(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】カールアイロン
(51)【国際特許分類】
A45D 1/00 20060101AFI20240501BHJP
A45D 1/04 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
A45D1/00 504Z
A45D1/00 503B
A45D1/00 E
A45D1/00 505B
A45D1/00 505D
A45D1/04 A
A45D1/00 501D
(21)【出願番号】P 2020152133
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-034958(JP,A)
【文献】登録実用新案第3123299(JP,U)
【文献】特開2015-100601(JP,A)
【文献】特開2010-284230(JP,A)
【文献】特開平10-113215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 1/00 - 7/06
A45D 20/00 - 20/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルと、そのハンドルの先端に設けられ発熱体を内装した円筒状の加熱部と、前記ハンドルに支持され前記加熱部に対して開閉可能にしたクリップレバーとを備えたカールアイロンにおいて、
前記クリップレバーの内周面に凹部を形成し、
前記加熱部の外周面及び
前記凹部内に低摩擦係数の軟質のシートを貼付したカールアイロン。
【請求項2】
前記加熱部を一対の半割状のハウジングにより構成し、ハウジングの外周を前記シートにより被覆するとともに、そのシートの側縁を両ハウジングの間に挟持した請求項
1に記載のカールアイロン。
【請求項3】
前記クリップ
レバーを一方のハウジング側に設けるとともに、前記発熱体を前記両ハウジング内にそれぞれ設けた請求項
2に記載のカールアイロン。
【請求項4】
前記発熱体の温度を検出するための温度センサを前記両ハウジング内にそれぞれ設け、その温度センサからの温度検出に基づいて前記発熱体の動作を制御する制御手段を設けた請求項
3に記載のカールアイロン。
【請求項5】
両ハウジング間の端縁に合成樹脂よりなる介装部材を挟持した請求項
2~4のうちのいずれか一項に記載のカールアイロン。
【請求項6】
ハウジングに遠赤外線の透過孔を形成し、その透過孔を前記シートによって覆った請求項
2~5のうちのいずれか一項に記載のカールアイロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭髪をカールさせるために、頭髪を巻き付けるようにした円筒状の加熱ロッドと、頭髪を加熱ロッドに押さえ付けるようにしたクリップレバーとを有するカールアイロンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の構成のカールアイロンが特許文献1及び特許文献2に開示されている。このようなカールアイロンの使用に際しては、頭髪が円筒状の加熱ロッドと、加熱ロッドの外周面に沿う形状のクリップレバー13との間に挟み付けられた状態で、カールアイロンが毛先方向に移動されることにより、加熱ロッドの熱によって頭髪がカールされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-260059号公報
【文献】登録実用新案第3144091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、頭髪が加熱ロッドとクリップレバーとの間をスムーズに通り抜けないと、形の良いカールを得にくいばかりでなく、頭髪にダメージが与えられることもあり、さらには、カールアイロンの良好な使用感を得ることができない。このような頭髪に対するダメージを回避したり、良好な使用感を得たりするためには、クリップレバーの加熱ロッド側へのスプリングによるクリップ力を弱くする必要がある。しかし、このようにすれば、頭髪のカールのための押さえつけ圧力を高くすることできず、形の良いカールを得ることが困難になる。このような従来構成において、形の良いカールを得るためには、加熱ロッドによる加熱温度を高くすることも考えられるが、このようにすれば、前記のように、頭髪にダメージが与えられるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、簡単な構成を採用することにより頭髪を良好にカールさせることができるカールアイロンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明においては、ハンドルと、そのハンドルの先端に設けられた円筒状の加熱ロッドと、前記ハンドルに支持され、加熱ロッドに対して開閉可能にしたクリップレバーとを備えたカールアイロンにおいて、加熱ロッドの外周面及びクリップレバーの内周面には、低摩擦係数のシートを貼付したことを特徴とする。ここで、低摩擦係数のシートとは、加熱ロッドの表面及びクリップレバーのベースとなる金属や合成樹脂の表面の摩擦係数と比較して低い摩擦係数を有するシートを指すものである。
