(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】デマンドレスポンス制御システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20240501BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H02J3/14 130
H02J13/00 311T
(21)【出願番号】P 2020113795
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 瑞
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-213251(JP,A)
【文献】国際公開第2016/186081(WO,A1)
【文献】特開2014-093898(JP,A)
【文献】特開2016-081074(JP,A)
【文献】特開2016-163457(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0110305(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/14
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信網を介して上位装置から通知された節電要請に応じて、予め設定されている需要家の機器に対する消費電力量の調整を、前記通信網を介して前記需要家に指令することにより、デマンド調整を実施するように構成された制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記上位装置から通知された節電要請に応じて、前記需要家のそれぞれから、当該需要家の機器の発停状況と当該需要家の機器の制御パラメータとを取得するように構成された情報取得部と、
前記情報取得部で取得した前記発停状況および前記制御パラメータに基づいて、前記需要家のそれぞれの機器のうちから、消費電力調整の対象となる機器を選定するように構成された機器選定部と、
前記機器選定部で選定された機器に対して消費電力調整を指令するように構成された機器指令部とを備える
ことを特徴するデマンドレスポンス制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載のデマンドレスポンス制御システムにおいて、
前記機器選定部は、前記情報取得部で取得した前記発停状況および前記制御パラメータに基づいて、前記需要家ごとに削減可能できる電力量を示す削減可能量を計算し、得られた削減可能量に基づいて、消費電力調整の対象となる機器を選定することを特徴するデマンドレスポンス制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載のデマンドレスポンス制御システムにおいて、
前記機器選定部は、前記需要家のそれぞれについて、当該需要家の機器のうち、発停制御を指令する対象となる機器ごとに、当該機器を停止する停止制御により得られる削減可能量を計算することを特徴するデマンドレスポンス制御システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のデマンドレスポンス制御システムにおいて、
前記機器選定部は、前記需要家のそれぞれについて、当該需要家の機器のうち、制御パラメータの調整制御を指令する対象となる機器ごとに、制御パラメータを予め設定されている運用値から緩和する緩和制御により得られる削減可能量を計算することを特徴するデマンドレスポンス制御システム。
【請求項5】
通信網を介して上位装置から通知された節電要請に応じて、予め設定されている需要家の機器に対する消費電力量の調整を、前記通信網を介して前記需要家に指令することにより、デマンド調整を実施するように構成された制御装置とを備えるデマンドレスポンス制御システムで用いられるデマンドレスポンス制御方法であって、
前記制御装置が、前記上位装置から通知された節電要請に応じて、前記需要家のそれぞれから、当該需要家の機器の発停状況と当該需要家の機器の制御パラメータとを取得するように構成された情報取得ステップと、
前記制御装置が、前記情報取得ステップで取得した前記発停状況および前記制御パラメータに基づいて、前記需要家のそれぞれの機器のうちから、消費電力調整の対象となる機器を選定するように構成された機器選定ステップと、
前記制御装置が、前記機器選定ステップで選定された機器に対して消費電力調整を指令するように構成された機器指令ステップと
を備えることを特徴するデマンドレスポンス制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載のデマンドレスポンス制御方法において、
