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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】軸ずれ推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20240501BHJP
   G01S 13/931 20200101ALN20240501BHJP
【FI】
G01S7/40 126
G01S13/931
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020133860
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022030095
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 卓也
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/052744(WO,A1)
【文献】特開2002-228749(JP,A)
【文献】特開2011-064624(JP,A)
【文献】国際公開第00/075687(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されたレーダ装置の軸ずれ角度を推定する軸ずれ推定装置であって、
前記レーダ装置により検出された反射点のそれぞれについて、前記レーダ装置に対する前記反射点の相対速度と、前記レーダ装置の基準として設計上定められた方向を基準とする前記反射点の方位角度と、をあらかじめ設定された測定サイクルごとに取得するように構成された反射点情報取得部(4、S10)と、
前記移動体の速度である移動体速度を、前記測定サイクルごとに取得するように構成された移動体速度取得部(4、S20)と、
前記レーダ装置により検出された前記反射点の中から、所定の抽出条件に基づき、静止物で反射した点であると推測される前記反射点を、静止反射点として抽出するように構成された抽出部(4、S30)と、
前記静止反射点の前記方位角度に折り返しがあるかを判定し、折り返しがあると判定された前記静止反射点の前記方位角度を補正するように構成された折り返し処理部(4、S40)と、
前記静止反射点の前記方位角度と、前記静止反射点の前記相対速度と、前記移動体速度と、を含む方程式であって、前記移動体速度の誤差である速度誤差と、前記軸ずれ角度と、を未知パラメータとした方程式を、前記静止反射点ごとに設けた連立方程式を解くことにより、前記軸ずれ角度を推定するように構成された軸ずれ推定部(4、S50)と、
を備え、
前記抽出条件は、前記反射点の前記相対速度と前記移動体速度との比である観測速度比と、前記反射点が静止物で反射した点である場合に当該反射点の前記方位角度に基づき想定される前記観測速度比である想定速度比と、の間に成立する関係式に基づき定められ、
前記折り返し処理部は、前回までの前記測定サイクルで推定された前記軸ずれ角度に基づき補正された前記方位角度を用いて算出される前記想定速度比である第1想定速度比と、前記方位角度に折り返しがあると仮定した前記第1想定速度比である少なくとも1つの第2想定速度比と、に基づき、前記静止反射点の前記方位角度に折り返しがあるかを前記静止反射点ごとに判定するように構成され、
前記軸ずれ推定部は、前記折り返し処理部により前記方位角度が補正された前記静止反射点については、補正された前記方位角度に基づき前記軸ずれ角度を推定するように構成される、軸ずれ推定装置。
【請求項2】
請求項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記折り返し処理部は、前記静止反射点ごとに、前記第1想定速度比と前記観測速度比との差分の絶対値である第1差分と、前記少なくとも1つの第2想定速度比と前記観測速度比との差分の絶対値である少なくとも1つの第2差分と、を算出し、前記少なくとも1つの第2差分の中に前記第1差分よりも小さい値が1つでもあれば、前記静止反射点の前記方位角度に折り返しがあると判定するように構成される、軸ずれ推定装置。
【請求項3】
請求項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記軸ずれ推定部は、前記第1差分及び前記少なくとも1つの第2差分のすべてが所定の非使用しきい値以上である前記静止反射点を、前記軸ずれ角度の推定に使用しないように構成される、軸ずれ推定装置。
【請求項4】
請求項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記非使用しきい値は、前記静止反射点の前記方位角度の絶対値が大きくなるに伴い小さくなるよう、前記静止反射点ごとに設定されるように構成される、軸ずれ推定装置。
【請求項5】
請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記軸ずれ推定部は、前記折り返し処理部により算出された差分が全体的に大きい傾向にあると判定した場合、前記折り返し処理部により補正されていない前記静止反射点の前記方位角度に基づき前記軸ずれ角度を推定するように構成される、軸ずれ推定装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記軸ずれ推定部は、前記移動体速度取得部により取得された前記移動体速度が所定の移動体しきい値よりも低い場合、前記折り返し処理部により補正されていない前記静止反射点の前記方位角度に基づき前記軸ずれ角度を推定するように構成される、軸ずれ推定装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記第1想定速度比は、前記方位角度を、前回までの前記測定サイクルで推定された前記軸ずれ角度で補正する場合よりも小さい補正量で補正し、補正された前記方位角度を用いて算出される、軸ずれ推定装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記レーダ装置は、垂直方向及び水平方向の少なくとも一方において軸ずれが生じる状態で搭載される、軸ずれ推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ装置の軸ずれ角度を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体に搭載され、あらかじめ設定された測定サイクルごとに照射した照射波の反射波を受信することにより複数の反射点を検出する、レーダ装置が知られている。この種のレーダ装置では、何らかの原因で設置状態が変化することで、レーダ装置の基準方向が設計上定められた移動体の基準方向とずれる状態である軸ずれが生じることがある。軸ずれが生じると、検出誤差が大きくなり、物体の位置等を誤検出するおそれがある。
【0003】
このような軸ずれの角度である軸ずれ角度を推定する技術の一つとして、例えば特許文献1には、静止物で反射した点であると推測される反射点を、静止反射点として抽出し、抽出された静止反射点に基づきレーダ装置の軸ずれ角度を推定する技術が開示されている。静止反射点は、静止物で反射した点の相対速度が方位角度に依存することを利用して抽出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-54135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レーダ波を反射した物標からの反射波を受信する複数のアンテナを備え、アンテナごとの受信信号間に生じる反射波の位相差Δθを利用して反射点の方位角度を検出するレーダ装置は、位相差の周期性から、Δθ=θと、Δθ=θ±2nπとを区別することができない。なお、|θ|<π、n=1,2,…とする。
