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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ライナープレートの緊結方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 5/10 20060101AFI20240501BHJP
   E21D 11/14 20060101ALI20240501BHJP
   F16B 2/24 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
E21D5/10
E21D11/14
F16B2/24 A
F16B2/24 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020030780
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021134539
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】大高 範寛
(72)【発明者】
【氏名】藤本 雄充
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-069093(JP,U)
【文献】特開平05-154766(JP,A)
【文献】実開平04-082097(JP,U)
【文献】特開2020-002634(JP,A)
【文献】特開2020-002635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 17/00-17/20
E21D 1/00-9/14
F16B 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジに貫通孔が形成されるライナープレート同士を緊結するライナープレートの緊結方法であって、
第1ライナープレートの第1フランジに形成される第1貫通孔と、前記第1ライナープレートに隣接する第2ライナープレートの第2フランジに形成される第2貫通孔とに貫通される貫通部と、
前記貫通部の一端部側に設けられて、前記第1貫通孔よりも径大に形成される第1係止部と、を備え、
前記貫通部は、
折り返されて形成される第1折り返し部と、
前記第1折り返し部を挟んで前記一端部とは反対側の他端部側に設けられる第2係止部と、を有する、緊結金具を用いて、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とに前記貫通部を他端部側から貫通させ、前記第2係止部を前記第2フランジの内側端部から離間させた位置に配置する貫通工程と、
前記第2係止部を前記第2フランジに向けて回転させ、前記第1フランジと前記第2フランジとを前記第1係止部と前記第2係止部とにより挟んで緊結する緊結工程と、備え、
前記緊結工程では、前記第1折り返し部の内側に形成された空間に棒状部材を差し込み、差し込んだ前記棒状部材により前記第2係止部を前記第2フランジに向けて回転させること
を特徴とするライナープレートの緊結方法。
【請求項2】
前記緊結工程では、
前記第1係止部を回転中心として前記貫通部を回転させ、前記第1フランジと前記第2フランジとを挟んで前記第1係止部の反対側に、前記第2係止部を前記第2フランジから離間させて配置し、
前記貫通部の前記一端部に形成されるネジ部に予め螺合された前記第1係止部を、更に前記ネジ部に螺合させることにより、
前記第1フランジと前記第2フランジとを前記第1係止部と前記第2係止部とにより挟んで緊結すること
を特徴とする請求項記載のライナープレートの緊結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライナープレートの緊結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
深礎杭、集水井、水中仮締切、橋脚等を構築する際の土留めとして、ライナープレート同士を複数連結されて用いられる。
【0003】
ライナープレートは、隣接するライナープレートに順次連結されて、筒状に構築される。通常、ライナープレートを連結する場合、隣接するライナープレートのフランジ同士をボルト接合することとなる。しかしながら、ボルト接合の場合には、ボルトをライナープレートのフランジに貫通させた上で、ナットを螺着させる。このため、ボルトにナットを螺着させるのに時間を要し、施工に時間がかかるという問題点がある。
【0004】
従来、ライナープレート同士を連結する作業を簡単に行うことを目的として、特許文献1~2の開示技術が提案されている。
【0005】