前記機器選定ステップは、前記情報取得ステップで取得した前記発停状況および前記制御パラメータに基づいて、前記需要家ごとに削減可能できる電力量を示す削減可能量を計算し、得られた削減可能量に基づいて、消費電力調整の対象となる機器を選定するステップを含むことを特徴するデマンドレスポンス制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載のデマンドレスポンス制御方法において、
前記機器選定ステップは、前記需要家のそれぞれについて、当該需要家の機器のうち、発停制御を指令する対象となる機器ごとに、当該機器を停止する停止制御により得られる削減可能量を計算するステップを含むことを特徴するデマンドレスポンス制御方法。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載のデマンドレスポンス制御方法において、
前記機器選定ステップは、前記需要家のそれぞれについて、当該需要家の機器のうち、制御パラメータの調整制御を指令する対象となる機器ごとに、制御パラメータを予め設定されている運用値から緩和する緩和制御により得られる削減可能量を計算するステップを含むことを特徴するデマンドレスポンス制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給者からの要請に応じて需要家での電力消費を制御するためのデマンドレスポンス制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントやビル建物などの大規模施設を有する需要家において、電力を消費する設備の稼働が集中する等の理由で、消費電力量が一時的に上昇して、電力供給が逼迫した状況になると、電力会社などの電力供給者からの電力供給量が不足する事態となる。従来、このような事態を避けるために、電力供給者から、消費電力量の調整を求めるデマンド制御の要請、すなわち節電要請を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
【0003】
一般には、電力供給者からの節電要請に応じて需要家が電力の使用を抑制するよう電力消費パターンを変化させることを、デマンドレスポンス(以下、DR:Demand Responseという)という。また、電力供給者からの節電要請に基づいて、需要家の電力需要を束ねて効果的にDRを実施することにより、エネルギーマネジメントサービスを提供する事業者をアグリゲータという。なお、実際にDR制御を行うコンピュータシステム、すなわちデマンドレスポンス制御システム(以下、DR制御システムという)を、アグリゲータと呼ぶこともある。
【0004】
DRの種類としては、下げDRと上げDRがある。下げDRは、いわゆる「ネガワット取引」として、アグリゲータとの事前の契約に基づき需要抑制の指令に従い節電を行う、インセンティブ型のDRとして制度化されている(例えば、非特許文献1など参照)。また、上げDRはまだ制度化されてはいないが、下げDRと同様の契約・取引構造で、需要創出の指令に従い消費電力を増やすインセンティブ型のDRである。
【0005】
いずれのDRにおいても、アグリゲータ・需要家(企業・家庭など)両者にとって、DRに参加することのメリットは、インセンティブと環境価値を得ることの2つである。インセンティブとは、電力供給者より受け取るDRに対する対価である。環境価値とは、DRを実施することにより、温室効果ガスを排出しないことである。アグリゲータは、電力供給者からのデマンド調整要請に応じて、需要家のうちからDR発動対象を選定して、消費電力量の調整を指令することにより、需要家全体における消費電力の削減あるいは増大を実施する。これにより、アグリゲータは、電力供給者からインセンティブを受け取ることができ、需要家の環境価値を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】「ディマンドリスポンス|建物のエネルギーマネジメント」、アズビル株式会社、[online]、1995-2020、[2020/05/18検索]、インターネット、<https://www.azbil.com/jp/product/building/energy-management/demand-response/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した従来のDR制御技術では、電力供給者から節電要請を受けた際、需要家は、アグリゲータからの調整指令に応じて、節電対象として予め設定しておいた機器を運転停止することにより、節電を実現する。この際、アグリゲータは、電力供給者からの節電要請で指示された指令値を、各需要家全体の目標電力削減量として、DR制御対象となる対象需要家を選定する。この選定処理をディスパッチという。
【0009】
図6は、従来のデマンドレスポンス制御を示す説明図である。実際の現場では、節電要請を受けた際、既に節電対象の設備が停止されているケースや、その日の運用状況により、DRで停止したものとは異なる別の設備が起動していたというケースがある。
