(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】電気掃除機
(51)【国際特許分類】
A47L 9/16 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
A47L9/16
(21)【出願番号】P 2020163024
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 寿之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 則和
(72)【発明者】
【氏名】川本 孔陽
(72)【発明者】
【氏名】大林 史朗
(72)【発明者】
【氏名】小野瀬 孝徳
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-110509(JP,A)
【文献】特開2014-008305(JP,A)
【文献】特開2014-083221(JP,A)
【文献】特開2020-018668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵埃を含む空気が開口から吸い込まれる吸込管と、
前記空気に含まれるゴミを旋回流で分離するダストケースと、
前記吸込管と前記ダストケースとの間に設けられる導入管と、
前記空気の吸引力を発生させる電動送風機とを備え、
前記導入管は、前記空気を前記吸込管内を流れる方向から前記ダストケースがある方向へほぼ直角に変更するエルボ管状を成し、
前記吸込管から前記空気が流入す
る前記導入管の壁面には、前記空気をダストケースに案内する凸状に形成され
る整流リブが設けられ
、
前記整流リブの高さは、上流側及び下流側が中流部より低くなっている
ことを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
請求項1に記載の電気掃除機において、
前記整流リブは、複数設けられている
ことを特徴とする電気掃除機。
【請求項3】
請求項1に記載の電気掃除機において、
前記整流リブは、
複数設けられ、かつ、略平行または略等間隔に設けられている
ことを特徴とする電気掃除機。
【請求項4】
請求項1に記載の電気掃除機において、
前記整流リブの接線は、
常に前記ダストケースの分離室の上側(前記電動送風機側)に向けて設けられている
ことを特徴とする電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開平2016-131791号公報(特許文献1)がある。この公報には、電動送風機の駆動により含塵空気が吸い込まれる集塵装置を具備し、集塵装置には含塵空気をカップ部の接戦方向に導くように流入口にリブが設けられた電気掃除機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電気掃除機では、吸い込まれた塵埃を含む空気から大きなゴミを遠心力により分離する旋回流を作るため、ダストケースの流入口に案内リブを設けることで、塵埃を含む空気をダストケースの接線方向に方向転換させている。しかし、ダストケースに案内リブを設ける場合、流れの向きを無理やり変えるので、急激な流れの変化により損失が大きくなったり、騒音が発生する場合がある。
【0005】
また、電気掃除機には、延長管が接続される吸込管とダストケースとを接続する導入管が設けられている。導入管は、吸い込まれた塵埃を含む空気が直線状に流れる吸込管と、吸込管の気流方向と垂直な旋回流が流れるダストケースとを接続する。
【0006】
そのため、流入管と導入菅の接続部および導入管の内部では流れの方向を転換させる必要があるが、急激な流れの方向転換は損失の増加と騒音の発生を招くため、流路断面積は大きく確保しておくことが望ましい。しかしながら、急激な流路面積の拡大もまた、流れに乱れを発生させ、損失の増加と騒音の発生を招くおそれがある。
【0007】
