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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ブームスプレーヤのキャビンのドア構造
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/54 20060101AFI20240501BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20240501BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20240501BHJP
   E05F 11/12 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
E05F11/54 A
A01M7/00 D
B60J5/04 L
E05F11/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020090815
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021188255
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】大内 努
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-152352(JP,A)
【文献】特開2017-212919(JP,A)
【文献】実開昭60-031474(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-13/04
17/00
B60J 5/04
A01M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビン(4)を有する車両(2)と、格納位置(P)において前記車両(2)の左右の少なくとも一方に沿うように位置する少なくとも1つのサイドブーム(20,30)と、を備えたブームスプレーヤ(1)における前記キャビン(4)のドア構造(40)であって、
前記キャビン(4)のキャビン本体(12)の左右の側面(12a)の少なくとも一方に形成された開放部(13)を開閉可能なドア(14)と、
前記キャビン本体(12)に基端部(41a,42a)が取り付けられ、前記ドア(14)に先端部(41b,42b)が取り付けられた2本のロッド(41,42)と、を備え、
前記2本のロッド(41,42)の前記先端部(41b,42b)は、前記ドア(14)に取り付けられたフレーム(16)における1つの水平部材(16a)に回動可能に連結されており、
前記ドア(14)が、前記2本のロッド(41,42)を含む4辺リンク構造(X)によって前記キャビン本体(12)に対し支持されている、ブームスプレーヤ(1)のキャビン(4)のドア構造(40)。
【請求項2】
前記2本のロッド(41,42)は、前記車両(2)の前方側に配置された第1ロッド(41)と、前記車両(2)の後方側に配置された第2ロッド(42)とからなり、
前記キャビン本体(12)に設けられた前記第2ロッド(42)の回動支点(44)は、前記キャビン本体(12)に設けられた前記第1ロッド(41)の回動支点(43)よりも、前記車両(2)の左右方向における中央寄りに配置されている、請求項1に記載のブームスプレーヤ(1)のキャビン(4)のドア構造(40)。
【請求項3】
前記2本のロッド(41,42)は、前記車両(2)の前方側に配置された第1ロッド(41)と、前記車両(2)の後方側に配置された第2ロッド(42)とからなり、
前記第2ロッド(42)は前記第1ロッド(41)よりも長い、請求項1または2に記載のブームスプレーヤ(1)のキャビン(4)のドア構造(40)。
【請求項4】
前記キャビン本体(12)に設けられた前記2本のロッド(41,42)の2つの回動支点(43,44)の間隔(Da)は、前記ドア(14)に設けられた前記2本のロッド(41,42)の2つの回動支点(45,46)の間隔(Db)よりも小さい、請求項1~3のいずれか一項に記載のブームスプレーヤ(1)のキャビン(4)のドア構造(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームスプレーヤのキャビンのドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば特許文献1に記載されるように、走行車体と、薬液を散布するブーム装置と、薬剤タンクとを備えた薬剤散布車が知られている。