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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】落石防止柵用中間支柱及び落石防止柵
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
E01F7/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020190866
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022079961
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】日鉄神鋼建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】正木 聡
(72)【発明者】
【氏名】田島 武
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特許第4613864(JP,B2)
【文献】特開2008-150867(JP,A)
【文献】特開2016-194224(JP,A)
【文献】特開2010-037765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけて設置される一対の両側支柱の間に張られたケーブルと前記一対の両側支柱間の範囲を覆う状態で前記ケーブルに固定された金網とを備えていて山側からの落石を受け止める落石防止柵に用いられ、前記ケーブルの両端間の中間部分であるケーブル中間部を支持するために前記一対の両側支柱の間で前記金網に対して前記山側と反対側に設置される落石防止柵用中間支柱であって、
地面に立設される支柱本体と、
前記支柱本体の外面から突出するようにその外面に設置されて、前記ケーブル中間部が前記支柱本体の軸方向と交差する方向に延びる状態でそのケーブル中間部を受け入れる受入空間を囲んで当該受入空間を画定し、前記受入空間に前記ケーブル中間部を受け入れた状態で、前記支柱本体の軸方向における前記ケーブル中間部の移動、及び、前記支柱本体の軸方向と直交し且つ前記支柱本体から離れる方向である離反方向への前記ケーブル中間部の移動を制限するように前記ケーブル中間部を閉じ込める閉込部と、を備え、
前記閉込部は、前記受入空間に受け入れられた前記ケーブル中間部が前記支柱本体の軸方向における前記受入空間の一方側へ移動するのを制限するように前記受入空間の前記一方側において前記支柱本体の外面から突出する第1軸方向移動制限部と、前記受入空間に受け入れられた前記ケーブル中間部が前記支柱本体の軸方向において前記一方側と反対側へ移動するのを制限するように前記受入空間の前記一方側と反対側で前記支柱本体の外面から突出する第2軸方向移動制限部と、前記受入空間に受け入れられた前記ケーブル中間部の前記離反方向への移動を制限するように前記第1軸方向移動制限部と前記第2軸方向移動制限部との間に架設される離反制限部と、を有し、
前記第1軸方向移動制限部は、前記支柱本体の外面からの当該第1軸方向移動制限部の突出方向において外側を向く第1外端面と、前記受入空間を隔てて前記第2軸方向移動制限部と対向する第1対向面と、を有し、
前記第1外端面は、前記支柱本体の軸方向及び前記第1軸方向移動制限部の突出方向の両方に対して直交する前記第1軸方向移動制限部の幅方向の両外側へ向かうにつれて前記支柱本体へ近づくように湾曲した凸面である第1外端面曲面部を有し、
前記第1対向面は、前記第1軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて前記第2軸方向移動制限部から遠ざかるように湾曲した凸面である第1対向面曲面部を有し、
前記第2軸方向移動制限部は、前記支柱本体の外面からの当該第2軸方向移動制限部の突出方向において外側を向く第2外端面と、前記受入空間を隔てて前記第1軸方向移動制限部と対向する第2対向面と、を有し、
前記第2外端面は、前記支柱本体の軸方向及び前記第2軸方向移動制限部の突出方向の両方に対して直交する前記第2軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて前記支柱本体へ近づくように湾曲した凸面である第2外端面曲面部を有し、
前記第2対向面は、前記第2軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて前記第1軸方向移動制限部から遠ざかるように湾曲した凸面である第2対向面曲面部を有する、落石防止柵用中間支柱。
【請求項2】
前記第1外端面曲面部は、前記第1外端面の全体に及んでいて、前記第1外端面は、前記第1軸方向移動制限部の幅方向における当該第1外端面の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲し、
前記第2外端面曲面部は、前記第2外端面の全体に及んでいて、前記第2外端面は、前記第2軸方向移動制限部の幅方向における当該第2外端面の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲している、請求項1に記載の落石防止柵用中間支柱。
【請求項3】
前記第1外端面は、前記第1軸方向移動制限部の幅方向における当該第1外端面の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲し、
前記第2外端面は、前記第2軸方向移動制限部の幅方向における当該第2外端面の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲している、請求項2に記載の落石防止柵用中間支柱。
【請求項4】
前記第1対向面曲面部は、前記第1対向面の全体に及んでいて、前記第1対向面は、前記第1軸方向移動制限部の幅方向における当該第1対向面の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲し、
前記第2対向面曲面部は、前記第2対向面の全体に及んでいて、前記第2対向面は、前記第2軸方向移動制限部の幅方向における当該第2対向面の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲している、請求項1~3のいずれか1項に記載の落石防止柵用中間支柱。
【請求項5】
前記第1対向面は、前記第1軸方向移動制限部の幅方向における当該第1対向面の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲し、
前記第2対向面は、前記第2軸方向移動制限部の幅方向における当該第2対向面の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲している、請求項4に記載の落石防止柵用中間支柱。
【請求項6】
前記第1軸方向移動制限部は、前記第1対向面と反対側を向く凹面である第1反対向面と、前記第1対向面から前記第1反対向面へ至るように当該第1軸方向移動制限部を貫通する第1貫通孔と、をさらに有し、
前記第2軸方向移動制限部は、前記第2対向面と反対側を向く凹面である第2反対向面と、前記第2対向面から前記第2反対向面へ至るように当該第2軸方向移動制限部を貫通する第2貫通孔と、をさらに有し、
前記離反制限部は、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿通されて前記第1軸方向移動制限部と前記第2軸方向移動制限部との間に架設されるボルトと、前記ボルトが前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿通された状態で前記ボルトを前記第1軸方向移動制限部及び前記第2軸方向移動制限部に固定するように前記ボルトに螺合されるナットと、を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の落石防止柵用中間支柱。
【請求項7】
山側からの落石を受け止める落石防止柵であって、
間隔をあけて設置される一対の両側支柱と、
前記一対の両側支柱間に張られたケーブルと、
前記一対の両側支柱間の範囲を覆う状態で前記ケーブルに固定された金網と、
前記ケーブルの両端間の中間部分であるケーブル中間部を支持するために前記一対の両側支柱の間で前記金網に対して前記山側と反対側に設置された中間支柱と、を備え、
前記中間支柱は、地面に立設される支柱本体と、前記支柱本体の外面から前記山側へ突出するように前記外面に設置されて、前記ケーブル中間部が前記支柱本体の軸方向と交差する方向に延びる状態でそのケーブル中間部を受け入れる受入空間を囲んで当該受入空間を画定し、前記受入空間に前記ケーブル中間部を受け入れた状態で、前記支柱本体の軸方向における前記ケーブル中間部の移動、及び、前記支柱本体から前記山側へ離れる方向である離反方向への前記ケーブル中間部の移動を制限するように前記ケーブル中間部を閉じ込める閉込部と、を有し、
