(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 3/58 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
E06B3/58 B
(21)【出願番号】P 2020066213
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520115761
【氏名又は名称】威可楷愛普(中国)投資有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柚木 一弥
(72)【発明者】
【氏名】竜 泰之
(72)【発明者】
【氏名】久保 広陽
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-173361(JP,A)
【文献】実開昭63-10193(JP,U)
【文献】実開昭58-97287(JP,U)
【文献】米国特許第6094874(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面材の端面に対向して設けられる建材と、前記面材の表面に対向する状態で前記建材に装着される押縁とを備え、前記押縁を介して前記面材が前記建材に支持される建具であって、
前記押縁は、前記面材の表面に対向するように配設される支持部と、前記支持部から延在した内方係合片及び外方係合片とを有し、これら内方係合片及び外方係合片をそれぞれ前記建材の係合部に係合させることによって前記建材に装着されるものであり、
前記内方係合片には、
前記支持部の外周側に位置する縁部から前記面材に近接する方向に向けて
見込み方向に延在する見込み延在部と、前記見込み延在部から前記面材に近接するに従って漸次外周側に傾斜する傾斜部分
とを有した中間ヒレ部と、
前記中間ヒレ部の延在縁部から前記面材に近接する方向に向けて見込み方向に延在し、その延在縁部が前記建材と前記面材の端面との間において前記建材の係合部に係合する係合ヒレ部と
が設けられ
、
前記外方係合片は、前記見込み延在部から外周側に向けて延在し、その延在縁部を介して前記建材に係合されることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記押縁は、前記支持部から外周側に向けて延在し、前記建材の見付け面を覆うカバー部を有していることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関するもので、詳細には押縁を適用して枠や框等の建材に面材を支持するための構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建具には、押縁を介して枠や框等の建材にガラス等の面材を支持させるようにしたものがある。押縁には、面材に対向するように設けられる支持部と、見込み方向の互いに異なる箇所で建材に係合する2つの係合片とが設けられている。見込み方向とは、建具の奥行きい沿った方向である。この種の建具によれば、2つの係合片を適宜撓めることで2つの係合片が建材の係合部に係合され、押縁が建材に装着された状態を維持するようになる。従って、ネジ等の固定部材が必要になることがなく、面材を支持する際の作業を容易化することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の建具では、建材に押縁を装着するための係合部と面材とが見込み方向に並設される構成となるため、この見込み方向に沿った寸法の小型化を図る場合に制限が加えられる懸念がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、面材の支持作業を容易化し、かつ見込み方向に沿った寸法の小型化を図ることのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、面材の端面に対向して設けられる建材と、前記面材の表面に対向する状態で前記建材に装着される押縁とを備え、前記押縁を介して前記面材が前記建材に支持される建具であって、前記押縁は、前記面材の表面に対向するように配設される支持部と、前記支持部から延在した内方係合片及び外