(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】空力デバイスを有する折り曲げ可能レークトウィングチップ
(51)【国際特許分類】
B64C 3/10 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
B64C3/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020057468
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-03-23
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ディーズ, ポール ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】デタート, ブルース アール.
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0043864(US,A1)
【文献】特開2014-088170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0023031(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106184710(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 3/00
B64C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機(100)と共に使用される翼(110)であって、
固定された部分(401)、
前記翼(110)の遠位端(329、510、520)に近接した折り曲げ部分(302、312、322、502、512)であって、レークト翼面を含む折り曲げ部分(302、312、322、502、512)、
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)に含まれるウィングレット(304、314、324
)、及び
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)を前記固定された部分(401)に対して
、折り曲げられた位置と折り曲げられていない位置との間で折り曲げることを可能にするための、前記固定された部分(401)と前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)との間に動作可能に連結されたヒンジ(308、318、328、508、518)を備
え、
前記ウィングレット(304、314、324)が、前記折り曲げられていない位置において前記翼(110)の底面(317)及び上面(315)を通過して延在する、翼(110)。
【請求項2】
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)は、前記底面(317)を通過して延在する前記ウィングレット(304、314、324)の部分がスパンリミット(404)内に留まるように、前記固定された部分(401)に対して前記ヒンジの周りで回転するように構成されている、請求項1に記載の翼(110)。
【請求項3】
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)が、前記固定された部分から90度を超える角度変位まで回転する、請求項1
又は2に記載の翼(110)。
【請求項4】
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)が
、フェザー(504a、504b、514a、514b)を更に含む、請求項
1から3
のいずれか一項に記載の翼(110)。
【請求項5】
前記ウィングレット(304、314、324)が、前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)のセミスパンの近似的に0.2から0.9の間の高さを含む、請求項
1から
4のいずれか一項に記載の翼(110)。
【請求項6】
前記ウィングレット(304、314、324)が、近似的に1.0から6.0の間のアスペクト比を含む、請求項
1から
5のいずれか一項に記載の翼(110)。
【請求項7】
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)が、近似的に1.4から2.5の間のアスペクト比を有する、請求項1から
6のいずれか一項に記載の翼(110)。
【請求項8】
翼(110)の遠位部分に近接して折り曲げ部分(302、312、322、502、512)を連結させることを含
む方法であって、
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)が、レークト翼面
及びウィングレット(304、314、324)を含み、
前記折り曲げ部分が、折り曲げられた位置と折り曲げられていない位置との間で移動するように構成されており、
