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特許7481219混練物の移送装置、および、繊維強化樹脂成形体の製造装置
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  • 特許-混練物の移送装置、および、繊維強化樹脂成形体の製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】混練物の移送装置、および、繊維強化樹脂成形体の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/34 20060101AFI20240501BHJP
   B29C 43/58 20060101ALI20240501BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20240501BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20240501BHJP
   B29C 31/04 20060101ALI20240501BHJP
   B29C 31/06 20060101ALI20240501BHJP
   B29C 31/08 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C43/58
B29C70/06
B29C70/42
B29C31/04
B29C31/06
B29C31/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020163320
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055735
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆一
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-138363(JP,A)
【文献】特開2019-104108(JP,A)
【文献】特開平9-183135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/34
B29C 43/58
B29C 70/06
B29C 70/42
B29C 31/04
B29C 31/06
B29C 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と繊維とを混練した混練物を、搬送手段から成形型へと移送する移送装置であって、
前記搬送手段と、前記成形型を有する成形装置との間に設けられた載置台と、
混練物の把持および前記載置台への載置を繰り返し行うことによって、最終成形物の形状に応じた所定形状となるように複数の混練物を前記載置台に立体的に配置する第1の移送ロボットと、
前記載置台上に配置された複数の混練物を、前記所定形状のまま一度に把持して前記成形型に投入する第2の移送ロボットとを備える、混練物の移送装置。
【請求項2】
前記載置台上に配置された混練物を上方側から加温するための加温装置と、
前記第1の移送ロボットの動作と連動して、前記載置台と前記加温装置とを相対的に往復移動させる移動制御手段とをさらに備える、請求項1に記載の混練物の移送装置。
【請求項3】
前記載置台は、前記成形型の起伏形状に対応する載置面を有している、請求項1または2に記載の混練物の移送装置。
【請求項4】
前記載置台に、前記載置面を構成するずれ止め具が設けられている、請求項3に記載の混練物の移送装置。
【請求項5】
前記第1の移送ロボットまたは前記第2の移送ロボットによる把持対象の混練物を撮影可能な撮影手段をさらに備え、
前記第1の移送ロボットまたは前記第2の移送ロボットは、前記撮影手段による撮影結果に基づいて、混練物の把持位置を調整する、請求項1~4のいずれかに記載の混練物の移送装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の混練物の移送装置を備えた繊維強化樹脂成形体の製造装置であって、
前記移送装置の上流側に配置され、混練装置から吐出された混練材料を裁断し、裁断後の混練物を下流側へ送る裁断装置と、