前記閉込部は、前記支柱本体の軸方向における前記受入空間の一方側への前記ケーブル中間部の移動を制限するように前記受入空間の前記一方側において前記支柱本体の外面から突出する第1軸方向移動制限部と、前記支柱本体の軸方向における前記一方側と反対側への前記ケーブル中間部の移動を制限するように前記受入空間の前記一方側と反対側において前記支柱本体の外面から突出する第2軸方向移動制限部と、前記ケーブル中間部の前記離反方向への移動を制限するように前記第1軸方向移動制限部と前記第2軸方向移動制限部との間に架設される離反制限部と、を有し
前記第1軸方向移動制限部は、前記支柱本体の外面からの当該第1軸方向移動制限部の突出方向において外側を向く第1外端面と、前記受入空間を隔てて前記第2軸方向移動制限部と対向する第1対向面と、を有し、
前記第1外端面は、前記支柱本体の軸方向及び前記第1軸方向移動制限部の突出方向の両方に対して直交する前記第1軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて前記支柱本体へ近づくように湾曲した凸面である第1外端面曲面部を有し、
前記第1対向面は、前記第1軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて前記第2軸方向移動制限部から遠ざかるように湾曲した凸面である第1対向面曲面部を有し、
前記第2軸方向移動制限部は、前記支柱本体の外面からの当該第2軸方向移動制限部の突出方向において外側を向く第2外端面と、前記受入空間を隔てて前記第1軸方向移動制限部と対向する第2対向面と、を有し、
前記第2外端面は、前記支柱本体の軸方向及び前記第2軸方向移動制限部の突出方向の両方に対して直交する前記第2軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて前記支柱本体へ近づくように湾曲した凸面である第2外端面曲面部を有し、
前記第2対向面は、前記第2軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて前記第1軸方向移動制限部から遠ざかるように湾曲した凸面である第2対向面曲面部を有する、落石防止柵。
【請求項8】
前記第1外端面曲面部は、前記第1外端面の全体に及んでいて、前記第1外端面は、前記第1軸方向移動制限部の幅方向における当該第1外端面の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲し、
前記第2外端面曲面部は、前記第2外端面の全体に及んでいて、前記第2外端面は、前記第2軸方向移動制限部の幅方向における当該第2外端面の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲している、請求項7に記載の落石防止柵。
【請求項9】
前記第1外端面は、前記第1軸方向移動制限部の幅方向における当該第1外端面の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲し、
前記第2外端面は、前記第2軸方向移動制限部の幅方向における当該第2外端面の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲している、請求項8に記載の落石防止柵。
【請求項10】
前記第1対向面曲面部は、前記第1対向面の全体に及んでいて、前記第1対向面は、前記第1軸方向移動制限部の幅方向における当該第1対向面の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲し、
前記第2対向面曲面部は、前記第2対向面の全体に及んでいて、前記第2対向面は、前記第2軸方向移動制限部の幅方向における当該第2対向面の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲している、請求項7~9のいずれか1項に記載の落石防止柵。
【請求項11】
前記第1対向面は、前記第1軸方向移動制限部の幅方向における当該第1対向面の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲し、
前記第2対向面は、前記第2軸方向移動制限部の幅方向における当該第2対向面の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲している、請求項10に記載の落石防止柵。
【請求項12】
前記第1軸方向移動制限部は、前記第1対向面と反対側を向く凹面である第1反対向面と、前記第1対向面から前記第1反対向面へ至るように当該第1軸方向移動制限部を貫通する第1貫通孔と、をさらに有し、
前記第2軸方向移動制限部は、前記第2対向面と反対側を向く凹面である第2反対向面と、前記第2対向面から前記第2反対向面へ至るように当該第2軸方向移動制限部を貫通する第2貫通孔と、をさらに有し、
前記離反制限部は、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿通されて前記第1軸方向移動制限部と前記第2軸方向移動制限部との間に架設されるボルトと、前記ボルトが前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿通された状態で前記ボルトを前記第1軸方向移動制限部及び前記第2軸方向移動制限部に固定するように前記ボルトに螺合されるナットと、を有する、請求項7~11のいずれか1項に記載の落石防止柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落石防止柵用中間支柱及び落石防止柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、山間部の斜面上もしくは斜面に隣接する道路脇等に設置されて山側からの落石を受け止める落石防止柵が知られている。下記特許文献1には、そのような落石防止柵の一例としての防護柵が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された防護柵は、山腹の斜面に所定範囲に亘って延設される。この防護柵は、間隔をあけて立設される一対の端末パイプ支柱と、その一対の端末パイプ支柱の間に端末パイプ支柱から間隔をおいて立設される中間パイプ支柱と、それらの一対の端末パイプ支柱及び中間パイプ支柱に架設されて上下に所定間隔で配置された複数のロープ材と、一対の端末パイプ支柱間の範囲を覆うとともに中間パイプ支柱及び複数のロープ材に対して山の斜面側に配置されて複数のロープ材に固定された金網と、を有する。
【0004】
前記中間パイプ支柱は、斜面に立設される鋼管と、その鋼管の外周面に取り付けられ、ロープ材の中間部分と係合する係合部とを有する。係合部は、鋼管の外周面に溶着されてその外周面から突出する一対の係合部材を有し、この一対の係合部材は、上下に間隔をあけて配置され、その一対の係合部材の間にロープ材が挿入されてそのロープ材を受ける挿入受け部が形成されている。一対の係合部材は、それぞれ、断面が円形の丸棒からなり、一対の係合部材のうち上側の係合部材の突出方向の先端部は、その上部に切欠き段部を有し、下側の係合部材の突出方向の先端部は、その下部に切欠き段部を有する。また、上側の係合部材の先端部と下側の係合部材の先端部には、各々の切欠き段部の位置でそれらの先端部を貫通する透孔が設けられている。
【0005】
そして、上側の係合部材の透孔と下側の係合部材の透孔にボルトが挿通され、そのボルトにナットが螺合されることにより、そのボルトが上側の係合部材の先端部と下側の係合部材の先端部との間に架設され、そのボルトによって上側の係合部材の先端部と下側の係合部材の先端部との間の開口が閉じられている。これにより、ロープ部材が上側の係合部材と下側の係合部材との間の挿入受け部で保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4613864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、落石防止柵に落石が衝突したときには、金網が落石の衝突方向へ撓み、それに伴って、その金網の落石の衝突箇所の両外側に位置する部分が衝突箇所側へ引っ張られる。このとき、前記特許文献1に開示された構成では、金網が、中間パイプ支柱においてロープ材の中間部分を受け入れる挿入受け部を形成する係合部材に引っかかる虞がある。具体的には、丸棒からなる係合部材の先端面と外周面とは互いに垂直に配置されていてそれらの間に角部が形成されているため、上記のように金網が落石の衝突箇所側へ引っ張られるときには、この係合部材の先端部の角部に引っかかる虞がある。このような引っかかりが生じた場合には、その引っかかった箇所で金網が拘束され、その結果、落石の衝撃エネルギの吸収が妨げられる。
【0008】
