基、スルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と単結合で、或はC(炭素)原子又はO(酸素)、S(硫黄)、N(窒素)原子などのヘテロ原子を介して結合して環を形成するか又は形成せず、
は水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、オキシ基、シロキシ基、シリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、スルフィニル基、スルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
前記Xが前記化学式2-3で表される基であり、W ~W のうち一つがNである場合、前記Xは置換基としてアザボリン環基またはカルバゾリル基を含む。)
【請求項2】
前記Arは、下記化学式3で表される請求項1に記載の多環化合物。
【化5】

(前記化学式3において、
~Vはそれぞれ独立してNまたはCRであり、
は水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、オキシ基、シリル基、チオール基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と結合して環を形成するか又は形成しない。)
【請求項3】
前記V~Vのうち少なくとも一つはCRであり、
前記Rは置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルキル基である請求項に記載の多環化合物。
【請求項4】
前記化学式1で表される化合物は、熱活性遅延蛍光発光材料である請求項1に記載の多環化合物。
【請求項5】
前記化学式2-2は、下記化学式2-2-1~化学式2-2-5のうちのいずれか一つで表される請求項1に記載の多環化合物。
【化6】

【化7】
【請求項6】
化学式2-3は、下記化学式2-3-1~化学式2-3-5のうちのいずれか一つで表される請求項1に記載の多環化合物。
【化8】

【化9】

(前記化学式2-3-1~化学式2-3-5において、
、R’、R’’、R’’’はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、オキシ基、シロキシ基、シリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、スルフィニル基、スルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
化学式2-3-4および化学式2-3-5において、R 、R ’、R ’’、R ’’’のうち少なくとも一つはアザボリン環基またはカルバゾリル基である。)
【請求項7】
Lは単結合、置換若しくは無置換のフェニレン基、または置換若しくは無置換のビフェニリレン基である請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記化学式1は、下記化学式4-1~化学式4-5のうちのいずれか一つで表される請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

(前記化学式4-1~化学式4-5において、
~Aはそれぞれ独立して重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、オキシ基、シリル基、チオール基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、アラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と単結合で、或はC(炭素)原子又はO(酸素)、S(硫黄)、N(窒素)原子などのヘテロ原子を介して結合して環を形成するか又は形成せず、
d~hはそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。)
【請求項9】
前記化学式1で表される化合物は、下記第1化合物群に示した化合物のうちのいずれか一つである請求項1に記載の多環化合物。
[第1化合物群]
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】
【請求項10】
第1電極と、
前記第1電極の上に配置される正孔輸送領域と、
前記正孔輸送領域の上に配置される発光層と、
前記発光層の上に配置される電子輸送領域と、
前記電子輸送領域の上に配置される第2電極と、を含み、
前記第1電極及び前記第2電極はそれぞれ独立して、Ag,Mg,Cu,Al,Pt,Pd,Au,Ni,Nd,Ir,Cr,Li,Ca,LiF/Ca,LiF/Al,Mo,Ti,In,Sn及びZnからなる群から選択される一つ、これらの中から選択される複数を含む化合物、これらの中から選択される複数を含む混合物、又はこれらの中から選択される1つ以上の酸化物を含み、
前記発光層は、請求項1乃至請求項9のうちのいずれか一項に記載の多環化合物を含む有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子及びそれに使用される多環化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、映像表示装置として、有機電界発光表示装置(Organic Electroluminescence Display)の開発が盛んに行われている。有機電界発光表示装置は液晶表示装置などとは異なって、第1電極及び第2電極から注入された正孔及び電子を発光層において再結合させることで、発光層において有機化合物を含む発光材料を発光させて表示を実現するいわゆる自発光型表示装置である。
【0003】
有機電界発光素子を表示装置に応用するに当たっては、有機電界発光素子の低駆動電圧化、高発光効率化及び長寿命化が要求されており、これを安定的に実現し得る有機電界発光素子用材料の開発が持続的に要求されている。
【0004】
特に、最近は高効率の有機電界発光素子を実現するために三重項状態のエネルギーを利用するりん光発光や、三重項励起子の衝突によって一重項例励起子が生成される三重項―三重項消滅(Triplet-triplet annihilation、TTA)を利用した遅延蛍光発光に関する技術が開発されており、遅延蛍光現象を利用した熱活性遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence、TADF)材料に関する開発が進んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、長寿命、高効率の有機電界発光素子及びそれに使用される多環化合物を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、熱活性遅延蛍光発光材料を含む有機電界発光素子及び熱活性遅延蛍光発光材料として使用される多環化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、第1電極と、第1電極の上に設けられる正孔輸送領域と、正孔輸送領域の上に設けられる発光層と、発光層の上に設けられる電子輸送領域と、電子輸送領域の上に設けられる第2電極と、を含み、発光層は電子供与性基と電子受容性基を含む多環化合物を含み、前記電子供与性基はアザボリン環を含み、前記電子受容性基はシアノ基、カルボニル基、ボリル基、スルホニル基、スルフィニル基、ホスフィンオキシド基、含窒素5員環、及び含窒素6員単環のうちのいずれか一つを含む有機電界発光素子が提供される。
【0008】
電子受容性基は、アザボリン環の窒素と直接またはリンカを介して結合してもよい。
【0009】
発光層は遅延蛍光を放出し、発光層はホスト及びドーパントを含む遅延蛍光発光層であってもよい。
【0010】
ドーパントは、前記多環化合物であってもよい。
【0011】
発光層は、青色光を放出する熱活性遅延蛍光発光層であってもよい。
【0012】
多環化合物は、下記化学式1で表されてもよい。
【化1】
化学式1において、R及びRはそれぞれ独立して重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、シロキシ基、シリル基、ホスホリル基、チオホスホリル基、置換若しくは無置換のチオール基、スルフィニル基、スルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、R及びRはそれぞれ隣接する基と結合して環を形成してもよく、Lは単結合、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基であり、Arは置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、m及びnはそれぞれ独立して0以上4以下の整数であり、Xは下記化学式2-1~化学式2-8のうちのいずれか一つで表されてもよい。
【化2】
【化3】
【化4】