【0007】
本発明においては、加熱ロッドの外周面及びクリップレバーの内周面に、低摩擦係数のシートが貼着されているため、カールアイロンの移動により、頭髪は加熱ロッドとクリップレバーとの間をスムーズに通り抜けることができる。従って、カールアイロンを軽い力でスムーズに操作できて、快適な使用感を得ることができる。また、頭髪を高い圧力で加熱ロッドとクリップレバーとの間に挟み込んでも、頭髪がそれらの間をスムーズに通り抜けることができるため、頭髪を適切にカールさせることができる。従って、加熱ロッドの加熱温度を高くする必要がなく、頭髪のダメージを抑制できて、頭髪を適切にカールさせることができる。しかも、そのための構成は、加熱ロッドの外周面にシートを貼着した構成に加えて、クリップレバーの内周面にシートを貼着しただけであるから、その構成は簡単である。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、簡単な構成を設けただけで、頭髪を良好にカールできるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】カールアイロンのハンドル部分の分解斜視図。
【
図4】(a)はカールアイロンの加熱ロッド部分の分解斜視図、(b)はヒータ部分の一部分解斜視図。
【
図14】カールアイロンの加熱ロッド部分の縦断面図。
【
図16】カールアイロンの制御構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態のカールアイロンは、ハンドル11と、そのハンドル11の先端である前端から突出する加熱部としての加熱ロッド12と、ハンドル11に上下方向に開閉回動可能に支持されたクリップレバー13とを備えている。そして、カールアイロンの使用者は、ハンドル11を把持し、頭髪を加熱状態の加熱ロッド12とクリップレバー13との間に挟んで、頭髪を加熱ロッド12の外周に巻きつけるようにしてカールアイロンを頭髪の毛先側に移動させることにより、頭髪をカールさせることができる。本実施形態のカールアイロンにおいては、クリップレバー13側をカールアイロンの上部、加熱ロッド12側の下部とし、加熱ロッド12側をカールアイロンの前部、ハンドル11側を後部とする。
【0011】
以下に、ハンドル11及びその関連構成について説明する。
図3に示すように、ハンドル11は断面半円筒状のメインフレーム16を備えており、そのメインフレーム16の内部には各種の電気・電子機器を実装した電装基板17が固定されている。この電装基板17を下方から覆うように、メインフレーム16の下側開放部の前後位置にはサブフレーム18,29が取り付けられている。このメインフレーム16とサブフレーム18,29とによりハンドルフレーム19が構成されている。ハンドルフレーム19の上部側には上部カバー20が取り付けられるとともに、ハンドルフレーム19の下部側には一対の下部カバー21が取り付けられている。上部カバー20の表面には透光性メッキが施されている。上部カバー20と下部カバー21とによりハンドル11の外殻が構成されている。
【0012】
図3に示すように、ハンドル11の後端には給電コネクタ22が取り付けられている。この給電コネクタ22に給電コード23が着脱可能に接続される。
図2及び
図3に示すように、電装基板17には、カールアイロンの使用者によって操作される電源スイッチ24、プラス側スイッチ25及びマイナス側スイッチ26が支持されており、これらのスイッチ24,25,26はメインフレーム16の透孔27を介して上部カバーの透孔28から外部に臨んでいる。スイッチ24,25,26の上端部には加飾カバー241,251,261が被せられている。そして、電源スイッチ24をオン・オフ操作することにより、加熱ロッド12の後述する発熱体としてのヒータ66が発熱及び発熱停止される。プラス側スイッチ25を操作することにより、ヒータ66による加熱ロッド12の加熱温度が高くなるように設定される。マイナス側スイッチ26を操作することにより、加熱ロッド12の加熱温度が低くなるように設定される。本実施形態では、加熱ロッド12の加熱温度は、120度、140度、160度、180度に設定される。