本発明は上記実状に鑑み創案されたものであり、吸込管とダストケースとを接続する導入管での損失を低減しつつ、ゴミの分離性能向上が図れる電気掃除機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の電気掃除機は、塵埃を含む空気が開口から吸い込まれる吸込管と、前記空気に含まれるゴミを旋回流で分離するダストケースと、前記吸込管と前記ダストケースとの間に設けられる導入管と、前記空気の吸引力を発生させる電動送風機とを備え、前記導入管は、前記空気を前記吸込管内を流れる方向から前記ダストケースがある方向へほぼ直角に変更するエルボ管状を成し、前記吸込管から前記空気が流入する前記導入管の壁面には、前記空気をダストケースに案内する凸状に形成される整流リブが設けられ、前記整流リブの高さは、上流側及び下流側が中流部より低くなっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸込管とダストケースとを接続する導入管での損失を低減できるとともにゴミの分離性能向上が図れる電気掃除機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の電気掃除機を支持台に収納した状態の斜視図。
【
図2】実施形態の電気掃除機のハンディ状態の斜視図。
【
図3】実施形態の電気掃除機のハンディ状態の前面図の
図2のIII方向矢視図。
【
図5】電気掃除機のハンディ状態を分解した側面図。
【
図6】電気掃除機のハンディ状態の側面図の
図2のI方向矢視図。
【
図10】従来の導入管入口側の入口フランジ付近の開口の
図3のIV-IV断面相当図。
【
図12B】導入管を左斜め下方から見た導入管単体の斜視図。
【
図13】比較例(従来)の電気掃除機の
図3のV-V断面相当図。
【
図14】
図7のハンディ状態の電気掃除機の前部のII-II断面図。
【
図15】整流リブがある場合のダストケースの分離室と下部のゴミ溜め部の空気の流速図。
【
図16】従来の整流リブがない場合のダストケースの分離室と下部のゴミ溜め部の流速図。
【
図18】電気掃除機に付属品の延長管、標準吸口が接続された状態の正面図。
【
図20】スティック状態の電気掃除機で床面を掃除するときの使用形態の側面図。
【
図21】スティック状態の電気掃除機で高い場所を掃除するときの使用形態図の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に、実施形態の電気掃除機100を支持台70に収納した状態の斜視図を示す。
図1以下の図面では、掃除機本体1からみた前後左右上下の方向を適宜示している。
【0012】
電気掃除機100は、ハンディ状態(
図2参照)、スティック状態図(
図1、
図12参照)などの各種の使用形態に変えて掃除を行うことができる。電気掃除機100が収納される支持台70は、ベース部71とスタンド部72とを備えている。
【0013】
図1に示すように、電気掃除機100は、支持台70に延長管300(付属品)と標準吸口400(付属品)を接続したスティック状態で収納される。
電気掃除機100は、何れも図示しない小型吸口(付属品)、ほうき型吸口(付属品)、延長ホース(付属品)などを接続して用いることができる。なお、標準吸口400は、モータによってブラシが回転するパワーブラシ式のものである。
【0014】
図2に、実施形態の電気掃除機100のハンディ状態の斜視図を示す。
図3に、実施形態の電気掃除機100のハンディ状態の前面図の
図2のIII方向矢視図を示す。なお、
図3では、ハンディ清掃部材90を本体部10から外した状態を示している。
【0015】
図4に、電気掃除機100のハンディ状態の分解斜視図を示す。
電気掃除機100は、掃除機本体1、ダストケース2(集塵装置)、蓄電池3、ハンディ清掃部材90を備えて構成されている。
掃除機本体1は、本体部10、モータケース11、ハンドル部12を備えている。
【0016】
図4に示すように、本体部10は、延長管300や標準吸口400(
図1参照)などが接続される吸引口である接続口10aが形成されている。接続口10aは、吸込管10bの入口を形成している。
