(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】マップ生成システム、マップ生成方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20240501BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
(21)【出願番号】P 2020015694
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田山 修平
(72)【発明者】
【氏名】神谷 謙治
【審査官】石原 徹弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-504039(JP,A)
【文献】特開2017-015562(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0025500(US,A1)
【文献】特開2006-308361(JP,A)
【文献】特開2019-149742(JP,A)
【文献】国際公開第2020/021739(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00-5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固定通信装置が設置された対象エリアを移動し、前記複数の固定通信装置と無線通信をする移動測定装置と、
前記移動測定装置の位置を検出する位置検出部と、
前記複数の固定通信装置のそれぞれについて、前記対象エリアにおける電波強度の分布を表すマップ情報を生成するマップ生成部と、
前記移動測定装置の外部から、前記移動測定装置を撮像するカメラと、
を備え、
前記位置検出部は、前記カメラにより撮像された画像に基づき、前記移動測定装置における位置を推定し、
前記マップ生成部は、
時刻毎の前記移動測定装置の位置を表す位置データを取得し、
前記複数の固定通信装置のそれぞれについて、前記移動測定装置との間で通信された無線信号の時刻毎の電波強度を表す電波強度データを取得し、
前記複数の固定通信装置のそれぞれについて、時刻毎に前記位置データに含まれる位置と前記電波強度データにおける電波強度とを対応付けることにより、前記マップ情報を生成する
マップ生成システム。
【請求項2】
前記移動測定装置は、周囲を撮像するカメラを有し、
前記位置検出部は、前記カメラにより撮像された画像に基づき、前記移動測定装置における位置を推定する
請求項1に記載のマップ生成システム。
【請求項3】
前記移動測定装置は、固定の送信パワーのビーコン信号を所定期間毎に送信し、
前記複数の固定通信装置のそれぞれは、前記ビーコン信号の電波強度を検出し、前記ビーコン信号を検出した時刻と電波強度とを含む前記電波強度データを生成し、
前記マップ生成部は、前記ビーコン信号の各送信時刻における前記移動測定装置の位置を取得する
請求項1
または2に記載のマップ生成システム。
【請求項4】
移動測定装置が、複数の固定通信装置が設置された対象エリアを移動し、前記複数の固定通信装置と無線通信をし、
前記移動測定装置の外部から前記移動測定装置を撮像するカメラにより撮像された画像に基づき、前記移動測定装置の位置を
推定し、
時刻毎の前記移動測定装置の位置を表す位置データを取得し、
前記複数の固定通信装置のそれぞれについて、前記移動測定装置との間で通信された無線信号の時刻毎の電波強度を表す電波強度データを取得し、
前記複数の固定通信装置のそれぞれについて、時刻毎に前記位置データに含まれる位置と前記電波強度データにおける電波強度とを対応付けることにより、前記対象エリアにおける電波強度の分布を表すマップ情報を生成する
マップ生成方法。
【請求項5】
情報処理装置を、対象エリアに設置された複数の固定通信装置のそれぞれについて、前記対象エリアにおける電波強度の分布を表すマップ情報を生成する装置として機能させるためのプログラムであって、
移動測定装置が、前記対象エリアを移動し、前記複数の固定通信装置と無線通信をし、
前記情報処理装置を、
前記移動測定装置の外部から前記移動測定装置を撮像するカメラにより撮像された画像に基づき、前記移動測定装置の位置を推定し、
時刻毎の前記移動測定装置の位置を表す位置データを取得し、
前記複数の固定通信装置のそれぞれについて、前記移動測定装置との間で通信された無線信号の時刻毎の電波強度を表す電波強度データを取得し、
前記複数の固定通信装置のそれぞれについて、時刻毎に前記位置データに含まれる位置と前記電波強度データにおける電波強度とを対応付けることにより、前記マップ情報を生成する