【0013】
図2及び
図3に示すように、電装基板17には、4個の温度表示ランプ31,32,33,34及び1個のロック表示ランプ35が支持されており、これらのランプ31~35はメインフレーム16の透孔36内に位置している。温度表示ランプ31~34は、それぞれ加熱ロッド12の選択された設定温度に従って択一的に表示する。ロック表示ランプ35は、設定された加熱温度がロックされた状態を示す。電装基板17には加熱ロッド12が設定された加熱温度に達したカールセット可能モードを点灯表示するモード表示ランプ37が支持されている。モード表示ランプ37は一対の発光部371を有している。メインフレーム16にはモード表示ランプ37の発光部371と対向する左右一対のスリットよりなる透光窓38が形成されている。この透光窓38には透明な合成樹脂板が嵌められている。
【0014】
図5に示すように、上部カバー20の内面には黒色の塗膜よりなる遮光膜40が付されている。この遮光膜40において、前記温度表示ランプ31,32,33,34と対向する位置には、加熱ロッド12の設定温度を示す温度表示文字41が付されるとともに、ロック表示ランプ35と対向する位置にはロック状態を示す図形マーク42が付されている。遮光膜40の透光窓38と対向する部分には表示窓43が付されている。温度表示文字41,図形マーク42及び表示窓43は、遮光膜40を部分的に文字,図形または窓形状に白抜きする(黒色の塗膜が形成されていない)ことによって形成されている。従って、ランプ31~35が点灯することにより、上部カバー20に温度表示または図形が表れる。また、モード表示ランプ37が点灯することにより、表示窓43が発光される。ランプ31~35,37の表示態様は後述する。
【0015】
図6~
図10に示すように、モード表示ランプ37は、連結部372によって連結された左右一対のランプ収容部373と、そのランプ収容部373の上面から上方へ突出する導光部374とを備えている。このランプ収容部373と、導光部374とにより発光部371が構成されている。そして、ランプ収容部373内の発光ダイオードよりなるランプ(図示しない)が発光することにより、導光部374が光を放射する。この光放射によって、透光窓38及び表示窓43を介して、ハンドル11においてクリップレバー13の両側位置が発光される。
【0016】
次に、加熱ロッド12及びその関連構成について説明する。
図4(a)及び
図11~
図13に示すように、メインフレーム16の前端部には支持部材46が固定されており、その支持部材46の前端にはフランジ47が形成されている。フランジ47の前面の上下位置及び左右位置にはそれぞれほぼU字状をなす位置規制突起(以下、突起という)48,49が形成されている。フランジ47の外周には鯉口形状(ほぼ円筒状)の保持リング50が取り付けられている。
【0017】
図4(a)及び
図11~
図13に示すように、フランジ47の前面側の上下位置には断面ほぼ半円形をなす半割形状の上下一対のハウジングとしてのロッド片55,56の後端が当接されている。ロッド片55,56は、アルミニウムやアルミニウム合金などの熱伝導性の良好な金属によって構成されている。ロッド片55,56の周壁57の内面の中央部には一対の突条58が一体形成されている。ロッド片55,56の周壁57の両側端には内側に向かってリブ59が形成されている。リブ59は第1部分591と、その第1部分591から直角をなす第2部分592とを備えている。第1部分591と第2部分592との間には溝部60が形成されている。そして、ロッド片55,56は、その外周面が保持リング50によって位置規制されるとともに、内周面が突起48によって位置規制され、さらにリブ59が突起49によって位置規制されている。この状態において、フランジ47側から突条58の端面に螺入するねじ61によってロッド片55,56がフランジ47に固定されている。
【0018】
上部側のロッド片55の両突条58間において、周壁57にはそのほぼ全長にわたって複数の透過孔62が2列に形成されている。
図11~