接続口10aは、略円形の開口を前方に有して形成されている。接続口10aは、本体部10、モータケース11、ハンドル部12などと同様の樹脂で成形されている。モータケース11の上板11cは、後方にいくにしたがって下降する傾斜を有している。
【0017】
接続口10aには、付属品(アタッチメント)である延長管300(
図1参照)、標準吸口400、小型吸口(図示せず)、ほうき型吸口(図示せず)などが接続できる構成である。接続口10aには、回路基板50(
図8参照)と電気的に接続されている端子(図示せず)が内蔵されている。
図1に示す標準吸口400などのモータ駆動する付属品が接続された場合は、電気的に接続されたモータ(図示せず)によってブラシが回転する。
【0018】
図4に示す本体部10には、ダストケース2が着脱自在に取り付けられるとともに、接続口10aから吸い込まれた塵挨を含む空気をダストケース2に送り込む導入管14(
図7参照)を備えている。
図5に、電気掃除機100のハンディ状態を分解した側面図を示す。
図6に、電気掃除機100のハンディ状態の側面図の
図2のI方向矢視図を示す。
【0019】
モータケース11には、電動送風機40(
図8参照)と回路基板50が内包されている。
モータケース11の前面には、ダストケース2で集塵された後の清浄な空気が吸い込まれる円形の吸込口11a(
図4参照)が形成されている。
【0020】
<ハンドル部12>
図2に示すハンドル部12は、本体部10の後側に設けられ、略L字状に形成された把持部12aを有している。把持部12aは、前後方向に後ろ側ほど漸次高くなるように直線状に延びる第1把持部12a1と、略上下方向に直線状に延びる第2把持部12a2と、を有している。第1把持部12a1は、第2把持部12a2よりも前側に位置している。第1把持部12a1は、前後方向に後ろ側ほど漸次高くなるように延びている。第2把持部12a2は、第1把持部12a1の後端から後方に向けて斜め下方に向けて延びている。
【0021】
第1把持部12a1と第2把持部12a2とは、略棒状かつ連続して形成されている。第1把持部12a1と第2把持部12a2とを、それぞれ直線状に構成することで、使用者が持ち手の位置を認識し易い。
【0022】
また、第1把持部12a1と第2把持部12a2とが直角に近い角度で折れ曲がるように接続されているので、第1把持部12a1を把持しているときに第2把持部12a2の方に手がずれ難く、逆に第2把持部12a2を把持しているときに第1把持部12a1の方に手がずれ難くなる。
そのため、隙間12c(
図2参照)に手を入れやすくなっている。
【0023】
図2に示すように、ハンドル部12の第1把持部12a1の上面には、操作ボタン12bが設けられている。操作ボタン12bは、例えば、「強」、「標準」、「切」の3つのボタンで構成されている。
【0024】
<本体部10>
本体部10の前端上部と後方上部には、延長管300などの付属品を取り外す際に操作される一つの解除ボタン18aが設けられている。解除ボタン18aを押下操作することで、本体部10と付属品とのロックが解除されて、本体部10から付属品の取り外しが可能となる。解除ボタン18aが一つで構成されるので、電気掃除機100の小型軽量化を図れる。
【0025】
図4に示すように、本体部10の前端には、ハンディ清掃部材90を取り付けることができる。ハンディ清掃部材90は、略円筒形の筒体91を有している。筒体91は、先端側に軟質の毛91a1を束にして植毛したブラシ部91aを有している。筒体91は、硬質な材料で形成され、本体部10に接続可能な接続部91bを有している。筒体91は、ブラシ部91aと接続部91bとが一体に形成されている。接続部91bを硬質のもので形成することで、ハンディ清掃部材90を本体部10に脱落することなく安定した状態で取り付けることができる。ハンディ清掃部材90は、ブラシ部91aを有するので、ブラシ部91aでゴミを掻き出しながら、電気掃除機100で吸引できるので、掃除が効率的に行える。そのため、電気掃除機100の使い勝手が向上する。
【0026】
筒体91の先端に植毛された環状の短毛91a1を備えたブラシ部91aを有するので、ハンディ清掃部材90の先端を床面に密着させることが可能になり、吸引力を向上できる。