ように機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マップ生成システム、マップ生成方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線IoT(Internet of Things)システムを構築する場合、無線通信装置を有するセンサデバイス等を対象エリア内に分散して設置する。しかし、一般に、対象エリア内のどこにでも無線通信装置を設置することはできず、設置可能な位置は制限される。
【0003】
また、無線IoTシステムを構築する場合、事前に、複数の無線通信装置のそれぞれの電波強度を測定しておくことも有効である。例えば、対象エリア内を移動するユーザに持ち運ばれる携帯機器から複数の無線通信装置のそれぞれへと送信される信号の電波強度を測定することにより、ユーザの位置を検出する位置検出システムが知られている。このような位置検出システムでは、複数の無線通信装置のそれぞれについて、対象エリア内の電波強度の分布を事前に測定しておくことが、ユーザの位置の検出の精度を高くするために有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-226959号公報
【文献】特開2006-308361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の無線通信装置のそれぞれについて、対象エリア内における電波強度の分布を事前に測定しておくことは、手間がかかり非常に多くの工数が発生してしまう。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数の固定通信装置のそれぞれについての電波強度の分布を表すマップ情報を簡易に生成することができるマップ生成システム、マップ生成方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るマップ生成システムは、複数の固定通信装置が設置された対象エリアを移動し、前記複数の固定通信装置と無線通信をする移動測定装置と、前記移動測定装置の位置を検出する位置検出部と、前記複数の固定通信装置のそれぞれについて、前記対象エリアにおける電波強度の分布を表すマップ情報を生成するマップ生成部と、前記移動測定装置の外部から、前記移動測定装置を撮像するカメラと、を備え、前記位置検出部は、前記カメラにより撮像された画像に基づき、前記移動測定装置における位置を推定し、前記マップ生成部は、時刻毎の前記移動測定装置の位置を表す位置データを取得し、前記複数の固定通信装置のそれぞれについて、前記移動測定装置との間で通信された無線信号の時刻毎の電波強度を表す電波強度データを取得し、前記複数の固定通信装置のそれぞれについて、時刻毎に前記位置データに含まれる位置と前記電波強度データにおける電波強度とを対応付けることにより、前記マップ情報を生成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の固定通信装置のそれぞれについて、電波強度の分布を表すマップ情報を簡易に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、複数の固定通信装置およびマップ生成システムを示す図である。
【
図2】
図2は、複数の固定通信装置、移動測定装置および生成装置のブロック構成を示す図である。
【
図4】
図4は、マップ情報の生成処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、位置検出システムのブロック構成を示す図である。
【
図7】
図7は、対象エリアを分割した複数の部分領域の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、パターン情報の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(マップ生成システム20)
実施形態に係るマップ生成システム20について説明する。マップ生成システム20は、対象エリアに分散して設置された複数の固定通信装置10のそれぞれについて、対象エリアにおける電波強度の分布を表すマップ情報を生成する。
【0011】
図1は、複数の固定通信装置10およびマップ生成システム20を示す図である。
【0012】
複数の固定通信装置10は、屋内または地下等における対象エリアにおける互いに異なる予め定められた位置に配置される無線通信装置である。すなわち、複数の固定通信装置10のそれぞれは、対象エリアに分散して設置される。なお、
図1の例では、複数の固定通信装置10のそれぞれは、部屋の天井に設置されているような記載となっているが、これに限らず、床、壁、柱および固定物上等のどのような物に設置されていてもよい。
【0013】
