(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】糸残量検出装置
(51)【国際特許分類】
B65H 63/08 20060101AFI20240501BHJP
D04B 35/12 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B65H63/08 C
D04B35/12
(21)【出願番号】P 2020073932
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】上山 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】下山 恭生
(72)【発明者】
【氏名】小村 善幸
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103981631(CN,A)
【文献】実開昭52-133227(JP,U)
【文献】特開平08-277069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 63/08
D04B 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーンを載置可能な台座と、
前記台座に配置され、前記コーンの糸巻き部分の底面に対して光を照射する発光部、及び前記底面からの反射光を受光する受光部を有する検出部と、
前記受光部の受光量に応じて糸残量の値を推定する糸残量推定部と、
を具備する糸残量検出装置。
【請求項2】
前記検出部に対する前記コーンの軸芯の位置決めを行う位置決め部をさらに具備する、
請求項1に記載の糸残量検出装置。
【請求項3】
前記糸残量推定部は、
前記コーンに巻かれた糸の番手、色又は素材のうち少なくとも1つに応じて糸残量を推定する、
請求項1又は請求項2に記載の糸残量検出装置。
【請求項4】
前記検出部による検出結果に関する情報を通信可能な通信部をさらに具備する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の糸残量検出装置。
【請求項5】
前記発光部は、
前記受光部よりも前記コーンの軸芯側に配置されている、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の糸残量検出装置。
【請求項6】
前記底面と、前記検出部との間の距離を調整可能な調整部をさらに具備する、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の糸残量検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーンに巻かれた糸の残量を検出する糸残量検出装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーンに巻かれた糸の残量を検出する糸残量検出装置の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、コーンに巻かれた糸の側面に光を照射し、糸表面からの反射光を検知する光学式センサを具備する糸残量検出装置(糸検知装置)が開示されている。コーンから編機へと糸が供給され、コーンに巻かれた糸が無くなると、光学式センサはコーン表面からの反射光を検知することになる。当該糸残量検出装置は、光学式センサによって検知される反射光の変化(糸表面からの反射光と、コーン表面からの反射光の相違)から、コーンに巻かれた糸の有無を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的に編機に糸を供給するためのコーンは、複数が密集するように並べられた状態で使用される。このため、特許文献1に記載されているようにコーンの側方に配置された光学式センサを用いて糸を検知する場合、その光学式センサの配置スペースを確保するのが困難である。そこで、糸残量検出装置の省スペース化が望まれる。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、省スペース化を図ることが可能な糸残量検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、本発明に係る糸残量検出装置は、コーンを載置可能な台座と、前記台座に配置され、前記コーンの糸巻き部分の底面に対して光を照射する発光部、及び前記底面からの反射光を受光する受光部を有する検出部と、前記受光部の受光量に応じて糸残量の値を推定する糸残量推定部と、を具備するものである。
このように構成することにより、コーンを載置する台座を利用して検出部を設けることで、糸残量検出装置の省スペース化を図ることができる。また受光量に応じた糸の残量の値の推定ができる。
【0009】