【0027】
図4に示す本体部10の接続口10aの外側面には、縦方向に細長い嵌合溝10e、10c(
図5参照)が形成されている。嵌合溝10eは、左右両側に1条ずつと、嵌合溝10cが下部に形成されている。接続部91bの基端には、嵌合溝10e、嵌合溝10cと凹凸嵌合して係止される突起部(図示せず)が形成されている。本体部10の接続口10aの外側面に縦方向に細長い嵌合溝10e、10cが形成されるので、本体部10の接続口10aにハンディ清掃部材90に取り付け易く、使い勝手が向上する。
【0028】
<蓄電池3>
図6に示す蓄電池3は、リチウムイオン、ニッケル水素などの二次電池で構成され、吸引力を発生させる電動送風機40などに電力を供給する。
図4に示すように、蓄電池3は、合成樹脂製の略半円筒状のケース3aを有している。ケース3aを前後方向にスライドさせることで本体部10に対して着脱できる。
【0029】
<ダストケース2>
図5に示すように、ダストケース2は、サイクロン方式のものであり、導入管14(
図5、
図7参照)から吸込んだ塵埃を含む空気を、塵埃と空気とに分離し、塵埃を集める機能を有する。
図7に、実施形態の電気掃除機100の上面図を示す。
ダストケース2は、モータケース11の前方に軸方向を前後方向にして配置され、略円柱形状の収容部2aを有している。ダストケース2の上面(側面)には、導入管14と繋がる略矩形状の流入口2b(
図4参照)が形成されている。流入口2bに流入した塵挨を含む空気は、旋回流となり、塵埃に遠心力が働き、ダストケース2内で塵挨と空気とに分離された後、塵埃が分離された空気がダストケース2の後部(
図8の矢印M)から排出される。
【0030】
図4に示すように、ダストケース2の前面には、ダストケース2内に溜まった塵埃を廃棄する際に開閉する蓋2cがヒンジ部2dを介して回動自在に支持されている。また、蓋2cの上部には、蓋2cのロックを解除するための蓋ロック機構2eが設けられている。
【0031】
図2に示すように、電気掃除機100は、ダストケース2が本体部10の下方かつモータケース11の前方に取り付けられる。この場合、ダストケース2を掃除機本体1に装着すると、蓋ロック機構2eが掃除機本体1側に隠れる。これは、蓋ロック機構2eを反対側(外側)に設けた場合、掃除中に蓋ロック機構2eが解除されるおそれがある。しかし、蓋ロック機構2eが掃除機本体1側に隠れるようにすることで、誤動作を防止することができる。
【0032】
また、ダストケース2には、お手入れブラシ2s(
図4参照)が着脱自在に設けられている。お手入れブラシ2sは、ダストケース2が掃除機本体1に装着されたときに外部から見え難い位置に配置されている。
【0033】
図7に示すように、本体部10に形成された導入管14は、始めに右斜め後方に延びてその後下方に延びて、ダストケース2の流入口2b(
図4参照)と接続されている。導入管14により、
図5に示すダストケース2の収容部2a内において旋回流を発生させることができる。収容部2a内の旋回流によって、遠心力による塵埃の分離を効果的に行うことができる。
【0034】
図8に、
図7のII-II断面図を示す。
本体部10のモータケース11には、電動送風機40が収容されている。モータケース11内には、電動送風機40の上方に、掃除機本体1を制御する回路基板50が収容されている。
【0035】
電動送風機40と回路基板50とは、上下方向に重なるように配置されている。このため、掃除機本体1の前後方向の寸法を短くできる。また、電動送風機40は、モータケース11がハンドル部12側と重畳して形成されることで、本体部10の前後方向(全長)の寸法を短くできる。
【0036】
また、電動送風機40及び回路基板50は、ハンドル部12の第1把持部12a1の下方に位置している。これにより、使用者が第1把持部12a1を握って操作する場合、電気掃除機100の重心が第1把持部12a1の下方近傍になる。このため、電気掃除機100の先を上向きで使用する場合、電気掃除機100を安定して保持できる。
【0037】