前記移送装置の下流側に配置され、前記第2の移送ロボットによって前記成形型に配置された複数の混練物を加圧成形する成形装置とを備える、繊維強化樹脂成形体の製造装置。
【請求項7】
前記裁断装置は、前記混練装置から吐出された混練材料を計量しながら複数のサイズの混練物に裁断し、
前記第1の移送ロボットは、前記裁断装置による裁断タイミングに連動して、混練物を把持するための把持部を往復移動させる、請求項6に記載の繊維強化樹脂成形体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂と繊維とを混練した混練物の移送装置、および、繊維強化樹脂成形体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱可塑性樹脂等の樹脂と炭素繊維等の繊維とを混練した複合材料を製造する成形方法として、LFT-D(Long Fiber Thermoplastics -Direct)法が採用されている。LFT-D法により複合材料を製造する方法は、例えば特開2013-173330号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1では、混練機(押出し装置)のシリンダー内に連続繊維材と熱可塑性樹脂材とを導入し、シリンダー内に配置されたスクリューの回転によって、連続繊維材を裁断しながら熱可塑性樹脂材と混練して混練材料を生成し、この混練材料をシリンダーの外部に押し出して、後工程にて成形型内の混練材料をプレス加工して繊維強化樹脂成形体を製造する方法が開示されている。
【0004】
また、特開2018-144287号公報(特許文献2)では、繊維強化樹脂成形体の製造装置が、裁断後の混練物を成形型に投入するパターンに位置決めする位置決め手段を含み、位置決め手段によってX方向およびY方向に位置決めされた複数個(たとえば2個)の混練物が、移送装置としてのロボットハンドによって一度に拾い上げられる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-173330号公報
【文献】特開2018-144287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたような繊維強化樹脂材の製造装置において、複雑形状の繊維強化樹脂材を成形するための実用的な技術は未だ存在していない。
【0007】
また、特許文献2では、成形型での成形工程の前に複数の混練物を所定のパターンに位置決めし、位置決めした複数個の混練物を一度に成形型に投入する構成であるため、混練物を一個ずつ成形型に投入して樹脂成形体を成形するよりも成形精度が向上するものの、複雑形状の樹脂成形体を精度良く成形するためには改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、複雑形状の樹脂成形体を精度良く成形することのできる混練物の移送装置、および、繊維強化樹脂成形体の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面に従う混練物の移送装置は、樹脂と繊維とを混練した混練物を、搬送手段から成形型へと移送する移送装置であって、搬送手段と成形型を有する成形装置との間に設けられた載置台と、混練物の把持および載置台への載置を繰り返し行うことによって、最終成形物の形状に応じた所定形状となるように複数の混練物を載置台に立体的に配置する第1の移送ロボットと、載置台上に配置された複数の混練物を、所定形状のまま一度に把持して成形型に投入する第2の移送ロボットとを備える。
【0010】
好ましくは、混練物の移送装置は、載置台上に配置された混練物を上方側から加温するための加温装置と、第1の移送ロボットの動作と連動して、載置台と加温装置とを相対的に往復移動させる移動制御手段とをさらに備える。
【0011】
好ましくは、載置台は、成形型の起伏形状に対応する載置面を有している。載置台に、載置面を構成するずれ止め具が設けられていてもよい。
【0012】
混練物の移送装置は、第1の移送ロボットまたは第2の移送ロボットによる把持対象の混練物を撮影可能な撮影手段をさらに備えていてもよい。この場合、第1の移送ロボットまたは第2の移送ロボットは、撮影手段による撮影結果に基づいて、混練物の把持位置を調整することができる。
【0013】
