(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ポンプのピボットピンに一体化されたパニックバルブ
(51)【国際特許分類】
F04C 15/06 20060101AFI20240501BHJP
F04C 14/22 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
F04C15/06 B
F04C14/22 D
(21)【出願番号】P 2020537550
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(86)【国際出願番号】 IB2020050576
(87)【国際公開番号】W WO2020157618
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-07-06
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515188420
【氏名又は名称】スタックポール インターナショナル エンジニアード プロダクツ,リミテッド.
【氏名又は名称原語表記】STACKPOLE INTERNATIONAL ENGINEERED PRODUCTS, LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】ズベイダ, アブダルハメード
(72)【発明者】
【氏名】エルガマル, ハイサム
(72)【発明者】
【氏名】カッツァー, ハンス, ピーター
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-143383(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0112033(KR,A)
【文献】特開昭57-001874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 15/06
F04C 14/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤をシステムへと吐出するポンプであって、
ハウジングと、
ソースから前記ハウジングへと潤滑剤を注入するための吸込口と、
前記ハウジングから前記システムへと前記潤滑剤を供給するための吐出口と、
前記吐出口からの前記ポンプの吐出量を調節するべく、前記ハウジング内においてピボットピンを中心に吐出量増加方向および吐出量減少方向に枢動可能な制御スライドと、
前記制御スライドを前記吐出量増加方向に付勢する弾性部材と、
少なくとも1つのベーンを有し、前記制御スライド内で回転して前記潤滑剤を加圧するように前記ハウジング内に取り付けられたロータと、
前記ハウジングと前記制御スライドとの間に設けられ、前記制御スライドを前記吐出量減少方向に移動させるべく加圧潤滑剤を受け取る、少なくとも1つの制御チャンバと、
前記ハウジング内に形成された通路として形成され、前記制御スライドから前記吐出口まで前記加圧潤滑剤を導く流出経路と、
前記ピボットピンに取り付けられ、前記流出経路に沿って配置されている圧力逃がし弁であって、前記流出経路内の前記加圧潤滑剤から圧力を受けて前記圧力逃がし弁を開方向に開位置まで押す受圧面を有する、圧力逃がし弁と、
前記ハウジング内に設けられた圧力逃がし開口部と、
を備え、
前記圧力逃がし弁は、前記圧力逃がし開口部を閉じる閉位置まで閉方向に付勢され、
前記受圧面にかかる圧力により、前記圧力逃がし弁が前記開方向に移動して前記圧力逃がし開口部を開き、前記加圧潤滑剤が前記ハウジングの外に流出して前記流出経路内の圧力を逃がし、
前記圧力逃がし弁の前記閉位置において、前記圧力逃がし弁および流出経路は、前記加圧潤滑剤を前記ピボットピンの下方および/または前記ピボットピンの本体の周りを流れさせるように構成され、
前記圧力逃がし弁の前記開位置において、前記圧力逃がし弁と流出経路は、前記加圧潤滑剤を前記圧力逃がし開口部を通って流れさせるとともに、前記ピボットピンの上方と、前記ピボットピンの下方および/または前記ピボットピンの本体の周りとを流れさせるように構成される、
ことを特徴とする、ポンプ。