図13に示すように、ロッド片55,56の周壁57の外周面の全体にはポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂よりなる低摩擦係数のスライドシート63が接着剤により貼着されている。従って、上部側のロッド片55の透過孔62はスライドシート63によって覆われている。両ロッド片55,56のリブ59の第1部分591間であって、この第1部分591におけるスライドシート63の折り曲げ部間には耐熱性及び柔軟弾力性を有するシリコーンゴムよりなる封止部材64が介在されている。この封止部材64は突条68を有しており、この突条68が溝部60に嵌合されて、位置決めされている。
【0019】
図4(a),(b),
図12及び
図14に示すように、突条58間には金属薄板よりなる受け板65が嵌合されている。この受け板65上には板状をなすメタルクラッドヒータ(金属内に発熱素子が封止された構造のものであって、以下、ヒータという)よりなる板状のヒータ66が支持されるとともに、上部側のロッド片55のヒータ66上にはカーボンやセラミックよりなる板状の遠赤外線発生体(以下、発生体という)67が重ねられている。そして、上部側のロッド片55の遠赤外線発生体67と周壁57との間及び下部側のヒータ66と周壁57との間には熱伝導性を向上させるための熱伝導ペースト(図示しない)が介在されている。そして、ヒータ66が発熱することにより加熱ロッド12全体が加熱される。また、ヒータ66の発熱によって遠赤外線発生体67が遠赤外線を発生する。その遠赤外線は透過孔62及びロッド側のスライドシート63を透過して、外部に放射される。受け板65にはヒータ66の温度を検出するためのサーミスタなどよりなる温度センサ69が支持されている。
【0020】
図2,
図4(a)及び
図14に示すように、加熱ロッド12の前端には補助ハンドル71が取り付けられている。この補助ハンドル71はフランジ部材72を有しており、このフランジ部材72はその中心に支柱73が一体形成されている。この支柱73には金属製のメッキを施した円形の加飾板74が取り付けられている。加飾板74及びフランジ部材72はねじ75によって両ロッド片55,56の突条58の前端に固定されている。加飾板74の外周には加飾のための環状部76が形成されている。支持部材46のフランジ47と同様にフランジ部材72の後側面には前記突起48,49と同形状の突起48,49が形成されており、この突起48,49によってロッド片55,56の前端が位置規制されている。
【0021】
フランジ部材72の前端面にはコニーデ形状の中間部材80が配置されている。その中間部材80を内包するように、フランジ部材72の前面側には使用者によって把持される把持部材81が配置されており、この把持部材81は、ねじ75によって支柱73の先端に固定されている。把持部材81の前面の凹部83には、ねじ75の頭部を隠蔽するための加飾板84が嵌合されている。フランジ部材72と中間部材80との間、中間部材80と把持部材81との間には熱伝導を遮るための空間85が形成されている。
【0022】
次に、クリップレバー13及びその関連構成について説明する。
図4(a)及び
図14に示すように、クリップレバー13は、上部のロッド片55側に設けられ、合成樹脂製の操作部材91と、金属製の放熱部材92と、操作部材91と放熱部材92との間に介在された合成樹脂製の介装部材93と、金属製のレバー体94とを備えている。この放熱部材92及びレバー体94は、アルミニウムやアルミニウム合金などの熱伝導性の良好な金属によって構成されている。操作部材91は、その両側に脚部95を有しており、この脚部95において、支持部材46に軸96を介して回動可能に支持されている。放熱部材92は操作部材91の下面側に位置している。レバー体94は介装部材93を介して操作部材91に固定されている。クリップレバー13はスプリング98によって図の反時計回り方向に付勢されている。従って、クリップレバー13はレバー体94が加熱ロッド12の上部外周面に接する方向に付勢されている。
【0023】
図12に示すように、レバー体94の下部内面には凹部97が形成されており、この凹部97の内底面にレバー側のスライドシート99が貼着されている。スライドシート99の両側縁において、凹部97の深さとスライドシート99の厚さは等しくなっており、スライドシート99の両側縁とレバー体94の表面は同一面を形成するように連続している。レバー体94の下部内周面はその曲率半径が加熱ロッド12の外周面の曲率半径よりわずかに大きく形成されている。このため、レバー体94の両側と加熱ロッド12の外周面との間には、頭髪を導入するための間隔が形成されている。
【0024】
スライドシート63,99は、ロッド片55,56及びレバー体94を構成する金属の表面の摩擦係数より低い摩擦係数を有するとともに、遠赤外線を良好に透過させる。
