(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】コンロ用バーナ
(51)【国際特許分類】
F23D 14/06 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
F23D14/06 L
(21)【出願番号】P 2020142340
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】大脇 将太
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-021723(JP,U)
【文献】実開昭49-074542(JP,U)
【文献】実開昭53-065932(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/06
F24C 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナボディ上に設けられるバーナヘッドの外周面に開口する上下2段の炎口を備えるコンロ用バーナであって、
バーナボディは、外側の筒体と内側の筒体との内外2重の筒体を有し、バーナヘッドは、環状の下ヘッド部材と、環状の上ヘッド部材とで構成され、バーナボディの外側筒体と下ヘッド部材との間に下段炎口が画成され、下ヘッド部材と上ヘッド部材との間に上段炎口が画成され、バーナボディの外側筒体と内側筒体との間に画成される共通のボディ内空間から下段炎口と上段炎口とに混合気が分配されるようにしたものにおいて、
上ヘッド部材の内周部に、下ヘッド部材の内周部より内方の空間を通してバーナボディの内側筒体に嵌合するシール筒部が垂設され、このシール筒部と下ヘッド部材の内周部との間の隙間を介してボディ内空間から上段炎口に混合気が分配されるようにし
、
更に、下ヘッド部材又はシール筒部に、シール筒部又は下ヘッド部材に径方向外方又は径方向内方から当接して、下ヘッド部材をシール筒部に対し芯決めする複数の突起部が設けられることを特徴とするコンロ用バーナ。
【請求項2】
前記各突起部は、コンロ天板上に載置する五徳の何れかの五徳爪と同一方位に位置することを特徴とする請求項
1記載のコンロ用バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナボディ上に設けられるバーナヘッドの外周面に開口する上下2段の炎口を備えるコンロ用バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンロ用バーナにおいて、バーナボディは、外側の筒体と内側の筒体との内外2重の筒体を有し、バーナヘッドは、環状の下ヘッド部材と、環状の上ヘッド部材とで構成され、バーナボディの外側筒体と下ヘッド部材との間に下段炎口が画成され、下ヘッド部材と上ヘッド部材との間に上段炎口が画成され、バーナボディの外側筒体と内側筒体との間に画成される共通のボディ内空間から下段炎口と上段炎口とに混合気が分配されるようにしたものは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものでは、下ヘッド部材の内周部に、バーナボディの内側筒体に嵌合する第1のシール筒部を垂設すると共に、上ヘッド部材の内周部に、下ヘッド部材の内周部に嵌合する第2のシール筒部を垂設し、更に、下ヘッド部材に複数の通気口を開設して、ボディ内空間から通気口を介して上段炎口に混合気が分配されるようにしている。
【0004】
ここで、上記従来例のものでは、第1のシール筒部とバーナボディの内側筒体との嵌合箇所と、第2のシール筒部と下ヘッド部材の内周部との嵌合箇所との2箇所でシール性を確保する必要がある。そして、シール性を確保するには、嵌合箇所の加工精度を高める必要がある。