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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/05 20140101AFI20240501BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H01L31/04 570
H01L31/04 260
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020112869
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011614
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊坂 隆行
(72)【発明者】
【氏名】兼松 大二
(72)【発明者】
【氏名】岩田 大裕
(72)【発明者】
【氏名】辻井 慎一郎
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0044013(US,A1)
【文献】国際公開第2018/037672(WO,A1)
【文献】特開2016-092421(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0124777(KR,A)
【文献】特開2017-073552(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158977(WO,A1)
【文献】特開2019-091787(JP,A)
【文献】特開2017-055113(JP,A)
【文献】特開2016-018997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池セルと、前記複数の太陽電池セルの少なくとも1つに接続される複数の配線材とを備えた太陽電池モジュールであって、
前記複数の太陽電池セルの各々は、
主面上の第1方向にn型領域とp型領域が交互に形成された光電変換部と、
前記n型領域上に形成されたn側電極層と、
前記p型領域上に形成されたp側電極層と、
前記n側電極層上に形成されたn側絶縁層と、
前記p側電極層上に形成されたp側絶縁層と、
前記n側絶縁層の開口部を介して前記n側電極層に接続されたn側コンタクト電極と、
前記p側絶縁層の開口部を介して前記p側電極層に接続されたp側コンタクト電極と、
を含み、
前記n側絶縁層は、前記n側コンタクト電極が形成された部分を除く前記n側電極層上の全域を覆い、
前記p側絶縁層は、前記p側コンタクト電極が形成された部分を除く前記p側電極層上の全域を覆い、
前記複数の配線材の各々は、前記第1方向に延設され、前記n側コンタクト電極および前記p側コンタクト電極の少なくとも一方に接続され、
前記n側コンタクト電極は、前記n型領域の各々の長手方向に沿って、前記複数の配線材1本当り複数形成され、かつ前記第1方向の一端側と他端側に交互に形成され、
前記p側コンタクト電極は、前記p型領域の各々の長手方向に沿って、前記複数の配線材1本当り複数形成され、かつ前記第1方向の一端側と他端側に交互に形成されている、太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記複数の太陽電池セルには、隣り合う第1太陽電池セルと第2太陽電池セルが含まれ、
前記複数の配線材の少なくとも1つは、前記第1太陽電池セルの前記n側コンタクト電極と、前記第2太陽電池セルの前記p側コンタクト電極とにそれぞれ接続されている、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記複数の太陽電池セルを構成する太陽電池セルの各々には、1枚の前記太陽電池セルを切断して形成された少なくとも1つの割断部が存在し、前記割断部により分割された前記第1方向に並ぶ複数のサブセルが含まれている、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記太陽電池セルの各々に含まれる前記複数のサブセルには、前記割断部を隔てて隣り合う第1サブセルと第2サブセルが含まれ、
前記複数の配線材の少なくとも1つは、前記第1サブセルの前記n側コンタクト電極と、前記第2サブセルの前記p側コンタクト電極とにそれぞれ接続されている、請求項3に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記第1サブセルおよび前記第2サブセルの前記p型領域は、前記割断部の両側に形成されている、請求項4に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記光電変換部の前記主面上には、前記第1方向に直交する第2方向の両端部の少なくとも一方に、前記第1方向に延びる第2のp型領域が形成され、当該第2のp型領域上には前記第1方向に並ぶ複数の前記p側コンタクト電極が形成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記n側コンタクト電極は、前記n側絶縁層の前記開口部に充填された半田により構成され、
前記p側コンタクト電極は、前記p側絶縁層の前記開口部に充填された半田により構成され、
前記開口部の各々は、前記複数の配線材の幅よりも長く形成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池モジュールに関し、より詳しくは光電変換部の一方の主面のみに電極が形成された裏面接合型の太陽電池セルを備える太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウェーハと、ウェーハの一方の主面上に形成された第1および第2の半導体層と、各半導体層上にそれぞれ形成された第1および第2の電極とを備える裏面接合型の太陽電池セルが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献2には、隣り合う裏面接合型の太陽電池セルが長方形状の板状の配線材によって接続されてなるストリングを含む太陽電池モジュールが開示されている。配線材は、隣り合う太陽電池セル間において、一方のセルのn型半導体層上に形成されるn側電極と、他方のセルのp型半導体層上に形成されるp側電極とを接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5879515号
【文献】特許第6341437号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
裏面接合型の太陽電池セルは、両面に電極が形成された太陽電池セルと比べて太陽光をより有効活用でき、高い光電変換効率を実現できる。しかし、特許文献2に開示されるような従来の太陽電池モジュールでは、板状の配線材を接続する部分に、発電に寄与しない領域(n型シリコンウェーハを用いた場合は、n型半導体層が形成された領域)を大きく形成する必要がある。また、集電効率を改善して太陽電池セルで発電された電気を効率良く取り出し、太陽電池モジュールの出力特性をさらに向上させることが求められている。
【0005】
本開示の目的は、裏面接合型の太陽電池セルを備えた太陽電池モジュールにおいて、出力特性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルと、前記複数の太陽電池セルの少なくとも1つに接続される複数の配線材とを備えた太陽電池モジュールであって、前記複数の太陽電池セルの各々は、主面上の第1方向にn型領域とp型領域が交互に形成された光電変換部と、前記n型領域上に形成されたn側電極層と、前記p型領域上に形成されたp側電極層と、前記n側電極層上に形成されたn側絶縁層と、前記p側電極層上に形成されたp側絶縁層と、前記n側絶縁層の開口部を介して前記n側電極層に接続されたn側コンタクト電極と、前記p側絶縁層の開口部を介して前記p側電極層に接続されたp側コンタクト電極とを含み、前記n側絶縁層は、前記n側コンタクト電極が形成された部分を除く前記n側電極層上の全域を覆い、前記p側絶縁層は、前記p側コンタクト電極が形成された部分を除く前記p側電極層上の全域を覆い、前記複数の配線材の各々は、前記第1方向に延設され、前記n側コンタクト電極および前記p側コンタクト電極の少なくとも一方に接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、裏面接合型の太陽電池セルを備えた太陽電池モジュールにおいて、出力特性を向上させることができる。本開示に係る太陽電池モジュールは、例えば、発電に寄与しない太陽電池セルの無効領域が少ない。また、集電効率が高く発電された電気を効率良く取り出すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の一例である太陽電池モジュールの断面図である。