【0006】
位相差Δθが-π<Δθ≦+π[rad]となる範囲に対応する方位角度の範囲(以下、測角範囲)内に反射点が存在する場合には、レーダ装置は、反射点の方位角度を正しく検出することができる。しかし、測角範囲外に反射点が存在する場合、レーダ装置は、いわゆる折り返しによって反射点が測角範囲内にあるものとして、反射点の方位角度を誤検出してしまう。つまり、反射点の方位角度に折り返しがある場合、検出された方位角度と実際の方位角度との間に誤差が生じていることになる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の軸ずれ推定装置では、抽出された静止反射点の方位角度に折り返しがあることを考慮せずに、軸ずれ角度を推定している。発明者の詳細な検討の結果、方位角度に折り返しがある場合、抽出された静止反射点の方位角度の検出結果に誤差が生じ、ひいては軸ずれ角度の推定精度も低下する、という課題が見出された。
【0008】
本開示の一局面は、軸ずれ角度の推定精度を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、移動体に搭載されたレーダ装置の軸ずれ角度を推定する軸ずれ推定装置であって、反射点情報取得部(4、S10)と、移動体速度取得部(4、S20)と、抽出部(4、S30)と、折り返し処理部(4、S40)と、軸ずれ推定部(4、S50)と、を備える。反射点情報取得部は、レーダ装置により検出された反射点のそれぞれについて、レーダ装置に対する反射点の相対速度と、レーダ装置の基準として設計上定められた方向を基準とする反射点の方位角度と、をあらかじめ設定された測定サイクルごとに取得するように構成される。移動体速度取得部は、移動体の速度である移動体速度を、測定サイクルごとに取得するように構成される。抽出部は、レーダ装置により検出された反射点の中から、所定の抽出条件に基づき、静止物で反射した点であると推測される反射点を、静止反射点として抽出するように構成される。折り返し処理部は、静止反射点の方位角度に折り返しがあるかを判定し、折り返しがあると判定された静止反射点の方位角度を補正するように構成される。軸ずれ推定部は、静止反射点の方位角度に基づき軸ずれ角度を推定するように構成される。抽出条件は、反射点の相対速度と移動体速度との比である観測速度比と、反射点が静止物で反射した点である場合に当該反射点の方位角度に基づき想定される観測速度比である想定速度比と、の間に成立する関係式に基づき定められる。折り返し処理部は、前回までの測定サイクルで推定された軸ずれ角度に基づき補正された方位角度を用いて算出される想定速度比である第1想定速度比と、方位角度に折り返しがあると仮定した第1想定速度比である少なくとも1つの第2想定速度比と、に基づき、静止反射点の方位角度に折り返しがあるかを静止反射点ごとに判定するように構成される。軸ずれ推定部は、折り返し処理部により方位角度が補正された静止反射点については、補正された方位角度に基づき軸ずれ角度を推定するように構成される。
【0010】
このような構成によれば、軸ずれ角度の推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車両制御システムの構成を示すブロック図である。
図2】レーダ波の垂直方向における照射範囲を説明する説明図である。
図3】レーダ波の水平方向における照射範囲を説明する説明図である。
図4】反射点の方位角度及び軸ずれを説明する説明図である。
図5】反射点の方位角度を検出する原理を説明する説明図である。
図6】折り返しについて説明する説明図である。
図7】軸ずれ推定処理のフローチャートである。
図8】静止反射点を抽出する原理を説明する説明図である。
図9】折り返し処理のフローチャートである。
図10】非使用しきい値を設定する原理を説明する説明図である。
図11】軸ずれ角度を推定する原理を説明する説明図である。
図12】折り返しがあるかを判定する原理についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
図1に示す車両制御システム1は、車両に搭載されるシステムである。車両制御システム1は、レーダ装置2と、車載センサ群3と、信号処理部4と、支援実行部5と、軸ずれ通知装置6と、搭載角度調整装置7と、を備える。以下では、車両制御システム1を搭載する車両を自車ともいう。また、自車の車幅方向を水平方向、車両の車高方向を垂直方向ともいう。
【0013】
レーダ装置2は、レーダ波を送受信するアンテナ部を備える。アンテナ部は、垂直方向及び水平方向のいずれについても反射波の到来方向を検出できるように構成される。本実施形態では、アンテナ部は、垂直方向及び水平方向に並ぶ複数のアンテナを備える、アレイアンテナである。
【0014】
また、レーダ装置2は、図2及び図3に示すように、自車VHの前側に搭載される。レーダ装置2は、自車VH前方の所定の角度範囲である照射範囲にレーダ波を照射する。具体的には、レーダ装置2は、垂直方向における照射範囲Rv及び水平方向における照射範囲Rhに、レーダ波を照射する。レーダ装置2は、照射したレーダ波の反射波を受信することで、レーダ波を反射した反射点に関する反射点情報を検出する。レーダ装置2が検出する反射点情報には、レーダ装置2と反射点との相対速度、及び、反射点の方位角度、が少なくとも含まれる。
【0015】
反射点の方位角度とは、図4に示すように、レーダ装置2の基準方向Aを基準として求められた反射点の角度のうち垂直方向の角度(以下、垂直角度)Ver及び水平方向の角度(以下、水平角度)Horの少なくとも一方である。本実施形態では、垂直角度Ver及び水平角度Horの双方が反射点の方位角度を表す情報として反射点情報に含まれる。垂直角度Verは、自車VHを右側面から見た場合において、レーダ装置2の基準方向Aを基準(すなわち0°)として、レーダ装置2の基準方向Aから右回りをプラス、左回りをマイナスとする角度で表す。水平角度Horは、自車VHを上空から見た場合において、レーダ装置2の基準方向Aを基準として、レーダ装置2の基準方向Aから右回りをプラス、左回りをマイナスとする角度で表す。レーダ装置2の基準方向Aとは、基準として設計上定められたレーダ装置2の方向である。本実施形態では、照射範囲の中心軸の方向がレーダ装置2の基準方向Aとして設定される。レーダ装置2は、本実施形態では、レーダ装置2の基準方向Aが車両の基準方向と一致するように自車VHに搭載される。車両の基準方向とは、基準として設計上定められた車両の方向であり、本実施形態では、自車VHの進行方向Bが車両の基準方向として設定される。レーダ装置2の基準方向Aと自車VHの進行方向Bとが一致するように、レーダ装置2が自車VHに搭載されると、検出された反射点の方位角度と、自車VHの進行方向Bに対する反射点の角度と、が一致する。換言すれば、レーダ装置2の基準方向Aと自車VHの進行方向Bとの間にずれが生じると、自車VHの進行方向Bに対する反射点の角度を表す情報が正しく得られないことになる。