図6の例では、時刻T0以前において、ある需要家に消費電力量の調整対象として設けられている3つの機器#1,#2,#3のうち、機器#1,#3が停止状態にあり、機器#2が起動状態にあるものとする。ここで、時刻T0において、デマンドレスポンス制御システムから機器#1に対して、停止指令を送信した場合、時刻T1に機器#1の電力使用量が想定した節電分まで削減されることになる。
【0010】
この際、需要家の現場で、時刻T0においてデマンドレスポンス制御システムとは別個に、作業員が機器#3を起動した場合、時刻T1に機器#3の電力使用量が増大し、需要家全体の電力使用量は、想定した節電分まで削減されなくなる。このため、このようなケースでは、予定の削減量(節電量)を満たせないという問題点があった。DR制御の精度は、節電要請の指令値(Kw)の前後10%以内とすることを求められており、多すぎても少なすぎても、節電成功とはならない。
【0011】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、電力供給者からの節電要請に応じて、需要家における電力消費を適切に削減できるデマンドレスポンス制御技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために、本発明にかかるデマンドレスポンス制御システムは、通信網を介して上位装置から通知された節電要請に応じて、予め設定されている需要家の機器に対する消費電力量の調整を、前記通信網を介して前記需要家に指令することにより、デマンド調整を実施するように構成された制御装置とを備え、前記制御装置は、前記上位装置から通知された節電要請に応じて、前記需要家のそれぞれから、当該需要家の機器の発停状況と当該需要家の機器の制御パラメータとを取得するように構成された機器情報取得部と、前記情報取得ステップで取得した前記発停状況および前記制御パラメータに基づいて、前記需要家のそれぞれの機器のうちから、消費電力調整の対象となる機器を選定するように構成された機器選定部と、前記機器選定部で選定された機器に対して消費電力調整を指令するように構成された機器指令部とを備えている。
【0013】
また、本発明にかかる上記デマンドレスポンス制御システムの一構成例は、前記機器選定部が、前記情報取得部で取得した前記発停状況および前記制御パラメータに基づいて、前記需要家ごとに削減可能できる電力量を示す削減可能量を計算し、得られた削減可能量に基づいて、消費電力調整の対象となる機器を選定するようにしたものである。
【0014】
また、本発明にかかる上記デマンドレスポンス制御システムの一構成例は、前記機器選定部が、前記需要家のそれぞれについて、当該需要家の機器のうち、発停制御を指令する対象となる機器ごとに、当該機器を停止する停止制御により得られる削減可能量を計算するようにしたものである。
【0015】
また、本発明にかかる上記デマンドレスポンス制御システムの一構成例は、前記機器選定部が、前記需要家のそれぞれについて、当該需要家の機器のうち、制御パラメータの調整制御を指令する対象となる機器ごとに、制御パラメータを予め設定されている運用値から緩和する緩和制御により得られる削減可能量を計算するようにしたものである。
【0016】
また、本発明にかかるデマンドレスポンス制御方法は、通信網を介して上位装置から通知された節電要請に応じて、予め設定されている需要家の機器に対する消費電力量の調整を、前記通信網を介して前記需要家に指令することにより、デマンド調整を実施するように構成された制御装置とを備えるデマンドレスポンス制御システムで用いられるデマンドレスポンス制御方法であって、前記制御装置が、前記上位装置から通知された節電要請に応じて、前記需要家のそれぞれから、当該需要家の機器の発停状況と当該需要家の機器の制御パラメータとを取得するように構成された情報取得ステップと、前記制御装置が、前記情報取得ステップで取得した前記発停状況および前記制御パラメータに基づいて、前記需要家のそれぞれの機器のうちから、消費電力調整の対象となる機器を選定するように構成された機器選定ステップと、前記制御装置が、前記機器選定ステップで選定された機器に対して消費電力調整を指令するように構成された機器指令ステップとを備えている。
【0017】
また、本発明にかかる上記デマンドレスポンス制御方法の一構成例は、前記機器選定ステップが、前記情報取得ステップで取得した前記発停状況および前記制御パラメータに基づいて、前記需要家ごとに削減可能できる電力量を示す削減可能量を計算し、得られた削減可能量に基づいて、消費電力調整の対象となる機器を選定するステップを含んでいる。
【0018】
また、本発明にかかる上記デマンドレスポンス制御方法の一構成例は、前記機器選定ステップが、前記需要家のそれぞれについて、当該需要家の機器のうち、発停制御を指令する対象となる機器ごとに、当該機器を停止する停止制御により得られる削減可能量を計算するステップを含んでいる。
【0019】