前記ウィングレット(304、314、324)が、前記折り曲げられていない位置において前記翼(110)の底面(317)及び上面(315)を通過して延在する、方法。
【請求項9】
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)の上に
、フェザー(504a、504b、514a、514b
)を画定することを更に含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記翼(110)の前記遠位部分に近接して前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)を連結させることが、ヒンジ(308、318、328、508、518)に前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)を連結させることを含む、請求項
8又は
9に記載の方法。
【請求項11】
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)は、前記底面(317)を通過して延在する前記ウィングレット(304、314、324)の部分がスパンリミット(404)内に留まるように、前記翼の固定された部分(401)に対して前記ヒンジの周りで回転するように構成されている、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広くは、航空機に関し、特に、空力デバイスを有する折り曲げ可能レークトウィングチップ(raked wing tip:後退しながら先細りになっている翼端)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、比較的長い翼長を有する翼を可能とするために、折り曲げ可能翼が航空機に実装されてきた。特に、巡航中、比較的長い翼長は、低減された抗力などの好ましい空力特性、したがって、低減された燃料消費をもたらし得る。しかし、これらの翼長は、航空機が、空港、建物、及び/又は保守エリア(例えば、ゲート、滑走路、誘導路、誘導レーン、保守施設など)の翼長要件に従う能力も低減させ得る。スパン要件順守を維持するために、ある航空機は、折り曲げ可能翼を採用する。その場合、航空機が地上にある間、翼の遠位部分が回転して航空機の有効スパンを低減させる。結果として、折り曲げを採用する延長される翼長を有する航空機は、依然として翼長要件に従うことができる。
【発明の概要】
【0003】
航空機と共に使用される例示的な翼は、固定された部分、及び翼の遠位端に近接した折り曲げ部分を含む。折り曲げ部分は、レークト翼面(raked surface)を含む。翼は、フェザー又はウィングレットうちの少なくとも一方、及び、折り曲げ部分を固定された部分に対して折り曲げることを可能にするための、固定された部分と折り曲げ部分との間に動作可能に連結されたヒンジも含む。
【0004】
航空機の例示的な空力構造は、第1のレークト部分を含む固定された部分、並びに第2のレークト部分及びウィングレット又はフェザーのうちの少なくとも一方を含む折り曲げ部分を含む。空力構造は、折り曲げ可能部分を固定された部分に対して回転させることを可能にするための、固定された部分と折り曲げ可能部分とを動作可能に連結させるヒンジも含む。
【0005】
翼の固定された部分に対して回転される例示的な折り曲げ翼端は、折り曲げ翼端の側方長さに沿って延在するレークト部分、ウィングレット又はフェザーのうちの少なくとも一方、及びヒンジに連結されるためのヒンジ部分を含み、ヒンジは、折り曲げ翼端を固定された部分に回転可能に連結させる。
【0006】
例示的な方法は、翼の遠位部分に近接して折り曲げ部分を連結させることを含み、折り曲げ部分は、レークト翼面を含み、折り曲げ部分が、ウィングレットを含むか、或いは、翼又は折り曲げ部分のうちの少なくとも一方が、フェザーを含むうちの少なくとも一方である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本明細書で開示される実施例が実装され得る、例示的な航空機を描く。
【
図2】
図1の航空機の例示的な翼端エリアの翼端の上面図である。
【
図6】本明細書で開示される実施例を実施するための例示的な方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面は原寸に比例しない。例えば、描かれている揚力面の厚さは原寸に比例しない。その代わり、層又は領域の厚さは、図面では拡大され得る。一般に、(1以上の)図面及び添付の記載の全体を通して、同一の部分又は類似の部分は、同じ参照番号が使用されることとなる。本特許出願において使用される際に、任意の部分が、任意の方式で、別の部分の上にあること(例えば、上に配置される、上に位置する、上に設置される、上に形成されるなど)の記述は、言及される部分がもう一方の部分と接触しているか、或いは、言及される部分が、もう一方との間に(1以上)の中間部分を伴ってもう一方の部分の上部にあるうちの何れをも意味する。任意の部分が別の部分と接触しているという記述は、当該2つの部分の間に中間部分が存在しないことを意味する。図面は、きれいな線又は境界を有する層及び領域(例えば、揚力面)を示しているが、これらの線及び/又は境界の一部又は全部は理想化されているかもしれない。現実には、境界及び/又は線が、観察不可能、混合、及び/又は不規則であり得る。
