(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
F26B 21/00 20060101AFI20240501BHJP
F26B 13/10 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
F26B21/00 F
F26B13/10 C
(21)【出願番号】P 2020210754
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 晨
(72)【発明者】
【氏名】大所 昌隆
(72)【発明者】
【氏名】弓場 俊一
(72)【発明者】
【氏名】日浅 丈夫
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-254595(JP,A)
【文献】実開平6-24939(JP,U)
【文献】特開昭63-234257(JP,A)
【文献】特開2016-90130(JP,A)
【文献】特開平6-63487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 21/00
F26B 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性を有する熱処理室と、
前記熱処理室の前面に開口し、走行するウエブが搬入される入口と、
前記熱処理室の後面に開口し、前記ウエブが搬出される出口と、
前記熱処理室内において、前記ウエブの搬送路の上方に配され、前記ウエブに熱風を吹き出す複数のノズルと、
前記搬送路の下方に前記ウエブが走行するために複数配列された走行ロールと、
外部から給気した空気を冷却する冷却部と、
前記冷却部により冷却された前記空気を加熱するヒータと、
前記ヒータで加熱された前記空気を複数の前記ノズルに送る送風機と、
前記走行ロールの表面の飽和水蒸気量を算出し、前記ノズルから吹き出された前記熱風の水蒸気量を算出し、前記熱風の水蒸気量が、前記走行ロールの表面の飽和水蒸気量より高いときは、前記冷却部による冷却を開始して前記熱風の水蒸気量を下げて乾燥させる制御部と、
を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記熱処理室外の外気湿度Φoutを測定する外気湿度センサと、
給気された前記空気の第1温度T1を測定する第1温度センサと、
を有し、
前記制御部は、
前記第1温度T1から外気の第1飽和水蒸気量a(T1)を算出し、
前記外気湿度Φoutと前記第1飽和水蒸気量a(T1)から、前記外気の水蒸気量M(T1)を算出し、
前記外気の水蒸気量M(T1)が、前記走行ロールの表面の飽和水蒸気量より低いときには、前記冷却部による冷却を停止する、
請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記冷却部により冷却された前記空気の第2温度T2を測定する第2温度センサを有し、
前記外気の水蒸気量M(T1)が、前記走行ロールの表面の飽和水蒸気量より高いときに前記制御部は、
前記第2温度T2から前記冷却部を通過した前記空気の第2飽和水蒸気量a(T2)を算出し、
前記熱風の水蒸気量を前記第2飽和水蒸気量a(T2)と同じであると設定し、
前記第2飽和水蒸気量a(T2)が、前記走行ロールの表面の飽和水蒸気量より大きいときは、前記冷却部の冷却を開始する、
請求項2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2飽和水蒸気量a(T2)が、前記走行ロールの表面の飽和水蒸気量より低いときは、前記冷却部による冷却能力を維持する、
請求項3に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記走行ロールの表面温度である第3温度T3を測定する第3温度センサを有し、
前記制御部は、前記第3温度T3から前記走行ロールの表面の飽和水蒸気量a(T3)を算出する、
請求項1乃至4に記載のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記冷却部は、冷却水で前記空気を冷却するラジエータである、
請求項1乃至5に記載のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項7】
チラーユニットを有し、前記チラーユニットが、前記冷却水を前記ラジエータに供給する、
請求項6に記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記チラーユニットと前記ラジエータの間に調整弁を有し、
前記制御部は、前記チラーユニットから前記ラジエータに流す前記冷却水の流量を前記調整弁で制御し、
外気からの前記空気を乾燥させるときは、前記調整弁で前記冷却水の流量を増加させて、前記ラジエータ内の結露を増加させる、