特許文献1に開示されたライナープレートの緊結金具は、上下のライナープレートの接触させたそれぞれのフランジの孔に挿入する差し込み部と、接触させた2枚のフランジを挟む挟持部からなることを特徴とする。
【0006】
特許文献2に開示されたライナープレートの仮止め具は、上下のライナープレートの接触させた双方のフランジの孔に挿入する差し込み部と、その2枚のフランジを挿入できる間隔のスリットを設けた挟持部と、差し込み部と挟持部とを接続する接続部とからなり、接続部から挟持部へかけて「く」の字状に折ったことを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開平3-69093号公報
【文献】実開平2-125095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1、2の開示技術では、フランジを挟む挟持部をフランジの孔に貫通させるものではないため、ライナープレート同士を筒状に緊結した際、緊結したライナープレートの内側に形成される空間に挟持部が突出されてしまう。緊結したライナープレートの設計径は、内寸で設計されるため、このように挟持部が内部の空間に突出してしまうと、本来必要とされる設計径を満足することができない。このため、設計段階で予め設計径を大きくする必要があり、費用が増大するという問題点があった。
【0009】
また、特許文献1、2の開示技術では、挟持部でフランジを挟み込むときやライナープレートから取り外すときには、専用の冶具やハンマー等の打撃手段で叩き込む必要がある。このため、騒音が発生してしまうという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、施工時間を短縮することが可能となり、施工費用を低減させ、施工における騒音を低減することが可能となるライナープレートの緊結方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明に係るライナープレートの緊結方法は、フランジに貫通孔が形成されるライナープレート同士を緊結するライナープレートの緊結方法であって、第1ライナープレートの第1フランジに形成される第1貫通孔と、前記第1ライナープレートに隣接する第2ライナープレートの第2フランジに形成される第2貫通孔とに貫通される貫通部と、前記貫通部の一端部側に設けられて、前記第1貫通孔よりも径大に形成される第1係止部と、を備え、前記貫通部は、折り返されて形成される第1折り返し部と、前記第1折り返し部を挟んで前記一端部とは反対側の他端部側に設けられる第2係止部と、を有する、緊結金具を用いて、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とに前記貫通部を他端部側から貫通させ、前記第2係止部を前記第2フランジの内側端部から離間させた位置に配置する貫通工程と、前記第2係止部を前記第2フランジに向けて回転させ、前記第1フランジと前記第2フランジとを前記第1係止部と前記第2係止部とにより挟んで緊結する緊結工程と、備え、前記緊結工程では、前記第1折り返し部の内側に形成された空間に棒状部材を差し込み、差し込んだ前記棒状部材により前記第2係止部を前記第2フランジに向けて回転させることを特徴とする。
【0020】
発明に係るライナープレートの緊結方法は、第発明において、前記緊結工程では、前記第1係止部を回転中心として前記貫通部を回転させ、前記第1フランジと前記第2フランジとを挟んで前記第1係止部の反対側に、前記第2係止部を前記第2フランジから離間させて配置し、前記貫通部の前記一端部に形成されるネジ部に予め螺合された前記第1係止部を、更に前記ネジ部に螺合させることにより、前記第1フランジと前記第2フランジとを前記第1係止部と前記第2係止部とにより挟んで緊結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、施工時間を短縮することが可能となり、施工費用を低減させ、施工における騒音を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、第1実施形態に係るライナープレートの緊結構造の第1例を示す斜視図である。
図2図2(a)は、第1実施形態に係るライナープレートの緊結構造の第1例を示す正面図であり、図2(b)は、その側面図である。
図3図3(a)は、第1実施形態に係る緊結金具の第1例を示す側面図であり、図3(b)は、その平面図であり、図3(c)は、第1実施形態に係る緊結金具の第2例を示す側面図である。
図4図4(a)は、ライナープレートの緊結方法における貫通工程において貫通部を他端部側から貫通した状態を示す正面図であり、図4(b)は、その側面図である。
図5図5(a)は、ライナープレートの緊結方法における貫通工程において第2係止部を内側端部から離間させて配置した状態を示す正面図であり、図5(b)は、その側面図である。
