(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ステアリング把持センサ及びステアリング
(51)【国際特許分類】
B62D 1/04 20060101AFI20240501BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B62D1/04
H01H36/00 J
(21)【出願番号】P 2020129298
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】長田 健志
(72)【発明者】
【氏名】内山 敦勧
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 広樹
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0137050(US,A1)
【文献】国際公開第2019/077788(WO,A1)
【文献】特開2020-073360(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167744(WO,A1)
【文献】特開2015-026220(JP,A)
【文献】中国実用新案第212605400(CN,U)
【文献】特開2019-117182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00, 5/04, 6/00
G01L 1/00,25/00
H01H 36/00
H03K 17/955,17/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングの把持状態を検知するセンサであって、
導電糸と繊維糸とを編み込んだ編み物からなるセンサレイヤを備え
、
前記センサレイヤは、前記ステアリングの環状形状の周方向に沿って設置され、前記ステアリングの環状形状の周方向に沿った任意の部分に応じてセンサ感度を変更して形成される、
ステアリング把持センサ。
【請求項2】
前記センサレイヤと、導電性材料で形成されるシールドレイヤと、前記センサレイヤと前記シールドレイヤとの間に介在する絶縁体層と、を備える三層構造であり、
前記シールドレイヤは前記ステアリングの芯金と前記センサレイヤとの間に配置される、
請求項1に記載のステアリング把持センサ。
【請求項3】
前記シールドレイヤは、前記センサレイヤよりも電流密度が高くなるよう形成される、
請求項2に記載のステアリング把持センサ。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載のステアリング把持センサを備えるステアリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリング把持センサ及びステアリングに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリングの把持状態を検出するセンサが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、環状のステアリングの全周にわたって被覆される、導電性布からなる電極シートによって、運転者の手がステアリングに接触していることを検知する静電容量型のセンサについて開示されている。導電性布は、導電性繊維を縦糸と横糸として織ることにより形成される織物であり、導電性繊維は、例えばポリエチレン等の樹脂繊維の表面に銅やニッケル等の導電性金属をメッキすることにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のステアリング把持センサでは、電極層をステアリングに設置する際に融着材料を溶融させながらステアリング外面に接合させるなど、手間がかかる場合がある。
【0006】
本開示は、ステアリングに簡易に設置可能なステアリング把持センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の一観点に係るステアリング把持センサは、ステアリングの把持状態を検知するセンサであって、導電糸と繊維糸とを編み込んだ編み物からなるセンサレイヤを備え、前記センサレイヤは、前記ステアリングの環状形状の周方向に沿って設置され、前記ステアリングの環状形状の周方向に沿った任意の部分に応じてセンサ感度を変更して形成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ステアリングに簡易に設置可能なステアリング把持センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るステアリング把持センサの積層構造を示す模式図
【
図2】ステアリング把持センサのステアリングへの設置状態の一例を示す図
【
図3】ステアリング把持センサが設置されたステアリングの断面の模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係るステアリング把持センサ1の積層構造を示す模式図である。
図2は、ステアリング把持センサ1のステアリング10への設置状態の一例を示す図である。
図3は、ステアリング把持センサ1が設置されたステアリング10の断面の模式図である。
【0012】
ステアリング10は、車両を操舵するために運転者により操作される操舵装置の一部であり、運転者により把持される環状の部材である。なお、
図2の例ではステアリング10は円環状であるが、例えば楕円形状などでもよい。以下の説明では、ステアリング10の円環形状に沿った方向を「環状方向」と表記する。
【0013】
また、
図3に示すように、ステアリング10の環状方向に直交する断面では、ステアリング10の中心には芯金11が配置されており、最も外側の部分にはゴムや合成皮革などのカバー12で包囲されている。なお、