方係合片とを有し、これら内方係合片及び外方係合片をそれぞれ前記建材の係合部に係合させることによって前記建材に装着されるものであり、前記内方係合片には、前記支持部の外周側に位置する縁部から前記面材に近接する方向に向けて見込み方向に延在する見込み延在部と、前記見込み延在部から前記面材に近接するに従って漸次外周側に傾斜する傾斜部分とを有した中間ヒレ部と、前記中間ヒレ部の延在縁部から前記面材に近接する方向に向けて見込み方向に延在し、その延在縁部が前記建材と前記面材の端面との間において前記建材の係合部に係合する係合ヒレ部とが設けられ、前記外方係合片は、前記見込み延在部から外周側に向けて延在し、その延在縁部を介して前記建材に係合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、面材の端面と建材との間において内方係合片を建材に係合させるようにしているため、見込み方向に沿った寸法の小型化を図ることが可能となる。しかも、内方係合片には、傾斜部分を有した中間ヒレ部が設けてあるため、係合ヒレ部を面材の端面と建材との間に挿入する際に面材の表面と干渉する事態を防止することができ、面材の支持作業を煩雑化するおそれがない。さらに、内方係合片において建材に係合する係合ヒレ部は、見込み方向に延在するものであるため、建具の見付け方向に沿った寸法が大きく増大する事態を招来する懸念もない。これにより、例えば同じ外形寸法であれば、面材の開口面積を増やすことができる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態である建具を室外側から見た図である。
【
図7】
図1に示した建具の要部を示すもので、(a)は拡大縦断面図、(b)は押縁を装着する状態の拡大縦断面図である。
【
図8】
図1に示した建具の要部を示すもので、(a)は拡大横断面図、(b)は押縁を装着する状態の拡大横断面図である。
【
図9】変形例である建具の要部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1~
図6は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、3つの独立した枠体10A,10B,10Cを左右に並設し、連結材1を介して相互に連結することにより構成した連窓と称されるもので、全体として正方形に近い矩形状を成している。室外側から見て左側に配置された枠体10Aは、上下に沿って一連となる左右の縦枠11A,12Aと、縦枠11A,12Aの相互間に配設した上下の横枠13A,14Aとを四周枠組みすることによって矩形状に構成し、さらに縦枠11A,12Aの相互間に上下2つの無目15A,16Aを配設したもので、上段、中段、下段にそれぞれ矩形状を成す面材17を支持している。同様に、中央に配置された枠体10Bは、上下に沿って一連となる左右の縦枠11B,12Bと、縦枠11B,12Bの相互間に配設した上下の横枠13B,14Bとを四周枠組みすることによって矩形状に構成し、さらに縦枠11B,12Bの相互間に上下2つの無目15B,16Bを配設したもので、上段、中段、下段にそれぞれ矩形状を成す面材17を支持している。右側に配置された枠体10Cは、上下に沿って一連となる左右の縦枠11C,12Cと、縦枠11C,12Cの相互間に配設した上下の横枠13C,14Cとを四周枠組みすることによって矩形状に構成し、さらに縦枠11C,12Cの相互間に上下2つの無目15C,16Cを配設したもので、上段、中段、下段にそれぞれ矩形状を成す面材17を支持している。図からも明らかなように、縦枠11A,12A,11B,12B,11C,12Cの長手に沿った寸法及び横枠13A,14A,13B,14B,13C,14Cの長手に沿った寸法は、それぞれ3つの枠体10A,10B,10Cでほぼ共通であり、無目15A,15B,15C及び無目16A,16B,16Cを設ける上下方向の位置についても3つの枠体10A,10B,10Cでほぼ共通である。
【0010】