また、落石防止柵への落石の衝突時には、金網だけでなく、ロープ材も落石の衝突箇所側へ引っ張られる。このとき、落石の衝突方向が落石防止柵に対して斜め上向きである場合にはロープ材が上向きに変位して中間パイプ支柱の上側の係合部材に対して強く擦れ、落石の衝突方向が落石防止柵に対して斜め下向きである場合にはロープ材が下向きに変位して中間パイプ支柱の下側の係合部材に対して強く擦れる。このようにロープ材が擦れる箇所がロープ材に引っかかりを生じさせるようなものである場合には、その箇所でロープ材が拘束され、その結果、落石の衝撃エネルギの吸収が妨げられる。
【0009】
本発明の目的は、落石防止柵に落石が衝突したときに、ロープ材に対応するケーブル及び金網が落石防止柵用中間支柱のうちケーブルの中間部分を受け入れてその中間部分を閉じ込める閉込部に引っかかって落石の衝撃エネルギの吸収が阻害されるのを防ぐことが可能な落石防止柵用中間支柱及び落石防止柵を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により提供される落石防止柵用中間支柱は、間隔をあけて設置される一対の両側支柱の間に張られたケーブルと前記一対の両側支柱間の範囲を覆う状態で前記ケーブルに固定された金網とを備えていて山側からの落石を受け止める落石防止柵に用いられ、前記ケーブルの両端間の中間部分であるケーブル中間部を支持するために前記一対の両側支柱の間で前記金網に対して前記山側と反対側に設置される落石防止柵用中間支柱である。この落石防止柵用中間支柱は、地面に立設される支柱本体と、前記支柱本体の外面から突出するようにその外面に設置されて、前記ケーブル中間部が前記支柱本体の軸方向と交差する方向に延びる状態でそのケーブル中間部を受け入れる受入空間を囲んで当該受入空間を画定し、前記受入空間に前記ケーブル中間部を受け入れた状態で、前記支柱本体の軸方向における前記ケーブル中間部の移動、及び、前記支柱本体の軸方向と直交し且つ前記支柱本体から離れる方向である離反方向への前記ケーブル中間部の移動を制限するように前記ケーブル中間部を閉じ込める閉込部と、を備える。前記閉込部は、前記受入空間に受け入れられた前記ケーブル中間部が前記支柱本体の軸方向における前記受入空間の一方側へ移動するのを制限するように前記受入空間の前記一方側において前記支柱本体の外面から突出する第1軸方向移動制限部と、前記受入空間に受け入れられた前記ケーブル中間部が前記支柱本体の軸方向において前記一方側と反対側へ移動するのを制限するように前記受入空間の前記一方側と反対側で前記支柱本体の外面から突出する第2軸方向移動制限部と、前記受入空間に受け入れられた前記ケーブル中間部の前記離反方向への移動を制限するように前記第1軸方向移動制限部と前記第2軸方向移動制限部との間に架設される離反制限部と、を有する。前記第1軸方向移動制限部は、前記支柱本体の外面からの当該第1軸方向移動制限部の突出方向において外側を向く第1外端面と、前記受入空間を隔てて前記第2軸方向移動制限部と対向する第1対向面と、を有する。前記第1外端面は、前記支柱本体の軸方向及び前記第1軸方向移動制限部の突出方向の両方に対して直交する前記第1軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて前記支柱本体へ近づくように湾曲した凸面である第1外端面曲面部を有する。前記第1対向面は、前記第1軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて前記第2軸方向移動制限部から遠ざかるように湾曲した凸面である第1対向面曲面部を有する。前記第2軸方向移動制限部は、前記支柱本体の外面からの当該第2軸方向移動制限部の突出方向において外側を向く第2外端面と、前記受入空間を隔てて前記第1軸方向移動制限部と対向する第2対向面と、を有する。前記第2外端面は、前記支柱本体の軸方向及び前記第2軸方向移動制限部の突出方向の両方に対して直交する前記第2軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて前記支柱本体へ近づくように湾曲した凸面である第2外端面曲面部を有する。前記第2対向面は、前記第2軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて前記第1軸方向移動制限部から遠ざかるように湾曲した凸面である第2対向面曲面部を有する。
【0011】
また、本発明により提供される落石防止柵は、山側からの落石を受け止めるものであり、この落石防止柵は、間隔をあけて設置される一対の両側支柱と、前記一対の両側支柱間に張られたケーブルと、前記一対の両側支柱間の範囲を覆う状態で前記ケーブルに固定された金網と、前記ケーブルの両端間の中間部分であるケーブル中間部を支持するために前記一対の両側支柱の間で前記金網に対して前記山側と反対側に設置された中間支柱と、を備える。前記中間支柱は、地面に立設される支柱本体と、前記支柱本体の外面から前記山側へ突出するように前記外面に設置されて、前記ケーブル中間部が前記支柱本体の軸方向と交差する方向に延びる状態でそのケーブル中間部を受け入れる受入空間を囲んで当該受入空間を画定し、前記受入空間に前記ケーブル中間部を受け入れた状態で、前記支柱本体の軸方向における前記ケーブル中間部の移動、及び、前記支柱本体から前記山側へ離れる方向である離反方向への前記ケーブル中間部の移動を制限するように前記ケーブル中間部を閉じ込める閉込部と、を有する。前記閉込部は、前記支柱本体の軸方向における前記受入空間の一方側への前記ケーブル中間部の移動を制限するように前記受入空間の前記一方側において前記支柱本体の外面から突出する第1軸方向移動制限部と、前記支柱本体の軸方向における前記一方側と反対側への前記ケーブル中間部の移動を制限するように前記受入空間の前記一方側と反対側において前記支柱本体の外面から突出する第2軸方向移動制限部と、前記ケーブル中間部の前記離反方向への移動を制限するように前記第1軸方向移動制限部と前記第2軸方向移動制限部との間に架設される離反制限部と、を有する。前記第1軸方向移動制限部は、前記支柱本体の外面からの当該第1軸方向移動制限部の突出方向において外側を向く第1外端面と、前記受入空間を隔てて前記第2軸方向移動制限部と対向する第1対向面と、を有する。前記第1外端面は、前記支柱本体の軸方向及び前記第1軸方向移動制限部の突出方向の両方に対して直交する前記第1軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて前記支柱本体へ近づくように湾曲した凸面である第1外端面曲面部を有する。前記第1対向面は、前記第1軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて前記第2軸方向移動制限部から遠ざかるように湾曲した凸面である第1対向面曲面部を有する。前記第2軸方向移動制限部は、前記支柱本体の外面からの当該第2軸方向移動制限部の突出方向において外側を向く第2外端面と、前記受入空間を隔てて前記第1軸方向移動制限部と対向する第2対向面と、を有する。前記第2外端面は、前記支柱本体の軸方向及び前記第2軸方向移動制限部の突出方向の両方に対して直交する前記第2軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて前記支柱本体へ近づくように湾曲した凸面である第2外端面曲面部を有する。前記第2対向面は、前記第2軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて前記第1軸方向移動制限部から遠ざかるように湾曲した凸面である第2対向面曲面部を有する。
【0012】
以上の本発明による落石防止柵用中間支柱及び落石防止柵の構成では、落石防止柵に落石が衝突して金網及びケーブルが落石の衝突箇所側へ引っ張られるときに落石防止柵用中間支柱の閉込部のうち金網及びケーブルのそれぞれと擦れ合う面が湾曲した凸面となっていることから、金網及びケーブルが閉込部に引っかかるのを防ぐことができ、その引っかかりによって落石防止柵による落石の衝撃エネルギの吸収が阻害されるのを防ぐことができる。
【0013】
具体的に、落石防止柵に山側から落石が衝突したときには、金網が落石の衝突方向へ撓むとともに、その金網のうち落石の衝突箇所の両側に位置する部分が前記衝突箇所側へ引っ張られて落石防止柵用中間支柱の閉込部の第1軸方向移動制限部の第1外端面及び第2軸方向移動制限部の第2外端面に対して強く擦れる。このとき、本構成では、第1軸方向移動制限部の第1外端面が第1軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて支柱本体へ近づくように湾曲した凸面である第1外端面曲面部を有するとともに、第2軸方向移動制限部の第2外端面が第2軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて支柱本体へ近づくように湾曲した凸面である第2外端面曲面部を有することから、金網がそれらの第1外端面曲面部及び第2外端面曲面部に対して引っかかることなく滑る。このため、閉込部に対する金網の引っかかりによって金網が拘束されて落石の衝撃エネルギの吸収が阻害されるのを防ぐことができる。また、落石防止柵に山側から落石が衝突するときには、その落石の衝突方向が斜め上方向もしくは斜め下方向になる場合があり、その場合には、落石防止柵のケーブルが落石の衝突方向に撓むとともに、そのケーブルのうち落石の衝突箇所の両側に位置する部分が前記衝突箇所側へ引っ張られて、落石防止柵用中間支柱の閉込部内の受入空間に受け入れられたケーブル中間部が第1軸方向移動制限部の第1対向面もしくは第2軸方向移動制限部の第2対向面に対して強く擦れることがある。このとき、本構成では、第1軸方向移動制限部の第1対向面が第1軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて第2軸方向移動制限部から遠ざかるように湾曲した凸面である第1対向面曲面部を有するとともに、第2軸方向移動制限部の第2対向面が第2軸方向移動制限部の幅方向において両外側へ向かうにつれて第1軸方向移動制限部から遠ざかるように湾曲した凸面である第2対向面曲面部を有することから、ケーブル中間部がそれらの第1対向面曲面部及び第2対向面曲面部に対して引っかかることなく滑る。このため、閉込部に対するケーブル中間部の引っかかりによってケーブル中間部が拘束されて落石の衝撃エネルギの吸収が阻害されるのを防ぐことができる。
