(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】トレイおよびブランク
(51)【国際特許分類】
B65D 5/52 20060101AFI20240501BHJP
B65D 21/032 20060101ALI20240501BHJP
B65D 5/20 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B65D5/52 K
B65D21/032
B65D5/20 A
(21)【出願番号】P 2020197134
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【氏名又は名称】児玉 和樹
(73)【特許権者】
【識別番号】591087264
【氏名又は名称】イオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 章
(72)【発明者】
【氏名】牧内 隆文
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3134204(JP,U)
【文献】特開2003-155025(JP,A)
【文献】実開昭59-153825(JP,U)
【文献】特開2004-035067(JP,A)
【文献】特開2001-341727(JP,A)
【文献】特開2018-002254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/00- 5/76
B65D 21/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に側方開口部(24)を有するトレイ(1)であって、
底壁(10)と、
前記底壁の周縁部に立設される複数の側壁(11,12)と、を備え、
複数の前記側壁の少なくとも1つの前記側壁は、
前記側方開口部が開口した外壁(13)と、
前記外壁の内側に積層される内壁(14)と、を有し、
前記内壁には、前記側方開口部を閉塞するパネル(31)が前記側方開口部を避けて前記外壁に重なる位置に形成された切断線(32)によって区画され、
前記パネルが前記切断線に沿って分断されることで、前記側方開口部が開放されることを特徴とするトレイ。
【請求項2】
前記底壁には、前記内壁の立設位置に沿って保持穴(38)が開口し、
前記パネルの下端には、前記保持穴に係合する保持突起(34)が突設されていることを特徴とする請求項1に記載のトレイ。
【請求項3】
複数の前記側壁は、
前記底壁の第1方向の両端に立設される一対の第1側壁(11)と、
前記底壁の第1方向に直交する第2方向の両端に立設される一対の第2側壁(12)と、を有し、
一対の前記第2側壁の少なくとも一方は、
前記底壁に連設され、前記底壁に対して折り曲げられて起立する前記外壁と、
一対の前記第1側壁に連設され、前記第1側壁に対して内向きに折り曲げられ、一対の前記パネルの先端同士を突き合せた状態で前記外壁の内側に積層される一対の前記内壁と、を有していることを特徴とする請求項1または2に記載のトレイ。
【請求項4】
各々の前記内壁は、
前記第1側壁に連設された袖壁部(30)と、
前記袖壁部の先端に前記切断線を介して連設された前記パネルと、を有し、
前記袖壁部の上端には、積層突起(33)が突設され、
前記底壁には、複数のトレイを積み重ねる際に、下方のトレイの前記積層突起が係合する積層穴(37)が開口し、
各々の前記第1側壁の上端には、係止穴(21)が開口した第1片(20)が連設され、
前記外壁の上端には、貫通穴(26)が開口した一対の第2片(25)が連設され、
各々の前記第2片の先端部には、係止片(27)が連設され、
各々の前記第1片は、前記第1側壁に対して内向きに折り曲げられて横臥姿勢となり、
各々の前記第2片は、前記貫通穴に前記積層突起を貫通させ、且つ前記係止片を前記係止穴に係止させながら前記外壁に対して内向きに折り曲げられ、前記横臥姿勢となった前記第1片に積層されることを特徴とする請求項3に記載のトレイ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のトレイを形成することを特徴とするブランク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面に側方開口部を有するトレイおよびブランクに関する。
【背景技術】
【0002】