室外側から見て左側に配置された枠体10A及び中央に配置された枠体10Bには、上段、中段、下段のそれぞれに面材17によってFIX窓が構成してある。室外側から見て右側に配置された枠体10Cには、上段及び下段のそれぞれに面材17によってFIX窓が構成してある。右側に配置された枠体10Cの中段には、面材17の四周が左右の縦框21,22及び上下の横框23,24によって支持された障子20が配設してある。この障子20は、図には明示していないが、枠体10Cとの間に設けた開閉機構により、室外側に突出するように開放される縦すべり出し窓を構成するものである。障子20が配設される左右の縦枠11C,12C及び上下の無目15C,16Cには、それぞれ室内側に位置する縁部から内周側に向けて突出するように戸当たり部18が設けてある。これらの戸当たり部18は、内周側の縁部が障子20を構成する框21,22,23,24の内周側縁部とほぼ同一の位置となるように構成してあり、室内側から見た場合に障子20の框21,22,23,24を覆い隠すことが可能である。図からも明らかなように、これら8つのFIX窓に用いられる面材17及び1つのすべり出し窓に用いられる面材17としては、外形寸法及び見込み方向に沿った寸法が互いにほぼ同一となるように構成してあり、それぞれが見込み方向において枠体10A,10B,10Cの中間よりも室外側に片寄った位置に配設してある。図示の例では、すべての面材17として複層ガラスを適用しているが、複層ガラス以外の面材を適用しても構わない。なお、図中の符号19は、枠体10A,10B,10C及び無目15A,16A,15B,16B,15C,16Cや障子20に対して面材17の位置決めを行うセッティングブロックであり、面材17の端面17aに対して適宜箇所で部分的に当接するように配設してある。
【0011】
ここで、見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。また、本実施の形態では見付け方向という用語も用いる。見付け方向とは、横枠13Aや無目15A等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠11A等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0012】
本実施の形態では、上述した横枠13A,14A,13B,14B,13C,14C、縦枠11A,12A,11B,12B,11C,12C、無目15A,16A,15B,16B,15C,16C、横框23,24、縦框21,22(以下、これらを総称する場合、単に建材Mという)として、いずれも室外側に配置される室外要素M1と、室内側に配置される室内要素M2と、これら室外要素M1及び室内要素M2の間に配置される連結要素M3とを備えて構成したものを適用している。室外要素M1及び室内要素M2は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、それぞれが長手に沿った全長にわたってほぼ一様の断面形状を有するように構成してある。それぞれの室外要素M1及び室内要素M2には、長手の全長にわたる部分に中空部M1a,M2aが設けてある。中空部M1a,M2aは、周囲が閉じた空間を構成するもので、建材Mの両端面にのみ開口している。連結要素M3は、樹脂等の断熱材によって成形したもので、個別に成形した室外要素M1と室内要素M2との間を連結することによってそれぞれの建材Mを構成している。連結要素M3は、見込み方向に沿った寸法がすべての建材Mで互いにほぼ同一となるように構成してある。本実施の形態では、面材17の端面17aに対して建材Mの連結要素M3が対向して配置されるように、室内要素M2に比べて室外要素M1の見込み方向に沿った寸法が短く構成してある。
【0013】
この実施の形態のように、室外要素M1、室内要素M2及び連結要素M3を備えてすべての建材Mを構成すれば、連結要素M3として見込み方向の寸法が異なるものに変更することで、室外要素M1及び室内要素M2を変更することなく、互いに見込み方向の寸法が異なる複数種類の建具を構成することが可能である。また、図からも明らかなように、横枠13A,14A,13B,14B,13C,14C、縦枠11A,12A,11B,12B,11C,12C、無目15A,16A,15B,16B,15C,16Cについては、室外要素M1の見込み方向に沿った寸法及び室内要素M2の見込み方向に沿った寸法についても互いにほぼ同一となるように構成してある。