請求項7に記載の熱処理装置。
【請求項9】
前記走行ロールは、金属製であり、
前記ウエブの搬送速度と同期して回転している、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項10】
前記第3温度センサは、前記熱処理室の前記入口に最も近い前記走行ロールに設けられている、
請求項
5に記載の熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブを熱処理するための熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルム、金属箔、紙、布帛などの長尺状のウエブに塗工液を塗工し、その後にこの塗工液を乾燥させたり、ウエブを熱で拡幅するために熱処理装置が用いられている。この熱処理装置は、断熱性を有する熱処理室内にウエブを水平方向に搬入し、その搬入されたウエブの上方に配された複数のノズルから熱風をウエブに吹き付け、また、ウエブの下方には複数の走行ロールが配され、これら走行ロールがウエブをスムーズに搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような熱処理装置において、ウエブの乾燥条件によっては、走行ロールの表面に結露が発生することがある。その理由としては、例えば塗工液に含まれている溶剤が、加熱によって気化し、そのときの気化熱が走行ロールの表面温度を下げて、結露が発生する。このように走行ロールの表面に結露が発生すると、走行ロールの表面に錆が発生したり、水分がウエブの下面に付着し、ウエブが不良品になるという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、熱処理室内にある走行ロールの表面に結露が発生しないようにした熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、断熱性を有する熱処理室と、前記熱処理室の前面に開口し、走行するウエブが搬入される入口と、前記熱処理室の後面に開口し、前記ウエブが搬出される出口と、前記熱処理室内において、前記ウエブの搬送路の上方に配され、前記ウエブに熱風を吹き出す複数のノズルと、前記搬送路の下方に前記ウエブが走行するために複数配列された走行ロールと、外部から給気した空気を冷却する冷却部と、前記冷却部により冷却された前記空気を加熱するヒータと、前記ヒータで加熱された前記空気を複数の前記ノズルに送る送風機と、前記走行ロールの表面の飽和水蒸気量を算出し、前記ノズルから吹き出された前記熱風の水蒸気量を算出し、前記熱風の水蒸気量が、前記走行ロールの表面の飽和水蒸気量より高いときは、前記冷却部による冷却能力を上げて、前記熱風の水蒸気量を下げて乾燥させる制御部と、を有することを特徴とする熱処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、走行ロールの表面の飽和水蒸気量を算出し、ノズルから吹き出された熱風の水蒸気量を算出し、熱風の水蒸気量が、走行ロールの飽和水蒸気量より高いときは、走行ロールに結露が発生する可能性があるため、冷却部による冷却能力を上げて、熱風の水蒸気量を下げて熱風を乾燥させて走行ロールの表面における結露を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態を示す熱処理装置の説明図である。
【
図2】熱処理装置における熱処理室内の相対湿度を制御する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態のウエブWの熱処理装置10について、
図1と
図2を参照して説明する。本実施形態の熱処理装置10によって熱処理される長尺状のウエブWは、例えば、フィルム、金属箔、紙、布帛などである。
【0010】
(1)熱処理装置10の構造
熱処理装置10の構造について
図1を参照して説明する。熱処理装置10は、ウエブWの熱処理を行うために断熱性を有する熱処理室12を有している。この熱処理室12はほぼ直方体であり、前面にはウエブWの出口14が開口し、後面にはウエブWの入口16が開口している。
【0011】
熱処理室12内において、入口16から出口14に向かうウエブWの水平な搬送路の上方には、前後方向に沿ってダクト18が延びている。このダクト18の下面には、ノズル20が前後方向に所定間隔を開けて配されている。これらノズル20は、ウエブWの幅方向に沿って延び、下端にスリット状の熱風の吹き出し口22が、ウエブWの幅方向に沿って開口している。この複数のノズル20の吹き出し口22から搬送路を走行するウエブWに熱風が吹き出される。
【0012】