ブーム装置と薬剤タンクとの間にはキャビンが配置されている。キャビンは、運転座席、その周辺の機器類、ステアリングハンドル等を囲んでおり、乗員室を形成する。キャビンの両側面には、左右の開閉扉が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-115305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の薬剤散布車(ブームスプレーヤ)では、キャビンの両側面に設けられた開閉扉(ドア)は、通常、ヒンジ式の取付構造を有しており、ドアの前端等に配置されたヒンジの支点を中心として、ドア全体が開閉する。一方、走行車体の左右の両側方には、一対のサイドブームが配置されている。サイドブームは、収納(格納)された状態で、ブーム受けに支持される。この状態で、サイドブームとドアとの間には、所定の間隔が形成されている。
【0005】
ブームスプレーヤにおいて、キャビンと、格納されたサイドブームとの間隔は、限られた小さな空間である。ブームスプレーヤの構造上、この間隔を大きくすることは難しい。作業者は、キャビンに乗り込んだりキャビンから降りたりする際、ドアを開ける。従来、ドアを開けた際にドアの可動域がサイドブームによって制限され、ドアとキャビン側面との間の開口を大きくすることは難しかった。
【0006】
本発明は、サイドブームを備えるブームスプレーヤにおいて、ドアを開けた際のドアとキャビン側面との間の開口を大きくとることができるキャビンのドア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、キャビン(4)を有する車両(2)と、格納位置(P)において車両(2)の左右の少なくとも一方に沿うように位置する少なくとも1つのサイドブーム(20,30)と、を備えたブームスプレーヤ(1)におけるキャビン(4)のドア構造(40)であって、キャビン(4)のキャビン本体(12)の左右の側面(12a)の少なくとも一方に形成された開放部(13)を開閉可能なドア(14)と、キャビン本体(12)に基端部(41a,42a)が取り付けられ、ドア(14)に先端部(41b,42b)が取り付けられた2本のロッド(41,42)と、を備え、2本のロッド(41,42)の先端部(41b,42b)は、ドア(14)に取り付けられたフレーム(16)における1つの水平部材(16a)に回動可能に連結されており、ドア(14)が、2本のロッド(41,42)を含む4辺リンク構造(X)によってキャビン本体(12)に対し支持されている。
【0008】
本発明のキャビン(4)のドア構造(40)によれば、キャビン本体(12)およびドア(14)には、これらの間に配置された2本のロッド(41,42)が取り付けられている。2本のロッド(41,42)は、4辺リンク構造(X)の一部をなしており、この4辺リンク構造(X)によって、ドア(14)がキャビン本体(12)に対して支持されている。4辺リンク構造(X)の採用により、ヒンジ式の取付構造によって支持されていた従来のドアに比して、ドア(14)の開閉時の位置および姿勢を調整できる。よって、ドア(14)を開けた際のドア(14)とキャビン本体(12)の側面(12a)との間の開口(S)を大きくとることができる。その結果として、作業者は、キャビン(4)とキャビン(4)の外部との間で移動し易くなる。
【0009】
2本のロッド(41,42)は、車両(2)の前方側に配置された第1ロッド(41)と、車両(2)の後方側に配置された第2ロッド(42)とからなり、キャビン本体(12)に設けられた第2ロッド(42)の回動支点(44)は、キャビン本体(12)に設けられた第1ロッド(41)の回動支点(43)よりも、車両(2)の左右方向における中央寄りに配置されていてもよい。この構成によれば、前方の回動支点(43)の位置に対して後方の回動支点(44)の位置がずらされているので、ドア(14)を閉めた閉位置において、第1ロッド(41)および第2ロッド(42)の干渉を回避しやすい。
【0010】
2本のロッド(41,42)は、車両(2)の前方側に配置された第1ロッド(41)と、車両(2)の後方側に配置された第2ロッド(42)とからなり、第2ロッド(42)は第1ロッド(41)よりも長くてもよい。この構成によれば、ドア(14)を開いた開位置において4辺リンク構造(X)を平面視した場合に、4辺リンク構造(X)によって形成される四角形の後方の辺が前方の辺より長くなる。すなわち、第2ロッド(42)がドア(14)の後部を外側方に大きく押し広げる。よって、上記の開口(S)を形成するドア(14)の後部をより大きく開くことができる。