【0014】
前記第1外端面曲面部は、前記第1外端面の全体に及んでいて、前記第1外端面は、前記第1軸方向移動制限部の幅方向における当該第1外端面の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲し、前記第2外端面曲面部は、前記第2外端面の全体に及んでいて、前記第2外端面は、前記第2軸方向移動制限部の幅方向における当該第2外端面の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲していることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、第1及び第2外端面がそれぞれの全体に亘って連続して湾曲した凸面になるため、落石防止柵に落石が衝突して金網が第1外端面及び第2外端面に対して擦れるときに、金網が第1外端面全体のいずれの箇所に対しても引っかかることなく滑るとともに第2外端面全体のいずれの箇所に対しても引っかかることなく滑る。このため、落石防止柵による落石の衝撃エネルギの吸収が阻害されるのをより有効に防ぐことができる。
【0016】
前記第1外端面は、前記第1軸方向移動制限部の幅方向における当該第1外端面の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲し、前記第2外端面は、前記第2軸方向移動制限部の幅方向における当該第2外端面の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲していることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、第1及び第2外端面全体のうちいずれかの箇所の曲率が局所的に大きくなってその箇所で金網が引っかかるのを防ぐことができる。このため、落石防止柵による落石の衝撃エネルギの吸収が阻害されるのをより有効に防ぐことができる。
【0018】
前記第1対向面曲面部は、前記第1対向面の全体に及んでいて、前記第1対向面は、前記第1軸方向移動制限部の幅方向における当該第1対向面の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲し、前記第2対向面曲面部は、前記第2対向面の全体に及んでいて、前記第2対向面は、前記第2軸方向移動制限部の幅方向における当該第2対向面の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲していることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、第1及び第2対向面がそれぞれの全体に亘って連続した凸面になるため、落石防止柵に落石が衝突してケーブル中間部が第1対向面に対して擦れるときにはその第1対向面全体のいずれの箇所に対しても引っかかることなく滑り、また、落石防止柵に落石が衝突してケーブル中間部が第2対向面に対して擦れるときにはその第2対向面全体のいずれの箇所に対しても引っかかることなく滑る。このため、落石防止柵による落石の衝撃エネルギの吸収が阻害されるのをより有効に防ぐことができる。
【0020】
前記第1対向面は、前記第1軸方向移動制限部の幅方向における当該第1対向面の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲し、前記第2対向面は、前記第2軸方向移動制限部の幅方向における当該第2対向面の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲していることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、第1及び第2対向面全体のうちいずれかの箇所の曲率が局所的に大きくなってその箇所でケーブル中間部が引っかかるのを防ぐことができる。このため、落石防止柵による落石の衝撃エネルギの吸収が阻害されるのをより有効に防ぐことができる。
【0022】
前記第1軸方向移動制限部は、前記第1対向面と反対側を向く凹面である第1反対向面と、前記第1対向面から前記第1反対向面へ至るように当該第1軸方向移動制限部を貫通する第1貫通孔と、をさらに有し、前記第2軸方向移動制限部は、前記第2対向面と反対側を向く凹面である第2反対向面と、前記第2対向面から前記第2反対向面へ至るように当該第2軸方向移動制限部を貫通する第2貫通孔と、をさらに有し、前記離反制限部は、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿通されて前記第1軸方向移動制限部と前記第2軸方向移動制限部との間に架設されるボルトと、前記ボルトが前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿通された状態で前記ボルトを前記第1軸方向移動制限部及び前記第2軸方向移動制限部に固定するように前記ボルトに螺合されるナットと、を有することが好ましい。
【0023】
この構成では、第1軸方向移動制限部の第1反対向面及び第2軸方向移動制限部の第2反対向面がそれぞれ凹面であることから、第1軸方向移動制限部及び第2軸方向移動制限部のそれぞれの厚みを削減でき、その結果、第1軸方向移動制限部及び第2軸方向移動制限部の重量及び材料コストの削減を図ることができる。また、この構成によれば、第1軸方向移動制限部の第1貫通孔が設けられた箇所の厚み及び第2軸方向移動制限部の第2貫通孔が設けられた箇所の厚みを小さくすることができるため、その第1貫通孔及び第2貫通孔に離反制限部のボルトを挿通する作業が容易になる。このため、第1軸方向移動制限部と第2軸方向移動制限部との間に離反制限部を架設する作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、落石防止柵に落石が衝突したときに、ケーブル及び金網が落石防止柵用中間支柱のうちケーブル中間部を受け入れてそのケーブル中間部を閉じ込める閉込部に引っかかって落石の衝撃エネルギの吸収が阻害されるのを防ぐことが可能な落石防止柵用中間支柱及び落石防止柵が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態による落石防止柵の道路側(山側と反対側)から見た正面図である。
図2】本発明の一実施形態による落石防止柵の平面図(上面図)である。
図3】本発明の一実施形態による落石防止柵の中間支柱付近を部分的に示す図であって当該中間支柱付近を山側から見た図である。
図4図3中のIV-IV位置における落石防止柵の断面図である。
図5】落石防止柵の中間支柱のうちの閉込部付近及びケーブルを山側から見た状態で部分的に示す図である。
図6図5に示した中間支柱の閉込部付近及びケーブルを支柱本体の軸方向に沿って上方から見た図である。
図7図5に示した中間支柱の閉込部付近及びケーブルをケーブルの延び方向に沿って側方から見た図である。
図8】落石防止柵が落石を受けて変形した状態を部分的に示す図である。
図9】本発明の実施形態の一変形例による落石防止柵の中間支柱の閉込部付近及びケーブルを支柱本体の軸方向に沿って上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
本発明の一実施形態による落石防止柵1(図1参照)は、山側から落石があったときにその落石を受け止めて道路上への落石を防ぐものであり、山の斜面が隣接する道路脇に、山側を向く方向(以下、山側方向と称する)に対して直交する方向に延設される。すなわち、落石防止柵1は、山の斜面が隣接する道路脇に、道路が延びる方向に沿って延設される。この落石防止柵1が延設される方向を落石防止柵1の幅方向と称する。落石防止柵1は、主要な構成として、図1に示されるように、複数の両側支柱2と、複数のケーブル3と、ブレーキエレメント4と、複数の間隔保持材5と、1枚の金網6と、複数の固定部材7と、複数の補助支持材8と、中間支柱9と、を備えている。