搬送路の下方において、走行ロール24が、所定間隔を開けて入口16から出口14まで回転自在に配列されている。これら走行ロール24は、走行するウエブWの搬送速度Vと同じ速度で回転するように同期して駆動され、走行するウエブWを回転しながら支持する。走行ロール24は、金属製であり、例えば、鉄、アルミニウムの表面にクロムメッキを施したものである。
【0013】
熱処理室12外において、外気から空気を給気する給気口26と、給気口26から給気された空気を、HEPAフィルタ30に送風するブロワ28が設けられている。「HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)30」とは、定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率を用い、初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルターを意味する。
【0014】
熱処理室12外において、HEPAフィルタ30の空気の出口には第1接続管32の一端が接続され、この第1接続管32の他端には、冷却部であるラジエータ34が接続されている。このラジエータ34は、HEPAフィルタ30から送られてきた空気を冷却して、結露を生じさせ、給気された空気を乾燥させる。ラジエータ34の出口には第2接続管36の一端が接続され、この第2接続管36の他端はファン(送風機)38の入口に接続されている。ファン38の出口には、空気を所定温度まで加熱するヒータ40が接続されている。ヒータ40で加熱された空気は、熱処理室12内にあるダクト18に送られる。ダクト18に送られた加熱空気は、複数のノズル20から熱風として吹き出される。
【0015】
ラジエータ34の冷却能力を制御するためにチラーユニット42と調整弁46が設けられている。チラーユニット42は、水を冷却し、冷却水としてラジエータ34に供給する。そして、ラジエータ34を冷却した冷却水はチラーユニット42に戻り、排水される。このチラーユニット42とラジエータ34との間には冷却水が流れる配水管44が設けられ、配水管44の途中には、冷却水の流量を調整する調整弁46が設けられている。この調整弁46を調整することにより、ラジエータ34に送られる冷却水の流量を調整しラジエータ34の冷却能力を制御する。すなわち、調整弁46によって冷却水の流量を減らすとラジエータ34の冷却能力が下がり、逆に冷却水の流量を増やすとラジエータ34の冷却能力が上がる。
【0016】
熱処理室12の出口14付近の天井面、又は、側面には排気口56が設けられ、この排気口56には排気管58の一端が接続され、この排気管58の他端には排気用ブロワ60が設けられている。
【0017】
給気口26の近傍には、外気の相対湿度(以下、「外気湿度」という)Φoutを測定する外気湿度センサ48が設けられている。
【0018】
HEPAフィルタ30とラジエータ34とを接続する第1接続管32には、第1接続管32内を流れる空気の温度である第1温度T1を測定する第1温度センサ50が設けられている。
【0019】
ラジエータ34とヒータ40のファン38とを接続する第2接続管36には、ラジエータ34によって冷却された空気の温度である第2温度T2を測定する第2温度センサ52が設けられている。
【0020】
熱処理室12内であって、最も入口16に近い走行ロール24には、その表面温度である第3温度T3を測定する第3温度センサ54が設けられている。この第3温度センサ54としては、回転している走行ロール24とは非接触タイプの赤外線温度センサなどを用いる。なお、第3温度センサ54が、最も入口16に近い走行ロール24に設けている理由は、入口16に最も近い走行ロール24の表面温度が最も下がり易く、走行ロール24の表面に結露が発生し易いためである。
【0021】
コンピュータなどよりなる熱処理装置10の制御部62には、給気用ブロワ28、ファン38、ヒータ40、チラーユニット42、調整弁46、排気用ブロワ60、外気湿度センサ48、第1温度センサ50、第2温度センサ52、第3温度センサ54が接続されている。
【0022】
(2)走行ロール24の表面に結露が発生させない方法の理論的説明
まず、走行ロール24の表面に結露が発生しない方法について理論的に説明する。
【0023】
(2-1)外気について
外気温度であり第1温度T1[℃]での外気の飽和水蒸気量a(T1)[g/m3]は、
a(T1)=217*e(T1)/(T1+273.15) ・・・(1)
となる。但し、e(T1)[hPa]は空気中の飽和水蒸気圧であり、e(T1)はTetens(1930)のパラメータ値によるAugust他の式から近似的に、
e(T1)=6.1078*10{7.5*T1/(T1+237.3)} ・・・(2)
で算出される。外気湿度をΦout[%RH]とすると、外気の水蒸気量M(T1)は、
M(T1)=Φout*a(T1)/100 ・・・(3)
となる。
【0024】
(2-2)ラジエータ34内の空気について