この発明の他の局面に従う繊維強化樹脂成形体の製造装置は、上記記載の混練物の移送装置と、移送装置の上流側に配置され、混練装置から吐出された混練材料を裁断し、裁断後の混練物を下流側へ送る裁断装置と、移送装置の下流側に配置され、第2の移送ロボットによって成形型に配置された複数の混練物を加圧成形する成形装置とを備える。
【0014】
好ましくは、裁断装置は、混練装置から吐出された混練材料を計量しながら複数のサイズの混練物に裁断し、第1の移送ロボットは、裁断装置による裁断タイミングに連動して、混練物を把持するための把持部を往復移動させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複雑形状の樹脂成形体を精度良く成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る繊維強化樹脂成形体の製造装置の構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る混練物の移送装置の構成を模式的に示す平面図である。
図3】本発明の実施の形態における第1の移送ロボットの動作を模式的に示す平面図である。
図4】本発明の実施の形態における第2の移送ロボットの動作を模式的に示す平面図である。
図5】本発明の実施の形態におけるずれ止め具の構成例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0018】
<繊維強化樹脂成形体の製造装置の概略構成>
図1を参照して、はじめに、本発明の実施の形態に係る繊維強化樹脂成形体の製造装置1の概略構成について説明する。図1に示すように、繊維強化樹脂成形体の製造装置1は、繊維と熱可塑性樹脂とを混練する混練装置2と、混練装置2から吐出された連続形状の混練材料K1を裁断する裁断装置3と、裁断後の混練物K2を金型80へと移送する移送装置10と、金型80を有する成形装置8とを備えている。なお、図面上において、混練材料K1および混練物K2をハッチングで示している。
【0019】
(混練装置)
混練装置2は、熱可塑性樹脂に繊維が混入されてなる成形体材料としての混練物を製造する装置である。混練装置2は、たとえば、熱可塑性樹脂と繊維とを混練する第1混練機21と、第1混練機21に導入される熱可塑性樹脂を、第1混練機21内での繊維との混練に先立って、混練・溶融する第2混練機22と、第1混練機21に繊維を供給する繊維供給部(図示せず)とを含んでいる。第1混練機21から吐出された混練材料K1は、裁断装置3へ送られる。
【0020】
(裁断装置)
裁断装置3は、第1混練機21から吐出された混練材料K1を下方から受けて一方向に搬送するコンベア31と、コンベア31により搬送される混練材料K1を裁断する裁断刃33と、裁断刃33による裁断後の混練物K2を一方向に搬送するコンベア32とで構成されている。
【0021】
コンベア31,32の搬送経路上には、混練材料K1および混練物K2の冷えを抑制するための加温装置36が設けられている。加温装置36は、コンベア31,32の搬送面(上面)の下方および上方にそれぞれ設けられている。加温装置36は、たとえば赤外線ヒータにより構成される。以下に示す加温装置も同様である。
【0022】
裁断装置3は、上流側のコンベア31に取り付けられたロードセル(重量検知手段)34と、ロードセル34の検知信号に基づいて裁断刃33を制御する制御手段(図示せず)とをさらに含む。これにより、裁断装置3は、第1混練機21から吐出された混練材料K1を計量しながら裁断することができる。裁断順序に応じて混練物K2の重量が予め定められており、裁断装置3は、毎回、予め定められた重量となった時点で混練材料K1を裁断し、複数のサイズ(重量)の混練物K2を下流側へ送る。
【0023】
(移送装置)
移送装置10は、裁断装置3のコンベア32に連続して設けられ、裁断後の混練物K2を一方向に搬送する搬送コンベア4と、搬送コンベア4と成形装置8との間に設けられた載置台60と、搬送コンベア4上の混練物K2を把持して載置台60に載置する第1の移送ロボット5と、載置台60上に配置された混練物K2を金型80に投入(挿入)する第2の移送ロボット7とを含む。
【0024】
