IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フタバ産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-接合体の製造方法 図1
  • 特許-接合体の製造方法 図2
  • 特許-接合体の製造方法 図3
  • 特許-接合体の製造方法 図4
  • 特許-接合体の製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/00 20060101AFI20240501BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20240501BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20240501BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B23K3/00 310H
B23K1/00 330H
F28F3/08 301Z
F28D9/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020063226
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021159938
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸一郎
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-019779(JP,A)
【文献】特開2005-246472(JP,A)
【文献】特開2008-147555(JP,A)
【文献】特開2009-030890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00-1/20
B23K 3/00-3/08
F28F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウ付け用治具を用いてロウ付けにより接合された複数の部材を有する接合体の製造方法であって、
前記ロウ付け用治具は、ロウ付けを行うために加熱される前記複数の部材を押圧するよう構成されており、
下方に変位することで、下面により前記複数の部材を押圧するよう構成される押圧部と、
前記押圧部の前記下面から前記下方に突出する部位であって、前記複数の部材を押圧することにより前記下方に変位し、予め定められた規制位置に到達した前記押圧部が、前記下方に変位するのを規制するよう構成される部位である規制部と、
を備え、
前記押圧部は、前記下方に変位可能な錘として構成され、当該押圧部の重さのみにより下方に変位し、前記複数の部材を押圧し、
前記接合体の製造方法は、
前記複数の部材を、それぞれの部材の間にロウ材が配置された状態で、上下方向に沿って重ねて配置し、
重ねて配置された前記複数の部材を、前記押圧部により前記下方に押圧しながら、ロウ付けを行うために加熱し、
前記複数の部材の各々は、板状の部分を有し、
前記複数の部材の間には、内部空間が形成されており、
前記複数の部材の各々は、前記上下方向に突出し、前記内部空間と外部とを隔てる壁部を備え、
前記複数の部材の各々における前記壁部は、他の部材の前記壁部と重なるように配置され、
前記壁部の先端が、ロウ付けにより他の部材に接合される
接合体の製造方法。
【請求項2】
請求項に記載された接合体の製造方法であって、
前記内部空間は、流体の流路、又は、流体を収容するための空間である
接合体の製造方法。
【請求項3】
請求項に記載された接合体の製造方法であって、
前記接合体は、前記内部空間に位置する流体と、部に位置する流体との間の熱交換を行う熱交換器として構成される