従って、横枠13A,14A,13B,14B,13C,14C、縦枠11A,12A,11B,12B,11C,12C、無目15A,16A,15B,16B,15C,16Cにおいては、連結要素M3の位置が見込み方向において互いにほぼ同一となっている。さらに、障子20を構成する横框23,24及び縦框21,22については、室外要素M1の見込み方向に沿った寸法が横枠13A,14A,13B,14B,13C,14Cや縦枠11A,12A,11B,12B,11C,12Cの室外要素M1とほぼ同一となるように構成してある。従って、障子20についても閉じた状態においては、連結要素M3の位置が横枠13A,14A,13B,14B,13C,14Cや縦枠11A,12A,11B,12B,11C,12Cとほぼ同一となる。これらの結果、外気温度の室内側への影響範囲が、建具全体でほぼ均一となり、断熱性の点で有利となる。
【0014】
室外側から見て左側に配置された枠体10Aにおいては、上段、中段、下段のFIX窓が、互いに同一の構成を有した第1の支持構造X1で面材17を支持している。中央に配置された枠体10Bにおいては、上段及び下段のFIX窓が互いに同一の構成を有し、かつ左側に配置された枠体10Aとは異なる第2の支持構造X2で面材17を支持し、中段のFIX窓が第1の支持構造X1及び第2の支持構造X2とは異なる第3の支持構造X3で面材17を支持している。右側に配置された枠体10Cにおいては、上段及び下段のFIX窓が互いに同一の構成を有し、かつ第1の支持構造X1~第3の支持構造X3とは異なる第4の支持構造X4で面材17を支持している。障子20においては、第1の支持構造X1とほぼ同じ支持構造で横框23,24及び縦框21,22に面材17を支持している。
【0015】
上述した第1の支持構造X1は、
図2、
図5、
図6に示すように、面材17の四周で共通の構成を有している。この第1の支持構造X1では、建材Mの室内要素M2に固定当接部M2bが一体に設けてある一方、建材Mの室外要素M1に係合部M1bを介して押縁30が装着してあり、これら固定当接部M2bと押縁30との間にそれぞれ面材17の縁部が支持してある。固定当接部M2bは、室内要素M2から内周側に向けて突出したもので、内周側縁部に設けたシール材Sを介して面材17の室内に臨む内表面17bに当接している。
より詳細に説明すると、縦枠11A,12Aについては、連結要素M3が連結された基板部11a,12aと、基板部11a,12aの内周側縁部から室内側に向けて見込み方向に延在した連結板部11b,12bと、連結板部11b,12bの内周側となる見込み面から内周側に突出し、連結板部11b,12bとの間に矩形の中空部M2aを構成する固定当接部M2bとによって室内要素M2が構成してある。
横枠13A,14A、無目15A,16Aにおいては、室内側に位置する部分が内周側に向けて突出するように中空の室内要素M2が構成してあり、内周側に突出した室内側に位置する部分が固定当接部M2bを構成している。この固定当接部M2bには、中空部M2aの突出縁部から室外側に向けてシール装着ヒレ部M2cが突出してあり、シール装着ヒレ部M2cの突出縁部に面材17との間に介在するシール材Sが装着してある。
障子20においては、連結要素M3が連結された基板部20aと、基板部20aから内周側に向けて突出する板状の支持板部20bと、支持板部20bの突出縁部から室内側に向けて突出する矩形状の中空部M2aとを有して室内要素M2が構成してあり、支持板部20b及び中空部M2aが固定当接部M2bを構成している。
押縁30は、室外要素M1から内周側に向けて突出するように装着したもので、内周側縁部に充填したシール材Sを介して面材17の室外に臨む外表面17cに当接している。図からも明らかなように、押縁30と固定当接部M2bとは突出寸法が互いにほぼ同じであり、室内側から見た場合には固定当接部M2bによって押縁30が覆い隠され、押縁30を視認することが困難となる。
この第1の支持構造X1では、例えば四周枠組みした建材Mに対して内表面17bがシール材Sを介して固定当接部M2bに当接するように室外側から面材17を配置し、この状態から係合部M1bを介して四周の室外要素M1に押縁30を装着することによって固定当接部M2bと押縁30との間に面材17が支持される。