また、第1把持部12a1および第2把持部12a2とモータケース11の上面板11cとの間には、手を挿入するための隙間12cが形成されている。
【0038】
モータケース11の上面板11cは、後方が下がる傾斜を有して形成されている。
回路基板50は、モータケース11の上面板11cに沿ってまたは平行に近い傾斜をもって配置されている。これにより、手を挿入するための隙間12cを狭くすることなく、モータケース11の内部の空間を広く活用できる。そのため、モータケース11の上下寸法を短くでき、掃除機本体1の小型化を図れる。
【0039】
蓄電池3は、ハンドル部12の第2把持部12a2の下方に配置されている。蓄電池3は、例えば、エネルギ効率の高いリチウムイオン電池で構成することができる。
【0040】
ダストケース2内には、収容部2aの軸方向の後端にフィルタ5が収容されている。フィルタ5は、プリーツ状に折って構成されたものであり、フィルタ面積を大きくできるとともに、フィルタ5による圧力損失を低減することができる。フィルタ5は、例えば高密度のHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)で構成されている。
【0041】
<導入管14>
図8に示すように、導入管14は、吸込管10bを直線状に流れる塵埃を含む空気をダストケース2内の旋回流の気流に変換する流路が形成されている。
延長管300(
図1参照)等を通して塵埃を含む空気が吸い込まれる吸込管10bに、導入管14の入口(入口フランジ14f1(
図12B参照))が接続されている。導入管14の出口(出口フランジ14f2 (
図9、
図12B参照))は、ダストケース2の略矩形状の流入口2b(
図4参照)に接続されている。
【0042】
ダストケース2では、塵埃を含む空気を旋回流とすることで、遠心力で大きなゴミと小さなゴミとを分離する。大きなゴミは、遠心力によりダストケース2の下部のゴミ溜め部2t(
図8参照)に貯留される。小さなゴミは、モーターケース11の上流に設けられたフィルタ5により空気から分離される。
【0043】
図9に、実施形態の
図3のIV-IV断面を示す。
図10に、従来の導入管114の入口側の入口フランジ114f1付近の開口114aの
図3のIV-IV断面相当図を示す。
前記したように、導入管14の入口側の入口フランジ14f1は、吸込管10bの右側部開口10b1(
図7参照)に結合されている。
【0044】
図9に示す導入管14の入口側の入口フランジ14f1付近の開口14aの面積は、
図10に示す従来の導入管114の入口側の入口フランジ114f1付近の開口114aの面積を大きくしている。例えば、1.6倍としている。なお、開口14aの面積の拡大率は任意である。
そのため、従来の導入管114に比較し、実施形態の電気掃除機100では、吸込管10bから導入管14に流入する塵埃を含む空気の吸入量を増加させることができる。
【0045】
しかし、開口14aの面積を大きくすると、導入管14における形状の変化が大きくなる。つまり、導入管14に形状の急変箇所ができる。導入管14の急変箇所は、空気流れの渦などの乱流発生等の損失につながる。
【0046】
<整流リブ14r>
そこで、導入管14の流路に下記の整流リブ14rを設けて、導入管14の内部を流れる空気を整流し、損失を抑制している。
具体的には、
図7、
図11に示すように、本電気掃除機100では、導入管14を流れる塵埃を含む空気が円滑にダストケース2内の旋回流に変換されるように、塵埃を含む空気を整流する整流リブ14rを一対、導入管14の内部に形成している。
図11に、
図3に示す電気掃除機100のV-V断面図を示す。
【0047】
図12Aに、導入管14単体の左側面図を示す。
図12Bに、導入管14を左斜め下方から見た導入管14単体の斜視図を示す。
前記したように、導入管14には、上流側の吸込管10b(
図7参照)に接続される入口フランジ14f1と、下流側のダストケース2の流入口2b(
図4参照)に接続される出口フランジ14f2とが形成されている。
導入管14の内部の壁面14kには、内方に突出して一対の整流リブ14rが形成されている。