【0011】
キャビン本体(12)に設けられた2本のロッド(41,42)の2つの回動支点(43,44)の間隔(Da)は、ドア(14)に設けられた2本のロッド(41,42)の2つの回動支点(45,46)の間隔(Db)よりも小さくてもよい。この構成によれば、ドア(14)を開いた開位置において、キャビン本体(12)の側面(12a)に対するドア(14)の角度を大きく設定しやすい。よって、上記の開口(S)を形成するドア(14)の後部をより大きく開くことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ドア(14)を開けた際のドア(14)とキャビン本体(12)の側面(12a)との間の開口(S)を大きくとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るドア構造が適用されたブームスプレーヤを示す斜視図である。
図2図1のブームスプレーヤを示す平面図である。
図3】キャビン4においてドアが開位置にある状態を示す斜視図である。
図4】キャビン4においてドアが開位置にある状態を示す斜視図である。
図5図5(a)は、ドアが開位置にある状態を模式的に示す平面図であり、図5(b)は、ドアが閉位置にある状態を模式的に示す平面図である。
図6図6(a)および図6(b)は、ドアが閉位置から開位置へと向かう際のドアおよび第1ロッドおよび第2ロッドの位置をそれぞれ示す平面図である。
図7図7(a)および図7(b)は、ドアが開位置へと至る際のドアおよび第1ロッドおよび第2ロッドの位置をそれぞれ示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
まず、図1および図2を参照して、実施形態に係るブームスプレーヤ1の基本構成について説明する。ブームスプレーヤ1は、たとえば自走式である車両2と、薬液を散布するブーム装置3とを備えた自走式の乗用管理機(散布作業車)である。ブームスプレーヤ1は、圃場において車両2を走行させながら、薬液タンク6に貯留された薬液(薬剤)を散布する。以下の説明において、「前」、「後」、「左」、「右」は、特に断らない限り、ブームスプレーヤ1を基準とする。
【0016】
車両2は、作業者(オペレータ)の操縦室であるキャビン4を有する。車両2の後部には、エンジンを収容するエンジンルーム5が設けられている。キャビン4とエンジンルーム5との間には、ブーム装置3から散布される薬液を収容する薬液タンク6が設けられている。キャビン4は、車両2の前部に設置されており、キャビン4の後方に、薬液タンク6が設置されている。車両2は、一対の前輪W1と、一対の後輪W2とを備えている。
【0017】
ブーム装置3は、センターブーム10、右ブーム(サイドブーム)20、および左ブーム(サイドブーム)30を備えている。薬液散布を行う場合、右ブーム20および左ブーム30は、車両2から右方向および左方向にそれぞれ突き出された状態となるように広げられる。センターブーム10、右ブーム20、および左ブーム30のそれぞれには、各ブームに沿って送液管が設けられている。送液管には、複数の薬液ノズルNが取り付けられている。ブーム装置3は、薬液タンク6から薬液を吸引し送液管に圧送して、送液管に設けられた複数の薬液ノズルNから薬液を噴射させる。
【0018】
右ブーム20および左ブーム30は、薬液散布を行わないときには畳まれ、図1に示されるように車両2の側方位置において斜め後ろ上りの状態で格納されている。右ブーム20は、格納された格納位置Pでは、車両2の後部から上方に立設されたブーム受け7(図2参照)によって支持されている。左ブーム30は、格納された格納位置Pでは、車両2の後部から上方に立設されたブーム受け8(図1および図2参照)によって支持されている。
【0019】
ブーム装置3は、車両2の前部に設けられたブーム支持装置9によって支持されている。ブーム装置3は、センターブーム10、センターフレーム(支持フレーム)11、右ブーム20、および左ブーム30を備えている。センターフレーム11は、左右方向に延在する略柱状の部材であり、ブーム支持装置9によって支持されている。センターフレーム11は、左右方向に沿って延在するようにセンターフレーム11の前側の位置でセンターブーム10を支持する。
【0020】
右ブーム20は、センターフレーム11の右側の端部において揺動可能に支持されている。これにより、右ブーム20は、車両2の右側の側方位置において格納された状態である格納位置Pと、右側方に突き出された展開位置との間で、センターフレーム11との連結部を軸として開閉動作することができる。右ブーム20は、格納位置Pにおいて、車両2の右側に沿うように位置する。