【0009】
「第1の」、「第2の」、「第3の」などの記述は、個別に参照され得る複数の要素又は構成要素を特定するときに、本明細書で使用される。別段の定めがあるか又はこれらの使用の文脈に基づいて明らかである場合を除いて、そのような記述は、優先順位、物理的順序、若しくはリスト内の配置、又は時間順の意味を補完することを意図したものではなく、開示された例を理解し易くするために複数の要素又は構成要素を個別に参照するためのラベルとしてのみ使用される。ある実施例では、「第1の」という記述が、詳細な説明内で要素を参照するために使用され得るが、同じ要素が、請求項内で「第2の」又は「第3の」などの異なる記述で参照されてよい。そのような事例では、これらの記述が、単に複数の要素又は構成要素を参照することを容易にするために使用されると理解されるべきである。
【0010】
空力デバイスを有する折り曲げ可能レークトウィングチップが開示される。ある航空機は、空港のインフラ要件に従うことを確実にしながら好ましい空力特性を得るための、折り曲げ部分(例えば、折り曲げ翼端)を採用する。例えば、航空機の翼の遠位端にある折り曲げ部分が、前述のインフラ要件に従うために、航空機の全体のスパンを低減させるために上向きに折り曲がる。
【0011】
本明細書で開示される実施例は、航空機の空力特性を改善するための空力デバイスを有する折り曲げ可能レークトウィングチップ(例えば、レークト翼面、レークト部分、レークト外側形状などを有する折り曲げ可能翼端)を実装する。特に、折り曲げ可能レークトウィングチップは、例えば、重量の(1以上の)影響を減らしつつ航空機の全体の抗力を低減させ、それによって、大幅な燃料の節約を可能にする、ウィングレット又はフェザーのうちの少なくとも一方を実装する。更に、前述の空力デバイスは、概して、固定された移動しない構成要素として実装され得るので、空力デバイスの実装は比較的費用効果に優れる。更に、前述の空力デバイスは、比較的容易に折り曲げ可能翼端上に生成され且つ/又は一体化され得る(例えば、比較的単純な一体化)。
【0012】
ある実施例では、折り曲げ可能翼端のレークト部分と、その上に取り付けられたウィングレット又はフェザーのうちの少なくとも一方とが重なっている。言い換えると、あるそのような実施例では、ウィングレット及び/又はフェザーが、折り曲げ可能翼端のレークト部分又は翼面上に配置されている。更に又は代替的に、前方又は後方フェザーが、折り曲げ可能レークトウィングチップ上に実装されている。ある実施例では、折り曲げ可能レークトウィングチップが、フェザー及びウィングレットの両方を含む。
【0013】
本明細書で使用される際に、「レークト」、「レークト部分」、及び「レークト翼面」という用語は、後退しながら先細りになっている曲線状若しくは直線状のスイーププランフォーム形状(swept planform shape)を示す、幾何学的形状、表面、構成要素形状、及び/又は外側形状を指す。本明細書で使用される際に、「ヒンジ」という用語は、2つの構成要素間の回転運動を可能にするために使用される構成要素、アセンブリ、及び/又はデバイスを指す。本明細書で使用される際に、「固定された部分」という用語は、例えば航空機の胴体などの、移動され得る別の構成要素に対して概して固定された(すなわち、移動固定及び回転固定された)且つ/又は束縛された、構成要素、アセンブリ、及び/又はデバイスを指す。
【0014】
図1は、本明細書で開示される実施例が実装され得る、例示的な航空機100を描いている。図示されている実施例の航空機100は、操縦室104を有する胴体102、安定板106、及びフィン108を含む。例示的な航空機100は、翼110も含む。翼110のうちの両方は、それらに取り付けられた対応するエンジン112を含む。この実施例では、翼110が、翼110の遠位端に近接して位置付けられた翼端114も含む。この実施例では、翼110、安定板106、及びフィン108が、それぞれの操縦翼面及び高揚力面(例えば、移動可能な操縦翼面など)116を含む。
【0015】
動作では、航空機100が、エンジン112によって供給される推力と併せて操縦翼面116の動きによって飛行中に操縦される。特に、操縦翼面116の回転動作は、航空機100にわたる気流の変化又は勾配をもたらすことによって、飛行中に航空機100の移動及び/又は方向に影響を与える。航空機100の巡航中に、操縦翼面116は、航空機100の機首方位、トリム、及び全体の空力性能を維持するように、適切に方向付けられ且つ/又は位置決めされる。しかし、大きな抗力に遭遇することがあり得る。したがって、航空機100の空力性能を高めるために、翼110は、幾つかの空港で通常許容されるよりも広い比較的長い翼長を含む。
図3A~
図5Bに関連して以下でより詳細に説明されることとなるように、翼110は、例えば、更なる空力性能向上のためにそれぞれの翼110の翼端114に配置された、ウィングレット又はフェザーなどの空力デバイスを更に含む。したがって、翼端114は、航空機100の翼長(例えば、有効翼長)を低減させるために、翼110に対して折り曲げられる(例えば、翼端114は、航空機100が地上にいる間に折り曲げられる)。