そのため、シール性を確保する必要がある嵌合箇所が2箇所になる上記従来例のものは、加工に手間がかかり、コストが高くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、上下2段の炎口を備えるコンロ用バーナであって、シール性を確保する必要がある嵌合箇所を1箇所のみにして、コストダウンを図ることができるようにしたものを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、バーナボディ上に設けられるバーナヘッドの外周面に開口する上下2段の炎口を備えるコンロ用バーナであって、バーナボディは、外側の筒体と内側の筒体との内外2重の筒体を有し、バーナヘッドは、環状の下ヘッド部材と、環状の上ヘッド部材とで構成され、バーナボディの外側筒体と下ヘッド部材との間に下段炎口が画成され、下ヘッド部材と上ヘッド部材との間に上段炎口が画成され、バーナボディの外側筒体と内側筒体との間に画成される共通のボディ内空間から下段炎口と上段炎口とに混合気が分配されるようにしたものにおいて、上ヘッド部材の内周部に、下ヘッド部材の内周部より内方の空間を通してバーナボディの内側筒体に嵌合するシール筒部が垂設され、このシール筒部と下ヘッド部材の内周部との間の隙間を介してボディ内空間から上段炎口に混合気が分配されるようにし、更に、下ヘッド部材又はシール筒部に、シール筒部又は下ヘッド部材に径方向外方又は径方向内方から当接して、下ヘッド部材をシール筒部に対し芯決めする複数の突起部が設けられることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、シール性を確保する必要がある嵌合箇所は、上ヘッド部材の内周部に垂設したシール筒部とバーナボディの内側筒体との嵌合箇所である1箇所のみとなり、加工が容易になって、コストダウンを図ることができる。
【0009】
尚、シール筒部をバーナボディの内側筒体に嵌合することで、上ヘッド部材は内側筒体、即ち、バーナボディに対し芯決めされるが、これだけでは、下ヘッド部材をバーナボディに対し芯決めすることはできない。そのため、本発明においては、上記の如く下ヘッド部材又はシール筒部に、シール筒部又は下ヘッド部材に径方向外方又は径方向内方から当接して、下ヘッド部材をシール筒部に対し芯決めする複数の突起部を設けている。
【0010】
また、この場合、各突起部を、コンロ天板上に載置する五徳の何れかの五徳爪と同一方位に位置させることが望ましい。ここで、五徳爪と同一方位に位置するバーナヘッドの部分には、五徳爪への火炎接触による不完全燃焼の発生を防止するため、上段炎口を形成しないか小さくしている。従って、五徳爪と同一方位に位置させて突起部を設ければ、突起部により混合気の流れが邪魔されても悪影響は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態のコンロ用バーナを具備するコンロの要部の平面図。
【
図3】本発明の実施形態のコンロ用バーナの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図3を参照して、1は、本発明の実施形態のコンロ用バーナである。このコンロ用バーナ1は、コンロ天板TPに開設したバーナ用開口TPaに挿通されるバーナボディ2と、バーナボディ2上のバーナヘッド3とを備えている。バーナヘッド3の外周面には、上下2段の炎口4U,4Lが周方向の間隔を存して複数開口している。尚、コンロ天板TP上に配置する五徳Gの複数の五徳爪Gaと同一方位に位置するバーナヘッド3の周方向複数箇所の部分には、五徳爪Gaに火炎が触れて不完全燃焼することを防止するため、上段炎口4Uを形成していない。また、五徳爪Gaと同一方位に位置する下段炎口4Lは、周方向幅を広くしている。
【0013】
バーナボディ2は、外側の筒体21と内側の筒体22との内外2重の筒体を有しており、更に、バーナボディ2の周囲一箇所から外方にのびる混合管部24を有している。そして、バーナボディ2の外側筒体21と内側筒体22との間に画成される共通のボディ内空間23に混合管部24から混合気(燃料ガスと一次空気との混合ガス)が供給され、このボディ内空間23から下段炎口4Lと上段炎口4Uとに混合気が分配されるようにしている。また、バーナボディ2には、バーナ用開口TPaを上方から覆うカバーリング5が外挿されている。
【0014】