また、本発明にかかる上記デマンドレスポンス制御方法の一構成例は、前記機器選定ステップが、前記需要家のそれぞれについて、当該需要家の機器のうち、制御パラメータの調整制御を指令する対象となる機器ごとに、制御パラメータを予め設定されている運用値から緩和する緩和制御により得られる削減可能量を計算するステップを含んでいる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電力供給者からの節電要請に応じて、需要家における電力消費を適切に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、デマンドレスポンス制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、デマンドレスポンス制御方法のフローチャートである。
【
図3】
図3は、発停状況の取得を示す説明図である。
【
図4】
図4は、制御パラメータの取得を示す説明図である。
【
図5】
図5は、削減可能量の画面表示例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、従来のデマンドレスポンス制御を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[デマンドレスポンス制御システム]
まず、
図1を参照して、本実施の形態にかかるデマンドレスポンス制御システム10について説明する。
図1は、デマンドレスポンス制御システムの構成を示すブロック図である。
このデマンドレスポンス制御システム(以下、DR制御システムという)10は、全体として通信網NWに接続された、例えばクラウドシステムなどのサーバ装置からなり、電力会社などの電力供給者の上位装置30、および、プラントやビルなどの大規模施設などの需要家20の需要家管理装置21と、通信網NWを介して通信可能に接続されており、上位装置30からの節電要請に応じて、需要家20に消費電力量の調整を指令することによりデマンド調整を実施するシステムである。
【0023】
[需要家]
需要家20には、消費電力量の調整対象となる機器22が予め設けられている。これらの機器22には、機器22の停止制御または起動制御を指令することにより消費電力を調整する発停制御機器と、機器22の制御目標値となる制御パラメータの調整制御を指令することにより消費電力を調整する調整制御機器とが含まれている。需要家管理装置21は、これら機器22の発停状況や制御パラメータ、さらには消費電力量を監視してDR制御システム10へ通知するとともに、DR制御システム10からの指令に応じて、指示された機器22の発停や制御パラメータ(制御目標値)の調整を制御することにより、需要家20における消費電力を調整するように構成されている。
【0024】
[上位装置]
上位装置30は、サーバ装置からなり、電力供給者における電力供給量と各需要家20での電力需要に基づいて電力供給状況を監視し、電力供給が逼迫した状況になった場合、消費電力量の調整を求めるデマンド制御の要請、すなわち節電要請をDR制御システム10へ通知するように構成されている。上位装置30は、予め設定されているインターバルごとに節電要請の要否を判定し、節電要請が必要であれば通知し、不要であれば通知しない。このため、インターバルが節電要請の最小間隔となる。
【0025】
[システム構成]
次に、
図1を参照して、本実施の形態にかかるDR制御システム10のシステム構成について、詳細に説明する。
図1に示すように、DR制御システム10は、主な構成として、網I/F11、操作入力装置12、画面表示装置13、記憶装置14、および制御装置15を備えている。
【0026】
[網I/F]
網I/F11は、インターネットやLANなどの通信網NWを介して、各需要家20の需要家管理装置21および上位装置30とデータ通信を行うように構成されている。
[操作入力装置]
操作入力装置12は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの操作入力装置からなり、オペレータの操作を検出して制御装置15へ出力するように構成されている。
[画面表示装置]
画面表示装置13は、LCDなどの画面表示装置からなり、制御装置15から出力された、メニュー画面、設定画面、DR制御画面、DR状況画面などの各種画面を画面表示するように構成されている。
【0027】
[記憶装置]
記憶装置14は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、制御装置15で実行するDR制御に用いる各種処理データやプログラム14Pを記憶するように構成されている。
プログラム14Pは、制御装置15のCPUと協働することにより、制御装置15で実行するデマンドレスポンス制御を実行する各種処理部を実現するためのプログラムである。プログラム14Pは、DR制御システム10に接続された外部装置や記録媒体(ともに図示せず)から、予め記憶装置14に格納される。
【0028】