第1の移送ロボット5は、搬送コンベア4上の混練物K2の把持および載置台60への載置を繰り返し行う。本実施の形態では、第1の移送ロボット5は、裁断装置3による裁断タイミングに連動して、混練物K2を把持するための把持部51を往復移動させる。これにより、第1の移送ロボット5は、載置台60に、最終成形物の形状に応じた所定形状となるように複数の混練物K2を立体的に配置する。つまり、載置台60に、最終成形物の形状(金型80の形状)に対応した事前成形物K3が形成される。第2の移送ロボット7は、第1の移送ロボット5よりも下流側に配置されており、載置台60上に配置された複数の混練物K2(事前成形物K3)を、所定形状のまま一度に把持して金型80に投入する。
【0025】
搬送コンベア4による混練物K2の搬送経路上にも、加温装置41が設けられている。加温装置41は、搬送コンベア4の搬送面の下方に設けられている。なお、搬送コンベア4は必須ではなく、第1の移送ロボット5は、裁断装置3側の搬送手段であるコンベア32から直接、混練物K2をピックアップしてもよい。
【0026】
移送装置10の詳細な構成および動作については後述する。
【0027】
(成形装置)
成形装置8は、移送装置10の下流側に位置し、金型80に配置された混練物K2を加圧成形して、最終成形物(製品)としての繊維強化樹脂成形体を製造する。金型80は、成形型であり、混練物K2が載置される下型81と、下型81に対面して配置される上型82とで構成されている。上型82は、スライダ83の下端に設けられている。
【0028】
本実施の形態において、成形装置8は、第2の移送ロボット7によって下型81に複数の混練物K2(事前成形物K3)が挿入された後、上型82と下型81とを閉じることにより、複数の混練物K2を加圧成形する。下型81に挿入される複数の混練物K2は、金型80の起伏形状に対応した形状に事前に成形されているため、加圧成形時に金型80と挿入材料(事前成形物K3)との間に隙間が生じ難く、高精度の最終成形物が生成される。
【0029】
<移送装置の構成例>
図1および図2を参照して、移送装置10の構成例について説明する。図2は、移送装置10の構成を模式的に示す平面図である。図2における矢印A1は、混練物K2の移送方向(下流側)を示しており、その反対側は上流側を示す。また、図2における矢印A2は、移送方向に交差(直交)する方向を示しており、同方向を横方向ともいう。
【0030】
(移送ロボット)
第1の移送ロボット5は、混練物を把持する把持部51と、把持部51を往復移動させるアーム部52と、アーム部52を支持する支持部53と、把持部51およびアーム部52の動作を制御する制御部(図示せず)とを含む。同様に、第2の移送ロボット7は、混練物を把持する把持部71と、把持部71を往復移動させるアーム部72と、アーム部72を支持する支持部73と、把持部71およびアーム部72の動作を制御する制御部(図示せず)とを含む。
【0031】
把持部51,71はいずれも、複数(多数)の針状部材を有するニードルグリッパであり、混練物K2を突き刺して把持する。把持部51,71の針状部材は、典型的には上下方向(多少傾斜していてもよい)に沿って延在し、その延在方向に沿って進退することにより、混練物K2の把持および放出を行う。第1の移送ロボット5の把持部51は、混練物K2を1個ずつ把持するのに対し、第2の移送ロボット7の把持部71は、複数の混練物K2を一度に把持するため、針状部材の数は、把持部51より把持部71の方が多い。
【0032】
なお、第1の移送ロボット5の把持部51は、混練物K2を1個ずつ把持するので、複数対の針状部材によって混練物K2を側方から挟み込んで把持してもよい。あるいは、把持部51は、ニードルグリッパに限定されず、混練物K2を掬い上げる構成であってもよい。
【0033】
本実施の形態では、第1の移送ロボット5の支持部53が、図2に示すように、搬送コンベア4の横方向一方側に設置されており、支持部53と金型80とを結ぶ仮想直線上に、載置台60が配置されている。第2の移送ロボット7の支持部73は、金型80よりも上流側に位置し、横方向に移動可能な走行台車として設けられている。支持部73は、横方向に沿って直線状に延在するレール74上を往復移動する。レール74は、搬送コンベア4から金型80までの混練物K2の移送経路に交差するように設けられている。
【0034】
(載置台)
載置台60は、複数の混練物K2を載置するための載置面60aを有している。載置面60aは、金型80(下型81)の起伏形状に対応していることが望ましい。載置面60aは、載置台60自体の上面によって形成されていてもよいが、本実施の形態では、図1に示されるように、別部材によって構成されている。具体的には、載置面60aを構成するずれ止め具65が、載置台60上に設けられている。なお、図2では、ずれ止め具65の図示を省略している。