【0028】
複数の両側支柱2は、山側方向に対して直交する方向、すなわち落石防止柵1の幅方向に間隔をあけて道路脇の地面Gに立設されている。換言すれば、複数の両側支柱2は、道路が延びる方向に沿って間隔をあけて道路脇の地面Gに立設されている。両側支柱2は、ケーブル3の両側に配置されてそのケーブル3を張った状態で支持するものである。複数の両側支柱2には、一対の端末支柱12と、少なくとも1つの中継支柱14とが含まれる。
【0029】
一対の端末支柱12は、落石防止柵1の幅方向における当該落石防止柵1の両端にそれぞれ配置されている。図1では、落石防止柵1の幅方向における当該落石防止柵1の一端から所定の範囲のみが部分的に示されているため、一対の端末支柱12のうち当該落石防止柵1の一端に配置された一方の端末支柱12のみが示されている。
【0030】
少なくとも1つの中継支柱14は、一対の端末支柱12の間に配置されている。前記一対の端末支柱12のそれぞれとそれに隣り合う中継支柱14との間にケーブル3が配置されて、そのケーブル3の一端と他端とがそれぞれ対応する端末支柱12と中継支柱14とに接続されている。また、複数の両側支柱2に複数の中継支柱14が含まれる場合、すなわち、一対の端末支柱12の間に複数の中継支柱14が配置される場合には、その複数の中継支柱14は落石防止柵1の幅方向に間隔をあけて配置される。そして、その複数の中継支柱14の隣り合うもの同士の間にケーブル3が配置されて、そのケーブル3の一端と他端とがそれぞれ対応する中継支柱14に接続される。
【0031】
ケーブル3は、上記のようにその一端と他端とが端末支柱12とそれに隣り合う中継支柱14とに接続されてその端末支柱12と中継支柱14との間に張設されている。また、一対の端末支柱12の間に複数の中継支柱14が配置される場合には、上記のようにその複数の中継支柱14の隣り合うもの同士の間にもケーブル3が配置されてそのケーブル3の一端と他端とがそれぞれ対応する中継支柱14に接続され、それによって隣り合う中継支柱14同士の間にケーブル3が張設される。すなわち、一対の端末支柱12間において、複数のケーブル3が中継支柱14を介して落石防止柵1の幅方向に繋がっている。ケーブル3が張設される隣り合う両側支柱2間において、複数のケーブル3が両側支柱2の軸方向(上下方向)において所定間隔で配置されている。各ケーブル3は、落石防止柵1の幅方向に延びている。また、各ケーブル3の一端と他端は、それぞれ、対応するブレーキエレメント4を介して対応する両側支柱2に接続されている。
【0032】
ブレーキエレメント4は、当該ブレーキエレメント4に連結されたケーブル3に衝撃が作用したときに衝撃エネルギを吸収するものである。このブレーキエレメント4としては、公知の種々の構成のものが採用され得るが、例えば、両側支柱2に接続されたブレーキエレメント用ケーブルと、そのブレーキエレメント用ケーブルが挿通される貫通孔を有する板状部材であって前記ケーブル3に連結されたものとを備えていて、落石防止柵1に落石が衝突して前記ケーブル3をブレーキエレメント4から遠ざかる方向へ引っ張るような衝撃が前記ケーブル3に作用したときに板状部材の貫通孔の内面とブレーキエレメント用ケーブルとの間で生じる摩擦を利用して衝撃エネルギを吸収するように構成されたもの等が採用される。
【0033】
複数の間隔保持材5は、両側支柱2の軸方向に沿って並んで配置された複数のケーブル3の隣り合うもの同士の間の間隔を保持するものである。間隔保持材5は、落石防止柵1の幅方向において隣り合う両側支柱2間で後述のように配置される中間支柱9と補助支持材8との間、及び、その補助支持材8と両側支柱2との間に配置されている。各間隔保持材5は、両側支柱2の軸方向に沿う方向に延びる部材であり、その方向に並んで配置された複数のケーブル3のそれぞれと結合され、それによってその複数のケーブル3の隣り合うもの同士の間の間隔を保持している。
【0034】
金網6は、一対の端末支柱12間で落石を受け止めるものであり、一対の端末支柱12間の範囲を覆う状態、換言すれば隣り合う両側支柱2同士の間の範囲を覆う状態で複数のケーブル3に固定されている。すなわち、金網6は、一方の端末支柱12から他方の端末支柱12までの範囲に亘って延設されている。金網6は、一対の端末支柱12間において、中継支柱14及び各ケーブル3に対して山側に配置されている(図2参照)。なお、図1では、金網6と重なるケーブル3、ブレーキエレメント4及び固定部材7等を見えやすくするために、金網6の網目が部分的に表されている。
【0035】
金網6は、複数の固定部材7によって各ケーブル3に固定されている。具体的には、各固定部材7は、ケーブル3に巻回された金属製のコイルからなり、金網6の網目を縫うように金網6と結合されることによってケーブル3と金網6とを連結している。固定部材7は、両側支柱2とその両側支柱2に隣り合う間隔保持材5との間、隣り合う間隔保持材5同士の間、及び、間隔保持材5と後述のようにその間隔保持材5に隣り合う補助支持材8との間にそれぞれ配置され、その配置された位置においてケーブル3と金網6とを連結している。
【0036】
補助支持材8は、各両側支柱2と後述のようにその両側支柱2と隣り合う中間支柱9との間において各ケーブル3を補助的に支持するものである。補助支持材8は、各両側支柱2とそれに隣り合う中間支柱9との間の中央に配置されている。補助支持材8は、本実施形態ではアングル材からなり、両側支柱2及び中間支柱9と平行に延びるように地面G上に立設されている。この補助支持材8に対して各ケーブル3の対応する部位が結合され、それにより、各ケーブル3が補助支持材8によって支持されている。
【0037】
中間支柱9は、ケーブル3の両端間の中間部分であるケーブル中間部3a(図3参照)を支持するために、前記複数の両側支柱2のうち落石防止柵1の幅方向において隣り合うもの同士の間で金網6に対して山側と反対側(本実施形態では金網6に対して道路側)に設置されるものである。具体的には、中間支柱9は、各端末支柱12とそれに隣り合う中継支柱14との間に設置され、また、一対の端末支柱12間に複数の中継支柱14が設置される場合には、その複数の中継支柱14の隣り合うもの同士の間にも中間支柱9が設置される。本実施形態では、各端末支柱12とそれに隣り合う中継支柱14との間に複数の中間支柱9が所定間隔で設置され、また、一対の端末支柱12間に複数の中継支柱14が設置される場合には、その複数の中継支柱14の隣り合うもの同士の間に同様に複数の中間支柱9が所定間隔で設置される。各端末支柱12と各中継支柱14と各中間支柱9は、落石防止柵1の幅方向に沿って並んで設置される。
【0038】
各中間支柱9は、図3及び図4に示すように、支柱本体22と、複数の閉込部24と、を有する。各中間支柱9は、複数の閉込部24として、両側支柱2の軸方向に沿って並んで配置された複数のケーブル3の数に対応した数の閉込部24を有する。
【0039】
支柱本体22は、柱状(本実施形態では円柱状)をなし、その下部が地中に埋設されることにより地面Gから上方へ突出するように地面Gに立設される。支柱本体22は、本実施形態では鋼管からなる。
【0040】
複数の閉込部24は、それぞれ、対応するケーブル3の両端間の中間部分であるケーブル中間部3aが支柱本体22の軸方向と直交する方向(落石防止柵1の幅方向)に延びる状態でそのケーブル中間部3aを受け入れる受入空間26を囲んで当該受入空間26を画定し、その受入空間26にケーブル中間部3aを受け入れた状態で、ケーブル中間部3aの延び方向への移動は許容しつつ、支柱本体22の軸方向(支柱本体22の延び方向)におけるケーブル中間部3aの移動、及び、支柱本体22の軸方向と直交し且つ支柱本体22から山側へ離れる方向である離反方向へのケーブル中間部3aの移動を制限するようにケーブル中間部3aを閉じ込めるものである。複数の閉込部24は、それぞれ、支柱本体22の地面Gから上方へ突出した部分の外面(外周面)のうち山側を向く面22a(以下、山側面22aと称する)から山側へ突出するようにその山側面22aに設置されている。複数の閉込部24は、支柱本体22の軸方向に沿って所定間隔で配置されている。
【0041】
複数の閉込部24のそれぞれは、金網6がその閉込部24に対して山側から押し付けられた場合であってもその金網6の網目内への当該閉込部24の入り込みが阻止される寸法を有する。すなわち、各閉込部24は、山側から見て、金網6の網目の大きさよりも大きい寸法を有する。具体的には、落石防止柵1の幅方向における各閉込部24の寸法Wは同方向における金網6の網目の寸法W11よりも大きく、また、支柱本体22の軸方向における各閉込部24の寸法Wは同方向における金網6の網目の寸法W12よりも大きい。
【0042】
各閉込部24は、図5に示されるように、第1軸方向移動制限部35と、第2軸方向移動制限部36と、離反制限部37と、を有する。
【0043】