記憶装置14で記憶する主な処理データとして、需要家DB14Aがある。需要家DB14Aには、各需要家20に設けられている機器22ごとに、発停制御機器/調整制御機器の種別や機器22に関する各種の諸元データのほか、各需要家20の需要家管理装置21から通知された、機器22の発停状況、制御パラメータ値、消費電力量、さらには機器22への指令内容が、時系列で保存されている。制御パラメータ値については、制御パラメータということもある。
【0029】
[制御装置]
制御装置15は、CPUとその周辺回路を備え、CPUと記憶装置14のプログラム14Pとを協働させることにより、DR制御を実行する各種処理部を実現するように構成されている。制御装置15は、DR制御として、網I/F11を介して上位装置30から通知された節電要請に応じて、予め設定されている需要家20の機器22対して消費電力量の調整を、網I/F11から通信網NWを介して需要家20に指令することにより、デマンド調整を実施するように構成されている。
【0030】
制御装置15は、主な処理部として、情報取得部16、機器選定部17、および機器指令部18を備えている。
[情報取得部]
情報取得部16は、上位装置30から網I/F11を介して通知された節電要請を取得して記憶装置14に保存し、上位装置30からの節電要請に応じて、各需要家20の需要家管理装置21から網I/F11を介して、機器22の発停状況、制御パラメータ値、消費電力量を取得して、記憶装置14の需要家DB14Aに保存するように構成されている。
【0031】
[機器指令部]
機器指令部18は、機器選定部17で選定された機器に対する消費電力調整を、網I/F11から通信網NWを介して需要家20の需要家管理装置21へ指令することにより、デマンド調整を実施するように構成されている。
【0032】
[機器選定部]
機器選定部17は、情報取得部16で取得した、各需要家20の機器22に関する発停状況および制御パラメータに基づいて、各需要家20の機器22のうちから、消費電力調整の対象となる機器22を選定するように構成されている。
具体的には、機器選定部17は、各需要家20の機器22に関する発停状況および制御パラメータに基づいて、需要家20ごとに削減可能できる電力量を示す削減可能量を計算し、得られた削減可能量に基づいて、消費電力調整の対象となる機器22を選定する。
【0033】
この際、機器選定部17は、需要家20のそれぞれについて、当該需要家20のうち、発停制御を指令する対象となる機器22ごとに、当該機器22を停止する停止制御により得られる削減可能量を計算する。また、機器選定部17は、需要家20のそれぞれについて、当該需要家20の機器22のうち、制御パラメータの調整制御を指令する対象となる機器22ごとに、制御パラメータを予め設定されている運用値から緩和する緩和制御により得られる削減可能量を計算する。なお、機器選定部17における詳細な機器選定手法については、前述した特許文献1などの公知の手法を用いればよい。
【0034】
また、機器選定部17は、調整制御機器の消費電力量を低減させる場合、調整制御機器の制御目標値となる制御パラメータを、予め設定されている運用値から緩和する緩和制御を指令し、調整制御機器の消費電力量を増大させる場合、調整制御機器の制御目標値となる制御パラメータの値を運用値へ復帰する復帰制御を指令する。
【0035】
この際、調整の対象となる制御パラメータや、制御パラメータと削減量との関係については、諸元データとして記憶装置14の需要家DB14Aに保存されているものとする。例えば、機器22が熱源機器や空調機器である場合、制御パラメータとして目標温度を用いればよい。また、例えば冷房運転中である場合、制御パラメータを緩和する緩和制御では目標温度を上げて消費電力を削減し、制御パラメータを復帰する復帰制御では目標温度を下げて消費電力を増大すればよい。
【0036】
[本実施の形態の動作]
次に、
図2を参照して、本実施の形態にかかるDR制御システム10の動作について説明する。
図2は、デマンドレスポンス制御方法のフローチャートである。
DR制御システム10の制御装置15は、上位装置30からの節電要請に応じて、
図2のDR制御処理を実行する。
【0037】
まず、制御装置15は、情報取得部16により、各需要家20の需要家管理装置21から網I/F11を介して、機器22の発停状況を取得して、記憶装置14の需要家DB14Aに保存する(情報取得ステップ)(ステップS100)。
図3は、発停状況の取得を示す説明図である。
図3の例では、DR制御システム10のデマンド制御対象として3つの需要家A,B,Cが設定されている。このうち、需要家A,Bにはそれぞれ2つの機器#1,#2が設けられており、需要家Cには1つの機器#1が設けられている。
【0038】
DR制御システム10は、制御装置15により、各需要家A,B,Cからそれぞれの機器22の発停状況を取得し、需要家DB14Aに保存する。
図3の例では、需要家Aにおいて、機器#1が起動状態(ON)であり、機器#2が停止状態(OFF)である。また、需要家Bにおいて、機器#1,#2がともに起動状態(ON)であり、需要家Cにおいて、機器#1が起動状態(ON)である。