化学式2-1~化学式2-8において、a~cはそれぞれ独立して1以上4以下の整数であり、ZはO、S、またはNAr10であり、Y及びYはそれぞれ独立してNまたはCRであり、Y及びYのうち少なくとも一つはNであり、W~Wはそれぞれ独立してNまたはCRであり、W~Wのうち少なくとも一つはNであり、Ar~Ar10はそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下ヘテロアリール基であり、隣接する基と単結合で、或はC(炭素)原子又はO(酸素)、S(硫黄)、N(窒素)原子などのヘテロ原子を介して結合して環を形成してもよく、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、オキシ基、シロキシ基、シリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、スルフィニル基、スルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と単結合で、或はC(炭素)原子又はO(酸素)、S(硫黄)、N(窒素)原子などのヘテロ原子を介して結合して環を形成してもよく、Rは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、オキシ基、シロキシ基、シリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、スルフィニル基、スルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であってもよい。
【0013】
Arは、下記化学式3で表されてもよい。
【化5】
化学式3において、V~Vはそれぞれ独立してNまたはCRであり、Rは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、オキシ基、シリル基、チオール基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルケニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と結合して環を形成してもよい。
【0014】
化学式3において、V~Vのうち少なくとも一つはCRであり、Rは置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルキル基であってもよい。
【0015】
化学式2-2は、下記化学式2-2-1~化学式2-2-5のうちのいずれか一つで表されてもよい。
【化6】
【化7】
化学式2-2-1~化学式2-2-5において、R、R、及びAr10は化学式2-2で定義した通りである。
【0016】
化学式2-3は、下記化学式2-3-1~化学式2-3-5のうちのいずれか一つで表されてもよい。
【化8】
【化9】
化学式2-3-1~化学式2-3-5において、R、R’、R’’、R’’’はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、オキシ基、シロキシ基、シリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、スルフィニル基、スルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であってもよい。
【0017】
Lは単結合、置換若しくは無置換のフェニレン基、または置換若しくは無置換のビフェニリレン基であってもよい。
【0018】
化学式1で表される化合物は、下記第1化合物群に示した化合物のうちのいずれか一つであってもよい。
[第1化合物群]
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】
【0019】
本発明の一実施形態によれば、第1電極と、第1電極の上に設けられる正孔輸送領域と、正孔輸送領域の上に設けられる発光層と、発光層の上に設けられる電子輸送領域と、電子輸送領域の上に設けられる第2電極と、を含み、発光層は化学式1で表される多環化合物を含む有機電界発光素子が提供される。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、化学式1で表される多環化合物が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施形態による有機電界発光素子は、高効率及び長寿命を得ることができる。
【0022】
本発明の一実施形態による多環化合物は、有機電界発光素子の寿命と効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるため、特定の実施形態を図面に示し、本文に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定しようとするのではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物又は代替物を含むと理解すべきである。
【0025】
各図面を説明しながら、類似した参照符号を類似した構成要素に対して使用している。添付した図面において、構造物の寸法は本発明の明確性のために実際より拡大して示している。第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用されるが、前記構成要素は前記用語に限らない。用語は一つの構造要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない限り、第1構成要素は第2構成要素と称されてもよく、同様に第2構成要素も第1構成要素と称されてもよい。単数の表現は、文脈上明白に異なるような意味にならない限り、複数の表現を含む。
【0026】
本出願において、「含む」または「有する」などの用語は明細書の上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを意味するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解すべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるとする場合、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。
【0027】
【0028】
本明細書において、「置換若しくは無置換の」とは重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、シリル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、アルキル基、アリール基、及びジベンゾアザボリン環、アクリジン環などのヘテロ環基から成る群から選択される一つ以上の置換基に置換される若しくは無置換であることを意味する。また、前記例示された置換基それぞれは、置換若しくは無置換であってもよい。例えば、ビフェニリル基はアリール基と解釈されてもよく、フェニル基に置換されたフェニル基と解釈されてもよい。また、前記例示された置換基それぞれは、さらに前記例示された置換基によって置換されてもよい。
【0029】
本明細書において、「隣接する基と結合して環を形成」するとは、隣接する基と単結合で、或はC(炭素)原子又はO(酸素)、S(硫黄)、N(窒素)原子などのヘテロ原子を介して結合して置換若しくは無置換の炭化水素環、または置換若しくは無置換のヘテロ環を形成することを意味する。炭化水素環は、脂肪族炭化水素環及び芳香族炭化水素環を含む。ヘテロ環は、脂肪族ヘテロ環及び芳香族ヘテロ環を含む。炭化水素環及びヘテロ環は、単環または多環である。また、隣接する基と結合して形成される環は、他の環と結合されてスピロ構造を形成してもよい。
【0030】
本明細書において、「隣接する基」とは当該置換基が置換された原子と直接結合された原子に置換された置換基、当該置換基が置換された原子に置換された他の置換基または当該置換基と立体構造的に最も隣接した置換基を意味する。例えば、1,2-ジメチルベンゼンにおける2つのメチル基は互いに「隣接する基」と解釈され、1,1-ジエチルシクロペンタンにおける2つのエチル基は互いに「隣接する基」と解釈される。
【0031】
本明細書において、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる。
【0032】