第1軸方向移動制限部35は、前記受入空間26に受け入れられたケーブル中間部3aが支柱本体22の軸方向における前記受入空間26の一方側へ移動するのを制限するように前記受入空間26の前記一方側において支柱本体22の山側面22aから山側へ突出している。具体的には、第1軸方向移動制限部35は、前記受入空間26に受け入れられたケーブル中間部3aが地面Gからの支柱本体22の突出方向における当該支柱本体22の先端側へ移動するのを制限するように前記受入空間26の前記先端側において支柱本体22の山側面22aから山側へ突出している。第1軸方向移動制限部35は、湾曲した鋼板からなり、支柱本体22の前記山側面22aから山側へ突出する姿勢で前記山側面22aに溶接により固定されている。第1軸方向移動制限部35は、第1外端面41と、一対の第1側面42と、第1対向面43と、第1反対向面44と、を有する。
【0044】
第1外端面41は、支柱本体22の前記山側面22aからの第1軸方向移動制限部35の突出方向において外側を向く端面であり、一対の端末支柱12間に張設された金網6を受ける面である。すなわち、第1外端面41は、第1軸方向移動制限部35のうち山側を向く端面であり、その山側に配置された金網6に接触する。第1外端面41は、支柱本体22の軸方向及び支柱本体22の前記山側面22aからの第1軸方向移動制限部35の突出方向の両方に対して直交する第1軸方向移動制限部35の幅方向の中央から両外側へ向かうにつれて支柱本体22へ近づくように湾曲した凸面である第1外端面曲面部41a(図6参照)を有する。第1外端面曲面部41aは、支柱本体22の軸方向に沿う方向から見て円弧状をなしている。
【0045】
本実施形態では、第1外端面曲面部41aは、第1外端面41の全体に及んでいる。すなわち、第1外端面41が、第1軸方向移動制限部35の幅方向における当該第1外端面41の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲した凸面となっている。そして、第1外端面41は、第1軸方向移動制限部35の幅方向における当該第1外端面41の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲している。すなわち、第1外端面41全体が、支柱本体22の軸方向に沿う方向から見て一定の曲率の円弧状をなしている。
【0046】
一対の第1側面42は、第1軸方向移動制限部35のうち当該第1軸方向移動制限部35の幅方向において両外側を向く面である。この一対の第1側面42のうち一方の第1側面42は、第1軸方向移動制限部35の幅方向における第1外端面41の一端から連続して第1軸方向移動制限部35の突出方向に沿うように延びて支柱本体22の前記山側面22aに至り、もう一方の第1側面42は、第1軸方向移動制限部35の幅方向における第1外端面41の他端から連続して第1軸方向移動制限部35の突出方向に沿うように延びて支柱本体22の前記山側面22aに至っている。
【0047】
第1対向面43(図5参照)は、支柱本体22の軸方向において前記受入空間26を隔てて第2軸方向移動制限部36と対向する面である。この第1対向面43は、第1軸方向移動制限部35の幅方向の中央から両外側へ向かうにつれて第2軸方向移動制限部36から遠ざかるように湾曲した凸面である第1対向面曲面部43aを有する。第1対向面曲面部43aは、支柱本体22の軸方向に対して直交する方向(第1軸方向移動制限部35の突出方向)に沿う方向から見て円弧状をなしている。
【0048】
本実施形態では、第1対向面曲面部43aは、第1対向面43の全体に及んでいる。すなわち、第1対向面43が、第1軸方向移動制限部35の幅方向における当該第1対向面43の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲した凸面となっている。そして、第1対向面43は、第1軸方向移動制限部35の幅方向における当該第1対向面43の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲している。すなわち、第1対向面43全体が、支柱本体22の軸方向に対して直交する方向(第1軸方向移動制限部35の突出方向)に沿う方向から見て一定の曲率の円弧状をなしている。
【0049】
第1反対向面44は、第1軸方向移動制限部35のうち第1対向面43と反対側を向く面であり、第1対向面43に沿って湾曲した凹面となっている。この第1反対向面44は、第1対向面曲面部43aの曲率と同じ一定の曲率で第1軸方向移動制限部35の幅方向における当該第1反対向面44の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲している。すなわち、第1反対向面44全体が、支柱本体22の軸方向に対して直交する方向(第1軸方向移動制限部35の突出方向)に沿う方向から見て一定の曲率の円弧状をなしている。
【0050】
また、第1軸方向移動制限部35は、第1対向面43から第1反対向面44へ至るように当該第1軸方向移動制限部35を厚み方向に貫通する第1貫通孔45(図7参照)を有する。第1貫通孔45は、第1軸方向移動制限部35の幅方向における中央の位置で、支柱本体22の前記山側面22aからの第1軸方向移動制限部35の突出方向における先端付近の位置に設けられている。
【0051】
第2軸方向移動制限部36は、支柱本体22の軸方向において第1軸方向移動制限部35から前記受入空間26を隔てて配置されている。第2軸方向移動制限部36は、前記受入空間26に受け入れられたケーブル中間部3aが支柱本体22の軸方向において第1軸方向移動制限部35と反対側へ移動するのを制限するように前記受入空間26に対して第1軸方向移動制限部35と反対側で支柱本体22の山側面22aから山側へ突出している。すなわち、第2軸方向移動制限部36は、前記受入空間26に受け入れられたケーブル中間部3aが地面G側へ移動するのを制限するように前記受入空間26の地面G側で支柱本体22の山側面22aから山側へ突出している。第2軸方向移動制限部36は、第1軸方向移動制限部35と対称となる形状をなしている。第2軸方向移動制限部36は、第1軸方向移動制限部35と同様、湾曲した鋼板からなり、支柱本体22の前記山側面22aから山側へ突出する姿勢で前記山側面22aに溶接により固定されている。第2軸方向移動制限部36は、第2外端面51と、一対の第2側面52と、第2対向面53と、第2反対向面54と、を有する。
【0052】
第2外端面51は、支柱本体22の前記山側面22aからの第2軸方向移動制限部36の突出方向において外側を向く端面であり、一対の端末支柱12間に張設された金網6を受ける面である。すなわち、第2外端面51は、第2軸方向移動制限部36のうち山側を向く端面であり、その山側に配置された金網6に接触する。この第2外端面51と前記第1外端面41は、支柱本体22の前記山側面22aからの閉込部24の突出方向において外側を向く当該閉込部24の端面でもある。第2外端面51は、支柱本体22の軸方向及び支柱本体22の前記山側面22aからの第2軸方向移動制限部36の突出方向の両方向に対して直交する第2軸方向移動制限部36の幅方向の中央から両外側へ向かうにつれて支柱本体22へ近づくように湾曲した凸面である第2外端面曲面部51aを有する。第2外端面曲面部51aは、支柱本体22の軸方向に沿う方向から見て円弧状をなしている。
【0053】
本実施形態では、第2外端面曲面部51aは、第2外端面51の全体に及んでいる。すなわち、第2外端面51が、第2軸方向移動制限部36の幅方向における当該第2外端面51の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲した凸面となっている。そして、第2外端面51は、第2軸方向移動制限部36の幅方向における当該第2外端面51の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲している。すなわち、第2外端面51全体が、支柱本体22の軸方向に沿う方向から見て一定の曲率の円弧状をなしている。
【0054】
一対の第2側面52は、第2軸方向移動制限部36のうち当該第2軸方向移動制限部36の幅方向において両外側を向く面である。この一対の第2側面52のうち一方の第2側面52は、第2軸方向移動制限部36の幅方向における第2外端面51の一端から連続して第2軸方向移動制限部36の突出方向に沿うように延びて支柱本体22の前記山側面22aに至り、もう一方の第2側面52は、第2軸方向移動制限部36の幅方向における第2外端面51の他端から連続して第2軸方向移動制限部36の突出方向に沿うように延びて支柱本体22の前記山側面22aに至っている。
【0055】
第2対向面53は、支柱本体22の軸方向において前記受入空間26を隔てて第1軸方向移動制限部35の第1対向面43と対向する面である。この第2対向面53は、第2軸方向移動制限部36の幅方向の中央から両外側へ向かうにつれて第1軸方向移動制限部35から遠ざかるように湾曲した凸面である第2対向面曲面部53aを有する。第2対向面曲面部53aは、支柱本体22の軸方向に対して直交する方向(第2軸方向移動制限部36の突出方向)に沿う方向から見て円弧状をなしている。