【請求項2】
前記ピボットピンは中空内部を有し、前記圧力逃がし弁は前記受圧面を有する弁体を含み、当該弁体は前記中空内部に摺動可能に取り付けられて、前記開方向および前記閉方向に移動することによって前記圧力逃がし開口部を開閉することを特徴とする、請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記圧力逃がし弁は、前記ピボットピンの中空内部に取り付けられ、前記圧力逃がし弁を前記閉方向に押す付勢バネを含むことを特徴とする、請求項1に記載のポンプ。
【請求項4】
前記圧力逃がし開口部は外部の大気に対して開放されており、流出潤滑剤が当該大気に排出されることを特徴とする、請求項1に記載のポンプ。
【請求項5】
前記圧力逃がし開口部は、前記加圧潤滑剤のサンプに流体連通する管路に接続していることを特徴とする、請求項1に記載のポンプ。
【請求項6】
前記受圧面は、前記弁体が前記閉位置にあるときに前記流出経路からの前記加圧潤滑剤にさらされる、前記弁体の環状肩面であることを特徴とする、請求項2に記載のポンプ。
【請求項7】
前記ハウジングは基部およびカバーを含み、前記圧力逃がし開口部は当該カバーを貫通して形成され、
前記流出経路は、前記カバーの内側に形成され、
前記閉位置において、前記圧力逃がし弁は、前記カバーと接触して前記圧力逃がし開口部を閉じるように構成され、
前記圧力逃がし弁は、前記カバーから離れることにより、前記開位置において前記圧力逃がし開口部と前記カバーの内側との間に隙間が形成されて開き、加圧潤滑剤が前記圧力逃
がし開口部を通って流れるように構成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のポンプ。
【請求項8】
前記制御チャンバは前記ピボットピンから、当該ピボットピンから離間して設けられたシール部材まで延在していることを特徴とする、請求項1に記載のポンプ。
【請求項9】
前記ピボットピン、前記圧力逃がし弁、および前記圧力逃がし開口部は、前記流出経路と前記制御チャンバとを連絡する接合部に配置され、前記制御チャンバをベントするための直接の経路を形成することを特徴とする、請求項1に記載のポンプ。
【請求項10】
前記ピボットピンは前記ハウジングの穴部に圧入されていることを特徴とする、請求項1に記載のポンプ。
【請求項11】
前記弁体の外径および前記ピボットピンの中空内部の内径は12mm以上であることを特徴とする、請求項2に記載のポンプ。
【請求項12】
前記弁体は軸方向貫通孔を有し、前記軸方向貫通孔は、前記圧力逃がし開口部に軸方向に整列し前記ピボットピンの中空内部と流体連通することにより、潤滑剤が前記ピボットピンの中空内部内に偶発的に集中するが、前記ピボットピンを通って端から端まで流れることはないことを特徴とする、請求項2に記載のポンプ。
【請求項13】
前記弁体は、前記圧力逃がし開口部内に係合する丸みを帯びたヘッドを有することを特徴とする、請求項2に記載のポンプ。
【請求項14】
前記弁体は、前記圧力逃がし開口部内に係合する丸みを帯びたヘッドを有し、前記環状肩面は当該丸みを帯びたヘッドに隣接して画定されることを特徴とする、請求項6に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許仮出願第62/799,449号(出願日:2019年1月31日)に基づく優先権を主張するものであり、この米国特許出願の開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は全体として、ピボットピンに取り付けられた圧力逃がし弁を有するポンプアセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
ベーンポンプに電動弁(例えば、パルス幅変調弁)を使用すること、および/またはポンプの制御チャンバへの給排の制御を補助するために制御弁を使用することが知られている。いくつかの実施形態では、そのようなポンプ内の圧力を逃がすために、パニックバルブまたはフェイルセーフバルブが設けられている。典型的には、ポンプハウジングは、パニックバルブを収容するための機械加工された領域を含む。いくつかの実施形態では、パニックバルブは、ポンプハウジングの上または外側に設けられているが、ポンプと流体連通している。米国特許第8,496,445号、第9,534,519号、第9,347,344号、および第10,030,656号、および米国特許出願公開第20120199411号には、ポンプハウジングの外側または上にパニックバルブを配置する例が開示されている。