複数の固定通信装置10のそれぞれは、例えば、無線IoTシステムを構成するセンサデバイスに内蔵された無線通信装置である。複数の固定通信装置10のそれぞれは、例えば、Wi-Fi(登録商標)またはBluetooth(登録商標)等の無線ルータ装置であってもよい。
【0014】
例えば、複数の固定通信装置10は、互いに無線通信により接続され、メッシュネットワークを構成する。また、複数の固定通信装置10は、対象エリアを移動する移動通信機器の位置を検出するために用いられてもよい。この場合、対象エリアは、屋内または地下等であり、移動通信機器は、例えば対象エリアを移動する人またはロボット等が保持する。
【0015】
マップ生成システム20は、移動測定装置30と、生成装置40とを備える。
【0016】
マップ生成システム20は、ユーザまたは制御装置により開始指示がされた場合、または、所定のイベントが発生した場合、測定処理を開始する。測定処理において、マップ生成システム20は、移動測定装置30を対象エリア内で移動させながら、複数の固定通信装置10と移動測定装置30との間で無線通信される信号の電波強度を測定する。そして、測定処理が終了した後、マップ生成システム20は、測定処理中における電波強度の測定結果に基づき、複数の固定通信装置10のそれぞれについて、対象エリアにおける電波強度の分布を表すマップ情報を生成する。
【0017】
移動測定装置30は、複数の固定通信装置10のそれぞれと無線通信をする通信機能を有する。移動測定装置30は、測定処理中において、予め設定された固定の送信パワーで、複数の固定通信装置10のそれぞれと無線通信を行う。例えば、移動測定装置30は、測定処理中において、所定期間毎に、複数の固定通信装置10のそれぞれに、予め設定された固定の送信パワーのビーコン信号を送信する。
【0018】
また、移動測定装置30は、対象エリア内を移動するための移動機構32を有する。移動測定装置30は、測定処理中において、対象エリアを自在に移動する。移動測定装置30は、ユーザまたは他の装置からの制御を受けずに自律的に移動する。例えば、移動測定装置30は、対象エリアのほぼ全ての位置を通過するように移動する。また、例えば、移動測定装置30は、対象エリアの中をランダムに移動してもよい。なお、移動測定装置30は、ユーザまたは他の装置からの制御に従って移動してもよい。
【0019】
移動測定装置30の移動機構32は、例えば、車輪である。移動機構32は、ドローン等に用いられる飛翔機構であってもよい。
【0020】
また、移動測定装置30は、周囲を撮影するカメラ34が設けられている。移動測定装置30に設けられているカメラ34は、2次元画像を撮像してもよいし、周囲の物体までの距離を測定することができるステレオカメラであってもよい。移動測定装置30に設けられたカメラ34は、測定処理中において、筐体に対して固定された画角で、周囲を撮像する。このようなカメラ34により撮像された時系列の画像データは、対象エリア内における移動測定装置30の位置および姿勢を生成装置40に推定させることができる。
【0021】
生成装置40は、情報処理装置である。例えば、生成装置40は、一般的なコンピュータまたはサーバであってよい。また、生成装置40は、1台のコンピュータであってもよいし、クラウドシステムのように複数台のコンピュータにより構成されていてもよい。
【0022】
生成装置40は、複数の固定通信装置10および移動測定装置30から必要な情報を取得して、複数の固定通信装置10のそれぞれについてのマップ情報を生成する。生成装置40は、複数の固定通信装置10および移動測定装置30とネットワークを介して接続される。生成装置40は、対象エリアの近傍に設けられてもよいし、対象エリアから離れた場所に設けられてもよい。また、生成装置40は、移動測定装置30内に実現されてもよい。
【0023】
図2は、複数の固定通信装置10、移動測定装置30および生成装置40のブロック構成を示す図である。
【0024】
複数の固定通信装置10のそれぞれは、測定処理中において、移動測定装置30との間で、予め設定された固定の送信パワーで所定時間毎に無線通信を行う。本実施形態においては、複数の固定通信装置10のそれぞれは、移動測定装置30から固定の送信パワーで所定時間毎に送信されたビーコン信号を、受信する。
【0025】
さらに、本実施形態において、複数の固定通信装置10のそれぞれは、測定処理中において、受信したビーコン信号の電波強度を測定する。例えば、複数の固定通信装置10のそれぞれは、受信したビーコン信号のLQI(Link Quality Indicator)またはRSSI(Received Signal Strength Indication)を測定する。そして、複数の固定通信装置10のそれぞれは、受信したビーコン信号の電波強度に、ビーコン信号を受信した時刻を表す情報を付加した電波強度データを、ネットワークを介して生成装置40に送信する。
【0026】
