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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】蛍光色素及びその利用
(51)【国際特許分類】
   C09B 11/14 20060101AFI20240501BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240501BHJP
   C09B 11/22 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
C09B11/14
G01N21/64 F
G01N21/64 E
C09B11/22
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020016297
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021123624
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】原 大貴
(72)【発明者】
【氏名】元木 貴史
(72)【発明者】
【氏名】数田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】乗嶺 吉彦
(72)【発明者】
【氏名】網野 宏行
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 政俊
(72)【発明者】
【氏名】藤山 真吾
(72)【発明者】
【氏名】山下 和人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌也
(72)【発明者】
【氏名】西川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】岩永 茂樹
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-536500(JP,A)
【文献】国際公開第2013/029650(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/231617(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00-69/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)で示される化合物もしくはその互変異性体、又はその塩からなる蛍光色素:
【化1】

(式中、
Aは、置換基を有していてもよいSiを含むC4~C7の複素環を示し、
Xは、ヒドロキシ又は-NR12を示し、
1は、=O又は=N+3を示し、
1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、H、置換基を有していてもよいC1~C6のアルキル、又は置換基を有していてもよいC1~C6のヘテロアルキルを示し、R1とR2、R3とR4、R1とR5、及びR3とR6の組み合わせの少なくとも一つは、それらが結合するNと一緒になって、置換基を有していてもよいNを含む複素環を形成していてもよく、
7、R8、R9、R10及びR11は、独立して、H、ハロゲン、置換基を有していてもよいC1~C6のアルキル、置換基を有していてもよいC1~C6のアルコキシ、置換基を有していてもよいC1~C6のアルキルチオ、置換基を有していてもよいアミノ、置換基を有していてもよいアリール、置換基を有していてもよいヘテロアリール、-CO2H、-CO2 -、-SO3H、-SO3 -、及び-L-Rからなる群から選択され;
Lは、1~16個の非水素原子を有する、直鎖、分岐鎖、環又はこれらの任意の組み合わせ構造の2価のリンカーであり、ここで、リンカー中に1以上のヘテロ原子が存在する場合、当該ヘテロ原子はエステル、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、カルボニルからなる群から独立して選択される1以上の基として含まれ;
Rは反応基であり;及び
7、R8、R9、R10及びR11のうち隣り合う2つの基の1以上の組み合わせは共に環を形成していてもよい;
ただし、R1とR5、及びR3とR6の組み合わせの少なくとも一つが、それらが結合するNと一緒になって、置換基を有していてもよいNを含む複素環を形成し、かつR2及びR4が置換基を有していてもよいC1~C6のアルキルである化合物及びその互変異性体並びにその塩を除く。)
であって、
前記式(I)で示される化合物は、以下の式(III)及び(IV)のそれぞれで示される化合物ではない、蛍光色素。
【化2】
【請求項2】
Xは-NR12であり、Y1は=N+34である、請求項1に記載の蛍光色素。
【請求項3】
1、R2、R3及びR4は、独立して、置換基を有していてもよいC1~C6のアルキル又は置換基を有していてもよいC1~C6のOを含むヘテロアルキルである、請求項2に記載の蛍光色素。
【請求項4】
1とR2、及びR3とR4の組み合わせはいずれも、それらが結合するNと一緒になって、置換基を有していてもよいNを含む複素環を形成する、請求項3に記載の蛍光色素。
【請求項5】
Xはヒドロキシであり、Y1は=Oである、請求項1に記載の蛍光色素。
【請求項6】
Aは、ハロゲン、C1~C6のアルキル、C1~C6のハロアルキル、C1~C6のアルコキシ、C1~C6のアルキルチオ、アミノ、アリール、ヘテロアリール、-CO2H及び-SO3Hから独立して選択される1以上の置換基により置換されていてもよいSiを含むC4~C7の複素環である、請求項1~5のいずれか一項に記載の蛍光色素。
【請求項7】
Aは、
【化3】

である、請求項1~6のいずれか一項に記載の蛍光色素。
【請求項8】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11において、
置換基を有していてもよいC1~C6のアルキル、置換基を有していてもよいC1~C6のヘテロアルキル、置換基を有していてもよいC1~C6のアルコキシ、及び置換基を有していてもよいC1~C6のアルキルチオの置換基は、いずれも、独立して、ハロゲン、C1~C6のアルコキシ、C1~C6のアルキルチオ、アミノ、アリール、ヘテロアリール、-CO2H及び-SO3Hから選択され、
置換基を有していてもよいアミノ、置換基を有していてもよいNを含む複素環、置換基を有していてもよいアリール、及び置換基を有していてもよいヘテロアリールの置換基は、いずれも、独立して、ハロゲン、C1~C6のアルキル、C1~C6のヒドロキシアルキル、C1~C6のアルコキシ、C1~C6のアルキルチオ、アミノ、アリール、ヘテロアリール、-CO2H及び-SO3Hから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の蛍光色素。
【請求項9】
8及びR11はHである、請求項1~8のいずれか一項に記載の蛍光色素。
【請求項10】
7は-CO2 -であり、互変異性体が以下の式(II)で示される化合物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の蛍光色素。
【化4】

(式中、
2は、ヒドロキシ又は-NR34であり;及び
A、X、R5、R6及びR8~R11の定義は式(I)と同じである。)
【請求項11】
Rが、ヒドロキシ、カルボキシル、スルホン酸、不飽和イミド、不飽和アミド、不飽和エステル、カルボン酸の活性化エステル、アミン、アルコール、ニトリル、メルカプタン、ボロナート、ホスホラミダイト、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化スルホニル、アルファ位にハロゲンを有するアミド又はエステル、イソシアナート、イソチオシアナート、アジド、アルデヒド、アシルニトリル、及び光活性化可能な基から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の蛍光色素。
【請求項12】
-L-Rが、-CONH-L’-Rであり、ここで、L’は1~13個の非水素原子を有する、直鎖、分岐鎖、環又はこれらの任意の組み合わせ構造の2価のリンカーであり、ここで、リンカー中に1つ以上のヘテロ原子が存在する場合、当該ヘテロ原子はエステル、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、及びカルボニルからなる群から独立して選択される1つ以上の基として含まれている、請求項1~11のいずれか一項に記載の蛍光色素。
【請求項13】
9及びR10のいずれか1つが、
【化5】

である、請求項12に記載の蛍光色素。
【請求項14】
以下から選択される化合物もしくはその互変異性体、又はその塩からなる蛍光色素。
【化6】

【化7】
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の蛍光色素と複合化物質が結合した標識複合化物質。
【請求項16】
複合化物質がタンパク質又は核酸である請求項15に記載の標識複合化物質。
【請求項17】
請求項1~14のいずれかに記載の蛍光色素、又は請求項15もしくは16に記載の標識複合化物質を含む、組成物。
【請求項18】
超解像顕微鏡法に用いられる試薬組成物である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記超解像顕微鏡法が局在化顕微鏡法である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1~14のいずれかに記載の蛍光色素、又は請求項15もしくは16に記載の標識複合化物質を被検物質と結合させ、超解像顕微鏡法により前記被検物質に関する情報を取得する方法。
【請求項21】
前記被検物質に関する情報が、前記被検物質の構造に関する情報である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記被検物質の構造に関する情報が、前記被検物質の大きさ、形態及び凝集度から選択される少なくとも1つの情報である、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光色素に関する。本発明は、蛍光色素と複合化物質が結合した標識複合化物質に関する。本発明は、蛍光色素又は標識複合化物質を含む組成物に関する。本発明は、超解像顕微鏡法により被検物質に関する情報を取得する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞や生体分子を蛍光顕微鏡やフローサイトメトリーで検出するため、蛍光色素が広く用いられている。蛍光色素としては、例えば特許文献1に示されるような、ローダミン類の基本骨格におけるキサンテン環の酸素原子がケイ素原子に置換された骨格(以下、Siローダミン骨格ともいう)を有する化合物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】中国特許出願公告第100361999号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な蛍光色素、標識複合化物質、組成物及び被検物質に関する情報の取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ローダミン類においては、キサンテン環部位の9位の炭素原子をスピロ原子とする分子内スピロ環が形成された状態(閉環体)と、該スピロ環が開裂された状態(開環体)とが平衡にあることが知られている。開環体のローダミン類は吸収及び蛍光を示すが、閉環体のローダミン類は無色且つ無蛍光である。このことは、Siローダミン骨格を有する蛍光色素についても同様である。本発明者らは、Siローダミン骨格を有する蛍光色素における分子内スピロ環の可逆的な形成及び開裂反応に着目して、新規な蛍光色素の作製を試みた。その結果、本発明者らは、Siローダミン骨格を有する蛍光色素において、Si原子をスピロ原子とするスピロ環構造を付与することにより、本発明を完成した。
【0006】
本発明は、以下の式(I)で示される化合物もしくはその互変異性体、又はその塩からなる蛍光色素を提供する。
【化1】
【0007】
式中、
Aは、置換基を有していてもよいSiを含むC4~C7の複素環を示し、
Xは、ヒドロキシ又は-NR12を示し、
1は、=O又は=N+34を示し、
1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、H、置換基を有していてもよいC1~C6のアルキル、又は置換基を有していてもよいC1~C6のヘテロアルキルを示し、R1とR2、R3とR4、R1とR5、及びR3とR6の組み合わせの少なくとも一つは、それらが結合するNと一緒になって、置換基を有していてもよいNを含む複素環を形成していてもよく、
7、R8、R9、R10及びR11は、独立して、H、ハロゲン、置換基を有していてもよいC1~C6のアルキル、置換基を有していてもよいC1~C6のアルコキシ、置換基を有していてもよいC1~C6のアルキルチオ、置換基を有していてもよいアミノ、置換基を有していてもよいアリール、置換基を有していてもよいヘテロアリール、-CO2H、-CO2 -、-SO3H、-SO3 -、及び-L-Rからなる群から選択され;
Lは、1~16個の非水素原子を有する、直鎖、分岐鎖、環又はこれらの任意の組み合わせ構造の2価のリンカーであり、ここで、リンカー中に1以上のヘテロ原子が存在する場合、当該ヘテロ原子はエステル、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、カルボニルからなる群から独立して選択される1以上の基として含まれ;
Rは反応基であり;及び
7、R8、R9、R10及びR11のうち隣り合う2つの基の1以上の組み合わせは共に環を形成していてもよい;
ただし、R1とR5、及びR3とR6の組み合わせの少なくとも一つが、それらが結合するNと一緒になって、置換基を有していてもよいNを含む複素環を形成し、かつR2及びR4が置換基を有していてもよいC1~C6のアルキルである化合物及びその互変異性体並びにその塩を除く。
【0008】
本発明は、上記の蛍光色素と複合化物質が結合した標識複合化物質を提供する。本発明は、上記の蛍光色素又は標識複合化物質を含む組成物を提供する。本発明は、上記の蛍光色素又は標識複合化物質を被検物質と結合させ、超解像顕微鏡法により該被検物質に関する情報を取得する方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新規な蛍光色素、標識複合化物質、組成物及び被検物質に関する情報の取得方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例19の蛍光色素の開環体及び閉環体の構造式である。
図2】実施例1、7、8、10、17、19、23、33及び36の蛍光色素及びこれらの比較例の蛍光色素における9位炭素のマリケン電荷を示すグラフである。
図3】実施例19の比較例である化合物A及び実施例1の比較例である化合物Bの構造式である。
図4】実施例19の蛍光色素、化合物A、実施例1の蛍光色素及び化合物Bのデューティサイクルを示すグラフである。
図5】実施例1~36の蛍光色素のデューティサイクルを示す表である。
図6】aは、抗チューブリン抗体(一次抗体)を加えず、実施例7の蛍光色素で標識した抗マウスIgG抗体(二次抗体)のみを用いて免疫染色した細胞の透過光像である。bは、aと同一視野における蛍光像である。a及びbにおいて、細胞の輪郭を点線で示した。cは、一次抗体及び二次抗体を用いて免疫染色した細胞の蛍光像である。dは、cと同一視野における超解像画像である。c及びdの各画像の左上部分にある短い線は、染色された微小管の画像のラインプロファイルを解析した部位を示す。eは、c及びdの各画像について解析したラインプロファイルと半値幅を示す。
図7】fは、抗チューブリン抗体(一次抗体)を加えず、実施例36の蛍光色素で標識した抗マウスIgG抗体(二次抗体)のみを用いて免疫染色した細胞の透過光像である。gは、fと同一視野における蛍光像である。f及びgにおいて、細胞の輪郭を点線で示した。hは、一次抗体及び二次抗体を用いて免疫染色した細胞の蛍光像である。iは、hと同一視野における超解像画像である。h及びiの各画像の左上部分にある短い線は、染色された微小管の画像のラインプロファイルを解析した部位を示す。jは、h及びiの各画像について解析したラインプロファイルと半値幅を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[略号及び用語]
本明細書で使用される略号は、当業者に周知の慣用的な略号である。本明細書では、下記の略号を使用する。
(A-taPhos)2PdCl2:ビス[ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン]ジクロロパラジウム(II)
1H-NMR:プロトン核磁気共鳴スペクトルメトリー
Bn:ベンジル
Boc:tert-ブトキシカルボニル
Bu:ブチル
DAST:三フッ化N,N-ジエチルアミノ硫黄
DCM:ジクロロメタン
DDQ:2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMAP:N,N-ジメチル-4-アミノピリジン
DME:ジメトキシエタン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
LC-MS:液体クロマトグラフィー-マススペクトルメトリー
MS:マススペクトルメトリー
m-:メタ
n-:ノルマル
NBS:N-ブロモスクシンイミド
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
o-:オルト
p-:パラ
PPTS:ピリジニウムパラトルエンスルホナート
PyBOP:ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム
sec:セカンダリー
t-:ターシャリー
tert:ターシャリー
TBAF:フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム
TBS:ターシャリーブチルジメチルシリル
TEA:トリエチルアミン
Tf:トリフルオロメチルスルホニル
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
XPhos:2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル
【0012】
用語「アルキル」とは、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖である1価の基をいう。本実施形態の蛍光色素では、アルキルは、1~6個の炭素原子を有する。本明細書では、1~6個の炭素原子を有するアルキルを「C1~C6のアルキル」という。C1~C6のアルキルとしては、例えばメチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-メチル-1-プロピル、2-ブチル、2-メチル-2-プロピル(t-ブチル)、1-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-メチル-2-ブチル、3-メチル-2-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-1-ブチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、3,3-ジメチル‐2‐ブチル及びヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
用語「シクロアルキル」とは、3~10個の炭素原子の飽和環式炭化水素基をいう。シクロアルキルとしては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどの単一環構造、又はアダマンタニル、デカヒドロナフチルなどの多環構造が含まれる。
【0014】
用語「ヘテロアルキル」とは、酸素、窒素及び硫黄から選択されるヘテロ原子により上記アルキルにおける結合端以外の1つ以上の炭素原子が置換された基をいう。用語「アルコキシ」とは、アルキル-O-基をいう。用語「アルキルチオ」とは、アルキル-S-基をいう。アルキルの定義は上記のとおりである。「ヒドロキシアルキル」とは、少なくとも1個、例えば、1~3個のヒドロキシにより置換されたアルキル基をいう。
【0015】
用語「アリール」とは、1つ以上の閉じた環を有し、その1つ又は複数の環は、独立して、縮合及び/又は架橋したものであり得る、芳香族炭素環式基をいう。例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントラセニル、ビフェニル、及びピレニルが挙げられるが、これらに限定されない。「ヘテロアリール」とは、環のうちの少なくとも1つに、酸素、窒素及び硫黄から選択される1つ以上のヘテロ原子を含み、それらの環のうちの少なくとも1つは芳香族であり、その1つ又は複数の環は、独立して、縮合及び/又は架橋したものであり得る、1つ以上の閉じた環を有する環状基をいう。例えば、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、フリル、チエニル、ピラゾリル、キノキサリニル、ピロリル、インダゾリル、チエノ[2,3-c]ピラゾリル、ベンゾフリル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジル、チオフェニルピラゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、チアゾリル、2-フェニルチアゾリル、イソオキサゾリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
用語「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素をいう。用語「ハロアルキル」とは、本明細書において規定される1つ以上のハロゲンで置換された本明細書で定義されるアルキルを指す。ハロアルキルにおいて、1つ以上のハロゲンは同じであってもよいし、異なってもよい。
【0017】
用語「アミノ」とは、-NH2基をいう。
【0018】
用語「複素環」とは、1つ以上のヘテロ原子を含む、飽和又は部分的に不飽和の環系をいう。複素環は、単環式、二環式又は三環式基であってもよい。複素環は、環に結合したオキソ基(=O)又はチオキソ基(=S)も含むことができる。本明細書では、式(I)中の複素環としてのAについて言及する場合、「複素環A」又は単に「A」と記載する。
【0019】
用語「反応基」は、本実施形態の蛍光色素で標識しようとする所定の物質に対して反応性を有する官能基をいう。本実施形態の蛍光色素における反応基Rとしては、例えば、ヒドロキシ、カルボキシル、スルホン酸、不飽和イミド、不飽和アミド、不飽和エステル、カルボン酸の活性化エステル、アミン、アルコール、ニトリル、メルカプタン、ボロナート、ホスホラミダイト、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化スルホニル、アルファ位にハロゲンを有するアミド又はエステル、イソシアナート、イソチオシアナート、アジド、アルデヒド、アシルニトリル、光活性化可能な基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書に記載の化合物において、置換基が2以上存在する場合、各置換基の定義は、他の置換基の定義とは独立である。置換基の種類及び置換基の数の組み合わせは、そのような組み合わせが化学的に安定な化合物をもたらす場合にのみ許容される。
【0021】
[1.蛍光色素]
本発明者らは、Siローダミン骨格を有する蛍光色素において、Si原子をスピロ原子とするスピロ環構造を付与すると、当該蛍光色素のデューティサイクル(duty cycle)が低下することを見出した。デューティサイクルとは、実験例2で述べるように、蛍光色素の明滅持続時間に対する発光時間の合計の比率をいう。デューティサイクルが小さいと、蛍光色素はより散発的に発光するので、当該蛍光色素の1分子発光を検出しやすくなる。よって、デューティサイクルの小さい蛍光色素は、超解像顕微鏡法に適している。本発明者らは、このようなSiローダミン骨格を有する蛍光色素のデューティサイクルを低下させる技術により、上記の式(I)で示される化合物もしくはその互変異性体、又はその塩からなる本実施形態の蛍光色素を得た。
【0022】
さらなる実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11において、置換基を有していてもよいC1~C6のアルキル、置換基を有していてもよいC1~C6のヘテロアルキル、置換基を有していてもよいC1~C6のアルコキシ、及び置換基を有していてもよいC1~C6のアルキルチオの置換基は、いずれも、独立して、ハロゲン、C1~C6のアルコキシ、C1~C6のアルキルチオ、アミノ、アリール、ヘテロアリール、-CO2H及び-SO3Hから選択されてもよい。また、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11において、置換基を有していてもよいアミノ、置換基を有していてもよいNを含む複素環、置換基を有していてもよいアリール、及び置換基を有していてもよいヘテロアリールの置換基は、いずれも、独立して、ハロゲン、C1~C6のアルキル、C1~C6のヒドロキシアルキル、C1~C6のアルコキシ、C1~C6のアルキルチオ、アミノ、アリール、ヘテロアリール、-CO2H及び-SO3Hから選択されてもよい。
【0023】