矩形状の底面の周囲に立設する前後左右の側面を有した包装箱(トレイ)が知られている(特許文献1)。この包装箱では、前側面に角が丸くなった矩形状の破断線によって囲われた取外片が形成されている。破断線に沿って前側面を破断させ、取外片を前側面から切り離すことで、前側面に開口が形成される。この包装箱では、この開口から内部の内容物を確認できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したような包装箱は、内容物の運搬に使用されだけでなく、取外片を前側面から切り離して包装箱ごと店頭に展示されることがあるため、包装箱の美粧性が重要となる。しかしながら、上記した包装箱では、前側面を破断線に沿って破断すると、破けた破断線の継目(破断面)が表面にあらわれるため、包装箱の美粧性が損なわれるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、美粧性を保ちながら側面に側方開口部を開口させることができるトレイおよびブランクを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、側面に側方開口部を有するトレイであって、底壁と、前記底壁の周縁部に立設される複数の側壁と、を備え、複数の前記側壁の少なくとも1つの前記側壁は、前記側方開口部が開口した外壁と、前記外壁の内側に積層される内壁と、を有し、前記内壁には、前記側方開口部を閉塞するパネルが前記側方開口部を避けて前記外壁に重なる位置に形成された切断線によって区画され、前記パネルが前記切断線に沿って分断されることで、前記側方開口部が開放される。
【0007】
この場合、前記底壁には、前記内壁の立設位置に沿って保持穴が開口し、前記パネルの下端には、前記保持穴に係合する保持突起が突設されてもよい。
【0008】
この場合、複数の前記側壁は、前記底壁の第1方向の両端に立設される一対の第1側壁と、前記底壁の第1方向に直交する第2方向の両端に立設される一対の第2側壁と、を有し、一対の前記第2側壁の少なくとも一方は、前記底壁に連設され、前記底壁に対して折り曲げられて起立する前記外壁と、一対の前記第1側壁に連設され、前記第1側壁に対して内向きに折り曲げられ、一対の前記パネルの先端同士を突き合せた状態で前記外壁の内側に積層される一対の前記内壁と、を有してもよい。
【0009】
この場合、各々の前記内壁は、前記第1側壁に連設された袖壁部と、前記袖壁部の先端に前記切断線を介して連設された前記パネルと、を有し、前記袖壁部の上端には、積層突起が突設され、前記底壁には、複数のトレイを積み重ねる際に、下方のトレイの前記積層突起が係合する積層穴が開口し、各々の前記第1側壁の上端には、係止穴が開口した第1片が連設され、前記外壁の上端には、貫通穴が開口した一対の第2片が連設され、各々の前記第2片の先端部には、係止片が連設され、各々の前記第1片は、前記第1側壁に対して内向きに折り曲げられて横臥姿勢となり、各々の前記第2片は、前記貫通穴に前記積層突起を貫通させ、且つ前記係止片を前記係止穴に係止させながら前記外壁に対して内向きに折り曲げられ、前記横臥姿勢となった前記第1片に積層されてもよい。
【0010】
本発明のブランクは、上記のいずれかに記載のトレイを形成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トレイの美粧性を保ちながら側面に側方開口部を開口させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトレイを示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るトレイのブランクを示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るトレイを積層した状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るトレイであって、側方開口部を開放した状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るトレイであって、側方開口部を開放した状態を後方から示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態の変形例に係るトレイのブランクを示す平面図である。
【
図7】本発明の一実施形態の他の変形例に係るトレイを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Dは、前、後、左、右、上、下を示している。左右方向(第1方向)、前後方向(第2方向)および上下方向は互いに直交している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、方向や位置を示す用語は、トレイを組み立てて使用する状態における方向や位置を基準にしている。
【0014】
[トレイの概要]
図1および