【0021】
左ブーム30は、センターフレーム11の左側の端部において揺動可能に支持されている。これにより、左ブーム30は、車両2の左側の側方位置において格納された状態である格納位置Pと、左側方に突き出された展開位置との間で、センターフレーム11との連結部を軸として開閉動作することができる。左ブーム30は、格納位置Pにおいて、車両2の左側に沿うように位置する。
【0022】
続いて、図3および図4を参照して、本実施形態に係るキャビン4のドア構造40について詳細に説明する。図3および図4に示されるように、キャビン4は、作業者が着座する空間を形成する箱形のキャビン本体12と、キャビン本体12の左右の側面12aに形成された開放部13を開閉可能なドア14とを有する。各開放部13は、作業者が、キャビン本体12内に乗り込んだり、キャビン本体12から降りたりする際に通る開口である。ドア14は、開放部13を閉鎖する閉位置Pc(図5(b)参照)と、開放部13を開放させて作業者の乗降を可能とする開位置Po(図5(a)および図7(b)参照)との間で、所定の軌道に沿って移動可能である。ドア14は、閉位置Pcにおいて、キャビン本体12の側面12aに揃った位置(面一な位置)に配置され、開位置Poにおいて、キャビン本体12の側面12aに対して角度θ(図5(a)参照)をなす。
【0023】
キャビン本体12内には、作業者が着座する座席4a(図3参照)が設けられている。キャビン本体12は、前部12dと、後部12eと、天井部12cと、上記した左右の側面12aとを有する。座席4aは、たとえばこれらの各部によって包囲された空間の略中央に位置している。キャビン本体12内には、座席4aの他、車両2の運転およびブーム装置3の操作等に必要な操作機器類が設けられている。
【0024】
キャビン本体12の前部12dは前方に面しており、作業者による前方の視認性を確保するよう、透明な板状部材からなる。キャビン本体12の側面12a(閉位置Pcにあるドア14を含む)は、左右の側方に面しており、作業者による左右側方の視認性を確保するよう、透明な板状部材からなる。なお、前部12dおよび側面12aにおいて、骨組みとしてのフレーム部材が設けられる場合に、当該フレーム部材が不透明な棒状部材からなってもよい。キャビン本体12の後部12eは、たとえば薬液タンク6の前部に嵌まり込んでいる。
【0025】
キャビン4のドア構造40は、左右一対のドア14と、各ドア14の上部14aに接続された第1ロッド41および第2ロッド42(2本のロッド)と、各ドア14の下部14bに接続された1本の下ロッド47とを備える。右ブーム20に対面する右側のドア14が取り付けられて支持される構造と、左ブーム30に対面する左側のドア14が取り付けられて支持される構造とは基本的に同じであり、車両2の前後方向線に関して対称をなしている。作業者は、キャビン本体12の左右のいずれの開放部13(および開閉されるドア14)を通じても、キャビン本体12にアクセス可能である。以下の説明では、ドア構造40のうち、右側のドア14についての説明は省略し、左側のドア14についてのみ説明する。
【0026】
図1に示されるように、格納位置Pにある左ブーム30は、ドア14の側方を横切るように延在する。キャビン本体12の側面12aと前後方向に延在する左ブーム30との間には、所定の間隔W(図6(a)等参照)が形成されているが、この間隔Wは、左ブーム30が格納された状態のブームスプレーヤ1をコンパクト化するために、ごく限られた大きさ(左右方向における幅)に設定されている。本実施形態のドア構造40においては、このように限られた大きさの間隔Wの中で、ドア14が特有の軌跡を移動し、ドア14を開いた開位置Poにおいて、ドア14とキャビン本体12の側面12aとの間に十分な開口Sが形成される。すなわち、ドア構造40は、ドア14の開位置Poにおいて、従来のヒンジ式のドアに比してより大きな、後方に向けて開かれた開口Sを提供する。
【0027】