【0039】
また、制御装置15は、情報取得部16により、各需要家20の需要家管理装置21から網I/F11を介して、機器22の制御パラメータ値を取得して、需要家DB14Aに保存する(情報取得ステップ)(ステップS101)。
図4は、制御パラメータの取得を示す説明図である。
図4の例では、
図3と同様にDR制御システム10のデマンド制御対象として3つの需要家A,B,Cが設定されている。このうち、需要家A,Bにはそれぞれ2つの機器#1,#2が設けられており、需要家Cには1つの機器#1が設けられている。ここでは、機器#1,#2が空調機器であるものとする。
【0040】
DR制御システム10は、制御装置15により、各需要家A,B,Cからそれぞれの機器#1,#2の制御パラメータ(設定温度)を取得し、需要家DB14Aに保存する。
図4の例では、需要家Aにおいて、機器#1が27℃であり、機器#2が停止状態(OFF)である。また、需要家Bにおいて、機器#1,#2がそれぞれ28℃および24℃であり、需要家Cにおいて、機器#1が27℃である。
【0041】
次に、制御装置15は、機器選定部17により、需要家DB14Aに保存されている機器22の発停状況および制御パラメータに基づいて、需要家20ごとに削減可能できる電力量を示す削減可能量を計算する(ステップS102)。これにより、各需要家20における最新の削減可能量が得られる。
図5は、削減可能量の画面表示例を示す説明図である。操作入力装置12でのオペレータ操作に応じて、削減可能量を示すリソーストレンド画面が画面表示装置13で画面表示される。
図5の例では、需要家Aに関する各時刻における削減可能量の変化がグラフ表示されている。
【0042】
この後、制御装置15は、機器選定部17により、得られた削減可能量に基づいて、消費電力調整の対象となる機器22を選定する(機器選定ステップ)(ステップS103)。これにより、各需要家20における最新の削減可能量に基づき、消費電力調整の対象となる機器22が選定される。
続いて、制御装置15は、機器指令部18により、機器選定部17で選定された機器22に対する消費電力調整を、網I/F11から通信網NWを介して需要家20の需要家管理装置21へ指令することにより、デマンド調整を実施し(機器指令ステップ)(ステップS104)、一連のデマンドレスポンス制御処理を終了する。
【0043】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、制御装置15において、情報取得部16が、需要家20のそれぞれから、当該需要家20の機器22の発停状況と当該需要家20の機器22の制御パラメータとを取得し、機器選定部17が、情報取得部16で取得した発停状況および制御パラメータに基づいて、需要家20のそれぞれの機器22のうちから、消費電力調整の対象となる機器22を選定するようにしたものである。
より具体的には、機器選定部17が、情報取得部16で取得した発停状況および制御パラメータに基づいて、需要家20ごとに削減可能できる電力量を示す削減可能量を計算し、得られた削減可能量に基づいて、消費電力調整の対象となる機器22を選定するようにしたものである。
【0044】
これにより、実際の現場において、既に節電対象の設備が停止されているケースや、その日の運用状況により、DRで停止したものとは異なる別の設備が起動していたというケースを、各需要家20に設けられた機器22の発停状況および制御パラメータ、さらには削減可能量に基づいて把握することができる。したがって、消費電力調整の対象となる需要家20の機器22を選定することができる。電力供給者からの節電要請に応じて、需要家20における電力消費を適切に削減することが可能となる。
【0045】
また、本実施の形態において、機器選定部17が、需要家20のそれぞれについて、当該需要家20のうち、発停制御を指令する対象となる機器22ごとに、当該機器を停止する停止制御により得られる削減可能量を計算するようにしてもよい。これにより、発停制御機器での削減可能量を正確に計算できる。
【0046】
また、本実施の形態において、機器選定部17が、需要家20のそれぞれについて、当該需要家20のうち、制御パラメータの調整制御を指令する対象となる機器22ごとに、制御パラメータを予め設定されている運用値から緩和する緩和制御により得られる削減可能量を計算するようにしてもよい。これにより、調整制御機器での削減可能量を正確に計算できる。
【0047】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0048】
10…デマンドレスポンス制御システム(DR制御システム)、11…網I/F、12…操作入力装置、13…画面表示装置、14…記憶装置、14A…需要家DB、14P…プログラム、15…制御装置、16…情報取得部、17…機器選定部、18…機器指令部、20…需要家、21…需要家管理装置、22…機器、30…上位装置、NW…通信網。