ラジエータ34により冷却された空気の温度を第2温度T2[℃]とすると、第2温度T2[℃]での飽和水蒸気量a(T2)[g/m3]は、
a(T2)=217*e(T2)/(T2+273.15) ・・・(4)
となる。但し、
e(T2)=6.1078*10{7.5*T2/(T2+237.3)} ・・・(5)
である。
【0025】
もし、M(T1)>a(T2)であればラジエータ34内で結露が発生する。そのときの結露量ΔMは、
ΔM=M(T1)-a(T2) ・・・(6)
である。
【0026】
一方、M(T1)<=a(T2)であればラジエータ34で結露が発生していない。そのときの結露量ΔMは、
ΔM=0 ・・・(7)
である。
【0027】
ラジエータ34の通過後の冷却された空気中の水蒸気量M(T2)は、
M(T2)=M(T1)-ΔM ・・・(8)
となる。
【0028】
したがって、ラジエータ34に結露が発生している場合には、(6)式を(8)式に代入すると、
M(T2)=a(T2)・・・(9)
となる。
【0029】
一方、ラジエータ34に結露が発生していない場合には、ΔM=0であるため、(7)式を(8)式に代入すると、
M(T2)=M(T1)・・・(10)
となる。
【0030】
(2-3)走行ロール24について
走行ロール24の測定した表面温度を第3温度T3とすると、第3温度T3[℃]での飽和水蒸気量a(T3)[g/m3]は、
a(T3)=217*e(T3)/(T3+273.15) ・・・(11)
となる。但し、
e(T3)=6.1078*10{7.5*T3/(T3+237.3)} ・・・(12)
である。
【0031】
(2-4)走行ロール24の表面の結露について
調整弁46が閉状態でラジエータ34に冷却水が流れていない状態(冷却OFF)では、ラジエータ34を通過後の空気の水蒸気量は、外気の空気の水蒸気量と同じであり、この空気がヒータ40で加熱され、熱処理室12内にあるダクト18に送られても水蒸気量は変化することなく、複数のノズル20から吹き出される熱風の水蒸気量はM(T1)のままである。そのため、ラジエータ34に結露が発生しているか否かに関わらず、
a(T3)=>M(T1) ・・・(13)
を満足するときは、熱風の水蒸気量M(T1)が、走行ロール24の飽和水蒸気量a(T3)より低く十分に乾燥しているため、外気をそのまま加熱してノズル20から吹き出しても、走行ロール24の表面には結露しない。
【0032】
しかし、(13)式を満足しないときは、熱風の水蒸気量M(T1)が、走行ロール24の飽和水蒸気量a(T3)より高いため、湿気が多く外気をそのまま加熱してノズル20から吹き出すと、走行ロール24の表面には結露が発生する。そこで、このときには、調整弁46を開状態にしてラジエータ34に冷却水を流し(冷却ON)、通過する空気を冷却し、ラジエータ34で結露を発生させ、通過後の空気の水蒸気量をM(T2)まで乾燥する。この乾燥した空気がヒータ40で加熱され、熱処理室12内にあるダクト18に送られても水蒸気量は変化することなく、複数のノズル20から吹き出される熱風の水蒸気量はM(T2)のままである。そして、ラジエータ34で結露させたときは(9)式より乾燥した熱風の水蒸気量M(T2)は飽和水蒸気量a(T2)と等しいため、
M(T2)=a(T2)<=a(T3) ・・・(14)
となり、この(14)式を満足するときは、熱風の水蒸気量M(T2)が、走行ロール24の飽和水蒸気量a(T3)より低く乾燥しているため、走行ロール24の表面には結露しない。
【0033】
一方、(14)式を満足しないときは、乾燥した熱風の水蒸気量M(T2)でも湿気が多く、走行ロール24の飽和水蒸気量a(T3)より高いため、走行ロール24の表面には結露が発生するので、調整弁46をより開状態にして冷却水の流量を増加させてラジエータ34の冷却能力を上げて、第2温度T2を下げて、熱風の水蒸気量M(T2)=a(T2)を低く、すなわち、より乾燥させる。第2温度T2を下げて熱風を乾燥させ続ければいつか(14)式を満足することなり、走行ロール24の表面には結露しなくなる。
【0034】
(3)走行ロール24の表面に結露が発生させないための制御方法
次に、上記で示した走行ロール24の表面に結露が発生するか否かの関係式を用いて、制御部62が、走行ロール24の表面に結露が発生させない制御方法について
図2のフローチャートを参照して説明する。
【0035】
ステップS1において、制御部62が、熱処理室12内の加熱を行う。この場合には、ヒータ40によって加熱された空気をファン38によってダクト18に送り、複数のノズル20から熱風を吹き出すことにより、熱処理室12内を所定の温度に加熱する。なお、初期状態では、調整弁46が閉状態(冷却OFF状態)でラジエータ34に冷却水が流れていない。そしてステップS2に進む。
【0036】
ステップS2において、ウエブWを入口16から所定の搬送速度Vで搬入し、出口14から搬出する。そしてステップS3に進む。
【0037】