図6図6は、ライナープレートの緊結方法における緊結工程を説明するための平面図である。
図7図7(a)は、第1実施形態に係るライナープレートの緊結構造の第2例を示す正面図であり、図7(b)は、その側面図である。
図8図8(a)は、第2実施形態に係るライナープレートの緊結構造の一例を示す正面図であり、図8(b)は、その側面図である。
図9図9(a)は、第3実施形態に係るライナープレートの緊結構造の一例を示す正面図であり、図9(b)は、その側面図である。
図10図10は、図9(b)のA部拡大図である。
図11図11(a)は、第4実施形態に係るライナープレートの緊結構造の一例を示す正面図であり、図11(b)は、その側面図である。
図12図12(a)は、第4実施形態に係るライナープレートの緊結構造で用いられる緊結金具の一例を示す側面図であり、図12(b)は、その平面図である。
図13図13(a)は、第5実施形態に係るライナープレートの緊結構造の一例を示す正面図であり、図13(b)は、その側面図である。
図14図14(a)は、ライナープレートの緊結方法における貫通工程において第2係止部を内側端部aから離間させて配置した状態を示す正面図であり、図14(b)は、その側面図である。
図15図15(a)は、ライナープレートの緊結方法において第1係止部と第2係止部とにより挟んで緊結する前の状態を示す正面図であり、図15(b)は、ライナープレートの緊結方法において第1係止部と第2係止部とにより挟んで緊結する後の状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した緊結金具、ライナープレートの緊結構造及びライナープレートの緊結方法を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るライナープレートの緊結構造100の第1例を示す斜視図である。図2(a)は、第1実施形態に係るライナープレートの緊結構造100の第1例を示す正面図であり、図2(b)は、その側面図である。図3(a)は、第1実施形態に係る緊結金具1の第1例を示す側面図であり、図3(b)は、その平面図であり、図3(a)は、第1実施形態に係る緊結金具1の第2例を示す側面図である。
【0025】
ライナープレートの緊結構造100は、フランジ91に貫通孔92が形成されるライナープレート9同士を緊結するものである。
【0026】
ライナープレート9は、隣接する他のライナープレート9に緊結されて、筒状に構築されるものである。筒状に構築されたライナープレート9は、立坑内や地上等に設けられ、深礎杭、集水井、水中仮締切、橋脚等を構築する際の土留め等として用いられる。
【0027】
ライナープレート9は、上下方向に波形に形成される波形鋼板と、波形鋼板の上端、下端及び両側端にそれぞれフランジ91を有する。フランジ91には、貫通孔92が形成される。
【0028】
ライナープレート9は、波形鋼板の上端及び下端のフランジ91を周方向フランジとし、波形鋼板の両側端のフランジ91を軸方向フランジとしたとき、ライナープレートの緊結構造100は、上下方向に隣接するライナープレート同士を緊結するものとして、周方向フランジ同士が緊結されるものであってもよい。また、ライナープレートの緊結構造100は、側方向に隣接するライナープレート同士を緊結するものとして、軸方向フランジ同士が緊結されるものであってもよい。
【0029】
ライナープレートの緊結構造100は、第1ライナープレート9-1と、第2ライナープレート9-2と、緊結金具1とを備える。
【0030】
第1ライナープレート9-1は、第1貫通孔92-1が形成される第1フランジ91-1を有する。第2ライナープレート9-2は、第1ライナープレート9-1に隣接するものであって、第2貫通孔92-2が形成される第2フランジ91-2を有する。
【0031】
緊結金具1は、第1ライナープレート9-1と第2ライナープレート9-2とを緊結するためのものである。緊結金具1は、貫通部2と、第1係止部3とを備える。
【0032】
貫通部2は、円柱状等に形成される鋼製等の棒状の部材が用いられる。貫通部2は、第1貫通孔92-1と、第2貫通孔92-2とに貫通される。貫通部2は、一端部2a側に第1係止部3が設けられる。
【0033】
貫通部2は、図3(a)及び図3(b)に示すように、棒状の部材がU字状に折り返された第1折り返し部21と、第1折り返し部21を挟んで貫通部2の一端部2aとは反対側の他端部2b側に設けられる第2係止部22とを有する。第1折り返し部21は、内側に空間Wが形成される。第1折り返し部21の折り返し方向に沿う仮想的な面を第1折り返し面Lとする。
【0034】
貫通部2は、貫通部2の他端部2bに第2係止部22を有する。第2係止部22は、第2フランジ91-2に平行に形成される。