接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロウ付けのための加熱を行いながら複数の部材を押圧することによる接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、複数の板状部材を積層することにより積層体を組み立てた後、該積層体の上部に錘を配置し、錘により押圧しながら積層体を加熱することで、これらの板状部材のロウ付けを行う技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2007-529707号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、錘が重すぎる場合等には、加熱中に積層体に含まれる板状部材が押しつぶされて変形し、その結果、積層体の寸法の精度が低下したり、ロウ付けを行う複数の部材が損傷したりする恐れがある。
【0005】
本開示の一態様においては、より好適に押圧加工を行いながらロウ付けを行うことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、ロウ付けを行うために加熱される複数の部材を押圧するよう構成されたロウ付け用治具であって、押圧部と、規制部とを備える。押圧部は、予め定められた押圧方向に変位することで、複数の部材を押圧するよう構成される。規制部は、複数の部材を押圧することにより押圧方向に変位し、予め定められた規制位置に到達した押圧部が、押圧方向に変位するのを規制するよう構成される。
【0007】
上記構成によれば、ロウ付けのための加熱中、押圧部は、規制位置に到達するまで複数の部材を押圧できる。つまり、複数の部材の押圧方向の長さが所定値になるように押圧加工しながら、複数の部材のロウ付けを行うことができる。このため、複数の部材の寸法の精度が低下したり、複数の部材が損傷したりするのを抑制できる。したがって、より好適に押圧加工を行いながらロウ付けを行うことができる。
【0008】
なお、押圧部は、押圧方向に変位可能な錘として構成されても良い。
上記構成によれば、ロウ付け用治具の構成を簡易化できる。このため、ロウ付けの際にロウ付け用治具が高温に晒された場合であっても、温度の影響を抑えつつ、好適に押圧部により複数の部材を押圧できる。
【0009】
また、本開示の一態様は、ロウ付けにより接合された複数の部材を有する接合体の製造方法である。該製造方法では、複数の部材が、それぞれの部材の間にロウ材が配置された状態で、押圧方向に沿って重ねて配置される。そして、重ねて配置された複数の部材を、押圧部により押圧方向に押圧しながら、ロウ付けを行うために加熱する。また、押圧部は、複数の部材の押圧により押圧方向に変位し、予め定められた規制位置に到達すると、押圧方向への変位が規制されるよう構成される。
【0010】
上記構成によれば、ロウ付けのための加熱中、押圧部は、規制位置に到達するまで複数の部材を押圧できる。つまり、複数の部材の押圧方向の長さが所定値になるように押圧加工しながら、複数の部材のロウ付けを行うことができる。このため、複数の部材の寸法の精度が低下したり、複数の部材が損傷したりするのを抑制できる。したがって、より好適に押圧加工を行いながらロウ付けを行うことができる。
【0011】
なお、複数の部材の各々は、板状の部分を有していても良い。
このような複数の部材の押圧加工を行う場合には、各部材の板状の部分が変形し易くなると考えられる。これに対し、上記構成によれば、押圧部が規制位置まで到達するまでしか複数の部材の押圧が行われない。このため、各部材の板状の部分における過度な変形を抑制でき、これにより、複数の部材の寸法の精度が低下したり、複数の部材が損傷したりするのを抑制できる。
【0012】
また、複数の部材の各々は、押圧方向又はその反対側に突出する少なくとも1つの突出部を備えていても良い。
このような複数の部材の押圧加工を行う場合には、各部材の少なくとも1つの突出部又はその周辺に荷重がかかり易くなり、その結果、これらの部分が変形し易くなると考えられる。これに対し、上記構成によれば、押圧部が規制位置まで到達するまでしか複数の部材の押圧が行われない。このため、各部材の少なくとも1つの突出部又はその周辺に過度に荷重がかかるのを抑制でき、その結果、これらの部分が過度に変形するのを抑制できる。
【0013】
また、複数の部材の各々は、押圧方向又はその反対側に突出する少なくとも1つの突出部を備えていても良い。そして、少なくとも1つの突出部の端部が、ロウ付けにより他の部材に接合されても良い。