【0056】
本実施形態では、第2対向面曲面部53aは、第2対向面53の全体に及んでいる。すなわち、第2対向面53が、第2軸方向移動制限部36の幅方向における当該第2対向面53の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲した凸面となっている。そして、第2対向面53は、第2軸方向移動制限部36の幅方向における当該第2対向面53の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲している。すなわち、第2対向面53全体が、支柱本体22の軸方向に対して直交する方向(第2軸方向移動制限部36の突出方向)に沿う方向から見て一定の曲率の円弧状をなしている。
【0057】
第2反対向面54は、第2軸方向移動制限部36のうち第2対向面53と反対側を向く面であり、第2対向面53に沿って湾曲した凹面となっている。この第2反対向面54は、第2対向面曲面部53aの曲率と同じ一定の曲率で第2軸方向移動制限部36の幅方向における当該第2反対向面54の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲している。すなわち、第2反対向面54全体が、支柱本体22の軸方向に対して直交する方向(第2軸方向移動制限部36の突出方向)に沿う方向から見て一定の曲率の円弧状をなしている。
【0058】
また、第2軸方向移動制限部36は、第2対向面53から第2反対向面54へ至るように当該第2軸方向移動制限部36を厚み方向に貫通する第2貫通孔55を有する。第2貫通孔55は、第2軸方向移動制限部36の幅方向における中央の位置で、支柱本体22の前記山側面22aからの第2軸方向移動制限部36の突出方向における先端付近の位置に設けられている。また、第2貫通孔55が設けられた位置は、支柱本体22の軸方向に沿う方向において第1貫通孔45と対向する位置である。
【0059】
離反制限部37は、前記受入空間26に受け入れられたケーブル中間部3aの前記離反方向への移動を制限するように第1軸方向移動制限部35と第2軸方向移動制限部36との間に架設されている。この離反制限部37により、前記受入空間26から山側へのケーブル中間部3aの離脱が阻止される。離反制限部37は、第1軸方向移動制限部35と第2軸方向移動制限部36に対して着脱可能となっている。具体的には、離反制限部37は、第1貫通孔45及び第2貫通孔55に挿通されて第1軸方向移動制限部35と第2軸方向移動制限部36との間に架設されるボルト60と、そのボルト60に螺合して当該ボルト60が第1軸方向移動制限部35と第2軸方向移動制限部36との間に架設された状態を保持するナット61とを有する。
【0060】
ボルト60は、第1貫通孔45及び第2貫通孔55に挿通されて第1軸方向移動制限部35と第2軸方向移動制限部36との間に架設された状態で、受入空間26のうち第1及び第2軸方向移動制限部35,36の前記山側面22aからの突出方向の先端部付近の部分を支柱本体22の軸方向に沿う方向に横切り、それによって受入空間26内のケーブル中間部3aの前記離反方向への移動を制限する。このボルト60の頭部60aは、湾曲した第1反対向面44によって囲まれた空間内に収まっている。
【0061】
ナット61は、ボルト60が第1貫通孔45及び第2貫通孔55に挿通された状態でその第1貫通孔45及び第2貫通孔55から抜けるのを阻止して当該ボルト60を第1軸方向移動制限部35及び第2軸方向移動制限部36に固定するように当該ボルト60に螺合されるものである。このナット61、及び、ボルト60の前記頭部60aと反対側の端部は、第2軸方向移動制限部36の湾曲した第2反対向面54によって囲まれた空間内に収まっている。
【0062】
落石防止柵1の設置時には、第1軸方向移動制限部35及び第2軸方向移動制限部36からボルト60及びナット61を取り外して、第1軸方向移動制限部35と第2軸方向移動制限部36との間の受入空間26に山側からケーブル中間部3aを挿入できるようになっている。そして、そのケーブル中間部3aを受入空間26に納めた後、第1貫通孔45及び第2貫通孔55にボルト60を挿入するとともに、そのボルト60にナット61を螺合して当該ボルト60を第1軸方向移動制限部35と第2軸方向移動制限部36との間に架設した状態でその第1及び第2軸方向移動制限部35,36に固定するようになっている。
【0063】
本実施形態では、落石防止柵1に山側から落石が衝突して金網6及びケーブル3が落石の衝突箇所側へ引っ張られるときに、中間支柱9の閉込部24のうち金網6及びケーブル3のそれぞれと擦れ合う面が湾曲した凸面となっていることから、金網6及びケーブル3が閉込部24に引っかかるのを防ぐことができ、その引っかかりによって落石防止柵1による落石の衝撃エネルギの吸収が阻害されるのを防ぐことができる。
【0064】
具体的には、例えば図8に示されているように落石防止柵1に山側から落石100が衝突したときには、金網6が落石100の衝突方向へ撓むとともに、その金網6のうち落石100の衝突箇所の両側に位置する部分が前記衝突箇所側へ引っ張られて中間支柱9の閉込部24の第1軸方向移動制限部35の第1外端面41及び第2軸方向移動制限部36の第2外端面51に対して強く擦れる。このとき、本実施形態では、第1外端面41が第1軸方向移動制限部35の幅方向においてその中央から両外側へ向かうにつれて支柱本体22へ近づくように湾曲した凸面である第1外端面曲面部41aを有するとともに、第2外端面51が第2軸方向移動制限部36の幅方向においてその中央から両外側へ向かうにつれて支柱本体22へ近づくように湾曲した凸面である第2外端面曲面部51aを有することから、金網6がそれらの第1外端面曲面部41a及び第2外端面曲面部51aに対して引っかかることなく滑る。このため、金網6が第1外端面曲面部41a及び第2外端面曲面部51aに対する引っかかりによって閉込部24の位置で拘束されるのを防ぐことができ、その結果、金網6全体を使って落石の衝撃エネルギを良好に吸収できる。従って、本実施形態では、閉込部24に対する金網6の引っかかりによって落石防止柵1による落石の衝撃エネルギの吸収が阻害されるのを防ぐことができる。
【0065】
また、落石防止柵1に山側から落石100が衝突するときには、その落石100の衝突方向が斜め上方向もしくは斜め下方向になる場合があり、その場合には、落石防止柵1のケーブル3が落石100の衝突方向に撓むとともに、そのケーブル3のうち落石100の衝突箇所の両側に位置する部分が前記衝突箇所側へ引っ張られて、中間支柱9の閉込部24内の受入空間26に受け入れられたケーブル中間部3aが第1軸方向移動制限部35の第1対向面43もしくは第2軸方向移動制限部36の第2対向面53に対して強く擦れることがある。このとき、本実施形態では、第1対向面43が第1軸方向移動制限部35の幅方向においてその中央から両外側へ向かうにつれて第2軸方向移動制限部36から遠ざかるように湾曲した凸面である第1対向面曲面部43aを有するとともに、第2対向面53が第2軸方向移動制限部36の幅方向においてその中央から両外側へ向かうにつれて第1軸方向移動制限部35から遠ざかるように湾曲した凸面である第2対向面曲面部53aを有することから、ケーブル中間部3aがそれらの第1対向面曲面部43a及び第2対向面曲面部53aに対して引っかかることなく滑る。このため、ケーブル中間部3aが第1対向面曲面部43a及び第2対向面曲面部53aに対する引っかかりによって閉込部24の位置で拘束されるのを防ぐことができ、その結果、ケーブル3全体を使って落石の衝撃エネルギを吸収できるとともに、ケーブル3の両端にそれぞれ接続されたブレーキエレメント4へ落石の衝撃エネルギを伝達してそれらのブレーキエレメント4で衝撃エネルギを良好に吸収することができる。従って、本実施形態では、閉込部24に対するケーブル中間部3aの引っかかりによって落石防止柵1による落石の衝撃エネルギの吸収が阻害されるのを防ぐことができる。
【0066】
また、本実施形態では、第1外端面曲面部41aが第1外端面41の全体に及んでいて、第1外端面41が第1軸方向移動制限部35の幅方向における当該第1外端面41の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲しているとともに、第2外端面曲面部51aが第2外端面51の全体に及んでいて、第2外端面51が第2軸方向移動制限部36の幅方向における当該第2外端面51の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲している。すなわち、第1外端面41及び第2外端面51がそれぞれその全体に亘って連続した凸面になっている。このため、落石防止柵1に落石が衝突して金網6が第1外端面41及び第2外端面51に対して擦れるときに、金網6が第1外端面41全体のいずれの箇所に対しても引っかかることなく滑るとともに第2外端面51全体のいずれの箇所に対しても引っかかることなく滑る。このため、落石防止柵1による落石の衝撃エネルギの吸収が阻害されるのをより有効に防ぐことができる。