【0035】
また、貫通部2は、図3(c)に示すように、棒状の部材がV字状に折り返された第1折り返し部21と、第1折り返し部21を挟んで貫通部2の一端部2aとは反対側の他端部2b側に設けられる第2係止部22とを有していてもよい。
【0036】
第1係止部3は、貫通部2の一端部2aに設けられる。第1係止部3は、第1貫通孔92-1及び第2貫通孔92-2よりも径大に形成される頭部30と、頭部30よりも径大に形成される拡径部31とを有する。頭部30は、少なくとも2辺が平行に形成されることが好ましく、例えば六角柱状等の角柱状に形成される。なお、頭部30は、半球状等に形成されてもよい。拡径部31は、例えば、ワッシャー(フランジ)が用いられる。第1係止部3は、フランジ付きボルトのように頭部30と拡径部31とが一体的に構成される。また、第1係止部3は、頭部30と拡径部31とが溶接等により一体的に構成されてもよい。また、第1係止部3は、頭部30と拡径部31とが分離可能に構成されてもよい。なお、第1係止部3は、拡径部31が省略されてもよい。
【0037】
第1係止部3と第2係止部22とは、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを挟んで緊結するものである。第1係止部3は、第1フランジ91-1に当接され、第2係止部22は、第2フランジ91-2に当接される。なお、第1係止部3は、第2フランジ91-2に当接され、第2係止部22は、第1フランジ91-1に当接されてもよい。
【0038】
第1フランジ91-1の厚みt1と第2フランジ91-2の厚みt2としたとき、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2と挟む前の状態において、第1係止部3と第2係止部22との距離Hは、第1フランジ91-1の厚みt1と第2フランジ91-2の厚みt2との和以下である。これにより、第1係止部3と第2係止部22とは、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを挟んで緊結することができる。
【0039】
次に、ライナープレートの緊結方法について、説明する。ライナープレートの連結方法は、フランジ91に貫通孔92が形成されるライナープレート9同士を緊結するものであって、緊結金具1が用いられる。ライナープレートの緊結方法では、貫通工程と、緊結工程とを備える。ライナープレートの緊結方法では、予め第1貫通孔92-1と第2貫通孔92-2とを対向させておく。
【0040】
図4(a)は、ライナープレートの緊結方法における貫通工程において貫通部2を他端部2b側から貫通した状態を示す正面図であり、図4(b)は、その側面図である。
【0041】
貫通工程では、先ず第1貫通孔92-1と第2貫通孔92-2とに、貫通部2を他端部2b側から貫通させる。このとき、貫通工程では、第1係止部3をフランジ91の内側端部91aよりも内側に離間させておく。このとき、第1係止部3と第2係止部22との距離Hは、第1フランジ91-1の厚みt1と第2フランジ91-2の厚みt2との和以下である。
【0042】
図5(a)は、ライナープレートの緊結方法における貫通工程において第2係止部22を内側端部91aから離間させて配置した状態を示す正面図であり、図5(b)は、その側面図である。そして、貫通工程では、第1折り返し面Lに沿う方向に回転させて、第1貫通孔92-1と第2貫通孔92-2とに、貫通部2の第1折り返し部21を貫通させ、第2係止部22を第2フランジ91-2の内側端部91aよりも内側に離間させた位置に配置する。このとき、貫通工程では、第1係止部3が第1フランジ91-1に係止される。
【0043】
図6は、ライナープレートの緊結方法における緊結工程を説明するための平面図である。次に、緊結工程では、第1係止部3を回転中心として図6中矢印R方向に貫通部2を回転させる。すなわち、緊結工程では、第2フランジ91-2の内側端部91aよりも内側に離間させた位置に配置した第2係止部22を、第2フランジ91-2に向けて回転させる。このとき、第1折り返し部21の内側に形成される空間Wに、シノ等の所定の棒状部材を差し込んで、差し込んだ棒状部材を回転させることで、第1係止部3を回転中心として図6中矢印R方向に貫通部2を回転させてもよい。
【0044】
このように、緊結工程では、第2係止部22を、第2フランジ91-2に向けて回転させることにより、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを第1係止部3と第2係止部22とにより挟んで緊結する。
【0045】