【0004】
いくつかのポンプ設計は、流体をチャンバから吐出口に導く、ピボットピン本体を通る端から端までの経路を含む。例えば、米国特許第8,439,650号、第2,952,215号および第2,142,275号を参照されたい。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様として、システムに潤滑剤を吐出するためのポンプを提供する。当該ポンプは、ハウジングと、ソースから前記ハウジングへと潤滑剤を注入するための吸込口と、前記ハウジングから前記システムへと前記潤滑剤を供給するための吐出口と、前記吐出口からの前記ポンプの吐出量を調節するべく、前記ハウジング内において枢動ピンを中心に吐出量増加方向および吐出量減少方向に枢動可能な制御スライドと、前記制御スライドを前記吐出量増加方向に付勢する弾性部材と、少なくとも1つのベーンを有し、前記制御スライド内で回転して前記潤滑剤を加圧するように前記ハウジング内に取り付けられたロータと、前記ハウジングと前記制御スライドとの間に設けられ、前記制御スライドを前記吐出量減少方向に移動させるべく加圧潤滑剤を受け取る、少なくとも1つの制御チャンバと、前記ピボットピンに取り付けられ、前記加圧潤滑剤を前記制御スライドから前記吐出口に導く流出経路に沿って配置されている圧力逃がし弁と、を備える。前記圧力逃がし弁は、前記流出経路内の前記加圧潤滑剤から圧力を受けて前記圧力逃がし弁を開方向に押す受圧面を有する。前記圧力逃がし弁は、圧力逃がし開口部を閉じる閉位置まで閉方向に付勢される。前記受圧面にかかる圧力により、前記圧力逃がし弁が前記開方向に移動して前記圧力逃がし開口部を開き、前記加圧潤滑剤が流出して前記流出経路内の圧力を逃がす。
【0006】
本開示の上記以外の態様、特徴及び効果は、以下の詳細な説明、図面及び特許請求の範囲により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示によって提供されるポンプの作動部分の俯瞰図である。
【0008】
【
図2】一実施形態による、ピボットピンおよび圧力逃がし弁と共に配置された
図1のポンプのハウジングの分解図である。
【0009】
【
図3】本明細書に開示された一実施形態によるポンプの断面図である。
【0010】
【0011】
【
図5】ポンプに使用されるピボットピンと圧力逃がし弁の分解図である。
【0012】
【
図6A】
図1および
図2のポンプのピボットピンおよび流出経路を通る断面図である。図中、本明細書の実施形態による圧力逃がし弁の位置を示す。
【
図6B】
図1および
図2のポンプのピボットピンおよび流出経路を通る断面図である。図中、本明細書の実施形態による圧力逃がし弁の別の位置を示す。
【0013】
【
図7】別の実施形態によるピボットピンおよび圧力逃がし弁の断面図である。
【0014】
【
図8】本明細書に開示されるポンプを含むシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に開示されるポンプ10は、一体化された圧力逃がし弁(圧力逃がし弁は、当技術分野ではパニックバルブと称することもある)を含むピボットピンを有するポンプである。以下にさらに詳細に説明するように、ピボットピンの本体は、この圧力逃がし機能のためのハウジングまたはスリーブとして機能する。一般に、流体はピボットピン本体を通っては流れない。さらに、専用の流出経路がポンプ内に設けられている。
【0016】
図1は本開示の一実施形態に従うポンプ10の上面図または俯瞰図であり、そのカバーが取り外されている(カバーは示されていないが、締結具31が例示のみを目的として示されている)。ポンプ10は、システム100(