【0016】
図2は、
図1の例示的な航空機100の翼端114の上面図である。特に、例示的な翼端114は、レークト形状及び/又は全体的な幾何学的形状を示す。したがって、
図2に関連して以下で説明されるパラメータは、本明細書で説明される例示的な翼端114又は他の空力的な特徴及び/若しくは構成要素に関連し得る。
図2の例示的な実施例で見られ得るように、翼端114は、「a」によって指定される前縁スイープ202、及び「b」によって指定されるセミスパン204を含む。更に、翼端114は、「c」によって指定されるルートコード206、「d」によって指定されるチップコード208、及び「e」によって指定される全体スパン210を有する。翼端114の前縁及び後縁のプランフォーム(平面図)形状は、曲線状又は直線状であってよい。
【0017】
本明細書で開示される実施例について、以下で説明されるパラメータは、それに関連付けられた特徴を特徴付けるために使用されてよい。この実施例では、両方の翼端114のプランフォーム面積が、以下の例示的な数式1に基づいて計算できる。すなわち、
【0018】
更に、翼端114のアスペクト比は、以下の例示的な数式2によって計算することができる。
【0019】
更に、テーパ比(例えば、
図2で示されている実施例におけるd/c)が、本明細書で開示される実施例を特徴付けることにおいて使用され得る。しかし、代わりに、任意の適切な数式及び/又は数学的な関係が実装されてよい。
【0020】
本開示の教示によれば、例示的なレークトウィングチップは、近似的に1.4から2.5の間(例えば、1.8)のアスペクト比を示してよい。ある実施例では、テーパ比が、近似的に0.20から0.40の間の範囲内(例えば、0.28)であってよい。ある実施例では、前縁スイープが、近似的に40から70度(例えば、55度)である。
【0021】
図3A~
図3Cは、本開示の教示による、例示的な翼端(例えば、折り曲げ部分、折り曲げ可能レークトウィングチップなど)302、312、322を描いている。翼端302、312、322は、
図1の翼端114を実装するために使用されてよい。
図3Aを参照すると、例示的なレークト折り曲げ可能翼端302が、上面図と前面図の両方で示されている(分かり易くするために共に示されている)。例示的な実施例によれば、翼端302は、ウィングレット(例えば、アップウィングレット)304を含む。これは、(
図3Aの前面図では)上向きに延在するウィングレットとして実装されている。更に、翼端302は、ベース部分306、及びヒンジ(例えば、ヒンジ取り付け部分/セクション、折り曲げ軸部分、ヒンジ端、回転軸など)308を含む。この実施例では、翼端302が、そのそれぞれの側方及び垂直長さに沿って延在するレークト形状又は湾曲を示している。
【0022】
ある実施例では、翼端302の高さの翼端302のセミスパンに対する比が、近似的に0.2から0.5の間である。更に又は代替的に、ウィングレット304のアスペクト比が、近似的に1.0から4.0の範囲内である。
【0023】
図3Bは、上面図及び前面図における例示的なレークト折り曲げ可能翼端312を描いている。例示的な翼端312は、ウィングレット(例えば、アップダウンウィングレット)314、ベース部分316、及びヒンジ318を含む。
図3Aのウィングレット304とは対照的に、図示されているウィングレット314は、(
図3Bの前面図では)翼110のそれぞれ上面と底面315、317から上向きと下向きの両方の方向に沿って延在している。特に、ウィングレット314は、上側部分320と下側部分321を含む。
【0024】
ある実施例では、翼端312の高さの翼端312のセミスパンに対する比が、近似的に0.3から0.7の間である。更に又は代替的に、ウィングレット314のアスペクト比が、近似的に1.0から6.0の範囲内である。
【0025】
図3Cを参照すると、例示的なレークト折り曲げ可能翼端322は、ウィングレット324、ベース部分326、及びヒンジ328を有するように示されている。この実施例では、ウィングレット324が、翼110から上向きと下向きの両方に延在するが、
図3Bのウィングレット314とは対照的に、翼端322の遠位端329からインボードに位置決めされている。したがって、図示されている実施例のウィングレット324は、上側部分330と下側部分332を含む。
【0026】
ある実施例では、翼端322に沿ったウィングレット324のセミスパン方向の位置が、翼端322のセミスパンの近似的に0.5から0.9の間の範囲内である。
【0027】
図4A~
図4Cは、それぞれ、
図3A~
図3Cの例示的な翼端302、312、322の折り曲げを描いている。
図4Aを参照すると、折り曲げられた及び折り曲げられていない状態の翼端302の前面図が示されている。この実施例では、例示的な翼端302が、矢印402によって概して示されるように、
図1の翼110の固定された部分(例えば、静止部分)401からヒンジ308の周りで回転されるように描かれている。この実施例では、ウィングレット304と共に翼端302が、スパンリミット404の範囲内に回転されている。スパンリミット404は、