また、本発明に係る糸残量検出装置は、前記検出部に対する前記コーンの軸芯の位置決めを行う位置決め部をさらに具備してもよい。
このように構成することにより、コーンの位置決めを行うことで、検出部による検出精度を向上させることができる。
【0011】
また、前記糸残量推定部は、前記コーンに巻かれた糸の番手、色又は素材のうち少なくとも1つに応じて糸残量を推定してもよい。
このように構成することにより、糸の番手等に応じた推定を行うことで、糸の残量の推定精度を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係る糸残量検出装置は、前記検出部による検出結果に関する情報を通信可能な通信部をさらに具備してもよい。
このように構成することにより、検出結果の有効活用(例えば、検出に関するデータベースの構築、編機の動作の制御等)を図ることができる。
【0013】
また、前記発光部は、前記受光部よりも前記コーンの軸芯側に配置されてもよい。
このように構成することにより、糸の残量が減った場合でも、検出部による検出を行い易くすることができる。
【0014】
また、本発明に係る糸残量検出装置は、前記底面と、前記検出部との間の距離を調整可能な調整部をさらに具備してもよい。
このように構成することにより、糸の種類等に応じて糸巻き部分の底面と検出部との距離を調整することで、検出部による検出精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、糸残量検出装置の省スペース化を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)本発明の第一実施形態に係る糸残量検出装置及び糸コーンを示した斜視図。(b)同じく、側面一部断面図。
【
図2】糸残量検出装置を示した斜視図、及び一部拡大図。
【
図3】(a)糸残量検出装置を示した平面図。(b)同じく、側面図。
【
図5】検出部による検出結果の時間変化の一例を示した図。
【
図6】第二実施形態に係る糸残量検出装置を示した斜視図、及び一部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0018】
まず、
図1を用いて、本発明の第一実施形態に係る糸残量検出装置100によって保持される糸コーン10について説明する。
【0019】
糸コーン10は、編機(横編機、縦編機、丸編機等)に供給される糸がコーン11に巻かれたものである。本実施形態においては、紙製のコーン11を用いることを想定している。コーン11は、中空状の略円錐台状に形成される。コーン11の側面に糸を巻くことで、コーン11の側面に沿った形状(略円錐台状)の糸巻き部分12が形成される。
【0020】
次に、
図2から
図4までを用いて、本発明の一実施形態に係る糸残量検出装置100の構成について説明する。
【0021】
糸残量検出装置100は、糸コーン10を保持すると共に、当該糸コーン10の糸の残量を検出するものである。糸残量検出装置100は、主として台座110、内側位置決め部120、検出部130、制御部140及び通信部150を具備する。
【0022】
台座110は、糸コーン10(コーン11)を載置する部分である。台座110は、主として本体部111及び外側位置決め部112を具備する。
【0023】
本体部111は、平面視において、前後に長い略楕円状に形成される。本体部111は、一定の上下方向幅(厚さ)を有する略板状に形成される。本体部111には、凹部111aが形成される。
【0024】
凹部111aは、後述する外側位置決め部112が配置される部分である。凹部111aは、本体部111の前端部の左右中央に形成される。凹部111aは、本体部111の上面を下方に窪ませるように形成される。
【0025】
外側位置決め部112は、コーン11の位置決めを行うものである。外側位置決め部112は、略直方体状に形成される。外側位置決め部112は、本体部111の凹部111aに配置される。外側位置決め部112の上下方向幅(厚さ)は、凹部111aの上下方向幅(深さ)よりも若干大きくなるように形成される。これによって、外側位置決め部112が凹部111aに配置されると、外側位置決め部112の上端部が本体部111の上面から若干上方に突出した状態になる。外側位置決め部112は、主として凹部112a及び透過部112bを具備する。
【0026】
凹部112aは、外側位置決め部112の後端部の左右中央に形成される。凹部112aは、外側位置決め部112の上面を下方に窪ませるように形成される。
【0027】
図4に示す透過部112bは、後述する検出部130が照射及び受光する光を透過可能な部分である。透過部112bは、光透過性を有する材料により形成される。透過部112bは、凹部112aの底部(後述する検出部130の上方部分)を形成するように設けられる。なお、図例では検出部130の上方(外側位置決め部112の一部分のみ)に透過部112bを形成した例を示しているが、例えば外側位置決め部112全体を光透過性を有する材料により形成することも可能である。