【0048】
2本の整流リブ14rは、平行または略平行(等間隔または略等間隔)を維持しながら、上流側(符号14j)から下流側(符号14s)に向けて延在している。つまり、2本の整流リブ14rの間の上流側の間隔寸法s1と、下流側の間隔寸法s2とは、ほぼ等しい関係にある(s1≒s2)。これにより、整流リブ14r間を流れる空気が同方向に案内され整流の効果がより向上する。
【0049】
また、整流リブ14rの高さh(
図11参照)は、上流側(符号14j)及び下流側(符号14s)において、中流部より低くなっている。これにより、リブに空気が当たる際の抵抗をより小さくすることができる。
【0050】
図11に示すように、吸引口である接続口10aから吸入された塵埃を含む空気α21は、直線状の吸込管10bを通り、導入管14に入る。導入管14に入った塵埃を含む空気は、
図11の矢印α22に示すように、整流リブ14rに整流されて、渦などの乱流を発生させることなく導入管14に流入する。
【0051】
図13に、比較例(従来)の電気掃除機600の
図3のV-V断面相当図を示す。
これに対して、比較例(従来)の電気掃除機600では、導入管114の内部に整流リブが形成されていない。そのため、電気掃除機600の吸込管110bに吸入された空気(
図13の矢印α201)は、導入管114に吸入されるものの、一部が渦を発生させる(
図13の矢印α202)。
【0052】
本電気掃除機100では、塵埃を含む空気を、整流リブ14rにより、加速したり減速させたりすることなく、整流されたままダストケース2へ流入させている。これにより、塵埃を含む空気の損失の低減や流体音(騒音)の抑制を図れる。
【0053】
図14に、
図7のハンディ状態の電気掃除機100の前部のII-II断面図を示す。
整流リブ14rの接線c1、c2は常にダストケース2の分離室2Bの上側(電動送風機40側)を向いている。
これにより、接続口10aから吸入され吸込管10bを通った塵埃を含む空気は、整流リブ14rの作用により導入管14からダストケース2の中央部の分離室2Bに円滑に運ばれ、旋回流となる(
図14の矢印α31)。そして、旋回流の遠心力により、分離室2Bの下方のゴミ溜め部2tに大きめのゴミを溜めることができる。
【0054】
なお、整流リブ14rがない場合には、
図14の矢印α131のように、ダストケース2の分離室2Bで遠心分離されることなく、ゴミ溜め部2tに直接流れ込む気流が生じ、遠心分離効果を損なうおそれがある。
【0055】
<整流リブ14rの効果のシミュレーション>
図15に、整流リブ14rがある場合のダストケース2の分離室2Bと下部のゴミ溜め部2tの空気の流速図を示す。
図16に、従来の整流リブ14rがない場合のダストケース102の分離室102Bと下部のゴミ溜め部102tの流速図を示す。
なお、
図15、
図16においては、濃いほど空気の流速が大きいことを示し、薄いほど空気の流速が小さいことを示す。
【0056】
図15に示すように、整流リブ14rがある場合には、分離室2Bの上部2b1と下部2b2とで濃い領域が観察される。これにより、旋回流が効果的に生じ、空気に遠心力が働くことがわかる。また、ゴミ溜め部2tへは薄い領域が観察される。
これらより、整流リブ14rがある場合には、空気の旋回流が効果的に生じ、旋回流の結果大きなゴミが下部のゴミ溜め部102tに運ばれていることが推測される。
【0057】
これに対して、
図16に示すように、整流リブ14rがない場合には、分離室2Bで濃い部分102b1が上下に連続して乱れている。つまり、旋回流の強さが一様ではないことが観察される。
また、ゴミ溜め部102tへ向かう濃い領域102t1が観察される。
図15に示す、ゴミ溜め部2tへ向かう流れ2t1に対し、濃い領域が広く存在することがわかる。これにより、分離室102Bで遠心分離されることなく、ゴミ溜め部102tへ直接流れこむ気流が多いことがわかる。つまり、塵埃を含む空気が旋回流を生じることなく、つまり、整流リブ14rの存在により、遠心分離の効果を高められていることが観察される。