【0035】
図5(A)に、ずれ止め具65の構成例が模式的に示されている。ずれ止め具65は、載置面60aを構成する網状部材66と、網状部材66を下方から支持する複数の脚部67とにより構成されている。ずれ止め具65は、典型的には金属により構成されている。複数の脚部67は、載置台60のフラットな上面に固定されている。
【0036】
網状部材66は、下型81の形状を賦形することにより形成されている。曲がりくねった網状部材66には細かい凹凸が形成されるため、網状部材66の傾斜面に載置した混練物K2がずれ落ちることを抑制することができる。図5(A)のVB部分を図5(B)に拡大して示すように、網状部材66の傾斜度の大きい部分には、上端に先鋭部を有する複数の突起68を設けてもよい。
【0037】
なお、載置面60aを構成する部材は、網状部材66に限定されず、たとえば、表面の粗い薄板部材により構成されていてもよい。
【0038】
このように、載置面60aが、下型81の起伏形状に対応して形成されている場合、第2の移送ロボット7の把持部71に設けられた複数の針状部材それぞれの先端高さ(下端高さ)を、載置面60aの形状に応じて異ならせてもよい。これにより、把持部71は、載置面60aに載置された複数の混練物K2を、針状部材で上方から突き刺して確実に把持することができる。なお、第1の移送ロボット5の把持部51に設けられた針状部材の先端高さは一定であってよい。
【0039】
(加温手段)
本実施の形態では、載置台60に載せられた混練物K2の冷えを抑制するために、図1に示すように、移送装置10は、載置台60を下方から加温するための加温装置61とともに、載置台60上に配置された混練物K2を上方側から加温するための加温装置62を備えている。「上方側から加温」とは、上方および/または側方から加温することを意味する。
【0040】
加温装置61は、載置台60の下方に、載置台60と一体的に設けられている。上述のように載置台60上にずれ止め具65が設けられる場合、加温装置61からの熱を、載置台60およびずれ止め具65の網状部材66を介して効率的に混練物K2に伝達できるメリットもある。なお、載置台60の材料は、メッシュ網状やパンチングメタルなど、多数の孔を有する金属製の薄板であることが望ましい。これにより、混練物K2への熱伝達性を向上させることができる。
【0041】
加温装置62は、載置台60から独立して設けられている。ここで、加温装置62を載置台60の上面に近い位置に設けると、第1の移送ロボット5および第2の移送ロボット7が載置台60にアクセスする際に加温装置62が邪魔になる。そのため、移送装置10は、載置台60と加温装置62とを相対的に移動させる移動制御手段69を備えている。
【0042】
(移動制御手段)
本実施の形態では、加温装置62の位置は、混練物K2の移送経路上に固定されており、載置台60が加温装置62よりも上流側および下流側に移動可能に構成されている。そのため、移動制御手段69は、載置台60をガイドレール63に沿って移動させるアクチュエータ(駆動手段)64と、アクチュエータ64を制御する制御部(図示せず)とを含む。
【0043】
載置台60は、上面から見て加温装置62と重なる保温位置P1を基準位置とし、保温位置P1よりも上流側の受け取り位置P2と、保温位置P1よりも下流側の受け渡し位置P3との間を移動可能である。加温装置62は、たとえば、載置台60の両側部および上部をトンネル状に覆う囲い部62Aの内側に設けられている。この場合、保温位置P1は、囲い部62A内の位置である。図2では、囲い部62Aの位置を破線で示している。載置台60が受け取り位置P2または受け渡し位置P3に位置する場合、載置台60の載置面60aが、囲い部62A(加温装置62)に重なることなく露出する。
【0044】
受け取り位置P2、保温位置P1、および受け渡し位置P3が、移送方向に沿ってこの順序で設けられている。本実施の形態では、載置台60の移動を案内するガイドレール63が、直線状に延びており、載置台60は、加温装置62に重なる保温位置P1から、搬送コンベア4側および成形装置8側の両方向に引き出し可能である。つまり、載置台60は、上流側および下流側に引き出し可能な引き出し式テーブルを構成している。