図2を参照して、実施形態に係るトレイ1について説明する。
図1はトレイ1を示す斜視図である。
図2はトレイ1のブランク1Aを示す平面図である。
【0015】
図1に示すように、トレイ1は、底壁10の周縁部に一対の第1側壁11および一対の第2側壁12を立設させ、上面を開口させた略直方体状に形成されている。底壁10の上には被包装物(図示せず)が載置され、トレイ1は被包装物を収容した状態で上下に積層可能に形成されている(
図3参照)。トレイ1は、前側面に側方開口部24を有している。トレイ1は、側方開口部24を閉じた状態で運送され、側方開口部24を開いた状態で店頭等に展示(陳列)される。利用者は、トレイ1の上面開口または側方開口部24から被包装物を取り出すことができる。なお、側方開口部24の開閉に関わらず、トレイ1を積み重ねることが可能である。
【0016】
トレイ1は、
図2に示すブランク1Aを組み立てることで形成されている。ブランク1Aは、1枚の紙製の段ボールシートを抜型等で打ち抜いて形成されている。段ボールシートは、例えば、波状の中しん9Aに表ライナ9Bと裏ライナ9C(
図1も参照)とを貼り合せた両面段ボールシートである。なお、
図2は、表ライナ9B側を示している。本明細書では、段ボールシートの中しん9Aと平行な方向を「段方向」と呼び、段方向に直交する方向を「流れ方向」と呼ぶこととする。図面に示す「X」は「段方向」を示し、「Y」は「流れ方向」を示している。
【0017】
[ブランク]
図2に示すように、ブランク1Aは、底壁10と、一対の第1側壁11と、前外壁13と、一対の前内壁14と、後外壁15と、一対の後内壁16と、を備えている。詳細は後述するが、前外壁13と一対の前内壁14とは重なり合って第2側壁12を構成する。これと同様に、後外壁15と一対の後内壁16とは重なり合って第2側壁12を構成する。なお、
図2において、一対の第1側壁11、一対の前内壁14および一対の後内壁16は、それぞれ左右対称に形成されているため、以下の説明では、特に明示した場合を除き、1つの部位について説明する。
【0018】
<底壁、第1側壁>
底壁10は、流れ方向(第2方向)に長い略長方形状に形成されている。一対の第1側壁11は、第1折曲線L1を介して底壁10の段方向の両端に連設されている。第1側壁11は、長方形状に形成されている。
【0019】
(第1片)
各々の第1側壁11の流れ方向の両側には、一対の第1片20が設けられている。第1片20は、第2折曲線L2を介して第1側壁11の段方向の先端(上端)に連設されている。第1片20は、概ね台形状に形成されている。第1片20には、係止穴21が開口している。詳細には、係止穴21は、第1片20から第1側壁11にかけて穿設されている。
【0020】
<前外壁>
前外壁13は、第3折曲線L3を介して底壁10の流れ方向の一端(前端)に連設されている。前外壁13には、略長方形状の側方開口部24が開口している。側方開口部24は、前外壁13の先端から基端(上端から下端)に向かって大きく切り欠かれている。前外壁13は、一対の外縦壁22の基端部(下端部)を外横壁23で連結されて略U字状に形成されている。側方開口部24は、一対の外縦壁22と外横壁23とで囲まれた範囲に開口している。
【0021】
(第2片、係止片)
前外壁13の先端(上端)には、貫通穴26が開口した一対の第2片25が連設されている。正確には、一対の第2片25は、第4折曲線L4を介して一対の外縦壁22の先端(上端)に連設されている。各々の第2片25は略台形状に形成され、貫通穴26は第4折曲線L4に沿って第2片25に穿設されている。各々の第2片25の流れ方向の先端部かつ段方向の外端には、第5折曲線L5を介して係止片27が連設されている。第5折曲線L5は、流れ方向の基端から先端に向かって段方向の中央側に僅かに傾斜している。係止片27は、段方向の外側に向かって徐々の細くなりながら第1側壁11の側に僅かに湾曲している。なお、係止片27の根本部は括れており、係止片27の根本側の流れ方向の外側には返し部が形成されている。
【0022】
<前内壁>
一対の前内壁14は、一対の第1側壁11の流れ方向の一端(前端)に連設されている。前内壁14は略正方形状に形成され、その流れ方向の寸法(延出寸法)は底壁10の段方向の寸法の略半分程度に設定されている。前内壁14には、側方開口部24を閉塞するためのパネル31が切断線32によって区画されている。詳細には、前内壁14は、第6折曲線L6を介して第1側壁11に連設された袖壁部30と、袖壁部30の流れ方向の先端に切断線32を介して連設されたパネル31と、を有している。
【0023】
(袖壁部)