図2】実施形態の一例である太陽電池セルの断面図である。
図3】実施形態の一例である太陽電池モジュールを構成する1つの太陽電池セルを裏面側から見た斜視図である。
図4】実施形態の一例である太陽電池モジュールにおいて、隣り合う2つの太陽電池セルを裏面側から見た斜視図である。
図5】太陽電池セルに対する配線材の接続パターンの変形例を示す図である。
図6】太陽電池セルに対する配線材の接続パターンの変形例を示す図である。
図7】太陽電池セル間の接続パターンの変形例を示す図である。
図8】複数のサブセルに分割された太陽電池セルと、サブセルに対する配線材の接続パターンの一例を示す図である。
図9】複数のサブセルに分割された太陽電池セルを用いた場合において、セル間の接続パターンの一例を示す図である。
図10】複数のサブセルに分割された太陽電池セルを用いた場合において、セル間の接続パターンの他の一例を示す図である。
図11】太陽電池セルに対する配線材の接続構造の一例を示す図である。
図12】太陽電池セルに対する配線材の接続構造の他の一例を示す図である。
図13】太陽電池セルに対する配線材の接続構造の他の一例を示す図である。
図14】太陽電池セルに対する配線材の接続構造の他の一例を示す図である。
図15】太陽電池セルに対する配線材の接続構造の他の一例を示す図である。
図16】コンタクト電極およびその近傍の断面構造の一例を示す図である。
図17】コンタクト電極およびその近傍の断面構造の他の一例を示す図である。
図18】実施形態の一例である太陽電池モジュールの製造方法を説明するための図である。
図19】太陽電池セルの半導体層の形成パターンの変形例を示す図である。
図20】太陽電池セルの半導体層の形成パターンの変形例を示す図である。
図21】太陽電池セルの半導体層の形成パターンの変形例を示す図である。
図22】コンタクト電極の形成パターンの変形例を示す図である。
図23】コンタクト電極の形成パターンの変形例を示す図である。
図24】コンタクト電極の形成パターンの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る太陽電池モジュールの実施形態の一例について詳細に説明する。なお、本開示に係る太陽電池モジュールは、以下で説明する実施形態に限定されない。実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは以下の説明を参酌して判断されるべきである。また、以下で説明する複数の実施形態および変形例の構成を選択的に組み合わせてなる形態は当初から想定されている。
【0010】
実施形態の説明で参酌する図面では、太陽電池セルのn型領域とp型領域が交互に配置される第1方向を矢印Xで示す。また、太陽電池セル(太陽電池モジュール)の厚み方向を矢印Zで、第1方向および厚み方向に直交する第2方向を矢印Yで示す。
【0011】
図1は、実施形態の一例である太陽電池モジュール10の断面図である。図1に例示するように、太陽電池モジュール10は、複数の太陽電池セル20と、複数の太陽電池セル20の少なくとも1つに接続される複数の配線材50とを備える。また、太陽電池モジュール10は、太陽電池セル20の受光面側に設けられた第1保護部材11と、太陽電池セル20の裏面側に設けられた第2保護部材12と、各保護部材の間に充填された封止材13とを備える。複数の太陽電池セル20、2枚の保護部材、および封止材13が積層されてなる太陽電池パネルの周縁部には、金属製のフレームが取り付けられていてもよい。
【0012】
ここで、太陽電池セル20の受光面とは、太陽光が主に入射(50%超過~100%)する主面を意味し、「裏面」とは受光面と反対側の主面を意味する。本明細書では、光電変換部21等についても、受光面および裏面の用語を使用する。
【0013】
複数の太陽電池セル20は、例えば、同一平面上に配置され、隣り合う太陽電池セル11同士が配線材50によって接続されている。太陽電池セル20は裏面側のみに電極が形成された裏面接合型のセルであって、配線材50は太陽電池セル20の裏面側のみに配置される。このため、太陽電池セル20の受光面からは、セルの受光面に電極が形成されて受光面側に配線材が配置される場合と比べて、多くの太陽光が入射する。
【0014】
太陽電池モジュール10には、一般的に、複数の太陽電池セル20が一列に並び、配線材50によって直列接続されたストリングが複数存在する。複数のストリングは、例えば、互いに平行に配置される。図1に示す例では、隣り合う2枚の太陽電池セル20の間に、配線材50と直交するように配置されたセル間配線材60が設けられている。配線材50は、セル間配線材60に接続され、セル間配線材60を介して複数の太陽電池セル20が直列接続されている。
【0015】
第1保護部材11には、例えば、透光性を有するガラス基板、樹脂基板等が用いられる。第1保護部材11は、一般的に平坦であるが、湾曲していてもよい。第2保護部材12には、第1保護部材11と同じ透明な部材を用いてもよいし、不透明な部材を用いてもよい。第2保護部材12には、例えば、第1保護部材11よりも厚みが薄い樹脂シートを用いることができる。樹脂シートの材質は特に限定されないが、好適な樹脂の例としてはポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0016】
封止材13は、第1保護部材11と第2保護部材12の間に充填されて、湿気等から太陽電池セル20を保護し、太陽電池セル20が大きく動かないようにセルを固定する。封止材13には、一般的に、第1保護部材11と太陽電池セル20の間に配置される第1の樹脂シート、および太陽電池セル20と第2保護部材12の間に配置される第2の樹脂シートが用いられる。太陽電池モジュール10は、複数の太陽電池セル20が配線材50により直列接続されたストリングを、封止材13を構成する2枚の樹脂シートの間に配置し、この積層体を2枚の保護部材で挟んでラミネートすることにより製造される。
【0017】
図2は太陽電池セル20の断面図、図3は太陽電池セル20を裏面側から見た斜視図である。図2および図3に例示するように、太陽電池セル20は、裏面上の第1方向にn型領域23とp型領域24が交互に形成された光電変換部21を備える。光電変換部21は、基板22と、基板22の裏面上に形成された2種類の半導体層(n型半導体層25およびp型半導体層26)を含み、太陽光を受光することでキャリアを生成する。なお、基板22の裏面上において、n型半導体層25が形成された領域がn型領域23となり、p型半導体層26が形成された領域がp型領域24となる。
【0018】
基板22には、結晶系シリコン、ガリウム砒素、インジウム燐等の半導体基板を用いることができる。中でも、n型単結晶シリコンウェーハを用いることが好ましい。基板22の厚みは、例えば50~300μmである。基板22の表面には、テクスチャ構造(図示せず)が形成されていることが好ましい。テクスチャ構造とは、表面反射を抑制して基板22の光吸収量を増大させるための表面凹凸構造であって、少なくとも受光面に形成されることが好ましく、受光面および裏面の両方に形成されてもよい。基板22は、例えば、平面視略正方形状を有し、正方形の角が斜めにカットされた形状であってもよい。
【0019】