【0016】
図4は、レーダ装置2に、垂直方向における軸ずれ、すなわち垂直面であるx-z平面内における軸ずれが生じている様子を示している。軸ずれとは、レーダ装置2の基準方向Aが、車両の基準方向(本実施形態では、自車VHの進行方向B)とずれている状態をいう。また、軸ずれ角度とは、レーダ装置2の基準方向Aと車両の基準方向(本実施形態では、自車VHの進行方向B)とのずれの大きさを示す角度をいう。
【0017】
本実施形態では、レーダ装置2は、公知のFMCW方式を採用しており、上り変調区間のレーダ波と下り変調区間のレーダ波をあらかじめ設定された変調周期で交互に送信し、反射したレーダ波を受信する。FMCWは、Frequency Modulated Continuous Waveの略である。これにより、レーダ装置2は、変調周期ごとに、上述のように反射点との相対速度と、反射点の方位角度である垂直角度Ver及び水平角度Horと、を反射点情報として検出する。なお、レーダ装置2は、反射点までの距離と、受信したレーダ波の受信電力と、を更に反射点情報として検出し得る。
【0018】
反射点の方位角度は、図5に示すように、レーダ装置2が有する複数のアレイアンテナ21が受信する受信信号間の反射波の位相差Δθを利用して検出される。
ここで、反射点の方位角度に生じる折り返しについて図6を用いて説明する。レーダ装置2が備えるアンテナごとの受信信号間に生じる反射波の位相差Δθが-π<Δθ≦+π[rad]となる範囲に対応する方位角度の範囲を測角範囲RAとすると、測角範囲RAの範囲外に存在する反射点は、折り返しによって、測角範囲RAの範囲内にあるものとして検出される。具体的には、測角範囲RAの範囲外に存在する反射点Paは、レーダ装置2の測角範囲RAの方位角度の幅である折り返し角度FOVぶんずれた位置Pbにあるものとして検出される。換言すれば、測角範囲RAは、折り返しが生じない方位角度の範囲である。なお、測角範囲RAは、レーダ装置2が備える複数のアンテナ21の素子間隔d等によって決定される。
【0019】
図1に戻り、車載センサ群3は、自車VHの状態等を検出するために自車VHに搭載された各種センサである。ここでは、車載センサ群3を構成するセンサとして、車輪の回転に基づいて車速を検出する車速センサが少なくとも含まれている。
【0020】
信号処理部4は、CPU41と、ROM43、RAM44、フラッシュメモリ等の半導体メモリ(以下、メモリ42)と、を有するマイクロコンピュータ(以下、マイコン)を中心に構成される。信号処理部4の各種機能は、CPU41が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、メモリ42が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。なお、信号処理部4を構成するマイコンの数は1つでも複数でもよい。また、信号処理部4が有する各種機能を実現する手法はソフトウェアに限るものではなく、その一部又は全部の要素について、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現してもよい。例えば、上記機能がハードウェアである電子回路によって実現される場合、その電子回路は多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路、あるいはこれらの組合せによって実現してもよい。
【0021】
信号処理部4が実行する処理には、物標認識処理及び軸ずれ推定処理が少なくとも含まれている。
このうち、物標認識処理は、レーダ装置2から得られる反射点情報や車載センサ群3から得られる各種情報に基づいて、自車VHが走行する車線や、自車VHと同一車線を走行する先行車両、その他の車両や障害物等を検出する公知のものである。この物標認識処理での処理結果は、支援実行部5等に提供される。
【0022】
一方、軸ずれ推定処理は、自車VHの進行方向に対するレーダ装置2の軸ずれ角度を検出するものであり、その詳細については後述する。
支援実行部5は、信号処理部4が実行する物標認識処理での処理結果に基づき、各種車載機器を制御して、所定の運転支援を実行する。制御対象となる車載機器には、各種画像を表示するモニタ、警報音や案内音声を出力する音響機器が含まれる他、自車VHの内燃機関、パワートレイン機構、ブレーキ機構等を制御する制御装置が含まれていてもよい。
【0023】
軸ずれ通知装置6は、車室内に設置された音声出力装置である。軸ずれ通知装置6は、信号処理部4から出力される情報に基づき、自車VHの乗員に対して、警告音を出力する。
搭載角度調整装置7は、モータと、レーダ装置2に取り付けられた歯車とを備える。搭載角度調整装置7は、信号処理部4から出力される駆動信号に従ってモータを回転させる。これにより、モータの回転力が歯車に伝達され、水平方向に沿った軸及び垂直方向に沿った軸を中心にレーダ装置2を回転させることができる。
【0024】
[2.処理]
次に、信号処理部4が実行する軸ずれ推定処理について、図7のフローチャートを用いて説明する。本処理は、イグニションスイッチがオンである間、レーダ波を送受信する測定サイクルごとに起動する。
【0025】
信号処理部4は、本処理が起動すると、S10で、レーダ装置2から反射点情報を取得する。以下では、反射点情報から特定される反射点を、取得反射点という。
続いて、S20で、信号処理部4は、車載センサ群3から、自車VHの速度である移動体速度Cmを取得する。
【0026】
続いて、S30で、信号処理部4は、すべての取得反射点について静止反射点抽出処理を実行する。静止反射点抽出処理とは、取得反射点のうち、静止物によってレーダ波が反射した点であると推測される取得反射点を、静止反射点として抽出する処理である。
【0027】
ここで、静止反射点抽出処理において静止反射点を抽出する原理について説明する。信号処理部4は、横軸を方位角度、縦軸を相対速度qと移動体速度Cmとの比である速度比-q/Cm、とする座標系に取得反射点についての方位角度と速度比-q/Cmとをプロットして、静止反射点を抽出する。なお、相対速度qの向きは移動体速度Cmの向きと反対であるため、q/Cmは常に負となる。符号を正にするため、速度比-q/Cmはq/Cmの値に-1を掛けた値としている。ここでは、垂直方向における軸ずれを推定する場合に静止反射点を抽出する例を説明する。
【0028】
垂直方向における軸ずれとは、垂直面であるx-z平面内における軸ずれをいう。図8が示す座標系は、横軸を垂直角度Ver、縦軸を相対速度qのx-z平面における大きさqvと移動体速度Cmのx-z平面における大きさCmvとの比である垂直速度比-qv/Cmv、とする座標系である。この座標系に、反射点についての垂直角度Verと垂直速度比-qv/Cmvとを投影してプロットすると、レーダ装置2に軸ずれが生じていない場合、静止物で反射した点は、特定の曲線101上にプロットされる。したがって、図8が示す座標系に、反射点の垂直角度と垂直速度比とを投影してプロットした場合、曲線101上にプロットされている反射点は、静止物で反射した点であると推測される。
【0029】
すなわち、静止物で反射した点の速度比-q/Cmは、当該静止物で反射した点の方位角度に依存する、といえる。なお、以下では、図8が示す座標系において、静止物で反射した点がプロットされる曲線を理想曲線ともいう。上述した例では、曲線101が理想曲線となる。
【0030】