さらなる実施形態では、式(I)において、Xは-NR12であり、Y1は=N+34である。この場合、式(I)において、R1、R2、R3及びR4は、独立して、置換基を有していてもよいC1~C6のアルキル又は置換基を有していてもよいC1~C6のOを含むヘテロアルキルであることが好ましい。ここで、式(I)中、R1とR2、及びR3とR4の組み合わせはいずれも、それらが結合するNと一緒になって、置換基を有していてもよいNを含む複素環を形成してもよい。かかるNを含む複素環としては、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、オキサゼパン環が挙げられる。さらに、R1とR2、及びR3とR4は2か所以上で連結していてもよく、その場合Nを含む複素環は架橋環を形成する。かかる架橋環としては、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン環等が挙げられる。ある実施形態において、R1、R2、R3及びR4における置換基は、それぞれ、無置換、又はハロゲン若しくはC1~C6のアルコキシ置換である。
【0024】
さらなる実施形態では、式(I)において、Xはヒドロキシであり、Y1は=Oである。
【0025】
本実施形態では、複素環Aは、置換基を有していてもよい、ヘテロ原子としてSi原子を含み、4~7個の炭素原子を有する複素環である。本明細書では、4~7個の炭素原子を有する複素環を「C4~C7の複素環」という。複素環Aは、環にSi原子以外のヘテロ原子(例えば酸素、窒素、硫黄)をさらに含んでもよい。例えば、複素環Aは、ハロゲン、C1~C6のアルキル、C1~C6のハロアルキル、C1~C6のアルコキシ、C1~C6のアルキルチオ、アミノ、アリール、ヘテロアリール、-CO2H及び-SO3Hから独立して選択される1以上の置換基により置換されていてもよい。複素環Aは単環式であることが好ましく、例えば以下の環が挙げられるが、これらに限定されない。以下に示される環は、置換基を有していてもよい。
【0026】
【化2】
【0027】
ある実施形態では、複素環Aは、以下に示されるC4又はC5の複素環である。以下に示される環は、置換基を有していてもよい。
【化3】
【0028】
別の実施形態では、複素環Aは、無置換である。
【0029】
さらなる実施形態では、式(I)において、R8及びR11はHである。
【0030】
さらなる実施形態では、式(I)において、R7は-CO2 -である。この場合、式(I)の化合物の互変異性体は、以下の式(II)で示される化合物である。式(II)中、Y2は、ヒドロキシ又は-NR34であり、A、X、R5、R6及びR8~R11の定義は式(I)と同じである。
【0031】
【化4】
【0032】
本実施形態では、Lは、飽和又は部分的に不飽和であってもよい。さらなる実施形態では、-L-Rは、-CONH-L’-Rである。L’は、1~13個の非水素原子を有する、直鎖、分岐鎖、環又はこれらの任意の組み合わせ構造の2価のリンカーである。ここで、リンカー中に1つ以上のヘテロ原子が存在する場合、当該ヘテロ原子は、エステル、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、及びカルボニルからなる群から独立して選択される1つ以上の基として含まれている。L及びL’におけるアミンは、2級又は3級アミンである。ある実施形態において、L-Rは、-CONH-(CH2n-Rである(nは1から13の整数である)。別の実施形態において、nは1から6の整数であり、さらなる実施形態においてnは1、2又は3である。ある実施形態において、Lは、-CONH-C24-(C24O)m-Rである(mは1、2又3である)。ある実施形態において、Rは1-マレイミドである。
【0033】
ある実施形態では、R9及びR10のいずれか1つが、以下に示されるいずれかの基である。
【化5】
【0034】
この場合のR9及びR10の残りの基は、-L-Rと異なる基である。ある実施形態では、かかる残りの基は、水素;ハロゲン;ハロゲン、C1~C6のアルコキシ及びC1~C6のアルキルチオからなる群より独立して選択される1以上の置換基で置換されていてもよいC1~C6のアルキル;又はC1~C6のアルキル及びC1~C6のヒドロキシアルキルからなる群より独立して選択される1以上の置換基で置換されていてもよいアミノ;である。
【0035】
好ましい式(I)の化合物又はその互変異性体としては、例えば、以下の構造式で表される化合物が挙げられるが、本実施形態の蛍光色素はこれらに限定されない。
【0036】
【化6】
【0037】
【化7】
【0038】
<一般製造法>
次に、式(I)の化合物又はその塩の合成法について説明する。
【0039】
式(I-2)の化合物は、式(I)のR7がCOO-であり、かつR9又はR10のいずれか1つがCOOHである式(I-1)の化合物より、スキーム1-1に示す方法で合成することができる。
【0040】
スキーム1-1
【化8】
【0041】
式中、A、X、Y1及びR5~R11は式(I)との定義と同じであり、L’は1~13個の非水素原子を有する、直鎖、分岐鎖、環又はこれらの任意の組み合わせ構造の2価のリンカーであり、ここで、リンカー中に1以上のヘテロ原子が存在する場合、当該ヘテロ原子はエステル、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、及びカルボニルからなる群から独立して選択される1以上の基として含まれている。R12は、H、ハロゲン、置換基を有していてもよいC1~C6のアルキル、置換基を有していてもよいC1~C6のアルコキシ、置換基を有していてもよいC1~C6のアルキルチオ、置換基を有していてもよいアミノ、置換基を有していてもよいアリール、置換基を有していてもよいヘテロアリール、SO3H及びSO3 -からなる群から選択される基を示す。また、式(I-1)、(a)及び(I-2)は塩を組んでもよく、塩としては特に限定されないが、例えばTFA塩が利用可能である。式(a)の化合物は既知の方法で合成してもよく、又は市販品を使用してもよい。市販品としては、例えばN-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩などが利用できる。Step1に示される反応は一般的なアミド化反応を意味し、必要に応じて縮合剤を用いることが出来る。縮合剤としては、例えばPyBOPなどが使用できる。反応に使用する溶媒としては、不活性であれば特に制限されず、例えばTHF、DME、DMF、NMP、DMSO又はそれらの混合物などが利用できる。反応を促進するため塩基を加えてもよく、塩基としてはTEA、DIPEA又はピリジンなどが利用できるが特に制限されない。
【0042】
別法として、スキーム1-2に示される通り、マレイミド部位を最終段階に構築することもできる。
【0043】
スキーム1-2
【化9】
【0044】
式中、A、X、Y1、L’及びR5~R12はスキーム1-1の定義と同じである。P1は保護基を示し、特に限定されないが、例えばBoc基を用いることができる。式(I-1)、(b)、(c)、(I-3)及び(I-2)は塩を組んでもよく、塩としては特に限定されず、例えばTFA塩が利用可能である。式(b)の化合物は既知の方法で合成してもよく、また市販品を用いることもできる。Step1はアミド化を意味し、スキーム1-1に示されるStep1と同様である。Step2は脱保護反応を意味し、P1がBocの場合、TFAが利用できる。Step3はマレイミド基の構築を意味し、塩基性条件下、メチル 2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラートを作用させることで式(I-2)の化合物を合成することができる。溶媒としては不活性であれば限定されず、例えばTHF、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテルなどが利用できる。塩基としては特に限定されず、例えば炭酸水素ナトリウム水溶液などが利用できる。
【0045】
式(I-1)、(c)、(I-3)及び(I-2)で示される化合物は適当な処理をすることでスキーム1-3において式(II-1)、(d)、(II-3)及び(II-2)で示されるスピロラクトン体としてそれぞれ単離することができる。また、これらは適当な緩衝液に溶解させることにより、スキーム1-3で示される平衡状態として存在することができる。
【0046】
スキーム1-3
【化10】
【0047】
式(I-1)、(c)、(I-3)及び(I-2)はスキーム1-2の定義と同じである。式(II-1)、(d)、(II-3)及び(II-2)におけるA、X、Y2、R5~R11は式(II)と同じ定義であり、L’及びR12はスキーム1-2と定義が同じである。
【0048】
式(I-1)の化合物はスキーム2-1に示す方法で式(e)と式(f)の化合物から合成することができる。
【0049】
スキーム2-1
【化11】
【0050】
式(e)及び式(f)の化合物のA、X、Y1及びR5~R11は式(II)と定義が同じであり、式(I-1)はスキーム1-1の定義と同じである。式(e)のX及びY2は、好ましくはそれぞれNR12及びNR34であり、R1~R4は式(II)の定義と同じである。式(I-1)のX及びY1は、好ましくはそれぞれNR12及びN+34であり、R1~R4は式(I)の定義と同じである。Step1は縮合反応に引き続く酸化反応を意味し、溶媒はキシレン若しくは酢酸などが使用でき、酸化剤としては臭化第二銅が使用できる。反応は加熱することにより促進されるが、通常80℃から140℃で行い、必要に応じてマイクロ波による加熱も使用できる。
【0051】
式(I-1)において、XがNR1Hであり、Y1がN+3Hである式(I-4)の化合物は、スキーム2-2に示される方法で式(g)と式(f)の化合物から製造することができる。
【0052】
スキーム2-2
【化12】
【0053】
式(f)、式(h)及び式(I-4)で表される化合物のR1~R12とAはスキーム1-1の定義と同じである。I式(g)のR1~R5は式(II)と定義が同じであり、P2及びP3は同一の、又は異なる保護基を表す。保護基としては特に限定されないが、例えばアリル基などが利用できる。Step1はスキーム2-1と同様の反応であり、Step2は脱保護反応を意味する。脱保護反応としては、例えばP2及びP3がアリル基である場合、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)存在下、1,3-ジメチルバルビツール酸を用いることができる。溶媒としては不活性であれば特に限定されず、例えばDCMなどが使用できる。
【0054】
スキーム2-1で用いる式(e)の化合物は以下の方法で合成できる。
【0055】
スキーム2-3
【化13】
【0056】
式中、環A、X、Y2、R5及びR6はスキーム2-1と定義が同じであり、halはハロゲンを表す。式(i)及び式(j)の化合物にアルキル金属試薬を作用させ、次いで式(k)で表される環状ジクロロシラン試薬と反応させることにより、式(e)の化合物を合成することができる。式(i)及び式(j)の化合物は市販のものを使用することができ、既知の方法で合成することもできる。ハロゲンとしては、臭素などが使用できる。アルキル金属試薬としては、n-ブチルリチウムなどが使用できる。溶媒としては不活性であれば特に限定されず、例えばTHF又はジエチルエーテルなどが使用できる。反応温度は通常室温以下で実施し、好ましくは0℃である。
【0057】
スキーム2-2で用いる式(g)の化合物は以下の方法で合成できる。
【0058】
スキーム2-4
【化14】
【0059】
式中、環A、R1、R3、R5、R6、P2及びP3はスキーム2-2と定義が同じであり、halはハロゲンを表す。step1はスキーム2-3で示した方法と同様である。式()及び式(m)の化合物は市販のものを使用することができ、既知の方法又は製造例に記載された方法で合成することもできる。
【0060】
スキーム2-1及びスキーム2-2で用いる式(f)の製造方法はひとつに限定されないが、例えば以下の方法で合成することができる。
【0061】
スキーム2-5
【化15】
【0062】
式中、R8~R12はスキーム2-1と定義が同じであり、halはハロゲンを表す。P4は同一の、又は異なる保護基を示す。保護基としてはとくに限定されないが、例えばtert-Bu基が利用できる。式(n)の化合物は市販のものを使用することができ、既知の方法もしくは製造例に記載された方法で合成することもできる。保護基P4がtert-Bu基の場合、式(o)の化合物は式(n)の化合物のカルボキシル基を酸クロライドに変換した後、カリウム tert-ブトキシドを作用させることにより得ることができる。溶媒としては不活性であるなら特に限定されず、例えばジクロロメタン、THF又はそれらの混合溶媒などが利用できる。反応温度としては、通常0℃から室温で行うことが出来る。別法として、式(n)の化合物を、DMAP存在下、二炭酸ジ-tert-ブチルと反応させることにより式(o)の化合物を得ることができる。溶媒としては不活性であるなら特に限定されず、例えばTHF、ジエチルエーテル、DMF、ジクロロメタン、トルエン、1,4-ジオキサン又はそれらの混合溶媒などが利用できる。反応温度としては、通常加熱することにより加速され、室温から溶媒沸点で行うことができる。式(p)の化合物は、式(o)の化合物とトリ-n-ブチル(1-プロペニル)チンから、右田・小杉・スティル クロスカップリング反応で得ることができる。ハロゲンとしては特に限定されないが、例えば臭素が使用できる。触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が使用できる。溶媒としてはNMPが使用できる。反応温度としては、通常加熱することにより加速され、好ましくは120℃で行うことができる。式(p)の化合物は通常幾何異性体の混合物として得られるが、各々の異性体の存在比率は特に限定されない。式(q)の化合物は、式(p)の化合物の1-プロペニル基を酸化的開裂させることで得ることができる。酸化剤としては特に限定されないが、例えば式(p)の化合物を含水溶媒に溶解し、塩基、触媒量の四酸化オスミウム及び過剰量の過ヨウ素酸ナトリウムを加えることにより得ることができる。溶媒としては不活性であれば特に限定されることはなく、例えば1,4-ジオキサンが使用できる。塩基としては2,6-ルチジンが使用できる。式(f)の化合物は、式(q)の化合物を脱保護させることで得ることができる。反応条件は特に限定されないが、例えば保護基P4がtert-Bu基である場合、TFAを用いることができる。
【0063】
スキーム2-5の式(n)、式(o)及び式(p)のR12がhalのとき、step3で合成される化合物はスキーム2-6の式(r)と表記される。式(q)の化合物はスキーム2-6の方法により、式(r)の化合物からも合成できる。
【0064】
スキーム2-6
【化16】
【0065】
式中、R8~R11、hal及びP4はスキーム2-5と定義が同じである。新たに導入されるR12はスキーム1-1の定義と同じであるが、好ましくは置換基を有していてもよいC1~C6のアルコキシ、置換基を有していてもよいC1~C6のアルキルチオである。ハロゲンとしては特に限定されないが、例えばフッ素などが使用できる。Step1は芳香族求核置換反応を意味し、式(s)で表される化合物としてはナトリウムメトキシド、又はナトリウムメタンチオラートなどが利用できる。溶媒としては不活性であれば特に限定されず、例えばTHF、ジエチルエーテルもしくはメタノール又はそれらの混合物などが使用できる。
【0066】
スキーム2-5の式(n)のR12がhalのとき、式(n)はスキーム2-7の式(t)と表記できる。式(t)の化合物から、スキーム2-7に示す方法で式(o)の化合物を製造することもできる。
【0067】
スキーム2-7
【化17】
【0068】
式中、R8~R11、P4はスキーム2-5と定義が同じである。halは同一の又は異なるハロゲンであり、好ましくは臭素である。新たに変換されるR12はスキーム1-1の定義と同じであるが、好ましくは置換基を有していてもよいC1~C6のアルキルである。式(t)の化合物は市販のものを使用することができ、既知の方法で合成することもできる。式(u)の化合物はスキーム2-5のstep1と同様の方法で得ることができる。式(v)の化合物は式(u)の二つのhalのうち一つに対して選択的にプロペニル基を導入することで合成することができる。具体的には式(u)の化合物とトリ-n-ブチル(1-プロペニル)チンから、右田・小杉・スティル クロスカップリング反応で合成することができる。触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が使用できる。溶媒としてはNMPが使用できる。反応温度としては、通常加熱することにより加速され、好ましくは120℃で行うことができる。式(v)の化合物は通常幾何異性体の混合物として得られるが、各々の異性体の存在比率は特に限定されない。式(w)の化合物はスキーム2-5のstep3と同様の方法で合成できる。式(w)の化合物のアルデヒド基からstep4を経て種々の方法でR12に変換することが出来る。step4は単一の工程でもよく、又は複数の工程でもよい。単一の工程としては、例えば式(w)の化合物にDASTを作用させることによりジフルオロメチル基に誘導できる。複数の工程としては、例えば式(w)の化合物に水素化ホウ素ナトリウムを作用させた後、得られたアルコールをアッペル反応にて臭素に変換し、さらにナトリウムメトキシドで置換することでメトキシメチル基に変換できる。
【0069】
式(f)の化合物は、互変異性によって式(x)の構造を取ることができる。通常、両化合物の混合物として得られるが、その存在比率は特に限定されない。
【0070】
スキーム2-8
【化18】
【0071】
式(h)で表される化合物は適当な処理をすることでスキーム2-9において式(y)で示されるスピロラクトン体として単離することができる。また、これらは適当な緩衝液に溶解させることにより、スキーム2-9で示される平衡状態として存在することができる。
【0072】
スキーム2-9
【化19】
【0073】
式中、A、R1~R12、P2及びP3はスキーム2-2と定義が同じである。
【0074】
式(I-1)の化合物はスキーム3-1に示す方法でも合成することができる。
【0075】
スキーム3-1
【化20】
【0076】
式中、環A、X、Y1及びR1~R12はスキーム1-1と同じ定義であり、halとP4はスキーム2-5と同じ定義である。P5は同一の、又は異なる保護基を表す。保護基P4としては特に限定されないが、例えばtert-Bu基を利用できる。保護基P5としては特に限定されないが、例えばTBS基などを利用できる。ハロゲンとしては、臭素が利用できる。式(I-1)の化合物は塩を組んでもよく、塩としては特に限定されないが、例えばTFA塩が利用可能である。式(o)の化合物にアルキル金属試薬を作用させ、次いで式(z)の化合物を加えることで式(aa)の化合物を合成できる。アルキル金属試薬として、n-ブチルリチウムを利用することができる。反応温度は通常通常室温以下で行い、-100℃から室温で行うことができる。溶媒としては不活性であれば特に限定されず、例えばTHF、n-ヘキサン及びそれらの混合物が使用できる。触媒としてルイス酸を加えることもできる。ルイス酸としては、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を使用できる。式(ab)の化合物は、式(aa)の化合物の保護基P5を脱保護することで合成することができる。保護基P5がTBS基の場合、例えばTBAFで脱保護することができる。溶媒としては不活性であれば特に限定されず、例えばTHFを使用することができる。式(ac)の化合物は、式(ab)の化合物にトリフルオロメタンスルホン酸無水物を作用させることで合成できる。塩基としては特に限定されないが、例えばピリジンが使用できる。溶媒としては不活性であれば特に限定されないが、例えばジクロロメタンなどが使用できる。XがNR12であり、Y1がN+34のとき、式(ad)の化合物は、式(ac)の化合物からブッフバルト・ハートウィッグ反応で合成することができる。反応に用いるパラジウム触媒としては、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)、トリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)又は(A-taPhos)2PdCl2などが使用でき、必要に応じてXPhosなどのリン配位子を加えることができる。塩基としては、炭酸セシウム、ナトリウム tert-ブトキシド、カリウム tert-ブトキシドなどが使用できる。溶媒としては1,4-ジオキサン、トルエン、THFなどが使用できる。反応は通常加熱することで促進され、通常封管中100℃~120℃で行うことができる。また、必要に応じてマイクロ波による加熱も使用できる。式(I-1)の化合物は式(ad)の保護基P4を脱保護することで合成することができる。P4がtert-Bu基のとき、TFAを用いることができる。
【0077】
式(o)のR12がhalのとき、式(o)はスキーム3-2の式(u)と表記することもできる。式(aa)の化合物は式(u)の化合物から、スキーム3-2に示す方法で合成することもできる。
スキーム3-2
【化21】
【0078】
式中、環A、P4,P5、R5~R12はスキーム3-1と定義が同じであり、halは同一の、又は異なるハロゲンである。式(ae)の化合物のhalとしては特に限定されないが、例えば塩素が利用できる。step1はスキーム3-1のstep1と同様の反応であり、式uの二つのハロゲンのうち、一つだけを選択的に金属交換することにより実現できる。step2で新たに導入されるR12はスキーム1-1の定義と同じであるが、好ましくは置換基を有していてもよいC1~C6のアルキルである。step2でR12を導入する方法としては特に限定されないが、たとえは鈴木-宮浦クロスカップリングもしくは右田・小杉・スティル クロスカップリング反応が使用できる。パラジウム触媒としては、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)又は(A-taPhos)2PdCl2などが使用でき、必要に応じてXPhosなどのリン配位子を加えることができる。鈴木-宮浦クロスカップリングの場合、無機塩基水溶液を加えることで反応が促進されるが、塩基としては炭酸カリウムが使用できる。溶媒としては1,4-ジオキサン又はDMFなどが使用できる。R12元としては特に限定されないが、例えばトリメチルボロキシン又はテトラメチルスズが使用できる。反応は加熱することで促進されるが、通常100℃から180℃で行い、必要に応じてマイクロ波による加熱も使用できる。
【0079】
スキーム3-1の式(o)、式(aa)、式(ab)及び式(ac)のR12がhalのとき、式(ac)はスキーム3-3の式(af)と表記できる。式(I-1)の化合物は式(af)の化合物から、スキーム3-3に示す方法で合成することもできる。
スキーム3-3
【化22】
【0080】
式中、環A、X、Y1、hal、P4及びR1~R11はスキーム3-1と定義が同じである。halとしては特に限定されないが、例えば塩素が利用できる。R12はスキーム1-1と定義が同じであるが、好ましくは置換基を有していてもよいアミノ基である。式(I-1)、の化合物は塩を組んでもよく、塩としては特に限定されないが、例えばTFA塩が利用可能である。step1はスキーム3-1のstep4と同様の反応であるが、OTfのみならず、halも同時に置換することができる。step2はスキーム3-1のstep5と同様の反応であるが、保護基P4の脱保護のみならず、XからR12への変換も行う事ができる。Xとしては、上記工程が実現できるものであれば特に限定されないが、例えばアゼチジン-1-イル基が利用できる。また、その際変換されて得られるR12としては3-ヒドロキシプロピルアミノ基が利用できる。
【0081】
スキーム3-4
スキーム3-1及びスキーム3-2で用いる式(z)の化合物は以下の方法で合成できる。
【化23】
【0082】
式中、環A、hal、P5及びR5~R6はスキーム3-1の定義と同じである。ハロゲンとしては例えば臭素を使用することができる。保護基P5としては特に限定されないが、例えばTBS基が使用できる。既知の方法で合成される式(ah)の化合物に、アルキル金属試薬を作用させ、次いで式(k)で表される環状ジクロロシラン試薬と反応させることにより、式(ai)の化合物を合成することができる。アルキル金属試薬としてはsec-ブチルリチウムを使用することができる。溶媒としては、不活性であれば特に限定されることはなく、例えばTHFなどが使用できる。反応温度は-78℃から室温で行うことができる。式(z)の化合物は式(ai)の化合物に酸化剤を作用させることで合成することができる。酸化剤としては、過マンガン酸カリウム、DDQ、クロラニルなどが使用できる。溶媒としては不活性ならば特に限定されず、例えばジクロロメタン、メタノール、1,4-ジオキサン、アセトン、水及びそれらの混合溶媒などが使用できる。
【0083】
式(z)の保護基P5を脱保護することにより式(aj)の化合物を合成することができる。
【0084】
スキーム3-5
【化24】
式中、環A、P5、R5~R6はスキーム3-1の定義と同じである。P5としては、例えばTBSを利用することができる。P5がTBSの場合、step1でTBAFを利用することができる。
【0085】
スキーム3-4のstep2において、反応中又は後処理の過程で保護基P5が外れることにより、式(ai)の化合物から式(aj)を直接合成することもできる。式(aj)のヒドロキシル基を任意の保護基P5で保護することにより式(z)の化合物を合成することもできる。
【0086】
スキーム3-6
【化25】
【0087】
式中、環A、R5~R6はスキーム3-1の定義と同じである。P5はそれぞれ同一の、又は異なる保護基を意味する。式(ai)のP5としては容易に脱保護できるものであれば特に限定されないが、例えばTBS基を用いることができる。Step1はスキーム3-4のstep2と同様の工程であるが、同時に起こる脱保護反応が不十分である場合、必要に応じて粗生成物に対して脱保護反応を行うこともできる。例えば保護基P5がTBS基の場合、得られた粗生成物に対してTBAFを作用させることにより式(aj)の化合物を得ることができる。Step2で導入する保護基P5としては、とくに限定されないが、例えばTBS基を用いることが出来る。式(z)のP5がTBSの場合、Step2でTBSClを利用することができる。溶媒としては不活性であれば特に限定されず、例えばDMF、ジクロロメタン又はそれらの混合物を使用することができる。塩基としてはイミダゾールを使用することができる。