本明細書において、アルキル基は直鎖、分枝鎖、または環状である。アルキル基の炭素数は、1以上50以下、1以上30以下、1以上20以下、1以上10以下、または1以上6以下である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、2-エチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、1-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-t-ブチルシクロヘキシル基、n-ヘプチル基、1-メチルペプチル基、2,2-ジメチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、2-ブチルヘプチル基、n-オクチル基、t-オクチル基、2-エチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、2-ヘキシルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基、2-エチルデシル基、2-ブチルデシル基、2-ヘキシルデシル基、2-オクチルデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、2-エチルドデシル基、2-ブチルドデシル基、2-ヘキシルドデシル基、2-オクチルデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、2-エチルヘキサデシル基、2-ブチルヘキサデシル基、2-ヘキシルヘキサデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、2-エチルイコシル基、2-ブチルイコシル基、2-ヘキシルイコシル基、2-オクチルイコシル基、n-ヘンイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基、n-ペンタコシル基、n-ヘキサコシル基、n-ヘプタコシル基、n-オクタコシル基、n-ノナコシル基、及びn-トリアコンチル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0033】
本明細書において、アリール基は芳香族炭化水素環から誘導された任意の作用基または置換基を意味する。アリール基は、単環式アリール基または多環式アリール基である。アリール基の環形成炭素数は、6以上30以下、6以上20以下、または6以上15以下である。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クォーターフェニリル基、キンクフェニリル基、セクシフェニリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ベンゾフルオランテニル基、クリセニル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0034】
本明細書において、フルオレニル基は置換されてもよく、2つの置換基が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。フルオレニル基が置換される場合の例示は以下のようである。但し、これに限らない。
【化18】
【0035】
本明細書において、ヘテロアリール基は異種元素としてO、N、P、Si、B及びSのうち一つ以上を含むヘテロアリール基である。ヘテロアリール基の環形成炭素数は、2以上30以下、または2以上20以下である。多環式ヘテロアリール基は、例えば2環または3還構造を有してもよい。ヘテロアリール基の例としては、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、キノリニル基、キナゾリン基、キノキサリニル基、フェノキサジニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリニル基、インドリル基、カルバゾリル基、N-アリールカルバゾリル基、N-ヘテロアリールカルバゾリル基、N-アルキルカルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、チエノチオフェニル基、ベンゾフラニル基、フェナントロリニル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、ジベンゾシリル基、ジベンゾフラニル基、及びジベンゾアザボリン環の1価基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0036】
本明細書において、シリル基はアルキルシリル基及びアリールシリル基を含む。シリル基の例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニリルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0037】
本明細書において、アミノ基の炭素数は特に限らないが、1以上30以下である。アミノ基は、アルキルアミノ基及びアリールアミノ基を含む。アミノ基の例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、9-メチル-アントラセニルアミノ基、トリフェニルアミノ基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0038】
本明細書において、アリーレン基は2価基であることを除いては、上述したアリール基に関する説明が適用される。
【0039】
本明細書において、ヘテロアリーレン基は2価基であることを除いては、上述したヘテロアリール基に関する説明が適用される。
【0040】
以下、図1図3を参照して本発明の一実施形態による有機電界発光素子について説明する。
【0041】
図1図3を参照すると、本発明の一実施形態による有機電界発光素子10は、順次に積層される第1電極EL1、正孔輸送領域HTR、発光層EML、電子輸送領域ETR、及び第2電極EL2を含む。
【0042】
図1を参照すると、一実施形態に係る有機電界発光素子10において、第1電極EL1及び第2電極EL2は互いに対向して配置され、第1電極EL1と第2電極EL2との間には複数の有機層が配置される。複数の有機層は正孔輸送領域HTR、発光層EML、及び電子輸送領域ETRを含む。一実施形態に係る有機電界発光素子10は、発光層EMLに上述した一実施形態に係る多環化合物を含む。
【0043】
一方、図2図1とは異なり、正孔輸送領域HTRが正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTLを含み、電子輸送領域ETRが電子注入層EIL及び電子輸送層ETLを含む一実施形態に係る有機電界発光素子10の断面図を示す。また、図3図1とは異なり、正孔輸送領域HTRが正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び電子阻止層EBLを含み、電子輸送領域ETRが電子注入層EIL、電子輸送層ETL、及び正孔阻止層HBLを含む一実施形態に係る有機電界発光素子10の断面図を示す。
【0044】
図1図3に示した一実施形態に係る有機電界発光素子10は、複数の有機層のうち少なくとも一つの有機層に一つの電子供与性基と一つの電子受容性基とを含む、本発明の一実施形態に係る多環化合物を含む。該多環化合物において、電子供与性基はアザボリン環を含み、受容性基はシアノ基、カルボニル基、ボリル基、スルホニル基、スルフィニル基、ホスフィンオキシド基、含窒素5員環、及び含窒素6員単環のうちのいずれか一つを含む。
【0045】
一実施形態に係る有機電界発光素子10において、第1電極EL1は導電性を有する。第1電極EL1は、金属合金または導電性化合物からなる。第1電極EL1はアノード(anode)である。
【0046】
第1電極EL1は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極である。第1電極EL1が透過型電極であれば、第1電極EL1透明金属酸化物、例えば、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin zinc oxide)などからなる。第1電極EL1が半透過型電極または反射型電極であれば、第1電極EL1はAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらの化合物や混合物(例えば、AgとMgの合金)を含む。また、前記例示された物質で形成された反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる透明導電膜を含む複数の層構造であってもよい。例えば、第1電極EL1はITO/Ag/ITOの複数の層を含んでもよい。
【0047】
正孔輸送領域HTRは第1電極EL1の上に設けられる。正孔輸送領域HTRは、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、正孔バッファ層、及び電子阻止層EBLのうち少なくとも一つを含む。
【0048】
正孔輸送領域HTRは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0049】
例えば、正孔輸送領域HTRは正孔注入層HILまたは正孔輸送層HTLの単一層の構造を有してもよく、正孔注入物質と正孔輸送物質とからなる単一構造を有してもよい。また、正孔輸送領域HTRは、複数の互いに異なる物質からなる単一層の構造を有するか、第1電極EL1から順番に積層される正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL、正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/正孔バッファ層、正孔注入層HIL/正孔バッファ層、正孔輸送層HTL/正孔バッファ層、または正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/電子阻止層EBLの構造を有してもよいが、これらに限らない。