上述した推測方法はあくまで理想状態における推測方法であり、実際には、レーダ装置2による反射点の検出誤差などの誤差が生じている。そのため、この誤差を考慮し、曲線101のような理想曲線に当該検出誤差などを加味した一定の範囲にプロットされている反射点が、静止物で反射した点であると推測され、静止反射点として抽出される。
【0031】
以下、S30で実行される静止反射点抽出処理について説明する。
まず、信号処理部4は、S10でレーダ装置2から取得した反射点情報に含まれる相対速度qと、S20で取得した移動体速度Cmと、に基づき、観測速度比Vobsを算出する。観測速度比Vobsとは、実際にレーダ装置2が生成する反射点情報に含まれる相対速度qと、移動体速度Cmと、から算出される速度比である。本実施形態では、相対速度qと、移動体速度Cmと、に基づき、(1)式に従って観測速度比Vobsを算出する。
【0032】
【数1】
【0033】
続いて、信号処理部4は、S10でレーダ装置2から取得した反射点情報に含まれる方位角度に基づき、想定速度比Vestを算出する。想定速度比Vestとは、取得反射点が静止物で反射した点である場合に想定される観測速度比Vobsである。本実施形態では、レーダ装置2が生成する反射点情報に含まれる垂直角度Ver及び水平角度Horに基づき、(2)式に従って想定速度比Vestを算出する。
【0034】
【数2】
【0035】
続いて、信号処理部4は、取得反射点から静止反射点を抽出する。具体的には、観測速度比Vobsと、想定速度比Vestと、あらかじめ設定されたしきい値εと、が(3)式を満たすか否かを判定し、(3)式を満たすと判定した取得反射点を静止反射点として抽出する。取得反射点が静止物で反射した点である場合、当該取得反射点の観測速度比Vobsは想定速度比Vestと一致することから、(3)式の左辺が0となる取得反射点は静止物で反射した点であると推測される。ただし、誤差の影響により、取得反射点が静止物で反射した点であったとしても、(3)式の左辺は必ずしも0になるとは限らない。そのため、しきい値εは、誤差の影響を考慮して適宜設定されたものが用いられる。
【0036】
【数3】
【0037】
図7に戻り、S40で、信号処理部4は、折り返し処理を実行する。折り返し処理とは、S30で抽出された静止反射点について、静止反射点の方位角度に折り返しがあるかを判定し、折り返しがあると判定された静止反射点の方位角度を補正する処理である。
【0038】
ここで、S40で実行される折り返し処理について、図9に示すフローチャートを用いて説明する。なお、S401~S409の処理は、すべての静止反射点について静止反射点ごとに実行される。
【0039】
まず、S401で、信号処理部4は、S20で取得した移動体速度Cmが、所定の移動体しきい値以上であるかを判定する。信号処理部4は、移動体速度Cmが移動体しきい値以上であると判定した場合、S402へ移行する。信号処理部4は、移動体速度Cmが移動体しきい値以上でないと判定した場合、折り返し処理を終了する。
【0040】
S402で、信号処理部4は、前回の測定サイクルにおいて推定された軸ずれ角度である前回軸ずれ角度に基づき軸ずれ補正値を算出する。軸ずれ角度は、後述するS50で実行される軸ずれ角度推定処理で推定される。軸ずれ補正値とは、後述する第1想定速度比Vobs_est及び第2想定速度比Vfoldを算出するときに、静止反射点の方位角度を補正するために用いる値である。信号処理部4は、前回の測定サイクルで算出された垂直方向における軸ずれ角度である前回垂直軸ずれ角度αv_preに、忘却係数kを掛け合わせ、静止反射点の垂直角度Verを補正するために用いる値である垂直軸ずれ補正値βvを、(4)式に従って算出する。
【0041】
【数4】
【0042】
ここで、忘却係数kは(5)式で表される。(5)式において、numestは、信号処理部4が軸ずれ推定処理を実行した回数であり、Constnumは、あらかじめ設定された定数である。すなわち、信号処理部4が軸ずれ推定処理を実行した回数が増加するに伴い、忘却係数kの値は1に近づく。
【0043】
【数5】
【0044】
同様にして、信号処理部4は、前回の測定サイクルで算出された水平方向における軸ずれ角度である前回水平軸ずれ角度αh_preに、忘却係数kを掛け合わせ、静止反射点の水平角度Horを補正するために用いる値である水平軸ずれ補正値βhを、(6)式に従って算出する。
【0045】
【数6】
【0046】
続いて、S403で、信号処理部4は、静止反射点の方位角度に基づき、第1想定速度比Vobs_estを算出する。第1想定速度比Vobs_estとは、前回までの測定サイクルで推定された軸ずれ角度に基づき補正された方位角度を用いて算出される想定速度比Vestである。本実施形態では、垂直角度Verを垂直軸ずれ補正値βvで、水平角度Horを水平軸ずれ補正値βhで、それぞれ補正した値に基づき、(7)式に従って第1想定速度比Vobs_estを算出する。
【0047】
【数7】
【0048】
続いて、S404で、信号処理部4は、静止反射点の方位角度と、折り返し角度FOVと、に基づき、折り返し方位角度を算出する。折り返し方位角度とは、静止反射点の方位角度に折り返しがあると仮定した場合に、静止反射点が存在すると推定される方位角度である。
【0049】
まず、垂直角度Verに折り返しがある場合の折り返し方位角度である垂直折り返し方位角度Verfoldを算出する例について説明する。本実施形態では、垂直角度Verが0°よりも大きいかを判定し、垂直角度Verが0°よりも大きいと判定した場合、(8)式に従って垂直折り返し方位角度Verfoldを算出する。なお、垂直方向の折り返し角度を垂直折り返し角度vFOVとする。
【0050】
【数8】
【0051】
一方、信号処理部4は、垂直角度Verが0°以下であると判定した場合、(9)式に従って垂直折り返し方位角度Verfoldを算出する。
【0052】
【数9】
【0053】
同様にして、水平角度Horに折り返しがある場合の折り返し方位角度である水平折り返し方位角度Horfoldを算出する例について説明する。信号処理部4は、水平角度Horが0°よりも大きいか否かを判定し、水平角度Horが0°よりも大きいと判定した場合、(10)式に従って水平折り返し方位角度Horfoldを算出する。なお、水平方向の折り返し角度を水平折り返し角度hFOVとする。
【0054】
【数10】
【0055】
一方、信号処理部4は、水平角度Horが0°以下であると判定した場合、(11)式に従って水平折り返し方位角度Horfoldを算出する。
【0056】
【数11】
【0057】
続いて、S405で、信号処理部4は、静止反射点の方位角度と、S404で算出した折り返し方位角度と、に基づき、第2想定速度比Vfoldを算出する。第2想定速度比Vfoldとは、静止反射点の方位角度に折り返しがあると仮定した場合の第1想定速度比Vobs_estである。本実施形態では、信号処理部4は、垂直角度Verに折り返しがあると仮定した第2想定速度比Vfoldである垂直第2想定速度比Vv_fold、水平角度Horに折り返しがあると仮定した第2想定速度比Vfoldである水平第2想定速度比Vh_fold、及び、垂直角度Verと水平角度Horobsとの双方に折り返しがあると仮定した第2想定速度比Vfoldである双方第2想定速度比Vvh_fold、を算出する。信号処理部4は、垂直第2想定速度比Vv_fold、水平第2想定速度比Vh_fold、双方第2想定速度比Vvh_fold、をそれぞれ、(12)式、(13)式、(14)式、に従って算出する。