基板22の受光面側には、保護層28が形成されている。保護層28は、例えば窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素等で構成される絶縁層であって、入射光の反射を抑制する反射防止層としても機能する。また、基板22と保護層28の間には、基板22の受光面側におけるキャリアの再結合を抑制するパッシベーション層29が介在していることが好ましい。パッシベーション層29の一例は、実質的に真性な非晶質シリコンの層(以下、「i型非晶質シリコン層」という場合がある)か、または後述するn型半導体層25よりドーパント濃度が低い非晶質シリコン層である。
【0020】
基板22の裏面側には、上述のように、n型半導体層25およびp型半導体層26が形成されている。例えば、基板22はn型単結晶シリコンウェーハであり、n型半導体層25はn型非晶質シリコン層、p型半導体層26はp型非晶質シリコン層である。n型単結晶シリコンウェーハの裏面には、n型半導体層25によってn型にドーピングされたn型領域23が、p型半導体層26によってp型にドーピングされたp型領域24がそれぞれ形成される。
【0021】
n型半導体層25は、基板22の裏面の第1の領域に形成され、p型半導体層26は、基板22の裏面の第2の領域に形成される。また、n型半導体層25上の一部に絶縁層27が形成され、p型半導体層26が第2の領域と絶縁層27上に形成される。n型半導体層25とp型半導体層26は、絶縁層27を介して一部同士が重なり裏面の広範囲に隙間なく成膜される。半導体層が成膜される領域は、例えば、基板22の裏面の周縁部を除く全域である。
【0022】
図3に例示するように、n型半導体層25によって形成されるn型領域23と、p型半導体層26によって形成されるp型領域24は、太陽電池セル20の裏面の第1方向に交互に並んでストライプ状に形成されている。また、n型領域23とp型領域24は、太陽電池セル20の裏面の第2方向に延在し、第2方向の一端部から他端部にわたって細線状ないし帯状に形成されている。
【0023】
n型領域23とp型領域24は、例えば互いに平行に延び、同じ長さを有する。図3に示す例では、n型領域23の各々が互いにつながっておらず、p型領域24により分離されている。同様に、p型領域24の各々は互いにつながっておらず、n型領域23により分離されている。複数のn型領域23は同じ幅で形成されているが、各々の幅は一定でなくてもよい(p型領域24についても同様)。
【0024】
n型領域23とp型領域24の幅は互いに同じであってもよいが、好ましくはp型領域24の幅>n型領域23の幅である。n型領域23の幅の一例は0.1mm~0.5mmであり、p型領域24の幅の一例は0.2mm~1mmである。また、p型領域24の数は、n型領域23の数より多くてもよい。図3に示す例では、基板22の裏面の第1方向両端部にp型領域24が形成されており、p型領域24がn型領域23よりも1つ多く形成されている。
【0025】
p型領域24をn型領域23よりも大面積に形成する、言い換えると、基板22を構成する半導体の導電型と異なる導電型の半導体層を大面積に形成することは、太陽電池セル20の出力特性の向上に寄与する。詳しくは後述するが、太陽電池モジュール10では、n型領域23、p型領域24の各々に設けられたコンタクト電極に配線材50を接続するため、集電効率が高く発電された電気を効率良く取り出すことが可能である。また、従来のように配線材の接続箇所を確保するために、発電に寄与しない大きな無効領域を形成する必要がない。このため、太陽電池モジュール10は出力特性に優れる。
【0026】
n型半導体層25は、n型非晶質シリコン層の単層構造であってもよいが、好ましくはi型非晶質シリコン層とn型非晶質シリコン層の複層構造、またはn型非晶質シリコン層よりドーパント濃度が低い非晶質シリコン層とn型非晶質シリコン層の複層構造である。i型非晶質シリコン層および低ドーパント濃度のn型非晶質シリコン層は、基板22の裏面におけるキャリアの再結合を抑制するパッシベーション層として機能する。
【0027】
p型半導体層26についても同様に、p型非晶質シリコン層の単層構造であってもよいが、好ましくはi型非晶質シリコン層とp型非晶質シリコン層の複層構造、またはp型非晶質シリコン層よりドーパント濃度が低い非晶質シリコン層とp型非晶質シリコン層の複層構造である。i型非晶質シリコン層および低ドーパント濃度のp型非晶質シリコン層は、基板22の裏面におけるキャリアの再結合を抑制するパッシベーション層として機能する。
【0028】
n型非晶質シリコン層およびp型非晶質シリコン層のドーパントの濃度は、例えば1×1020atoms/cm以上である。一般的に、n型ドーパントにはリン(P)が用いられ、p型ドーパントにはボロン(B)が用いられる。各半導体層の厚みの一例は、1~25nmである。絶縁層27は、例えば、保護層28と同じ組成の層であって、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素等で構成される。各半導体層、絶縁層27は、CVDまたはスパッタリングにより成膜できる。
【0029】
図2および図3に例示するように、太陽電池セル20は、光電変換部21のn型領域23(n型半導体層25)上に形成されたn側電極層30と、p型領域24(p型半導体層26)上に形成されたp側電極層31とを含む。また、n側電極層30上には、n側絶縁層36とn側コンタクト電極38が形成されている。同様に、p側電極層31上には、p側絶縁層37とp側コンタクト電極39が形成されている。n側コンタクト電極38は、n側絶縁層36の開口部を介してn側電極層30に接続され、p側コンタクト電極39は、p側絶縁層37の開口部を介してp側電極層31に接続されている。
【0030】
n側電極層30は、n型領域23からキャリアを収集する電極であって、n型領域23上に形成される。p側電極層31は、p型領域24からキャリアを収集する電極であって、p型領域24上に形成される。n側電極層30とp側電極層31は、第2方向に延びる溝48によって分離され、第1方向に交互に並んでストライプ状に形成されている。溝48は、絶縁層27と重なる位置に形成されることが好ましい。
【0031】
n側電極層30は、n型領域23上に形成される透明導電層32と、透明導電層32上に形成される金属層33とを含む複層構造であることが好ましい。同様に、p側電極層31は、p型領域24上に形成される透明導電層34と、透明導電層34上に形成される金属層35とを含む複層構造であることが好ましい。詳しくは後述するが、n側電極層30とp側電極層31は、例えば、光電変換部21の裏面上の略全域にスパッタリングで電極層(透明導電層と金属層)を成膜した後、その一部をエッチングして溝48を設けることで形成される。
【0032】
透明導電層32,34は、一般的に、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物に、W、Sn、Sb等がドーピングされた透明導電性酸化物(IWO、ITO等)の層である。透明導電層32,34の厚みの一例は、30nm~500nm、好ましくは50nm~200nmである。透明導電層32,34は、例えば、スパッタリングにより形成される。
【0033】
金属層33,35は、例えば、Cu、Ni、Ag等の金属で構成され、Cuを主成分とする単層構造であってもよく、Cu層とNi層との複層構造であってもよい。また、金属層33,35の最表面には、Sn層が形成されていてもよい。金属層33,35の厚みの一例は、50nm~1μm、好ましくは80nm~500nmである。金属層33,35は、例えば、スパッタリングにより形成される。
【0034】
n側絶縁層36は、n側電極層30上に形成され、n側コンタクト電極38が形成された部分を除くn側電極層30上の全域を覆っている。本明細書において、「全域」には実質的に全域と認められるものが含まれる。n側電極層30上の全域を覆うn側絶縁層36が存在することで、隣接するp側電極層31と電気的に接続される配線材50がn側電極層30と接触することを高度に抑制できる。n側絶縁層36には、n側コンタクト電極38が形成される部分に開口部46が形成されており、n側コンタクト電極38は開口部46を介してn側電極層30に接続されている。