図1で示されている航空機100の翼長リミット(例えば、幅リミット)を表している。特に、翼端302は、折り曲げられていない角度(例えば、展開角度)から、(
図4Aで見られるように)地上から近似的に90度まで回転される。
【0028】
図4Bを参照すると、例示的な翼端312は、折り曲げられた及び折り曲げられていない状態における前面図に沿って示されている。
図4Bの例示的な実施例で見られ得るように、翼端312は、矢印410によって概して示されるように、ヒンジ318の周りで固定された部分401に対して回転される。特に、翼端312は、ウィングレット314の下側部分321が、スパンリミット404の範囲内に位置決めされるように、90度を超えた角度で回転される。この実施例では、翼端312が、(
図4Bで見られるように)地上及び/又は固定された部分401から90度を超えた角度まで回転される。
【0029】
図4Cを参照すると、例示的な翼端322は、折り曲げられた及び折り曲げられていない状態における前面図に沿って描かれている。
図4Bの実施例に類似して、ウィングレット324の下側部分332は、下側部分332がスパンリミット404の範囲内に維持されるように、矢印414によって概して示されるように、ヒンジ328の周りで静止部分401に対して回転される。
【0030】
図5A~
図5Bは、本開示の教示による、更なる例示的なレークト折り曲げ可能翼端502、512を描いている。例示的な翼端502、512は、
図1の翼端114を実装するために使用されてよい。
図3A~
図4Cに関連して示され説明された例示的な翼端302、312、322とは対照的に、例示的な翼端502、512は、代わりに、翼110の前方又は後方に沿って延在する翼端フェザー空力デバイスを実装する。
図5Aを参照すると、例示的な翼端502が、上面図と前面図の両方で示されている(分かり易くするために共に示されている)。図示されている実施例によれば、翼端502は、フェザー504(本明細書で以後、フェザー504a、504b)、ベース部分506、ヒンジ508、及び遠位端510を含む。この特定の実施例では、フェザー504aが、(
図5Aのビュー内で)地上に対して相対的に垂直(例えば、地上から90度)に延在している。
【0031】
ある実施例では、翼端フェザー接合位置が、翼端502のセミスパンの(例えば、翼端502のルートからアウトボードに)近似的に0.2から0.7の範囲内にある。前方フェザー及び後方フェザーを含むある実施例では、前方フェザーセミスパン長さを後方フェザーセミスパン長さで割ったものが、近似的に0.8から1.2の間の範囲内(例えば、1.0)に等しい。ある実施例では、フェザー504a、504bのうちの少なくとも一方が、近似的に2.0から5.0の間のアスペクト比を有する。幾つかの他の実施例では、フェザー504a、504bが、翼端502上に位置決めされない(例えば、翼端504a、504bは、翼端502からインボードに位置決めされる)。
【0032】
図5Bは、前面図と上面図の両方で、折り曲げられた及び折り曲げられていない両方の状態で示されている、例示的な翼端512を描いている。図示されている実施例によれば、翼端512は、フェザー514(本明細書で以後、フェザー514a、514b)、ベース部分516、ヒンジ518、及び遠位端520を含む。
図5Aの例示的な翼端502とは対照的に、フェザー514aは、相対的に垂直に位置決めされたフェザー504aとは異なり、傾いている(例えば、複数の平面における湾曲を示している)。
【0033】
動作では、翼端512が、ヒンジ518の周りで回転される。遠位端520とベース部分516が、スパンリミット404の範囲内入ることを可能とするために、翼端512は、例えば航空機100が地上にあるときに、矢印530によって概して示されるように、(例えば、少なくとも90度の角度変位まで)十分に回転される。
【0034】
ある実施例では、前方フェザーの傾斜角度が、後方フェザーから近似的に25から90度の間の範囲内である。ある実施例では、前方フェザーが、後方フェザーより(地上から)高く位置決めされる。更に又は代替的に、前方フェザーは、後方フェザーより高い高さを有する。ある実施例では、翼端折り曲げ位置が、前縁スイープにおける増加及び/又は遷移(例えば、変曲、勾配の変化など)に一致する。ある実施例では、フェザーの幾何学的形状が、ウィングレットの幾何学的形状と一体化される(例えば、フェザーは、ウィングレット及び/又はウィングレット形状の上に組み込まれる)。幾つかの他の実施例では、フェザー514a、514bが、翼端512上に位置決めされない。
【0035】
図2~
図5Bに関連して本明細書で開示された前述の実施例の範囲及び他の範囲は、例えば、折り曲げ翼端用途では空力効率(例えば、抗力低減)において有利であり得る。しかし、
図2~
図5Bに関連して、数多くの例示的な寸法及びパラメータ値が説明されたが、代わりに、任意の適切な寸法及び/又はパラメータ値が実装されてよい。
【0036】