図3図5を参照して、ドア14の取付・支持構造についてより詳細に説明する。図3および図4に示されるように、第1ロッド41および第2ロッド42は、ドア14を開閉させつつ、ドア14を前後方向に移動させるように案内するための案内具である。第1ロッド41および第2ロッド42は、キャビン4の上部に設けられている。また下ロッド47は、キャビン4の下部に設けられている。第1ロッド41は、車両2の前方側に配置されている。第2ロッド42は、車両2の後方側に配置されている。キャビン本体12内には、内部空間の上方に位置するように、取付ブラケット50(図3参照)が設けられている。なお、図3では、取付ブラケット50に対する、第1ロッド41の基端部41aおよび第2ロッド42の基端部42aの取付構造を容易に理解できるよう、天井部12cの一部が切り欠かれて図示されている。第1ロッド41の基端部41aは、取付ブラケット50に対して回動可能に取り付けられている。第2ロッド42の基端部42aは、取付ブラケット50に対して回動可能に取り付けられている。
【0028】
一方、ドア14の内面側には、鋼製のパイプ等からなるドアフレーム16が取り付けられている。ドアフレーム16は、平板状のドア14に沿うように延在する。後方に向けて開放されたU字状をなすドアフレーム16は、ドア14の上部14aで水平に延在する上部材16aと、ドア14の下部14bで水平に延在する下部材16bとを有する。なお、キャビン4を構成する構造を説明する場合に「水平」または「鉛直」という場合は、車両2(ブームスプレーヤ1)全体が水平な地面上に位置して傾きのない状態を基準とする。ドア14の上部14aおよび下部14bは、水平に延び且つ互いに平行な上辺および下辺をそれぞれ含む。上部材16aはドア14の上辺に平行であり、下部材16bはドア14の下辺に平行である。第1ロッド41の先端部41bは、上部材16aに対して回動可能に取り付けられている。第2ロッド42の先端部42bは、上部材16aに対して回動可能に取り付けられている。
【0029】
第1ロッド41、第2ロッド42、取付ブラケット50の一部、および上部材16aの一部によって、4辺リンク構造Xが形成されている。本実施形態のドア構造40では、キャビン4のドア14が、第1ロッド41および第2ロッド42を含む4辺リンク構造Xによって、天井部12c(キャビン本体12)に対して支持されている。
【0030】
下ロッド47の基端部は、キャビン本体12内の下方に位置する図示しない取付ブラケットに対して回動可能に取り付けられている。下ロッド47の先端部は、下部材16bの後端部に対して回動可能に取り付けられている。
【0031】
このように、ドア14は、上部14aにおいて2本のロッドと、下部14bにおいて1本のロッドとによってキャビン本体12に対して取り付けられ、キャビン本体12に支持されている。この支持構造により、作業者は、ドア14をスムーズに開閉することができる。4辺リンク構造Xによって、キャビン本体12に対するドア14の移動軌跡が規定される。下ロッド47は、4辺リンク構造Xによって規定される移動軌跡に沿って移動するドア14に、従動しながら揺動する。ドア14の開閉に伴い、第1ロッド41および第2ロッド42は、たとえば、同じ水平面内を移動する。なお、ドア14の後部14rには、ドア14の開閉時に作業者によって掴まれる取っ手17が設けられている。
【0032】
4辺リンク構造Xは、第1ロッド41の基端部41aに設けられた、キャビン本体12側の前方の回動支点43を有する。4辺リンク構造Xは、第1ロッド41の先端部41bに設けられた、ドア14側の前方の回動支点45を有する。4辺リンク構造Xは、第2ロッド42の基端部42aに設けられた、キャビン本体12側の後方の回動支点44を有する。4辺リンク構造Xは、第2ロッド42の先端部42bに設けられた、ドア14側の後方の回動支点46を有する。これらの回動支点44~46は、鉛直に延び且つ互いに平行な回動軸線を有している。下ロッド47の基端部に設けられた回動支点48、および、下ロッド47の先端部に設けられた回動支点49も、鉛直に延び且つ互いに平行な回動軸線を有している。なお、上部材16aにおける回動支点45付近の部分と、第2ロッド42の先端部42bとに架け渡されるようにして、ダンパー51が更に取り付けられている。ダンパー51は、ドア14をスムーズに開閉させる。また、ダンパー51は、ドア14が前方へ移動する際(開位置Poに向かって移動する際)に、ドア14が所定の位置より更に前方に移動することを規制する。この所定の位置が、開位置Poであってもよい。
【0033】