貫通工程では、第1係止部3と第2係止部22との距離Hは、第1フランジ91-1の厚みt1と第2フランジ91-2の厚みt2との和よりも小さいことが好ましい。この場合、緊結工程では、第1係止部3と第2係止部22とを押し広げながら、第2係止部22を第2フランジ91-2に向けて回転させればよい。これにより、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを第1係止部3と第2係止部22が挟んでより強固に緊結できる。
【0046】
以上により、ライナープレートの緊結方法が完了する。
【0047】
本実施形態によれば、第1貫通孔92-1と第2貫通孔92-2とに貫通される貫通部2と、貫通部2の一端部2a側に設けられて、第1貫通孔92-1よりも径大に形成される第1係止部3と、を備え、貫通部2は、折り返されて形成される第1折り返し部21と、第1折り返し部21を挟んで一端部2aとは反対側の他端部2b側に設けられる第2係止部22と、を有し、第1係止部3と第2係止部22とは、隣接する第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを挟んで固定するものである。
【0048】
すなわち、本実施形態によれば、第2係止部22が第1貫通孔92-1と第2貫通孔92-2とに貫通可能である。これにより、第1ライナープレート9-1と第2ライナープレート9-2とを緊結したとき、フランジ91の内側に形成される空間に緊結金具1を突出させることなく、フランジ91の幅の範囲内に緊結金具1を収めることができる。このため、筒状に緊結した複数のライナープレート9に必要な設計径を確保することができ、施工費用を低減させることが可能となる。
【0049】
また、本実施形態によれば、従来のボルトによりライナープレート同士を接合する際には必要であった、ボルトにナットを一から螺着させる作業を省略することができる。このため、施工時間を短縮することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、貫通部2は、折り返されて形成される第1折り返し部21を有する。これにより、第1折り返し部21の内側の空間Wに、シノ等の所定の棒状部材を差し込んで、差し込んだ棒状部材を回転させることで、第2係止部22を第2フランジ91-2に向けて回転させることができる。このため、従来の金具のような挟持部をフランジに挟み込むときやライナープレートから取り外すときに必要であった、専用の冶具やハンマー等の打撃手段で叩き込む作業を省略することができる。したがって、施工における騒音を低減することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態によれば、第1折り返し部21の内側の空間Wに、シノ等の所定の棒状部材を差し込んで、差し込んだ棒状部材を回転させることで、第2係止部22を第2フランジ91-2に向けて容易に回転させることができる。このため、第1フランジ91-1と、第2フランジ91-2とを容易に緊結することが可能となる。
【0052】
図7(a)は、第1実施形態に係るライナープレートの緊結構造100の第2例を示す正面図であり、図7(b)は、その側面図である。
【0053】
本例に係るライナープレートの緊結構造100では、第1ライナープレート9-1と、第2ライナープレート9-2と、緊結金具1と、補強リング7と、を備える。
【0054】
補強リング7は、第1ライナープレート9-1と第2ライナープレートの間に設けられるものであって、緊結したライナープレート同士を補強するためのものである。補強リング7は、例えばH形鋼が用いられる。
【0055】
補強リング7は、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2との間に配置される補強ウェブ71と、補強ウェブ71の両端部に設けられる一対の補強フランジ72とを有する。補強フランジ72は、フランジ91の内側端部91aよりも内側に配置されることとなる。
【0056】
上記したように、本実施形態によれば、第2係止部22が第1貫通孔92-1と第2貫通孔92-2とに貫通可能である。これにより、第1ライナープレート9-1と第2ライナープレート9-2とを緊結したとき、フランジ91の内側に形成される空間に緊結金具1を突出させることなく、フランジ91の幅の範囲内に緊結金具1を収めることができる。
【0057】
このため、緊結金具1に阻害されずに、ライナープレート9の内側に補強フランジ72を有する補強リング7を用いることができ、補強リング7を用いて緊結したライナープレートの補強を行うことができる。
【0058】
(第2実施形態)
図8(a)は、第2実施形態に係るライナープレートの緊結構造100の一例を示す正面図であり、図8(b)は、その側面図である。
【0059】
第2実施形態に係るライナープレートの緊結構造100では、第2実施形態に係る緊結金具1が用いられる。第2実施形態に係る緊結金具1は、主に貫通部2が第1実施形態に係る緊結金具1と相違する。