【0014】
このような複数の部材の押圧加工を行う場合には、各部材の少なくとも1つの突出部の端部に荷重がかかり易くなり、その結果、少なくとも1つの突出部にて損傷又は接合不良が生じる恐れがある。これに対し、上記構成によれば、押圧部が規制位置まで到達するまでしか複数の部材の押圧が行われない。このため、各部材の少なくとも1つの突出部の端部に過度に荷重がかかるのを抑制でき、これにより、少なくとも1つの突出部での損傷又は接合不良を抑制できる。
【0015】
また、複数の部材の間に、流体の流路となる空間、又は、流体を収容するための空間が形成されても良い。
このような複数の部材の押圧加工を行う場合には、各部材における上記空間の周辺の部分が変形し易くなると考えられる。これに対し、上記構成によれば、押圧部が規制位置まで到達するまでしか複数の部材の押圧が行われない。このため、各部材の上記空間の周辺の部分における過度な変形を抑制でき、これにより、複数の部材の寸法の精度が低下したり、複数の部材が損傷したりするのを抑制できる。
【0016】
また、接合体は、複数の部材の間に形成された空間に位置する流体と、該空間の外部に位置する流体との間の熱交換を行う熱交換器として構成されていても良い。
上記構成によれば、熱交換器の製造工程において、より好適に押圧加工を行いながらロウ付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】熱交換器の斜視図である。
図2図1におけるII-II断面図である。
図3図1におけるIII-III断面図である。
図4】ロウ付けの開始時点において、ロウ付け用治具及び複数のプレートを側面視した断面図である。
図5】ロウ付けの終了時点において、ロウ付け用治具及び複数のプレートを側面視した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0019】
[1.熱交換器の構成]
本実施形態の熱交換器1は、車両に搭載され、排気とエンジンの冷却液との間で熱交換を行う(図1参照)。熱交換器1は、ロウ付けにより接合された複数のプレート10と、入口パイプ部12及び出口パイプ部13(以後、単にパイプ部12、13とも記載)とを備える。
【0020】
各プレート10は、径方向に広がる偏平なリング状の形状を有し、その中心が直線状に延びる軸線16と略一致するように、隙間を空けた状態で軸線16に沿って積層される。また、複数のプレート10は、軸線16に対し略直交する向きに広がる。そして、複数のプレート10は、車両の排気管(図示無し)を囲むように配置される。また、各プレート10の内部には、リング状に延びる冷却液の流路11が形成されている(図2、3参照)。
【0021】
パイプ部12、13は、軸線16を挟んで対面し、一方(以後、第1側)の端に位置するプレート10から、他方(以後、第2側)の端に位置するプレート10まで、複数のプレート10を貫通するように軸線16に沿って延びる。また、パイプ部12、13は、各プレート10の流路11に連通する。また、パイプ部12、13は、軸線16に直交する断面が略円形である。パイプ部12、13の端部は、第1側の端に位置するプレート10から軸線16に沿って突出する。そして、入口パイプ部12における第1側のプレート10から突出した端部は、冷却液の入口14を形成する。一方、出口パイプ部13における該プレート10から突出した端部は、冷却液の出口15を形成する。
【0022】
そして、排気管を流下する排気は、図示しないバルブ等により複数のプレート10の隙間に誘導される。また、エンジンの冷却液は、入口パイプ部12の入口14から複数のプレート10の流路11に流入し、流路11を通過した後に、出口パイプ部13の出口15から外部へと流出する。そして、複数のプレート10の隙間を流下する排気と、各流路11を流下する冷却液との間で、熱交換が行われる。
【0023】
[2.複数のプレートの構成]
各プレート10は、第1部材2と第2部材3とを備える(図2、3参照)。
第1部材2は、第1主面部20と、2つの第1接続部22と、第1内周壁23と、第1外周壁24とを備える。
【0024】