【0088】
式(ad)及び(ag)で表される化合物は適当な処理をすることでスキーム3-7の式(ak)及び(al)で示されるスピロラクトン体として単離することができる。また、これらは適当な緩衝液に溶解させることにより、スキーム3-7で示される平衡状態として存在することができる。式(ad)はスキーム3-1の定義と同じであり、式(ag)はスキーム3-3の定義と同じである。式(ak)及び(al)のA、X、Y1、R5~R11は式(II)と同じ定義であり、P4及びR12はスキーム3-1と定義が同じである。
【0089】
スキーム3-7
【化26】
【0090】
式(I-1)においてXがOHであり、Y1がOである式(I-5)の化合物はスキーム3-8に示す方法でも合成することができる。
【0091】
スキーム3-8
【化27】
【0092】
式中、環A、及びR1~R12はスキーム1-1と同じ定義であり、halとP4はスキーム2-5と同じ定義である。P5は同一の、又は異なる保護基を表す。保護基P4としては特に限定されないが、例えばtert-Bu基を利用できる。保護基P5としては特に限定されないが、例えばTBS基などを利用できる。ハロゲンとしては特に限定されないが、例えば臭素が使用できる。式(I-5)の化合物は塩を組んでもよく、塩としては特に限定されないが、例えばTFA塩が利用可能である。式(o)の化合物にアルキル金属試薬を作用させ、次いで式(z)の化合物を加えることで式(aa)の化合物を合成できる。アルキル金属試薬として、例えばn-ブチルリチウムを利用することができる。反応温度は通常通常室温以下で行い、-100℃から室温で行うことができる。溶媒としては不活性であれば特に限定されず、例えばTHF、n-ヘキサン及びそれらの混合物が使用できる。触媒としてルイス酸を加えることもできる。ルイス酸としては、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を使用できる。式(ab)の化合物は、式(aa)の化合物の保護基P5を脱保護することで合成することができる。保護基P5がTBS基の場合、例えばTBAFで脱保護することができる。溶媒としては不活性であれば特に限定されず、例えばTHFを使用することができる。式(I-5)の化合物は式(ab)の保護基P4を脱保護することで合成することができる。P4がtert-Bu基のとき、TFAを用いることができる。
【0093】
式(I-1)において、XがNR12でありY1がN+34である式(I-6)の化合物はスキーム4-1に示す方法でも合成できる。
【0094】
スキーム4-1
【化28】
【0095】
式中、X及びY1はそれぞれNR12及びN+34であり、A及びR1~R12はスキーム1-1と定義が同じである。halはハロゲンを意味し、好ましくは臭素である。式(ao)の化合物は式(ap)の化合物と平衡状態で存在することもでき、混合物として得ることもできる。また、式(an)と式(ao)の化合物は塩として得ることもできる。式(an)の化合物にアルキル金属試薬を作用させたのち、式(am)の化合物を加えることで式(ao)の化合物を得ることができる。アルキル金属試薬はtert-ブチルリチウムが使用できる。溶媒としては不活性であれば特に限定されず、例えばTHFなどが使用できる。反応温度は-78℃から室温で行うことができる。通常式(ao)の化合物は単離することなく次の工程に進むことができる。式(ao)の化合物の4,4-ジメチル-4,5-ジヒドロオキサゾール基をカルボキシル基に変換することで式(I-6)の化合物を合成することができる。反応条件としては特に限定されないが、通常酸加水分解反応が利用できる。酸としては特に限定されないが、例えば5規定塩酸を使用できる。反応は通常加熱することにより加速し、80℃から溶媒沸点で行うことができる。
【0096】
スキーム4-1で用いる式(am)の化合物は以下の方法で合成することができる。
【0097】
スキーム4-2
【化29】
【0098】
式中、環A及びR1~R6はスキーム4-1と定義が同じであり、halはハロゲンを表す。式(aq)及び式(ar)の化合物は市販のものを使用することができ、既知の方法又は製造例に記載された方法で合成することもできる。ハロゲンとしては特に限定されないが、臭素を使用することができる。式(as)の化合物は、式(aq)及び式(ar)の化合物の混合物を酸性条件下、ホルムアルデヒドと反応させることにより合成することができる。溶媒としては酢酸を使用することができる。反応温度としては、通常加熱することにより反応が促進されるが、50℃から120℃で行うことができる。式(at)の化合物は、式(as)の化合物にアルキル金属試薬を作用させ、次いで式(k)で表される環状ジクロロシラン試薬と反応させることにより合成することができる。アルキル金属試薬としては、sec-ブチルリチウムを使用することができる。溶媒としては、不活性であるならば特に限定されないが、例えばTHFなどが使用できる。反応温度としては、-78℃から室温で行うことができる。式(am)の化合物は、式(at)の化合物に酸化剤を作用させることにより合成することができる。酸化剤としては、過マンガン酸カリウム、DDQ、クロラニルなどが使用できる。溶媒としては不活性ならば特に限定されず、例えばジクロロメタン、メタノール、1,4-ジオキサン、アセトン、水及びそれらの混合溶媒などが使用できる。
【0099】
式(am)の化合物はスキーム4-3の方法で合成することもできる。
【0100】
スキーム4-3
【化30】
【0101】
式中、環A及びR1~R6はスキーム4-1と定義が同じである。式(au)の化合物は、式(aj)の化合物をトリフルオロメタンスルホン酸無水物と反応させることで合成することができる。塩基としてはピリジンを使用することができる。溶媒としては不活性なら特に限定されることはなく、例えばジクロロメタンなどが使用できる。式(am)の化合物は式(au)の化合物からブッフバルト・ハートウィッグ反応で合成することができる。反応に用いるパラジウム触媒としては、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)、トリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)又は(A-taPhos)2PdCl2などが使用でき、必要に応じてXPhosなどのリン配位子を加えることができる。塩基としては、炭酸セシウム、ナトリウム tert-ブトキシド、カリウム tert-ブトキシドなどが使用できる。溶媒としては1,4-ジオキサン、トルエン、THFなどが使用できる。反応は加熱することで促進され、通常封管中100℃~120℃で行うことができる。また、必要に応じてマイクロ波による加熱も使用できる。式(av)及び式(aw)の化合物は、市販のものを利用できるし、既知の方法又は製造例に記載された方法で合成することもできる。
【0102】
[2.標識複合化物質]
本発明の範囲には、本実施形態の蛍光色素と複合化物質が結合した標識複合化物質も含まれる。ここで、複合化物質とは、本実施形態の蛍光色素と共有結合的に結合できる物質をいう。複合化物質としては、例えば、表面(例えばビーズ、固体担体、樹脂、粒子又はアッセイプレート)、生物学的分子もしくは生体分子(例えばタンパク質、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA及びRNAを含む核酸、酵素の基質、抗体、ナノボディ、ポリペプチド、ポリペプチド系毒素、アミノ酸、脂質、炭水化物、ハプテン、金属キレート剤等のイオン錯体化剤、微粒子、合成ポリマーもしくは天然ポリマー、細胞、ウイルス、他の蛍光分子もしくは表面)、小分子(例えば薬剤、薬剤化合物)、又は例えばクロロアルカンもしくはシアノベンゾチアゾール等の他の関心ある部分である。他の好適な複合化物質には、ランタニド錯体化グループ;ニッケル錯体化グループ;コバルト錯体化グループ;エチレンジアミン四酢酸;ニトリロ三酢酸;ヌクレオチド;酵素の基質;酵素の阻害剤、好ましくは酵素と共有結合を形成する不可逆性の酵素の阻害剤;受容体のアゴニスト;10μM以上のKDで核酸に結合するリガンド;10μM以上のKDでタンパク質に結合するリガンド;SNAP-タグの基質;CLIP-タグの基質;Halo-タグの基質、ジヒドロ葉酸還元酵素に結合するリガンド;メトトレキサート;トリメトプリム;ビオチンリガーゼの基質;リンペプチド転移酵素の基質;リポ酸リガーゼの基質;ビオチン;ストレプトアビジン、アビジン又はニュートラアビジンに結合するリガンド;酵素の補助因子;ホルモン;毒素;フルオロフォア;核酸ポリマー;ハプテン;抗原;薬剤;脂質;脂質アセンブリ;非生物有機ポリマー;ポリマー微粒子;動物細胞、植物細胞;細菌、酵母;ウイルス;及び原生生物が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、複合化物質はタンパク質又は核酸である。
【0103】
本実施形態の蛍光色素における複合化物質との結合部位は特に限定されないが、好ましくはR7、R8、R9、R10及びR11の少なくとも1つであり、より好ましくはR8、R9及びR10の少なくとも1つである。特に好ましくは、本実施形態の蛍光色素における複合化物質との結合部位は、-L-RであるR8、R9又はR10の反応基Rである。
【0104】
[3.組成物]
本発明の範囲には、本実施形態の蛍光色素又は標識複合化物質を含む組成物も含まれる(以下、単に組成物ともいう)。本実施形態の組成物は、超解像顕微鏡法に用いられる試薬組成物であってもよい。超解像顕微鏡法とは、光の回折限界を超えた分解能を有する顕微鏡である超解像顕微鏡を用いたイメージング技術であり、当該技術分野において公知である。
【0105】
本実施形態の蛍光色素は互変異性を有し、分子内スピロ環が形成された状態(閉環体)と、該スピロ環が開裂された状態(開環体)とが平衡にある。そのため、本実施形態の蛍光色素は、自発的に明滅する性質を有する。よって、本実施形態の組成物は、超解像顕微鏡法の一種である局在化顕微鏡法に用いられる試薬組成物であることが好ましい。ここで、局在化顕微鏡法(Localization microscopy)とは、光活性化局在性顕微鏡法(Photoactivated localization microscopy; PALM)、明滅支援型局在性顕微鏡法(Blinking assisted localization microscopy; BALM)、PAINT法(Points accumulation for imaging in nanoscale topography)に代表される蛍光体の一分子発光の検出に基づく超解像顕微鏡法である。局在化顕微鏡法では、まず、被検物質と、発光状態と消光状態との切り替えが可能な蛍光体とを結合させ、被検物質に結合した該蛍光体を空間的に重ならないよう時間をずらして発光させて撮像する。そして、発光した蛍光体を一分子ずつ検出し、検出した一分子の蛍光体の位置を数十nmの精度で決定する。このような撮像及び検出を数千から数万回繰り返して、一分子の蛍光体の位置情報を重ね合わせることにより、被検物質の超解像画像を構築する。加えて、局在化顕微鏡法以外の超解像顕微鏡法として知られる誘導放出抑制顕微鏡法(Stimulated emission depletion microscopy; STED)、構造化照明顕微鏡(Structured illumination microscopy; SIM)、SOFI法(Super-resolution optical fluctuation imaging)、MINFLUX法(Minimal emission fluxes)などに使用できる可能性を否定するものではない。
【0106】
本実施形態の組成物は、必要に応じて、試薬の調製に通常用いられる添加剤を含んでもよい。そのような添加剤としては、例えば、溶解補助剤、pH調節剤、緩衝剤、等張化剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、当業者が適宜決定できる。本実施形態の組成物の形態は特に限定されず、固体(粉末、結晶、顆粒、錠剤、凍結乾燥品など)であってもよいし、液体(溶液、懸濁液、乳濁液など)であってもよい。
【0107】
[4.被検物質に関する情報を取得する方法]
本発明の範囲には、本実施形態の蛍光色素又は標識複合化物質を被検物質と結合させ、超解像顕微鏡法により該被検物質に関する情報を取得する方法も含まれる(以下、情報取得方法ともいう)。この方法では、公知の超解像顕微鏡を用いることができる。例えば、HM-1000 (シスメックス株式会社)などが挙げられる。上述のように、本実施形態の蛍光色素は自発的に明滅する性質を有するので、本実施形態の情報取得方法は、超解像顕微鏡法のうち、局在化顕微鏡法に適している。
【0108】
本実施形態の蛍光色素又は標識複合化物質と被検物質との結合の様式は、特に限定されず、被検物質の種類に応じて適宜決定できる。被検物質が、組織、細胞、細胞小器官又は生体分子(タンパク質、核酸など)である場合は、生物学分野において公知の染色法により、本実施形態の蛍光色素又は標識複合化物質と被検物質とを結合できる。そのような染色法としては、例えば、免疫組織化学、蛍光抗体法などが挙げられる。
【0109】
本実施形態の情報取得方法では、超解像顕微鏡法により得られた被検物質の画像から、被検物質に関する情報を得ることができる。被検物質に関する情報は、被検物質の構造に関する情報であってもよいし、被検物質の量に関する情報であってもよい。被検物質の構造に関する情報としては、例えば、被検物質の大きさ、形態、凝集度などが挙げられる。被検物質の量に関する情報としては、例えば、被検物質の存否、又は、被検物質の濃度、含有量(重量)及びそれらを示す測定値自体などが挙げられる。被検物質の量に関する情報には、「少量」、「中程度」、「多量」などのように被検物質の量を段階的に示す情報も含まれる。好ましい実施形態では、被検物質に関する情報は、被検物質の構造に関する情報である。
【0110】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0111】
以下の実施例、参考例及び製造例中の「室温」は、通常約10℃から約35℃を示す。%は、特記しない限り、重量パーセントを示す。
【0112】
プロトン核磁気共鳴スペクトルの化学シフトは、テトラメチルシランに対するδ単位(ppm)で記録され、カップリング定数はヘルツ(Hz)で記録されている。分裂パターンの略号は、以下のとおりである。
s:シングレット、d:ダブレット、t:トリプレット、q:カルテット、quin:クインテット、m:マルチプレット、br.s.:ブロードシングレット。
【0113】
製造例及び実施例においてマイクロウェーブ反応装置を用いた反応は、Biotage社製initiator(商標)を用いた。
【0114】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーに関して、シリカゲルは、Merck社製Silica Gel60(70-230mesh)、富士シリシア化学社製PSQ60B、又は市販プレパックカラムを用いた。プレパックカラムとしては、YAMAZEN社製Hi-Flash(商標) Column(Silicagel);サイズS(16×60mm)、M(20×75mm)、L(26×100mm)、2L(26×150mm)、3L(46×130mm)のいずれか、又はBiotage社製Biotage(商標)SNAP Ultra Silica Cartridge;サイズ10g、25g、50gのいずれかを用いた。
【0115】
逆相クロマトグラフィーに関しては、YMC社製YMC*GEL ODS-A 12nm S-50μmを用いるか、市販のプレパックカラムを用いた。プレパックカラムとしては、YMC-DispoPack AT ODS-25(40g又は120g)、あるいはBiotage社製Biotage(商標)SNAP Ultra C18 12gを用いた。
【0116】
薄層クロマトグラフィーに関しては、シリカゲルと記載されている場合、Merck社製TLC Silica gel 60 F254を用い、NHシリカゲルと記載されている場合、富士シリシア化学社製CHROMATOREX TLC Plates NHもしくは和光純薬工業製NH2シリカゲル60F254プレート-ワコー(層厚0.75mm)を用いた。
【0117】
フェーズセパレーターに関しては、Biotage製ISOLUTE(登録商標) Phase Separatorを用いた。
【0118】
以下に示す化合物の命名は、一般的に用いられる試薬を除き、「E-ノートブック」バージョン12及び13(パーキンエルマー社)、または「ChemDraw Professional」バージョン17.1(パーキンエルマー社)で表示されたものを用いた。
【0119】
以下に示す化合物の物質量は、「E-ノートブック」バージョン12及び13(パーキンエルマー社)、または「ACD/ChemSketch 2017.2」(ACD社)で表示されたものを用いた。
【0120】
製造例1
ジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-クロロテレフタラートの合成
【化31】
【0121】
2-ブロモ-5-クロロテレフタル酸(500mg,1.79mmol, CAS No. 500550-60-7)、DCM(10.0mL)、THF(5.00mL)及びDMF(1滴)の混合物に塩化オキサリル(626μL,7.16mmol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、対応する酸クロリドを得た。得られた酸クロリドのTHF(5.00mL)溶液に、氷浴下カリウム tert-ブトキシド(803mg,7.16mmol)をゆっくり加え、室温で一晩撹拌した。氷と飽和塩化アンモニウム水溶液を加え反応を停止させ、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(408mg,1.04mmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.61(s,9H),1.61(s,9H),7.70(s,1H),7.94(s,1H).
【0122】
製造例2
ジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)テレフタラートの合成
【化32】
【0123】
(1)5-ブロモ-4-メチル-2-(トリフルオロメチル)安息香酸の合成
4-メチル-2-(トリフルオロメチル)安息香酸(1.36g,6.66mmol,CAS No.120985-64-0)の硫酸(7.10mL,133mmol)溶液にNBS(1.19g,6.66mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。氷浴下、反応混合物に氷を加え反応を停止させた。発生した固体を回収することで標記化合物の粗生成物(2.49g)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):2.47(s,3H),7.86(s,1H),8.02(s,1H).
【0124】
(2)2-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)テレフタル酸の合成
製造例2-(1)で得た化合物(2.29g)、ピリジン(13.7mL,170mmol)及び水(45.8mL)の混合物に過マンガン酸カリウム(3.84g,24.3mmol)を加え、50℃で2.3時間撹拌した。さらに水(100mL)を加え50℃で4.2時間撹拌した。さらに過マンガン酸カリウム(10.8g,68.4mmol)を加え、50℃で4.5時間撹拌した。室温まで冷却した後、不溶物を濾過した。不溶物を希ピリジン水溶液で洗浄し、溶出物にジメチルスルフィドを加えた。新たに発生した不溶物を濾過し、溶出物を減圧下50℃で濃縮した。得られた残渣を水(10.0mL)に溶解し、氷浴下濃塩酸を加えた。発生した固体を回収することで標記化合物の粗生成物(2.74g)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):8.12(s,1H),8.15(s,1H).
【0125】
(3)ジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)テレフタラートの合成
製造例2-(2)で得た化合物(2.74g)、二炭酸ジ-tert-ブチル(7.64g,35.0mmol)、DMAP(214mg,1.75mmol)、トルエン(28.0mL)及びDMF(2.80mL)の混合物を80℃で2時間撹拌した。さらにDMAP(214mg,1.75mmol)と二炭酸ジ-tert-ブチル(7.64g,35.0mmol)を加え、80℃で3.5時間撹拌した。さらに二炭酸ジ-tert-ブチル(3.00g,13.8mmol)加え、80℃で1.5時間撹拌した。室温まで冷却した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(1.66g,3.90mmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.58(s,9H),1.62(s,9H),7.95(s,1H),7.98(s,1H).
【0126】
製造例3
ジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-フルオロテレフタラートの合成
【化33】
【0127】
2-ブロモ-5-フルオロテレフタル酸(200mg,760μmol, CAS No. 1245807-64-0)、二炭酸ジ-tert-ブチル(664mg,3.04mmol)、DMAP(18.6mg,152μmol)、トルエン(5.00mL)及びDMF(500μL)の混合物を80℃で5時間撹拌した。室温に冷却した後、酢酸エチルで希釈した。有機層を水で2回洗浄し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製し、標記化合物(70.0mg,187μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.59(s,9H),1.61(s,9H),7.42(d,J=10.54Hz,1H),8.07(d,J=6.64Hz,1H).
【0128】
製造例4
3,7-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オンの合成
【化34】
【0129】
(1)3,7-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]の合成
ビス(2-ブロモ-4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)メタン(4.95g,8.44mmol,CAS No.1383118-97-5)のTHF(49.8mL,608mmol)溶液にsec-ブチルリチウム(1.05Mシクロヘキサン-ヘキサン溶液,22.9mL,24.1mmol)を-78℃で20分かけて滴下した。同温で1時間撹拌した後、シクロペンタメチレンジクロロシラン(2.71g,16.0mmol, CAS No. 2406-34-0)のTHF(19.5mL)溶液を10分かけて滴下した。室温にて1時間30分間撹拌した後、氷及び飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、反応を停止させた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。混合物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(3.68g,7.01mmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):0.22(s,12H),1.01(s,18H),1.02-1.06(m,4H),1.66(br.s.,2H),1.92-2.03(m,4H),3.95(s,2H),6.79(dd,J=8.40,2.54Hz,2H),7.15-7.20(m,4H).
【0130】
(2)3,7-ジヒドロキシ-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オンの合成
製造例4-(1)の方法で得た化合物(10.1g,19.2mmol)のアセトン(505mL)溶液を13mm試験管101本に分注した。氷浴下、各試験管に過マンガン酸カリウム(81.3mg,514μmol、合計8.21g,51.9mmol)を加えた。室温で一晩撹拌した後、各試験管にDCMを加えた。生じた不溶物を濾過し、溶出物を一つのナスフラスコに集めた。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで、標記化合物(1.97g,6.35mmol)を得た。
ESI-MS m/z 311[M+H]+
【0131】
(3)3,7-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オンの合成
製造例4-(2)で得た化合物(590mg,1.90mmol)のDMF(10.0mL)溶液に、イミダゾール(776mg,11.4mmol)及びtert-ブチルジメチルシリルクロリド(859mg,5.70mmol)を加えた。室温で一晩撹拌した後、氷を加えて反応を停止させた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で3回洗浄した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することにより標記化合物(954mg,1.77mmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):0.27(s,12H),1.02(s,18H),0.99-1.05(m,4H),1.71(br.s.,2H),1.96-2.07(m,4H),6.99(dd,J=8.59,2.73Hz,2H),7.22(d,J=2.73Hz,2H),8.36(d,J=8.59Hz,2H).