次に、実施形態のカールアイロンの電気関係の構成について説明する。
【0025】
図15に示す給電回路にはトライアックなどのスイッチング素子よりなる保護スイッチ101が接続されている。また、給電回路には、トライアックなどのスイッチング素子よりなるヒータスイッチ103、ヒータ66及び温度ヒューズ102よりなる直列回路104が2列並列接続されている。温度ヒューズ102はヒータ66の裏面側に位置するように、受け板65に支持されており、ヒータ66が規定温度以上になると溶断する。保護スイッチ101は過電流などの異常事態にオフされる。ヒータスイッチ103は電源スイッチ24のオン時において、温度センサ69の温度検出に従ってオン・オフ動作される。つまり、加熱ロッド12の温度がプラス側スイッチ25及びマイナス側スイッチ26による設定温度を上回ったことが温度センサ69によって検出されると、ヒータスイッチ103がオフされて、ヒータ66の発熱が停止される。加熱ロッド12の温度が設定温度を下回ったことが温度センサ69によって検出されると、ヒータスイッチ103がオンされて、ヒータ66が発熱する。
【0026】
図16に示すカールアイロン全体の動作を制御する制御手段としての制御装置105の入力側には温度センサ69が接続されるとともに、出力側には保護スイッチ101及びヒータスイッチ103が接続されている。制御装置105は、温度センサ69からの検出信号によって加熱ロッド12の表面温度を判別する。制御装置の105の入力側には電源スイッチ24,プラス側スイッチ25,マイナス側スイッチ26などが接続されるとともに、出力側には各種ランプなどが接続されているが、それらは図示しない。
【0027】
以上のように構成されたカールアイロンの作用を説明する。
図1及び
図2はカールアイロンの不使用状態を示している。この状態では、クリップレバー13がスプリング98の付勢力により加熱ロッド12の外周面に接する閉鎖位置に配置されている。
【0028】
カールアイロンを使用して頭髪をカールさせる場合には、電源スイッチ24をオンする。このようにすれば、制御装置105の制御により各種の動作の実行が開始される。次いで、120度~180度の4段階の加熱温度を択一選択するためのプラス側スイッチ25またはマイナス側スイッチ26がオン操作されれば、両ヒータスイッチ103がオン動作されて、ヒータ66が発熱動作される。これによって、制御装置105の制御により、加熱ロッド12はその外周面が選択設定された温度まで上昇し、その温度が維持される。ここで、加熱ロッド12の外周面の温度が設定温度をわずかに越えると、温度センサ69からの検出信号に基づいてヒータ66の発熱動作が停止される。そして、加熱ロッド12の外周面の温度が設定温度をわずかに下回ると、温度センサ69の検出に基づいて、ヒータ66が発熱されて、加熱ロッド12が設定温度に向かって上昇される。このようにして、加熱ロッド12は選択された設定温度を境にした上下に幅を有する温度領域の範囲内に維持される。この場合の温度領域の上下の範囲は、例えば選択された温度の上方及び下方に2度である。設定温度はこの温度範囲を含む。
【0029】
また、ヒータ66が発熱動作を介して、設定温度に達するまでは、設定温度を示すいずれかの表示文字を示す温度表示ランプ31~34が赤色で点滅し、設定温度に達したら白色に切り換わって継続点灯して、設定温度に達したことを表示する。また、加熱ロッド12の外周面が設定温度に達したら、モード表示ランプ37が点灯して、カールアイロンが使用可能状態であることを表示する。
【0030】
加熱ロッド12が選択された設定温度に維持されて状態において、カールアイロンは使用者によって使用される。すなわち、使用者は、ハンドル11を持つとともに、スプリング98の力に抗して、クリップレバー13を開放して、頭髪を加熱ロッド12とクリップレバー13との間に挟み込み、クリップレバー13を閉じる。このようにすれば、頭髪が加熱ロッド12上においてスプリング98の力に従ってクリップレバー13によって弾性的にクリップされる。つまり、頭髪は加熱ロッド12による加熱下において、加熱ロッド12の円弧状外周面とクリップレバー13の円弧状内周面との間にカールした状態でクリップされる。そして、カールアイロンを頭髪の毛先方向に移動させれば、頭髪がクリップ状態で加熱ロッド12とクリップレバー13との間を加熱されながら移動されて、加熱ロッド12の熱によってカールセットされる。
【0031】