【0016】
第2の支持構造X2は、
図3、
図5に示すように、面材17の上下に沿う左右の縁部と、水平に沿う上下の縁部とで構成が異なっている。この第2の支持構造X2では、縦枠11B,12Bの室内要素M2に内周側に突出するように別体の固定当接部M2dがネジで固定してある一方、縦枠11B,12Bの室外要素M1に押縁30が装着してあり、これら固定当接部M2bと押縁30との間に面材17の上下に沿う左右の縁部が支持してある。
より詳細に説明すると、縦枠11B,12Bの室内要素M2は、内周側に位置する見込み面に内係合部M2eを有した異形の中空状を成すものである。この室内要素M2には、内係合部M2eに挿入された状態で固定当接部M2dがネジで固定してある。押縁30及び室外要素M1の係合部M1bは、第1の支持構造X1と同様の構成である。また、別体の固定当接部M2dと押縁30との突出寸法が互いにほぼ同じなのは第1の支持構造X1と同様である。面材17の水平に沿う上下の縁部は、第1の支持構造X1と同様の構成によって支持してある。
この第2の支持構造X2では、例えば四周枠組みした建材Mに対して別体の固定当接部M2dをネジで固定した後、内表面17bがそれぞれシール材Sを介して固定当接部M2b及び別体の固定当接部M2dに当接するように室外側から面材17を配置し、この状態から係合部M1bを介して四周の室外要素M1に押縁30を装着することによって固定当接部M2b,M2dと押縁30との間に面材17が支持される。
【0017】
第3の支持構造X3は、
図3、
図6に示すように、面材17の四周で共通の構成を有している。この第3の支持構造X3では、建材Mの室外要素M1に別体の固定当接部40がネジで固定してある一方、建材Mの室内要素M2に内係合部M2eを介して内押縁50が装着してあり、これら固定当接部40と内押縁50との間にそれぞれ面材17の縁部が支持してある。
より詳細に説明すると、この第3の支持構造X3では、縦枠11B,12Bの室内要素M2に設けた内係合部M2eと同一構成の内係合部M2eが無目15B,16Bの互いに対向する見込み面に設けてあり、これらの内係合部M2eに共通の断面形状を有した内押縁50がそれぞれ装着してある。室外要素M1の固定当接部40は、見込み面の室外側となる縁部から内周側に向けて延在する平板状の当接板部41と、当接板部41の外周側となる部分から室内側に向けて延在して建材Mの室外要素M1において内周側となる見込み面に当接する固定板部42とを有したもので、固定板部42を介して室外要素M1にネジを螺合することによって室外要素M1に固定してある。当接板部41の突出縁部には、室内に臨む部分にシール材Sが設けてある。固定当接部40と内押縁50との突出寸法が互いにほぼ同じなのは第1の支持構造X1と同様である。
この第3の支持構造X3では、例えば四周枠組みした建材Mに対して別体の固定当接部40をネジで固定した後、外表面17cがシール材Sを介して固定当接部40に当接するように室内側から面材17を配置し、この状態から内係合部M2eに内押縁50を装着することによって固定当接部40と内押縁50との間に面材17が支持される。
【0018】
第4の支持構造X4は、
図4、
図5に示すように、面材17の上下に沿う左右の縁部と、水平に沿う上下の縁部とで構成が異なっている。この第4の支持構造X4では、縦枠11C,12Cの室内要素M2に設けたすべり出し窓用の戸当たり部18に別体の固定当接部M2fが取り付けてあるとともに、縦枠11C,12Cの室外要素M1に別体の固定当接部M2gがネジで固定してあり、これらの固定当接部M2f,M2gの間に面材17の上下方向に沿った縁部が支持してある。固定当接部M2f,M2gの突出寸法が互いにほぼ同じなのは第1の支持構造X1と同様である。面材17の水平に沿う上下の縁部は、第1の支持構造X1と同様の構成によって支持してある。
この第4の支持構造X4では、四周枠組みした建材Mに対して縦枠11C,12Cの室外要素M1に固定当接部M2gを固定する以前の状態で内表面17bがシール材Sを介して室内要素M2の固定当接部M2fに当接するように室外側から面材17を配置し、この状態から室外要素M1の係合部M1bに押縁30を装着するとともに、縦枠11C,12Cの室外要素M1に固定当接部M2gをネジで固定することで固定当接部M2f,M2gの相互間及び固定当接部M2fと押縁30との間に面材17が支持される。