第1主面部20は、リング状の板状の部位であり、径方向に平面状に広がる。また、第1主面部20には、当該第1主面部20を厚さ方向に貫通する略円形の2つの第1パイプ穴21が形成される。これらの第1パイプ穴21は、軸線16を挟んで対面するように位置する。
【0025】
2つの第1接続部22は、それぞれ、パイプ部12、13の一部を形成する。具体的には、各第1接続部22は、第1主面部20における各第1パイプ穴21を囲む縁部から、軸線16に沿って第1側に突出する。また、各第1接続部22は、第1パイプ穴21を囲むように設けられる。
【0026】
第1内周壁23は、第1主面部20の内周縁から、軸線16に沿って第2側に突出する壁状の部位であり、第1主面部20の内周縁を周回するように延びる。
第1外周壁24は、第1主面部20の外周縁から、軸線16に沿って第2側に突出する壁状の部位であり、第1主面部20の外周縁を周回するように延びる。
【0027】
第2部材3は、第2主面部30と、2つの第2接続部32と、第2内周壁33と、第2外周壁34とを備える。
第2主面部30は、リング状の板状の部位であり、径方向に平面状に広がる。また、第2主面部30には、当該第2主面部30を厚さ方向に貫通する略円形の2つの第2パイプ穴31が形成される。これらの第2パイプ穴31は、軸線16を挟んで対面するように位置する。
【0028】
2つの第2接続部32は、それぞれ、パイプ部12、13の一部を形成する。具体的には、各第2接続部32は、第2主面部30における各第2パイプ穴31を囲む縁部から、軸線16に沿って第2側に突出する。また、各第2接続部32は、第2パイプ穴31を囲むように設けられる。
【0029】
第2内周壁33は、第2主面部30の内周縁から、軸線16に沿って第1側に突出する壁状の部位であり、第2主面部30の内周縁を周回するように延びる。
第2外周壁34は、第2主面部30の外周縁から、軸線16に沿って第1側に突出する壁状の部位であり、第2主面部30の外周縁を周回するように延びる。
【0030】
そして、詳細は後述するが、第1部材2及び第2部材3を対面させた状態で接合することで、プレート10が形成される。この時、第1主面部20と第2主面部30とは、隙間を空けて略平行に配置され、該隙間が流路11を形成する。また、この時、各第1パイプ穴21は、各第2パイプ穴31に対面する。さらに、各プレート10における各第2接続部32は、他のプレート10における各第1接続部22に接合することで、これらのプレート10が積層され、熱交換器1が形成される。
【0031】
なお、積層された複数のプレート10における第1側の端のプレート10では、第1部材2の2つの第1接続部22が、それぞれ、熱交換器1の入口14及び出口15を形成する。また、積層された複数のプレート10における第2側の端のプレート10は、第2側に他のプレート10が接続されない。このため、該プレート10における第2部材3には、2つの第2パイプ穴31及び2つの第2接続部32が設けられていない。
【0032】
[3.ロウ付け用治具の構成]
本実施形態のロウ付け用治具5は、重ねて配置された複数の部材のロウ付けに用いられる(図4、5参照)。なお、上述した熱交換器1の複数のプレート10を構成する複数の第1及び第2部材2、3は、ロウ付け用治具5を用いたロウ付けの対象の一例である。ロウ付け用治具5は、炉6内に配置され、ロウ付けを行うために加熱される複数の部材を押圧する。
【0033】
ロウ付け用治具5は、例えば、ロウ付けの際の加熱により変形しない材料(例えば、グラファイト)により構成される。また、ロウ付け用治具5は、基部50と、押圧部52と、複数の規制部54とを備える。
【0034】
基部50は、平面状に広がる上面51を有しており、ロウ付けが行われる複数の部材が上面51に配置される。
押圧部52は、基部50に配置された複数の部材の上に配置される。具体的には、押圧部52は、平面状に広がる下面53を有しており、押圧部52は、下面53が複数の部材の上部に当接するように配置される。また、押圧部52は、錘として構成されており、自重により下方に変位することで、下面53を介して複数の部材を下方へと押圧する。
【0035】