なお、加熱ロッド12の外周面が設定温度に達したときから、一定時間(例えば5秒)越えた場合は、ロック表示ランプ35が点灯するとともに、プラス側スイッチ25及びマイナス側スイッチ26の短い時間の操作が無効化されて、設定温度の変更が阻止される。このとき、プラス側スイッチ25及びマイナス側スイッチ26を長押し(例えば、2秒)すれば、設定温度が変更される。これは、使用者がカールアイロンの使用中に、プラス側スイッチ25及びマイナス側スイッチ26を誤操作して、設定温度が選択温度から外れることを防止するためである。
【0032】
カールアイロンの使用において、使用者は、ハンドル11を持つ手とは反対側の手で補助ハンドル71を持つことができて、カールアイロンを頭髪のカールセットのために安定して移動させることができる。そして、このとき、クリップレバー13の曲率半径が加熱ロッド12の外周面の曲率半径より大きく、その両側縁の部分と加熱ロッド12の外周面との間に間隔が形成されているため、頭髪はクリップレバー13の側縁に引っかかることなく、隙間に円滑に導入される。
【0033】
なお、少なくとも一方のヒータスイッチ103が何らかの原因により不具合状態になって、絶縁破壊されると、ヒータ66が設定温度を越えて発熱動作を継続することがある。このような場合は、温度ヒューズ102が溶断される。従って、ヒータ66に対する通電がオフされて、加熱ロッド12が規定温度を越えることが回避される。
【0034】
本実施形態のカールアイロンは以下の効果を有する。
(1)本実施形態においては、特許文献1及び特許文献2のカールアイロンとは異なり、加熱ロッド12の外周面及びクリップレバー13の内周面の双方に、低摩擦係数のスライドシート63,99が貼着されている。このため、頭髪は加熱ロッド12とクリップレバー13との間をスムーズに通り抜けることができる。従って、使用者は頭髪が無理に引っ張られるような不快を感じることなく、カールアイロンを軽い力で円滑に操作できて、快適な使用感を得ることができる。言い換えれば、頭髪を高い圧力で加熱ロッド12とクリップレバー13との間に挟み込んでも、頭髪が加熱ロッド12とクリップレバー13との間をスムーズに通り抜けることができるため、頭髪を適切にカールさせることができる。
【0035】
(2)頭髪を加熱ロッド12とクリップレバー13との間に挟持した状態においては、金属より低硬度の柔軟弾力性を有するスライドシート63,99により、頭髪に対するクッション効果を得ることができる。従って、頭髪が加熱ロッド12とクリップレバー13との間をスムーズに通り抜けることと相俟って、頭髪のキューティクルが圧潰されることが抑制されて、頭髪のツヤなどを保護できる。
【0036】
(3)以上のことから、加熱ロッド12の加熱温度を必要以上に高くする必要がない。よって、頭髪の熱変質を抑制できるとともに、頭髪の水分蒸発を少なくして、頭髪の水分量を適量に維持できて、頭髪を保湿でき、頭髪のダメージを大幅に低減できる。従って、頭髪のツヤを保持できるとともに、枝毛や変色を極力回避できて、頭髪を適切にカールさせることができる。
【0037】
(4)クリップレバー13の内周面に凹部97を形成して、その凹部97内にスライドシート99を設けている。そのため、頭髪がスライドシート99の側縁に引っかかることを防止できて、さらに快適な使用感を得ることができるばかりでなく、頭髪のダメージを回避できる。また、スライドシート99の側縁の露出を抑えることができるため、スライドシート99の側縁の破損や剥離を防止できる。
【0038】
(5)加熱ロッド12が半割状のロッド片56によって構成され、スライドシート63の両側縁をロッド片56の内側,つまりリブ59側に折り込んで、その折り込み位置間にシリコーン樹脂よりなる封止部材64を介在させている。これによって、スライドシート63の側縁が封止部材64によって押さえられる。従って、スライドシート63がその側縁から剥離したり、上下のスライドシート63の折り込み部間に隙間が生じたりすることを回避できる。このため、カールアイロンの外観が損なわれたり、加熱ロッド12内の熱がロッド片56間の隙間から逃げたり、隙間に頭髪が噛み込まれたりすることを回避できる。また、濡れた頭髪にアイロンをかける場合であっても、水滴や水分が両ロッド片56の間から加熱ロッド12内に浸入することを防止できる。
【0039】