袖壁部30は段方向の長い長方形状に形成され、その延出寸法は外縦壁22の段方向の寸法と略同一である(または僅かに短い)。袖壁部30の段方向の外端(上端)には、積層突起33が突設されている。
【0024】
(パネル)
パネル31は段方向の長い長方形状に形成され、その延出寸法は側方開口部24の段方向の寸法の半分と略同一である。パネル31の段方向の内端(下端)には、保持突起34が突設されている。パネル31の流れ方向の先端かつ段方向の外角部は、斜めに隅切りされた指掛け部35となっている。切断線32は、所謂ジッパーであり、袖壁部30に連なったパネル31を上端から下端に向かって分断する機能を有している。袖壁部30とパネル31との境界(切断線32)の下部には、切欠き部36が略三角形状に切り欠かれている。切欠き部36の深さ(高さ)は、外横壁23の高さよりも低く設定されている。
【0025】
<後外壁>
後外壁15は、第3折曲線L3を介して底壁10の流れ方向の他端(後端)に連設されている。後外壁15は、前外壁13の外形と略同一となる略長方形状に形成されている。
【0026】
(桟部)
後外壁15の段方向の先端(上端)には、第4折曲線L4を介して桟部28が連設されている。桟部28は、段方向の両側が中間部よりも突出した略U字状(バスタブ状)に形成されている。桟部28には、第4折曲線L4に沿う位置に一対の貫通穴26が開口している。桟部28の流れ方向の先端部かつ段方向の両端には、第5折曲線L5を介して係止片27が連設されている。係止片27は、
図2において第2片25の係止片27を上下対称にした形状である。
【0027】
<後内壁>
一対の後内壁16は、第6折曲線L6を介して一対の第1側壁11の流れ方向の他端(後端)に連設されている。後内壁16は略正方形状に形成され、その流れ方向の寸法(延出寸法)は底壁10の段方向の寸法の略半分程度に設定されている。後内壁16の段方向の外端(上端)には、積層突起33が突設されている。
【0028】
なお、底壁10の四隅付近には、第3折曲線L3に沿って4つの積層穴37が穿設されている。詳細には、各々の積層穴37は、底壁10から第3折曲線L3を僅かに越えて前外壁13または後外壁15にも開口している。また、底壁10には、前外壁13との境界(前方の第3折曲線L3)に沿って一対の保持穴38が開口している。一対の保持穴38は、前方の一対の積層穴37の間で段方向に間隔をあけた位置に穿設されている。
【0029】
なお、第1~第6折曲線L1~L6は、段ボールシートを裏ライナ9Cから凹ませた汎用罫線である。汎用罫線は、裏ライナ9Cを内側に向けるように段ボールシートを折り曲げる(正折りする)機能を有している。なお、第2折曲線L2上には、1つの切目が切り込まれている。以上説明した第1~第6折曲線L1~L6は、汎用罫線に限らず、汎用罫線上にミシン目を入れたリード罫等、段ボールシートを所望の向きに折り曲げる構造であれば如何なるものでもよい。
【0030】
[トレイの組立]
次に、
図1および
図2を参照して、トレイ1の組立作業について説明する。なお、本明細書では、前外壁13と後外壁15とをまとめて説明する場合には「外壁13,15」と呼び、前内壁14と後内壁16とをまとめて説明する場合には「内壁14,16」と呼ぶこととする。
【0031】
作業者は、裏ライナ9Cを上方に向けたブランク1Aを適宜折り曲げることでトレイ1を組み立てる。まず、作業者は、第1側壁11を第1折曲線L1に沿って上方に折り曲げ、内壁14,16を第6折曲線L6に沿って内側に折り曲げる。一対の第1側壁11は、底壁10の左右両端に立設される。一対の前内壁14は、第1側壁11に対して内向きに折り曲げられ、一対のパネル31の先端同士を突き合せた状態で底壁10の前端上(第3折曲線L3上)に起立する。前内壁14(パネル31)の保持突起34は、底壁10の保持穴38に嵌り込む(係合する)。一対の後内壁16は、その先端同士を突き合せた状態で底壁10の後端上(第3折曲線L3上)に起立する。
【0032】
続いて、作業者は、外壁13,15を第3折曲線L3に沿って上方に折り曲げる。外壁13,15は、底壁10に対して折り曲げられて底壁10の前後方向の両端に起立し、内壁14,16の外面(表ライナ9B)に重なる。外壁13,15と内壁14,16とは、底壁10の前後方向の両端に立設された一対の第2側壁12を構成する。
【0033】