【0050】
正孔輸送領域HTRは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(Langmuir-Blodgett)、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)などのような多様な方法を利用して形成される。
【0051】
正孔注入層HILは、公知の正孔注入材料を含む。例えば、正孔注入層HILは、トリフェニルアミン含有ポリエーテルケトン(TPAPEK)、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(PPBI)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-(フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-フェニル-4,4’-ジアミン(DNTPD)、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(NPB)、N,N’-ビス(1-ナフチル)N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミン(α-NPD)、4,4’,4”-トリス{N,Nジフェニルアミノ}トリフェニルアミン(TDATA)、4,4’,4”-トリス(N,N-2-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2-TNATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(PANI/DBSA)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホナート)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(PANI/CSA)、ポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホナート)(PANI/PSS)、またはHAT-CN(ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2、3、6、7、10、11-ヘキサカルボニトリル)などを含んでもよいが、これらに限らない。
【0052】
正孔輸送層HTLは、公知の正孔輸送材料を含む。例えば、正孔輸送層HTLは、1,1-ビス[(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TPD)、4,4’,4”-トリス(Nーカルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、またはN,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(NPB)、N,N’-ビス(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミン(α-NPD)などを含んでもよいがこれらに限らない。
【0053】
一方、正孔輸送領域HTRは電子阻止層EBLを更に含み、電子阻止層EBLは正孔輸送層HTLと発光層EMLとの間に配置される。電子阻止層EBLは、電子輸送領域ETRから正孔輸送領域HTRへの電子の注入を防止する役割をする層である。
【0054】
電子阻止層EBLは、当該技術分野で知られている一般的な材料を含む。電子阻止層EBLは、例えば、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール系誘導体、フルオレン系誘導体、TPD(N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン)などのようなトリフェニルアミン系誘導体、NPB(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン)、TAPC(4,4’-シクロへキシリデンビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン])、HMTPD(4,4’-ビス[N,N’-(3-トリル)アミノ]-3,3’-ジメチルビフェニル)、またはmCPなどを含んでもよい。また、上述したように、電子阻止層EBLは、本発明の一実施形態に係る多環化合物を含んでもよい。
【0055】
正孔輸送領域HTRの厚さは、約10nm~約1000nm、例えば約10nm~約500nmであってもよい。正孔注入層HILの厚さは、例えば約3nm~約100nmであり、正孔輸送層HTLの厚さは、約3nm~約100nmであってもよい。例えば、電子阻止層EBLの厚さは、約1nm~約100nmであってもよい。正孔輸送領域HTR、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び電子阻止層EBLの厚さが上述したような範囲を満たせば、実質的な駆動電圧の上昇なしに十分な正孔輸送特性が得られる。
【0056】
正孔輸送領域HTRは、上述した物質以外に、導電性を向上するために電荷生成物質を更に含んでもよい。電荷発生物質は、正孔輸送領域HTR内に均一にまたは不均一に分散されている。電荷発生物質は、例えば、p-ドーパント(dopant)である。p-ドーパントはキノン誘導体、金属酸化物及びシアノ基含有化合物のうちの一つであってもよいが、これらに限らない。例えば、p-ドーパントの例としては、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)及びF4-TCNQ(2,3,5,6-テトラフルオロ-テトラシアノキノジメタン)などのようなキノン誘導体、タングステン酸化物、及びモリブデン酸化物のような金属酸化物などが挙げられるが、これらに限らない。
【0057】
上述したように、正孔輸送領域HTRは、正孔輸送層HTL及び正孔注入層HIL以外に、正孔バッファ層及び電子阻止層EBLのうち少なくとも一つを更に含んでもよい。正孔バッファ層は、発光層EMLから放出される光の波長による共振距離を補償して光放出効率を増加させる。正孔バッファ層に含まれる物質としては、正孔輸送領域HTRに含まれ得る物質を使用する。
【0058】
発光層EMLは正孔輸送領域HTRの上に設けられる。発光層EMLの厚さは、例えば、10nm以上60nm以下であってもよい。発光層EMLは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0059】
発光層EMLは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法などのような多様な方法を利用して形成される。
【0060】
発光層EMLは、赤色光、緑色光、青色光、白色光、黄色光、シアン光のうちの一つを発光する。発光層EMLは、蛍光発光物質またはりん光発光物質を含む。
【0061】
一実施形態において、発光層EMLは一つの電子供与性基と一つの電子受容性基とを含む、本発明の一実施形態に係る多環化合物を含む。多環化合物において、電子供与性基はアザボリン環を含み、受容性基はシアノ基、カルボニル基、ボリル基、スルホニル基、スルフィニル基、ホスフィンオキシド基、含窒素5員環、及び含窒素6員単環のうちのいずれか一つを含む。
【0062】
多環化合物において、電子受容性基は、アザボリン環の窒素と直接またはリンカーを介して結合する。
【0063】
一実施形態において、発光層EMLは蛍光発光層である。例えば、発光層EMLから放出された光のうち一部は熱活性遅延蛍光発光によるものであってもよい。詳しくは、発光層EMLは熱活性遅延蛍光発光する発光成分を含み、一実施形態において、発光層EMLは青色光を放出する熱活性遅延蛍光発光する発光層である。
【0064】
発光層EMLは一つの電子供与性基と一つの電子受容性基を含む多環化合物を含む。また、発光層EMLはホスト及びドーパントを含み、ドーパントが一つの電子供与性基と一つの電子受容性基を含む多環化合物を含む。
【0065】
多環化合物は、例えば下記化学式1で表される構造を有する。
【化19】
【0066】
化学式1において、R及びRはそれぞれ独立して重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、シロキシ基、シリル基、ホスホリル基、チオホスホリル基、置換若しくは無置換のチオール基、スルフィニル基、スルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と結合して環を形成してもよい。
【0067】
化学式1において、m及びnはそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。一方、mが2以上の整数であれば、複数個のRは互いに同じであるかまたは互いに異なり、nが2以上の整数であれば、複数個のRは互いに同じであるかまたは互いに異なる。