【0028】
図2及び
図3に示す内側位置決め部120は、コーン11の位置決めを行うものである。内側位置決め部120は、上端に向かって細くなるような略円錐台状に形成される。内側位置決め部120は、台座110の上面の略中央部に設けられる。
【0029】
図2から
図4までに示す検出部130は、コーン11に巻かれた糸の残量を検出するものである。検出部130は、主として基板131、発光部132及び受光部133を具備する。
【0030】
図4に示す基板131は、発光部132及び受光部133が設けられる板状の部材である。
【0031】
発光部132は、光(赤外線)を照射するもの(発光素子)である。発光部132は、基板131の上面に設けられる。発光部132は、上方に向かって光(赤外線)を照射することができる。なお、
図4には、発光部132から照射される赤外線の照射範囲を、二点鎖線で模式的に示している。
【0032】
受光部133は、光(赤外線)を受光するもの(受光素子)である。受光部133は、基板131の上面に設けられる。受光部133は、発光部132の前方に設けられる。受光部133は、発光部132から照射され、外部(本実施形態においては、糸巻き部分12の底面)において反射された光(反射光)を受光することができる。なお、
図4には、受光部133の受光範囲を、二点鎖線で模式的に示している。
【0033】
このように検出部130は、反射光を検出する光学式センサにより形成される。検出部130は、台座110(外側位置決め部112)の内部に配置される。具体的には、検出部130は、外側位置決め部112の透過部112bの下方に配置される。これによって、発光部132は、透過部112bを介して上方へと光(赤外線)を照射することができる。また受光部133は、透過部112bを介して入射してくる反射光を受光することができる。
【0034】
このように台座110を利用して検出部130を配置することで、検出部130の配置スペースを確保することができる。また、検出部130を凹部112a(凹部112aの下方)に配置することで、検出部130の上方に埃が侵入し、堆積するのを抑制することができる。これによって、検出部130が照射及び受光する光が阻害されるのを抑制することができる。
【0035】
また、発光部132は、受光部133よりも後方に配置される。すなわち、発光部132は、受光部133よりも内側位置決め部120側に配置される。これによって発光部132は、受光部133に比べて、台座110に載置された糸コーン10の軸芯側に配置されることになる。これによって、後述するように糸コーン10の糸が減った場合であっても、発光部132からの光を糸巻き部分12に照射し易くなるため、受光部133による反射光の検出が行い易くなる。
【0036】
図2及び
図3に示す制御部140は、検出部130の検出結果に基づいて、コーン11に巻かれた糸の残量を推定するものである。制御部140は、台座110(外側位置決め部112)の内部に配置される。具体的には、制御部140は、外側位置決め部112の検出部130の近傍(前側)に配置される。制御部140は、CPU等の演算処理部、RAMやROM等の記憶部等を具備する。制御部140の記憶部には、糸の残量を推定する際に用いられる種々の情報やプログラム等が記憶される。
【0037】
制御部140は、検出部130と電気的に接続され、検出部130の検出結果を取得することができる。制御部140の演算処理部は、前記プログラムを実行して、検出部130の検出結果等を用いた所定の演算処理等を行うことで、コーン11に巻かれた糸の残量を推定することができる。
【0038】
通信部150は、外部機器と電気通信可能なものである。通信部150は、台座110(外側位置決め部112)の内部に配置される。具体的には、通信部150は、外側位置決め部112の検出部130の近傍(前側)に配置される。通信部150は、制御部140と電気的に接続され、制御部140から各種の情報(例えば、糸の残量の推定結果等)を取得して、無線通信により外部へと送信することができる。また通信部150は、外部機器等から受信した情報を制御部140へと伝達することもできる。
【0039】
次に、糸残量検出装置100によって糸コーン10を保持する方法について説明する。
【0040】
糸残量検出装置100によって糸コーン10を保持する場合、
図2に示すように、内側位置決め部120をコーン11に挿入しながら、糸コーン10を台座110に載置させる。
【0041】
この際、
図4に示すように、コーン11の前下端部が、内側位置決め部120と外側位置決め部112との間の隙間(溝)にはまるように、コーン11を台座110の上面に載置させる。このように、コーン11の前下端部を、内側位置決め部120と外側位置決め部112とで挟むように配置することで、コーン11の軸芯の位置決めを行うことができる。また、コーン11の下端部全体(全周)ではなく、一部分(前部)だけで位置決めを行うことで、径の異なる様々な種類のコーン11にも対応することができる。このようにコーン11の位置決めを行うことで、検出部130を用いた糸の残量の検出精度を向上させることができる。