図8参照)に対して潤滑剤を吐出するために設計されており、ポンプ10とシステム100の両方を含むシステム(例えば、車両など)の一部として提供されてもよい。潤滑剤の吐出は、閉鎖されたシステム内での循環(例えば、潤滑剤をシステムの負/低圧側から引き込み、正/高圧側に供給すること)を伴うことが意図されている。ポンプ10は、一実施形態によれば、システムに対して流体または潤滑剤を吐出するための可変容量型ベーンポンプである。ポンプ10は、ハウジング12と、吸込口14と、吐出口16とを含む。吸込口14は、ソース18(
図8参照)からハウジング12の中へ、流体を受け入れるか、またはポンピングの対象である潤滑剤(典型的には、自動車の分野におけるオイル)を入力する。この際、潤滑剤はポンプ構成要素(例えば、ロータ、ベーン)を介して加圧される。吐出口16は、加圧された流体または潤滑剤をハウジング12からシステム100(例えば、
図8に示すように、エンジンまたはトランスミッション)に排出または送達するために使用される。潤滑剤サンプ17(
図8に示す)は、例えば、ポンプ10に入力するための潤滑剤を保持するために、および/またはハウジング12から出力される圧力逃がし潤滑剤を受け入れるために設けられてもよい。エンジン用途では、サンプ17はエンジン100を出る潤滑剤を受け入れ、一般的に、潤滑システム全体の低圧側または負圧側にあるとみなされる(大気圧であってもよい)。本明細書で圧力に言及する用語は、別段の指定がない限り、システムに関するものである。
【0017】
ベーンポンプの技術分野で一般的に知られるように、制御スライド20、ロータ26、ドライブシャフト29、および弾性部材24がハウジング12内に設けられる。
【0018】
ハウジング12は任意の材料で構成してよく、アルミニウム・ダイカスト、粉末鋳造、鍛造、又は他の任意の製造技術を用いて形成してよい。ハウジング12は内部チャンバを囲む。基部13の壁によって内部チャンバの軸方向側面が画定され、周壁23が内部チャンバの周囲を囲むように延在する。カバー15(
図2に示す)は、例えば、ハウジング12に沿って又はその周囲に配置された様々な締結具穴33に挿入される締結具31(例えば、ボルト)によって、ハウジング12の基部13に取り付けられる。例えば、
図1は当該カバーを図示しないため、ポンプの内部構成要素の一部が示されている。カバーは任意の材料で構成してよく、スタンピング(例えば、スチール又はその他の金属のスタンピング)、アルミニウム・ダイカスト、粉末鋳造、鍛造、又は他の任意の製造技術を用いて形成してよい。カバー15は、基部13と共にポンプ10の内部制御チャンバを囲む機能を有する。ガスケット又は他のシール部材を任意にカバーとハウジング12の周壁23との間に設けて内部チャンバを密封してもよい。締結具を受容するための更なる締結具穴がポンプ10の周壁に沿って設けられて、ポンプ10を、例えば、エンジンへと固定してもよい。
【0019】
ハウジング12は、ポンピングされる流体を負圧下で取り込む少なくとも一つの吸込ポート19と、当該流体を正圧下で吐出するための少なくとも一つの吐出ポート21を有する。吸込ポート19は、吸込口14から吸入流体(潤滑剤)を受け取り、吐出ポート21は、吐出口16に流体(加圧された潤滑剤)を出力する。吸込口14と吸込ポート19との間には、吸込経路39が設けられていてもよい。同様に、吐出ポート21と吐出口16との間に吐出経路32が設けられていてもよい。一実施形態に従い、吸込ポート19及び吐出ポート21はそれぞれ三日月形を有し、(ロータ26の回転軸について)ハウジングの軸方向の一方側又は両側に配置される同一の壁部を貫通して形成されてもよい。図示された実施形態において、吸込ポート19及び吐出ポート21は、ロータ26の回転軸の径方向の互いに反対側に配設される。こうした構造は従来から存在し、詳細な説明は省略する。吸込口14及び/又は吐出口16及び/又はポート19,21及び/又は経路32,39の形状は、ここに示したものに限定されない。他の構成、例えば、異なる形状または数のポートなどが使用されてもよい。さらに、複数の吸込口または吐出口が(例えば、複数のポートを介して)提供されてもよいことを理解されたい。
【0020】