複数の規制部54は、押圧部52の下面53から下方に突出する。また、複数の規制部54は、押圧部52の下面53の中央を挟んで対面するように、下面53の端に設けられる。なお、本実施形態では、一例として、2つの規制部54が設けられる。しかしながら、これに限らず、3以上の規制部54が設けられても良いし、1つの規制部54が設けられても良い。
【0036】
ここで、複数の規制部54の突出方向の長さ(換言すれば、下方に延びる長さ)を、突出長とする。複数の規制部54の各々の突出長は、略同一であり、複数の規制部54の下端に位置する下端面55は、平面状となっている。そして、複数の規制部54の各下端面55が基部50の上面51に当接するように押圧部52が配置されると、押圧部52の下面53と基部50の上面51とは、略平行となる。
【0037】
また、ロウ付けの開始時点において、基部50に配置された複数の部材の上下方向の長さを、初期長さとする。また、該複数の部材における上下方向の長さの目標値を、目標長さとする。なお、初期長さは目標長さよりも大きい。各規制部54は、突出長が目標長さとなるように調整される。
【0038】
これにより、ロウ付けの開始時点において、複数の部材の上に配置された押圧部52から下方に延びる各規制部54は、下端面55が基部50の上面51から離間する。そして、ロウ付けのための加熱の間、押圧部52は自重により複数の部材を下方に押圧する。これにより、複数の部材が押し潰され、押圧部52は下方に変位する。その後、各規制部54の下端面55が基部50の上面51に当接する位置(以後、規制位置)まで押圧部52が下方に変位すると、複数の規制部54により押圧部52の下方への変位が規制され、押圧部52がこれ以上下方に変位しなくなる。この時、押圧部52の下面53と基部50の上面51とは略平行となり、下面53と上面51との間隔は、突出長と略一致する。
【0039】
[4.複数の部材のロウ付け]
熱交換器1の製造工程では、複数の第1及び第2部材2、3をロウ付けにより接合することで、積層された複数のプレート10が形成される。以下では、複数の第1及び第2部材2、3を、ロウ付けにより接合するロウ付け工程について説明する。ロウ付け工程は、配置ステップと加熱ステップとを有する。
【0040】
[5.配置ステップ]
配置ステップでは、ペースト状のロウ材4が配置された状態で、複数の第1及び第2部材2、3が上下方向に重ねて配置される(図2、3参照)。
【0041】
具体的には、複数の第1及び第2部材2、3が、上下方向に延びる軸線16に沿って交互に積層される。この時、第1側の端に位置する第1部材2は、最上部に位置し、第2側の端に位置する第2部材3は、最下部に位置する。
【0042】
また、これらの第1及び第2部材2、3の各々においては、第1主面部20と第2主面部30とが軸線16に沿って対面し、第1及び第2主面部20、30の間に流路11が形成される。また、各第1パイプ穴21と各第2パイプ穴31とは、軸線16に沿って略同心状に並ぶ。
【0043】
また、第2内周壁33は第1内周壁23よりも流路11側に位置し、第2内周壁33の外側の面は、第1内周壁23の内側の面に当接する。そして、第2内周壁33の第1側の端部と、第1主面部20における第1内周壁23との内側の境界部との間には、ロウ材4が配置される。つまり、押圧部52が変位する方向に沿って並ぶ部分の間に、ロウ材4が配置される。なお、ロウ材4は、第1及び第2部材2、3を配置する前に、該端部と該境界部との双方又は一方に塗布される。
【0044】
また、第2外周壁34は第1外周壁24よりも流路11側に位置し、第2外周壁34の外側の面は、第1外周壁24の内側の面に当接する。そして、第2外周壁34の第1側の端部と、第1主面部20における第1外周壁24との内側の境界部との間には、ロウ材4が配置される。なお、ロウ材4は、第1及び第2部材2、3を配置する前に、該端部と該境界部との双方又は一方に塗布される。
【0045】
また、入口パイプ部12を形成する第1及び第2接続部22、32においては、該第1接続部22が該第2接続部32の内側に位置し、該第1接続部22の外側の面は、該第2接続部32の内側の面に当接する。また、出口パイプ部13を形成する第1及び第2接続部22、32についても、同様に配置される。そして、第2接続部32の第2側の端部と、第1主面部20における第1接続部22との外側の境界部との間には、ロウ材4が配置される。なお、ロウ材4は、第1及び第2部材2、3を配置する前に、該端部と該境界部との双方又は一方に塗布される。