【0045】
移動制御手段69は、第1の移送ロボット5の混練物K2の移送動作と連動して、載置台60を、保温位置P1と受け取り位置P2との間で往復移動させる。また、第2の移送ロボット7の動作時に、載置台60を、保温位置P1から受け渡し位置P3に移動させる。
【0046】
<移送装置の動作>
図3および図4をさらに参照して、移送装置10の動作例について説明する。図3は、第1の移送ロボット5の動作を模式的に示す平面図である。図4は、第2の移送ロボット7の動作を模式的に示す平面図である。なお、図3および図4においても、載置台60上のずれ止め具65の図示を省略している。また、図4では、載置台60に載置された混練物K2(事前成形物K3)の図示を省略している。
【0047】
(第1の移送ロボットの動作)
第1の移送ロボット5は、搬送コンベア4により搬送されてきた混練物K2を、把持部51により把持した後、図3(A)に示されるように、移送経路上の受け取り位置P2に向かって把持部51を移動させる(矢印A11)。把持部51が搬送コンベア4上(把持位置)に位置するとき、載置台60は基準位置である保温位置P1に退避しているが、把持部51の受け取り位置P2への移動に伴って、載置台60は保温位置P1から上流側に引き出され(矢印A12)、受け取り位置P2にて静止する。
【0048】
第1の移送ロボット5は、受け取り位置P2上の所定の放出位置にて、把持部51による混練物K2の把持状態を解除する。つまり、受け取り位置P2に引き出された載置台60(載置面60a)上の所定の領域に、混練物K2を載置(放出)する。混練物K2の放出位置は、移送順序(裁断順序)に対応付けて予め定められている。なお、混練物K2の放出高さも、移送順序に対応付けて予め定められていてもよい。
【0049】
第1の移送ロボット5は、混練物K2を載置台60に載置すると、図3(B)に示されるように、把持部51を再び搬送コンベア4まで移動させる(矢印A13)。載置台60は、把持部51の搬送コンベア4への移動時に、受け取り位置P2から保温位置P1へと戻される(矢印A14)。
【0050】
このように、載置台60は、第1の移送ロボット5によって1個の混練物K2が移送される度に、保温位置P1と受け取り位置P2との間を往復移動する。つまり、載置台60上に、予め設定された個数の混練物K2が載置されるまで、載置台60は、保温位置P1と受け取り位置P2との間の移動を複数回繰り返す。これにより、載置台60に先に載置された混練物K2が冷えて硬化することを防止または抑制できる。
【0051】
なお、保温位置P1にてより効果的に混練物K2を加温するために、囲い部62Aの上流側端部および下流側端部に、囲い部62Aの開口を開閉可能なシャッター部材(図示せず)を設けてもよい。
【0052】
第1の移送ロボット5によって最終製品の成形に必要な全ての混練物K2が載置台60に載置されると、載置台60上に、最終成形物の形状に対応した事前成形物K3が形成される。これにより、第1の移送ロボット5による移送処理が終了する。第1の移送ロボット5による移送処理が終了すると、載置台60は保温位置P1に退避した後、そのまま受け渡し位置P3に引き出される。
【0053】
(第2の移送ロボットの動作)
第1の移送ロボット5による移送処理が終了すると、図4(A)に示されるように、第2の移送ロボット7は、受け渡し位置P3上の所定の把持位置に把持部71を移動させる。あるいは、第1の移送ロボット5による移送処理が終了する前から、把持部71を受け渡し位置P3上に待機させておいてもよい。
【0054】
第2の移送ロボット7は、載置台60が受け渡し位置P3に引き出されると(矢印A21)、把持部71により載置台60上の複数(全て)の混練物K2を一度に把持する。つまり、把持部71は、受け渡し位置P3に位置する載置台60から、事前成形物K3を、上方から突き刺して把持する。
【0055】
図4(A),(B)に示されるように、第2の移送ロボット7は、把持部71によって事前成形物K3を把持すると、把持部71を成形装置8に移動させて(矢印A22)、下型81上で、事前成形物K3の把持状態を解除する。つまり、事前成形物K3をなしている複数の混練物K2を、一度に下型81に投入(配置)する。事前成形物K3が下型81に配置されると、成形装置8は上型82を下降させて、繊維強化樹脂成形体を成形する。