ここで、本実施形態のブームスプレーヤ1における開放部13およびドア14の形状について説明すると、ドア14は、開放部13の周縁の形状に対応する外形を有する。上部14aが有する上辺と、下部14bが有する下辺とは水平に延び且つ平行であり、前部14fが有する前辺と後部14rが有する後辺とは鉛直に延び且つ平行である。後部14rの後辺と下部14bの下辺との間には、斜辺部14k(図3参照)が形成されている。この斜辺部14kは、薬液タンク6の前部形状に応じて凹状をなすキャビン本体12の後部12eの形状に対応している。すなわち、ドア14の上部14aは、前後方向において比較的長い(広い)幅を有し、ドア14の下部14bは、前後方向において比較的短い(狭い)幅を有している。このドア14の形状と同様、開放部13の上部は、前後方向において比較的広い幅を有し、開放部13の下部は、前後方向において比較的狭い幅を有している。ドア構造40では、格納位置Pにある左ブーム30に対し、比較的狭い幅を有する下部14bが対面している。この位置関係により、ドア14が開位置Poにあるときにドア14と左ブーム30との干渉を回避しやすく、ドア14の移動範囲(可動域)に自由度が与えられている。
【0034】
図5(a)および図5(b)を参照して、ドア14、第1ロッド41および第2ロッド42の構造、位置関係、および移動軌跡について説明する。図5(a)は、ドアが開位置Poにある状態を模式的に示す平面図であり、図5(b)は、ドアが閉位置Pcにある状態を模式的に示す平面図である。図5(a)および図5(b)に示されるように、第1ロッド41及び第2ロッド42は、ドア14の開位置Poにおいても閉位置Pcにおいても、またこれらの間にドア14が位置する場合においても、互いに干渉しない。言い換えれば、ドア14の移動軌跡の全域にわたって、第1ロッド41および第2ロッド42は、互いに干渉しない。
【0035】
車両2を基準として固定された位置にある回動支点43,44を中心に、ドア14が移動(開閉)する。ドア14の移動(開閉)に伴い、回動支点45,46は、第1ロッド41の長さL1および第2ロッド42の長さL2によって規定される円弧状の軌跡を描く。本実施形態のドア構造40では、第2ロッド42は、第1ロッド41よりも長い。すなわち、第2ロッド42の長さL2が、第1ロッド41の長さL1よりも長くなっている。
【0036】
さらに、ドア構造40は、固定側の回動支点43,44と、可動側の回動支点45,46とにおいても特徴を有する。図5(a)に示されるように、第2ロッド42のキャビン本体12側の回動支点44は、第1ロッド41のキャビン本体12側の回動支点43よりも、車両2の左右方向における僅かに中央寄り(図示上側)に配置されている。また、図5(b)に示されるように、キャビン本体12に設けられた第1ロッド41の回動支点43および第2ロッド42の回動支点44の間隔Daは、ドア14に設けられた第1ロッド41の回動支点45および第2ロッド42の回動支点46の間隔Dbよりも小さい。以上のように、ドア構造40では、4辺リンク構造Xの各辺の長さが、特有の大小関係を有する。
【0037】
上記の構造および位置関係を有するドア構造40では、図6および図7に示されるように、作業者によってドア14が開かれる際、ドア14は漸次移動する。まず、ドア14が閉位置Pcにある場合は、第1ロッド41および第2ロッド42は平行ではなく角度をなしている(図5(b)参照)。このとき、回動支点43と回動支点44の位置関係により、第1ロッド41と第2ロッド42の干渉は回避されている。ドア14が開かれると、ドア14の全体が、外側方に向けて、開放部13から離れる。第1ロッド41と第2ロッド42が略平行となった後、第1ロッド41と第2ロッド42の先端側が広がり始める(図6(a)参照)。ドア14は、さらに開放部13から離れ、キャビン本体12の側面12aに対して略平行な姿勢を保ったまま左ブーム30に近づく(図6(b)参照)。
【0038】
続いて、ドア14は、徐々に前方へ移動しつつ、キャビン本体12の側面12aに対して角度をなすように旋回する(図7(a)参照)。このとき、ドア14の上部14aは左ブーム30の上方を通過し、ドア14の下部14bが左ブーム30に近接する。さらに、ドア14が開位置Poに到来すると、キャビン本体12の側面12aに対するドア14の角度は最大となる(図5(a)に示される角度θ参照)。このとき、ドア14の前部14fは、キャビン本体12の前部12dよりも前方に位置し、且つキャビン本体12の側面12aよりも車両2の左右方向の中央寄りに位置する(図7(b)参照)。このとき、ダンパー51のストロークは最大となり、この開位置Poよりも前方にドア14が回動しないよう、ダンパー51がドア14の回動範囲を規制する。このように、4辺リンク構造Xでは、2箇所の回動支点43,44を中心として、ドア14を回動可能に支持する。4辺リンク構造Xは、ドア14がキャビン本体12の外側方を迂回するように、ドア14を案内する。ドア14は、ドア14が開けられる場合に、キャビン本体12の外側方に向かって移動しながら前方に平行移動した後、前部14fがキャビン本体12側に寄るように回転移動し、キャビン本体12の前方に移動する。また、ドア14が閉められる場合には、ドア14が閉まるにつれてダンパー51のストロークが短くなる(図6(a)参照)。