【0058】
<電気掃除機100内の空気の流れ>
図8中に、電気掃除機100内に吸引された空気の流れを、矢印Mで示している。ダストケース2内に吸引された空気は、電動送風機40に入る。入った空気は電動送風機40の周囲を通過して電動送風機40を冷却する。また、電動送風機40を通過した空気の一部は、蓄電池3内を流れて、蓄電池3を冷却する。電動送風機40の周囲を通過した残りの一部の空気と、蓄電池3内を通過した空気は回路基板50で合流して、回路基板50を冷却し、その後、掃除機100の系外に排出される。
【0059】
この際、電動送風機40の真後ろに蓄電池3を配置しているため、蓄電池3内に冷却風を流しやすい。これによって、蓄電池3を効率よく冷却できる。
【0060】
<電気掃除機100の使用>
図1に示す解除ボタン18aを押下することで、前記の延長管300、標準吸口400などの付属品の掃除機本体1への接続を解除することができる。
【0061】
図17に、電気掃除機100を右側から視た側面図を示す。
図17に示すように、電気掃除機100の下側を下として、水平な床面Yの上に載置したときは、電動送風機40や蓄電池3のような重い部品が電気掃除機100の後方下部に存在することもあり、電気掃除機100は脚部19a,3nで水平な床面Y上に支持される。このとき、脚部19aが電気掃除機100の最下端に位置し、また、脚部19aは電気掃除機100の長手方向の中間位置に存在するため、水平な床面Yの上に載置した電気掃除機100は、
図17に示すように、前方が斜め上側を向く。
【0062】
よって、吸引口となる接続口10aの先端部も斜め上側を向き、ハンディ清掃部材90の先端90sも斜め上側を向く。そのため、電気掃除機100は水平な床面Y上に支持された状態において、接続口10aやハンディ清掃部材90の内部に残っている塵埃が外部にこぼれ落ちにくい。
【0063】
図17に示すように蓄電池3への充電は掃除機本体1の右側部に設けられた端子tに図示しないACアダプタを接続することによって行うことができる。
【0064】
図18に、電気掃除機100に付属品の延長管300、標準吸口400が接続された状態の正面図を示す。
電気掃除機100は、掃除機本体1にハンディ清掃部材90が接続された状態で、延長管300を接続できるように構成されている。このように、掃除機本体1にハンディ清掃部材90を接続したままでも、延長管300を接続する接続口10a(
図4参照)の位置は変わらない。よって、掃除機本体1と延長管300と標準吸口400とを接続した全長を短く抑えることができる。これにより、標準吸口400の位置が手元により近くなるので、電気掃除機100の取り回しが良好になり、使い勝手を向上できる。
【0065】
電気掃除機100は、
図18に示すスティック状態から、標準吸口400が接続された延長管300を取り外して、
図2に示すハンディ状態にしたとしても、掃除機本体1にはハンディ清掃部材90が取り付けられたままである。よって、吸引力が高められた状態で掃除を行うことができる。
【0066】
電気掃除機100について、延長管300及び標準吸口400を接続した使用方法以外に、例えば、接続口10aに標準吸口400を直接接続して、ハンディ状態の電気掃除機100として使用できる。
【0067】
このように、電気掃除機100では、掃除機本体1にハンディ清掃部材90を取り付けたままで、様々な付属品(アタッチメント)を着脱することができる。そのため、電気掃除機100は、掃除の使用形態を迅速に切り替えて掃除を行える。また、ハンディ清掃部材90は、掃除機本体1に取り付けたままにできるので、ハンディ清掃部材90を取り付けたハンディ状態の電気掃除機100において、塵埃を掻き出しながら掃除を行うことができる。また、ハンディ清掃部材90を取り外す必要がないので、無くすこともない。
【0068】
図19に、電気掃除機100及び支持台70の側面図を示す。