図6は、本明細書で開示される実施例を実施するための例示的な方法600を表すフローチャートである。例示的な方法600は、製造又は運航中の航空機上に(例えば、組み込み及び/又はアップグレードのプロセス中に)、レークト折り曲げ可能翼端又は(1以上の)折り曲げ部分(例えば、翼端302、312、322、502、512)を設置するために使用されてよい。
【0037】
例示的な実施例によれば、ウィングレット又はフェザーのうちの少なくとも一方が、折り曲げ可能レークトウィングチップ上に画定される(ブロック602)。ある実施例では、ウィングレット又はフェザーが、翼端上に一体的に生成される(例えば、ダイキャスト、成型など)。他の実施例では、ウィングレット又はフェザーが、翼端に設置され又は組み付けられる。
【0038】
この実施例では、ブロック604で、折り曲げ可能翼端が、翼の固定された部分に連結される。特に、折り曲げ可能翼端は、固定された部分と折り曲げ可能レークトウィングチップとの間のインターフェースを画定するヒンジに組み付けられる。
【0039】
ブロック606で、ある実施例では、折り曲げ可能翼端の回転が検証され、プロセスは終了する。例えば、折り曲げ可能翼端の回転範囲は、空力性能要件が満たされ且つ/又は折り曲げ可能翼端が折り曲げられ(例えば、上向きに折り曲げられ)たときにスパン要件が満たされることを確実にするように検証される。
【0040】
実施例1は、航空機と共に使用される翼を含む。翼は、固定された部分、及び翼の遠位端に近接した折り曲げ部分を含む。折り曲げ部分は、レークト翼面を含む。翼は、フェザー又はウィングレットうちの少なくとも一方、及び、折り曲げ部分を固定された部分に対して折り曲げることを可能にするための、固定された部分と折り曲げ部分の間に動作可能に連結されたヒンジも含む。
【0041】
実施例2は、実施例1の翼を含み、折り曲げ部分が、ウィングレットを含む。
【0042】
実施例3は、実施例2の翼を含み、折り曲げ部分が、フェザーを更に含む。
【0043】
実施例4は、実施例3の翼を含み、折り曲げ部分が、固定された部分から90度を超える角度変位まで回転する。
【0044】
実施例5は、実施例2の翼を含み、折り曲げ部分が、フェザーを更に含む。
【0045】
実施例6は、実施例2の翼を含み、ウィングレットが、折り曲げ部分のセミスパンの近似的に0.2から0.9の間の高さを含む。
【0046】
実施例7は、実施例2の翼を含み、ウィングレットが、近似的に1.0から6.0の間のアスペクト比を含む。
【0047】
実施例8は、実施例1の翼を含み、折り曲げ部分が、近似的に1.4から2.5の間のアスペクト比を含む。
【0048】
実施例9は、航空機の空力構造を含む。空力構造は、第1のレークト部分を含む固定された部分、並びに第2のレークト部分及びウィングレット又はフェザーのうちの少なくとも一方を含む折り曲げ部分を含む。空力構造は、折り曲げ可能部分を固定された部分に対して回転させることを可能にするための、固定された部分と折り曲げ可能部分とを動作可能に連結させるヒンジも含む。
【0049】
実施例10は、実施例9の空力構造を含み、折り曲げ部分が、ウィングレットを含む。
【0050】
実施例11は、実施例10の空力構造を含み、ウィングレットが、翼の底面及び上面を通過して延在する。
【0051】
実施例12は、実施例11の空力構造を含み、折り曲げ部分が、固定された部分から90度を超える角度変位まで回転する。
【0052】
実施例13は、実施例10の空力構造を含み、折り曲げ部分が、フェザーを更に含む。
【0053】
実施例14は、実施例10の空力構造を含み、ウィングレットが、折り曲げ部分のセミスパンの近似的に0.2から0.9の間の高さを含む。
【0054】
実施例15は、実施例9の空力構造を含み、折り曲げ部分が、フェザーを含み、フェザーは、折り曲げ部分のセミスパンの近似的に0.2から0.7の間にある接合位置を有する。
【0055】
実施例16は、翼の固定された部分に対して回転される折り曲げ翼端を含む。折り曲げ翼端は、折り曲げ翼端の側方長さに沿って延在するレークト部分、ウィングレット又はフェザーのうちの少なくとも一方、及びヒンジに連結されるためのヒンジ部分を含み、ヒンジは、折り曲げ翼端を固定された部分に回転可能に連結させる。
【0056】
実施例17は、実施例16の折り曲げ翼端を含み、レークト部分と、ウィングレット又はフェザーのうちの少なくとも一方とが重なっている。
【0057】
実施例18は、実施例16の折り曲げ翼端を含み、折り曲げ翼端が、折り曲げ翼端のセミスパンの近似的に0.2から0.9の間の高さを有するウィングレットを含む。
【0058】
実施例19は、実施例16の折り曲げ翼端を含み、折り曲げ翼端が、近似的に1.4から2.5の間のアスペクト比を有する。
【0059】
実施例20は、実施例16の折り曲げ翼端を含み、折り曲げ翼端が、フェザーを含み、フェザーが、折り曲げ翼端のセミスパンの近似的に0.2から0.7の間にある接合位置を有する。
【0060】
実施例21は、翼の遠位部分に近接して折り曲げ部分を連結させることを含む例示的な方法を含み、折り曲げ部分は、レークト翼面を含み、折り曲げ部分が、ウィングレットを含むか、或いは、翼又は折り曲げ部分のうちの少なくとも一方が、フェザーを含むうちの少なくとも一方である。