次に、作業者は、第1片20を第2折曲線L2に沿って内側に折り曲げる。第1片20は、第1側壁11に対して内向きに折り曲げられて横臥姿勢(第1側壁11の上端から略水平に延びた姿勢)となる。続いて、作業者は、前方の係止片27を第5折曲線L5に沿って内側に折り曲げ、第2片25を第4折曲線L4に沿って後方に折り曲げながら、係止片27の先端部を第1片20の係止穴21に差し込む。第2片25は、貫通穴26に積層突起33を貫通させ、且つ係止片27を係止穴21に係止させながら前外壁13(外縦壁22)に対して内向きに折り曲げられる。そして、第2片25は横臥姿勢となった第1片20に積層される。また、作業者は、後方の係止片27を第5折曲線L5に沿って内側に折り曲げ、桟部28を第4折曲線L4に沿って前方に折り曲げながら、係止片27の先端部を第1片20の係止穴21に差し込む。桟部28は、貫通穴26に積層突起33を貫通させ、且つ係止片27を係止穴21に係止させながら後外壁15に対して内向きに折り曲げられる。そして、桟部28の左右両側は横臥姿勢となった第1片20に積層される。
【0034】
係止片27が係止穴21に差し込まれた状態で、第1側壁11と外壁13,15とが、第2片25や桟部28を介して接続される。また、内壁14,16の積層突起33が、第2片25や桟部28に開口した貫通穴26を貫通することで、内壁14,16が外壁13,15の内側に積層された状態に保持される。以上によって、第1側壁11および第2側壁12は、接着剤等を使用することなく、底壁10に対して起立した姿勢に保持される。これにより、トレイ1の組み立てが完了する(
図1参照)。なお、貫通穴26を貫通した積層突起33は、第2片25と桟部28との上面よりも上方に突出する。また、作業者は、組み立てたトレイ1の底壁10の上に被包装物を載置する。また、上記したトレイ1の組立手順は一例であり、矛盾の無い範囲で手順(折り曲げる順序等)を変更してもよい。
【0035】
図1に示すように、トレイ1が組み立てられた状態で、前内壁14は、前外壁13の内側に積層され、一対のパネル31は、その先端同士を突き合せて側方開口部24を閉塞している。前内壁14において切断線32は、側方開口部24を避けて前外壁13(外縦壁22)に重なる位置に形成されている(
図3等参照)。したがって、トレイ1を正面から見たときに、一対の切断線32は、前外壁13(一対の外縦壁22)によって隠されており、側方開口部24から露出することがない。詳細には、一対の切断線32は、側方開口部24(一対の外縦壁22)の左右両縁と略一致するように前内壁14に形成されている(
図4および
図5も参照)。また、切欠き部36は、側方開口部24の外横壁23によって隠されており、側方開口部24から露出することがない。詳細には、切欠き部36の頂点(切断線32の下端)は側方開口部24の下縁よりも僅かに下方に位置している。また、一対のパネル31が突き合わされることで、一対の指掛け部35は略三角形状の凹みを構成する。
【0036】
[トレイの積層作用]
次に、
図3を参照して、複数のトレイ1を積み重ねる場合について説明する。
図3はトレイ1を積層した状態を示す斜視図である。なお、
図3では、一例として、3つのトレイ1を積み重ねた状態を示しているが、積み重ねるトレイ1の数は自由に変更することができる。また、本明細書では、説明の便宜のため、下段のトレイ1に符号「(D)」を付加し、中段のトレイ1に符号「(M)」を付加し、上段のトレイ1に符号「(U)」を付加している。
【0037】
例えば、下段のトレイ1(D)に中段のトレイ1(M)を積み重ねる場合、下段のトレイ1(D)の積層突起33は、中段の底壁10に開口した積層穴37に嵌り込む(係合する)。また、中段のトレイ1(M)の底壁10は、下段のトレイ(D)の第2片25および桟部28に支持される。以上によって、中段のトレイ1(M)が下段のトレイ1(D)に積層された状態になる。なお、中段のトレイ1(M)に上段のトレイ1(U)を積み重ねる場合も上記と同様である。
【0038】
[側方開口部の開放]
次に、
図4および
図5を参照して、トレイ1の側方開口部24を開放する手順について説明する。
図4および
図5は、側方開口部24を開放した状態を示す斜視図である。
【0039】
利用者は、指掛け部35(
図1参照)から差し込んだ指を1つのパネル31に掛けて手前に引き倒す。すると、袖壁部30に連なるパネル31は、上方から下方に向かって切断線32に沿って分断される。なお、前内壁14の下部には切欠き部36(
図2参照)が形成されているため、手前に引き倒されたパネル31は外横壁23に強く干渉する前に分断される。利用者が分断したパネル31を引き出すと、側方開口部24の略半分が開放される。利用者は、上記と同様に、他方のパネル31を切断線32に沿って分断して除去する。これにより、側方開口部24が全て開放される(
図4および
図5参照)。
【0040】
上記したように、切断線32は前外壁13に覆われているため、切断線32による破断面(袖壁部30の端面)が側方開口部24から露出することがない(
図4参照)。詳細には、一対の切断線32による破断面は、側方開口部24の左右両縁に沿っている(