【0058】
【数12】
【0059】
続いて、S406で、信号処理部4は、S30で算出した観測速度比Vobsと第1想定速度比Vobs_estとの差分の絶対値である第1差分d1を(15)式に従って算出する。
【0060】
【数13】
【0061】
同様にして、信号処理部4は、観測速度比Vobsと第2想定速度比Vfoldとの差分の絶対値である第2差分d2を算出する。具体的には、信号処理部4は、観測速度比Vobsと垂直第2想定速度比Vv_foldとの差分の絶対値である垂直第2差分dv_2、観測速度比Vobsと水平第2想定速度比Vh_foldとの差分の絶対値である水平第2差分dh_2、及び、観測速度比Vobsと双方第2想定速度比Vvh_foldとの差分の絶対値である双方第2差分dvh_2、をそれぞれ、(16)式、(17)式、(18)式、に従って算出する。
【0062】
【数14】
【0063】
その後、信号処理部4は、第1差分d1、垂直第2差分dv_2、水平第2差分dh_2、及び、双方第2差分dvh_2、の中から、最小の値を最小差分として選択する。
続いて、S407で、信号処理部4は、S406で選択された最小差分に基づき、静止反射点の方位角度に折り返しがあるかを判定する。
【0064】
具体的には、最小差分として垂直第2差分dv_2が選択された場合、静止反射点の垂直角度Verに折り返しがあり、水平角度Horには折り返しがないと判定する。最小差分として水平第2差分dh_2が選択された場合、静止反射点の垂直角度Verには折り返しがなく、水平角度Horには折り返しがあると判定する。最小差分として、双方第2差分dvh_2が選択された場合、静止反射点の垂直角度Ver及び水平角度Horの双方に折り返しがあると判定する。最小差分として第1差分d1が選択された場合、静止反射点の垂直角度Ver及び水平角度Horの双方に折り返しがないと判定する。
【0065】
信号処理部4は、静止反射点の垂直角度Ver及び水平角度Horの少なくとも一方に折り返しがあると判定した場合、S408へ移行する。信号処理部4は、静止反射点の垂直角度Ver及び水平角度Horの双方に折り返しがないと判定した場合、S409へ移行する。
【0066】
S408で、信号処理部4は、S407で方位角度に折り返しがあると判定された静止反射点の方位角度を補正する。具体的には、垂直角度Verに折り返しがあると判定された場合、信号処理部4は、静止反射点の垂直角度Verを垂直折り返し方位角度Verfoldに補正する。一方、水平角度Horに折り返しがあると判定された場合、信号処理部4は、静止反射点の水平角度Horを水平折り返し方位角度Horfoldに補正する。また、垂直角度Ver及び水平角度Horの双方に折り返しがあると判定された場合、信号処理部4は、静止反射点の垂直角度Ver及び水平角度Horをそれぞれ上述のように補正する。つまり、方位角度に折り返しがあると判定された静止反射点のみ方位角度が補正され、方位角度に折り返しがないと判定された静止反射点の方位角度は補正されない。その後、信号処理部4は、S409へ移行する。
【0067】
S409で、信号処理部4は、非使用静止反射点と使用静止反射点とを区別する処理を実行する。具体的には、まず、信号処理部4は、S406で選択された最小差分が所定の非使用しきい値以上であるかを判定する。そして、信号処理部4は、最小差分が非使用しきい値以上であると判定された静止反射点である非使用静止反射点と、最小差分が非使用しきい値以上でないと判定された静止反射点である使用静止反射点と、を区別する処理を実行する。非使用静止反射点は、後述するS50で実行される軸ずれ角度推定処理で使用されない。非使用静止反射点と使用静止反射点とを区別する処理は、例えば、最小差分が非使用しきい値以上であるかを判定した後、静止反射点に、非使用静止反射点又は使用静止反射点のフラグを付する処理が挙げられる。換言すれば、S409の処理は、すべての差分の絶対値が非使用しきい値以上である静止反射点を軸ずれ角度推定処理で使用しないようにするため、すべての静止反射点にフラグを付して、すべての差分の絶対値が非使用しきい値以上である静止反射点とそれ以外の静止反射点とを区別する処理である。
【0068】
非使用しきい値は、例えば、図10に示すように、静止反射点の方位角度の絶対値が大きくなるに伴い小さくなるように、静止反射点ごとに設定される。静止反射点の方位角度の絶対値は、例えば、静止反射点の垂直角度Verの絶対値と水平角度Horの絶対値との平均値を用いてもよい。
【0069】
S410で、信号処理部4は、すべての静止反射点についてS402~S409の処理を実行したか否かを判定する。信号処理部4は、S402~S409の処理が実行されていない静止反射点があると判定した場合、S402へ戻る。信号処理部4は、すべての静止反射点についてS402~S409の処理が実行されたと判定した場合、S411へ移行する。
【0070】
S411で、信号処理部4は、すべての静止反射点を母集団として、母集団が所定の補正取り消し条件を満たすか否かを判定する。信号処理部4は、母集団が所定の補正取り消し条件を満たすと判定した場合、後述するS50で実行される軸ずれ角度推定処理で、S408で補正された方位角度ではなく、方位角度を使用する。信号処理部4は、母集団が所定の補正取り消し条件を満たすと判定した場合、S412へ移行する。信号処理部4は、母集団が所定の補正取り消し条件を満たさないと判定した場合、折り返し処理を終了する。
【0071】
補正取り消し条件は、母集団内のすべての静止反射点の最小差分が所定の差分しきい値以上である、という条件である。ただし、補正取り消し条件はこれに限定されるものではなく、最小差分が全体的に大きい傾向にあると判定できる条件であればよい。例えば、母集団内で、大部分の静止反射点の最小差分が所定の差分しきい値以上である、という条件であってもよい。また、母集団内のすべての静止反射点の最小差分の平均が所定の差分しきい値以上である、という条件であってもよい。なお、本実施形態では、差分しきい値は、非使用しきい値よりも小さい。
【0072】
S412で、信号処理部4は、S408で方位角度が補正されたすべての静止反射点の方位角度について、S408でされた補正を取り消す。つまり、信号処理部4は、方位角度に折り返しがあると判定された静止反射点であっても、S408で補正された方位角度を、静止反射点の方位角度としないようにする。換言すれば、S411で最小差分が全体的に大きい傾向にあると判定された場合、すべての静止反射点について、S408で補正された方位角度ではなく、S10でレーダ装置2から取得した反射点情報に含まれる方位角度が用いられる。
【0073】
一方、S411で母集団が所定の補正取り消し条件を満たさないと判定された場合、S412の処理は実行されない。換言すれば、S411で最小差分が全体的に大きい傾向にないと判定された場合、方位角度に折り返しがあると判定された静止反射点は、S408で補正された方位角度が用いられ、方位角度に折り返しがないと判定された静止反射点は、S10でレーダ装置2から取得した反射点情報に含まれる方位角度が用いられる。
【0074】
その後、信号処理部4は、折り返し処理を終了する。
