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  • 特許-架線の高さ・偏位測定装置 図1
  • 特許-架線の高さ・偏位測定装置 図2A
  • 特許-架線の高さ・偏位測定装置 図2B
  • 特許-架線の高さ・偏位測定装置 図3
  • 特許-架線の高さ・偏位測定装置 図4
  • 特許-架線の高さ・偏位測定装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】架線の高さ・偏位測定装置
(51)【国際特許分類】
   B60M 1/28 20060101AFI20240501BHJP
   G01B 5/00 20060101ALI20240501BHJP
   G01L 5/107 20200101ALI20240501BHJP
【FI】
B60M1/28 R
G01B5/00 S
G01L5/107
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020154433
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048555
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】本田 健悟
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】中山 泰知
(72)【発明者】
【氏名】北野 恒平
(72)【発明者】
【氏名】日渡 貴広
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3200085(JP,U)
【文献】実開昭57-014801(JP,U)
【文献】特公昭31-005931(JP,B1)
【文献】特開2002-328063(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0111955(KR,A)
【文献】特開平11-348779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/28
G01B 5/00
G01L 5/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線の水平偏位を測定するための水平偏位測定部と、
前記水平偏位測定部を前記架線の高さに支持するとともに当該架線の高さを測定するための高さ測定部と、
一対のレール上に載置されて前記高さ測定部を支持する支持台と、を具備する架線の高さ・変位測定装置において、
前記高さ測定部は、前記一対のレール間の中央対応位置において前記支持台に垂直に立設される支持筒と、下部において前記支持筒に昇降自在に挿入され前記架線の高さを測定するための上下方向の目盛を備える伸縮柱とを具備し、
前記伸縮柱は、前記支持台上に設けられたウィンチに巻かれるワイヤの牽引により前記支持筒に対して昇降自在に設けられ、
前記ワイヤの延線途上に、前記高さ測定部の前記架線に対する押し上げ荷重を測定するための張力測定装置が介設されることを特徴とする架線の高さ・変位測定装置。
【請求項2】
前記張力測定装置は、前記支持台に固定された秤からなり、当該秤の引き手に接続された牽引滑車に前記ワイヤの延線途上が掛けられることを特徴とする請求項1に記載の架線の高さ・変位測定装置。
【請求項3】
前記ワイヤは、一端側において前記支持筒の上端部に係止され、前記支持筒内に引き下ろされて前記伸縮柱の下端の動滑車を経て上方へ折り返され、前記支持筒の上端部に設けられた定滑車を経て下方へ折り返され、前記牽引滑車を経て前記ウィンチのドラムに巻かれることを特徴とする請求項に記載の架線の高さ・変位測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道線路の上方に架設された架線の高さ及び水平偏位を測定するための架線の高さ・水平偏位測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道線路に沿って設けられた架線の高さ及び水平偏位を測定するための測定具が知られている(例えば、特許文献1参照)。この測定具は、架線の水平偏位を測定するための水平偏位測定部(横尺)と、水平偏位測定部を架線の高さに支持するとともに、架線の高さを測定するための高さ測定部(測定竿)と、一対のレール間にわたすようレール上に載置され、高さ測定部を支持する脚部(支持台)とを有している。高さ測定部及び偏位測定部にはそれぞれ目盛が施され、高さ測定部の目盛により架線の高さを、偏位測定杆の目盛により架線の水平方向の偏位を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第320086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
架線の高さ・水平偏位の測定は、列車のパンタグラフの所定の押し上げ荷重により架線が押し上げられた状態で実施する必要がある。上記従来の測定具による場合には、架線の押し上げは、偏位測定部を人力で押し上げる方法によるほかなく、作業負担を強いるばかりでなく、適正な押し上げ荷重を得ることが困難であるという問題点がある。