【0035】
p側絶縁層37は、p側電極層31上に形成され、p側コンタクト電極39が形成された部分を除くp側電極層31上の全域を覆っている。p側電極層31上の全域を覆うp側絶縁層37が存在することで、隣接するn側電極層30と電気的に接続される配線材50がp側電極層31と接触することをより高度に抑制できる。p側絶縁層37には、p側コンタクト電極39が形成される部分に開口部47が形成されており、p側コンタクト電極39は開口部47を介してp側電極層31に接続されている。
【0036】
金属層33,35がCuを含む場合、Cuイオンが封止材13中に拡散して樹脂の酸化劣化を促進する銅害が問題となり得るが、金属層33,35上の全域を覆う絶縁層を設けることで、銅害による封止材13の劣化を抑制することができる。このため、金属層33,35の全域を覆う絶縁層が配置された構成は、金属層33,35がCuを含む場合により好適である。
【0037】
n側絶縁層36とp側絶縁層37は、第2方向に延びる溝49によって分離され、第1方向に交互に並んでストライプ状に形成されている。詳しくは後述するが、n側絶縁層36とp側絶縁層37は、電極層を分離する溝48を形成する際のマスクとして使用できる。各絶縁層は、印刷等により溝49を有するストライプ状のパターンで形成されてもよく、光電変換部21の裏面上の略全域に連続した絶縁層を成膜した後、一部を除去して溝49を設けることで形成されてもよい。
【0038】
絶縁層は、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機化合物層であってもよく、アクリル樹脂等の樹脂層であってもよい。絶縁層は、例えば、構成材料によって異なり、無機化合物層の場合は30nm~500nm程度、樹脂層の場合は1μm~20μm程度の厚みを有する。絶縁層の一部を除去して溝49を形成する場合、絶縁層はエッチングにより除去されてもよく、COレーザー、IRレーザー等のレーザー光を照射することで除去してもよい。
【0039】
絶縁層として樹脂層を用い、樹脂層にレーザー光を照射して溝49を形成する場合、レーザー光の吸収率が高い樹脂を主成分とする樹脂層を設けてもよい。或いは、電極層と樹脂層の間にレーザー光の吸収率が高い層を設けてもよく、樹脂層中にレーザー光の吸収率が高い添加剤を含有させてもよい。また、絶縁層として無機化合物層を用いた場合は、レーザー光の照射による溝49の加工が容易、耐熱性が高い等の利点が考えられる。
【0040】
n側コンタクト電極38は、配線材50が接続される部分であって、n側絶縁層36よりも太陽電池セル20の裏側に突出している。即ち、n側コンタクト電極38は、n側電極層30上において、n側絶縁層36よりも厚く形成される。n側コンタクト電極38は、太陽電池セル20の背面視において、周りがn側絶縁層36に囲まれていることが好ましい。
【0041】
n側コンタクト電極38は、n型領域23が延びる第2方向に所定の間隔をあけて複数配置されている。n側コンタクト電極38は、例えば、n型領域23の長手方向(第2方向)に沿って、太陽電池セル20の裏面上に配置される配線材50の本数の1/2以上の割合で形成される。また、図3に示す例では、n型領域23の各々にn側コンタクト電極38が同数形成され、第1方向にn側コンタクト電極38が並んでいる。
【0042】
p側コンタクト電極39は、n側コンタクト電極38と同様に、配線材50が接続される部分であって、p側電極層31上でp側絶縁層37よりも厚く形成され、p側絶縁層37よりも太陽電池セル20の裏側に突出している。また、p側コンタクト電極39は、太陽電池セル20の背面視において、周りがp側絶縁層37に囲まれている。本実施形態では、p型領域24がn型領域23よりも幅広に形成されているため、p側コンタクト電極39の幅>n側コンタクト電極38の幅である。
【0043】
p側コンタクト電極39は、p型領域24が延びる第2方向に所定の間隔をあけて複数配置されている。図3に示す例では、配線材50の本数の1/2に相当する数のp側コンタクト電極39が、p型領域24の長手方向(第2方向)に等間隔で形成されている。また、p型領域24の各々にp側コンタクト電極39が同数形成され、第1方向にp側コンタクト電極39が並んでいる。
【0044】
各コンタクト電極は、例えば、同じ高さで形成されている。詳しくは後述するが、コンタクト電極は、開口部が形成された絶縁層上に金属ペーストを印刷して焼成することで設けられる。コンタクト電極を構成する金属ペーストは特に限定されないが、導電性の観点から、好ましくは銀ペーストである。なお、第2方向に間隔をあけてコンタクト電極を配置することで、銀ペーストの使用量を減らすことができ、太陽電池モジュール10の製造コストを削減できる。
【0045】
n側コンタクト電極38とp側コンタクト電極39は、第2方向に沿って千鳥状に配置されている。図3に示す例では、n型領域23の各々に形成されるn側コンタクト電極38と、p型領域24の各々に形成されるp側コンタクト電極39は同数である。n側コンタクト電極38とp側コンタクト電極39の第2方向の間隔は、例えば、一定であって、n側コンタクト電極38同士の第2方向の間隔の約1/2である。即ち、p側コンタクト電極39は、第2方向において、2つのn側コンタクト電極38の中間に配置されている。同様に、n側コンタクト電極38は、第2方向において、2つのp側コンタクト電極39の中間に配置されている。
【0046】
図3に例示するように、配線材50は、1枚の太陽電池セル20の裏面に複数取り付けられる。複数の配線材50の各々は、第1方向に延設され、n側コンタクト電極38およびp側コンタクト電極39の少なくとも一方に接続されている。配線材50は、後述するサブセルを含まない1枚の太陽電池セル20において、n側コンタクト電極38またはp側コンタクト電極39に接続される。配線材50は、例えば、第2方向に所定の間隔をあけて、互いに平行に配置されている。配線材50の間隔はコンタクト電極の間隔に対応し、好ましくは第2方向に等間隔で配線材50が配置される。
【0047】
配線材50は、細線状の金属製部材であって、一般的にインターコネクタと呼ばれる。以下では、特に断らない限り、太陽電池セル20の裏面の第1方向に延設される配線材を配線材50とする。配線材50の断面形状は矩形形状、真円形状のいずれであってもよい。丸材は角材より安価であるが、コンタクト電極との接触面積が小さくなり易い。配線材50は、例えば、アルミニウムを主成分とする金属で構成される。配線材50の幅の一例は、0.3mm~3mmである。図3に示す例では、1つのコンタクト電極の幅が、配線材50の幅よりも大きく形成されている。
【0048】
図4は、隣り合う2つの太陽電池セル20を裏面側から見た斜視図である。図4に示す例では、隣り合う2つの太陽電池セル20のうち、一方の太陽電池セル20(以下、「太陽電池セル20A」とする)のn側コンタクト電極38に接続された配線材50が、セル間に配置されたセル間配線材60に接続されている。また、他方の太陽電池セル20(以下、「太陽電池セル20B」とする)のp側コンタクト電極39に接続された配線材50がセル間配線材60に接続されている。
【0049】
つまり、太陽電池セル20Aのn側電極層30と、太陽電池セル20Bのp側電極層31が、配線材50およびセル間配線材60を介して電気的に接続されている。なお、太陽電池セル20Aのp側コンタクト電極39に接続された配線材50は、太陽電池セル20Bと反対側に配置される太陽電池セル20と電気的に接続され、太陽電池セル20Bのn側コンタクト電極38に接続された配線材50は、太陽電池セル20Aと反対側に配置される太陽電池セル20と電気的に接続される。こうして、複数の太陽電池セル20が直列接続されたストリングが構成される。
【0050】
セル間配線材60は、太陽電池セル20A,20Bの間に形成される隙間に配置され、第2方向に延びて配線材50と直交している。セル間配線材60には、配線材50と同じ部材を用いてもよいが、配線材50との接続性等の観点から、好ましくは配線材50よりも幅広の角材が用いられる。配線材50は、セル間配線材60に対して溶接されてもよく、半田、接着剤等を用いて接続されてもよい。