【0042】
また、コーン11が台座110に載置された状態では、コーン11の内側に内側位置決め部120が挿入されるため、コーン11の転倒や脱落を防止することができる。
【0043】
なお、もしコーン11を台座110に載置させる際に、コーン11の位置が前方へとずれた場合には、コーン11の前下端部が外側位置決め部112の上面に載ることになる。この際、外側位置決め部112の上面は台座110(本体部111)の上面から突出しているため、コーン11全体が後方に若干傾くことになる。糸コーン10を糸残量検出装置100に設置している作業者は、コーン11(糸コーン10)の傾きの有無を視覚的に確認することで、コーン11が糸残量検出装置100に正確に載置されているかどうか(位置決めができているかどうか)を確認することができる。
【0044】
このようにして、糸コーン10を糸残量検出装置100に載置(保持)することができる。当該糸コーン10から、編機へと糸を供給することができる。
【0045】
次に、糸残量検出装置100によって、糸コーン10の糸の残量を検出する方法について説明する。
【0046】
糸残量検出装置100に載置された糸コーン10から編機へと糸が供給されると、糸の残量が徐々に減っていく。糸の残量がある程度減った際には、糸コーン10を交換する必要がある。このような糸コーン10の交換のタイミングを把握するためにも、糸コーン10の糸の残量を把握することが望ましい。本実施形態では、糸残量検出装置100を用いて、糸コーン10の糸の残量を検出(推定)することができる。
【0047】
糸残量検出装置100は、概ね2つのステップによって、糸コーン10の糸の残量を検出(推定)することができる。具体的には、糸残量検出装置100は、(1)「検出部130により反射光の受光量を検出するステップ」、及び(2)「受光量から糸の残量を推定するステップ」の2つのステップによって、糸の残量を検出することができる。以下、順に説明する。
【0048】
まず、上記(1)「検出部130により反射光の受光量を検出するステップ」について説明する。
【0049】
糸コーン10の糸の残量を検出する場合、
図4に示すように、検出部130による反射光の検出(光の照射と受光)が行われる。具体的には、発光部132から上方に向かって光が照射される。発光部132の上方には糸コーン10の糸巻き部分12が位置しているため、発光部132からの光は糸巻き部分12の底面に照射される。糸巻き部分12の底面で反射した光は、受光部133によって受光される。
【0050】
ここで、受光部133が検出する受光量は、糸コーン10の糸巻き部分12の巻厚T(糸巻き部分12の径方向の厚さ)に応じて変化することになる。例えば、
図4に二点鎖線で示した糸巻き部分12のように、巻厚Tが十分に大きい場合(すなわち、糸コーン10の糸の残量が多い場合)には、発光部132から照射された光のほとんどが糸巻き部分12の底面で反射することになる。この場合、受光部133が検出する受光量は比較的多くなる。
【0051】
一方、
図4に実線で示した糸巻き部分12のように、巻厚Tが比較的小さい場合(すなわち、糸コーン10の糸の残量が少ない場合)には、発光部132から照射された光は、一部のみが糸巻き部分12の底面で反射することになる。この場合、受光部133が検出する受光量は比較的少なくなる。
【0052】
糸の残量の変化(巻厚Tの変化)に伴う受光量の変化を示す具体例として、
図5には、検出部130による検出結果(受光量)の時間変化の一例を示している。
図5には、糸径が互いに異なる3種類の糸(3種類の糸コーン10)に対して、検出部130による受光量の検出を行った例を示している。
【0053】
図5には、糸径が中程度である糸A:綿糸(綿番手が30の双糸)、糸径が比較的細い糸B:ウール(毛番手が72の三子糸)、糸径が比較的太い糸C:アクリル(毛番手が20の双糸)の、3種類の糸の検出結果を示している。なお、いずれの糸も、糸コーン10の初期の巻厚Tは20mmであり、編機への糸の供給速度は5m/sであるものとする。
【0054】
いずれの糸の場合も、編機への糸の供給開始(経過時間0秒)からしばらくの間は、受光量は概ね一定となっている。これは、糸巻き部分12の巻厚Tが十分に大きい場合、多少糸の残量が減ったとしても、発光部132から照射された光のほとんどが糸巻き部分12の底面で反射され、受光部133による検出結果(受光量)に変化が生じないためである。なお、糸の供給開始時点で、3種類の糸の受光量に差が生じているのは、糸径や素材等の違いによるものである。
【0055】