移動測定装置30は、測定処理中において、カメラ34により周囲を撮像した時系列の画像データを、ネットワークを介して生成装置40へ送信する。さらに、移動測定装置30は、ビーコン信号を送信した時刻の画像フレームを識別する情報を付加した画像データを送信する。
【0027】
生成装置40は、画像取得部52と、位置検出部54と、強度受信部56と、マップ生成部58と、マップ記憶部60とを備える。生成装置40は、例えば所定のプログラムを実行することにより、画像取得部52、位置検出部54、強度受信部56、マップ生成部58およびマップ記憶部60として機能する。
【0028】
画像取得部52は、移動測定装置30が測定処理中に撮像した時系列の画像データを取得する。画像取得部52は、測定処理の終了後に、移動測定装置30から画像データを取得してもよいし、測定処理中にリアルタイムで移動測定装置30から画像データを取得してもよい。
【0029】
位置検出部54は、移動測定装置30が複数の固定通信装置10と無線通信をした各時刻における、移動測定装置30の対象エリア内における位置を検出する。例えば、位置検出部54は、時系列の画像データを解析して、移動測定装置30がビーコン信号を送信した時刻における、移動測定装置30の位置を推定する。
【0030】
位置検出部54は、移動測定装置30の移動中における、時刻毎の移動測定装置30の位置を表す位置データを生成する。本実施形態においては、位置検出部54は、移動測定装置30がビーコン信号を送信した各時刻における、移動測定装置30の位置を表す位置データを生成する。そして、位置検出部54は、生成した位置データをマップ生成部58に与える。
【0031】
なお、位置検出部54は、移動測定装置30に設けられたカメラ34により撮像された画像データに基づき移動測定装置30の位置を検出する方法以外により、位置データを生成してもよい。例えば、位置検出部54は、移動測定装置30を、移動測定装置30の外部から撮像した画像データに基づいて、移動測定装置30の位置を検出してもよい。
【0032】
この場合、移動測定装置30は、発光部を備え、ビーコン信号を送信したタイミングにおいて、発光部を発光させてもよい。これにより、位置検出部54は、移動測定装置30の外部から撮像した画像データを解析することにより、移動測定装置30によるビーコン信号の送信時刻を検出し、ビーコン信号を送信した各時刻における移動測定装置30の位置を推定することができる。
【0033】
また、位置検出部54は、移動測定装置30に設けられた他の種類のセンサによる検出結果をさらに加えて、移動測定装置30の位置を検出してもよい。例えば、位置検出部54は、移動測定装置30に設けられたジャイロセンサおよび車輪に設けられた速度センサ等を用いて、移動測定装置30の位置を検出してもよい。
【0034】
強度受信部56は、複数の固定通信装置10のそれぞれから、移動測定装置30との間で通信された無線信号の時刻毎の電波強度を表す電波強度データをネットワークを介して受信する。本実施形態において、強度受信部56は、ビーコン信号を受信した時刻毎に、受信したビーコン信号の電波強度を表す電波強度データを受信する。強度受信部56は、測定処理の終了後に、電波強度データを受信してもよいし、測定処理中にリアルタイムで電波強度データを取得してもよい。
【0035】
なお、強度受信部56は、移動測定装置30が受信した信号の電波強度を表す電波強度データを、移動測定装置30から受信する構成であってもよい。この場合、複数の固定通信装置10のそれぞれは、互いに異なるタイミングで、固定の送信パワーのビーコン信号を送信する。また、移動測定装置30は、ビーコン信号を受信した場合、ビーコン信号に含まれる装置識別情報に基づき、そのビーコン信号を送信した固定通信装置10を特定する。そして、移動測定装置30は、複数の固定通信装置10のそれぞれについて、ビーコン信号を受信した時刻毎に受信したビーコン信号の電波強度を表す電波強度データを生成する。
【0036】
マップ生成部58は、位置検出部54から、位置データを取得する。また、マップ生成部58は、強度受信部56から、複数の固定通信装置10のそれぞれについての電波強度データを取得する。
【0037】
そして、マップ生成部58は、複数の固定通信装置10のそれぞれについて、時刻毎に位置データに含まれる位置と電波強度データにおける電波強度とを対応付けることにより、マップ情報を生成する。
【0038】
例えば、マップ生成部58は、時刻毎に位置データに含まれる位置と電波強度データにおける電波強度とを対応付けることにより、複数の位置のそれぞれに対して対応する電波強度の値を格納したテーブルデータを生成する。そして、例えば、マップ生成部58は、対象エリアを表す2次元画像における各画素に、テーブルデータにおける対応する位置に格納された電波強度の値を割り当てる。これにより、マップ生成部58は、複数の固定通信装置10のそれぞれについて、マップ情報を生成することができる。