電気掃除機100は、掃除機本体1に、延長管300と標準吸口400を接続したままの状態で支持台70に支持される。具体的には、延長管300の先端部に、先端を下側とした略L字形のフック301が設けられている。電気掃除機100を支持台70で支持するのに際して、フック301を支持台70のスタンド部72に設けられた係止部72aに係止させる。また、標準吸口400を載置面71a上の係止部71a1に係止させる。これにより、掃除機本体1側を上側にするとともに、標準吸口400側を下側として、電気掃除機100の全体を支持台70に支持させることができる。
【0069】
このように、電気掃除機100をスティック状態のままで支持台70に設置できるので、次に掃除をする際に、電気掃除機100を直ちにスティック状態のまま使用できる。
【0070】
図1に示すように、ベース部71の載置面71aは、延長管300よりも前方に延びて形成されている。これにより、延長管300に標準吸口400を接続した状態、つまり掃除機本体1に延長管300と標準吸口400を接続した状態(スティック状態)で、標準吸口400を載置面71aで支持できる。よって、電気掃除機100を支持台70に安定して支持させることができる。
【0071】
図20に、スティック状態の電気掃除機100で床面Yを掃除するときの使用形態の側面図を示す。
図20は、電気掃除機100に、ハンディ清掃部材90を装着したまま、延長管300及び標準吸口400を接続してスティック状態にして、電気掃除機100を使用者よりも前方に突き出して床面Yを掃除する場合である。
【0072】
この場合、使用者は、ハンドル部12の第2把持部12a2を把持しながら、電気掃除機100を前後に移動させながら掃除を行うことができる。また、図示していないが、電気掃除機100を使用者の左右の脇に位置した状態で床面Yを掃除する場合には、使用者は、ハンドル部12の第1把持部12a1を把持しながら、電気掃除機100を前後に移動させることができる。このように、使用者が床面Yを掃除する場合には、ハンドル部12の位置を持ち替えて掃除できる。
【0073】
図21に、スティック状態の電気掃除機100で高い場所を掃除するときの使用形態図の側面図を示す。
本電気掃除機100では、
図21に示すように、重量物である電動送風機40(
図8参照)や蓄電池3がハンドル部12に近い位置(使用者の手元に近い位置)にあるので、電気掃除機100の重心が、使用者の手元に近くなる。
これにより、電気掃除機100をスティック状態にして、電気掃除機100を床面Yより高い場所、例えば階段Kを掃除する場合であっても掃除し易くなり、使い勝手を向上できる。
なお、
図21では、階段Kを掃除する場合を例に挙げて説明したが、電気掃除機100を持ち上げてエアコンの室内機のパネルなどを掃除する場合にも有効である。
【0074】
また、電気掃除機100をスティック状態で使用している場合において、階段Kの角(隅)に残った塵埃を取り除くときに、電気掃除機100から延長管300及び標準吸口400を取り外してハンディ状態にする。この場合、電気掃除機100にはハンディ清掃部材90が装着されたままであるので、そのまま直ちに階段Kの角(隅)に残った塵埃を取り除く掃除を行うことができ、塵埃の吸い残しを抑制できる。
【0075】
上記電気掃除機100の構成によれば、導入管14に塵埃を含む空気を整流する整流リブ14rを設けたので、ダストケース2における旋回流を円滑に発生させることができる。そのため、
図15に示すように、分離室2Bで十分に分離されず、ゴミ溜め部2tへ向かう下向きの風の流れを減らすことができる。
したがって、塵埃を含む空気の大小ゴミの分離性能の向上を図れる。また、整流リブ14rを設けることで、塵埃を含む空気の流れの損失を抑制でき、吸い込み性能の向上を図れる。
【0076】
なお、前記実施形態では、整流リブ14rを2つ設けた場合を例に挙げたが、整流リブ14rは一つでもよいし、3つ以上設けてもよい。なお、整流リブ14rは一つよりも2つ以上の方がその効果が顕著であり、より好ましい。
【0077】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0078】
2 ダストケース
10a 接続口(開口)
10b 吸込管
14 導入管
14r 整流リブ
40 電動送風機
100 電気掃除機