【0068】
化学式1において、Lは単結合、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基である。
【0069】
化学式1において、Arは置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0070】
化学式1において、Xは下記化学式2-1~化学式2-8のうちのいずれか一つで表される。
【化20】
【化21】
【化22】
【0071】
化学式2-2において、ZはO、S、またはNAr10であり、Y及びYはそれぞれ独立してNまたはCRであり、Y及びYのうち少なくとも一つはNであり、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、オキシ基、シロキシ基、シリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、スルフィニル基、スルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と単結合で、或はC(炭素)原子又はO(酸素)、S(硫黄)、N(窒素)原子などのヘテロ原子を介して結合して環を形成してもよい。
【0072】
化学式2-3において、W~Wはそれぞれ独立してNまたはCRであり、W~Wのうち少なくとも一つはNであり、Rは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、オキシ基、シロキシ基、シリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、スルフィニル基、スルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0073】
化学式2-1~化学式2-8において、a~cはそれぞれ独立して1以上4以下の整数であり、Ar~Ar10はそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と単結合で、或はC(炭素)原子又はO(酸素)、S(硫黄)、N(窒素)原子などのヘテロ原子を介して結合して環を形成してもよい。
【0074】
化学式2-1は電子受容性基としてシアノ基が含まれる。シアノ基は一つ以上含まれる。化学式2-2は電子受容性基として含窒素5員環を含む。含窒素5員環は、含窒素5角単環または含窒素5角多環である。化学式2-3は電子受容性基として含窒素6員単環を含む。化学式2-4は電子受容性基としてカルボニル基を含む。カルボニル基は一つ以上含まれる。化学式2-5は電子受容性基としてボリル基を含む。化学式2-6は電子受容性基としてスルフィニル基を含む。化学式2-7は電子受容性基としてスルホニル基を含む。スルホニル基は一つ以上含まれる。化学式2-8は電子受容性基としてホスフィンオキシド基を含む。
【0075】
【0076】
該多環化合物は、ホウ素を含むアザボリン環を電子供与性基として含み、化学式2-1~化学式2-8で表される化学式1のXを電子受容部として含み、該受容部が直接またはリンカを介して電子供与性基の窒素と結合することで優れた効果を発揮することができ、特に、熱活性遅延蛍光発光材料として使用されて有機電界発光素子の効率を向上させることができる。
【0077】
化学式1において、リンカ(linker)に当たるLが単結合であれば、電子受容部は電子供与性基と直接結合し、リンカに当たるLが置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基であれば、電子受容部はLを介して電子供与性基と結合する。
【0078】
一実施形態において、化学式1のLは単結合、置換若しくは無置換のフェニリレン基、または置換若しくは無置換の2価のビフェニリレン基である。
【0079】
一実施形態において、化学式1におけるArは下記化学式3で表される。
【化23】
【0080】
化学式3において、V~Vはそれぞれ独立してNまたはCRであり、Rは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、オキシ基、シリル基、チオール基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と結合して環を形成してもよい。
【0081】
一実施形態において、化学式3のV~Vのうち少なくとも一つはCRである。Rは、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0082】
一実施形態において、Rは置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルキル基であってもよい。他の一実施形態において、Rは一つ以上の枝を有する炭素数3以上20以下のアルキル基である。化学式1のホウ素Bの周辺に炭素数2以上20以下のアルキル基のような置換基が導入されれば、不安定なホウ素が立体的に保護されて、素子の特性向上に寄与する。
【0083】
一実施形態において、V~Vはそれぞれ独立してCRであってもよい。
【0084】
一実施形態において、化学式3は置換若しくは無置換のフェニル基であってもよい。
【0085】
一実施形態において、化学式2-2は、下記化学式2-2-1~化学式2-2-5のうちのいずれか一つであってもよい。
【化24】
【化25】
【0086】
化学式2-2-1~化学式2-2-5において、R、R、及びAr10は化学式2-2で定義した通りである。一方、化学式2-2-1及び化学式2-2-5は化学式2-2のZがSである場合を示し、化学式2-2-2~化学式2-2-3はZがOである場合を示し、化学式2-2-4はZがNAr10である場合の一例である。
【0087】
化学式2-3は、下記化学式2-3-1~化学式2-3-5のうちのいずれか一つであってもよい。
【化26】
【化27】
【0088】
化学式2-3-1~化学式2-3-5において、R、R’、R’’、R’’’はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、オキシ基、シロキシ基、シリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、スルフィニル基、スルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0089】
また、上記R~Rにおいて、「置換若しくは無置換の」の置換基からシアノ基は除外される。詳しくは、R~Rにおいて、置換基はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、メチル基、無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0090】
一実施形態において、化学式1は、下記化学式4-1~化学式4-5のうちのいずれか一つで表される。
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【0091】
化学式4-1~化学式4-5において、A~Aはそれぞれ独立して重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、オキシ基、シリル基、チオール基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、アラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と単結合で、或はC(炭素)原子又はO(酸素)、S(硫黄)、N(窒素)原子などのヘテロ原子を介して結合して環を形成してもよい。
【0092】
化学式4-1~化学式4-5において、d~hはそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。一方、dが2以上の整数であれば複数個のAは互いに同じであるかまたは互いに異なり、eが2以上の整数であればAは互いに同じであるかまたは互いに異なり、fが2以上の整数であればAは互いに同じであるかまたは互いに異なり、gが2以上の整数であればAは互いに同じであるかまたは互いに異なり、hが2以上の整数であればAは互いに同じであるかまたは互いに異なる。一方、化学式4-1において、dとaの和は0以上5以下の整数である。
【0093】
化学式4-1~化学式4-5において、W~W、R、R、Ar、a、m、nは化学式1及び化学式2で定義した通りである。
【0094】
化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物は、遅延蛍光発光材料である。
【0095】
化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物は、一重項エネルギー準位S1と三重項エネルギー準位T1との差の絶対値ΔEstが0.25eV以下である。例えば、S1-T1=0.25eであってもよい。
【0096】