【0132】
製造例5
tert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート及び10-オキソ-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-3,7-ジイルビス(トリフルオロメタンスルホナート)の合成
【化35】
【0133】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ジヒドロキシ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
窒素雰囲気下、ジ-tert-ブチル 2-ブロモテレフタラート(1.54g,4.31mmol,CAS No.1456885-46-3)のTHF(20.0mL)/n-ヘキサン(10.0mL)混合溶液に、内温-95℃以下でn-ブチルリチウム(2.65Mヘキサン溶液、1.62mL,4.31mmol)を滴下した。同温で10分間撹拌した後、製造例4-(3)で得られた3,7-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オン(580mg,1.08mmol)のTHF(10.0mL)溶液を内温-95℃以下で滴下した。同温で5分間撹拌した後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(273μL,2.15mmol)を滴下した。反応混合物を徐々に室温まで昇温させ、室温で6時間撹拌撹拌した。氷浴下、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることで反応を停止させた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。混合物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を留去することで付加体を含む混合物を得た。得られた混合物にTHF(10.0mL)及びテトラブチルアンモニウムフルオリド(1.00M THF溶液,5.38mL,5.38mmol)を加え、室温で7時間撹拌した。氷浴下、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることで反応を停止させた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物を、3,7-ジヒドロキシ-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オンとの混合物(670mg)として得た。
ESI-MS m/z 515[M+H]+ (保持時間 1.48分)
ESI-MS m/z 311[M+H]+ (保持時間 1.18分)
【0134】
(2)tert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート及び10-オキソ-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-3,7-ジイルビス(トリフルオロメタンスルホナート)の合成
製造例5-(1)で得られた混合物(670mg)のDCM(10.0mL)溶液に、氷浴下ピリジン(1.05mL,13.0mmol)及びトリフルオロメタンスルホン酸無水物(1.09mL,6.51mmol)を加えた。室温で一晩撹拌した後、氷水を加えて反応を停止させた。水層をDCMで抽出し、有機層を1N塩酸及び水で洗浄した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで、tert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート(472mg,606μmol)及び10-オキソ-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-3,7-ジイルビス(トリフルオロメタンスルホナート)(197mg,343μmol)を得た。
tert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.27-1.31(m,2H),1.32-1.39(m,2H),1.58(s,9H).1.79(br.s.,2H),2.05-2.18(m,4H),7.19-7.24(m,2H),7.28-7.35(m,2H),7.73(d,J=2.73Hz,2H),7.92(s,1H),8.03(d,J=7.42Hz,1H),8.21(dd,J=8.20,1.17Hz,1H).
10-オキソ-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-3,7-ジイルビス(トリフルオロメタンスルホナート)
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.06-1.17(m,4H),1.76(br.s.,2H),2.04(br.s.,4H),7.48(dd,J=8.79,2.54Hz,2H),7.70(d,J=2.73Hz,2H),8.53(d,J=8.59Hz,2H).
【0135】
製造例6
tert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-5-カルボキシラートの合成
【化36】
【0136】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ジヒドロキシ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-5-カルボキシラートの合成
窒素雰囲気下、ジ-tert-ブチル 4-ブロモイソフタラート(374mg,1.05mmol,CAS No.1431377-56-8)のTHF(10.0mL)/n-ヘキサン(5.00mL)混合溶液に、内温-95℃以下でn-ブチルリチウム(2.65M ヘキサン溶液、395μL,1.05mmol)を滴下した。同温で10分間撹拌した後、製造例4-(3)で得られた3,7-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オン(94.0mg,174μmol)のTHF(5.00mL)溶液を内温-95℃以下で滴下した。同温で10分間撹拌した後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(44.0μL,349μmol)を滴下した。反応混合物を-78℃に昇温させ、同温で2時間撹拌した。反応混合物を-45℃に昇温させ、同温で1時間20分撹拌した。反応混合物を-20℃に昇温させ、同温で30分間撹拌した。反応混合物を0℃に昇温させ、同温で30分間撹拌した。原料の消失を確認した後、氷水と飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止させた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で洗浄した。溶媒を留去することで付加体を含む混合物を得た。得られた混合物をTHF(5.00mL)に溶解し、氷浴下テトラブチルアンモニウムフルオリド(1.00M THF溶液,872μL,872μmol)を加えた。反応混合物を室温で4時間撹拌した。氷浴下、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることで反応を停止させた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液、水及び飽和食塩水で洗浄した。混合物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(62.0mg,120μmol)を得た。
ESI-MS m/z 515[M+H]+
【0137】
(2)tert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-5-カルボキシラートの合成
製造例5-(2)に準じ、製造例6-(1)で得た化合物(62.0mg,120μmol)から標記化合物(31.0mg,40.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.26-1.33(m,4H),1.63(s,9H),1.78(br.s.,2H),2.02(br.s.,2H),2.16(br.s.,2H),7.16-7.20(m,4H),7.42-7.47(m,1H),7.73(d,J=2.34Hz,2H),8.40(dd,J=8.20,1.56Hz,1H),8.59-8.64(m,1H).
【0138】
製造例7
tert-ブチル 5-クロロ-3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
【化37】
【0139】
(1)tert-ブチル 5-クロロ-3’,7’-ジヒドロキシ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
窒素雰囲気下、製造例1で得たジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-クロロテレフタラート(945mg,2.41mmol)のTHF(20.0mL)/n-ヘキサン(10.0mL)混合溶液に、内温-95℃以下でn-ブチルリチウム(2.65Mヘキサン溶液、910μL,2.41mmol)を滴下した。同温で10分間撹拌した後、製造例4-(3)で得た3,7-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オン(130mg,241μmol)のTHF(10.0mL)溶液を内温-95℃以下で滴下した。同温で5分間撹拌した後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(61.0μL,482μmol)を滴下した。反応混合物を徐々に室温まで昇温させ、室温で一晩撹拌した。氷を加えて反応を停止させ、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去することで付加体を含む混合物を得た。得られた混合物にTHF(10.0mL)及びテトラブチルアンモニウムフルオリド(1.00M THF溶液,1.21mL,1.21mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。氷及び飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることで反応を停止させた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で洗浄した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(119mg,217μmol)を得た。
ESI-MS m/z 549[M+H]+
【0140】
(2)tert-ブチル 5-クロロ-3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
製造例7-(1)で得た化合物(119mg,217μmol)、DCM(5.00mL)及びピリジン(140μL,1.73mmol)の混合物に、氷浴下トリフルオロメタンスルホン酸無水物(142μL,867μmol)を滴下した。室温に昇温し、2.5時間撹拌した。氷を加えて反応を停止し、水層をDCMで抽出した。有機層を希塩酸及び水で洗浄し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(128mg,157μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.22-1.33(m,4H),1.60(s,9H),1.78(br.s.,2H),2.03(br.s.,2H),2.08-2.19(m,2H),7.22-7.25(m,4H),7.64(s,1H),7.73(d,J=2.34Hz,2H),8.04(s,1H).
【0141】
製造例8
tert-ブチル 5-メチル-3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
【化38】
【0142】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-クロロ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
窒素雰囲気下、製造例1の方法で得たジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-クロロテレフタラート(4.27g,10.9mmol)のTHF(50.0mL)/n-ヘキサン(25.0mL)混合溶液に、内温-95℃以下でn-ブチルリチウム(2.65Mヘキサン溶液、4.11mL,10.9mmol)を滴下した。同温で10分間撹拌した後、製造例4-(3)で得た3,7-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オン(587mg,1.09mmol)のTHF(25.0mL)溶液を内温-95℃以下で滴下した。同温で5分間撹拌した後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(276μL,2.18mmol)を滴下した。反応混合物を徐々に室温まで昇温させ、室温で5.5時間撹拌撹拌した。氷及び飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止させた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で洗浄した。溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(純度53%,1.58g,1.08mmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):0.21(s,12H),0.98(s,18H),1.16-1.23(m,4H),1.61(s,9H),1.73(br.s.,2H),2.00(br.s.,2H),2.07-2.18(m,2H),6.72(dd,J=8.59,2.73Hz,2H),6.90(d,J=8.59Hz,2H),7.29(d,J=2.73Hz,2H),7.57(s,1H),7.98(s,1H).
【0143】
(2)tert-ブチル 3’,7’-ジヒドロキシ-5-メチル-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
窒素雰囲気下、製造例8-(1)で得た化合物(純度53%,100mg,68.0μmol)、トリメチルボロキシン(48.0μL,341μmol)、(A-taPhos)2PdCl2(19.3mg,27.0μmol)、1N炭酸カリウム水溶液(341μL,341μmol)及び1,4-ジオキサン(3.00mL)の混合物を、マイクロ波照射装置にて180℃で10分間撹拌した。室温まで冷却し、酢酸エチルで希釈した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去することで中間体を得た。この中間体をTHF(5.00mL)に溶解し、テトラブチルアンモニウムフルオリド(1M THF溶液、341μL,341μmol)を加えた。反応混合物を室温で1.5時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることで反応を停止させた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で二回洗浄した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(19.0mg,36.0μmol)を得た。
ESI-MS m/z 529[M+H]+
【0144】
(3)tert-ブチル 5-メチル-3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
製造例5-(2)に準じ、製造例8-(2)の方法で得られる化合物(97.0mg,183μmol)から標記化合物(80.0mg,101μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.28-1.34(m,4H),1.58(s,9H),1.78(br.s.,2H),2.04(br.s.,2H),2.13(br.s.,2H),2.67(s,3H),7.18-7.23(m,2H),7.27-7.31(m,2H),7.72(d,J=2.73Hz,2H),7.73(s,1H),7.85(s,1H).
【0145】
製造例9
3,7-ジモルホリノ-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オンの合成
【化39】
【0146】
製造例5-(2)で得られた10-オキソ-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-3,7-ジイルビス(トリフルオロメタンスルホナート)(122mg,212μmol)、モルホリン(51.8mg,595μmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(19.4mg,21.0μmol)、XPhos(30.4mg,64.0μmol)、炭酸セシウム(194mg,595μmol)及び1,4-ジオキサン(2.00mL)の混合液を、窒素雰囲気下、封管中110℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、DCMで希釈した。不溶物を濾過し、ろ液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物の粗生成物(103mg)を得た。
ESI-MS m/z 449[M+H]+
【0147】
製造例10
3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オンの合成
【化40】
【0148】
(1)N3,N3,N7,N7-テトラメチル-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-3,7-ジアミンの合成
4,4’-メチレンビス(3-ブロモ-N,N-ジメチルアニリン)(500mg,1.21mmol,CAS No.63594-70-7)のTHF(15.0mL)溶液にsec-ブチルリチウム(1.00Mシクロヘキサン-ヘキサン溶液,3.46mL,3.46mmol)を-78℃で20分かけて滴下した。同温で30分間撹拌した後、シクロペンタメチレンジクロロシラン(390mg,2.31mmol)のTHF溶液を滴下した。室温で3.5時間撹拌した後、氷及び飽和塩化アンモニウム水溶液を加え反応を停止させた。水層をDCMで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(292mg,833μmol)を得た。
ESI-MS m/z 351[M+H]+
【0149】
(2)3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オンの合成
製造例10-(1)で得られた化合物(232mg,662μmol)のアセトン(20.0mL)溶液に、氷浴下過マンガン酸カリウム(282mg,1.79mmol)を30分間かけて加えた。同温で1時間撹拌した後、DCMで希釈した。生じた不溶物をセライト濾過で除いた。溶出物を室温以下で減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(82.0mg,225μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):0.98-1.10(m,4H),1.72(br.s.,2H),2.00-2.10(m,4H),3.11(s,12H),6.85(dd,J=9.18,2.93Hz,2H),6.98(d,J=2.73,2H),8.40(d,J=9.37Hz,2H).
ESI-MS m/z 365[M+H]+
【0150】
製造例11
3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シロラン]-10-オンの合成
【化41】
【0151】
(1)N3,N3,N7,N7-テトラメチル-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シロラン]-3,7-ジアミンの合成
製造例10-(1)に準じ、4,4’-メチレンビス(3-ブロモ-N,N-ジメチルアニリン)(500mg,1.21mmol)とシクロテトラメチレンジクロロシラン(357mg,2.31mmol, CAS No. 2406-33-9)から、標記化合物(286mg,850μmol)を得た。
ESI-MS m/z 337[M+H]+
【0152】
(2)3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シロラン]-10-オンの合成
製造例10-(2)に準じ、製造例11-(1)で得た化合物(276mg,820μmol)から、標記化合物(115mg,328μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.04-1.11(m,4H),1.91-2.00(m,4H),3.09(s,12H),6.75(d,J=3.12Hz,2H),6.85(dd,J=8.98,2.73Hz,2H),8.40(d,J=8.98Hz,2H).
ESI-MS m/z 351[M+H]+
【0153】
製造例12
3,3’-(シリナン-1,1-ジイル)ビス(N,N-ジエチルアニリン)の合成
【化42】
【0154】
窒素雰囲気下、3-ブロモ-N,N-ジエチルアニリン(6.16g,27.0mmol,CAS No.53142-19-1)のジエチルエーテル(70.0mL)溶液に、氷浴下n-ブチルリチウム(2.67M n-ヘキサン溶液,10.6mL,28.4mmol)をゆっくり滴下した。同温で3時間撹拌した後、シクロペンタメチレンジクロロシラン(2.74g,16.2mmol)のジエチルエーテル(10.0mL)溶液を滴下した。室温まで昇温させ、18時間撹拌した。水を加えて反応を停止させ、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(3.52g,8.92mmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.06-1.21(m,16H),1.46-1.58(m,2H),1.74-1.85(m,4H),3.32(q,J=7.03Hz,8H),6.69(ddd,J=8.30,2.83,0.98Hz,2H),6.81-6.91(m,4H),7.20(dd,J=8.40,7.22Hz,2H).
ESI-MS m/z 395[M+H]+
【0155】
製造例13
1,1’-(シリナン-1,1-ジイルビス(3,1-フェニレン))ジピロリジンの合成
【化43】
【0156】
製造例12に準じ、1-(3-ブロモフェニル)ピロリジン(882mg,3.90mmol,CAS No.219928-13-9)から標記化合物(365mg,934μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.13-1.23(m,4H),1.46-1.56(m,2H),1.74-1.85(m,4H),1.94-2.04(m,8H),3.22-3.32(m,8H),6.54-6.62(m,2H),6.78(d,J=2.34Hz,2H),6.85(d,J=7.03Hz,2H),7.21(dd,J=8.20,7.03Hz,2H).
【0157】
製造例14
7,7’-(シリナン-1,1-ジイル)ビス(1-アリル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン)の合成
【化44】
【0158】
(1)1-アリル-7-ブロモ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリンの合成
7-ブロモ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(10.6g,50.0mmol,CAS No.114744-51-3)、炭酸カリウム(27.6g,200mmol)、アリルブロミド(12.1g,100mmol)及びDMF(20.0mL)の混合物を室温で24時間撹拌した。反応混合物に水を加えて反応を停止させ、酢酸エチル及び飽和食塩水を加えた。分取した有機層を合わせ、水及び飽和食塩水で洗浄した。混合物を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製し標記化合物(12.4g,49.2mmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.89-1.98(m,2H),2.69(t,J=6.25Hz,2H),3.24-3.29(m,2H),3.83(dt,J=4.88,1.66Hz,2H),5.15(t,J=1.56Hz,1H),5.17-5.21(m,1H),5.74-5.89(m,1H),6.60-6.68(m,2H),6.77(d,J=7.81Hz,1H).
【0159】
(2)7,7’-(シリナン-1,1-ジイル)ビス(1-アリル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン)の合成
製造例12に準じ、製造例14-(1)で得た化合物(5.04g,20.0mmol)から標記化合物(2.30g,5.20mmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.03-1.14(m,4H),1.43-1.53(m,2H),1.67-1.84(m,4H),1.88-2.01(m,4H),2.75(t,J=6.44Hz,4H),3.19-3.31(m,4H),3.84(dt,J=5.47,1.56Hz,4H),5.06-5.21(m,4H),5.81(ddt,J=17.13,10.30,5.22Hz,2H),6.70-6.81(m,4H),6.92(d,J=7.42Hz,2H).
【0160】
製造例15
3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
【化45】
【0161】
(1)ジ-tert-ブチル 2-ホルミルテレフタラートの合成
ジ-tert-ブチル 2-ブロモテレフタラート(3.57g,10.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.16g,1.00mmol)、トリ-n-ブチル(1-プロペニル)チン(4.30g,13.0mmol)及びNMP(10.0mL)の混合物を120℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製しジ-tert-ブチル 2-(プロパ-1-エン-1-イル)テレフタラート(2.90g,9.11mmol)を幾何異性体の混合物として得た。
ジ-tert-ブチル 2-(プロパ-1-エン-1-イル)テレフタラート(2.87g,9.00mmol)、1,4-ジオキサン(80.0mL),水(20.0mL)、2,6-ルチジン(2.09mL,18.0mmol)及び四酸化オスミウム(4%水溶液、1.43mL,225μmol)の混合物に、過ヨウ素酸ナトリウム(5.78g,27.0mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。反応混合物に水及びDCMを加え、室温で5分間撹拌した。フェーズセパレーターで有機層を分取し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製し標記化合物(1.45g,4.73mmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.62(s,9H),1.62(s,9H),7.91(d,J=8.59Hz,1H),8.17-8.25(m,1H),8.43(d,J=1.17Hz,1H),10.56(s,1H).
【0162】
(2)3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
製造例15-(1)で得た化合物(1.38g,4.50mmol)のDCM(20.0mL)溶液にTFA(3.47mL)を加え、室温で18時間撹拌した。溶媒を減圧留去することで標記化合物(874mg,4.50mmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):6.67(s,1H),7.96(d,J=8.20Hz,1H),8.12-8.16(m,1H),8.19(dd,J=8.01,1.37Hz,1H).
ESI-MS m/z 193[M-H]-
【0163】
製造例16
1-ヒドロキシ-3-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
【化46】
【0164】
(1)ジ-tert-ブチル 4-ホルミルイソフタラートの合成
製造例15-(1)に準じ、ジ-tert-ブチル 4-ブロモイソフタラート(1.18g,3.30mmol)からジ-tert-ブチル 4-(プロパ-1-エン-1-イル)イソフタラート(1.05g,3.30mmol)を幾何異性体の混合物として得た。製造例15-(1)に準じ、ジ-tert-ブチル 4-(プロパ-1-エン-1-イル)イソフタラート(955mg,3.00mmol)から標記化合物(610mg,1.99mmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.62(s,9H),1.64(s,9H),7.90(d,J=8.20Hz,1H),8.16-8.21(m,1H),8.49(d,J=1.17Hz,1H),10.63(d,J=0.78Hz,1H).
【0165】
(2)1-ヒドロキシ-3-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
製造例15-(2)に準じ、製造例16-(1)で得た化合物(582mg,1.90mmol)から標記化合物(369mg,1.90mmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):6.68-6.77(m,1H),7.76-7.86(m,1H),8.20-8.27(m,1H),8.29-8.37(m,2H),13.53(br.s.,1H).
ESI-MS m/z 193[M-H]-
【0166】
製造例17
6-フルオロ-3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
【化47】
【0167】
(1)ジ-tert-ブチル 2-フルオロ-5-ホルミルテレフタラートの合成
製造例15-(1)に準じ、製造例3の方法で得られるジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-フルオロテレフタラート(2.26g,6.02mmol)から標記化合物(935mg,2.88mmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.63(s,9H),1.65(s,9H),7.60(d,J=10.54Hz,1H),8.40(d,J=7.03Hz,1H),10.53(s,1H).
【0168】
(2)6-フルオロ-3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
製造例15-(2)に準じ、製造例17-(1)の方法で得られる化合物(163mg,503μmol)から標記化合物の粗生成物(119mg)を得た。
ESI-MS m/z 211[M-H]-
【0169】
製造例18
6-クロロ-3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
【化48】
【0170】
(1)ジ-tert-ブチル 2-クロロ-5-ホルミルテレフタラートの合成
製造例15-(1)に準じ、製造例1の方法で得られるジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-クロロテレフタラート(568mg,1.45mmol)からジ-tert-ブチル 2-クロロ-5-(プロパ-1-エン-1-イル)テレフタラート(405mg,1.15mmol)を幾何異性体の混合物として得た。
製造例15-(1)に準じ、2-クロロ-5-(プロパ-1-エン-1-イル)テレフタラート(388mg,1.10mmol)から標記化合物(330mg,968μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.61(s,9H),1.63(s,9H),7.91(s,1H),8.18(s,1H),10.54(s,1H).
【0171】
(2)6-クロロ-3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
製造例15-(2)に準じ、製造例18-(1)で得た化合物(324mg,950μmol)から標記化合物(217mg,949μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):6.66(br.s.,1H),7.94(s,1H),8.31(br.s.,1H).
ESI-MS m/z 227[M-H]-
【0172】
製造例19
6-ブロモ-3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
【化49】
【0173】
(1)ジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-ホルミルテレフタラートの合成
ジ-tert-ブチル 2,5-ジブロモテレフタラート(872mg,2.00mmol,CAS#868158-34-3)、トリ-n-ブチル(1-プロペニル)チン(728mg,2.20mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(231mg,200μmol)及びNMP(4.00mL)の混合物を、120℃で3時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することでジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-(プロパ-1-エン-1-イル)テレフタラート(710mg,1.79mmol)を幾何異性体の混合物として得た。
製造例15-(1)に準じ、ジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-(プロパ-1-エン-1-イル)テレフタラート(695mg,1.75mmol)から標記化合物(220mg,571μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.62(s,9H),1.63(s,9H),8.12(s,2H),10.54(s,1H).
【0174】
(2)6-ブロモ-3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
製造例15-(2)に準じ、製造例19-(1)で得た化合物(212mg,550μmol)から標記化合物(150mg,549μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):6.68(br.s,1H),7.92(br.s.,1H),8.13(s,1H),8.35(br.s.,1H).