ステップS3において、制御部62が、第1温度センサ50で第1温度T1を測定し、第2温度センサ52で第2温度T2を測定し、第3温度センサ54で第3温度T3を測定し、外気湿度センサ48で外気湿度Φoutを測定する。そしてステップS4に進む。
【0038】
ステップS4において、制御部62は、e(T1)、a(T1)、M(T1)を(1)式~(3)式によって算出し、e(T2)、a(T2)を(4)式~(5)式によって算出し、e(T3)、a(T3)を(1)式~(12)式によって算出する。そしてステップS5に進む。
【0039】
ステップS5において、制御部62は、(13)式で示すようにa(T3)=>M(T1)であれば、外気をそのまま流しても、走行ロール24の表面に結露が発生しないのでステップS6に進む(yの場合)。一方、a(T3)<M(T1)であれば、外気をそのまま流すと走行ロール24の表面に結露が発生するのでステップS7に進む(nの場合)。
【0040】
ステップS6において、制御部62は、走行ロール24の表面に結露が発生しないので調整弁46を閉じたままでラジエータ34に冷却水を流さず冷却を停止する(冷却OFF)。そして、ステップS10に進む。
【0041】
ステップS7において、制御部62は、走行ロール24の表面に結露が発生するので調整弁46を開いてラジエータ34に冷却水を流す(冷却ON)。そして、ステップS8に進む。
【0042】
ステップS8において、制御部62は、(14)式に示すように、熱風の水蒸気量M(T2)が、走行ロール24の飽和水蒸気量a(T3)より低いか否かを判断して、熱風の水蒸気量M(T2)が、走行ロール24の飽和水蒸気量a(T3)より低いとき又は同じときには、熱風が十分乾燥しているので走行ロール24の表面に結露が発生しないので、ONにした冷却能力を維持してステップS10に進む(yの場合)。熱風の水蒸気量M(T2)が、走行ロール24の飽和水蒸気量a(T3)より高いときは、熱風が湿気ているため走行ロール24の表面に結露が発生するのでステップS9に進む(nの場合)。
【0043】
ステップS9において、制御部62は、調整弁46の開度をより大きくして冷却水の流量を増加させてラジエータ34の冷却能力を上げ、これにより第2温度T2を下げて熱風の水蒸気量M(T2)すなわち、a(T2)を低くし乾燥させて、ステップS8に戻る。そして、(14)式を満足すれば、熱風が乾燥して走行ロール24の表面には結露しなくなるので冷却能力を維持してステップS10に進む。満足しなければ、まだ熱風は湿気ているとしてステップS9に進んで冷却水の流量をより増加させ乾燥させる。この制御を(14)式を満足するまで続ける。
【0044】
ステップS10において、制御部62は、ウエブの搬入が停止していればこの制御を終了し、停止していなければ1分後にステップS3に戻り、この制御を続ける。
【0045】
(4)効果
本実施形態によれば、熱処理室12内にある走行ロール24の表面に結露が発生し難くなり、走行ロール24の表面に錆が発生することなく、また、水分によるウエブWの品質問題がなくなる。
【0046】
また、走行ロール24の表面に結露が発生し易い場合には、調整弁46を調整してラジエータ34に送る冷却水の流量を調整し冷却能力を上げるだけで、簡単に制御できる。
【0047】
また、走行ロール24の表面の飽和水蒸気量a(T3)は、走行ロール24の表面温度を測定するだけで簡単に算出できる。
【0048】
また、熱風の水蒸気量M(T2)、すなわち、a(T2)は、外気湿度Φoutと給気された空気の第1温度T1と、ラジエータ34により冷却された空気の第2温度T2を測定するだけで簡単に算出できる。
【変更例】
【0049】
上記実施形態では、走行ロール24の表面温度を測定する温度計としては、非接触タイプの赤外線温度センサを用いたが、走行ロール24の表面に接触して共に回転する回転体から温度を測定する温度センサであってもよい。
【0050】
上記実施形態では、熱風の水蒸気量が、走行ロール24の表面の飽和水蒸気量より低いときは、ラジエータ34による冷却を停止又は維持させたが、これに代えて冷却水の流量を減らして冷却能力を下げてもよい。
【0051】
上記実施形態では、冷却部であるラジエータ34は、冷却水による水冷であったが、空冷であってもよく、また、ラジエータ以外の冷却装置であってもよい。
【0052】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
10・・・熱処理装置、12・・・熱処理室、14・・・出口、16・・・入口、18・・・ダクト、20・・・ノズル、24・・・走行ロール、26・・・給気口、34・・・ラジエータ、38・・・ファン、40・・・ヒータ、42・・・チラーユニット、46・・・調整弁、48・・・外気湿度センサ、50・・・第1温度センサ、52・・・第2温度センサ、54・・・第3温度センサ、62・・・制御部