【0061】
実施例22は、実施例21の方法を含み、折り曲げ部分の上にウィングレット又はフェザーのうちの少なくとも一方を画定することを更に含む。
【0062】
実施例23は、実施例21の方法を含み、翼の遠位部分に近接して折り曲げ部分を連結させることが、ヒンジに折り曲げ部分を連結させることを含む。
【0063】
前述のことから、例示的な方法、装置、及び製品は、複雑で高価な可動部品及び/又は制御システムを更に必要とすることなしに、折り曲げ可能翼端の空力効率を改善することが開示されたと理解できるだろう。したがって、開示された実施例は、空力効率の費用効果に優れた改善を可能にする。更に、本明細書で開示されたある実施例は、翼長の増加を可能にできる(例えば、空力的な利益をより高めるためのより長いスパンの翼の設計)。
【0064】
本明細書では特定の例示的な方法、装置、及び製品が開示されたが、本特許出願の範囲はこれらに限定されるものではない。反対に、本特許出願は、本特許出願の特許請求の範囲内に公正に当てはまる全ての方法、装置、及び製品を包含する。本明細書で開示される実施例は、航空機の折り曲げ翼端に関するものとして示されたが、本明細書で開示される実施例は、非限定的に、潜水艦の用途、船舶の用途、輸送体の用途などを含む、任意の適切な輸送体の構造及び/又は用途に適用可能である。
【0065】
本開示は、以下の条項で説明される主題を含む。
条項1
航空機(100)と共に使用される翼(110)であって、
固定された部分(401)、
前記翼(110)の遠位端(329、510、520)に近接した折り曲げ部分(302、312、322、502、512)であって、レークト翼面を含む折り曲げ部分(302、312、322、502、512)、
フェザー(504a、504b、514a、514b)又はウィングレット(304、314、324)のうちの少なくとも一方、及び
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)を前記固定された部分(401)に対して折り曲げることを可能にするための、前記固定された部分(401)と前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)との間に動作可能に連結されたヒンジ(308、318、328、508、518)を備える、翼(110)。
条項2
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)が、前記ウィングレット(304、314、324)を含む、条項1に記載の翼(110)。
条項3
前記ウィングレット(304、314、324)が、前記翼(110)の底面(317)及び上面(315)を通過して延在する、条項2に記載の翼(110)。
条項4
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)が、前記固定された部分から90度を超える角度変位まで回転する、条項3に記載の翼(110)。
条項5
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)が、前記フェザー(504a、504b、514a、514b)を更に含む、条項2又は3に記載の翼(110)。
条項6
前記ウィングレット(304、314、324)が、前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)のセミスパンの近似的に0.2から0.9の間の高さを含む、条項2から5のいずれか一項に記載の翼(110)。
条項7
前記ウィングレット(304、314、324)が、近似的に1.0から6.0の間のアスペクト比を含む、条項2から6のいずれか一項に記載の翼(110)。
条項8
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)が、近似的に1.4から2.5の間のアスペクト比を有する、条項1から7のいずれか一項に記載の翼(110)。
条項9
航空機(100)の空力構造(110)であって、
第1のレークト部分を含む固定された部分(401)、
折り曲げ部分(302、312、322、502、512)であって、
第2のレークト部分、及び
ウィングレット(304、314、324)又はフェザー(504a、504b、514a、514b)のうちの少なくとも一方を含む、折り曲げ部分(302、312、322、502、512)、並びに
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)を前記固定された部分(401)に対して回転させることを可能にするための、前記固定された部分(401)と前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)とを動作可能に連結させるヒンジ(308、318、328、508、518)を備える、空力構造(110)。
条項10
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)が、前記ウィングレット(304、314、324)を含む、条項9に記載の空力構造(110)。
条項11