【0039】
マップ記憶部60は、マップ生成部58により生成された複数の固定通信装置10のそれぞれについてのマップ情報を記憶する。
【0040】
図3は、マップ情報の一例を示す図である。マップ生成部58は、1つの固定通信装置10に対して、
図3に示すようなマップ情報を生成する。例えば、マップ生成部58は、対象エリアを複数の部分領域に分割し、部分領域毎に電波強度を表すマップ情報を生成する。また、マップ生成部58は、電波強度を所定の段階数に量子化し、複数の部分領域のそれぞれについて量子化した電波強度を表すマップ情報を生成してもよい。
【0041】
そして、マップ記憶部60は、
図3に示すようなマップ情報を、複数の固定通信装置10のそれぞれについて記憶する。
【0042】
図4は、マップ情報の生成処理の流れを示すフローチャートである。例えば、マップ生成システム20は、
図4に示すような流れでマップ情報を生成する。
【0043】
まず、S11において、ユーザは、対象エリアにN個(Nは2以上の整数)の固定通信装置10を設置し、移動測定装置30およびN個の固定通信装置10に対して通信の開始を指示する。
【0044】
続いて、S12において、移動測定装置30は、測定処理を開始する。測定処理を開始した場合、移動測定装置30は、対象エリアのほぼ全ての位置を通過するように、自律的な移動を開始する。さらに、移動測定装置30は、所定期間毎に、複数の固定通信装置10のそれぞれに、送信パワーを固定したビーコン信号を送信する。例えば、移動測定装置30は、数秒毎に、複数の固定通信装置10のそれぞれにビーコン信号を送信する。
【0045】
続いて、S13において、移動測定装置30は、周囲の撮像を開始し、撮像して得られた画像データを記録する。この場合において、移動測定装置30は、ビーコン信号を送信した時刻を表す情報を画像データに付加して記録する。なお、マップ生成システム20は、移動測定装置30の外部に設けられた外部カメラを備え、この外部カメラにより移動測定装置30を撮像する構成であってもよい。この場合、移動測定装置30は、ビーコン信号を送信したタイミングにおいて、発光部を発光させる。生成装置40は、移動測定装置30の外部に設けられた外部カメラにより撮像された画像データを解析することにより、ビーコン信号を送信した時刻を特定することができる。
【0046】
続いて、S14において、複数の固定通信装置10のそれぞれは、移動測定装置30から送信されたビーコン信号の電波強度の検出を開始する。そして、複数の固定通信装置10のそれぞれは、ビーコン信号を受信した時刻およびビーコン信号の電波強度の記録を開始する。
【0047】
所定時間経過後、S15において、移動測定装置30は、測定処理を終了する。測定処理を終了した場合、移動測定装置30は、移動を終了する。さらに、移動測定装置30は、ビーコン信号の送信を終了する。
【0048】
続いて、S16において、移動測定装置30は、撮像を終了する。続いて、S17において、複数の固定通信装置10のそれぞれは、ビーコン信号の電波強度の検出および記録を終了する。
【0049】
続いて、S18において、生成装置40は、測定処理中における、時刻毎の移動測定装置30の位置を表す位置データを取得する。さらに、生成装置40は、複数の固定通信装置10のそれぞれについて、測定処理中における、移動測定装置30との間で通信された無線信号の時刻毎の電波強度を表す電波強度データを取得する。
【0050】
続いて、S19において、生成装置40は、N個の固定通信装置10のそれぞれについて、時刻毎に、位置データに含まれる位置と電波強度データにおける電波強度とを対応付ける。そして、生成装置40は、複数の固定通信装置10のそれぞれについて、複数の位置のそれぞれに対応付けた電波強度に基づきマップ情報を生成する。
【0051】
以上のように、マップ生成システム20は、対象エリア内を移動する移動測定装置30を用いて電波強度の分布を表すマップ情報を生成する。このような、マップ生成システム20によれば、複数の固定通信装置10のそれぞれのマップ情報を簡易に生成することができる。
【0052】
(位置検出システム70)
つぎに、以上のようなマップ生成システム20により生成されたマップ情報を利用する位置検出システム70を説明する。位置検出システム70は、対象エリアを移動する移動通信装置72の位置を検出する。
【0053】
図5は、位置検出システム70を示す図である。位置検出システム70は、複数の固定通信装置10と、移動通信装置72と、算出装置74とを備える。
【0054】
複数の固定通信装置10のそれぞれは、マップ生成システム20により、マップ情報が生成された無線通信装置である。
【0055】