バーナヘッド3は、環状の下ヘッド部材31と、環状の上ヘッド部材32とで構成されている。そして、バーナボディ2の外側筒体21と下ヘッド部材31との間に下段炎口4Lが画成され、下ヘッド部材31と上ヘッド部材32との間に上段炎口4Uが画成されている。具体的に説明すれば、下ヘッド部材31の下面には、バーナボディ2の外側筒体21の上端部に着座する第1の環状壁33が垂設されている。尚、外側筒体21の上端部には、内曲げフランジ部21aと、内曲げフランジ部21aの内周縁部から下方に若干のびる筒部21bとが形成されており、第1の環状壁33は、内曲げフランジ部21aに着座する。第1の環状壁33には、当該環状壁33の下端から上方に凹入する下段炎口4Lとなる溝が周方向の間隔を存して複数形成されており、これら溝の下端を外側筒体21の内曲げフランジ部21aで閉塞することにより、外側筒体21と下ヘッド部材31との間に下段炎口4Lが画成される。また、下ヘッド部材31の上面には、上ヘッド部材32が着座する第2の環状壁34が立設されている。第2の環状壁34には、当該環状壁34の上端から下方に凹入する上段炎口4Uとなる溝が周方向の間隔を存して複数形成されており、これら溝の上端を上ヘッド部材32で閉塞することにより、下ヘッド部材31と上ヘッド部材32との間に上段炎口4Uが画成される。
【0015】
尚、下ヘッド部材31の周囲1箇所には、径方向外方に舌片状に突出する庇部35が突設されている。そして、庇部35の下面に、庇部35の直下部に配置する図示省略した点火電極に対向するターゲット部を設け、点火電極とターゲット部との間での火花放電でコンロ用バーナ1に点火するようにしている。また、上ヘッド部材32の上面は、径方向外方に向かって下方に傾斜している。上ヘッド部材32の上面外周部には、上ヘッド部材32の上面に落下した煮こぼれ汁をせき止める上方に盛り上がった土手部36が設けられている。この土手部36には、所定の3個の五徳爪Gaと同一方位に位置する部分に、煮こぼれ汁を上ヘッド部材32の上面から落下させる切欠き36aが形成されている。
【0016】
ここで、本実施形態では、上ヘッド部材32の内周部に、下ヘッド部材31の内周部より内方の空間を通してバーナボディ2の内側筒体22に嵌合するシール筒部37が垂設されている。そして、このシール筒部37と下ヘッド部材31の内周部との間の隙間を介してボディ内空間23から上段炎口4Uに混合気が分配されるようにしている。尚、バーナボディ2の内側筒体22の上端部には、内曲げフランジ部22aと、内曲げフランジ部22aの内周縁部から下方に若干のびる筒部22bとが形成されており、この筒部22bにシール筒部37が嵌合する。
【0017】
以上の構成によれば、シール性を確保する必要がある嵌合箇所は、シール筒部37とバーナボディ2の内側筒体22(具体的には内側筒体22の上端部の筒部22b)との嵌合箇所である1箇所のみとなる。従って、シール性を確保する必要がある嵌合箇所が2箇所になる上記従来例のものに比し、加工が容易になって、コストダウンを図ることができる。
【0018】
ところで、シール筒部37をバーナボディ2の内側筒体22に嵌合することで、上ヘッド部材32は内側筒体22、即ち、バーナボディ2に対し芯決めされるが、これだけでは、下ヘッド部材31をバーナボディ2に対し芯決めすることはできない。そこで、本実施形態では、下ヘッド部材31に、シール筒部37に径方向外方から当接して、下ヘッド部材31をシール筒部37に対し芯決めする複数の突起部39を設けている。ここで、シール筒部37は、バーナボディ2に対し芯決めされているため、シール筒部37に対し下ヘッド部材31を芯決めすることで、下ヘッド部材31もバーナボディ2に対し芯決めされることになる。
【0021】
また、各突起部39は、五徳Gの何れかの五徳爪Gaと同一方位に位置している。ここで、五徳爪Gaと同一方位に位置する部分には上段炎口4Uを形成していないため、突起部39により混合気の流れが邪魔されても悪影響は生じない。
【0022】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、シール筒部37に、下ヘッド部材31に径方向内方から当接して、下ヘッド部材31をシール筒部37に対し芯決めする複数の突起部を設けてもよい。この場合も、各突起部を五徳Gの何れかの五徳爪Gaと同一方位に位置させることが望ましい。また、上記実施形態では、上段炎口4Uとなる溝を形成する第2の環状壁34を下ヘッド部材31の上面に立設しているが、上ヘッド部材32の下面外周部に第2の環状壁34を垂設することも可能である。
【符号の説明】
【0023】
TP…コンロ天板、G…五徳、Ga…五徳爪、1…コンロ用バーナ、2…バーナボディ、21…外側筒体、22…内側筒体、3…バーナヘッド、31…下ヘッド部材、32…上ヘッド部材、37…シール筒部、39…突起部、4L…下段炎口、4U…上段炎口。