【0019】
以下においては、上述の第1の支持構造X1、第2の支持構造X2及び第4の支持構造X4で適用する押縁30及び押縁30が装着される係合部M1bの構成についてさらに詳述し、併せて本願発明の特徴部分について説明する。
【0020】
押縁30は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材から成るものである。本実施の形態では、横枠13A,14A,13B,14B,13C,14C、無目15A,16A,15B,16B,15C,16C等の水平方向の建材Mに対して互いに同一の構成を有した押縁30(以下、区別する場合に横押縁30Aと称する)を適用し、縦枠11A,12A,11B,12Bに対しては互いに同一の構成で、水平方向の建材Mに適用するものとは構成の異なる押縁30(以下、区別する場合に縦押縁30Bと称する)を適用している。障子20については、縦框21,22及び横框23,24の双方に横押縁30Aを適用している。なお、横押縁30Aについては枠体10Aの下方に配置される横枠14Aを示す
図7を適用して説明を行い、縦押縁30Bについては枠体10Aの左側に配置される縦枠11Aを示す
図8を適用して説明を行う。また、横押縁30A及び縦押縁30Bの説明においては、建材Mに装着された状態でそれぞれの方向を特定することとする。
【0021】
図7に示すように、横押縁30Aは、支持部31、内方係合片32、外方係合片33及びカバー部34を一体に成形することによって構成してある。支持部31は、室外要素M1から見付け方向に沿って内周側に延在することにより、面材17の外表面17cに対向するように配置されるものである。支持部31の延在縁部において面材17の外表面17cに対向する部分には、面材17の外表面17cとの間に充填されるシール材Sを受けるためのシール受け溝31aが設けてある。内方係合片32及び外方係合片33は、室外要素M1に設けた係合部M1bに係合することにより、横押縁30Aを室外要素M1に装着した状態に維持するものである。図示の例では、中間ヒレ部32a及び係合ヒレ部32bを有した内方係合片32が支持部31の外周側となる縁部から室内側に向けて延在し、中間ヒレ部32aから外方係合片33が外周側に向けて延在するように構成してある。より詳細に説明すると、内方係合片32の中間ヒレ部32aは、支持部31の外周側となる縁部において室内に臨む面から見込み方向に延在する見込み延在部32a1と、見込み延在部32a1の延在縁部から室内に向かうに従って漸次外周側に傾斜する傾斜部分32a2とを有した平板状を成すものである。係合ヒレ部32bは、中間ヒレ部32aの傾斜部分32a2から室内側に向けて見込み方向に延在した平板状を成すものである。外方係合片33は、見込み延在部32a1の外周側となる部分から外周側に向けて延在したもので、延在縁部において室外に臨む部分に係合爪33aを有している。カバー部34は、支持部31を延長するように外周側に向けて延在したもので、室外に臨む面が支持部31と同一の平面上に位置するように設けてある。このカバー部34は、支持部31とほぼ同等の寸法に形成してある。
図7(a)に示すように、上述した内方係合片32は、カバー部34が建材Mの室外要素M1に当接する以前の状態において、係合ヒレ部32bの延在縁部が面材17の外表面17cを超えて室内側に到達し、面材17の端面17aに対向して配置することができるようにそれぞれの寸法が設定してある。
【0022】
図8に示すように、縦押縁30Bは、横押縁30Aと同様の支持部31、内方係合片32、外方係合片33を有する一方、カバー部34に換えて補助カバー部35を有したものである。補助カバー部35は、支持部31を延長するように外周側に向けて延在し、室外に臨む表面が支持部31と同一の平面上に位置するように設けたもので、カバー部34よりも延在長さが短く構成してある。本実施の形態では、補助カバー部35の延在縁部と係合ヒレ部32bの外周側となる面とがほぼ一致するように、補助カバー部35の寸法が設定してある。この縦押縁30Bについては、