【0060】
貫通部2は、貫通部2の他端部2bに第2係止部22を有する。第2係止部22は、半球状に形成される。
【0061】
本実施形態によれば、第2係止部22は、半球状に形成される。これにより、第2係止部22を第2フランジ91-2に向けて回転させたとき、第1係止部3と第2係止部22とでフランジ91を挟み込むのを容易に行うことができる。また、第2フランジ91-2に当接された半球状の第2係止部22を、第2フランジ91-2に当接した状態においても円滑に回転させることができる。このため、第1フランジ91-1と、第2フランジ91-2とを容易に緊結することが可能となる。
【0062】
(第3実施形態)
図9(a)は、第3実施形態に係るライナープレートの緊結構造100の一例を示す正面図であり、図9(b)は、その側面図である。図10は、図9(b)のA部拡大図である。
【0063】
第3実施形態に係るライナープレートの緊結構造100では、第3実施形態に係る緊結金具1が用いられる。第3実施形態に係る緊結金具1は、主に貫通部2が第1実施形態に係る緊結金具1と相違する。
【0064】
貫通部2は、貫通部2の他端部2bに第2係止部22を有する。第2係止部22は、貫通部2の延伸方向に直交する断面に対して傾斜するようにテーパー状に形成されたテーパー部22aと、フランジ91に当接させるための当接部22bと、を有する。第2係止部22は、第2フランジ91-2に向けて回転させる方向の面にテーパー部22aを有する。テーパー部22aは、貫通部2の延伸方向に直交する断面に対して傾斜する角度θがいかなる角度であってもよい。当接部22bは、フランジ91と略平行な平坦面で形成されてもよい。第2係止部22は、当接部22bを頂点とし、その周囲にテーパー部22aが形成される錐体形状に形成されてもよい。第2係止部22は、当接部22bを面とし、その周囲にテーパー部22aが形成される円錐台形状に形成されてもよい。
【0065】
本実施形態によれば、第2係止部22は、テーパー状に形成されるテーパー部22aを有する。これにより、第1係止部3と第2係止部22とでフランジ91を挟み込むのを容易に行うことができる。また、第2フランジ91-2に当接される第2係止部22の面積が、テーパー部22aを有しない場合よりも少なくなるため、第2フランジ91-2に当接した状態においても第2係止部22を円滑に回転させることができる。このため、第1フランジ91-1と、第2フランジ91-2とを容易に緊結することが可能となる。
【0066】
(第4実施形態)
図11(a)は、第4実施形態に係るライナープレートの緊結構造100の一例を示す正面図であり、図11(b)は、その側面図である。図12(a)は、第4実施形態に係る緊結金具1の側面図であり、図12(b)は、その平面図である。
【0067】
第4実施形態に係るライナープレートの緊結構造100では、第4実施形態に係る緊結金具1が用いられる。第4実施形態に係る緊結金具1は、主に貫通部2が第1実施形態に係る緊結金具1と相違する。
【0068】
貫通部2は、貫通部2の他端部2b側に第2係止部22を有する。第2係止部22は、棒状の部材がU字状に折り返された第2折り返し部23を有する。貫通部2は、第2折り返し部23が第2フランジ91-2に当接され、他端部2bが第2フランジ91-2から離間されることとなる。なお、図示は省略するが、第2係止部22は、棒状の部材がV字状に折り返された第2折り返し部23を有していてもよい。
【0069】
貫通部2は、第1折り返し部21の折り返し方向に沿う仮想的な面を第1折り返し面Lとし、第2折り返し部23の折り返し方向に沿う仮想的な面を第2折り返し面Mとしたとき、第1折り返し面Lと第2折り返し面Mとが交わるように、第2折り返し部23が折り返される。
【0070】
本実施形態によれば、第2係止部22は、折り返されて形成される第2折り返し部23を有する。これにより、第2係止部22を第2フランジ91-2に向けて回転させたとき、第1係止部3と第2係止部22とでフランジ91を挟み込むのを容易に行うことができる。また、第2係止部22を、第2フランジ91-2に当接した状態においても円滑に回転させることができる。このため、第1フランジ91-1と、第2フランジ91-2とを容易に緊結することが可能となる。
【0071】
さらに、本実施形態によれば、貫通部2は、第1折り返し面Lと第2折り返し面Mとが交わるように、第2折り返し部23が折り返される。これにより、作業者は、貫通部2の他端部2bを把持して、第2係止部22を第2フランジ91-2に向けて回転させることもできる。このため、第1フランジ91-1と、第2フランジ91-2とを容易に緊結することが可能となる。
【0072】
(第5実施形態)