【0039】
本実施形態のキャビン4のドア構造40によれば、キャビン本体12およびドア14には、これらの間に配置された第1ロッド41および第2ロッド42が取り付けられている。第1ロッド41および第2ロッド42は、4辺リンク構造Xの一部をなしており、この4辺リンク構造Xによって、ドア14がキャビン本体12に対して支持されている。4辺リンク構造Xの採用により、ヒンジ式の取付構造によって支持されていた従来のドアに比して、ドア14の開閉時の位置および姿勢を調整できる。よって、限られた間隔Wの中でもドア14の開閉を行うことができ、ドア14を開けた際のドア14とキャビン本体12の側面12aとの間の開口S(図5(a)、図7(b)参照)を大きくとることができる。その結果として、作業者は、キャビン4とキャビン4の外部との間で移動し易くなる。
【0040】
キャビン本体12に設けられた第2ロッド42の回動支点44は、キャビン本体12に設けられた第1ロッド41の回動支点43よりも、車両2の左右方向における中央寄りに配置されている。この構成によれば、前方の回動支点43の位置に対して後方の回動支点44の位置がずらされているので、ドア14を閉めた閉位置において、第1ロッド41および第2ロッド42の干渉を回避しやすい。
【0041】
第2ロッド42は第1ロッド41よりも長い。この構成によれば、ドア14を開いた開位置において4辺リンク構造Xを平面視した場合に、4辺リンク構造Xによって形成される四角形の後方の辺が前方の辺より長くなる。すなわち、第2ロッド42がドア14の後部14rを外側方に大きく押し広げる。よって、上記の開口Sを形成するドア14の後部14rをより大きく開くことができる。
【0042】
キャビン本体12に設けられた2つの回動支点43,44の間隔Daは、ドア14に設けられた2つの回動支点45,46の間隔Dbよりも小さい。この構成によれば、ドア14を開いた開位置において、キャビン本体12の側面12aに対するドア14の角度を大きく設定しやすい。よって、上記の開口Sを形成するドア14の後部14rをより大きく開くことができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、第1ロッドおよび第2ロッドは、それぞれ、直線状でなくてもよい。第1ロッドおよび第2ロッドのいずれか少なくとも一方が、全体として湾曲していてもよく、C字状またはU字状の部分を有してもよい。第1ロッドおよび第2ロッドのいずれか少なくとも一方が、他方のロッドとの干渉を避ける形状または構造を有してもよい。さらには、第1ロッドおよび第2ロッドの少なくとも一方が、全長の途中部分で折り曲げ可能な1つ又は複数の折曲部(関節部)を含んでもよい。
【0044】
キャビン本体12の左右両方の側面12aにドア14が設けられる場合に限られず、キャビン本体12の左右の側面12aのいずれか一方のみにドア14が設けられてもよい。その場合でも、左右のいずれか一方には、サイドブームが設けられており、当該いずれか一方の側面12aに設けられたドア14に、本発明のドア構造が適用される。
【0045】
第1ロッド41の回動支点43と第2ロッド42の回動支点44とが、車両2の左右方向における同じ位置に配置されてもよい。前方側の第1ロッド41の長さと後方側の第2ロッド42の長さが等しくてもよい。2本のロッドが、同じ高さに設けられて前後方向に並んで配置される場合に限られず、異なる高さに設けられてもよい。2本のロッドのキャビン本体12側の回動支点の間隔が、ドア14側の回動支点の間隔と等しくてもよく、ドア14側の回動支点の間隔より大きくてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…ブームスプレーヤ、2…車両、4…キャビン、6…薬液タンク、12…キャビン本体、13…開放部、14…ドア、20…右ブーム(サイドブーム)、30…左ブーム(サイドブーム)、40…ドア構造、41…第1ロッド(ロッド)、41a…基端部、41b…先端部、42…第2ロッド(ロッド)、42a…基端部、42b…先端部、43…(キャビン本体側の前方の)回動支点、44…(キャビン本体側の後方の)回動支点、45…(ドア側の前方の)回動支点、46…(ドア側の後方の)回動支点、Da…(キャビン本体側の回動支点の)間隔、Db…(ドア側の回動支点の)間隔、P…格納位置、X…4辺リンク構造。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7