ポンプ10はまた、制御スライド20内に設けられてもよいロータ受容空間35(またはポケット)を有する。図示された実施形態では、制御スライド20は制御リングの形態である。ロータ26は、ドライブシャフト29の設計、構成、または形状を補完する構成または形状を有する穴または開口部を有してもよく、その場合その穴または開口部は、ポンプのロータ26を駆動するドライブシャフト29を受容し、および/またはそれと接続する。このロータ受容空間35は吸込口14及び吐出口16と直接連通し、オイル、潤滑剤又は他の流体を負の吸入圧力下で吸込口14から吸入し、正の吐出圧力下で吐出口16から排出する。
【0021】
ロータ26は、ハウジング12内の制御スライド20のロータ受容空間35内に回転可能に取り付けられる。ロータ26は、制御スライド20内で制御スライド20に対して回転するように構成される。ロータ26の中心軸は、制御スライド20の中心軸とは通常偏心した位置関係となる。ロータ26は、駆動入力によってD-D軸を中心に駆動されるドライブシャフト29に、駆動プーリー、他の駆動シャフト、エンジンクランク又はギアなどの従来の方式で連結されている。ロータ受容空間35は、ロータ26の中央に存在する。
【0022】
ロータ26は、径方向に延在し径方向に動作するようになっている少なくとも一つのベーン(羽根)28と、ベーンリングまたはハブ27とを有する。ロータ26およびベーン28は、制御スライド20内で回転して入力潤滑剤を加圧するようにハウジング内に取り付けられる。当該少なくとも一つのベーン28は、回転時に、制御スライド20の内面と係合するように構成される。具体的には、ベーン28はそれぞれ、その基端部でロータ26の中央リング27の径方向のスロットに、径方向に摺動可能に取り付けられる。遠心力により、(一の又は複数の)ベーン28は径方向外側に押し出され、回転している間は、ベーンの遠位端と制御スライド20の内面とが係合する及び/又は係合した状態が保持される。この種の取り付けは従来から知られている。バネなどの弾性部材をスロット内に用いてベーンを径方向外側に付勢するといった、他の変形例を用いてもよい。但しこの例は限定的なものではない。このように、(一の又は複数の)ベーン28は、例えば、ベーンリング27によって制御スライド20の内面に密封された状態で係合し、これによりロータ26が回転すると負の吸入圧力によって吸込口14から流体を吸入し、正の吐出圧力によって吐出口16から当該流体を吐出する。制御スライド20とロータ26との間の偏心関係により、吐出口16のある側で流体の高圧部分が生じ、吸込口14のある側で流体の低圧部分が生じる(この技術分野ではこれらはポンプの高圧側及び低圧側と呼ばれる)。これにより、吸込口14からの流体の吸入及び吐出口16からの流体の吐出が発生する。このポンプの機能は既知のものであり、詳細な説明は省略する。
【0023】
制御スライド20は、ハウジング12内で(A-A軸(
図3参照)を中心に枢動する)ピボットピン22を中心に吐出量増加方向および吐出量減少方向に枢動可能であり、ポンプ10の吐出量および(例えば、吐出ポートを介して供給される)潤滑剤の吐出口16からの送出を調整する。ピボットピン22はハウジング12に取り付けられ、軸方向において固定されていてもよい。一実施形態において、ピボットピン22は、吐出口16に隣接する位置に取り付けられる。一実施形態において、ピボットピン22は、吸込口14に対してハウジング12の反対側の半径方向に設けられている。一実施形態において、ピボットピン22は、ハウジング12の穴部38に圧入されてもよい。
図2は、そのような穴部38の例を示す。穴部38は、部分的にハウジング12の基部13内に形成されてもよく、ピボットピン22の本体をその中で受けるような形状を有してもよい。例えば、この図示された実施形態では、穴部38は、ピボットピン22の外径に基づいて半径の大きさが決められている2つの丸みを帯びた壁によって形成されている。穴部38は、ハウジング12に成形または機械加工されてもよい。ピボットピン22の追加的な特徴は、
図4および5を参照して以下にさらに詳細に説明する。
【0024】