【0046】
なお、ロウ材4が配置される位置は、上述したものに限らず、適宜定められる。具体的には、例えば、ロウ材4は、第2内周壁33の外側の面と、第1内周壁23の内側の面との間に配置されても良いし、第2外周壁34の外側の面と、第1外周壁24の内側の面との間に配置されても良い。また、例えば、ロウ材4は、第1接続部22の外側の面と、第2接続部32の内側の面との間に配置されても良い。
【0047】
そして、積層された複数の第1及び第2部材2、3は、ロウ付け用治具5の基部50の上面51に配置されると共に、これらの第1及び第2部材2、3上に、押圧部52が配置される(図4参照)。
【0048】
具体的には、積層された複数の第1及び第2部材2、3のうち、第2側の端に位置するプレート10に含まれる第2部材3は、基部50の上面51に当接する。
また、押圧部52は、積層された複数の第1及び第2部材2、3のうち、第1側の端に位置するプレート10に含まれる第1部材2の上に配置され、該第1部材2は、押圧部52の下面53に当接する。この時、該第1部材2の各第1接続部22は、押圧部52の下面53に形成された陥没部(図示無し)に収容され、押圧部52の下面53は、該第1部材2の第1主面部20に当接する。
【0049】
また、下面53から下方に突出する各規制部54は、積層された複数の第1及び第2部材2、3の両側に位置する。また、各規制部54の下端面55は、基部50の上面51から離間する。
【0050】
そして、ペースト状のロウ材4を乾燥させた後、上述した態様で配置されたロウ付け用治具5と複数の第1及び第2部材2、3とを炉6内に移動させ、加熱ステップに移行する。なお、炉6内にて、複数の第1及び第2部材2、3とロウ付け用治具5とが上述した態様で配置されても良い。そして、炉6内でロウ材4を乾燥させた後、加熱ステップに移行しても良い。
【0051】
[6.加熱ステップ]
加熱ステップでは、ロウ付けのため、配置ステップにて炉6内に配置されたロウ付け用治具5と複数の第1及び第2部材2、3を加熱する。これにより、複数の第1及び第2部材2、3の各々におけるロウ材4が配置された部分同士が接合される(図4参照)。
【0052】
ロウ付けの開始時点では、ロウ付け用治具5の各規制部54の下端面55は、基部50の上面51から離間している。そして、ロウ付けの間、ロウ付け用治具5の押圧部52は、自重により、積層された複数の第1及び第2部材2、3を下方へと押圧する。これにより、これらの第1及び第2部材2、3が押し潰され、押圧部52は下方に変位する。その後、各規制部54の下端面55が基部50の上面51に当接する規制位置まで押圧部52が下方に変位すると、押圧部52がこれ以上下方に変位しなくなり、押圧部52による押圧が停止する(図5参照)。
【0053】
つまり、押圧部52は、当該押圧部52が規制位置に到達するまで、複数の第1及び第2部材2、3を押圧する。そして、押圧部52が規制位置に到達すると、上述したように、押圧部52の下面53と基部50の上面51とは略平行となり、下面53と上面51との間隔が突出長(換言すれば、熱交換器1の目標長さ)と略一致する。このため、複数の第1及び第2部材2、3は、ロウ付けの間、軸線16に沿った長さが突出長と略一致するように押圧される。
【0054】
[7.効果]
(1)上記実施形態によれば、ロウ付け用治具5の押圧部52により、複数の第1及び第2部材2、3の上下方向の長さが突出長になるように押圧加工しながら、これらの部材のロウ付けを行うことができる。このため、複数の第1及び第2部材2、3の寸法の精度が低下したり、複数の第1及び第2部材2、3が損傷したりするのを抑制できる。したがって、より好適に押圧加工を行いながらロウ付けを行うことができる。
【0055】
(2)また、押圧部52は、下方に変位可能な錘として構成されている。このため、ロウ付けの際にロウ付け用治具5が高温に晒された場合であっても、温度の影響を抑えつつ、好適に押圧部52により押圧を行うことができる。
【0056】