図8(b)に示すように、支持部31の室外に臨む表面を、室外要素M1において室外に臨む見付け面Maと同一の平面上に配置した場合に、係合ヒレ部32bの延在縁部が面材17の外表面17cを超えて室内側に到達し、面材17の端面17aに対向して配置されるようにそれぞれの寸法が設定してある。
【0023】
上述の横押縁30A及び縦押縁30Bが装着される室外要素M1の係合部M1bは、内周側の見込み面において室外側の縁部及び室内側の縁部からそれぞれ内周側に向けて突出した後、フック部Mbが互いに対向する方向に向けて屈曲したものである。図からも明らかなように、室外側の係合部M1bは、室内側の係合部M1bよりもわずかに内周側に突出し、突出縁部に傾斜ガイド面Mcを有している。傾斜ガイド面Mcは、室内に向けて漸次外周側となるように傾斜したものである。室外側の係合部M1bは、室外要素M1においてもっとも室外側となる見付け面Maよりもカバー部34や補助カバー部35の板厚分だけ室内側に退行するように設けてある。室内側の係合部M1bは、内方係合片32の係合ヒレ部32bに係合可能となるように、面材17の端面17aに対向する位置に設けてある。
【0024】
この係合部M1bに押縁30を装着するには、
図7(b)及び
図8(b)に示すように、まず、支持部31の内周側縁部が室内側に近接するように姿勢を傾斜させ、この状態から内方係合片32における係合ヒレ部32bの延在縁部を建材Mと面材17の端面17aとの間に挿入し、室内側の係合部M1bにおいてフック部Mbに係合させる。この状態においても、内方係合片32の中間ヒレ部32aに傾斜部分32a2が設けてあるとともに、フック部Mbに係合する係合ヒレ部32bが平板状に形成してあるため、建材Mに配置された面材17に干渉するおそれはなく、上述の作業を容易に実施可能である。また、
図7(b)及び
図8(b)に示す状態においては、外方係合片33が室外側の係合部M1bに設けたフック部Mbの傾斜ガイド面Mcに当接した状態となる。従って、この状態から係合ヒレ部32bを支点として支持部31の延在縁部が室外側となるように押縁30を回転させれば、
図7(a)及び
図8(a)に示すように、傾斜ガイド面Mcによって外方係合片33が適宜弾性変形することで室外側のフック部Mbに係合し、押縁30が室外要素M1に装着された状態に維持されることになる。これにより、建材Mに設けた固定当接部M2bと、建材Mに装着した押縁30との間に面材17を支持することができる。
【0025】
ここで、上述したように、この建具では、枠体10A,10B,10Cや障子20の見込み方向において面材17が室外側に片寄って配置してあるため、面材17から建材Mの室外に臨む見付け面Maまでの寸法が室内に臨む見付け面までの寸法に比べて短く構成されることになる。しかしながら、上述の建具では、内方係合片32の係合ヒレ部32bが面材17の端面17aに対向する位置まで延在するように設けた押縁30を適用し、かつこの押縁30が係合する係合部M1bにおいて係合ヒレ部32bが係合する室内側のフック部Mbが面材17の端面17aに対向する位置に設けてある。従って、面材17の端面17aと建材Mとの間において内方係合片32が係合部M1bに係合することになるため、見込み方向に沿った寸法の小型化を図ることが可能となる。これにより、見込み方向の寸法が小さく構成された枠体10A,10B,10Cの室外側に押縁30を配置して面材17を支持することが可能となる。しかも、建材Mの係合部M1bに係合する係合ヒレ部32bは、見込み方向に延在した平板状を成すものであるため、建具の見付け方向に沿った寸法が大きく増大する事態を招来する懸念もない。これにより、例えば同じ外形寸法の建具であれば、面材17の開口面積を増やすことができる等の利点がある。さらに、横押縁30Aにおいては、カバー部34が水平方向の建材Mの室外に臨む部分を覆った状態となる。これにより、室外側においては、建材Mと押縁30との境界線が外部に露出することがなくなり、外観品質を向上させることも可能となる。
【0026】