ESI-MS m/z 271[M-H]-
【0175】
製造例20
6-(ジフルオロメチル)-3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
【化50】
【0176】
(1)ジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-(ジフルオロメチル)テレフタラートの合成
製造例19-(1)で得られたジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-ホルミルテレフタラート(308mg,800μmol)のDCM(3.00mL)溶液に、氷浴下DAST(262μL,2.00mmol)を滴下した。反応混合物を室温で12時間撹拌した後、氷浴下、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えることで反応停止させた。混合物にジクロロメタン及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、室温で5分撹拌した。有機層をフェーズセパレーターで分取し、溶出物を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(301mg,739μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.61(s,9H),1.62(s,9H),7.39(t,J=55.45Hz,1H),8.00(s,1H),8.15(s,1H).
【0177】
(2)ジ-tert-ブチル 2-(ジフルオロメチル)-5-ホルミルテレフタラートの合成
製造例15-(1)に準じ、製造例20-(1)の方法で得られる化合物(326mg,800μmol)から標記化合物(132mg,370μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.52(s,9H),1.55(s,9H),7.38(t,J=55.06Hz,1H),8.17(s,1H),8.26(s,1H),10.50(s,1H).
【0178】
(3)6-(ジフルオロメチル)-3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
製造例15-(2)に準じ、製造例20-(2)で得た化合物(128mg,360μmol)から標記化合物(88.0mg,360μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):6.78(d,J=8.20Hz,1H),7.62(t,J=54.87Hz,1H),8.07(s,1H),8.17(s,1H),8.43(d,J=8.20Hz,1H).
【0179】
製造例21
3-ヒドロキシ-6-(メトキシメチル)-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
【化51】
【0180】
(1)ジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-(ヒドロキシメチル)テレフタラートの合成
製造例19-(1)で得たジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-ホルミルテレフタラート(385mg,1.00mmol)のTHF(5.00mL)溶液に、氷浴下水素化ホウ素ナトリウム(37.8mg,1.00mmol)を加えた。反応混合物を同温で1時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液とジクロロメタンを加え、5分間撹拌した。有機層をフェーズセパレーターで分取し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(287mg,741μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.61(s,9H),1.61(s,9H),3.62(t,J=7.22Hz,1H),4.73(d,J=7.42Hz,2H),7.72(s,1H),8.10(s,1H).
【0181】
(2)ジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-(ブロモメチル)テレフタラートの合成
製造例21-(1)で得た化合物(271mg,700μmol)のDCM(5.00mL)溶液に、氷浴下トリフェニルホスフィン(275mg,1.05mmol)及び四臭化炭素(464mg,1.40mmol)を加えた。同温で2時間撹拌した後、反応混合物を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製し、標記化合物(230mg,511μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.62(s,9H),1.63(s,9H),4.85(s,2H),7.68(s,1H),8.08(s,1H).
【0182】
(3)ジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-(メトキシメチル)テレフタラートの合成
製造例21-(2)で得た化合物(221mg,490μmol)のジクロロメタン(3.00mL)溶液に、氷浴下ナトリウムメトキシド(28%メタノール溶液、177μL,735μmol)を滴下した。同温で2時間撹拌した後、反応混合物にTHF(3.00mL)を加え、同温でさらに3時間撹拌した。反応混合物を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(46.0mg,115μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.59(s,9H),1.61(s,9H),3.46(s,3H),4.74(s,2H),7.86(s,1H),8.04(s,1H).
【0183】
(4)ジ-tert-ブチル 2-ホルミル-5-(メトキシメチル)テレフタラートの合成
製造例15-(1)に準じ、製造例21-(3)で得た化合物(45.0mg,112μmol)からジ-tert-ブチル 2-(メトキシメチル)-5-(プロパ-1-エン-1-イル)テレフタラート(32.0mg,88.0μmol)を幾何異性体の混合物として得た。
製造例15-(1)に準じ、ジ-tert-ブチル 2-(メトキシメチル)-5-(プロパ-1-エン-1-イル)テレフタラート(30.0mg,83.0μmol)から標記化合物(28.0mg,80.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.61(s,9H),1.63(s,9H),3.51(s,3H),4.87(s,2H),8.12(s,1H),8.32(s,1H),10.53(s,1H).
【0184】
(5)3-ヒドロキシ-6-(メトキシメチル)-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
製造例15-(2)に準じ、製造例21-(4)で得た化合物(27.0mg,77.0μmol)から標記化合物(18.0mg,76.0μmol)を、互変異性体の混合物として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):3.37(s,3H),4.78(s,2H),6.70(d,J=8.20Hz,1H),7.93(s,1H),7.99(s,1H),8.27(d,J=8.20Hz,1H),13.59(br.s.,1H).
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):3.40(s,3H),4.83(s,2H),8.10(s,1H),8.22(s,1H),10.45(s,1H),13.59(br.s.,1H).
【0185】
製造例22
3-ヒドロキシ-1-オキソ-6-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
【化52】
【0186】
(1)ジ-tert-ブチル 2-ホルミル-5-(トリフルオロメチル)テレフタラートの合成
製造例15-(1)に準じ、製造例2-(3)の方法で得られるジ-tert-ブチル 2-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)テレフタラート(205mg,482μmol)から標記化合物(165mg,441μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.55(s,9H),1.59(s,9H),8.13(s,1H),8.23(s,1H),10.63(s,1H).
【0187】
(2)3-メトキシ-1-オキソ-6-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
製造例15-(2)に準じ、製造例22-(1)で得た化合物(165mg,441μmol)から、標記化合物(125mg,453μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):3.59(s,3H),6.67(s,1H),8.13(s,1H),8.26(s,1H).
ESI-MS m/z 275[M-H]-
【0188】
(3)3-ヒドロキシ-1-オキソ-6-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
製造例22-(2)で得た化合物(125mg,453μmol)のメタノール(1.00mL)溶液に5N塩酸(10.0mL,50.0mmol)を加え、110℃で2.5時間撹拌した。室温に戻したのち、溶媒を減圧留去することで標記化合物(103mg,393μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):6.81(br.s.,1H),8.06(s,1H),8.21(s,1H).
ESI-MS m/z 261[M-H]-
【0189】
製造例23
3-ヒドロキシ-6-メトキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
【化53】
【0190】
(1)tert-ブチル 3,6-ジメトキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
製造例17-(1)で得たジ-tert-ブチル 2-フルオロ-5-ホルミルテレフタラート(120mg,370μmol)のTHF(3.00mL)溶液に、氷浴下ナトリウムメトキシド(5.4Mメタノール溶液、72.0μL,388μmol)を加えた。同温で2時間撹拌した後、室温で1時間撹拌した。少量の酢酸を加えて反応を停止させ、酢酸エチルで希釈した。混合物を水で洗浄し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(27.0mg,92.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.59(s,9H),3.63(s,3H),3.95(s,3H),6.26(s,1H),7.38(s,1H),7.78(s,1H).
【0191】
(2)3-ヒドロキシ-6-メトキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
製造例22-(3)に準じ、製造例23-(1)で得た化合物(27.0mg,92.0μmol)から標記化合物を含む混合物(19.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 225[M+H]+
【0192】
製造例24
3-ヒドロキシ-6-(メチルチオ)-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
【化54】
【0193】
(1)ジ-tert-ブチル 2-ホルミル-5-(メチルチオ)テレフタラートの合成
製造例17-(1)で得たジ-tert-ブチル 2-フルオロ-5-ホルミルテレフタラート(120mg,370μmol)のTHF(5.00mL)溶液にナトリウムメタンチオラート(31.3mg,444μmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。混合物を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去することで標記化合物の粗生成物(139mg)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.62(s,9H),1.63(s,9H),2.53(s,3H),7.68(s,1H),8.42(s,1H),10.47(s,1H).
【0194】
(2)3-ヒドロキシ-6-(メチルチオ)-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸の合成
製造例15-(2)に準じ、製造例24-(1)で得た化合物(137mg)から標記化合物の粗生成物(132mg)を互変異性体の混合物として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):2.51(s,3H),6.67(s,1H),7.72(s,1H),8.03(s,1H).
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):2.50(s,3H),7.65(s,1H),8.31(s,1H),10.35(s,1H).
ESI-MS m/z 239[M-H]-
【0195】
実施例1
3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化55】
【0196】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
製造例5-(2)で得られたtert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート(100mg,128μmol)、アゼチジン(20.5mg,360μmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(11.8mg,13.0μmol)、XPhos(18.4mg,39.0μmol)、炭酸セシウム(117mg,360μmol)及び1,4-ジオキサン(5.00mL)の混合液を、窒素雰囲気下、封管中110℃で4.5時間撹拌した。不溶物を濾過し、ろ液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(62.0mg,105μmol)を得た。
ESI-MS m/z 593[M+H]+
【0197】
(2)2-(3-(アゼチジン-1-イウム-1-イリデン)-7-(アゼチジン-1-イル)-3H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-イル)-4-カルボキシベンゾアート TFA塩の合成
実施例1-(1)で得た化合物(62.0mg,105μmol)のDCM(2.00mL)溶液に、TFA(200μL)を加え、室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧留去し、残存のTFAをメタノールで共沸除去することで標記化合物の粗生成物(70.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 537[M+H]+
【0198】
(3)3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例1-(2)の方法で得られる化合物(15.0mg)のDMF(1.00mL)溶液に、TEA(19.0μL,138μmol)、N-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩(13.5mg,53.0μmol)及びPyBOP(18.0mg,35.0μmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した後、混合物を直接逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(水/アセトニトリル、0.1%ギ酸)で精製した。目的物を含むフラクションを回収し、余剰のアセトニトリルを減圧留去した。残渣の水層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(10.3mg,16.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.16-1.26(m,4H),1.71(br.s.,2H),1.98(br.s.,2H),2.10(br.s.,2H),2.31-2.44(m,4H),3.61-3.69(m,2H),3.76-3.84(m,2H),3.90(t,J=7.42Hz,8H),6.25(dd,J=8.79,2.54Hz,2H),6.72(s,2H),6.75-6.80(m,1H),6.77(d,J=8.59Hz,2H),6.84(d,J=2.73Hz,2H),7.74(s,1H),7.84(dd,J=8.01,1.37Hz,1H),7.97-8.02(m,1H).
ESI-MS m/z 659[M+H]+
【0199】
実施例2
N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3’,7’-ビス(3-フルオロアゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化56】
【0200】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ビス(3-フルオロアゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
窒素雰囲気下、製造例5-(2)で得たtert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート(19.0mg,24.0μmol)、3-フルオロアゼチジン塩酸塩(7.62mg,68.0μmol,CAS No. 617718-46-4)、炭酸セシウム(47.7mg,146μmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(2.23mg,2.44μmol)、XPhos(3.49mg,7.32μmol)及び1,4-ジオキサン(3.00mL)の混合物を、封管中100℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、DCMで希釈した。不溶物を濾過し、溶出物を濃縮した。残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製し標記化合物(7.00mg,11.0μmol)を得た。
ESI-MS m/z 629[M+H]+
【0201】
(2)4-カルボキシ-2-(3-(3-フルオロアゼチジン-1-イウム-1-イリデン)-7-(3-フルオロアゼチジン-1-イル)-3H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-イル)ベンゾアート TFA塩の合成
実施例1-(2)に準じ、実施例2-(1)で得た化合物(7.00mg,11.0μmol)から標記化合物の粗生成物(8.00mg)を得た。
ESI-MS m/z 573[M+H]+
【0202】
(3)N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3’,7’-ビス(3-フルオロアゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例2-(2)で得た化合物(8.00mg)のDMF(1.00mL)溶液に、N-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩(6.81mg,27.0μmol)、TEA(9.74μL,70.0μmol)及びPyBOP(9.09mg,17.0μmol)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した後、直接逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(水/アセトニトリル、0.1%ギ酸)で精製した。得られた粗生成物をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(2.40mg,3.45μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.14-1.24(m,4H),1.73(br.s.,2H),1.99(br.s.,2H),2.11(br.s.,2H),3.60-3.68(m,2H),3.77-3.86(m,2H),3.92-4.06(m,4H),4.15-4.27(m,4H),5.31-5.54(m,2H),6.30(dd,J=8.79,2.54Hz,2H),6.72(s,2H),6.81-6.83(m,1H),6.82(d,J=8.59Hz,2H),6.87(d,J=2.73Hz,2H),7.75(d,J=0.78Hz,1H),7.82-7.88(m,1H),8.01(d,J=8.20Hz,1H).
ESI-MS m/z 695[M+H]+
【0203】
実施例3
3’,7’-ビス(3,3-ジフルオロアゼチジン-1-イル)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化57】
【0204】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ビス(3,3-ジフルオロアゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
実施例1-(1)に準じ、製造例5-(2)で得たtert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート(19.0mg,24.0μmol)と3,3-ジフルオロアゼチジン塩酸塩(8.85mg,68.0μmol,CAS No. 288315-03-7)から標記化合物(14.0mg,21.0μmol)を得た。
ESI-MS m/z 665[M+H]+
【0205】
(2)4-カルボキシ-2-(3-(3,3-ジフルオロアゼチジン-1-イウム-1-イリデン)-7-(3,3-ジフルオロアゼチジン-1-イル)-3H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-イル)ベンゾアート TFA塩の合成
実施例1-(2)に準じ、実施例3-(1)で得た化合物(14.0mg,21.0μmol)から標記化合物の粗生成物(16.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 609[M+H]+
【0206】
(3)3’,7’-ビス(3,3-ジフルオロアゼチジン-1-イル)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例1-(3)に準じ、実施例3-(2)で得た化合物(16.0mg)から標記化合物の粗生成物を得た。さらにシリカゲル薄層クロマトグラフィー(DCM/ジエチルエーテル)で精製することで標記化合物(6.20mg,8.48μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.17-1.25(m,4H),1.74(br.s.,2H),1.99(br.s.,2H),2.12(br.s.,2H),3.61-3.67(m,2H),3.80-3.85(m,2H),4.25(t,J=11.7Hz,8H),6.34(dd,J=8.59,2.73Hz,2H),6.73(s,2H),6.80-6.86(m,1H),6.87(d,J=8.59Hz,2H),6.90(d,J=2.73Hz,2H),7.77(s,1H),7.84(dd,J=8.01,1.37Hz,1H),8.00-8.04(m,1H).
ESI-MS m/z 731[M+H]+
【0207】
実施例4
N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3’,7’-ビス(3-メトキシアゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化58】
【0208】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ビス(3-メトキシアゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
実施例1-(1)に準じ、製造例5-(2)で得たtert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート(19.0mg,24.0μmol)と3-メトキシアゼチジン塩酸塩(8.44mg,68.0μmol,CAS No. 148644-09-1)から標記化合物の粗生成物(18.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 653[M+H]+
【0209】
(2)4-カルボキシ-2-(3-(3-メトキシアゼチジン-1-イウム-1-イリデン)-7-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)-3H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-イル)ベンゾアート TFA塩の合成
実施例1-(2)に準じ、実施例4-(1)で得た化合物(18.0mg)から標記化合物の粗生成物(20.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 597[M+H]+
【0210】
(3)N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3’,7’-ビス(3-メトキシアゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例1-(3)に準じ、実施例4-(2)で得た化合物(20.0mg)から標記化合物(8.40mg,12.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.15-1.26(m,4H),1.72(br.s.,2H),1.98(br.s.,2H),2.12(br.s.,2H),3.33(s,6H),3.61-3.67(m,2H),3.69-3.78(m,4H),3.78-3.84(m,2H),4.11(t,J=7.42Hz,4H),4.30-4.37(m,2H),6.28(dd,J=8.79,2.54Hz,2H),6.71(s,2H),6.75-6.81(m,1H),6.78(d,J=8.59Hz,2H),6.86(d,J=2.73Hz,2H),7.73(s,1H),7.84(dd,J=8.01,1.37Hz,1H),7.99(d,J=8.59Hz,1H).
ESI-MS m/z 719[M+H]+
【0211】
実施例5
N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3’,7’-ビス(3-メチルアゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化59】
【0212】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ビス(3-メチルアゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
実施例1-(1)に準じ、製造例5-(2)で得たtert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート(19.0mg,24.0μmol)と3-メチルアゼチジン塩酸塩(7.35mg,68.0μmol,CAS No. 935669-28-6)から標記化合物(10.0mg,16.0μmol)を得た。
ESI-MS m/z 621[M+H]+
【0213】
(2)4-カルボキシ-2-(3-(3-メチルアゼチジン-1-イウム-1-イリデン)-7-(3-メチルアゼチジン-1-イル)-3H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-イル)ベンゾアート TFA塩の合成
実施例1-(2)に準じ、実施例5-(1)で得た化合物(10.0mg,16.0μmol)から標記化合物の粗生成物(11.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 565[M+H]+
【0214】
(3)N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3’,7’-ビス(3-メチルアゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例3-(3)に準じ、実施例5-(2)で得た化合物(11.0mg)から標記化合物の粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(2.00mg,2.91μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.17-1.23(m,4H),1.26(s,3H),1.28(s,3H),1.71(br.s.,2H),1.98(br.s.,2H),2.10(br.s.,2H),2.76-2.91(m,2H),3.40-3.52(m,4H),3.59-3.69(m,2H),3.76-3.85(m,2H),3.98-4.07(m,4H),6.24(dd,J=8.59,2.73Hz,2H),6.72(s,2H),6.72-6.77(m,1H),6.76(d,J=8.59Hz,2H),6.82(d,J=2.73Hz,2H),7.73(s,1H),7.83(dd,J=8.01,1.37Hz,1H),7.99(d,J=7.42Hz,1H).
ESI-MS m/z 687[M+H]+
【0215】
実施例6
3’,7’-ビス(3,3-ジメチルアゼチジン-1-イル)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化60】
【0216】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ビス(3,3-ジメチルアゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
実施例1-(1)に準じ、製造例5-(2)で得たtert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート(20.0mg,26.0μmol)と3,3-ジメチルアゼチジン塩酸塩(8.74mg,72.0μmol,CAS No. 89381-03-3)から標記化合物(14.0mg,22.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.17-1.25(m,4H),1.31(s,12H),1.55(s,9H),1.72(br.s.,2H),1.97-2.18(m,4H),3.60(s,8H),6.29(dd,J=8.79,2.54Hz,2H),6.82(d,J=2.73Hz,2H),6.86(d,J=8.59Hz,2H),7.83(s,1H),7.94(d,J=7.81Hz,1H),8.10(dd,J=8.20,1.17Hz,1H).
【0217】
(2)4-カルボキシ-2-(3-(3,3-ジメチルアゼチジン-1-イウム-1-イリデン)-7-(3,3-ジメチルアゼチジン-1-イル)-3H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-イル)ベンゾアート TFA塩の合成
実施例1-(2)に準じ、実施例6-(1)で得た化合物(14.0mg,22.0μmol)から標記化合物の粗生成物(16.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 593[M+H]+
【0218】
(3)3’,7’-ビス(3,3-ジメチルアゼチジン-1-イル)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例2-(3)に準じ、実施例6-(2)で得た化合物(16.0mg)から標記化合物の粗生成物を得た。さらにシリカゲル薄層クロマトグラフィー(ジエチルエーテル)で精製することで標記化合物(5.00mg,6.99μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.16-1.25(m,4H),1.31(s,12H),1.71(br.s.,2H),1.98(br.s.,2H),2.10(br.s.,2H),3.59(s,8H),3.61-3.67(m,2H),3.78-3.84(m,2H),6.24(dd,J=8.79,2.54Hz,2H),6.72(s,2H),6.73-6.78(m,3H),6.82(d,J=2.73Hz,2H),7.71(s,1H),7.82(dd,J=8.01,1.37Hz,1H),7.99(d,J=7.81Hz,1H).
ESI-MS m/z 715[M+H]+
【0219】
実施例7
3’,7’-ジ(7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-イル)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化61】
【0220】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ジ(7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
窒素雰囲気下、製造例5-(2)で得たtert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート(12.0mg,15.0μmol)、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(4.19mg,43.0μmol,CAS No. 279-40-3)、炭酸セシウム(14.1mg,43.0μmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(1.41mg,1.54μmol)、XPhos(2.20mg,4.62μmol)及び1,4-ジオキサン(2.00mL)の混合物を、封管中100℃で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、DCMで希釈した。不溶物を濾過し、溶出物を濃縮した。残渣をNHシリカゲル薄層クロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製し、標記化合物の粗生成物(13.0mg)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.15-1.23(m,4H),1.56(s,9H),1.57-1.63(m,8H),1.74-1.82(m,10H),2.03(br.s.,2H),2.12(br.s.,2H),4.20(br.s.,4H),6.72(dd,J=8.59,2.73Hz,2H),6.83(d,J=8.98Hz,2H),7.31(d,J=2.73Hz,2H),7.84(d,J=0.78Hz,1H),7.93-7.97(m,1H),8.12(dd,J=8.01,1.37Hz,1H).
【0221】
(2)2-(3-(7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-イウム-7-イリデン)-7-(7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-イル)-3H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-イル)-4-カルボキシベンゾアート TFA塩の合成
実施例1-(2)に準じ、実施例7-(1)で得た化合物(13.0mg)から標記化合物の粗生成物(15.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 617[M+H]+
【0222】
(3)3’,7’-ジ(7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-イル)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例1-(3)に準じ、実施例7-(2)で得た化合物(15.0mg)から標記化合物(2.10mg,2.84μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.14-1.25(m,4H),1.39-1.47(m,8H),1.73-1.81(m,10H),1.99(br.s.,2H),2.14(br.s.,2H),3.61-3.67(m,2H),3.78-3.85(m,2H),4.19(br.s.,4H),6.64-6.70(m,2H),6.72(s,2H),6.72-6.75(m,2H),6.80(t,J=5.27Hz,1H),7.31(d,J=2.73Hz,2H),7.74(d,J=0.78Hz,1H),7.85(dd,J=8.20,1.56Hz,1H),7.98-8.03(m,1H).