図13(a)は、第5実施形態に係るライナープレートの緊結構造100の一例を示す正面図であり、図13(b)は、その側面図である。
【0073】
第5実施形態に係るライナープレートの緊結構造100では、第5実施形態に係る緊結金具1が用いられる。第5実施形態に係る緊結金具1は、主に貫通部2、第1係止部3が第1実施形態に係る緊結金具1と相違する。
【0074】
貫通部2は、一端部2a側に第1係止部3が設けられる。貫通部2は、一端部2aに形成されるネジ部29に第1係止部3の頭部30が螺合される。ネジ部29は、円柱状に形成された外面に第1係止部3が螺合可能なネジ山又はネジ溝が形成されるものである。頭部30は、例えばナットが用いられる。頭部30は、ネジ部29に螺合可能であることから、第1係止部3と第2係止部22との距離H1は、適宜調整することができる。
【0075】
次に、ライナープレートの緊結方法について、説明する。図14(a)は、ライナープレートの緊結方法における貫通工程において第2係止部22を内側端部91aから離間させて配置した状態を示す正面図であり、図14(b)は、その側面図である。
【0076】
貫通工程では、先ず第1貫通孔92-1と第2貫通孔92-2とに、貫通部2を他端部2b側から貫通させる。このとき、貫通工程では、第1係止部3をフランジ91の内側端部91aよりも内側に離間させておく。また、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1が、第1フランジ91-1の厚みt1と第2フランジ91-2の厚みt2との和よりも大きくなるように、予め第1係止部3を貫通部2の一端部2aに螺合させておく。このとき、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1と、第1フランジ91-1の厚みt1と第2フランジ91-2の厚みt2との和と、の差Δhとし、第1係止部3の高さh1としたとき、差Δhは、第1係止部3の高さh1よりも小さいことが好ましい。
【0077】
そして、貫通工程では、第1貫通孔92-1と第2貫通孔92-2とに、貫通部2の第1折り返し部21を貫通させ、第2係止部22を第2フランジ91-2の内側端部91aよりも内側に離間させた位置に配置する。このとき、貫通工程では、第1係止部3が第1フランジ91-1に係止される。
【0078】
次に、緊結工程では、第1係止部3を回転中心として貫通部2を回転させる。すなわち、緊結工程では、第2フランジ91-2の内側端部91aよりも内側に離間させた位置に配置した第2係止部22を、第2フランジ91-2に向けて回転させる。緊結工程では、第1折り返し部21の内側に形成される空間Wに、シノ等の所定の棒状部材を差し込んで、差し込んだ棒状部材を回転させることで、第1係止部3を回転中心として貫通部2を回転させてもよい。
【0079】
図15(a)は、ライナープレートの緊結方法において第1係止部3と第2係止部22とにより挟んで緊結する前の状態を示す正面図である。ここで、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1が第1フランジ91-1の厚みt1と第2フランジ91-2の厚みt2との和よりも大きくなる場合、緊結工程では、第2係止部22を第2フランジ91-2に向けて回転させたとき、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを挟んで第1係止部3の反対側に、第2係止部22を第2フランジ91-2から離間させて配置されることとなる。
【0080】
図15(b)は、ライナープレートの緊結方法において第1係止部3と第2係止部22とにより挟んで緊結した後の状態を示す正面図である。そして、緊結工程では、貫通部2の一端部2aに形成されるネジ部29に第1係止部3の頭部30を螺合させる。これにより、図15(b)に示すように、第2フランジ91-2から離間された第2係止部22が第2フランジ91-2に近づいていき、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1が徐々に小さくなり、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを第1係止部3と第2係止部22とにより挟んで緊結する。
【0081】
緊結工程では、貫通部2の一端部2aに形成されるネジ部29に第1係止部3を螺合させる際には、スパナ等の所定の挟持手段により第1係止部3を挟持しつつ、把持した第1係止部3に対してネジ部29を回転させることにより、ネジ部29に第1係止部3を螺合してもよい。また、緊結工程では、貫通部2の一端部2aに形成されるネジ部29に第1係止部3を螺合させる際には、スパナ等の所定の挟持手段により貫通部2を挟持しつつ、第2係止部22を第2フランジ91-2に向けて回転させることにより、ネジ部29に第1係止部3の頭部30を螺合してもよい。このように、第1係止部3及び貫通部2の少なくとも何れかを挟持しておくことにより、第1係止部3とネジ部29との供回りを防止することができる。