【0051】
図4に示す例では、太陽電池セル20Aのn側コンタクト電極38と、太陽電池セル20Bのn側コンタクト電極38が、第1方向に並んで配置されている。同様に、太陽電池セル20Aのp側コンタクト電極39と、太陽電池セル20Bのp側コンタクト電極39が、第1方向に並んでいる。つまり、同じ太陽電池セル20が、同じ向きに配置されている。この場合、太陽電池セル20A,20Bの接続に、セル間配線材60が用いられる。
【0052】
図5および図6は、太陽電池セル20に対する配線材50の接続パターンの変形例を示す図である。なお、配線材50の配置は、コンタクト電極の形成パターンに依存するので、コンタクト電極の形成パターンの変形例とも言える。図5および図6では、n側コンタクト電極38に接続される配線材50を「配線材51」、p側コンタクト電極39に接続される配線材50を「配線材52」とする。
【0053】
図5に例示するように、n側コンタクト電極38とp側コンタクト電極39が対になるように近接配置されていてもよい。図5に示す例では、第2方向において、p側コンタクト電極39が2つのn側コンタクト電極38の中間に配置されず、一方のn側コンタクト電極38に近接配置され、他方のn側コンタクト電極38との間隔が大きくなっている。近接配置される一組のn側コンタクト電極38とp側コンタクト電極39は、第1方向に重ならないように形成されることが好ましい。
【0054】
図5に示す例では、n側コンタクト電極38に接続される配線材51と、p側コンタクト電極39に接続される配線材52が、2本一組となるように近接配置されている。この場合、配線材51,52の位置合わせ精度が厳しくなるが、配線材51,52の両方を太陽電池セル20の第2方向の両端部近傍まで配置できるという利点がある。第2方向における一組の配線材51,52同士の間隔は一定であることが好ましい。
【0055】
図6に例示するように、1枚の太陽電池セル20に接続される配線材51,52の本数は異なっていてもよい。図6に示す例では、第2方向両端部にn側コンタクト電極38が第1方向に並んで形成されており、第2方向両端部に配線材51が設けられている。即ち、配線材51が配線材52よりも1本多く設けられている。n側電極層30は、p側電極層31と比べて幅が狭く抵抗が大きいことから、配線材51を1本多く設けて第2方向の両端部に配置することで、n側電極における抵抗損失を抑制できる。
【0056】
図7は、隣り合う太陽電池セル20の接続パターンの変形例を示す図である。図7に示す例では、2つの太陽電池セル20により構成される2つのストリングを図示しているが、太陽電池モジュール10を構成するストリングの数、太陽電池セル20の数は特に限定されない。なお、図7に示す4つの太陽電池セル20A,20B,20C,20Dは、同じセルである。
【0057】
太陽電池モジュール10は、一般的に、バイパスダイオードを内蔵する端子ボックス14を備える。また、ストリング同士を電気的に接続するための渡り配線材61と、端子ボックス14に接続される出力用配線材62とを備える。図7に示す例では、渡り配線材61がストリングの一端側に第2方向に沿って配置され、出力用配線材62がストリングの他端側に第2方向に沿って配置されている。渡り配線材61と出力用配線材62には、セル間配線材60と同様の部材を用いることができる。
【0058】
図7では、セル間を接続する配線材50を「配線材53」、渡り配線材61に接続される配線材50を「配線材54」、出力用配線材62に接続される配線材50を「配線材55」とする。
【0059】
図7に例示するように、隣り合う太陽電池セル20A,20B、および隣り合う太陽電池セル20C,20Dは、配線材53によって直接接続されている。セル間にセル間配線材60は存在せず、例えば、太陽電池セル20Aの裏側から太陽電池セル20Bの裏側にわたって配線材53が延在している。配線材53は、その一端側が太陽電池セル20Aのp側コンタクト電極39に接続され、他端側が太陽電池セル20Bのn側コンタクト電極38に接続されている。この場合、セル間に配線材を配置する隙間を設ける必要がないため、セル間距離を小さくして太陽電池モジュール10の小型化を図ることができる。
【0060】
図7に示す例では、第1方向に隣り合う太陽電池セル20A,20Bの向きが互いに180°異なっている。同様に、太陽電池セル20C,20Dは、向きが180°異なるように配置されている。他方、第2方向に隣り合う太陽電池セル20A,20D、および太陽電池セル20B,20Cは、同じ向きに配置されている。この場合、第1方向に隣り合う太陽電池セル20において、n側コンタクト電極38とp側コンタクト電極39が第1方向に並ぶため、配線材53を用いて第1方向に隣り合う太陽電池セル20のn側電極層30とp側電極層31を接続できる。
【0061】
つまり、第1方向に隣り合う太陽電池セル20において、n側コンタクト電極38とp側コンタクト電極39が第1方向に並ぶように太陽電池セル20を配置することで、1本の真っ直ぐな配線材53を用いて2枚の太陽電池セル20を直接接続できる。なお、図7に示す例では、太陽電池セル20Aのn側コンタクト電極38と出力用配線材62が配線材55で接続され、太陽電池セル20Bのp側コンタクト電極39と渡り配線材61が配線材54で接続されている。また、太陽電池セル20Cのn側コンタクト電極38と渡り配線材61が配線材54で接続され、太陽電池セル20Dのp側コンタクト電極39と出力用配線材62が配線材55で接続されている。
【0062】
図8は、複数のサブセル41,42に分割された太陽電池セル20と、サブセル41,42に対する配線材50の接続パターンの一例を示す図である。図8では、1枚の太陽電池セル20においてサブセル間を接続する配線材50を「配線材56」、1枚の太陽電池セル20において1つのサブセルのみに接続される配線材50を「配線材57」とする。
【0063】
図8に例示するように、太陽電池セル20には、少なくとも1つの割断部40が存在し、第1方向に並ぶ複数のサブセル41,42が含まれていてもよい。サブセル41,42は1枚の太陽電池セル20を分割して作製され、隣り合うサブセルの境界部にはセルが切断された割断部40が存在する。1枚の太陽電池セル20を複数のサブセルに分割することで、生産性を良好に維持しつつ、出力特性をさらに向上させることができる。
【0064】
太陽電池セル20には、割断部40を隔てて第1方向に隣り合うサブセル41,42が含まれている。サブセル41,42は、例えば、実質的に同じサイズに分割され、半導体層の形成パターンが互いに同じである。なお、太陽電池セル20は、3つ以上のサブセルに分割されてもよく、各サブセルのサイズ等が互いに異なっていてもよい。割断部40は第2方向に沿って直線状に形成され、サブセル41,42は割断部40で完全に分離されている。
【0065】
割断部40は、太陽電池セル20の所定の位置にレーザー光を照射することにより形成できる。レーザーには、例えば、YAGレーザー等の固体レーザーを用いることができる。レーザー光の照射条件の一例は、第2高調波の波長が400nm以上、周波数が1~50kHz、集光径20~200μm、出力1~25Wである。この場合、レーザー光の集光径と同程度の幅を有する割断部40を形成できる。なお、回転刃を用いたダイシング処理、エッチング処理等により、太陽電池セル20を分割することも可能である。
【0066】
図8に示す例では、サブセル41,42のp型領域24が、割断部40の両側に形成されている。つまり、割断部40を挟んで、サブセル41のp型領域24と、サブセル42のp型領域24が第1方向に隣り合って配置されている。このような構成は、例えば、太陽電池セル20のp型領域24の幅方向中央部に第2方向に沿ってレーザー光を照射することにより作製できる。分離されるp型領域24は、他のp型領域24よりも幅広に形成されていてもよい。
【0067】