【0067】
また、第1外端面41全体及び第2外端面51全体がそれぞれ湾曲した凸面であっても、その第1外端面41のうちのいずれかの箇所の曲率が局所的に大きくなっていたり、第2外端面51のうちのいずれかの箇所の曲率が局所的に大きくなっていたりする場合には、その曲率が大きくなっている箇所で金網6が引っかかる虞がある。これに対し、本実施形態では、第1外端面41が第1軸方向移動制限部35の幅方向における当該第1外端面41の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲しているとともに、第2外端面51が第2軸方向移動制限部36の幅方向における当該第2外端面51の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲しているため、上記のような曲率が大きくなっている箇所での金網6の引っかかりが生じない。このため、落石防止柵1による落石の衝撃エネルギの吸収が阻害されるのをさらに有効に防ぐことができる。
【0068】
また、本実施形態では、第1対向面曲面部43aが第1対向面43の全体に及んでいて、第1対向面43が第1軸方向移動制限部35の幅方向における当該第1対向面43の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲しているとともに、第2対向面曲面部53aが第2対向面53の全体に及んでいて、第2対向面53が第2軸方向移動制限部36の幅方向における当該第2対向面53の一端から他端までの全体に亘って連続して湾曲している。すなわち、第1対向面43及び第2対向面53がそれぞれその全体に亘って連続した凸面になっている。このため、落石防止柵1に落石が衝突してケーブル中間部3aが第1対向面43に対して擦れるときには、ケーブル中間部3aは第1対向面43全体のいずれの箇所に対しても引っかかることなく滑り、また、落石防止柵1に落石が衝突してケーブル中間部3aが第2対向面53に対して擦れるときには、ケーブル中間部3aは第2対向面53全体のいずれの箇所に対しても引っかかることなく滑る。このため、落石防止柵1による落石の衝撃エネルギの吸収が阻害されるのをより有効に防ぐことができる。
【0069】
また、第1対向面43全体及び第2対向面53全体がそれぞれ湾曲した凸面であっても、その第1対向面43のうちのいずれかの箇所の曲率が局所的に大きくなっていたり、第2対向面53のうちのいずれかの箇所の曲率が局所的に大きくなっていたりする場合には、その曲率が大きくなっている箇所でケーブル中間部3aが引っかかる虞がある。これに対し、本実施形態では、第1対向面43が第1軸方向移動制限部35の幅方向における当該第1対向面43の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲しているとともに、第2対向面53が第2軸方向移動制限部36の幅方向における当該第2対向面53の一端から他端までの全体に亘って一定の曲率で湾曲しているため、上記のような曲率が高くなっている箇所でのケーブル中間部3aの引っかかりが生じない。このため、落石防止柵1による落石の衝撃エネルギの吸収が阻害されるのをさらに有効に防ぐことができる。
【0070】
また、本実施形態では、以上のように落石防止柵1への落石の衝突時に金網6及びケーブル中間部3aが閉込部24に対して引っかかることなく滑ることにより、閉込部24に対する引っかかりによって金網6及びケーブル中間部3aが損傷するのを防ぐことができるという効果も得られる。
【0071】
また、本実施形態では、第1軸方向移動制限部35の第1反対向面44及び第2軸方向移動制限部36の第2反対向面54がそれぞれ凹面であることから、第1軸方向移動制限部35及び第2軸方向移動制限部36のそれぞれの厚みを削減でき、その結果、第1軸方向移動制限部35及び第2軸方向移動制限部36の重量及び材料コストの削減を図ることができる。また、第1軸方向移動制限部35の第1貫通孔45が設けられた箇所の厚み及び第2軸方向移動制限部36の第2貫通孔55が設けられた箇所の厚みを小さくすることができることから、その第1貫通孔45及び第2貫通孔55に離反制限部37のボルト60を挿通する作業が容易になる。このため、第1軸方向移動制限部35と第2軸方向移動制限部36との間に離反制限部37を架設する作業を容易に行うことができる。
【0072】
(変形例)
本発明による落石防止柵用中間支柱及び落石防止柵は、前記のようなものに必ずしも限定されない。例えば、本発明による落石防止柵用中間支柱及び落石防止柵に以下のような構成を採用可能である。
【0073】
落石防止柵用中間支柱の閉込部の第1軸方向移動制限部の第1外端面曲面部は、第1軸方向移動制限部の幅方向における第1外端面の一端から内側に亘る所定の領域とその第1外端面の他端から内側に亘る所定の領域とに分かれて設けられ、第1外端面は、その両側の第1外端面曲面部の間に平面状の部分を有していてもよい。図9には、そのような変形例による中間支柱の閉込部の第1軸方向移動制限部付近の構造が示されている。
【0074】
この変形例による構造では、閉込部24の第1軸方向移動制限部35の第1外端面41は、第1軸方向移動制限部35の幅方向における第1外端面41の一端から内側に亘る所定の領域の一方の第1外端面曲面部41aと、第1軸方向移動制限部35の幅方向における第1外端面41の他端から内側に亘る所定の領域の他方の第1外端面曲面部41aと、その両側の第1外端面曲面部41aの間に設けられてその両側の第1外端面曲面部41aと連続する平面状の第1外端面平面部41bと、を有する。
【0075】
また、図示を省略しているが、この変形例において、閉込部の第2軸方向移動制限部の第2外端面曲面部は、第2軸方向移動制限部の幅方向における第2外端面の一端から内側に亘る所定の領域とその第2外端面の他端から内側に亘る所定の領域とに分かれて設けられ、第2外端面は、その両側の第2外端面曲面部の間に平面状の部分を有していてもよい。この変形例における第2外端面の形状は、図9に示される第1外端面41の形状と同様である。
【0076】
また、第1外端面曲面部及び第2外端面曲面部は、それぞれ、部分的に曲率が小さい部分もしくは部分的に曲率が大きい部分を含んでいてもよい。
【0077】
また、第1軸方向移動制限部の第1対向面曲面部は、第1軸方向移動制限部の幅方向における第1対向面の一端から内側に亘る所定の領域とその第1対向面の他端から内側に亘る所定の領域とに分かれて設けられ、第1対向面は、その両側の第1対向面曲面部の間に平面状の部分を有していてもよい。同様に、第2軸方向移動制限部の第2対向面曲面部は、第2軸方向移動制限部の幅方向における第2対向面の一端から内側に亘る所定の領域とその第2対向面の他端から内側に亘る所定の領域とに分かれて設けられ、第2対向面は、その両側の第2対向面曲面部の間に平面状の部分を有していてもよい。
【0078】
また、第1対向面曲面部及び第2対向面曲面部は、それぞれ、部分的に曲率が小さい部分もしくは部分的に曲率が大きい部分を含んでいてもよい。
【0079】
また、第1軸方向移動制限部の第1反対向面は、必ずしも第1対向面に沿って湾曲した凹面でなくてもよく、例えば、平面、もしくは、第1対向面に沿う形状以外の凹面であってもよい。同様に、第2軸方向移動制限部の第2反対向面は、必ずしも第2対向面に沿って湾曲した凹面でなくてもよく、例えば、平面、もしくは、第2対向面に沿う形状以外の凹面であってもよい。
【0080】
また、第1軸方向移動制限部は、当該第1軸方向移動制限部の幅方向における第1外端面の両端のそれぞれと支柱本体との間に当該第1軸方向移動制限部の幅方向の両外側を向く第1側面を必ずしも有していなくてもよく、湾曲した第1外端面曲面部が支柱本体の外面(山側面)に直接繋がっていてもよい。同様に、第2軸方向移動制限部は、当該第2軸方向移動制限部の幅方向における第2外端面の両端のそれぞれと支柱本体との間に当該第2軸方向移動制限部の幅方向の両外側を向く第2側面を必ずしも有していなくてもよく、湾曲した第2外端面曲面部が支柱本体の外面(山側面)に直接繋がっていてもよい。
【0081】
また、本発明による落石防止柵は、道路脇に設置されるものに必ずしも限定されず、山の斜面に設置されて山側からの落石を受け止めるものであってもよい。この場合、山側は山の斜面の上側に相当し、山側と反対側は山の斜面の下側に相当する。
【符号の説明】
【0082】
1 落石防止柵
2 両側支柱
3 ケーブル
3a ケーブル中間部
6 金網
9 中間支柱
22 支柱本体
24 閉込部
26 受入空間
35 第1軸方向移動制限部
36 第2軸方向移動制限部
37 離反制限部
41 第1外端面
41a 第1外端面曲面部
43 第1対向面
43a 第1対向面曲面部
44 第1反対向面
45 第1貫通孔
51 第2外端面
51a 第2外端面曲面部
53 第2対向面
53a 第2対向面曲面部
54 第2反対向面
55 第2貫通孔
60 ボルト
61 ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9