例えば、化学式1で表される多環化合物は一重項エネルギー準位S1と三重項エネルギー準位T1との差が小さく、熱活性遅延蛍光発光材料として使用されてもよい。詳しくは、化学式1で表される多環化合物は、熱活性遅延蛍光発光する青色光発光材料として使用される。但し、これに限らず、一実施形態に係る多環化合物は、緑色光または赤色光を発光する熱活性遅延蛍光材料であってもよい。
【0097】
化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物は、下記第1化合物群に示した化合物のうちのいずれか一つで表されてもよい。
[第1化合物群]
【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】
【0098】
上述した化学式1で表される多環化合物は、一実施形態に係る有機電界発光素子10に使用されて有機電界発光素子の効率及び寿命を改善させる。詳しくは、上述した化学式1で表される多環化合物は、一実施形態に係る有機電界発光素子10の発光層EMLに使用されて有機電界発光素子の発光効率及び寿命を改善させる。
【0099】
一実施形態において、発光層EMLはホスト及びドーパントを含み、ホストは遅延蛍光発光用ホストであり、ドーパントは遅延蛍光発光用ドーパントである。一方、化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物は、発光層EMLのドーパント材料として含まれる。例えば、化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物は、熱活性型遅延蛍光(TADF)ドーパントとして使用されてもよい。
【0100】
一方、一実施形態において、発光層EMLは公知のホスト材料を含む。例えば、一実施形態において、発光層EMLはドーパント材料として、Alq(トリス(8-ヒドロキシキノリノ)アルミニウム)、CBP(4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル)、PVK(ポリ(n-ビニルカルバゾール)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(カルバゾール-9-イル)-トリフェニルアミン)、TPBi(1,3,5-トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン)、TBADN(3-tert-ブチル-9,10-ジ(ナフト-2-イル)アントラセン)、DSA(ジスチリルアリレン)、CDBP(4,4’-ビス(9-カルバゾリル)-2,2’-ジメチル-ビフェニル)、MADN(2-メチル-9,10-ビス(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、DPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)、CP1(ヘキサフェニルシクロトリホスファゼン)、UGH2(1,4-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン)、DPSiO(ヘキサフェニルシクロトリシロキサン)、DPSiO(オクタフェニルシクロテトラシロキサン)、またはPPF(2,8-ビス(ジフェニルホスフォリル)ジゼンゾフラン)などを含んでもよい。しかしながら、これらに限らず、提示されたホスト材料以外にも公知の遅延蛍光発光ホスト材料が含まれてもよい。
【0101】
一方、本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは公知のドーパント材料を更に含んでもよい。一実施形態において、発光層MELは、ドーパントとして、スチリル誘導体(例えば、1,4-ビス[2-(3-N-エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン(BCzVB)、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-[(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]スチルベン(DPAVB)、N-(4-((E)-2-(6-((E)-4-(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン-2-イル)ビニル)フェニル)-N-フェニルベンゼンアミン(N-BDAVBi)、ぺリレン及びその誘導体(例えば、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルぺリレン(TBP))、ピレン及びその誘導体(例えば、1,1-ジピレン、1,4-ジピレニルベンゼン、1,4-ビス(N、N-ジフェニルアミノ)ピレン)などを含む。
【0102】
更に図1図3を参照すると、一実施形態に係る有機電界発光素子10において、電子輸送領域ETRは発光層EMLの上に設けられる。電子輸送領域ETRは電子阻止層、電子輸送層ETL、及び電子注入層のEILのうち少なくとも一つを含むが、これらに限らない。
【0103】
電子輸送領域ETRは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0104】
例えば、電子輸送領域ETRは電子注入層のEILまたは電子輸送層ETLの単一層構造を有してもよく、電子注入物質と電子輸送物質からなる単一層構造を有してもよい。また、電子輸送領域ETRは、複数の互いに異なる物質からなる単一層構造を有するか、第1電極EL1から順番に積層された電子輸送層ETL/電子注入層EIL、正孔阻止層/電子輸送層ETL/電子注入層EILの構造を有してもよいが、これらに限らない。電子輸送領域ETRの厚さは、例えば、約10nm~約150nmであってもよい。
【0105】
電子輸送領域ETRは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法などのような多様な方法を利用して形成される。
【0106】
電子輸送領域ETRが電子輸送層ETLを含む場合、例えば、電子輸送領域ETRは、Alq(トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン、2,4,6-トリス(3’-ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-(N-フェニルベンゾイミダゾリル-1-イルフェニル)-9,10-ジナフチルアントラセン、TPBi(1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ベンゼン)、BCsP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、TAZ(3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5-テルト-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール)、NTAZ(4-(ナフタレン-1-イル)-3,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール)、tBu-PBD(2-(4-ビフェニルイル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラト-N1,O8)-(1,1’-ビフェニル-4-オラト)アルミニウム)、Bebq(ベリリウムビス(ベンゾキノリン-10-オラト)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、またはこれらの混合物を含んでもよいが、これらに限らない。
【0107】
電子輸送領域ETRが電子輸送層ETLを含む場合、電子輸送層ETLの厚さは、約10nm~約100nm、例えば約15nm~約50nmであってもよい。電子輸送層HTLの厚さが上述したような範囲を満たせば、実質的な駆動電圧の上昇なしに十分な電子輸送特性が得られる。
【0108】
電子輸送領域ETRが電子注入層EILを含む場合、電子輸送領域ETRは、例えば、LiF、LiQ(Lithum quinolate)、LiO、BaO、NaCl、CsF、Ybのようなランタノイド金属、またはRbCl、RbI、KIのようなハロゲン化金属などが使用されてもよいが、これらに限らない。電子注入層EILはまた、電子輸送物質と絶縁性の有機金属塩(organo metal salt)が混合された物質を含んでもよい。有機金属塩は、エネルギーバンドギャップ(energy band gap)が約4eV以上の物質である。詳しくは、例えば、有機金属塩は、酢酸金属塩(metal acetate)、安息香酸金属塩(metal benzoate)、アセト酢酸金属塩(metal acetoacetate)、金属アセチルアセトナート(metal acetylacetonate)、またはステアリン酸金属塩(stearate)を含む。
【0109】
電子輸送領域ETRが電子注入層EILを含む場合、電子注入層EILの厚さは、約0.1nm~約10nm、約0.3nm~約9nmであってもよい。電子注入層EILの厚さが上述したような範囲を満たせば、実質的な駆動電圧の上昇なしに十分な電子注入特性が得られる。