図5参照)。なお、トレイ1を積層した状態でも積層していない状態でも、上記した側方開口部24の開放作業を行うことができる(
図3参照)。
【0041】
以上説明した本実施形態に係るトレイ1では、前内壁14においてパネル31を区画する切断線32が、側方開口部24を避けて前外壁13に重なる位置に形成されていた。この構成によれば、切断線32は正面(外部)から見て前外壁13の裏側に隠れているため、切断線32による破断面の露出を防止することができる。これにより、トレイ1の美粧性を保ちながら側方開口部24を開口させることができる。
【0042】
また、本実施形態に係るトレイ1の底壁10には、前内壁14の立設位置に沿って保持穴38が開口し、パネル31の下端には、保持穴38に係合する保持突起34が突設されていた。この構成によれば、パネル31の保持突起34を保持穴38に係合させることで、パネル31が前外壁13の内面に積層した状態に保持することができる。
【0043】
また、本実施形態に係るトレイ1によれば、側方開口部24を閉塞するパネル31が2枚に分割されているため、各々のパネル31を小さく(側方開口部24の半分程度に)することができる。これにより、前内壁14から分断したパネル31を側方開口部24から引き出しやすくなり、パネル31の除去作業を容易に行うことができる。また、一対のパネル31のうち一方のみを除去し、側方開口部24を半分だけ開放することもできる。また、パネル31は側方開口部24から引き出すことができるため、上方にトレイ1を積層させた状態(上面開口が塞がっている状態)であっても、下方のトレイ1の側方開口部24を開放することができる(
図3参照)。
【0044】
また、本実施形態に係るトレイ1では、一対の前内壁14は一対のパネル31の先端同士を突き合せた状態で前外壁13の内側に積層され、一対の後内壁16も先端同士を突き合せた状態で後外壁15の内側に積層されていた。この構成によれば、トレイ1の内側面を段差の無いフラットな面にすることができる。これにより、例えば、被包装物を隙間なく収容することが可能になり、運送中にトレイ1の内部での被包装物の移動を抑制することが可能になる。
【0045】
また、本実施形態に係るトレイ1によれば、トレイ1の上方隅部において第1片20と第2片25とを重ねて横臥姿勢とすることで、複数のトレイ1を簡単に積み重ねことができる。また、下方のトレイ1の積層突起33が上方のトレイ1の積層穴37に嵌合することで、積層したトレイ1の横ずれを抑制することができる。さらに、側方開口部24を開放した状態であっても、袖壁部30が第1側壁11の内面に重なり二重壁構造を構成するため、トレイ1の圧縮強度を向上させることができる。
【0046】
なお、本実施形態に係るトレイ1(ブランク1A)では、一対のパネル31によって側方開口部24が閉塞されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図6に示すように、一方の前内壁14が袖壁部30のみで形成され、他方の前内壁14が袖壁部30とパネル31とで構成され、パネル31は側方開口部24の全部を閉塞可能に形成されてもよい。他にも、1つの前内壁14のみが一方の第1側壁11に連設され、この前内壁14に側方開口部24の全部を閉塞可能な1つのパネル31が設けられてもよい(図示せず)。また、他にも、側方開口部24の全部を閉塞可能なパネル31にジッパー等の分割線を設け、パネル31を複数に分割できるようにしてもよい(図示せず)。なお、前内壁14と同様に、1つの後内壁16のみが一方の第1側壁11に連設されてもよい(図示せず)。
【0047】
また、本実施形態に係るトレイ1では、前外壁13に1つの側方開口部24が開口し、一対のパネル31が側方開口部24を閉塞していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図7に示すように、前外壁13に2つの側方開口部24が横並びで開口し、1つのパネル31が1つの側方開口部24を閉塞するようにしてもよい。この場合、前外壁13は、2つの側方開口部24を囲むように略「8」字を横倒しにした形状に形成されてもよい。また、指掛け部35はパネル31に穿設された丸穴であってもよい。
【0048】
また、本実施形態に係るトレイ1では、切断線32が側方開口部24の側縁(外縦壁22の端部)に沿うように形成されていたが、本発明はこれに限定されない。切断線32は、前外壁13に重なって側方開口部24に表れない位置に形成されていればよく、側方開口部24の側縁から左右方向の外側にずれた位置に形成されてもよい(図示せず)。また、切断線32は上下方向に一直線状に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、切断線32は、側方開口部24の輪郭に沿って略L字状に形成されてもよい(図示せず)。この場合、袖壁部30は、略U字状の前外壁13を半分にしたような略L字状に形成される(図示せず)。また、切断線32は、所謂ジッパーであったが、これに限らず、ミシン目や半切線等、段ボールシートを分断可能な構造であれば如何なるものでもよい。