典型的には、弾性部材24は、制御スライド20を第1スライド位置に向けて(すなわち、吐出量増加方向に)付勢してもよい。図示した実施形態において、弾性部材24はコイルバネなどのバネである。一実施形態によれば、弾性部材24は、制御スライド12を付勢位置(吐出量増加方向)へと付勢する及び/又は初期位置へと戻す、付勢部材である。ハウジング20内の制御スライド20の外側の圧力(この圧力は弾性部材24に抗して吐出量減少方向に作用する)に基づいて、制御スライド20をバネすなわち弾性部材に抗して移動させて、ロータ26との偏心量を減少させることにより、吐出量を調整でき、その結果、出力流を調整できる。ハウジング12は、例えば
図2に部分的に示すように、弾性部材24の受容部37を有してもよく、これは周壁23の一部によって画定されて、弾性部材(バネ)を位置付けて支持する。また、制御スライド20は径方向に延在する担持構造物を含んでもよく、これが、例えば弾性部材24が係合する担持面を画定する。他の構造又は構成を用いてもよい。
【0025】
ハウジング12と制御スライド20との間には、加圧潤滑剤を受け入れるための制御チャンバ30が設けられている(例えば、スライド20の外形とポンプハウジング12(例えば、周壁23)との間のチャンバを示す
図1を参照されたい。
図1において、制御チャンバ30は、左側のピボットピン22と、ピボットピン22から離間し、例えばスライドの右側にあるシール部材36との間に延在している)。例えば、ハウジング12と制御スライド20との間に、1つ以上のシール部材(例えば、シール部材36を参照)が設けられてもよい。
図1の例示された実施形態では、1つのシール部材36のみが示されており、これは、弾性部材24に近接して、または隣接して提供されている。制御チャンバ30内の圧力の変化により、制御スライド20がロータ26に対して移動する又は(例えば、中心をロータ26と合わせるように)枢動して、ポンプの吐出量を調整(例えば、低減又は増加)することができる。吸込口14(および吸込経路39)から吸込ポート19を介してチャンバ30に供給され、(加圧後に)吐出口16へと向けられる潤滑剤の圧力に基づいて、スライド20が移動してもよい。圧力が制御チャンバ30内に蓄積すると、その圧力は制御リング20に作用する弾性部材24の力よりも強くなり得ることを、当技術分野の通常の熟練者は理解するであろう。したがって、加圧潤滑剤は、その後弾性部材24の力に抗して、制御スライド20を反対方向に移動させ得る。一実施形態において、制御チャンバ30が加圧潤滑剤を受け取ると、制御スライドを第2スライド位置、すなわち吐出量減少方向に移動させる。
【0026】
流出経路32は、制御スライド20、チャンバ30、および吐出ポート21から吐出口16へと加圧潤滑剤を導くために、ハウジング内に設けられている。具体的には、一実施形態において、流出経路32は、
図6Aおよび
図6Bでより詳細に示されるように、ハウジング12のカバー15および基部13の内側に形成され、ピボットピン22の周囲および上方に設けられた通路である。
【0027】
ポンプ10はまた、ハウジング12に設けられた圧力逃がし弁40(または「パニックバルブ」)を含む。
図3および
図4は、当該弁40の断面図を示す。圧力逃がし弁40は、ピボットピン22に取り付けられ、加圧潤滑剤を制御スライド20/チャンバ30から吐出口16に導く流出経路32(
図6Aおよび
図6B参照)に沿って配置されている。
図4および
図5により明確に示されているように、圧力逃がし弁40は、流出経路32を経て吐出口16に向けられる加圧潤滑剤から圧力を受ける受圧面42を有する。一実施形態において、圧力負荷領域は、少なくともこの面42における弁の外周/外径とカバー15との間に設けられた領域である。この領域に供給され、したがって受圧面42に加えられる圧力の量に応じて、圧力逃がし弁40の弁体46は、初期(ホーム)位置、閉位置、および開位置の間で移動するように構成されてもよい。一実施形態によれば、この受圧面42は、流出経路32内の加圧潤滑剤から受ける圧力の量が所定量(以下でより詳細に説明する)を超えたときに、圧力逃がし弁40を開方向(例えば、
図4に示すように下方向)に移動させるように構成されている。
図6Aの実施形態を参照すると、圧力逃がし弁40は、閉方向(例えば、
図4に示すように上方向)に付勢されて閉位置(またはホーム位置)にあり、ハウジング12に設けられた圧力逃がし開口部44(例えば、この実施形態では、カバー15に設けられている)を閉じている。受圧面42に圧力が加えられると、圧力逃がし弁40が