ESI-MS m/z 739[M+H]+
【0223】
実施例8
N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3’,7’-ジ(ピペリジン-1-イル)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化62】
【0224】
(1)3-オキソ-3’,7’-ジ(ピペリジン-1-イル)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸の合成
窒素雰囲気下、製造例5-(2)で得られたtert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート(25.0mg,32.0μmol)、ピペリジン(13.7mg,161μmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(5.88mg,6.42μmol)、XPhos(6.12mg,13.0μmol)、炭酸セシウム(29.3mg,90.0μmol)及び1,4-ジオキサン(2.00mL)の混合物を、封管中110℃で3時間撹拌した。室温まで冷却した後、DCMで希釈した。不溶物を濾過し、ろ液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで中間体を得た。得られた中間体をDCM(4.00mL)に溶解させ、TFA(1.00mL)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した後、溶媒を減圧留去した。残渣を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(7.20mg,12.0μmol)を得た。
ESI-MS m/z 593[M+H]+
【0225】
(2)N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3’,7’-ジ(ピペリジン-1-イル)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例8-(1)で得た化合物(7.00mg,12.0μmol)、PyBOP(7.37mg,14.0μmol)、N-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩(3.60mg,14.0μmol)、トリエチルアミン(9.88μL,71.0μmol)及びDMF(1.00mL)の混合物を室温で2時間撹拌した。氷を加えて反応を停止させ、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製し、粗精製物を得た。得られた粗精製物をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(DCM/MeOH)で精製することで標記化合物(2.20mg,3.08μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.23-1.30(m,4H),1.56-1.63(m,4H),1.65-1.78(m,10H),1.95-2.05(m,2H),2.08-2.21(m,2H),3.14-3.24(m,8H),3.59-3.69(m,2H),3.77-3.86(m,2H),6.72(s,2H),6.72-6.77(m,3H),6.80-6.86(m,2H),7.36(d,J=2.73Hz,2H),7.72(s,1H),7.82(dd,J=8.01,1.37Hz,1H),7.97-8.02(m,1H).
ESI-MS m/z 715[M+H]+
【0226】
実施例9
N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3’,7’-ジ(1,4-オキサゼパン-4-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化63】
【0227】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ジ(1,4-オキサゼパン-4-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
実施例1-(1)に準じ、製造例5-(2)で得られたtert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート(20.0mg,26.0μmol)と1,4-オキサゼパン(7.27mg,72.0μmol)から標記化合物(9.00mg,13.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.20-1.31(m,4H),1.57(s,9H),1.74(br.s.,2H),1.97-2.06(m,6H),2.11(br.s.,2H),3.59-3.72(m,12H),3.80-3.86(m,4H),6.57(dd,J=8.98,3.12Hz,2H),6.84(d,J=8.59Hz,2H),7.14(d,J=2.73Hz,2H),7.90(d,J=1.17Hz,1H),7.97(dd,J=7.81,0.78Hz,1H),8.14(dd,J=8.01,1.37Hz,1H).
ESI-MS m/z 681[M+H]+
【0228】
(2)2-(3-(1,4-オキサゼパン-4-イウム-4-イリデン)-7-(1,4-オキサゼパン-4-イル)-3H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-イル)-4-カルボキシベンゾアート TFA塩の合成
実施例1-(2)に準じ、実施例9-(1)で得た化合物(9.00mg,13.0μmol)から標記化合物の粗生成物(10.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 625[M+H]+
【0229】
(3)N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3’,7’-ジ(1,4-オキサゼパン-4-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例9-(2)で得た化合物(10.0mg)のDMF(2.00mL)溶液に、TEA(11.0μL,81.0μmol)、N-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩(4.13mg,16.0μmol)及びPyBOP(8.45mg,16.0μmol)を加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌した後、氷を加え反応を停止させた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで粗生成物を得た。さらに粗生成物をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(DCM/MeOH)で精製することで標記化合物(4.05mg,5.42μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.15-1.30(m,4H),1.73(br.s.,2H),1.91-2.07(m,6H),2.11(br.s.,2H),3.56-3.72(m,14H),3.77-3.88(m,6H),6.53(dd,J=8.79,2.93Hz,2H),6.72(s,2H),6.76(d,J=8.98Hz,2H),6.79-6.85(m,1H),7.14(d,J=3.12Hz,2H),7.77(s,1H),7.85(dd,J=8.01,1.37Hz,1H),8.01(d,J=7.81Hz,1H).
ESI-MS m/z 747[M+H]+
【0230】
実施例10
N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3’,7’-ビス(ジプロピルアミノ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化64】
【0231】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ビス(ジプロピルアミノ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
実施例1-(1)に準じ、製造例5-(2)で得られたtert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート(20.0mg,26.0μmol)とジプロピルアミン(7.28mg,72.0μmol)から標記化合物(3.00mg,4.41μmol)を得た。
ESI-MS m/z 681[M+H]+
【0232】
(2)4-カルボキシ-2-(7-(ジプロピルアミノ)-3-(ジプロピルイミニオ)-3H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-イル)ベンゾアート TFA塩の合成
実施例1-(2)に準じ、実施例10-(1)で得た化合物(3.00mg,4.41μmol)から標記化合物の粗生成物(7.00mg)を得た。
ESI-MS m/z 625[M+H]+
【0233】
(3)N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3’,7’-ビス(ジプロピルアミノ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例10-(2)で得た化合物(7.00mg)のDMF(2.00mL)溶液に、TEA(7.92μL,57.0μmol)、N-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩(2.89mg,11.0μmol)及びPyBOP(5.92mg,11.0μmol)を加えた。反応混合物を室温で4.5時間撹拌した後、氷を加え反応を停止させた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で3回洗浄した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(ジエチルエーテル)で精製することで標記化合物(2.36mg,3.16μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):0.92(t,J=7.42Hz,12H),1.17-1.24(m,4H),1.56-1.66(m,8H),1.72(br.s.,2H),1.99(br.s.,2H),2.14(br.s.,2H),3.21-3.29(m,8H),3.62-3.69(m,2H),3.79-3.84(m,2H),6.43(dd,J=8.98,3.12Hz,2H),6.70(d,J=8.98Hz,2H),6.71(s,2H),6.73(br.s.,1H),7.05(d,J=2.73Hz,2H),7.75(s,1H),7.84(dd,J=7.81,1.56Hz,1H),7.99(d,J=7.81Hz,1H).
ESI-MS m/z 747[M+H]+
【0234】
実施例11
3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-N-(2-(2-(2-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化65】
【0235】
(1)tert-ブチル (1-(3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-イル)-1-オキソ-5,8,11-トリオキサ-2-アザトリデカン-13-イル)カルバマートの合成
実施例1-(2)で得られる化合物(70.0mg)、13-アミノ-5,8,11-トリオキサ-2-アザトリデカノイックアシッド 1,1-ジメチルエチルエステル(37.7mg,129μmol, CAS No. 101187-40-0)、PyBop(84.0mg,161μmol)、TEA(90.0μL,645μmol)及びDMF(2.00mL)の混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物に氷を加え反応を停止させた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で3回洗浄した。混合物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(67.0mg,83.0μmol)を得た。
ESI-MS m/z 811[M+H]+
【0236】
(2)4-((2-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)-2-(3-(アゼチジン-1-イウム-1-イリデン)-7-(アゼチジン-1-イル)-3H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-イル)ベンゾアート 2TFA塩の合成
実施例11-(1)で得た化合物(67.0mg,83.0μmol)のDCM(4.00mL)溶液にTFA(800μL)を加え、室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧留去することにより標記化合物の粗生成物(80.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 711[M+H]+
【0237】
(3)3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-N-(2-(2-(2-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例11-(2)で得た化合物(80.0mg)、THF(3.03mL)及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(3.03mL)の混合物に、メチル 2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(79.0mg,511μmol,CAS No. 55750-48-6)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した後、酢酸エチルで希釈した。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。混合物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製することで標記化合物(23.0mg,29.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.15-1.29(m,4H),1.71(br.s.,2H),1.97(br.s.,2H),2.11(br.s.,2H),2.37(quin,J=7.22Hz,4H),3.45-3.54(m,6H),3.55-3.63(m,6H),3.63-3.68(m,4H),3.90(t,J=7.22Hz,8H),6.24(dd,J=8.59,2.73Hz,2H),6.60(s,2H),6.75(d,J=8.59Hz,2H),6.82(d,J=2.73Hz,2H),7.03-7.09(m,1H),7.75-7.80(m,1H),7.96-8.00(m,2H).
ESI-MS m/z 791[M+H]+
【0238】
実施例12
3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-5-カルボキサミドの合成
【化66】
【0239】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-5-カルボキシラートの合成
実施例2-(1)に準じ、製造例6-(2)で得たtert-ブチル 3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-5-カルボキシラート(31.0mg,40.0μmol)から標記化合物(6.00mg,10.1μmol)を得た。
ESI-MS m/z 593[M+H]+
【0240】
(2)2-(3-(アゼチジン-1-イウム-1-イリデン)-7-(アゼチジン-1-イル)-3H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-イル)-5-カルボキシベンゾアート TFA塩の合成
実施例1-(2)に準じ、実施例12-(1)の方法で得られる化合物(15.0mg,25.0μmol)から標記化合物の粗生成物(17.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 537[M+H]+
【0241】
(3)3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-5-カルボキサミドの合成
実施例3-(3)に準じ、実施例12-(2)で得た化合物(17.0mg)から標記化合物(1.50mg,2.28μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.17-1.26(m,4H),1.72(br.s.,2H),1.98(br.s.,2H),2.12(br.s.,2H),2.32-2.43(m,4H),3.68-3.75(m,2H),3.83-3.88(m,2H),3.90(t,J=7.22Hz,8H),6.24(dd,J=8.59,2.34Hz,2H),6.74(d,J=8.59Hz,2H),6.76(s,2H),6.78-6.84(m,1H),6.84(d,J=2.73Hz,2H),7.39(d,J=8.20Hz,1H),8.11(dd,J=8.01,1.76Hz,1H),8.25(s,1H).
ESI-MS m/z 659[M+H]+
【0242】
実施例13
3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-5-クロロ-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化67】
【0243】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-5-クロロ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート及びtert-ブチル 3’,5,7’-トリ(アゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
窒素雰囲気下、製造例7-(2)で得たtert-ブチル 5-クロロ-3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート(128mg,157μmol)、アゼチジン(25.2mg,441μmol)、炭酸セシウム(144mg,441μmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(14.4mg,16.0μmol)、XPhos(22.5mg,47.0μmol)及びトルエン(2.00mL)の混合物を封管中110℃で4.5時間撹拌した。室温まで冷却した後、不溶物を濾過した。溶出物を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することでtert-ブチル 3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-5-クロロ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートを得た。
ESI-MS m/z 627[M+H]+
また、副生成物として、tert-ブチル 3’,5,7’-トリ(アゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートを得た。
ESI-MS m/z 648[M+H]+
【0244】
(2)2-(3-(アゼチジン-1-イウム-1-イリデン)-7-(アゼチジン-1-イル)-3H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-イル)-4-カルボキシ-5-クロロベンゾアート TFA塩の合成
実施例1-(2)に準じ、実施例13-(1)で得たtert-ブチル 3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-5-クロロ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートから標記化合物の粗生成物(15.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 571[M+H]+
【0245】
(3)3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-5-クロロ-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例10-(3)に準じ、実施例13-(2)で得た化合物(15.0mg)から標記化合物の粗生成物を得た。さらに、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(DCM/MeOH)で精製することで標記化合物(1.10mg,1.59μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.13-1.21(m,4 H),1.71(br.s.,2H),1.97(br.s.,2H),2.10(br.s.,2H),2.32-2.43(m,4H),3.64-3.72(m,2H),3.76-3.83(m,2H),3.91(t,J=7.22Hz,8H),6.28(dd,J=8.79,2.54Hz,2H),6.44(br.s.,1H),6.68(s,2H),6.76(d,J=8.59Hz,2H),6.83(d,J=2.34Hz,2H),7.45(s,1H),7.95(s,1H).
ESI-MS m/z 693[M+H]+
【0246】
実施例14
3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-5-メチル-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化68】
【0247】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-5-メチル-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
実施例1-(1)に準じ、製造例8-(3)で得たtert-ブチル 5-メチル-3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート(40.0mg,50.0μmol)から標記化合物の粗生成物(35.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 607[M+H]+
【0248】
(2)2-(3-(アゼチジン-1-イウム-1-イリデン)-7-(アゼチジン-1-イル)-3H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-イル)-4-カルボキシ-5-メチルベンゾアート TFA塩の合成
実施例1-(2)に準じ、実施例14-(1)で得た化合物(35.0mg)から標記化合物の粗生成物(42.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 551[M+H]+
【0249】
(3)3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-5-メチル-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例14-(2)で得た化合物(42.0mg)のDMF(2.00mL)溶液に、TEA(44.0μL,316μmol)、N-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩(19.3mg,76.0μmol)及びPyBOP(49.3mg,95.0μmol)を加えた。反応混合物を室温で1.5時間撹拌した後、酢酸エチルで希釈した。有機層を水で3回洗浄し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製した。得られた粗生成物をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(ジエチルエーテル)で精製した。得られた粗生成物を、さらにシリカゲル薄層クロマトグラフィー(DCM/MeOH)で精製することで標記化合物(16.0mg,24.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.18-1.25(m,4H),1.72(br.s.,2H),1.98(br.s.,2H),2.12(br.s.,2H),2.37-2.43(m,4H),2.55(s,3H),3.62-3.67(m,2H),3.77-3.81(m,2H),3.92(t,J=7.22Hz,8H),6.22(br.s.,1H),6.28(dd,J=8.59,2.73Hz,2H),6.69(s,2H),6.79(d,J=8.59Hz,2H),6.85(d,J=2.34Hz,2H),7.28(s,1H),7.80(s,1H).
ESI-MS m/z 673[M+H]+
【0250】
実施例15
3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-5-((3-ヒドロキシプロピル)アミノ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化69】
【0251】
(1)2-(3-(アゼチジン-1-イウム-1-イリデン)-7-(アゼチジン-1-イル)-3H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-イル)-4-カルボキシ-5-((3-ヒドロキシプロピル)アミノ)ベンゾアート 2TFA塩の合成
実施例13-(1)で副生成物として得られたtert-ブチル 3’,5,7’-トリ(アゼチジン-1-イル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートのDCM/TFA(2:1)溶液を室温で3時間撹拌した。溶媒を減圧留去することで標記化合物を含む混合物(9.00mg)を得た。得られた混合物はさらに精製することなく次の反応に用いた。
ESI-MS m/z 610[M+H]+
【0252】
(2)3’,7’-ジ(アゼチジン-1-イル)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-5-((3-ヒドロキシプロピル)アミノ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例10-(3)に準じ、実施例15-(1)で得られた混合物(9.00mg)から標記化合物(1.22mg,1.67μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.17-1.25(m,4H),1.70(br.s.,2H),1.86-2.00(m,4H),2.13(br.s.,2H),2.32-2.43(m,4H),3.33-3.41(m,2H),3.54-3.60(m,2H),3.77(dd,J=6.44,4.49Hz,2H),3.85(t,J=5.86Hz,2H),3.91(t,J=7.22Hz,8H),6.23-6.30(m,2H),6.55(br.s.,1H),6.67(s,2H),6.84(d,J=5.47Hz,2H),6.85(s,2H),7.17(s,1H),7.33(s,1H).
ESI-MS m/z 732[M+H]+
【0253】
実施例16
3’,7’-ビス(ジメチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-5-メチル-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化70】
【0254】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ビス(ジメチルアミノ)-5-メチル-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
実施例1-(1)に準じ、製造例8-(3)で得られたtert-ブチル 5-メチル-3-オキソ-3’,7’-ビス(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラート(40.0mg,50.0μmol)とジメチルアミン(2M THF溶液、71.0μL,141μmol)から標記化合物(10.0mg,17.0μmol)を得た。
ESI-MS m/z 583[M+H]+
【0255】
(2)4-カルボキシ-2-(7-(ジメチルアミノ)-3-(ジメチルイミニオ)-3H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-イル)-5-メチルベンゾアート TFA塩の合成
実施例1-(2)に準じ、実施例16-(1)で得た化合物(10.0mg,17.0μmol)から標記化合物の粗生成物(15.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 527[M+H]+
【0256】
(3)3’,7’-ビス(ジメチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-5-メチル-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例16-(2)で得た化合物(15.0mg)のDMF(2.00mL)溶液に、TEA(16.0μL,117μmol)、N-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩(7.14mg,28.0μmol)及びPyBOP(18.3mg,35.0μmol)を加えた。反応混合物を室温で1.5時間撹拌した後、酢酸エチルで希釈した。混合物を水で3回洗浄し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製し、粗生成物を得た。さらにシリカゲル薄層クロマトグラフィー(ジエチルエーテル)で精製することで標記化合物(10.0mg,15.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.21-1.29(m,4H),1.75(br.s.,2H),2.02(br.s.,2H),2.17(br.s.,2H),2.55(s,3H),3.00(s,12H),3.60-3.68(m,2H),3.75-3.83(m,2H),6.19(br.s.,1H),6.58(dd,J=8.98,2.73Hz,2H),6.69(s,2H),6.82(d,J=8.98Hz,2H),7.16(d,J=2.73Hz,2H),7.27(s,1H),7.81(s,1H).
ESI-MS m/z 649[M+H]+
【0257】
実施例17
N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3’,7’-ジモルホリノ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化71】
【0258】
(1)3’,7’-ジモルホリノ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸の合成
2,2’-(2-ブロモ-1,4-フェニレン)ビス(4,4-ジメチル-4,5-ジヒドロオキサゾール)(1.56g,4.43mmol,CAS No.115580-69-3)のTHF(20.0mL)溶液に、-78℃でtert-ブチルリチウム(1.62M n-ペンタン溶液、2.74mL、4.43mmol)を20分間かけて滴下した。同温でさらに1時間撹拌した後、製造例9で得た3,7-ジモルホリノ-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オン(51.0mg,114μmol)のTHF(2.00mL)溶液を滴下した。反応混合物を-40度まで昇温し、同温で3時間撹拌した。反応混合物を徐々に室温まで昇温させ、3日間撹拌した。氷浴下、酢酸(5.00mL)を加えることで反応を停止させた。溶媒を減圧留去し、得られた残渣に5N塩酸(50.0mL)を加え、80℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、混合物を飽和炭酸ナトリウム水溶液で中和した。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル(→酢酸エチル/メタノール))で精製することで標記化合物を含む混合物(48.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 597[M+H]+
【0259】
(2)N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3’,7’-ジモルホリノ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例17-(1)で得た化合物(48.0mg)のDMF(2.00mL)溶液に、TEA(67.0μL,483μmol)、N-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩(24.5mg,97.0μmol)及びPyBOP(50.2mg,97.0μmol)を加えた。反応混合物を室温で3.5時間撹拌した後、混合物を直接逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(水/アセトニトリル、0.1%ギ酸)で精製し粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(13.6mg,19.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.19-1.32(m,4H),1.74(br.s.,2H),2.01(br.s.,2H),2.14(br.s.,2H),3.14-3.22(m,8H),3.61-3.67(m,2H),3.78-3.84(m,2H),3.84-3.89(m,8H),6.73(s,2H),6.73-6.76(m,2H),6.79(s,1H),6.90(d,J=8.59Hz,2H),7.34(d,J=2.73Hz,2H),7.74(s,1H),7.82(dd,J=8.01,1.37Hz,1H),8.01(d,J=8.20Hz,1H).
ESI-MS m/z 719[M+H]+
【0260】
実施例18
N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3’,7’-ジモルホリノ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-5-カルボキサミドの合成
【化72】
【0261】
(1)3’,7’-ジモルホリノ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-5-カルボン酸の合成
実施例17-(1)に準じ、製造例9で得た3,7-ジモルホリノ-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オン(51.0mg,114μmol)と2,2’-(4-ブロモ-1,3-フェニレン)ビス(4,4-ジメチル-4,5-ジヒドロオキサゾール)(1.56g,4.43mmol,CAS No.1426090-01-8)から標記化合物を含む混合物(44.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 597[M+H]+
【0262】
(2)N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3’,7’-ジモルホリノ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-5-カルボキサミドの合成
実施例17-(2)に準じ、18-(1)で得た化合物(44.0mg)から標記化合物(13.7mg,19.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.19-1.31(m,4H),1.76(br.s.,2H),2.02(br.s.,2H),2.15(br.s.,2H),3.17-3.22(m,8H),3.68-3.74(m,2H),3.84-3.92(m,10H),6.75(dd,J=8.79,2.54Hz,2H),6.77(s,2H),6.84(s,1H),6.86-6.90(m,2H),7.35(d,J=3.12Hz,2H),7.38(d,J=7.81Hz,1H),8.12(dd,J=8.01,1.37Hz,1H),8.28(s,1H).
ESI-MS m/z 719[M+H]+
【0263】
実施例19
3’,7’-ビス(ジメチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化73】
【0264】
(1)3’,7’-ビス(ジメチルアミノ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸の合成
実施例17-(1)に準じ、製造例10-(2)で得た3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オン(200mg,549μmol)から標記化合物(270mg,527μmol)を得た。
ESI-MS m/z 513[M+H]+
【0265】
(2)3’,7’-ビス(ジメチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例19-(1)の方法で得られる化合物(25.0mg,49.0μmol)のDMF(2.00mL)溶液に、N-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩(28.5mg,112μmol)、PyBOP(38.1mg,73.0μmol)及びTEA(41.0μL,293μmol)を加えた。反応混合物を室温で3日間撹拌した後、反応混合物を直接逆相クロマトグラフィー(水/アセトニトリル、0.1%ギ酸)で精製した。目的物を含むフラクションを回収し、余剰のアセトニトリルを減圧留去した後、残渣の水層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した。水層をDCMで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル(→酢酸エチル))で精製することで標記化合物(2.07mg,3.26μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.24-1.33(m,4H),1.73(br.s.,2H),2.02(br.s.,2H),2.16(br.s.,2H),2.97(s,12H),3.61-3.68(m,2H),3.77-3.85(m,2H),6.55(dd,J=8.79,2.93Hz,2H),6.72(s,2H),6.74(s,1H),6.80(d,J=8.98Hz,2H),7.14(d,J=2.73Hz,2H),7.72(s,1H),7.83(dd,J=8.01,1.37Hz,1H),8.00(d,J=7.81Hz,1H).