移動通信装置72は、使用者等により持ち運ばれる情報処理端末である。移動通信装置72は、通信機能、入力機能および出力機能(音声出力および画像表示等)を有する。移動通信装置72は、例えば、ノート型のコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話機または専用の情報端末等のどのような装置であってもよい。
【0056】
算出装置74は、情報処理装置である。例えば、算出装置74は、一般的なコンピュータまたはサーバであってよい。また、算出装置74は、1台のコンピュータであってもよいし、クラウドシステムのように複数台のコンピュータにより構成されていてもよい。算出装置74は、マップ生成システム20の生成装置40として機能する情報処理装置に実現されてもよい。
【0057】
算出装置74は、移動通信装置72または複数の固定通信装置10とネットワークを介して接続され、移動通信装置72または複数の固定通信装置10から必要な情報を取得して、移動通信装置72の位置を算出する。算出装置74は、対象エリアの近傍に設けられてもよいし、対象エリアから離れた場所に設けられてもよい。また、算出装置74は、移動通信装置72内に実現されてもよい。
【0058】
使用者は、移動通信装置72を保持して、対象エリア内を移動する。位置検出システム70は、対象エリア内における移動通信装置72の位置を検出し、検出した位置を例えば移動通信装置72の表示部等に表示する。これにより、使用者は、対象エリア内における自身の位置を認識することができる。
【0059】
図6は、位置検出システム70のブロック構成を示す図である。
図7は、対象エリアを分割した複数の部分領域の一例を示す図である。
図8は、パターン情報の一例を示す図である。
【0060】
算出装置74は、ネットワークを介して複数の固定通信装置10と接続される。算出装置74は、パターン生成部82と、パターン記憶部84と、収集部86と、位置算出部88とを有する。
【0061】
パターン生成部82は、位置検出の開始に先立って、マップ生成システム20により生成された複数の固定通信装置10のそれぞれについてのマップ情報を取得する。例えば、パターン生成部82は、マップ記憶部60から、複数の固定通信装置10のそれぞれについてのマップ情報を読み出す。
【0062】
パターン生成部82は、取得したマップ情報に基づき、複数の部分領域のそれぞれに対応する電界強度を表すパターン情報を生成する。
【0063】
位置検出システム70は、対象領域を複数の部分領域に分割して管理している。位置検出システム70は、例えば
図7に示すように、対象領域を複数の部分領域に分割している。
【0064】
パターン情報は、
図8に示すような、複数の部分領域のそれぞれについて、N個の固定通信装置10のそれぞれと移動通信装置72とが無線通信をした場合の、受信点における電波強度パターンを表す。なお、
図8の例では、電波強度パターンは、所定単位で量子化した電波強度を表す。パターン生成部82は、複数の固定通信装置10のそれぞれのマップ情報を解析することにより、
図8に示すようなパターン情報を生成する。
【0065】
パターン記憶部84は、パターン生成部82により生成されたパターン情報を記憶する。パターン記憶部84は、位置検出の開始に先立ってパターン情報を取得して記憶する。
【0066】
収集部86は、複数の固定通信装置10と移動通信装置72との間で無線通信された、複数の基準信号の受信点における電波強度を収集する。本実施形態においては、移動通信装置72が固定の送信パワーの基準信号を送信し、複数の固定通信装置10のそれぞれが基準信号を受信する。この場合、収集部86は、複数の固定通信装置10が受信した複数の基準信号の電波強度を取得する。
【0067】
なお、複数の固定通信装置10のそれぞれが固定の送信パワーの基準信号を送信し、移動通信装置72が複数の基準信号を受信してもよい。この場合、複数の固定通信装置10は、送信した基準信号が干渉しないように、例えば互いに時間をずらして基準信号を送信する。また、この場合、収集部86は、移動通信装置72が受信した複数の基準信号の電波強度を取得する。
【0068】
位置算出部88は、収集部86により収集された、複数の固定通信装置10と移動通信装置72との間で無線通信された、複数の基準信号の受信点における電波強度を取得する。そして、位置算出部88は、パターン記憶部84に記憶された複数の電波強度パターンの中から、複数の固定通信装置10と移動通信装置72との間で無線通信された複数の基準信号の受信点における電波強度を表す測定パターンに最も近い電波強度パターンを選択する。
【0069】