図7に戻り、S50で、信号処理部4は、使用静止反射点の方位角度を用いて軸ずれ角度を推定する軸ずれ角度推定処理を実行する。なお、非使用静止反射点は軸ずれ角度推定処理には用いられない。以下では、垂直方向における軸ずれ角度である垂直軸ずれ角度αvを推定する例を説明する。例えば、信号処理部4は、垂直軸ずれ角度αvを、(19)式を用いて推定する。
【0075】
【数15】
【0076】
ここで、Ver’はレーダ装置2に軸ずれが生じていない場合の垂直角度Verであり、qvは使用静止反射点の相対速度qのx-z平面における大きさであり、Cmvは移動体速度Cmのx-z平面における大きさである。γvは移動体速度Cmに含まれる誤差である移動体速度誤差γのx-z平面における大きさである垂直移動体速度誤差である。
【0077】
(19)式に基づいて、使用静止反射点それぞれについて、垂直軸ずれ角度αvと垂直移動体速度誤差γvとを未知パラメータとした方程式が得られる。つまり、使用静止反射点の数と同数の連立方程式が得られる。この連立方程式を解くことで、垂直軸ずれ角度αv及び垂直移動体速度誤差γvが求められる。連立方程式の具体的な解法としては例えば最小自乗法等を用いることができる。ただし、連立方程式の解法は最小自乗法に限定されるものではない。
【0078】
ここで、軸ずれ角度を推定する原理について説明する。上述のとおり、レーダ装置2に軸ずれが生じていない場合、図6で示されるように、静止物で反射した点は曲線101上にプロットされる。しかしながら、レーダ装置2に軸ずれが生じている場合、図11で示されるように、静止物で反射した点は、垂直軸ずれ角度αvぶん横軸方向に曲線101を平行移動させた曲線である曲線102上にプロットされる。すなわち、レーダ装置2に軸ずれが生じている場合、理想曲線が、曲線101から垂直軸ずれ角度αvぶん横軸方向に移動する、といえる。
【0079】
したがって、(19)式の連立方程式を解くことは、抽出された静止反射点が曲線102上にプロットされるような、最適な垂直軸ずれ角度αvと垂直移動体速度誤差γvとを求めることに相当する。
【0080】
なお、信号処理部4は、水平軸ずれ角度αhも、(20)式を用いて同様に推定する。水平方向における軸ずれとは、水平面であるx-y平面内における軸ずれをいう。
【0081】
【数16】
【0082】
ここで、Hor’はレーダ装置2に軸ずれが生じていない場合の水平角度Horであり、qhは静止反射点の相対速度qのx-y平面における大きさであり、Cmhは移動体速度Cmのx-y平面における大きさである。γhは移動体速度誤差γのx-z平面における大きさである水平移動体速度誤差である。
【0083】
続いて、S60で、信号処理部4は、S50で推定された垂直軸ずれ角度αvが、搭載角度調整装置7によって調整可能であるか否かを判定する。信号処理部4は、当該垂直軸ずれ角度αvがあらかじめ設定された調整可能範囲内である場合、軸ずれ調整が可能であると判定する。また、同様に、信号処理部4は、S50で推定された水平軸ずれ角度αhが、搭載角度調整装置7によって調整可能であるか否かを判定する。信号処理部4は、当該水平軸ずれ角度αhがあらかじめ設定された調整可能範囲内である場合、軸ずれ調整が可能であると判定する。信号処理部4は、軸ずれ調整が可能であると判定した場合、S70へ移行する。信号処理部4は、軸ずれ調整が可能でないと判定した場合、S90へ移行する。
【0084】
S70で、信号処理部4は、搭載角度調整装置7へ駆動信号を出力する。当該駆動信号は、垂直方向においては垂直軸ずれ角度αvぶん、水平方向においては水平軸ずれ角度αhぶん、自車VHの前後方向に沿った軸を中心にレーダ装置2を回転させる信号である。本実施形態では、これにより、レーダ装置2の基準方向Aが自車VHの進行方向Bと一致するようにレーダ搭載角度が調整される。
【0085】
続いて、S80で、信号処理部4は、垂直角度Verを、垂直軸ずれ角度αvぶん補正した垂直角度Vercorを算出する。また、信号処理部4は、水平角度Horを、水平軸ずれ角度αhぶん補正した水平角度Horcorを算出する。信号処理部4は、当該補正した垂直角度Vercor及び補正した水平角度Horcorに基づいて、上述の物標認識処理を実行する。信号処理部4は、以上で軸ずれ調整処理を終了する。
【0086】
S90で、信号処理部4は、レーダ装置2に軸ずれが生じていることを示すダイアグ情報(以下、軸すれダイアグ)を信号処理部4の外部の装置に出力する。外部の装置は、例えば、軸ずれ通知装置6である。そして、信号処理部4は、軸ずれ推定処理を終了する。
【0087】
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)信号処理部4は、レーダ装置2により検出された反射点の中から、所定の抽出条件に基づき、静止物で反射した点であると推測される反射点を、静止反射点として抽出する。また、信号処理部4は、静止反射点の方位角度に折り返しがあるかを静止反射点ごとに判定し、方位角度に折り返しがあると判定された静止反射点の方位角度を補正し、補正された方位角度に基づき、軸ずれ角度を推定するように構成される。
【0088】
したがって、本実施形態によれば、信号処理部4は、抽出された静止反射点の方位角度に折り返しがあることを考慮して軸ずれ角度を推定しているため、軸ずれ角度の推定精度を向上させることができる。
【0089】
(3b)レーダ装置2に軸ずれが生じている場合においては、測角範囲RAにも軸ずれに応じたずれが生じている。そのため、信号処理部4は、軸ずれを考慮せずに静止反射点の方位角度に折り返しがあるかを判定すると、実際には折り返しがあるにもかかわらず折り返しがないと誤判定したり、実際には折り返しがないにもかかわらず折り返しがあると誤判定したりしてしまう可能性がある。
【0090】
信号処理部4は、前回までの測定サイクルで推定された軸ずれ角度に基づき算出された方位角度を用いて、静止反射点の方位角度に折り返しがあるかを静止反射点ごとに判定する。
【0091】
したがって、本実施形態によれば、信号処理部4は、静止反射点の方位角度に折り返しがあるかを判定するにあたり、誤判定を回避して精度よく判定することができ、ひいては、軸ずれ角度の推定精度を向上させることができる。
【0092】
(3c)信号処理部4は、静止反射点ごとに、第1想定速度比Vobs_estと観測速度比Vobsとの差分である第1差分d1と、複数の第2想定速度比Vfoldと観測速度比Vobsとの差分である複数の第2差分d2と、を算出し、複数の第2差分d2の中に第1差分d1よりも小さい値が1つでもあれば、静止反射点の方位角度に折り返しがあると判定する。
【0093】
ここで、第1差分d1と第2差分d2とに基づき、静止反射点の方位角度に折り返しがあるかを判定する原理について、図12を用いて説明する。ここでは、垂直角度Verに折り返しがあるかを判定する例について、説明する。なお、水平角度Horに折り返しがあるかを判定する場合についても同様である。
【0094】
軸ずれを考慮しない場合における理想曲線である曲線101に基づき、静止反射点103は抽出される。静止反射点103の垂直角度Verに折り返しがある場合にプロットされる点104を仮定する。点104は、静止反射点103から垂直折り返し角度vFOVぶんずれた位置にプロットされる。つまり、図12が示す座標系において、静止反射点103の横軸の値は垂直角度Ver、点104の横軸の値は垂直折り返し方位角度Verfoldとなる。また、図12が示す座標系において、静止反射点103及び点104の縦軸の値h0は観測速度比Vobsとなる。
【0095】