サブセル41,42には、第1方向の両端部にp型領域24が形成されている。n型領域23とp型領域24は第1方向に交互にストライプ状に形成されるが、サブセル41,41において、p型領域24はn型領域23よりも1つ多くなっている。即ち、太陽電池セル20の全体では、p型領域24がn型領域23よりも2つ多く形成されている。また、各p型領域24は、各n型領域23よりも幅広に形成されている。このように、太陽電池セル20を複数のサブセル41,42に分割して、p型領域24をn型領域23よりも多く大面積に形成することで、出力特性がさらに向上する。
【0068】
図8に示す例では、n側コンタクト電極38とp側コンタクト電極39が、サブセル41,42において第1方向に並ぶように形成されている。具体的には、サブセル41の第1方向に並ぶn側コンタクト電極38の列が、サブセル42の第1方向に並ぶp側コンタクト電極39の列と第1方向に重なっている。分割前の太陽電池セル20は、割断部40が形成される部分を挟んで一方側と他方側とで、コンタクト電極の配置が異なっていることが好ましい。
【0069】
この場合、1本の真っ直ぐな配線材56を用いて、サブセル41のn側電極層30と、サブセル42のp側電極層31を接続できる。なお、配線材57は、サブセル41,42に分割された太陽電池セル20において、サブセル41のp側コンタクト電極39のみ、またはサブセル42のn側コンタクト電極38のみに接続されている。
【0070】
図9は、サブセル41,42に分割された太陽電池セル20同士の接続パターンの一例を示す図である。図9に例示するように、配線材57は、第1方向に隣り合う2枚の太陽電池セル20の間で、サブセル41のp側コンタクト電極39と、サブセル42のn側コンタクト電極38とに接続されている。配線材56については、上述の通り、1枚の太陽電池セル20において、サブセル41のn側コンタクト電極38と、サブセル42のp側コンタクト電極39とにそれぞれ接続されている。
【0071】
図9に示す例では、全ての太陽電池セル20に同じセルが用いられ、いずれも同じ向きに配置されている。サブセル41,42においてコンタクト電極の配置が180°異なっているため、同じセルを同じ方向に向けて配置しても、1本の真っ直ぐな配線材57を用いて第1方向に隣り合う太陽電池セル20同士を接続できる。なお、図7に例示する形態と同様に、配線材50として、渡り配線材61に接続される配線材54、および出力用配線材62に接続される配線材55が設けられている。
【0072】
また、図10に例示するように、太陽電池セル20は、n型領域23とp型領域24の形成パターンが互いに異なるサブセル41,43を含んでいてもよい。サブセル43は、サブセル41と異なり、第1方向の両端部にn型領域23を有する。そして、図10に示す例では、太陽電池セル20の全体において、n型領域23とp型領域24の数が同じである。このような構成は、例えば、太陽電池セル20の絶縁層27が形成された部分にレーザー光を照射して割断部40を形成することにより作製できる。
【0073】
この場合も、サブセル41,43において、コンタクト電極の配置パターンをサブセル41,42の場合と同じにすれば、配線材56を用いて1枚の太陽電池セル20を構成するサブセル41,42を接続できる。また、配線材57を用いて第1方向に隣り合う太陽電池セル20同士を接続できる。
【0074】
図11図13を参照しながら、太陽電池セル20に対する配線材50の接続構造について説明する。図11図13では、n側コンタクト電極38と配線材50の接続構造を図示しているが、p側コンタクト電極39についても同様の構造を適用できる。
【0075】
図11に例示するように、配線材50は、n側コンタクト電極38に対して半田70を用いて固定されていてもよい。半田70の組成は特に限定されず、従来公知の材料を適用できる。n側コンタクト電極38と配線材50の間、およびn側コンタクト電極38の周囲に存在する半田70によって、配線材50が太陽電池セル20の裏面に固定され、n側コンタクト電極38と配線材50が電気的に接続される。
【0076】
半田70を用いる場合、溶融した半田70がn側絶縁層36上から食み出して溝48に流れ込み、p側電極層31に接触することが懸念される。半田70が溝48に流れ込むと、n側電極層30とp側電極層31が半田70を介して電気的に接続され短絡が発生する場合がある。ゆえに、半田70が溝48に流れ込まないように、例えば、半田70の使用量等が調整される。なお、n側コンタクト電極38の近傍の溝48を覆うように、樹脂層(後述の図15参照)を設けて半田70の溝48への流れ込みを防止してもよい。
【0077】
図12に例示するように、配線材50は、接着剤71を用いて太陽電池セル20の裏面に固定されていてもよい。図12に示す例では、n側コンタクト電極38に接続される配線材50が、p側絶縁層37上に塗布された接着剤71によって太陽電池セル20の裏面に固定されている。接着剤71には、従来公知の樹脂接着剤を用いることができる。1本の配線材50は、例えば、複数のp側絶縁層37に接着剤71を用いて固定される。
【0078】
他方、n側コンタクト電極38と配線材50の間に接着剤71は存在せず、n側コンタクト電極38と配線材50は直接接触している。なお、コンタクト電極と配線材50の電気的接続を損なわない範囲で、コンタクト電極と配線材50の間に接着剤71が設けられていてもよい。或いは、後述の図15等に示す形態と同様に、コンタクト電極を半田で構成してもよい。
【0079】
図13に例示するように、太陽電池セル20の裏面と対向する配線材50の一方の面に貼着した接着シート72を用いて、n側コンタクト電極38と配線材50を接続してもよい。この場合、接着シート72が貼着された配線材50を第1方向に沿って複数のn側コンタクト電極38上に配置し、配線材50をn側コンタクト電極38に押し付けるという簡便な操作により、配線材50を太陽電池セル20の裏面に固定できる。なお、n側コンタクト電極38と配線材50の間に介在する接着シート72の厚みは、電気的接続に支障がない程度とする必要がある。接着シート72には、導電性フィラーを含有するシートを用いてもよい。
【0080】
図14および図15は、n側コンタクト電極38およびその近傍を拡大して示す背面図であって、太陽電池セル20に対する配線材50の接続形態の他の一例を示す。図14および図15では、n側コンタクト電極38を図示しているが、p側コンタクト電極39についても同様の構造を適用できる。
【0081】
図14および図15に示す例では、n側絶縁層36の開口部74,75に充填された半田73によってn側コンタクト電極38が構成されている。n側絶縁層36には、n側電極層30を露出させる開口部74,75が形成されている。そして、開口部74,75に充填されてn側絶縁層36よりもモジュールの裏側に膨出する半田73が、n側電極層30と配線材50を電気的に接続するn側コンタクト電極38となる。
【0082】
図14に示す例では、n側絶縁層36に形成された背面視矩形形状の開口部74からn側電極層30が露出している。開口部74は、配線材50の幅よりも第2方向に長く形成されている。配線材50の接続時において溶融した半田73が溝48に流れ込んでp側電極層31と接触することが懸念されるが、開口部74を第2方向に長く形成すれば、余分な半田73を第2方向に逃がすことができ、溝48への半田73の流れ込みをより確実に抑制できる。開口部74の第2方向の長さは、例えば、配線材50の幅の1.5倍~3倍である。配線材50は、幅方向中央部が開口部74の第2方向中央部と重なるように、n側コンタクト電極38上に配置されることが好ましい。
【0083】
図15に例示する形態は、開口部75の第2方向の長さが、配線材50の幅よりも小さい点で、図14に例示する形態と異なる。図15に示す例では、半田73により構成されるn側コンタクト電極38と第1方向に並ぶように、溝48を覆う樹脂層76が形成されている。樹脂層76は、開口部75よりも第2方向に長く形成され、開口部75の第2方向の両端よりも第2方向両側に長く延びている。また、樹脂層76は、配線材50の幅よりも第2方向に長く形成されている。この場合、樹脂層76によって溶融した半田73が堰き止められるので、溝48への半田73の流れ込みをより確実に抑制できる。なお、樹脂層76の代わりに無機化合物層を形成してもよい。
【0084】