また、いずれの糸の場合も、一定の時間が経過すると、受光量が減少し始める。これは、糸巻き部分12の巻厚Tが小さくなり、発光部132から照射された光の一部が糸巻き部分12の底面で反射されなくなるためである(
図4参照)。時間経過に伴って巻厚Tは徐々に小さくなるため、受光量も徐々に減少することになる。
【0056】
また、いずれの糸の場合も、さらに時間が経過すると、受光量が0に近い値で再び一定となる。これは、糸巻き部分12の糸が無くなったことを意味している。
【0057】
また、3種類の糸を比較すると、糸径が大きいものほど早い時点で受光量が減少し始めている。これは、同じ巻厚T(20mm)で比較した場合、糸径が大きいものほど糸巻き部分12の巻厚Tの減少速度が速いためである。またこのため、糸径が大きいものほど、受光量が減少している最中のグラフの傾き(単位時間当たりの減少量)も大きくなっている。
【0058】
次に、上記(2)「受光量から糸の残量を推定するステップ」について説明する。
【0059】
制御部140は、検出部130による検出結果(受光量)から、糸コーン10の糸の残量を推定する。具体的には、実験(実測値)や数値解析等により得られた受光量と糸の残量との関係を示す情報(例えば、両者の関係を示すグラフ等)を参照し、検出部130による検出結果(受光量)から糸の残量(m)を算出(推定)する。
【0060】
ここで、推定の基礎となる受光量と糸の残量との関係(以下、単に「推定基礎情報」とも称する)は、糸の番手、色、素材、糸コーン10の種類(大きさ、形状等)等の各種の条件によって異なる。そこで制御部140には、様々な条件における推定基礎情報が予め記憶されている。制御部140は、実際に糸の残量の推定対象となる糸コーン10の種類等に応じて、適した推定基礎情報を選択し、当該推定基礎情報に基づいて糸の残量を推定する。このように、推定基礎情報(糸の番手等)に応じた残量の推定を行うことで、推定精度を向上させることができる。
【0061】
なお、推定に用いられる推定基礎情報は、予め制御部140に記憶されたものに限らない。例えば、通信部150を介して外部機器から制御部140へと推定基礎情報を送信し、当該推定基礎情報を制御部140に記憶させることも可能である。また、どの推定基礎情報を用いるか(選択するか)は、外部機器から受信する糸コーン10に関する情報に基づいて制御部140が自動的に判断することも可能であるし、作業者が外部機器(例えば、キーボードやスイッチ等の入力装置)を用いて任意に選択することも可能である。
【0062】
このように、検出部130による検出結果(受光量)を用いて糸の残量を推定することで、糸の有無だけでなく、糸の残量やその経時的な変化の様子などを把握することができる。
【0063】
このようにして推定された糸の残量に関する情報は、通信部150を介して外部機器へと送信され、当該情報を任意に利用することが可能である。例えば、モニター画面に糸の残量を表示させ、糸コーン10の交換のタイミングを把握することができる。また、糸の残量がある程度減った場合に、ブザー等を用いて、その旨を作業者に報知することもできる。その他、当該情報を蓄積することで、糸の残量検出に関するデータベースを構築したり、当該情報に基づいて編機の動作の制御を行うこともできる。このように、通信部150を用いることで、糸の残量の検出結果(推定結果)の有効活用を図ることができる。
【0064】
なお、本実施形態に係る外側位置決め部112及び内側位置決め部120は、本発明に係る位置決め部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る制御部140は、本発明に係る糸残量推定部の実施の一形態である。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0066】
例えば、糸残量検出装置100による糸の残量の検出対象となる糸コーン10の種類は限定するものではない。例えば、本実施形態では略円錐台状の糸コーン10(コーン11)を例示したが、その他の形状(例えば略一定の径を有する略円筒状など)のコーンを用いることも可能である。
【0067】
また、本実施形態において例示した糸残量検出装置100の構成は一例であり、各部の形状等は任意に変更することが可能である。例えば、台座110や内側位置決め部120の大きさや形状等、検出部130や制御部140の配置等は、任意に変更することができる。但し検出部130は、糸の残量の推定精度を高めるため、糸の巻厚Tを検出し易い位置に配置することが好ましい。
【0068】
また、本実施形態において例示した外側位置決め部112及び内側位置決め部120の構成は一例であり、糸コーン10の位置決めが可能なものであれば、その構成は任意に変更することが可能である。例えば、本実施形態のように外側位置決め部112と内側位置決め部120の間の溝だけではなく、その他の溝や突起等を用いて糸コーン10の位置決めを行うことも可能である。また、例えば糸コーン10(コーン11)の内側に沿う内側位置決め部120をコーン11の径方向にスライド移動可能に構成することで、当該内側位置決め部120と外側位置決め部112の間の溝の幅を調整することもできる。これによって、種々の形状の糸コーン10に応じた溝の幅となるように調整することができ、糸コーン10の位置決めを容易に行うことができる。