前記ウィングレット(304、314、324)が、前記翼(110)の底面(317)及び上面(315)を通過して延在する、条項10に記載の空力構造(110)。
条項12
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)が、前記固定された部分(401)から90度を超える角度変位まで回転する、条項11に記載の空力構造(110)。
条項13
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)が、前記フェザー(504a、504b、514a、514b)を更に含む、条項10又は11に記載の空力構造(110)。
条項14
前記ウィングレット(304、314、324)が、前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)のセミスパンの近似的に0.2から0.9の間の高さを含む、条項10から13のいずれか一項に記載の空力構造(110)。
条項15
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)が、前記フェザー(504a、504b、514a、514b)を含み、前記フェザー(504a、504b、514a、514b)が、前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)のセミスパンの近似的に0.2から0.7の間にある接合位置を有する、条項9から14のいずれか一項に記載の空力構造(110)。
条項16
翼(110)の固定された部分(401)に対して回転される折り曲げ翼端(302、312、322、502、512)であって、
前記折り曲げ翼端(302、312、322、502、512)の側方長さに沿って延在するレークト部分、
ウィングレット(304、314、324)又はフェザー(504a、504b、514a、514b)のうちの少なくとも一方、及び
ヒンジ(308、318、328、508、518)に連結されるためのヒンジ部分を備え、前記ヒンジ(308、318、328、508、518)が、前記折り曲げ翼端(302、312、322、502、512)を前記固定された部分(401)に回転可能に連結させる、折り曲げ翼端(302、312、322、502、512)。
条項17
前記レークト部分と、前記ウィングレット(304、314、324)又は前記フェザー(504a、504b、514a、514b)のうちの前記少なくとも一方とが重なっている、条項16に記載の折り曲げ翼端(302、312、322、502、512)。
条項18
前記折り曲げ翼端(302、312、322、502、512)が、前記折り曲げ翼端(302、312、322、502、512)のセミスパンの近似的に0.2から0.9の間の高さを有する前記ウィングレット(304、314、324)を含む、条項16又は17に記載の折り曲げ翼端(302、312、322、502、512)。
条項19
前記折り曲げ翼端(302、312、322、502、512)が、近似的に1.4から2.5の間のアスペクト比を有する、条項16から18のいずれか一項に記載の折り曲げ翼端(302、312、322、502、512)。
条項20
前記折り曲げ翼端(302、312、322、502、512)が、前記フェザー(504a、504b、514a、514b)を含み、前記フェザー(504a、504b、514a、514b)が、前記折り曲げ翼端(302、312、322、502、512)のセミスパンの近似的に0.2から0.7の間にある接合位置を有する、条項16から19のいずれか一項に記載の折り曲げ翼端(302、312、322、502、512)。
条項21
翼(110)の遠位部分に近接して折り曲げ部分(302、312、322、502、512)を連結させることを含み、前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)が、レークト翼面を含み、
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)が、ウィングレット(304、314、324)を含むか、或いは
前記翼(110)又は前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)のうちの少なくとも一方が、フェザー(504a、504b、514a、514b)を含むうちの少なくとも一方である、方法。
条項22
前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)の上に、前記ウィングレット(304、314、324)又は前記フェザー(504a、504b、514a、514b)のうちの少なくとも一方を画定することを更に含む、条項21に記載の方法。
条項23
前記翼(110)の前記遠位部分に近接して前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)を連結させることが、ヒンジ(308、318、328、508、518)に前記折り曲げ部分(302、312、322、502、512)を連結させることを含む、条項21又は22に記載の方法。