(6)ロッド片56が半割形状であるため、その外周面に対して円筒状ではなく、平らなスライドシート63を貼着すればよいだけである。従って、スライドシート63として、熱シュリンクする材質のものは不要であって、材料の制約が少ないとともに、貼り付けられたスライドシート63に凹凸が形成されることはなく、見栄え良く簡単に貼着できる。これに対し、加熱ロッドを1本の円筒により構成するとともに、スライドシートとして平らなものを用いて加熱ロッドの外周面に巻き付ける場合は、以下の問題がある。すなわち、1本の円筒の加熱ロッドに巻き付けられるスライドシートは、側縁を突き合わせるか、重ねる必要がある。スライドシートの端縁を突き合わせる場合は、スライドシートの大きさや巻き付け精度を高精度にしないと、側縁間に間隔が生じる。また、スライドシートの側縁を重ねる場合は、側縁間に隙間は生じないが、重ね合わせによる段差が生じて、外観や使用感が損なわれる。また、平らなスライドシートではなく、円筒状のスライドシートを用いた場合は、熱によってシュリンクする材質のものを用いなければ、スライドシートの表面に凹凸が生じるおそれがあって、スライドシートとして、熱シュリンク性質が必要となり、使用材質の制約が生じる。
【0040】
(7)加熱ロッド12として、半割状のロッド片56を用いているため、ロッド片56の開放部から、カールアイロンの組み立てに際して、熱伝導グリスを塗布することや、ヒータ66などの部品を組み付けることが容易にできて、カールアイロンの組み立てが容易になる。
【0041】
(8)加熱ロッド12の後端部の外周面は保持リング50によって隙間のない把持状態に保持されるとともに、加熱ロッド12の前端部の外周面は加飾板74の環状部76によって把持状態に保持されている。これによって、加熱ロッド12の両端における頭髪の挟み込みや水の浸入を回避できて、カールアイロンの快適使用に寄与できる。また、加熱ロッド12の両端の外周面が保持リング50及び環状部76によって隠蔽されているため、加熱ロッド12の両端からのスライドシート63の剥離を防止できる。
【0042】
(9)上部側のロッド片に透過孔62が形成されているため、ヒータ66の発熱にともない発生体67から発生された遠赤外線が透過孔62を通り、スライドシート63を透過して外部に放出される。よって、その遠赤外線によってスライドシート63の発熱が促進されるとともに、大量の遠赤外線が頭髪に供給される。従って、遠赤外線を頭髪のカールセットに利用できるため、加熱温度を高くすることなく頭髪を適切にセットできる。このため、このセットを短時間で行うことができるとともに、前記のように、頭髪の水分蒸発を少なくして、頭髪を保湿でき、頭髪のダメージを大幅に低減できる。従って、頭髪のツヤを保持できるとともに、枝毛や変色を極力回避できる。なお、透過孔62がスライドシート63によって塞がれるため、濡れた頭髪にアイロンをかける場合であっても、水滴や水分が透過孔62から加熱ロッド12内に浸入することを防止できる。
【0043】
(10)加熱ロッド12の両端開放部が支持部材46のフランジ47及びフランジ部材72によって閉鎖されている。従って、加熱ロッド12内の熱がハンドル11及び補助ハンドル71側へ熱が逃げることを抑制できる。このため、ハンドル11及び補助ハンドル71を快適に把持できるとともに、ハンドル11の内部の電気部品に悪影響が及ぶことを回避できる。
【0044】
(11)クリップレバー13の操作部材91を複数の部品を介してレバー体94に連結しているとともに、金属製の放熱部材92が設けられているため、ヒータ66の温度がクリップレバー13の操作部材91に伝わりにくい。このため、使用者はクリップレバー13を快適に開閉操作できる。
【0045】
(12)加熱ロッド12の先端の補助ハンドル71は、複数の部品によって構成されるとともに、部品間に空間85が形成されている。従って、ヒータ66からの熱が最も外側の把持部材81に伝わることを抑制できて、補助ハンドル71を快適に操作できる。
【0046】
(13)加熱ロッド12を加熱させるためのヒータ66としてメタルクラッドヒータを用いている。このため、ヒータ66は電源スイッチ24やプラス側スイッチ25のオン操作にともなうヒータスイッチ103のオン・オフ動作に素早く応答して、発熱及び発熱停止を適切に実行する。従って、電源スイッチ24のオン操作により加熱ロッド12がただちに使用可能な温度に達することができる。また、プラス側スイッチ25のオン操作により、加熱ロッド12がただちに所要の設定温度に達することができる。さらに、温度センサ69による加熱ロッド12の温度検出により加熱ロッド12がただちに所要の設定温度に達することができる。以上のように、メタルクラッドヒータを用いたことにより、電源スイッチ24のオン操作により、カールアイロンをただちに使用できる。また、加熱ロッド12は使用者によって設定された温度に温度範囲を正確に維持することができて、カールアイロンは使用者の意に沿って適切に発熱する使用しやすいものとなる。これに対し、一般に使用されているチタン酸バリウムなどの半導体ヒータは、電源のオン・オフに対する応答性が劣って、発熱までに時間がかかる。このため、従来のカールアイロンにおいては、電源スイッチをオンしても、しばらく待たないと使用可能な状態にはならない。しかも、前記のように半導体ヒータは応答性が劣るために、温度低下後の昇温に時間がかかり、加熱ロッド12の温度を設定温度に保持することが困難である。従って、発熱源として半導体ヒータを用いたカールアイロンは使い勝手が劣るものとなる。