【0082】
このようにして、緊結工程では、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを、第1係止部3と第2係止部22とにより挟んで緊結する。
【0083】
本実施形態によれば、貫通部2は、一端部2aに形成されるネジ部29に第1係止部3が螺合される。これにより、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2の厚みによらずに、第1係止部3と第2係止部22が、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを挟んで緊結することができる。このため、汎用性を高くすることが可能となる。
【0084】
また、本実施形態によれば、貫通部2は、一端部2aに形成されるネジ部29に第1係止部3が螺合される。これにより、第1係止部3と第2係止部22が、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを挟んでより強固に緊結することができる。このため、緊結力を十分に確保することが可能となる。
【0085】
さらに、本実施形態によれば、差Δhは、第1係止部3の高さh1よりも小さい。これにより、第1係止部3と第2係止部22が第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを挟んで緊結するのに必要な距離を、第1係止部3の高さh1より小さくすることができる。このため、第1係止部3と第2係止部22が、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを挟んで緊結する作業を容易に行うことができ、施工時間を短縮することが可能となる。
【0086】
本実施形態によれば、緊結工程では、第2係止部22を第2フランジ91-2に向けて回転させ、貫通部2の一端部2aに形成されるネジ部29に予め螺合された第1係止部3を、更にネジ部29に螺合させることにより、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを、第1係止部3と第2係止部22とにより挟んで緊結する。これにより、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2の厚みによらずに、第1係止部3と第2係止部22が、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを挟んで緊結することができる。このため、汎用性を高くすることが可能となる。
【0087】
なお、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1が、第1フランジ91-1の厚みt1と第2フランジ91-2の厚みt2との和よりも小さくなるように、予め第1係止部3を貫通部2の一端部2aに螺合させておいてもよい。
【0088】
かかる場合には、緊結工程では、第1係止部3と第2係止部22とを押し広げながら、第2係止部22を第2フランジ91-2に向けて回転させればよい。これにより、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを第1係止部3と第2係止部22が挟んでより強固に緊結できる。
【0089】
以上、この発明の実施形態のいくつかを説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、これらの実施形態は、適宜組み合わせて実施することが可能である。さらに、この発明は、上記いくつかの実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記いくつかの実施形態のそれぞれは、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
100 :ライナープレートの緊結構造
1 :緊結金具
2 :貫通部
2a :一端部
2b :他端部
21 :返し部
22 :第2係止部
23 :返し部
29 :ネジ部
3 :第1係止部
30 :頭部
31 :拡径部
7 :補強リング
71 :補強ウェブ
72 :補強フランジ
9 :ライナープレート
9-1 :第1ライナープレート
9-2 :第2ライナープレート
91 :フランジ
91-1 :第1フランジ
91-2 :第2フランジ
91a :内側端部
92 :貫通孔
92-1 :第1貫通孔
92-2 :第2貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15