【0049】
また、前内壁14は、袖壁部30とパネル31とで構成されていたが、袖壁部30を省略し、パネル31のみで構成されてもよい(図示せず)。この場合、パネル31は、切断線32を介して第1側壁11に連設される。
【0050】
また、本実施形態に係るトレイ1では、一対のパネル31の先端上角部に指掛け部35が隅切りされていたが、指掛け部35は一対のパネル31の少なくとも一方に形成されていればよい(図示せず)。また、指掛け部35の形成位置は、パネル31の先端上角部に限らず、利用者が指を入れられる位置に開口していればよい(
図7参照)。さらに、指掛け部35は省略されてもよい(図示せず)。また、前内壁14の下部には、切欠き部36が形成されていたが、切欠き部36は省略されてもよい(図示せず)。
【0051】
また、本実施形態に係るトレイ1では、前外壁13が一対の外縦壁22と外横壁23とで略U字状に形成され、一対の外縦壁22と外横壁23とで囲まれた範囲に側方開口部24が開口していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、外横壁23が省略され、前外壁13が左右方向に二分割された一対の外縦壁22のみで構成されてもよい(図示せず)。この場合、一対の外縦壁22の間に側方開口部24が開口する。また、他にも、前外壁13が側方開口部24の全周を囲むように環状に形成されてもよい(
図7参照)。さらに、側方開口部24は、円形状、楕円形状、四角形以外の多角形状に形成されてもよい(図示せず)。
【0052】
また、本実施形態に係るトレイ1では、第1側壁11と外壁13,15とが、第1片20、第2片25および桟部28を介して接続されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1片20、第2片25および桟部28等が省略され、外壁13,15を内壁14,16に接着剤や粘着テープ等で固定することで、第1側壁11と外壁13,15とが接続されてもよい(図示せず)。
【0053】
また、本実施形態に係るトレイ1では、前方の第2側壁12(前外壁13)のみに側方開口部24が開口していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、一対の第2側壁12の両方に側方開口部24が開口していてもよい(図示せず)。すなわち、後外壁15および後内壁16が前外壁13および前内壁14と同様に形成されてもよい。他にも、第2側壁12と同様に、第1側壁11が外壁と内壁との二重壁構造となる場合、複数の側壁11,12の少なくとも1つに側方開口部24が開口していればよい(図示せず)。また、他にも、後内壁16が省略され、第2側壁12が後外壁15のみで構成されてもよい(図示せず)。すなわち、複数の側壁11,12の少なくとも1つが二重壁構造となり、二重壁の外壁に側方開口部24が形成され、二重壁の内壁に切断可能なパネル31が設けられていればよい。
【0054】
また、本実施形態に係るトレイ1(ブランク1A)は、紙製の両面段ボールシートで形成されていたが、これに限らず、片面段ボールシートや複両面段ボールシート、または厚紙、若しくは樹脂製の板(シート)等で形成されていてもよい。また、トレイ1の各部の寸法(幅、奥行き、高さ)や形状、段ボールシートの厚みや中しん9Aが延びる方向等は自由に変更してもよい。
【0055】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係るトレイおよびブランクにおける一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0056】
1 トレイ
1A ブランク
9A 中しん
9B 表ライナ
9C 裏ライナ
10 底壁
11 第1側壁
12 第2側壁
13 前外壁(外壁)
14 前内壁(内壁)
15 後外壁
16 後内壁
20 第1片
21 係止穴
22 外縦壁
23 外横壁
24 側方開口部
25 第2片
26 貫通穴
27 係止片
28 桟部
30 袖壁部
31 パネル
32 切断線
33 積層突起
34 保持突起
35 指掛け部
36 切欠き部
37 積層穴
38 保持穴
L1 第1折曲線
L2 第2折曲線
L3 第3折曲線
L4 第4折曲線
L5 第5折曲線
L6 第6折曲線