図3の例ではステアリング10の断面形状は略円形状であるが、楕円など他の形状でもよい。以下の説明では、ステアリング10の断面形状の中心側と外周側とを結ぶ方向を「径方向」と表記し、断面の円形状の外周に沿った方向を「周方向」と表記する。
【0014】
ステアリング把持センサ1は、ステアリング10の把持状態を検知するセンサである。
図1、
図3に示すように、ステアリング把持センサ1は、センサレイヤ2と、シールドレイヤ3と、絶縁体層4とが積層される三層構造である。ステアリング把持センサ1は、
図1に示すように帯形状に形成され、
図2に示すようにセンサの長手方向がステアリング10の環状方向に沿うように、センサはステアリング10に取り付けられる。
【0015】
また、
図1、
図3に示すように、ステアリング把持センサ1の三層構造は、ステアリング10の径方向内側から外側に向けてシールドレイヤ3、絶縁体層4、センサレイヤ2の順で積層配置される。
【0016】
センサレイヤ2は、運転者の手がステアリング10に接触していることを検知する。センサレイヤ2は、銅やニッケル合金などの導電性材料で形成される導電糸9と、ポリプロピレンなどの繊維糸とを編み込んだマット状の編み物からなる。センサレイヤ2は、帯形状の長手方向に沿って導電糸9が延在し、短手方向に繊維糸が延在するように形成される。導電糸9は、短手方向に沿って複数が配列される。
【0017】
センサレイヤ2の帯形状の長手方向の両端部には一対の電極5,6が設けられる。一方の電極5は、コネクタ13を介して電源に接続され、他方の電極6はグランドに接地される。複数の導電糸9は、その両端が一対の電極5,6のそれぞれに電気的に接続されている。
【0018】
電極5,6はたとえば銅板で形成される。電極5,6と導電糸9との接続は半田付けでもよいし、導電性接着剤による接着でもよい。
【0019】
本実施形態のステアリング把持センサ1は、静電容量型センサであり、センサレイヤ2を静電容量センサの静電容量を構成する一方の電極として機能させ、運転者の手を他方の電極として機能させる。運転者の手がステアリング10を把持する状態では、運転者の手がセンサレイヤ2に接近するため、把持していない状態と比較してセンサレイヤ2の静電容量が増加する傾向がある。本実施形態では、センサレイヤ2の電極5,6と電気的に接続される車両ECUなどの検出装置を用いて、電極5,6を介してセンサレイヤ2の導電糸9に発生する静電容量の変化を検出することによって、運転者がステアリング10を把持しているか否かを判別できる。例えば、一方の電極5がコネクタ13を介して検出装置に電気的に接続され、他方の電極6が接地される。
【0020】
また、センサレイヤ2は、
図2に示すようにステアリング10に沿って設置された状態において、ステアリング10の部位に応じてセンサ感度を変更して形成されるのが好ましい。これにより、例えば運転者がステアリング10を把持する際に、把持しやすい部分のセンサ感度を強くするなどすれば、把持状態の検知精度を向上できる。センサ感度の変更は、例えば、編み込みパターンを変える、導電糸9の材料を変える、導電糸9の本数を変える、複数の導電糸9の疎密を異ならせる、などの手法が挙げられる。
【0021】
シールドレイヤ3は、センサレイヤ2の導電糸9と同様の銅などの導電性材料からなる導電糸を縦糸及び横糸として編み込んだ編み物からなる。シールドレイヤ3は、ステアリング10の径方向の中心側の芯金11と、外周側のセンサレイヤ2との間に配置される。このようにシールドレイヤ3を配置することにより静電遮蔽が起こり、芯金11で発生した電磁波がセンサレイヤ2に干渉することを抑制できる。
【0022】
シールドレイヤ3は、センサレイヤ2よりも電流密度が高くなるよう形成されるのが好ましい。言い換えると、シールドレイヤ3は、マット状の表面の単位面積当たりに流れる電流が、センサレイヤ2のものより多くなるよう形成されている。このような条件を満たすためには、例えばシールドレイヤ3を構成する導電糸の編み目をセンサレイヤ2より密にすることや、単位面積当たりの導電糸の量を増やすこと、などが挙げられる。このようにシールドレイヤ3の電流密度をセンサレイヤ2より高くすることにより、上述の干渉抑制の効果を促進できる。
【0023】
シールドレイヤ3は、長手方向の両端が一対の電極7、8に電気的に接続されている。シールドレイヤ3は、電極7、8を介してグランドに接地されることによって、静電遮蔽の効果を発揮できる。
【0024】
なお、
図1の例では、センサレイヤ2の一方の電極5と、シールドレイヤ3の一方の電極7とが単一のコネクタ13に接続される構成を例示しているが、配線の態様はこれに限られない。電極5との電極7とは電気的に接続されず、センサレイヤ2とシールドレイヤ3とは個別に動作するものである。
【0025】
絶縁体層4は、センサレイヤ2とシールドレイヤ3との間に介在する。絶縁体層4は例えばウレタンフォームなどの絶縁性材料で形成される。絶縁体層4は、センサレイヤ2とシールドレイヤ3との距離を所定値以上にとるために配置される。
【0026】
ステアリング把持センサ1の各層のセンサレイヤ2と絶縁体層4、シールドレイヤ3と絶縁体層4は、例えば両面テープなどにより互いに接着されて、一体的な積層構造となる。
【0027】
ステアリング把持センサ1は、このような三層構造とされた状態で、
図2、
図3に示すように、ステアリング10の芯金11に巻き付けられる。より詳細には、長手方向がステアリング10の環状方向に沿うように、かつ、一対の電極がステアリング10の下部中央にて対向するように設置される。また、短手方向がステアリング10の径方向に沿うように設置される。その後に、さらに
図3に示すようにセンサ1の外周側にカバー12が巻き付けられることで、ステアリング10に固定された状態で設置される。したがって、従来のセンサのように溶着接合などの工程が不要であり、ステアリング10に簡易に設置可能となる。
【0028】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 ステアリング把持センサ
2 センサレイヤ
3 シールドレイヤ
4 絶縁体層
9 導電糸
10 ステアリング