そこで本発明は、余計な作業負担をかけずに、パンタグラフによる架線の押し上げを再現した上で架線の高さ・水平偏位を測定することができる測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための、本発明の架線の高さ・偏位測定装置は、架線Tの水平偏位を測定するための水平偏位測定部2と、これを架線Tの高さ位置に支持するとともに当該架線Tの高さを測定するための高さ測定部3と、 一対のレールR上に載置されて高さ測定部3を支持する支持台4とを具備する。高さ測定部3は、一対のレールR、R間の中央対応位置において支持台4に垂直に立設される支持筒31と、下部において支持筒31に昇降自在に挿入され架線Tの高さを測定するための上下方向の目盛S1を備える伸縮柱32とを具備する。伸縮柱32は、支持台4上に設けられたウィンチ51に巻かれるワイヤ52の牽引により支持筒31に対して昇降自在に設けられる。ワイヤ52の延線途上に、高さ測定部3の架線Tに対する押し上げ荷重を測定するための張力測定装置56が介設される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、地上のウィンチの操作で変位測定部を押し上げ、これにより作業者の大きな負担なく架線を押し上げることができ、しかも架線の押上荷重を張力測定装置により正確に把握してウィンチを調整できるので、架線に対するパンタグラフの押上状態を正確に再現して、架線の高さおよび偏位を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る架線の高さ・偏位測定装置の正面図である。
図2A図1の高さ・偏位測定装置水平偏位測定部の最収縮状態を示す正面図である。
図2B図1の高さ・偏位測定装置水平偏位測定部の伸長途上を示す正面図である。
図3】偏位測定部の下面の仰視図である。
図4】押上機構の正面図である。
図5】伸縮柱の下端部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の一形態に係る架線の高さ・偏位測定装置について、図面を参照して説明する。
図1ないし図2Bに示すように、架線の高さ・水平偏位測定具1は、鉄道のトロリ線などの架線Tの高さおよび水平偏位を測定するためのもので、架線Tの水平偏位を測定するための水平偏位測定部2と、架線Tの高さを測定するための高さ測定部3と、一対のレールR上に載置され高さ測定部3を支持する支持台4とを具備する。高さ測定部3は、水平偏位測定部2を架線Tの高さ位置に支持する。
高さ測定部3は、一対のレールR間の中央対応位置において支持台4に垂直に立設される支持筒31と、下部において支持筒31に昇降自在に挿入される伸縮柱32とを具備する。伸縮柱32は、架線Tの高さを測定するための上下方向の高さ測定目盛S1を下部に備える。伸縮柱32は、押し上げ機構5により、支持筒31に対して昇降自在に設けられる。
【0009】
支持台4は、一対のレールR間にわたってレールR上に載置されるベース板41と、その両端部に設けられた車輪42と、位置規制部材43とを具備する。車輪42は、ベース板41を測定部2,3と共にレールRの延線方向に傾けた状態で、レールR上を転動するように設けられ、装置の移動用に用いられる。位置規制部材43は、レールRの内側面に当接して装置の水平方向の位置を規制する。
【0010】
図示の実施形態において、伸縮柱32は、入れ子式に組み込まれ、伸長位置で連結ピンにより相互に固定される複数の継竿材32a~32dで構成され、全体が収縮して支持筒31に組み込まれる。最下部の継竿材32aの側面には、上下方向に高さ測定用の目盛S1が付されている。目盛S1は、上部の2つの継竿材32c,32dを伸張させて架線Tに当接させた状態と、3つの継竿材32b,32c,32dを伸張させて架線Tに当接させた状態との二様の伸張状態に対応して高さを測定できるように、2通り表示され、支持筒31の上端で高さが読み取れる。
【0011】
偏位測定部2は、中央で高さ測定部3の先端部に接続分離可能に連結される接触板21と、それの両端部に固定される障害物検知センサ22とを具備する。接触板21は、リブ23により水平を保つように支持され、図3に示すように、下方から架線Tとの接触位置を目視してその偏位距離を計測できるように偏位測定目盛りS2が表示される。接触板21は、列車のパンタグラフを模した形状に構成され、測定時にパンタグラフの支障確認を行えるように設けられる。障害物検知センサ22は、リミットスイッチで構成され、偏位測定部2の左右にあるわたり線等の障害物を検出してブザー24を鳴動させる。
【0012】
図4を参照して、伸縮柱32の押上機構5について説明する。押上機構5は、支持台4上のウィンチ51によりそのハンドル51aを回転操作してワイヤ52を巻き上げ、巻き戻しすることにより伸縮柱32を支持筒31に対して昇降させるものである。ワイヤ52の一端は支持筒31の上端部に係止され、図5に示すように、支持筒31内に引き下ろされて伸縮柱32の下端に固着された動滑車53を経て上方へ折り返され、支持筒31の上端部に設けられた定滑車54を経て下方へ折り返され、牽引滑車55を経てウィンチ51のドラムに巻かれる。デジタル吊り秤からなる張力測定装置56が支持台4に固定されており、それの引き手に接続された測定滑車57にワイヤ52の延線途上が掛けられる。この張力測定装置56により、伸縮柱32の架線Tに対する押し上げ荷重を測定することができる。
【0013】
この測定装置1は、レールR上で車輪42を転動させながら架線Tの測定箇所の下方に移動させる。伸縮柱32を所定の長さに伸ばしてから、ウィンチ51をハンドル51aにより手動でまたはこれに代えてモータ駆動で巻き上げることにより、高さ測定部3を押し上げ、接触板21を架線Tに当接させる。さらに、ウィンチ51を巻き上げ、接触板21で架線Tを押し上げる。接触板21による架線Tの押上荷重が所定値(パンタグラフによる架線Tの標準押し上げ荷重)に達したことをデジタル吊り秤56で確認したら、目盛りS1,S2により架線Tの水平偏位及び高さを測定する。従って、測定装置1によれば、作業車に負担をかけることなく、列車通過時のパンタグラフの押上状態を再現し、架線の高さおよび偏位を測定することができる。
【符号の説明】
【0014】
1 架線の高さ・水平偏位測定具
2 水平偏位測定部
21 接触板
22 障害物検知センサ
23 リブ
24 ブザー
S2 偏位測定目盛
3 高さ測定部
31 支持筒
32 伸縮柱
32a~32d 継竿材
S1 高さ測定目盛
4 支持台
41 ベース板
42 車輪
43 位置規制部材
5 押上機構
51 ウィンチ
52 ワイヤ
53 動滑車
54 定滑車
55 牽引滑車
56 張力測定装置
57 測定滑車
T 架線
R レール
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5