図16および図17は、n側コンタクト電極38およびその近傍の断面構造を示す図である。図16および図17では、n側コンタクト電極38を図示しているが、p側コンタクト電極39についても同様の構造を適用できる。
【0085】
図16に例示するように、n側コンタクト電極38は、n側絶縁層36上に形成されたコンタクト部44と、コンタクト部44とn側電極層30を接続する導通部45とを含む。n側絶縁層36には、上述の通り、n側電極層30を露出させる開口部46が形成されている。n側コンタクト電極38は、例えば、n側絶縁層36の開口部46が形成された部分に銀ペースト等の金属ペーストを印刷することにより形成できる。或いは、開口部46に半田73を充填してn側コンタクト電極38としてもよい。
【0086】
コンタクト部44は、配線材50が接続される部分であって、n側絶縁層36よりもモジュールの裏側に膨出している。導通部45は、開口部46に充填された部分である。例えば、開口部46は背面視矩形形状に形成され、導通部45は開口部46の全体を埋めてブロック状に形成される。図16に示す例では、コンタクト部44の中央部を含む広範囲に導通部45が接続されている。即ち、導通部45は、n側電極層30上においてコンタクト部44と同程度の面積で形成されている。
【0087】
図17に例示するように、導通部45は、1つのコンタクト部44に対して複数形成されていてもよい。導通部45は、第2方向に離れた2箇所に形成され、コンタクト部44の第2方向両端部とn側電極層30を接続している。この場合、コンタクト電極と配線材50の良好な接続性を確保しつつ、銀ペーストの使用量を削減できる。n側絶縁層36には、第2方向に離された2箇所に絶縁層を厚み方向に貫通する小さな開口部77が形成されている。図17に示すn側コンタクト電極38は、例えば、2つの開口部77にわたってn側絶縁層36上に銀ペーストを印刷することにより形成される。
【0088】
図17に示す例では、複数の導通部45の第2方向長さの合計が、コンタクト部44の第2方向長さの半分以下であり、抵抗損失が問題とならない範囲で短いことが好ましい。例えば、コンタクト部44の第2方向長さは配線材50の幅より長く、複数の導通部45の第2方向長さの合計は配線材50の幅より短い。同様に、導通部45の第1方向長さの合計は、コンタクト部44の第1方向長さより短いことが好ましい。
【0089】
図16に示す例では、n側コンタクト電極38の第2方向中央部に配線材50が配置されているが、図17に示すように、n側コンタクト電極38の第2方向一方側に偏って配線材50が配置されていてもよい。
【0090】
太陽電池モジュール10を構成する複数の太陽電池セル20の一部が破損した場合、配線材50を切断して破損したセルを取り換えることが想定されるが、この場合、一部のコンタクト電極上には2本の配線材50が取り付けられることになる。図17に示すように、配線材50をn側コンタクト電極38の一方側に偏って配置しておけば、追加の配線材50を既設の配線材50と重ならないように、n側コンタクト電極38の他方側に配置することが容易である。換言すると、図17に示すコンタクト部44は、2本の配線材50を第2方向に並べて配置可能な長さで形成されている。
【0091】
図18は、太陽電池モジュール10の製造方法の一例を説明するための図である。なお、基板22の表面テクスチャの形成、半導体層の成膜、エッチング等には、従来公知の方法を適用できる。
【0092】
図18に例示するように、太陽電池セル20は、単結晶シリコンウェーハ等の基板22の一方の主面に、n型半導体層25とp型半導体層26を成膜した後、電極層、絶縁層、およびコンタクト電極を形成することにより製造される。n型半導体層25とp型半導体層26は、基板22の一方の主面の第1方向に交互に形成され、ストライプ状にn型領域23とp型領域24を形成する。なお、帯状に形成されるp型半導体層26の幅方向両端部は、絶縁層27を介してn型半導体層25の幅方向両端部上にオーバーラップし、基板22の一方の主面には2種類の半導体層が隙間なく形成される。
【0093】
n型半導体層25とp型半導体層26が成膜された基板22の一方の主面が太陽電池セル20(光電変換部21)の裏面となる。また、光電変換部21の受光面の略全域には、パッシベーション層29と保護層28がこの順で成膜される。光電変換部21の裏面には、n型半導体層25とp型半導体層26を覆う電極層80が形成される。電極層80は、透明導電層と金属層を含む複層構造であることが好ましく、スパッタリング等の従来公知の方法で成膜できる。電極層80は、n型半導体層25とp型半導体層26の全体を覆って光電変換部21の裏面の略全域に成膜される。
【0094】
次に、溝48が形成される部分を除く電極層80の全体を覆うように、n側絶縁層36とp側絶縁層37を成膜する。即ち、n側絶縁層36とp側絶縁層37を分離する溝49が予め形成されたパターンで絶縁層を成膜してもよい。或いは、電極層80の全域を覆う絶縁層を成膜した後、上述のように、レーザー光を絶縁層の一部に照射して溝49を形成し、絶縁層をn側絶縁層36とp側絶縁層37に分離してもよい。続いて、n側絶縁層36とp側絶縁層37をマスクとして、電極層80の溝49から露出した部分をエッチングにより除去して溝48を形成し、電極層80をn側電極層30とp側電極層31に分離する。
【0095】
次に、絶縁層を貫通する開口部46,47をそれぞれ形成する。開口部46,47は、第2方向に所定の間隔をあけて複数形成される。n側絶縁層36の各々に形成される開口部46が第1方向に並び、p側絶縁層37の各々に形成される開口部47も第1方向に並ぶように、開口部46,47が形成される。なお、開口部46,47は、第1方向に重ならないように形成される。
【0096】
続いて、各絶縁層上の開口部46,47が形成された部分に、銀ペースト等の金属ペーストを印刷して焼成することにより、n側コンタクト電極38とp側コンタクト電極39を形成する。こうして、太陽電池セル20が製造される。太陽電池セル20は、例えば、第2方向に沿ってレーザー光を照射することにより、複数のサブセルに分割することもできる。各コンタクト電極に配線材50を取り付け、複数の太陽電池セル20を電気的に接続することでストリングが作製される。封止材シートを介してストリングを2枚の保護部材の間に挟んでラミネートすることにより、太陽電池モジュール10が製造される。
【0097】
図19図21は、2種類の半導体層の形成パターンの変形例と、各変形例におけるセル間接続の一例を示す図である。上述の実施形態では、基板22の裏面の第2方向に沿って、n型領域23とp型領域24がストライプ状に形成されていたが、図19図21に例示するように、光電変換部21の裏面上には、第1方向に直交する第2方向の両端部の少なくとも一方に、第1方向に延びる第2のp型領域78が形成されていてもよい。
【0098】
図19に示す例では、基板22の裏面の第2方向の両端部に、第1方向に延びる2本のp型領域78が形成されている。p型領域78は、第1方向両端部に配置されるp型領域24とつながっている。そして、基板22の裏面には、周縁部に沿ってp型領域が環状に形成されている。また、p型領域24の全てがp型領域78とつながり、p型領域が1つの連続した領域として形成されていてもよい。他方、n型領域23は、p型領域によって複数に分離されている。
【0099】
図19に示す例では、第1方向に隣り合う太陽電池セル20A,20Bにおいて、複数のn側コンタクト電極38同士、および複数のp側コンタクト電極39同士が、それぞれ第1方向に並んでいる。このため、太陽電池セル20A,20Bの間には、セル間配線材60が配置されている。セル間配線材60には、太陽電池セル20Aのp側コンタクト電極39に接続された配線材50と、太陽電池セル20Bのn側コンタクト電極38に接続された配線材50がそれぞれ接続されている。なお、p型領域78上には、第1方向に並ぶ複数のp側コンタクト電極39が形成されている。
【0100】
図20に例示する形態は、太陽電池セル20A,20Bの第2方向一端部のみに第2のp型領域78が形成されている点で、図19に例示する形態と異なる。太陽電池セル20A,20Bにおいて、各p型領域78は第1方向に並んで形成されている。また、各p型領域24はp型領域78とつながり、p型領域は全体として櫛歯状に形成されている。この場合も、図19に例示する形態と同様のセル間接続形態を有する。