なお、上述した実施の形態では、3つの枠体10A,10B,10Cを備えた連窓を例示しているが、本発明はこれに限定されない。また、建材Mとして室外要素M1と室内要素M2との間を断熱材から成る連結要素M3によって連結したものを例示しているが、押縁30を介して面材17を建材Mに支持させるものであれば、室外側から室内側までが一体となった建材M等、その他のものにも適用することが可能である。この場合、押縁30としては、面材17の室外側となる外表面17cに対向するものである必要はなく、面材17の室内側となる内表面17bに対向するように配置されるものであっても良い。また、面材17が室外側に片寄って配設されている必要もない。さらに、建材Mや押縁30がアルミニウム合金等の金属によって成形されている必要はなく、例えば樹脂によって成形されたものであっても構わない。
【0027】
また、上述した実施の形態では、カバー部34もしくは補助カバー部35を有した押縁30を例示しているが、
図9の変形例に示すように、カバー部34を省略して押縁30′を構成することも可能である。なお、変形例においては、実施の形態と同様の構成に同一の符号が付してある。
【0028】
以上のように本発明に係る建具は、面材の端面に対向して設けられる建材と、前記面材の表面に対向する状態で前記建材に装着される押縁とを備え、前記押縁を介して前記面材が前記建材に支持される建具であって、前記押縁は、前記面材の表面に対向するように配設される支持部と、前記支持部から延在した内方係合片及び外方係合片とを有し、これら内方係合片及び外方係合片をそれぞれ前記建材の係合部に係合させることによって前記建材に装着されるものであり、前記内方係合片には、前記支持部の外周側に位置する縁部から前記面材に近接する方向に向けて延在し、前記面材に近接するに従って漸次外周側に傾斜する傾斜部分を有した中間ヒレ部と、前記中間ヒレ部の延在縁部から前記面材に近接する方向に向けて見込み方向に延在し、その延在縁部が前記建材と前記面材の端面との間において前記建材の係合部に係合する係合ヒレ部とが設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、面材の端面と建材との間において内方係合片を建材に係合させるようにしているため、見込み方向に沿った寸法の小型化を図ることが可能となる。しかも、内方係合片には、傾斜部分を有した中間ヒレ部が設けてあるため、係合ヒレ部を面材の端面と建材との間に挿入する際に面材の表面と干渉する事態を防止することができ、面材の支持作業を煩雑化するおそれがない。さらに、内方係合片において建材に係合する係合ヒレ部は、中間ヒレ部の傾斜部分によって面材の端面から離隔した位置において見込み方向に延在するものであるため、建具の見付け方向に沿った寸法が大きく増大する事態を招来する懸念もない。これにより、例えば同じ外形寸法であれば、面材の開口面積を増やすことができる等の利点がある。
【0029】
また本発明は、上述した建具において、前記押縁は、前記支持部から外周側に向けて延在し、前記建材の見付け面を覆うカバー部を有していることを特徴としている。
この発明によれば、建材の見付け面を覆うことができるため、支持部から建材の見付け面までの間に両者の境界線が露出する事態を防止することができ、外観品質を向上させることも可能となる。
【0030】
また本発明は、上述した建具において、前記中間ヒレ部は、前記支持部から見込み方向に延在する見込み延在部を有し、前記外方係合片は、前記見込み延在部から外周側に向けて延在し、その延在縁部を介して前記建材に係合されることを特徴としている。
この発明によれば、支持部の内周側縁部が面材に近接するように押縁を傾斜させながら内方係合片を面材の係合部に係合させた後、支持部が見込み方向に沿うように押縁の姿勢を変更すれば、外方係合片を面材の係合部に係合させることが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
17 面材、17a 端面、17b 内表面、17c 外表面、30 押縁(横押縁 30A、縦押縁 30B)、31 支持部、32 内方係合片、32a 中間ヒレ部、32a1 見込み延在部、32a2 傾斜部分、32b 係合ヒレ部、33 外方係合片、34 カバー部、35 補助カバー部、M 建材(11A,12A,11B,12B,11C,12C 縦枠、13A,14A,13B,14B,13C,14C 横枠、15A,16A,15B,16B,15C,16C 無目、21,22 縦框、23,24 横框)、M1b 係合部