ESI-MS m/z 635[M+H]+
【0266】
実施例20
3’,7’-ビス(ジメチルアミノ)-N-(2-(2-(2-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化74】
【0267】
(1)tert-ブチル (1-(3’,7’-ビス(ジメチルアミノ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-イル)-1-オキソ-5,8,11-トリオキサ-2-アザトリデカン-13-イル)カルバマートの合成
実施例11-(1)に準じ、実施例19-(1)の方法で得られる3’,7’-ビス(ジメチルアミノ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸(270mg,527μmol)から標記化合物(178mg,226μmol)を得た。
ESI-MS m/z 787[M+H]+
【0268】
(2)4-((2-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)-2-(7-(ジメチルアミノ)-3-(ジメチルイミニオ)-3H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-イル)ベンゾアート 2TFA塩の合成
実施例11-(2)に準じ、実施例20-(1)で得た化合物(178mg,226μmol)から標記化合物の粗生成物(210mg)を得た。
ESI-MS m/z 687[M+H]+
【0269】
(3)3’,7’-ビス(ジメチルアミノ)-N-(2-(2-(2-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例20-(2)で得た化合物(210mg)、メチル 2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(214mg,1.38mmol)、THF(8.20mL)および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(8.20mL)の混合物を室温で3.5時間撹拌した。酢酸エチルで希釈し、有機層を分取した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。混合物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで粗精製物を得た。この粗精製物をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製することで粗精製物を得た。この粗精製物を逆相クロマトグラフィー(水/アセトニトリル、0.1%ギ酸)で精製した。目的物を含むフラクションを回収し、余剰のアセトニトリルを減圧留去した後、残渣の水層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去することで標記化合物(89.0mg,116μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.17-1.26(m,4H),1.73(br.s.,2H),2.00(br.s.,2H),2.16(br.s.,2H),2.97(s,12H),3.43-3.53(m,6H),3.54-3.62(m,6H),3.64-3.66(m,4H),6.54(dd,J=8.79,2.93Hz,2H),6.60(s,2H),6.78(d,J=8.59Hz,2H),7.01-7.07(m,1H),7.13(d,J=2.73Hz,2H),7.76(s,1H),7.95-8.03(m,2H).
ESI-MS m/z 767[M+H]+
【0270】
実施例21
3’,7’-ビス(ジメチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-5-カルボキサミドの合成
【化75】
【0271】
(1)3’,7’-ビス(ジメチルアミノ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-5-カルボン酸の合成
実施例18-(1)に準じ、製造例10-(2)で得た3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オン(50.0mg,137μmol)から標記化合物を含む混合物(47.7mg)を得た。
ESI-MS m/z 513[M+H]+
【0272】
(2)3’,7’-ビス(ジメチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-5-カルボキサミドの合成
実施例21-(1)で得た化合物(47.0mg,92.0μmol)のDMF(1.00mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(96.0μL,550μmol)、N-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩(53.6mg,211μmol)及びPyBOP(71.6mg,138μmol)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した後、水を加えて反応を停止させた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製し、粗生成物を得た。得られた粗生成物を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(水/アセトニトリル、0.1%ギ酸)で精製した。目的物を含むフラクションを回収し、余剰のアセトニトリルを減圧留去した。水層を炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(ジエチルエーテル)で精製することで標記化合物(5.00mg,7.88μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.18-1.30(m,4H),1.74(br.s.,2H),2.01(br.s.,2H),2.16(br.s.,2H),2.98(s,12H),3.67-3.76(m,2H)、3.82-3.92(m,2H),6.54(dd,J=8.98,2.73Hz,2H),6.73-6.83(m,3H),6.76(s,2H),7.14(d,J=3.12Hz,2H),7.37(d,J=8.20Hz,1H),8.10(dd,J=8.01,1.76Hz,1H),8.26(d,J=0.78Hz,1H).
ESI-MS m/z 635[M+H]+
【0273】
実施例22
3’,7’-ビス(ジメチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シロラン]-6-カルボキサミドの合成
【化76】
【0274】
(1)3’,7’-ビス(ジメチルアミノ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シロラン]-6-カルボン酸の合成
実施例17-(1)に準じ、製造例11-(2)で得た3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シロラン]-10-オン(40.0mg,114μmol)から、標記化合物を含む混合物(27.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 499[M+H]+
【0275】
(2)3’,7’-ビス(ジメチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シロラン]-6-カルボキサミドの合成
実施例22-(1)で得た化合物(27.0mg)、PyBOP(43.8mg,84.0μmol)、N-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩(32.8mg,129μmol)、TEA(47.0μL,337μmol)およびDMF(2.00mL)の混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を直接逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(水/アセトニトリル、0.1%ギ酸)で精製した。目的物を含むフラクションを回収し、余剰のアセトニトリルを0度以下で減圧留去した。残渣の水層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、水層を酢酸エチルで抽出した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(ジエチルエーテル)で精製することで標記化合物(3.68mg,5.93μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.21(t,J=7.03Hz,2H),1.25-1.32(m,2H),1.95-2.06(m,4H),2.95(s,12H),3.56-3.64(m,2H),3.76-3.83(m,2H),6.61(dd,J=8.98,2.73Hz,2H),6.65(br.s.,1H),6.71(s,2H),6.94(d,J=3.12Hz,2H),7.00(d,J=8.98Hz,2H),7.67(d,J=0.78Hz,1H),7.70-7.75(m,1H),7.93-7.97(m,1H).
ESI-MS m/z 621[M+H]+
【0276】
実施例23
3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化77】
【0277】
(1)3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸の合成
製造例12で得た3,3’-(シリナン-1,1-ジイル)ビス(N,N-ジエチルアニリン)(99.0mg,250μmol)、製造例15-(2)で得た3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸(146mg,750μmol)、臭化第二銅(16.8mg,75.0μmol)及び酢酸(215μL,3.75mmol)の混合物を140℃で8時間撹拌した。室温まで冷却した後、混合物を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製し標記化合物(40.0mg,70.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.04-1.19(m,12H),1.20-1.32(m,4H),1.65-1.85(m,2H),1.95-2.06(m,2H),2.09-2.21(m,2H),3.25-3.42(m,8H),6.49(dd,J=8.98,2.73Hz,2H),6.73(d,J=8.98Hz,2H),7.11(d,J=3.12Hz,2H),8.00-8.09(m,2H),8.24(dd,J=8.01,1.37Hz,1H).
ESI-MS m/z 569[M+H]+
【0278】
(2)3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例23-(1)で得た化合物(9.67mg,17.0μmol)のDMF(500μL)溶液に、N-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩(9.94mg,39.0μmol)、PyBOP(13.3mg,26.0μmol)及びTEA(14.0μL,102μmol)を加えた。反応混合物を室温で18時間撹拌した後、反応混合物を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製し標記化合物(2.00mg,2.89μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.14-1.21(m,12H),1.21-1.32(m,4H),1.74(br.s.,2H),2.02(br.s.,2H),2.11-2.21(m,2H),3.38(q,J=7.03Hz,8H),3.61-3.71(m,2H),3.78-3.88(m,2H),6.49(dd,J=8.98,2.73Hz,2H),6.69-6.80(m,3H),6.73(s,2H),7.11(d,J=2.73Hz,2H),7.76(dd,J=1.56,0.78Hz,1H),7.86(dd,J=8.01,1.37Hz,1H),8.01(dd,J=7.81,0.78Hz,1H).
ESI-MS m/z 691[M+H]+
【0279】
実施例24
3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-5-カルボキサミドの合成
【化78】
【0280】
(1)3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-5-カルボン酸の合成
実施例23-(1)に準じ、製造例12で得た3,3’-(シリナン-1,1-ジイル)ビス(N,N-ジエチルアニリン)(99.0mg,250μmol)と製造例16-(2)で得た1-ヒドロキシ-3-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸(146mg,750μmol)から標記化合物(49.0mg,86.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.10-1.27(m,16H),1.73(br.s.,2H),1.96-2.07(m,2H),2.09-2.22(m,2H),3.37(q,J=7.03Hz,8H),6.49(dd,J=8.98,3.12Hz,2H),6.72(d,J=8.98Hz,2H),7.10(d,J=2.73Hz,2H),7.42(d,J=8.20Hz,1H),8.35(dd,J=8.01,1.37Hz,1H),8.69(d,J=0.78Hz,1H).
ESI-MS m/z 569[M+H]+
【0281】
(2)3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-5-カルボキサミドの合成
実施例23-(2)に準じ、実施例24-(1)で得た化合物(10.2mg,18.0μmol)から標記化合物(3.00mg,4.34μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.17(t,J=7.03Hz,12H),1.20-1.30(m,4H),1.74(br.s.,2H),1.94-2.05(m,2H),2.11-2.21(m,2H),3.37(q,J=6.77Hz,8H),3.67-3.77(m,2H),3.82-3.90(m,2H),6.47(dd,J=8.98,2.73Hz,2H),6.67-6.77(m,4H),6.91(t,J=5.27Hz,1H),7.10(d,J=2.73Hz,2H),7.43(d,J=8.20Hz,1H),8.14(dd,J=8.20,1.56Hz,1H),8.28(d,J=0.78Hz,1H).
ESI-MS m/z 691[M+H]+
【0282】
実施例25
3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-5-フルオロ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化79】
【0283】
(1)3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-5-フルオロ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸の合成
製造例12で得た3,3’-(シリナン-1,1-ジイル)ビス(N,N-ジエチルアニリン)(70.0mg,177μmol)、製造例17-(2)で得た6-フルオロ-3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸(125mg)、臭化第二銅(11.9mg,53.0μmol)及び酢酸(2.00mL)の混合物を140度で4時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、残渣を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去することで、標記化合物の粗生成物(96.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 587[M+H]+
【0284】
(2)3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-5-フルオロ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例25-(1)で得た化合物(76.0mg)、PyBOP(81.0mg,155μmol)、N-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩(39.5mg,155μmol)、トリエチルアミン(90.0μL,648μmol)及びDMF(1.00mL,12.9mmol)の混合物を室温で2.5時間撹拌した。氷を加えて反応を停止させ、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(5.70mg,8.04μmol)を得た。
【0285】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.12-1.21(t,J=7.03Hz,12H),1.21-1.28(m,4H),1.74(br.s.,2H),2.02(br.s.,2H),2.10-2.22(m,2H),3.38(q,J=7.03Hz,8H),3.67-3.74(m,2H),3.80-3.88(m,2H),6.49(dd,J=8.98,2.73Hz,2H),6.71-6.78(m,2H),6.74(s,2H),7.10(d,J=2.73Hz,2H),7.13(br.s.,1H),7.67(d,J=9.76Hz,1H),8.02(d,J=6.25Hz,1H).
ESI-MS m/z 709[M+H]+
【0286】
実施例26
5-クロロ-3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化80】
【0287】
(1)5-クロロ-3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸の合成
実施例23-(1)に準じ、製造例12で得た3,3’-(シリナン-1,1-ジイル)ビス(N,N-ジエチルアニリン)(39.5mg,100μmol)と、製造例18-(2)で得た6-クロロ-3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸(68.6mg,300μmol)から標記化合物(8.00mg,13.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.03-1.35(m,16H),1.69(br.s.,2H),1.98(br.s.,2H),2.02-2.15(m,2H),3.38(q,J=7.03Hz,8H),6.60(dd,J=8.59,2.73Hz,2H),6.83(d,J=8.98Hz,2H),7.19(d,J=2.73Hz,2H),7.79(s,1H),7.99(s,1H).
ESI-MS m/z 603[M+H]+
【0288】
(2)5-クロロ-3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例23-(2)に準じ、実施例26-(1)で得た化合物(7.84mg,13.0μmol)から標記化合物の粗精製物を得た。得られた粗精製物を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(水/アセトニトリル、0.1%ギ酸)で精製し、標記化合物(1.60mg,2.21μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.18(t,J=7.03Hz,12H),1.19-1.24(m,4H),1.73(br.s.,2H),1.99(br.s.,2H),2.14(br.s.,2H),3.38(q,J=7.03Hz,8H),3.63-3.72(m,2H),3.75-3.84(m,2H),6.42(br.s.,1H),6.51(dd,J=8.98,2.73Hz,2H),6.68(s,2H),6.73(d,J=8.98Hz,2H),7.08(d,J=3.12Hz,2H),7.46(s,1H),7.96(s,1H).
ESI-MS m/z 725[M+H]+
【0289】
実施例27
5-ブロモ-3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化81】
【0290】
(1)5-ブロモ-3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸の合成
製造例12で得た3,3’-(シリナン-1,1-ジイル)ビス(N,N-ジエチルアニリン)(150mg,380μmol)、製造例19-(2)で得た6-ブロモ-3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸(208mg,760μmol)、臭化第二銅(25.5mg,114μmol)及び酢酸(1.09mL)の混合物を、140℃で6時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を直接逆相クロマトグラフィー(水/アセトニトリル、0.1%ギ酸)で精製することで標記化合物(105mg,162μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.10-1.23(m,16H),1.68(br.s.,2H),1.91-2.12(m,4H),3.40(q,J=7.29Hz,8H),6.67(dd,J=8.98,2.73Hz,2H),6.88(d,J=8.98Hz,2H),7.25(d,J=2.73Hz,2H),7.71(s,1H),8.19(s,1H).
ESI-MS m/z 649[M+H]+
【0291】
(2)5-ブロモ-3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例23-(2)に準じ、実施例27-(1)で得た化合物(9.72mg,15.0μmol)から標記化合物(4.20mg,5.46μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.10-1.24(m,16H),1.72(br.s.,2H),1.99(br.s.,2H),2.12(br.s.,2H),3.37(q,J=7.29Hz,8H),3.62-3.72(m,2H),3.73-3.82(m,2H),6.31(t,J=5.66Hz,1H),6.51(dd,J=8.98,3.12Hz,2H),6.67(s,2H),6.73(d,J=8.98Hz,2H),7.08(d,J=2.73Hz,2H),7.35(s,1H),8.14(s,1H).
ESI-MS m/z 769,771[M+H]+
【0292】
実施例28
3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-5-(ジフルオロメチル)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化82】
【0293】
(1)3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-5-(ジフルオロメチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸の合成
実施例27-(1)に準じ、製造例12で得た3,3’-(シリナン-1,1-ジイル)ビス(N,N-ジエチルアニリン)(70.0mg,177μmol)と、製造例20-(3)で得た6-(ジフルオロメチル)-3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸(87.0mg,355μmol)から標記化合物(22.0mg,36.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,MeOH-d4)δ(ppm):1.11-1.23(m,16H),1.74(br.s.,2H),2.00(br.s.,2H),2.10(br.s.,2H),3.47(q,J=7.03Hz,8H),6.59(dd,J=9.18,2.93Hz,2H),6.78(d,J=9.37Hz,2H),7.17(d,J=2.73Hz,2H),7.57(t,J=55.84Hz,1H),7.80(s,1H),8.32(s,1H).
ESI-MS m/z 619[M+H]+
【0294】
(2)3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-5-(ジフルオロメチル)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例28-(1)で得た化合物(27.8mg,45.0μmol)、N-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩(26.3mg,104μmol)、PyBOP(35.1mg,68.0μmol)、トリエチルアミン(38.0μL,270μmol)及びDMF(500μL)の混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物を直接逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(水/アセトニトリル、0.1%ギ酸)で精製することで標記化合物(11.8mg,16.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,MeOH-d4)δ(ppm):1.16(t,J=7.03Hz,12H),1.19-1.26(m,4H),1.73(br.s.,2H),1.94-2.06(m,2H),2.11-2.17(m,2H),3.38(q,J=7.03Hz,8H),3.50(dd,J=6.44,4.49Hz,2H),3.65-3.73(m,2H),6.52(dd,J=8.98,2.73Hz,2H),6.66(s,2H),6.68(d,J=8.98Hz,2H),7.09(d,J=3.12Hz,2H),7.12(t,J=55.26Hz,1H),7.38(s,1H),7.58(s,1H),8.22(s,1H).
ESI-MS m/z 741[M+H]+
【0295】
実施例29
3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-5-(メトキシメチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化83】
【0296】
(1)3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-5-(メトキシメチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸の合成
実施例27-(1)に準じ、製造例12で得た3,3’-(シリナン-1,1-ジイル)ビス(N,N-ジエチルアニリン)(14.6mg,37.0μmol)と、製造例21-(5)で得た3-ヒドロキシ-6-(メトキシメチル)-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸(17.6mg,74.0μmol)から標記化合物(7.00mg,11.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.16(t,J=7.03Hz,12H),1.20-1.29(m,4H),1.72(br.s.,2H),2.00(br.s.,2H),2.14(br.s.,2H),3.37(q,J=7.03Hz,8H),3.54(s,3H),4.89(s,2H),6.50(dd,J=8.98,2.73Hz,2H),6.75(d,J=8.98Hz,2H),7.11(d,J=2.73Hz,2H),8.00(s,1H),8.20(s,1H).
ESI-MS m/z 613[M+H]+
【0297】
(2)3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-5-(メトキシメチル)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例28-(2)に準じ、実施例29-(1)で得た化合物(6.13mg,10.0μmol)から標記化合物(1.00mg,1.36μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.18(t,J=7.03Hz,12H),1.21-1.26(m,4H),1.74(br.s.,2H),2.02(br.s.,2H),2.15(br.s.,2H),3.38(q,J=7.03Hz,8H),3.48(s,3H),3.60-3.71(m,2H),3.73-3.84(m,2H),4.64(s,2H),6.50(dd,J=8.98,3.12Hz,2H),6.68(s,2H),6.75(d,J=8.98Hz,2H),7.10(d,J=2.34Hz,2H),7.38-7.43(m,1H),7.60(s,1H),7.97(s,1H).
ESI-MS m/z 735[M+H]+
【0298】
実施例30
3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-5-(トリフルオロメチル)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化84】
【0299】
(1)3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-3-オキソ-5-(トリフルオロメチル)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸の合成
実施例25-(1)に準じ、製造例12で得た3,3’-(シリナン-1,1-ジイル)ビス(N,N-ジエチルアニリン)(50.0mg,127μmol)及び製造例22-(3)で得た3-ヒドロキシ-1-オキソ-6-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸(100mg,380μmol)から、標記化合物の粗生成物(61.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 637[M+H]+
【0300】
(2)3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-5-(トリフルオロメチル)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例30-(1)で得た化合物(61.0mg)のDMF(3.00mL)溶液に、TEA(40.0μL,287μmol)、N-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩(29.2mg,115μmol)及びPyBOP(74.8mg,144μmol)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した後、混合物を直接逆相クロマトグラフィー(水/アセトニトリル、0.1%ギ酸)で精製した。得られた粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(15.0mg,20.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.18(t,J=7.03Hz,12H),1.21(br.s.,2H),1.26(br.s.,2H),1.73(br.s.,2H),2.01(br.s.,2H),2.09-2.19(m,2H),3.38(q,J=7.03Hz,8H),3.61-3.69(m,2H),3.73-3.80(m,2H),6.18-6.24(m,1H),6.53(dd,J=8.98,3.12Hz,2H),6.65(s,2H),6.69(d,J=8.98Hz,2H),7.09(d,J=3.12Hz,2H),7.40(s,1H),8.27(s,1H).
ESI-MS m/z 759[M+H]+
【0301】
実施例31
3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-5-メトキシ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化85】
【0302】
(1)3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-5-メトキシ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸の合成
製造例12で得た3,3’-(シリナン-1,1-ジイル)ビス(N,N-ジエチルアニリン)(20.0mg,51.0μmol)、製造例23-(2)で得た3-ヒドロキシ-6-メトキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸(34.1mg,152μmol)、臭化第二銅(3.40mg,15.0μmol)及び酢酸(2.00mL)の混合物を140℃で20時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、残渣を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で洗浄した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル(→酢酸エチル/メタノール))で精製することで標記化合物を含む混合物(13.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 599[M+H]+
【0303】
(2)3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-5-メトキシ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例9-(2)に準じ、実施例31-(1)で得た化合物(13.0mg)から標記化合物(1.93mg,2.68μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.15(t,J=7.03Hz,12H),1.26(br.s.,4H),1.71(br.s.,2H),1.98(br.s.,2H),2.15(br.s.,2H),3.35(q,J=6.77Hz,8H),3.65-3.73(m,2H),3.80-3.87(m,2H),4.11(s,3H),6.44(dd,J=8.98,2.73Hz,2H),6.72(s,2H),6.75(d,J=8.59Hz,2H),7.09(d,J=2.73Hz,2H),7.49(s,1H),8.18(t,J=5.08Hz,1H),8.22(s,1H).