【0101】
図21に例示する形態は、太陽電池セル20A,20Bにおいて、第2方向の反対側に位置するように第2のp型領域78が形成されている点で、図20に例示する形態と異なる。太陽電池セル20Bには、第2方向一端部のみにp型領域78が形成され、太陽電池セル20Aには、第2方向他端部のみにp型領域78が形成されている。この場合、太陽電池セル20A,20Bには同じセルを用いることができ、各セルの向きが180°異なるようにセルを配置すればよい。
【0102】
図21に示す例では、第1方向に隣り合う太陽電池セル20A,20Bにおいて、n側コンタクト電極38とp側コンタクト電極39が第1方向に並んでいる。このため、セル間配線材60を使用することなく、1本の真っ直ぐな配線材50を用いて太陽電池セル20A,20Bを接続することができる。
【0103】
図22図24は、コンタクト電極の変形例を示す図である。図22の紙面左側の断面図は、背面図の丸で囲んだ部分の断面を示す。また、図23では、n側コンタクト電極38を図示しているが、p側コンタクト電極39についても同様の構造を適用できる。
【0104】
図22に示す例では、n型領域23の各々の長手方向に沿って、配線材1本当り2つ以上の割合でn側コンタクト電極38が形成されている点で、上述の実施形態と異なる。同様に、p側コンタクト電極39は、p型領域24の各々の長手方向に沿って、配線材1本当り2つ以上の割合で形成されている。図22に示す例では、配線材1本当り4つのコンタクト電極が形成されている。この場合、各半導体領域の長手方向に沿って形成されるコンタクト電極の数は、太陽電池セル20の裏面上に配置される配線材50の本数の2倍となる。
【0105】
配線材50は第1方向に沿って配置されるが、図22に示すように、第1方向からずれて配置されることも想定される。このような場合に配線材50とコンタクト電極の接続を確保するためには、例えば、コンタクト電極を第2方向に長く形成する必要がある。しかし、コンタクト電極を長くすると銀ペーストの使用量が増加するという問題がある。そこで、図22に例示するように、配線材50の本数よりも多い複数のコンタクト電極を第2方向に分散配置することが好ましい。この場合、銀ペーストの使用量を抑えつつ、配線材50とコンタクト電極の接続をより確実に確保することができる。
【0106】
図22に示す例では、複数のn側コンタクト電極38が、配線材1本当り4つずつ、各n型領域23の長手方向に並んで直線状に配置されている。一組のn側コンタクト電極38(図22に示す例では4つ)において、各電極の第2方向の間隔は、配線材50の幅と同じか、より小さいことが好ましい。この場合、配線材50とコンタクト電極の接続をより確実に確保できる。また、銀ペーストの使用量抑制の観点から、各n側コンタクト電極38の第2方向長さは、配線材50の幅より短いことが好ましい。
【0107】
一組のn側コンタクト電極38において、各電極の幅および間隔と、配線材50の幅との関係は、例えば、下記の条件を満たす。
電極幅×2+電極間隔>配線材幅>電極幅
この場合、配線材50をセルに圧着する際に、配線材50と絶縁層の接触が抑制され、圧着時の熱の影響による絶縁破壊を防ぐことができる。
【0108】
p側コンタクト電極39についても同様に、一組の電極群において、各電極の第2方向の間隔は配線材50の幅と同じか、より小さく、各電極の第2方向長さは配線材50の幅より短いことが好ましい。また、コンタクト電極は、先端側に向かって先細ったテーパー形状を有していてもよい。例えば、配線材50が丸材であれば、p側コンタクト電極39の先端部をテーパー状に形成することで、配線材50との接触面積を大きくすることができる。
【0109】
図23に例示するように、配線材50の各々に対応して複数形成される一組のn側コンタクト電極38は、高さが互いに異なっていてもよい。配線材50が丸材である場合、一組のn側コンタクト電極38のうち、第2方向両端部に位置する電極を高く形成し、第2方向中央部に位置する電極を低く形成してもよい。この場合、配線材50の表面に沿って複数のn側コンタクト電極38が接触し易くなり、配線材50と電極の接触面積を拡大できる。図23に示す例では、一組の電極群において、第2方向両端部から中央部に向かって次第に電極の高さが低くなっている。なお、配線材50の幅と比較して、各電極の第2方向長さは短く、各電極の第2方向の間隔は小さい。
【0110】
図24に例示するように、複数のn側コンタクト電極38は、n型領域23の各々に沿って、第1方向の一端側と他端側に交互に形成されていてもよい。つまり、一組のn側コンタクト電極38において、各電極は、第2方向一方側から他方側に向かって、n型領域23(n側電極30)の第1方向一端側、他端側、一端側、他端側の順で千鳥状に形成されている。この場合、配線材50がずれて配置されても、配線材50とコンタクト電極の接続をより確実に確保できる。また、配線材50をセルに圧着する際の圧力を分散させることができる。
【0111】
図24に示す例では、p側コンタクト電極39についても同様に、p型領域24の各々に沿って、第1方向の一端側と他端側に交互に形成されている。p型領域24の幅>n型領域23の幅であるため、千鳥状に形成されるコンタクト電極の第1方向の間隔は、p側コンタクト電極39>n型コンタクト電極38とすることができる。
【0112】
以上のように、上述の構成を備えた太陽電池モジュール10によれば、複数の配線材50が、ストライプ状に形成された半導体領域上のコンタクト電極に接続されるので、集電効率が高く発電された電気を効率良く取り出すことが可能である。また、発電に寄与しない太陽電池セル20の無効領域を減らすことができる。このため、太陽電池モジュール10は、優れた出力特性を有する。また、電極層上の全域が絶縁層により覆われているため、短絡の発生をより確実に抑制できると共に、電極層にCuが含まれる場合は、Cuイオンの封止材13中への拡散による銅害の発生を抑制できる。
【0113】
さらに、隣り合う太陽電池セル20A,20Bにおいて、太陽電池セル20Aのn型コンタクト電極38と、太陽電池セル20Bのp型コンタクト電極39を第1方向に並べて配置することにより、セル間配線材60を用いることなく太陽電池セル20A,20Bを接続できる。この場合、セル間距離を小さくできるので、例えば、太陽電池モジュール10の小型化を図ることができる。また、複数のサブセルに分割された太陽電池セル20を用いることで、出力特性をさらに向上させることができる。
【0114】
なお、上述の実施形態は本開示の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、配線材1本に対して複数のコンタクト電極を分散配置した構成等は、n側、p側の両方のコンタクト電極に適用されるものとして説明したが、いずれか一方のみに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0115】
10 太陽電池モジュール、11 第1保護部材、12 第2保護部材、13 封止材、14 端子ボックス、20 太陽電池セル、21 光電変換部、22 基板、23 n型領域、24,78 p型領域、25 n型半導体層、26 p型半導体層、27 絶縁層、28 保護層、29 パッシベーション層、30 n側電極層、31 p側電極層、32,34 透明導電層、33,35 金属層、36 n側絶縁層、37 p側絶縁層、38 n側コンタクト電極、39 p側コンタクト電極、40 割断部、41,42,43 サブセル、44 コンタクト部、45 導通部、46,47 開口部、48,49 溝、50,51,52,53,54,55,56,57 配線材、60 セル間配線材、61 渡り配線材、62 出力用配線材、70,73 半田、71 接着剤、72 接着シート、74,75,77 開口部、76 樹脂層、80 電極層
図1
図2
図3
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