【0069】
また、本実施形態では、糸残量検出装置100に検出部130を1つ設ける例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、糸残量検出装置100に検出部130を複数設けることも可能である。例えば、検出部130を、糸コーン10の軸芯を中心とする径方向に複数並べて設けることで、当該糸コーン10の残量をより詳細に検出することができる。
【0070】
また、本実施形態において例示した糸残量検出装置100への給電方法は限定するものではない。例えば、台座110や内側位置決め部120の内部に乾電池やバッテリーを設けてもよく、また、適宜の配線を用いて外部から給電することも可能である。
【0071】
また、通信部150は無線通信により外部機器と通信するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば通信部150は、有線通信等により通信する構成とすることも可能である。
【0072】
また、本実施形態では、糸の残量に関する情報を通信部150を介して外部機器へと送信し、有効活用する例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、糸残量検出装置100自身にモニター等の表示部や、非常灯やブザー等の報知部を設け、糸の残量が減ったことを当該表示部や報知部を用いて作業者に知らせることも可能である。
【0073】
また、本実施形態では、糸残量検出装置100自身が有する制御部140によって糸の残量を推定する構成を例示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、検出部130の検出結果を通信部150を介して外部機器へと送信し、当該外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ等)によって糸の残量を算出(推定)することも可能である。
【0074】
以下では、本発明の第二実施形態について説明する。
【0075】
図6に示す第二実施形態に係る糸残量検出装置200は、調整部160を具備する点で、第一実施形態に係る糸残量検出装置100(
図2等参照)と異なっている。
【0076】
調整部160は、糸コーン10(糸巻き部分12の底面)と、検出部130との間の距離を調整するものである。調整部160は、主として操作部161及び軸部162を具備する。
【0077】
操作部161は、略円形板状に形成される部分である。操作部161は、台座110の内部(検出部130の下方)に配置される。操作部161の一部(前端部)は、台座110の前側面から前方に露出するように配置される。
【0078】
軸部162は、略円柱状に形成される部分である。軸部162は、操作部161の中央から上方に向かって延びるように設けられる。軸部162には雄ネジ部が形成される。軸部162(雄ネジ部)は、外側位置決め部112の下面に形成された雌ネジ部(不図示)に挿入される。
【0079】
このように構成された調整部160の操作部161を台座110の外部から回転させることで、外側位置決め部112に対する軸部162のねじ込み深さを変更することができる。これによって、外側位置決め部112を上下に移動させ、外側位置決め部112の高さを調整することができる。
【0080】
このように外側位置決め部112の高さを調整することで、台座110に載置された糸コーン10(糸巻き部分12の底面)と、検出部130との間の距離を任意に調整することができる。これによって、例えば糸の種類に応じて糸巻き部分12と検出部130との間の距離を最適な距離に調整することができ、検出部130による検出精度を向上させることができる。
【0081】
なお、調整部160の構成は本実施形態に限定するものではなく、適宜変更することが可能である。また、調整部160は、外側位置決め部112を移動させることなく、検出部130だけを上下に移動させる構成とすることも可能である。また、調整部160は、糸巻き部分12の底面と、検出部130との間の距離を調整可能なものであればよく、例えば検出部130(外側位置決め部112)ではなく、糸コーン10を上下に移動させる構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 糸コーン
11 コーン
12 糸巻き部分
100 糸残量検出装置
110 台座
112 外側位置決め部
120 内側位置決め部
130 検出部
132 発光部
133 受光部
140 制御部
150 通信部