例えば、移動通信装置72が基準信号を送信し、複数の固定通信装置10のそれぞれが基準信号を受信する場合には、位置算出部88は、複数の固定通信装置10が受信した複数の基準信号の電波強度を表す測定パターンと、複数の電波強度パターンのそれぞれとを比較して、1つの電波強度パターンを選択する。また、複数の固定通信装置10のそれぞれが基準信号を送信し、移動通信装置72が複数の基準信号を受信する場合、移動通信装置72が受信した複数の基準信号の電波強度を表す測定パターンと、複数の電波強度パターンのそれぞれとを比較して、1つの電波強度パターンを選択する。
【0070】
位置算出部88は、マップ情報に基づき、選択した電波強度パターンに対応する部分領域を特定する。そして、位置算出部88は、特定した部分領域を、移動通信装置72の位置として出力する。
【0071】
なお、さらに、位置算出部88は、複数の固定通信装置10の中から、特定した部分領域を囲むような3以上の固定通信装置10を選択してもよい。そして、位置算出部88は、選択した3以上の固定通信装置10のそれぞれの位置と、選択した3以上の固定通信装置10と移動通信装置72との間で無線通信された3以上の基準信号の受信点における電波強度とに基づき、移動通信装置72のさらに詳細な位置を算出してもよい。例えば、位置算出部88は、三点測位法等により移動通信装置72の位置を算出してもよい。
【0072】
以上のように、位置検出システム70は、移動通信装置72の位置を算出することができる。
【0073】
(生成装置40のハードウェア構成)
図9は、生成装置40のハードウェア構成の一例を示す図である。生成装置40は、例えば
図9に示すような構成により実現することができる。
【0074】
生成装置40は、通常のコンピュータと同様の構成をしている。すなわち、生成装置40は、CPU201(Central Processing Unit)と、ROM202(Read Only Memory)と、RAM203(Random Access Memory)、と、記憶装置204とを有する。CPU201、ROM202、RAM203および記憶装置204は、バスにより接続されている。
【0075】
CPU201は、記憶装置204に記憶されたプログラムをRAM203に展開して実行し、各部を制御して入出力を行ったり、データの加工を行ったりする。ROM202には、OSの起動用プログラムを記憶装置204からRAM203に読み出すスタートプログラムが記憶されている。RAM203は、CPU201の作業領域としてデータを記憶する。
【0076】
記憶装置204は、例えば、ハードディスクドライブまたはフラッシュメモリ等である。記憶装置204は、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラムおよびデータを記憶している。これらのプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルで、コンピュータで読み取り可能な記録メディアに記録して配布されてもよい。また、プログラムは、サーバからダウンロードすることにより配布されてもよい。
【0077】
本実施形態の生成装置40で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。また、本実施形態の生成装置40で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態の生成装置40で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、本実施形態のプログラムを、ROM202等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0078】
生成装置40により実行されるプログラムは、画像取得モジュールと、位置検出モジュールと、強度受信モジュールと、マップ生成モジュールとを含む。
【0079】
生成装置40は、プロセッサ(CPU201)が記憶媒体(記憶装置204等)からプログラムを読み出して実行することにより各モジュールが主記憶装置(RAM203)上にロードされ、プロセッサ(CPU201)が、画像取得部52、位置検出部54、強度受信部56およびマップ生成部58として機能する。また、記憶装置204は、マップ記憶部60として機能する。なお、生成装置40は、画像取得部52、位置検出部54、強度受信部56およびマップ生成部58の一部または全部がハードウェアにより実現されていてもよい。
【0080】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0081】
10 固定通信装置
20 マップ生成システム
30 移動測定装置
32 移動機構
34 カメラ
40 生成装置
52 画像取得部
54 位置検出部
56 強度受信部
58 マップ生成部
60 マップ記憶部
70 位置検出システム
72 移動通信装置
74 算出装置
82 パターン生成部
84 パターン記憶部
86 収集部
88 位置算出部