ESI-MS m/z 721[M+H]+
【0304】
実施例32
3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-5-(メチルチオ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化86】
【0305】
(1)3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-5-(メチルチオ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸の合成
実施例31-(1)に準じ、製造例12で得た3,3’-(シリナン-1,1-ジイル)ビス(N,N-ジエチルアニリン)(70.0mg,177μmol)と、製造例24-(2)で得た3-ヒドロキシ-6-(メチルチオ)-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸(128mg)から、標記化合物を含む混合物(38.0mg)を得た。
ESI-MS m/z 615[M+H]+
【0306】
(2)3’,7’-ビス(ジエチルアミノ)-N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-5-(メチルチオ)-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例32-(1)で得た化合物(38.0mg)のDMF(2.00mL)溶液に、TEA(13.0μL,93.0μmol)、N-(2-アミノエチル)マレイミド TFA塩(18.9mg,74.0μmol)及びPyBOP(38.6mg,74.0μmol)を加え、室温で1.5時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチルと水を加えて反応を停止させた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で2回洗浄した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(21.5mg,29.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.07(t,J=7.03Hz,12H),1.09-1.15(m,4H),1.62(br.s.,2H),1.87(br.s.,2H),2.05(br.s.,2H),2.47(s,3H),3.27(q,J=7.03Hz,8H),3.54-3.61(m,2H),3.65-3.72(m,2H),6.38-6.41(m,1H),6.40(dd,J=8.98,2.73Hz,2H),6.56(s,2H),6.65(d,J=8.98Hz,2H),7.00(d,J=3.12Hz,2H),7.31(s,1H),7.68(s,1H).
ESI-MS m/z 737[M+H]+
【0307】
実施例33
N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3’,7’-ジ(ピロリジン-1-イル)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化87】
【0308】
(1)3-オキソ-3’,7’-ジ(ピロリジン-1-イル)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸の合成
実施例23-(1)に準じ、製造例13で得た1,1’-(シリナン-1,1-ジイルビス(3,1-フェニレン))ジピロリジン(98.0mg,250μmol)と、製造例15-(2)で得た3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸(146mg,750μmol)から標記化合物(28.0mg,50.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.15-1.31(m,4H),1.74(br.s.,4H),1.93-2.06(m,8H),2.14(d,J=17.18Hz,2H),3.22-3.36(m,8H),6.41(dd,J=8.98,2.73Hz,2H),6.79(d,J=8.98Hz,2H),6.99(d,J=2.73Hz,2H),7.97-8.06(m,2H),8.17-8.25(m,1H).
ESI-MS m/z 565[M+H]+
【0309】
(2)N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-3’,7’-ジ(ピロリジン-1-イル)-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例23-(2)に準じ、実施例33-(1)で得た化合物(9.60mg,17.0μmol)から標記化合物(4.00mg,5.82μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.16-1.35(m,4H),1.73(br.s.,2H),1.89-2.07(m,10H),2.09-2.23(m,2H),3.19-3.38(m,8H),3.57-3.70(m,2H),3.74-3.85(m,2H),6.38(dd,J=8.59,2.73Hz,2H),6.66-6.82(m,3H),6.71(s,2H),6.97(d,J=2.73Hz,2H),7.70(s,1H),7.83(dd,J=8.01,1.37Hz,1H),7.99(d,J=7.81Hz,1H).
ESI-MS m/z 687[M+H]+
【0310】
実施例34
N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-1’,2’,3’,4’,8’,9’,10’,11’-オクタヒドロ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,6’-シリノ[3,2-g:5,6-g’]ジキノリン-13’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化88】
【0311】
(1)1’,11’-ジアリル-3-オキソ-1’,2’,3’,4’,8’,9’,10’,11’-オクタヒドロ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,6’-シリノ[3,2-g:5,6-g’]ジキノリン-13’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸の合成
実施例23-(1)に準じ、製造例14-(2)で得た7,7’-(シリナン-1,1-ジイル)ビス(1-アリル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン)(885mg,2.00mmol)と製造例15-(2)で得た3-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸(1.17g,6.00mmol)から粗生成物を得た。さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(98.0mg,159μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.04-1.21(m,4H),1.69(br.s.,2H),1.80-1.93(m,4H),1.93-2.13(m,4H),2.43-2.66(m,4H),3.18-3.34(m,4H),3.85-4.02(m,4H),5.14-5.28(m,4H),5.81-5.96(m,2H),6.50(s,2H),6.93(s,2H),7.90(d,J=0.78Hz,1H),8.00(dd,J=7.81,0.78Hz,1H),8.18(dd,J=8.01,1.37Hz,1H).
ESI-MS m/z 617[M+H]+
【0312】
(2)3-オキソ-1’,2’,3’,4’,8’,9’,10’,11’-オクタヒドロ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,6’-シリノ[3,2-g:5,6-g’]ジキノリン-13’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸の合成
実施例34-(1)で得た化合物(30.8mg,50.0μmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(11.6mg,10.0μmol)、1,3-ジメチルバルビツール酸(46.8mg,300μmol)及びDCM(5.00mL)の混合物を室温で10時間撹拌した。反応混合物を直接逆相クロマトグラフィー(水/アセトニトリル、0.1%ギ酸)で精製することで標記化合物(15.0mg,28.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,MeOH-d4)δ(ppm):1.03-1.10(m,2H),1.10-1.17(m,2H),1.67(br.s.,2H),1.75-1.87(m,4H),1.92-2.01(m,2H),2.07(br.s.,2H),2.50(t,J=6.05Hz,4H),3.22-3.30(m,4H),6.47(s,2H),6.97(s,2H),7.88(s,1H),8.00(d,J=8.20Hz,1H),8.18(d,J=8.20Hz,1H).
ESI-MS m/z 537[M+H]+
【0313】
(3)N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-1’,2’,3’,4’,8’,9’,10’,11’-オクタヒドロ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,6’-シリノ[3,2-g:5,6-g’]ジキノリン-13’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例28-(2)に準じ、実施例34-(2)で得た化合物(13.4mg,25.0μmol)から標記化合物(2.60mg,3.95μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,MeOH-d4)δ(ppm):1.11(dt,J=18.35,6.83Hz,4H),1.73(br.s.,2H),1.79-1.91(m,4H),1.95-2.08(m,2H),2.13(br.s.,2H),2.52(t,J=6.25Hz,4H),3.31-3.37(m,4H),3.51-3.59(m,2H),3.73(dd,J=6.25,4.69Hz,2H),6.51(s,2H),6.75(s,2H),7.06(s,2H),7.56(d,J=1.17Hz,1H),7.93(dd,J=7.81,1.56Hz,1H),8.04(d,J=7.81Hz,1H),8.28(br.s.,1H).
ESI-MS m/z 659[M+H]+
【0314】
実施例35
N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-1’,2’,3’,4’,8’,9’,10’,11’-オクタヒドロ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,6’-シリノ[3,2-g:5,6-g’]ジキノリン-13’,1’’-シリナン]-5-カルボキサミドの合成
【化89】
【0315】
(1)1’,11’-ジアリル-3-オキソ-1’,2’,3’,4’,8’,9’,10’,11’-オクタヒドロ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,6’-シリノ[3,2-g:5,6-g’]ジキノリン-13’,1’’-シリナン]-5-カルボン酸の合成
実施例27-(1)に準じ、製造例14-(2)で得た7,7’-(シリナン-1,1-ジイル)ビス(1-アリル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン)(102mg,230μmol)と、製造例16-(2)で得た1-ヒドロキシ-3-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸(134mg,690μmol)から標記化合物(42.0mg,68.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.05-1.17(m,4H),1.69(br.s.,2H),1.79-1.93(m,4H),1.94-2.12(m,4H),2.45-2.67(m,4H),3.18-3.34(m,4H),3.88-3.98(m,4H),5.14-5.30(m,4H),5.88(ddt,J=16.99,10.35,4.88,4.88Hz,2H),6.48(s,2H),6.94(s,2H),7.30(d,J=7.81Hz,1H),8.28(dd,J=8.01,1.37Hz,1H),8.68(d,J=0.78Hz,1H).
ESI-MS m/z 617[M+H]+
【0316】
(2)3-オキソ-1’,2’,3’,4’,8’,9’,10’,11’-オクタヒドロ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,6’-シリノ[3,2-g:5,6-g’]ジキノリン-13’,1’’-シリナン]-5-カルボン酸の合成
実施例34-(2)に準じ、実施例35-(1)で得た化合物(40.1mg,65.0μmol)から標記化合物(21.0mg,39.0μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,MeOH-d4)δ(ppm):1.00-1.15(m,4H),1.66(br.s.,2H),1.81(quin,J=5.86Hz,4H),1.95(br.s.,2H),2.07(br.s.,2H),2.49(t,J=6.05Hz,4H),3.22-3.30(m,4H),6.43(s,2H),6.96(s,2H),7.33(d,J=7.81Hz,1H),8.30(d,J=7.81Hz,1H),8.62(s,1H).
ESI-MS m/z 537[M+H]+
【0317】
(3)N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3-オキソ-1’,2’,3’,4’,8’,9’,10’,11’-オクタヒドロ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,6’-シリノ[3,2-g:5,6-g’]ジキノリン-13’,1’’-シリナン]-5-カルボキサミドの合成
実施例28-(2)に準じ、実施例35-(2)で得た化合物(19.0mg,35.0μmol)から粗生成物を得た。さらに逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(水/アセトニトリル、0.1%ギ酸)で精製することで標記化合物(2.60mg,3.95μmol)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):1.06-1.20(m,4H),1.67(br.s.,2H),1.78-1.89(m,4H),1.95(br.s.,2H),2.09(br.s.,2H),2.48-2.63(m,4H),3.21-3.34(m,4H),3.64-3.76(m,2H),3.81-3.89(m,2H),6.48(s,2H),6.76(s,2H),6.87(s,2H),7.32-7.36(m,1H),8.02(br.s.,1H),8.07(dd,J=8.20,1.56Hz,1H),8.26(d,J=1.17Hz,1H).
ESI-MS m/z 659[M+H]+
【0318】
実施例36
N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3’,7’-ジヒドロキシ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
【化90】
【0319】
(1)tert-ブチル 3’,7’-ジヒドロキシ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキシラートの合成
窒素雰囲気下、ジ-tert-ブチル2-ブロモテレフタラート(1.00g,2.80mmol)のTHF(14.0mL)/n-ヘキサン(7mL)混合溶液に、内温-95℃以下でn-ブチルリチウム(2.76Mヘキサン溶液、1.014mL,2.80mmol)を滴下した。同温で10分間撹拌した後、製造例4-(3)で得られた3,7-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オン(377mg,0.70mmol)のTHF(7mL)溶液を内温-95℃以下で滴下した。同温で5分間撹拌した後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(178μL,1.40mmol)を滴下した。反応混合物を徐々に室温まで昇温させ、室温で12時間撹拌撹拌した。氷浴下、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることで反応を停止させた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。混合物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を留去することで付加体を含む混合物を得た。得られた混合物にTHF(7.0mL)及びテトラブチルアンモニウムフルオリド(1.00M THF溶液,3.5mL,3.5mmol)を加え、室温で7時間撹拌した。氷浴下、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることで反応を停止させた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物を、3,7-ジヒドロキシ-10H-スピロ[ジベンゾ[b,e]シリン-5,1’-シリナン]-10-オンとの混合物(300mg)として得た。
【0320】
(2)3’,7’-ジヒドロキシ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボン酸の合成
実施例36-(1)で得た化合物(104.9mg,0.20mmol)のDCM(4.00mL)溶液に、TFA(400μL)を加え、室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧留去し、残存のTFAをメタノールで共沸除去することで標記化合物の粗生成物を得た。
【0321】
(3)N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-3’,7’-ジヒドロキシ-3-オキソ-3H-ジスピロ[イソベンゾフラン-1,10’-ジベンゾ[b,e]シリン-5’,1’’-シリナン]-6-カルボキサミドの合成
実施例36-(2)の方法で得た化合物のDMF(10.0mL)溶液に、TEA(170μL,1.22mmol)、N-(2-アミノエチル)マレイミドTFA塩(118.7mg,0.47mmol)及びPyBOP(158.7mg,0.30mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した後、混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(15.7mg,27.0μmol)を得た。
1H-NMR(500MHz,MeOH-d4)δ(ppm):1.16-1.19(m,2H),1.25-1.28(m,2H),1.73-1.78(m,2H),2.00-.2.08(m,2H),2.13-2.23(m,2H),3.50-3.58(m,2H),3.68-3.73(m,2H),6.68(dd,J=8.80,2.75Hz,2H),6.72(s,2H),6.76-6.79(m,2H),7.32(d,J=2.70Hz,2H),7.65(br.s.,1H),7.93(dd,J=8.05,1.35Hz,1H),7.98-8.01(m,1H).
ESI-MS m/z 581[M+H]+
【0322】
実験例1
量子化学計算ソフトGaussian09(Gaussian社)を用いて、各実施例の化合物の開環体の構造最適化を実施し、9位炭素(図1参照。なお、図1では、一例として実施例19が示される)の原子電荷をマリケン電荷法によって算出した。(計算条件:APFD/6-311G+(2d, p)、IEFPCM/Ethanol)
【0323】
比較実験例1
各実施例の化合物に対応する比較例として、Si原子を含むスピロ環構造(以下、Siスピロ環部位と呼ぶ)に代えて、置換基として2つのメチル基を有するSi原子としたこと以外は同じ構造を有する化合物についても、実験例1と同様の操作で9位炭素のマリケン電荷を算出した。
【0324】
実験例1及び比較実験例1の結果
図2に示すように、Siスピロ環部位を有する化合物においてマリケン電荷が上昇した。マリケン電荷が上昇することにより、開環体から閉環体に平衡が移動しやすくなり、デューティサイクルが低下すると考えられる。
【0325】
実験例2
<化合物での抗体の標識>
〔2-メルカプトエチルアミン(MEA)による抗体の還元〕
はじめにエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA・2Na)を超純水に混合してエチレンジアミン四酢酸(EDTA) 0.10M、pH 6.0の溶液(以下、EDTA溶液)を調製した。次に、NaH2PO4・2H2O、EDTA・2Naを超純水に混合して0.10 M NaH2PO4、1.0 mM EDTA、pH 6.0の溶液(以下、反応溶液と呼ぶ)を調製した。続いて、反応溶液とMEAを混合し0.35 M MEAの溶液(以下、MEA溶液)を調製した。最後に、抗アミロイドβ抗体6E10溶液(Biolegend社)を、体積比でアミロイドβ抗体6E10溶液:EDTA溶液:MEA溶液=体積比で100:1:10となるように混合し、ヒートブロックを用いて37℃で90分間加温した(以下、抗体溶液1と呼ぶ)。
【0326】
〔未反応MEAの除去〕
Amicon Filters 10kDa(Merck Millipore社)を用いて、14k×gで遠心することにより未反応のMEAを除去した溶液を得た(以下、抗体溶液2と呼ぶ)。
【0327】
〔化合物での抗体の標識反応〕
抗体溶液2の抗体濃度を吸光度に基づいて定量した。次に、抗体溶液2と実施例1及び実施例19で合成した化合物を、モル比で抗体:化合物=1:50になるように混合し、ヒートブロックを用いて37℃で1時間加温した。
【0328】
〔未反応の化合物の除去〕
Amicon Filters 10kDa(Merck Millipore社)を用いて、標識反応後の抗体溶液を添加し、総量が0.50 mLとなるようPhosphate buffered saline(Sigama社)(以下、PBSと呼ぶ)を添加して14k×gで遠心することにより未反応の化合物を除去し、化合物で標識された抗体の溶液を得た(以下、抗体溶液3と呼ぶ)。以下、各化合物で標識された抗体を「標識抗体」と呼ぶ。
【0329】
〔MALDI-TOF MSによる標識数の評価〕
はじめに、アセトニトリル及びトリフルオロ酢酸を超純水に混合して30%アセトニトリル及び0.10%トリフルオロ酢酸に調製した溶液(以下、TA30溶液と呼ぶ)を調製した。シナピン酸1.0 mgに対してTA30溶液を0.10 mL加え、10分間超音波をかけた。その後、遠心分離してその上清をマトリックスとして用いた。抗体溶液3を10μLとり、0.20%トリフルオロ酢酸の水溶液を用いて2倍に希釈した。マイクロピペッターにZipTip U-C18(Merck Millipore社)を装着し、10μLのTA30溶液で先端のレジンを洗浄したのち、標識抗体をレジンに吸着させた。その後、シナピン酸のマトリックスを3.0μL吸い取り、MALDIプレート(Bruker社)上に標識抗体を溶出させた。サンプルがプレート上で乾燥したのち、Ultraflex MALDI-TOF MS(Bruker社)を用いて標識数の測定を行い、それぞれ1~3分子の化合物で抗体が標識されていることを確認した。
【0330】
<化合物1分子の明滅時間評価>
〔1分子測定に用いるガラスの作製〕
カバーガラス(松浪硝子工業株式会社)を、UVオゾンクリーナーUV-1(Samco社)を用いて1分間洗浄した(以下、UVオゾン洗浄ガラスと呼ぶ)。測定には洗浄後12時間以上経たガラスを用いた。
【0331】
〔標識抗体保持ガラス試料の調製〕
PBSを超純水に混合して調製したpH 7.4のPBS溶液を用いて抗体溶液3を1分子発光の輝点同士が重ならずに検出できる濃度に希釈した。UVオゾン洗浄ガラス上に100μL滴下し、遮光・室温環境で10分間静置した。超純水1.0 mLを用いて、希釈した抗体溶液3を3回洗い流し、標識抗体を表面に保持したガラス試料を得た(以下、標識抗体保持ガラス試料と呼ぶ)。
【0332】
〔観察溶液の調製〕
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとNaClを超純水に混合して、50 mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、10 mM NaCl、pH 7.4のトリス緩衝生理食塩水(以下、TBS溶液と呼ぶ)を調製した。TBS溶液を用いて表1の条件で観察溶液を調整した(以下、観察溶液と呼ぶ)。
【0333】
【表1】
【0334】
〔顕微鏡を用いた化合物1分子の発光観察〕
蛍光顕微鏡IX81(Olympus社)、レーザー発振器OBIS(Coherent社、レーザー波長640 nm)、EMCCDカメラiXon(Andor社)からなる顕微鏡システムを使用して観察を行った。標識抗体保持ガラス試料をステージに載せ、観察溶液を50μL滴下した。表2の撮像条件で観察を行った。
【0335】
【表2】
【0336】
〔1分子発光のデューティサイクルの評価〕
観察された輝点それぞれに対して、輝度の時間変化を解析した。蛍光色素である各化合物1分子は、発光状態と消光状態を繰り返す明滅現象を示す。励起光の照射開始時から最後に発光状態から消光状態へと変化するまでの時間を明滅持続時間と定義し、各化合物1分子の明滅時間を算出した。さらに、発光時間の積算(ON時間)を算出したのち、デューティサイクルを「ON時間/明滅持続時間」として算出した。その後、各化合物1分子のデューティーサイクルを平均して算出したものを、各化合物のデューティーサイクルとした(Tynan C.J.ら, PLoS one, 2012, Vol.7,e36265参照)。一般に、デューティサイクルが小さいほど、蛍光色素の1分子発光を検出しやすくなる。よって、デューティサイクルの小さい蛍光色素は、超解像イメージングに適しているとされる。
【0337】
比較実験例2
図3に示す化合物A(実施例19の比較例)及び化合物B(実施例1の比較例)を用いた点以外は実験例2と同様の操作でデューティサイクルを測定した。その結果、図4に示すように、Siスピロ環部位を導入した実施例19及び実施例1の化合物は、それぞれ化合物A及び化合物Bと比べて低いデューティサイクルであることが確認された。
【0338】
実験例3
実験例2と同様の操作で実施例1から実施例36のデューティサイクルを測定した。その結果を図5に示す。なお、実施例36の化合物は、Si置換キサンテン骨格の3位と6位にヒドロキシ、或いはケトンを有しており、吸収極大波長が実施例1から実施例35の化合物とは異なるため、研究用1分子蛍光顕微鏡HM-1000(シスメックス株式会社)を使用し、観察溶媒にProlong(商標) Live(Thermo Fisher Scientific社)を用いて、表2の条件で評価を行った。それらの点以外は実験例2と同様の操作でデューティサイクルを測定した。
【0339】
実験例4
〈固定細胞における微小管の超解像イメージング〉
4%パラホルムアルデヒド含有PBS溶液を用いて固定化したHeLa細胞に対して、0.5% Triton X-100含有PBS溶液を添加して透過処理を行った。続いて、3% BSA/0.5% Triton X-100含有PBS溶液を添加して、細胞をブロッキング処理したのち、一次抗体として抗チューブリン抗体(T5201, Thermo Fisher Scientific社)を0.2% BSA/0.1% TritonX-100含有PBS溶液で10μg/mLに希釈して添加した場合と、添加しない場合の2種類の細胞を用意した。さらに、二次抗体として、マレイミド基を介して実施例7及び実施例36の化合物で標識した抗マウスIgG抗体(ab6708, Abcam社)をそれぞれ作製し、0.2% BSA/0.1% TritonX-100含有PBS溶液で10 μg/mLに希釈して添加した。最後に、観察溶媒としてPBSで希釈したProlong(商標) Liveを添加し、HM-1000(シスメックス社)にて透過光像と蛍光像を撮像した。蛍光像の撮像条件を表3に示す。
【0340】
【表3】
【0341】
その結果、一次抗体を加えずに二次抗体のみで蛍光撮像した場合では微小管構造が確認できず、一次抗体と二次抗体を加えたときにのみ微小管に特徴的な線維状の構造が可視化できたことから、実施例7又は実施例36の化合物を標識した二次抗体を用いて微小管の抗体染色が可能であることが確認された(図6のb及びc、図7のg及びh参照)。続いて、取得した画像データを画像解析ソフトImageJ(Ovesny, Mら, Bioimage informatics, 2014, 30, 2389-2390参照)を用いて超解像画像への変換した(図6のd及び図7のi参照)。その際に、単一分子発光のみを抽出して超解像画像への変換に用いた。得られた超解像画像への変換前と変換後の画像中の微小管に対して、垂直方向のラインプロファイルとその半値幅を取得すると、変換前と比べて変換後の画像では半値幅が小さくなり、光の回折限界(約200nm)よりも小さい解像度で微小管を可視化できていることから、実施例7及び実施例36の化合物を用いて超解像画像が構築できることが確認された(図6のe及び図7のj参照)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7