【0047】
(14)加熱ロッド12のヒータ66が一対のロッド片55,56のそれぞれに設けられるとともに、各ヒータ66がロッド片55,56の内部の温度センサ69からの検出信号に基づいて、制御装置105の制御によるヒータスイッチ103の動作によって単独で発熱動作を制御される。このため、両ロッド片55,56の温度を均等に維持できる。従って、加熱ロッド12に頭髪を巻き付けた際に、ヒータが単一のカールアイロンとは異なり、クリップレバー13にロッド片55の熱が移っても、クリップレバー13が存在する側のロッド片55と存在しない側のロッド片56との間に温度差が生じることを抑制できる。すなわち、ヒータが単一のアイロンにおいては、加熱ロッドのクリップレバー側の温度がクリップレバーに移って、そのクリップレバー側の部分が温度低下して、加熱ロッド全体として温度が不均一になり、カールセットに好ましくない影響が生じるおそれがある。本実施形態のカールアイロンにおいては、このようなおそれを解消して、加熱ロッド12の全周において頭髪に対して均等な熱を加えることができ、使用者が意図する度合いのカールセットを実現できる。
【0048】
(15)加熱ロッド12の外周面が設定温度に達したことを示すモード表示ランプ37は、左右一対の導光部374から光を放射すれる。この放射によって、透光窓38及び表示窓43を介して、ハンドル11においてクリップレバー13の両側位置が発光される。つまり、クリップレバー13の操作部材91の両側から光が放射されるため、操作部材91が存在していても、邪魔になることなく、発光状態を確認できる。
【0049】
(変更例)
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化することもできる。そして、前記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0050】
・ロッド側のスライドシート63及びレバー側のスライドシート99として、フッ素樹脂以外のもの、例えば高密度ポリエチレン製のものを用いること。
・前記実施形態では、加熱ロッド12を半割形状の一対のロッド片56によって構成したが、円筒を3または4分割したロッド片を用いること。
【0051】
・加熱ロッド12のロッド片55,56及びクリップレバー13のレバー体94を耐熱性及び熱伝導性に優れた合成樹脂によって構成すること。
(他の技術的思想)
前記実施形態または変更例から把握され、請求項に挙げられていない技術的思想の一例は以下の通りである。
【0052】
(A)スライドシートをフッ素樹脂によって構成した請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の加温美容器具。
(B)ロッド側のスライドシートを遠赤外線透過材質のものによって構成した請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の加温美容器具。
【0053】
(C)ハンドルと、そのハンドルの先端に設けられ発熱体を内装した円筒状の加熱部と、前記ハンドルに支持され前記加熱部に対して開閉可能にしたクリップレバーとを備えたカールアイロンにおいて、前記加熱部を一対の半割状のハウジングにより構成するとともに、前記クリップレバーを一方のハウジング側に設け、前記発熱体を前記両ハウジング内にそれぞれ設けたカールアイロン。
【0054】
(D)前記発熱体の温度を検出するための温度センサを前記両ハウジング内にそれぞれ設け、その温度センサからの温度検出に基づいて前記発熱体の動作を制御する制御手段を設けた前記技術的思想(C)項に記載のカールアイロン。
【0055】
(E)両ハウジングの端縁間に合成樹脂よりなる介装部材を挟持した前記技術的思想(C)または(D)項に記載のカールアイロン。
【符号の説明】
【0056】
11…ハンドル
12…加熱ロッド
13…クリップレバー
55…ロッド片
56…ロッド片
62…透過孔
63…スライドシート
66…ヒータ
69…温度センサ
93…介装部材
97…凹部
99…スライドシート
105…制御装置