【0110】
電子輸送領域ETRは、上述したように、正孔阻止層を含んでもよい。正孔阻止層は、例えば、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、及びBphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)のうち少なくとも一つを含んでもよいが、これらに限らない。
【0111】
第2電極EL2は、電子輸送領域ETRの上に設けられる。第2電極EL2は導電性を有する。第2電極EL2は金属合金または導電性化合物からなる。第2電極層EL2はカソード(cathode)である。第2電極層EL2は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極である。第2電極EL2が透過型電極であれば、第2電極EL2は透明金属酸化物、例えば、ITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる。
【0112】
第2電極EL2半透過型電極または反射型電極であれば、第2電極EL2はAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらの化合物や混合物(例えば、AgとMgの合金)を含む。また、前記例示された物質で形成された反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる透明導電膜を含む複数の層構造であってもよい。
【0113】
図示していないが、第2電極EL2は補助電極と接続される。第2電極EL2が補助電極と接続されれば、第2電極EL2の抵抗を減少させることができる。
【0114】
有機電界発光素子10において、第1電極EL1と第2電極EL2とにそれぞれ電圧が印加されることで、第1電極EL1から注入された正孔(hole)は正孔輸送領域HTRを経て発光層EMLに移動し、第2電極EL2から注入された電子は電子輸送領域ETRを経て発光層EMLに移動する。電子と正孔は発光層EMLで再結合して励起子(exciton)を生成し、励起子が励起状態から基底状態に落ちる際に発光する。
【0115】
有機電界発光素子10が前面発光型であれば、第1電極EL1は反射型電極であり、第2電極EL2は透過型電極または半透過型電極である。有機電界発光素子10が背面発光型であれば、第1電極EL1は透過型電極または半透過型電極であり、第2電極EL2は反射型電極である。
【0116】
本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子10は、上述した多環化合物を発光層材料として使用することで、改善された発光効率及び寿命特性を示す。
【0117】
本発明の一実施形態によれば、下記化学式1で表される多環化合物が提供される。
【化41】
【0118】
化学式1において、R及びRはそれぞれ独立して、重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、シロキシ基、シリル基、ホスホリル基、チオホスホリル基、置換若しくは無置換のチオール基、スルフィニル基、スルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と結合して環を形成してもよい。
【0119】
化学式1において、m及びnはそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。一方、mが2以上の整数であれば、複数個のRは互いに同じであるかまたは互いに異なり、nが2以上の整数であれば、Rは互いに同じであるかまたは互いに異なる。
【0120】
化学式1において、Lは単結合、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基である。
【0121】
化学式1において、Arは置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0122】
化学式1において、Xは下記化学式2-1乃至化学式2-8のうちのいずれか一つで表される。
【化42】
【化43】
【化44】
【0123】
化学式2-2において、ZはO、S、またはNAr10であり、Y及びYはそれぞれ独立してNまたはCRであり、Y及びYのうち少なくとも一つはNであり、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、オキシ基、シロキシ基、シリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、スルフィニル基、スルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と単結合で、或はC(炭素)原子又はO(酸素)、S(硫黄)、N(窒素)原子などのヘテロ原子を介して結合して環を形成してもよい。
【0124】
化学式2-3において、W~Wはそれぞれ独立してNまたはCRであり、W~Wのうち少なくとも一つはNであり、Rは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ボリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、オキシ基、シロキシ基、シリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、スルフィニル基、スルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0125】
化学式2-1~化学式2-8において、a~cはそれぞれ独立して1以上4以下の整数であり、Ar~Ar10はそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と単結合で、或はC(炭素)原子又はO(酸素)、S(硫黄)、N(窒素)原子などのヘテロ原子を介して結合して環を形成してもよい。
【0126】
化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物については、上述した一実施形態に係る有機電界発光素子で説明した多環化合物に関する説明が適用される。
【0127】
一実施形態に係る多環化合物は、上述した第1化合物群に示した化合物のうちから選択されるいずれか一つであってもよい。
【実施例
【0128】
以下、具体的な実施例及び比較例を介して本発明をより詳細に説明する。下記実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲はこれらに限らない。
【0129】
1.多環化合物の合成
まず、本実施形態による多環素化合物の合成方法について、化合物2、化合物12、化合物30、化合物64、及び化合物54の合成方法を例示して具体的に説明する。また、以下で説明する多環化合物の合成法は一実施例であって、本発明の実施形態による多環化合物の合成法は下記実施例に限らない。
【0130】
(1)化合物2の合成
(中間体化合物Bの合成)
【化45】
【0131】
アルゴン雰囲気下、1000mLの三口フラスコに、化合物A(22g、42mmol)に脱水ジエチルエーテル400mLを加えて溶解させ、-78℃で1時間攪拌した。ここに、1.6Mのn-BuLiヘキサン溶液52mL(83mmol)を滴下し、2時間攪拌した。ここに、2,4,6-トリイソプロピルフェニルボロン酸メチルエステル12.7g(46mmol)を追加した後、攪拌しながら反応溶液の温度を室温まで昇温させた。反応後、この混合液を水で洗浄した。得られた有機相を濃縮し、粘性の物質を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した後、固体の化合物Bを16.3g(28mmol、収率64%)を得た。FAB-MS測定によって測定された化合物Bの分子量は581であった。
【0132】
(化合物C、Dの合成)
Ar雰囲気下、1000mLの三口フラスコに、化合物B(16.3g、28mmol)に脱水THFを200mL加えて溶解させ、-78℃で1時間攪拌した。ここに、1.6Mのn-BuLiヘキサン溶液36mL(58mmol)を滴下し、2時間攪拌した。ここに、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、反応溶液からTHF成分を減圧流去した。得られた水溶液から有機物をクロロホルムによって抽出し、得られた有機相を濃縮して、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した後、化合物Cを得た。得られた化合物Cを脱水ジエチルエーテル100mLに溶解させた後、塩酸水溶液(12M、40mL)を加えて、室温で1時間攪拌した。溶液に飽和炭酸ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した後、分液操作を行って得られた有機相を濃縮し、化合物Dを白色固体として得た(7.3g、19mmol、68%)。FAB-MS測定によって測定された化合物Dの分子量は381であった。