(3)また、各プレート10を構成する第1及び第2部材2、3は、押圧加工により変形し易い板状の第1及び第2主面部20、30を有する。これに対し、ロウ付け工程では、押圧部52が規制位置まで到達するまでしか押圧が行われない。このため、第1及び第2主面部20、30における過度な変形を抑制できる。
【0057】
(4)また、第1部材2における第1接続部22、第1内周壁23、及び第1外周壁24と、第2部材3における第2接続部32、第2内周壁33、及び第2外周壁34とは、上方又は下方に突出する。そして、第2接続部32の下側の端部と、第2内周壁33及び第2外周壁34の上側の端部とには、ロウ材4が配置される。
【0058】
これに対し、ロウ付け工程では、押圧部52が規制位置まで到達するまでしか押圧が行われない。このため、第1、第2接続部22、32、第1、第2内周壁23、33、及び、第1、第2外周壁24、34又はその周辺に過度に荷重がかかるのを抑制でき、その結果、これらの部分が過度に変形するのを抑制できる。また、ロウ材4が配置された第2接続部32の下側の端部と、第2内周壁33及び第2外周壁34の上側の端部とに過度に荷重がかかるのを抑制でき、これにより、これらの部分の損傷又は接合不良を抑制できる。
【0059】
(5)また、第1及び第2部材2、3の間には、流路11が形成されている。これに対し、ロウ付け工程では、押圧部52が規制位置まで到達するまでしか押圧が行われない。このため、第1及び第2部材2、3の流路11の周辺の部分における過度な変形を抑制できる。
【0060】
[8.他の実施形態]
(1)上記実施形態のロウ付け用治具5は、各規制部54は押圧部52の下面53から突出しており、各規制部54が下方から押圧部52を支持することで、規制位置に到達した押圧部52の下方への変位を停止させている。しかしながら、規制位置に到達した押圧部52の変位を停止させる構成は、これに限定されない。具体的には、例えば、上下方向に延びるガイド部を設け、押圧部52は、ガイドに沿って下方に変位可能に構成しても良い。そして、ガイドに、規制位置に達した押圧部52の下方への変位を停止させる規制機構を設けても良い。このような場合であっても、同様の効果が得られる。
【0061】
(2)また、押圧部52は、下方に変位することでロウ付けが行われる複数の部材を押圧する。つまり、押圧部52の押圧方向は、下方となっている。しかしながら、押圧部52の押圧方向は、下方に限らず、適宜定められる。具体的には、例えば、ガイド等により押圧部52を上下方向に傾斜する方向に変位可能に構成し、該方向を押圧部52の押圧方向としても良い。このような場合であっても、同様の効果が得られる。
【0062】
(3)また、押圧部52は、錘として構成されており、自重により下方に変位してロウ付けが行われる複数の部材を押圧する。しかしながら、例えば、バネ等の弾性部材、又はアクチュエータ等を用いて押圧部52を変位させることで、複数の部材を押圧しても良い。このような場合であっても、同様の効果が得られる。
【0063】
(4)また、上記実施形態のロウ付け工程では、熱交換器1を構成する第1及び第2部材2、3に対して、ロウ付け用治具5を用いてロウ付けが行われる。しかしながら、該ロウ付け工程では、熱交換器1以外の接合体に含まれる複数の部材に対し、ロウ付け用治具5を用いてロウ付けが行われても良い。具体的には、接合体とは、例えば、車両に搭載される装置であっても良い。また、接合体とは、例えば、流体を収容するための空間、又は、流体の流路となる空間が内部に形成される装置であっても良い。また、これらの空間は、ロウ付けを行うために重ねて配置された複数の部材の間に形成されるものであっても良い。このような場合であっても、同様の効果が得られる。
【0064】
(5)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…熱交換器、11…流路、16…軸線、2…第1部材、20…第1主面部、22…第1接続部、23…第1内周壁、24…第1外周壁、3…第2部材、30…第2主面部、32…第2接続部、33…第2内周壁、34…第2外周壁、4…ロウ材、5…ロウ付け用治具、52…押圧部、53…下面、54…規制部、55…下端面、6…炉。
図1
図2
図3
図4
図5