【0056】
なお、本実施の形態では、図4(A)に示す混練物把持時には、第2の移送ロボット7の支持部73は、移送経路から横方向にオフセットした位置に配置されているが、図4(B)に示す金型投入時には、載置台60が保温位置P1に戻されるのと同時に(矢印A23)、移送経路に近づくように支持部73をレール74に沿って移動させながら(矢印A24)、把持部71を金型80に移動させている。これにより、成形装置8の四隅に設けられた支柱84を避けながら、短時間で効率良く事前成形物K3を金型80に移送することができる。これにより、移送途中に事前成形物K3が冷えてしまうことを防止または抑制できる。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態に係る移送装置10は、載置台60と2つの移送ロボット5,7とを含むので、最終成形物の形状に対応する事前成形物K3を形成し、事前成形物K3をそのまま金型80に投入することができる。したがって、本実施の形態に係る移送装置10を備えた繊維強化樹脂成形体の製造装置1によれば、複雑形状の樹脂成形体を精度良く成形することができる。
【0058】
また、本実施の形態において、載置台60が、加温装置62に対して移動可能に設けられており、第1の移送ロボット5による混練物K2の載置時、および、第2の移送ロボット7による混練物K2の把持時を除いて、載置台60は加温装置62に重なる保温位置P1に退避する。これにより、載置台60に先に載置された混練物K2が冷えて硬化することを防止または抑制できるので、最終製品の品質を向上させることができる。
【0059】
なお、載置台60と加温装置62とは相対的に移動可能であればよく、載置台60を混練物K2の移送経路上に固定し、加温装置62が、第1の移送ロボット5の動作と連動して往復移動するように構成してもよい。
【0060】
<変形例1>
第1の移送ロボット5の把持部51および第2の移送ロボット7の把持部71にも、把持した混練物K2の冷えを抑制するための加温装置(図示せず)が取り付けられていてもよい。加温装置は、把持部51,71を構成する針状部材を加温する構成であってもよい。これにより、第1の移送ロボット5および第2の移送ロボット7による移送時にも混練物K2を加温することができるので、混練物K2の硬化をより確実に防止できる。
【0061】
<変形例2>
移送装置10は、第1の移送ロボット5の把持部51または第2の移送ロボット7による把持対象の混練物を撮影する撮影手段をさらに備えていてもよい。たとえば、第1の移送ロボット5の把持部51または第2の移送ロボット7の把持部71の先端に、混練物K2の形状を認識可能なカメラ(図示せず)が取り付けられてもよいし、載置台60の移動経路の頭上に定点カメラ(図示せず)が取り付けていてもよい。これにより、第1の移送ロボット5または第2の移送ロボット7は、撮影手段による撮影結果に基づいて(つまり、撮影画像と、事前に登録しておいた教師画像とを比較することで)、混練物K2の把持位置を調整(補正)することができる。
【0062】
また、撮影画像により、混練物K2の形状が正常か否かを検出することもできるので、異常形状が検出された場合には、把持した混練物K2の移送処理に代えて、バイパス処理を行ってもよい。これにより、最終製品が不良品となることを防止できる。
【0063】
<変形例3>
第1の移送ロボット5のアーム部52と把持部51との間にロードセル(図示せず)を組み込み、把持部51が混練物K2を把持したときに、短時間、把持部51を静止し、把持した混練物K2の重量が正常範囲か否かを判定してもよい。混練物K2の重量が正常範囲外であれば、把持した混練物K2の移送処理に代えて、バイパス処理を行ってもよい。これにより、最終製品が不良品となることを防止できる。
【0064】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 繊維強化樹脂成形体の製造装置、2 混練装置、3 裁断装置、4 搬送コンベア、5 第1の移送ロボット、7 第2の移送ロボット、8 成形装置、10 (混練物の)移送装置、36,41,61,62 加温装置、51,71 把持部、60 載置台、60a 載置面、65 ずれ止め具、69 移動制御手段、80 金型、K2 混練物、P1 保温位置、P2 受け取り位置、P3 受け渡し位置。
図1
図2
図3
図4
図5