【0133】
(化合物2の合成)
【化46】
【0134】
Ar雰囲気下、100mLの三口フラスコに、化合物Dを3.1g(8.1mmol)とC-1,3-(CN)-2-Brを1.7g(8.0mmol)、Pd(dba)を0.183g(0.20mmol)、(t-Bu)Pを0.162g(0.80mmol)、ナトリウムt-ブトキシド0.770g(8.0mmol)を加え、20mLのトルエン溶液中で90℃で12時間攪拌した。空冷後、水を加えて有機層を分取し、溶媒流去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した後、白色固体の化合物2を2.6g(5.1mmol、収率64%)を得た。FAB-MS測定によって測定された化合物2の分子量は507であった。
【0135】
(2)化合物12の合成
【化47】
【0136】
Ar雰囲気下、100mLの三口フラスコに、化合物Dを3.1g(8.1mmol)と4,6-ビス(4-ブロモフェニル)ピリミジン1.56g(4.0mmol)、Pd(dba)を0.183g(0.20mmol)、(t-Bu)Pを0.162g(0.80mmol)、ナトリウムt-ブトキシド0.769g(8.0mmol)を加え、20mLのトルエン溶液中で80℃で12時間攪拌した。空冷後、水を加えて有機層を分取し、溶媒流去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した後、白色固体の化合物12を3.1g(3.1mmol、収率39%)得た。FAB-MS測定によって測定された化合物12の分子量は991であった。
【0137】
(3)化合物30の合成
【化48】
【0138】
Ar雰囲気下、100mLの三口フラスコに、化合物Dを3.1g(8.1mmol)と4、4’-ジブロモベンゾフェノン1.36g(4.0mmol)、Pd(dba)を0.183g(0.20mmol)、(t-Bu)Pを0.162g(0.80mmol)、ナトリウムt-ブトキシド0.769g(8.0mmol)を加え、20mLのトルエン溶液中で4時間加熱還流した。空冷後、水を加えて有機層を分取し、溶媒流去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ、及びヘキサンによる洗浄によって精製した後、白色固体の化合物30を1.51g(1.6mmol、収率40%)を得た。FAB-MS測定によって測定された化合物30の分子量は941であった。
【0139】
(4)化合物64の合成
【化49】
【0140】
Ar雰囲気下、100mLの三口フラスコに、化合物Dを3.1g(8.1mmol)と3-ブロモ-10-[2,4,6-トリス(1-メイルエチル)フェニル]-10H-フェノキサボリン3.69g(8.0mmol)、Pd(dba)を0.183g(0.20mmol)、(t-Bu)Pを0.163g(0.80mmol)、ナトリウムt-ブトキシド0.768g(8.0mmol)を加え、30mLのトルエン溶液中で6時間、加熱還流した。空冷後、水を加えて有機層を分取し、溶媒流去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した後、白色固体の化合物64を2.8g(3.7mmol、収率46%)を得た。FAB-MS測定で測定された化合物64の分子量は762であった。
【0141】
(5)化合物54の合成
【化50】
【0142】
Ar雰囲気下、100mLの三口フラスコに、化合物Dを3.1g(8.1mmol)と1,1’-スルホニルビス[4-ブロモベンゼン]1.50g(4.0mmol)、Pd(dba)を0.183g(0.20mmol)、(t-Bu)Pを0.161g(0.80mmol)、ナトリウムt-ブトキシド0.768g(8.0mmol)を加え、20mLのトルエン溶液中で6時間加熱還流した。空冷後、水を加えて有機層を分取し、溶媒流去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した後、白色固体の化合物54を2.4g(2.6mmol、収率61%)を得た。FAB-MS測定によって測定された化合物54の分子量は977であった。
【0143】
2.多環化合物を含む有機電界発光素子の製作及び評価
(有機電界発光素子の製作)
一実施例の多環化合物を発光層に含む有機電界発光素子を下記方法で作製した。上述した化合物2、化合物12、化合物30、化合物64、及び化合物54の多環化合物を発光層材料として使用し、実施例1~実施例5の有機電界発光素子を作製した。下記では、実施例1~実施例5、及び比較例1~比較例4において、発光層に使用された化合物2、化合物12、化合物30、化合物64、化合物54、比較例化合物c1、比較例化合物c2、比較例化合物c3及び比較例化合物c4を示している。
【化51】

【化52】
【0144】
実施例及び比較例の有機電界発光素子は、以下の方法で作製した。
【0145】
ガラス基板の上に150nmの厚さでITOをパターニングした後、超純水で洗浄し、UVオゾン処理を10分間実施した。次に、10nmの厚さでHAT-CNを蒸着し、厚さ80nmでα-NPDを蒸着し、5nmの厚さでmCPを蒸着して、正孔輸送領域を形成した。
【0146】
次に、発光層を形成する際、一実施例の多環化合物または比較例化合物とDPEPOとを20:80の割合で共蒸着し、厚さ20nmの層を形成した。次に、DPEPOを利用して10nmの厚さの層を形成した。つまり、共蒸着して形成された発光層は、実施例1~実施例5では、それぞれ化合物2、化合物12、化合物30、化合物64、及び化合物54をDPEPOと混合して蒸着し、比較例1乃至比較例4では、比較例化合物c1、比較例化合物c2、比較例化合物c3、及び比較例化合物c4をDPEPOと混合して蒸着した。
【0147】
発光層の上にTPBiで厚さ30nmの層を形成し、厚さ0.5nmのLiF層を形成して、電子輸送領域を形成した。次に、アルミニウム(Al)で厚さ100nmの第2電極を形成した。
【0148】
上記実施例及び比較例において、正孔輸送領域、発光層、電子輸送領域、及び第2電極は、真空蒸着装置を利用して形成した。
【0149】
(有機電界発光素子の特性評価)
実施例及び比較例による有機電界発光素子の特性を評価するために、最大発光波長(nm)及び外部量子収率(%)を測定した。浜松ホトニクス社製C9920-11輝度配向特性測定装置を利用して測定した。
【表1】
【0150】
表1を参照すると、一実施例の多環化合物を発光層のドーパント物質として使用した実施例1~実施例5の有機電界発光素子は、比較例1~比較例4に比べ、高い効率及び長寿命を示すことが分かる。また、一実施例の多環化合物を発光層のドーパント物質として使用した実施例1~実施例5の有機電界発光素子は、発光波長が485nm以下の相対的に短波長である深青色光を発光することが分かる。
【0151】
詳しくは、実施例2と比較例1、実施例3と比較例2、実施例4と比較例3、及び実施例5と比較例4の化合物は同じ電子受容部を含む。しかし、電子供与性基としてアザボリン環を含む実施例化合物を使用した実施例において、それぞれ比較例より高い効率及び長寿命を示すことが分かる。特に、実施例3と比較例2を参照すると、同じベンゾフェノン基を電子受容基として有する化合物であるが、アザボリン環基を電子供与基として含む化合物を使用した実施例3は、比較例2に比べ寿命が21%向上された。
【0152】
実施例1~実施例5は、電子供与性基としてホウ素原子を含むアザボリン環を含み、ホウ素原子の空いているp軌道に由来する弱い電子求引性によって、比較例に含まれるアクリジンより弱い電子供与性基として作用する。よって、電子受容性基との間で電荷の移動が弱くなって短波長化していると判断され、同時にドナーとアクセプターを結合する炭素-窒素結合の分極が弱化し、その結合の安定性が上昇しているため、比較例1~比較例4に比べ外部量子効率及び寿命が向上されていると考えられる。
【0153】
一実施例の有機電界発光素子は、電子供与性基と電子受容性基を含むが、電子供与性基としてはアザボリン環を含み、電子受容性基としてはシアノ基、カルボニル基、ボリル基、スルホニル基、スルフィニル基、ホスフィンオキシド基、含窒素5員環、及び含窒素6員単環のうちのいずれか一つを含む多環化合物を発光層材料として使用することで、青色光波長領域で高い発光効率を実現することができる。
【0154】
これまで本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、該当技術分野における熟練した当業者または該当技術分野における通常の知識を有する者であれば、後述する特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更し得ることを理解できるはずである。
【0155】
よって、本発明の技術的範囲は明細書の詳細な説明に記載されている内容に限らず、特許請求の範囲によって決められるべきである。
【符号の説明】
【0156】
10:有機電界発光素子 EL1:第1電極
EL2:第2電極 HTR:正孔輸送領域
EML:発光層 ETR:電子輸送領域
図1
図2
図3