上述のとおり、レーダ装置2に軸ずれが生じている場合、静止物で反射した点は、垂直軸ずれ角度αvぶん横軸方向に曲線101を平行移動させた曲線である曲線102上にプロットされる。すなわち、軸ずれを考慮する場合における理想曲線は曲線102となる。曲線102において、垂直角度Verに対応する点の縦軸の値h1は第1想定速度比Vobs_estとなる。また、曲線102において、垂直折り返し方位角度Verfoldに対応する点の縦軸の値h2は垂直第2想定速度比Vv_foldとなる。
【0096】
すると、第1差分d1はh1とh0との差分の絶対値に、垂直第2差分dv_2はh2とh0との差分の絶対値になる。ここで、第1差分d1よりも垂直第2差分dv_2の方が小さい値をとるということは、静止反射点103よりも、折り返しがあると仮定された点104の方が、軸ずれを考慮する場合における理想曲線である曲線102に近い、ということになる。換言すれば、静止反射点103よりも、折り返しがあると仮定された点104の方が、静止物で反射した点である可能性が高い、ということになる。
【0097】
したがって、本実施形態によれば、静止物で反射した点の速度比-q/Cmが当該静止物で反射した点の方位角度に依存する性質を利用して、静止反射点の方位角度に折り返しがあるかを判定することができ、ひいては、軸ずれ角度の推定精度を向上させることができる。
【0098】
(3d)信号処理部4は、第1差分d1及び複数の第2差分d2のすべてが非使用しきい値以上である静止反射点を、軸ずれ角度の推定に使用しない。
第1差分d1及び複数の第2差分d2のすべてが非使用しきい値以上であるということは、図12が示す座標系において、静止反射点103と、軸ずれを考慮する場合における理想曲線102と、の間に乖離が生じていることになる。また、静止反射点103の方位角度に折り返しがあると仮定した点104と、軸ずれを考慮する場合における理想曲線102と、の間にも乖離が生じていることになる。
【0099】
すなわち、前回までの測定サイクルで推定された軸ずれ角度を考慮しない状態において静止物で反射した点であるとして抽出された取得反射点は、軸ずれを考慮する場合における理想曲線から離れた位置に存在している。また、当該取得反射点の方位角度に折り返しがあると仮定した点も、軸ずれを考慮する場合における理想曲線から離れた位置に存在している。そのため、当該取得反射点が静止物で反射した点である可能性は低い。
【0100】
したがって、本実施形態によれば、静止物で反射した点である可能性が低い取得反射点が軸ずれ角度の推定に使用されることを回避でき、ひいては軸ずれ角度の推定精度を向上させることができる。
【0101】
(3e)非使用しきい値は、静止反射点の方位角度の絶対値が大きくなるに伴い小さくなるよう、静止反射点ごとに設定される。
レーダ装置2では、反射点情報の検出精度が高い方位と低い方位とが生じ得る。レーダ波の照射範囲の中心軸に近い位置に存在する静止反射点ほど相対速度の検出精度が高く、レーダ波の照射範囲の中心軸から離れた位置に存在する静止反射点ほど、相対速度の検出精度が低くなる。つまり、方位角度の絶対値が大きい静止反射点ほど、相対速度の検出精度が低くなることから、検出された相対速度に検出誤差が生じている可能性が高いと考えられる。
【0102】
したがって、本実施形態によれば、方位角度の絶対値が大きい静止反射点の非使用しきい値を小さく設定することで、検出された相対速度に検出誤差が生じている可能性が高いと考えられる静止反射点が軸ずれ角度の推定に使用されることを回避でき、ひいては軸ずれ角度の推定精度を向上させることができる。
【0103】
(3f)信号処理部4は、最小差分が全体的に大きい傾向にあると判定した場合、補正されていない静止反射点の方位角度に基づき軸ずれ角度を推定する。
最小差分が全体的に大きい傾向にあるということは、すべての静止反射点によって構成される母集団と、軸ずれを考慮する場合における理想曲線と、の間に乖離が生じていることになる。乖離の原因として、前回軸ずれ角度が適切ではなく、軸ずれを考慮する場合における理想曲線の信頼度が低下している可能性が考えられる。そのため、この場合において、軸ずれを考慮する場合における理想曲線に基づき、静止反射点の方位角度に折り返しがあるかを判定された判定結果の信頼度も低いものと考えられる。
【0104】
したがって、本実施形態によれば、軸ずれを考慮する場合における理想曲線の信頼度が低い場合には、静止反射点の方位角度に折り返しがあるかを判定された判定結果が、軸ずれ角度の推定に使用されることを回避でき、ひいては軸ずれ角度の推定精度を向上させることができる。
【0105】
(3g)移動体速度Cmが低い場合、算出された観測速度比Vobsに誤差が生じやすい。そして、差分の絶対値は、観測速度比Vobsに基づき算出されていることから、移動体速度Cmが低い場合には、算出された差分の絶対値にも誤差が生じやすいと言える。そのため、信号処理部4は、移動体速度Cmが低い場合に静止反射点の方位角度に折り返しがあるかを判定すると、誤判定してしまう可能性がある。
【0106】
本実施形態では、移動体速度Cmが所定の移動体しきい値よりも低い場合、信号処理部4は、折り返し処理部により補正されていない静止反射点の方位角度に基づき軸ずれ角度を推定する。すなわち、移動体速度Cmが移動体しきい値よりも低い場合、信号処理部4は折り返し処理を実行せず、静止反射点の方位角度に基づき軸ずれ角度を推定する。
【0107】
したがって、本実施形態によれば、静止反射点の方位角度に折り返しがあるかの判定について誤判定された結果が軸ずれ角度の推定に使用されることを回避でき、ひいては軸ずれ角度の推定精度を向上させることができる。
【0108】
(3h)信号処理部4は、方位角度を前回軸ずれ角度で補正する場合よりも小さい補正量で補正し、補正された方位角度を用いて第1想定速度比Vobs_estを算出する。
測定開始直後など軸ずれ角度の推定の信頼度が低い場合であっても、軸ずれ角度で補正するよりも小さい補正量で方位角度を補正することで、信号処理部4は、軸ずれ角度の推定値の信頼度の低さによる影響を軽減して方位角度を補正できる。
【0109】
したがって、本実施形態によれば、静止反射点の方位角度を補正するにあたり、軸ずれ角度で補正する場合と比較して、軸ずれ角度の推定の信頼度の影響を低く抑えて補正することができ、ひいては、軸ずれ角度の推定精度を向上させることができる。
【0110】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0111】
(4a)上記実施形態では、S402で、信号処理部4は、忘却係数kを(5)式に従って算出しているが、開示されている(5)式は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、忘却係数k=1としてもよい。
【0112】
(4b)上記実施形態では、S404で、信号処理部4は、折り返し方位角度として、垂直折り返し方位角度Verfold及び水平折り返し方位角度Horfoldを算出しているが、信号処理部4が算出する折り返し方位角度はこれに限定されるものではない。例えば、信号処理部4は、垂直折り返し方位角度Verfold及び水平折り返し方位角度Horfoldのいずれか一方のみを算出してもよい。
【0113】
(4c)上記実施形態では、S405で、信号処理部4は、第2想定速度比Vfoldとして、垂直第2想定速度比Vv_fold、水平第2想定速度比Vh_fold、及び、双方第2想定速度比Vvh_foldを算出しているが、算出される第2想定速度比Vfoldはこれに限定されるものではない。例えば、信号処理部4は、第2想定速度比Vfoldとして、垂直第2想定速度比Vv_fold、水平第2想定速度比Vh_fold、及び、双方第2想定速度比Vvh_foldのうちいずれか1つあるいは2つを算出してもよい。
【0114】
(4d)上記実施形態では、S409で、信号処理部4は、最小差分が所定の非使用しきい値以上であるかを判定するが、判定する対象はこれに限定されるものではない。例えば、信号処理部4は、S406で算出されたすべての差分の絶対値について、それぞれの値が非使用しきい値以上であるかを判定してもよい。この場合、すべての差分の絶対値が非使用しきい値以上であると判定された静止反射点を非使用静止反射点と、1つでも非使用しきい値以上でない差分の絶対値があると判定された静止反射点を使用静止反射点とする。
【0115】
(4e)上記実施形態では、S50で、信号処理部4は、使用静止反射点の方位角度を用いて軸ずれ角度を推定する軸ずれ角度推定処理を実行するが、これに限定されるものではない。例えば、信号処理部4は、すべての静止反射点の方位角度を用いて軸ずれ角度を推定してもよい。この場合、非使用静止反射点と使用静止反射点とが区別される必要がないため、信号処理部4は、S409で、非使用静止反射点と使用静止反射点とを区別する処理を実行しない。つまり、S409の処理は実行されない。
【0116】
(4f)上記実施形態では、S411で、信号処理部4は、すべての静止反射点を母集団として、母集団が所定の補正取り消し条件を満たすか否かを判定するが、これに限定されるものではない。例えば、信号処理部4は、すべての使用静止反射点を母集団として、母集団が所定の補正取り消し条件を満たすか否かを判定してもよい。換言すれば、信号処理部4は、静止物で反射した点である可能性が低い取得反射点である非使用静止反射点を母集団に含めずに、当該母集団が所定の補正取り消し条件を満たすか否かを判定してもよい。
【0117】
(4g)上記実施形態では、差分しきい値は非使用しきい値よりも小さいとされるが、これに限定されるものではなく、例えば、差分しきい値は非使用しきい値以上であってもよい。
【0118】
(4h)上記実施形態では、信号処理部4は、S411で母集団が所定の補正取り消し条件を満たすと判定した場合、S412で、S408で方位角度が補正されたすべての静止反射点の方位角度について、当該補正を取り消すが、これに限定されるものではない。例えば、信号処理部4は、S411及びS412の処理を実行しなくてもよい。この場合、信号処理部4は、S410で、すべての静止反射点についてS402~S409の処理が実行されたと判定した場合、折り返し処理を終了する。
【0119】
(4i)上記実施形態では、信号処理部4は、観測速度比Vobsを(1)式に従って算出しているが、開示されている(1)式は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、信号処理部4は、相対速度qと、移動体速度Cmを移動体速度誤差補正値γcorで補正した値と、に基づき、(21)式に従い、観測速度比Vobsを算出してもよい。この場合、信号処理部4は、前回の測定サイクルにおいてS50で推定された移動体速度誤差γと、忘却係数kと、に基づき(22)式に従って移動体速度誤差補正値γcorを算出する。
【0120】
【数17】
【0121】
(4j)上記実施形態では、信号処理部4は、想定速度比Vestを(2)式に従って算出しているが、開示されている(2)式は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、信号処理部4は、垂直角度Verを(4)式に従って算出された垂直軸ずれ補正値βvで、水平角度Horを(6)式に従って算出された水平軸ずれ補正値βhで、それぞれ補正した値に基づき、(23)式に従って想定速度比Vestを算出してもよい。
【0122】
【数18】
【0123】
(4k)上記実施形態では、レーダ装置2が自車VHの前方の所定の角度範囲である照射範囲に向けてレーダ波を照射する構成を示したが、照射範囲は自車VHの前方に限定されるものではない。例えば、照射範囲は、自車VHの前方、右前方、左前方、後方、右後方、左後方、右側方及び左側方の少なくとも一方であってもよい。
【0124】
(4l)上記実施形態では、レーダ装置2は、レーダ装置2の基準方向Aが車両の基準方向と一致するように自車VHに搭載されるが、レーダ装置2の自車VHへの搭載はこれに限定されるものではない。例えば、レーダ装置2は、レーダ装置2の基準方向Aが車両の基準方向から垂直方向及び水平方向の少なくとも一方向にずれた方向となるように搭載されてもよい。すなわち、自車VHの進行方向Bを車両の基準方向とすると、レーダ装置2は、レーダ装置2の基準方向Aと自車VHの進行方向Bとが一致しない状態で自車VHに搭載されてもよい。
【0125】
この場合、レーダ装置2が自車VHに搭載された段階でレーダ装置2に軸ずれが生じていることになる。換言すれば、レーダ装置2は、レーダ装置2に軸ずれが生じる状態で、自車VHに搭載されることになる。
【0126】
あえてレーダ装置2に軸ずれが生じるようにすることで、測角範囲RAが意図的にずらされ、ひいては、意図的に静止反射点の方位角度に折り返しを生じさせることができる。それにより、信号処理部4は、折り返し処理及び軸ずれ角度推定処理を精度よく実行することができる。
【0127】
(4m)上記実施形態では、レーダ装置2がFMCW方式を採用している例を示したが、レーダ装置2のレーダ方式は、FMCWに限定されるものではなく、例えば、2周波CW、FCM又はパルスを採用するように構成されてもよい。FCMは、Fast Chirp Modulationの略である。
【0128】
(4n)上記実施形態では、信号処理部4が軸ずれ調整処理を実行する例を示したが、レーダ装置2が軸ずれ調整処理を実行するように構成されてもよい。
(4o)上記実施形態では、軸ずれ通知装置6として車室内に設置された音声出力装置を用いているが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、支援実行部5が備える音響機器等が軸ずれ通知装置6として用いられてもよい。
【0129】
(4p)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0130】
(4q)本開示は、上述した軸ずれ推定装置の他、当該軸ずれ推定装置を備える車両制御システム1、当該軸ずれ推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した媒体、軸ずれ推定方法など、種々の形態で実現することができる。
【0131】
なお、上記実施形態において、信号処理部4が軸ずれ推定装置に相当する。また、S10が反射点情報取得部としての処理に相当し、S20が移動体速度取得部としての処理に相当し、S30が抽出部としての処理に相当し、S40が折り返し処理部としての処理に該当し、S50が軸ずれ推定部としての処理に相当する。また、自車VHが移動体に相当する。
【符号の説明】
【0132】
1…車両制御システム、2…レーダ装置、4…信号処理部。
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