図6Bに示すような開位置に向かって開方向に移動し、圧力逃がし開口部44を開いて加圧潤滑剤を流出させ、流出経路32内の圧力を逃がす(すなわち、「逃がす」または「逃がし」は、流出経路32内の潤滑剤/流体の圧力を減少させることを意味する)。弁40の動作および流出経路32を通る流れについては、後に詳述する。
【0028】
一実施形態において、ピボットピン22、圧力逃がし弁40、および圧力逃がし開口部44は、流出経路32と制御チャンバ30とを連絡する接合部に配置されている。一実施形態において、圧力逃がし開口部44は、
図4と
図6Aおよび
図6Bに示すように、ハウジング12のカバー15内に、およびカバー15を貫通して設けられている。
【0029】
図4および
図5は、一実施形態によるピボットピン22および圧力逃がし弁40の特徴をより詳細に示す。
図5に示すように、ピボットピン22は中空内部34を有する本体22Aを有し、本体22Aは内径IDおよび外径OD-1を有する。
図4に示すように、本体22Aは肉厚Tを有し、閉じた(下側の)端部と開いた(上側の)端部とを有する管状の形状を有している。一実施形態において、本体の肉厚Tは、約1mmから約3mm(両端を含む)の範囲であってもよい。圧力逃がし弁40は、ピボットピン22に取り付けられ、および/またはピボットピン22の内部に配置されてもよい。例えば、一実施形態において、圧力逃がし弁40は受圧面42を有する弁体46を含んでもよい。一実施形態において、弁体46は、ピボットピン22の本体22Aの中空内部34に摺動可能に取り付けられ、開閉方向に移動することによって、圧力逃がし開口部44を開閉するように構成される。すなわち、一実施形態において、圧力逃がし弁40は、ポンプ10のピボットピン22内に取り付けられ、かつピボットピン22の一部として一体的に形成されている。
【0030】
一実施形態によれば、
図5に示すように、受圧面42は、弁体46が閉位置にあるときに流出経路32からの加圧流体にさらされる弁体46の環状肩面である。一実施形態において、
図4に示すように、弁体46は圧力逃がし開口部44内に係合するための丸みを帯びたヘッド52を有してもよい。したがって、環状肩部すなわち受圧面42は、弁体の丸みを帯びたヘッド52に隣接して設けられてもよく、一実施形態において、受圧面42およびヘッド52の組み合わせは、加圧された流体/潤滑剤を受けるとともに、圧力負荷領域を画定するように構成されている。このように、圧力負荷領域は、少なくとも弁体46の外径と、弁体46の丸みを帯びたヘッド52の接触直径DC(
図4参照)との間に画定されてもよい。この例では、圧力負荷領域は円形リングのような形状をしている。
【0031】
一実施形態において、弁体46自体が圧力逃がし機能を含んでもよい。例えば、
図4に示すように、弁体46は、ピボットピンの中空状の本体22Aと流体連通する軸方向貫通孔50(又はポート又はベント穴)を有してもよい。軸方向貫通孔50は、圧力逃がし開口部44と軸方向に整列していてもよい。通常、潤滑剤はピボットピン自体を(端から端まで)流れることはないが、一部の潤滑剤は、圧力逃がし弁40がその閉位置と開位置との間を移動する際に、ピボットピン22の中空内部34内に偶発的に集中することがある(例えば、弁体46と中空内部34との界面および/または貫通孔50を通って浸入する)。したがって、そのような集中した潤滑剤は、軸方向貫通孔50を通して逃がされてもよい。一実施形態において、軸方向貫通孔は、約1mmから約8mm(両端を含む)の直径または幅Wを有する。一実施形態において、貫通孔50の幅Wは、約1mmから約3mm(両端を含む)の間である。一実施形態において、貫通孔50の幅Wは約2mmである。
【0032】
一実施形態において、弁体46はリリーフボールバルブである。一実施形態において、弁体46は開口部または貫通孔を有するリリーフボールバルブである。
【0033】
一実施形態において、圧力逃し弁40はまた、ピボットピン22の本体の中空内部34内に取り付けられた付勢バネ48を含む。付勢バネ48は、圧力逃がし弁40/弁体46を閉方向に押すために使用されてもよい。すなわち、付勢バネ48は、圧力逃がし開口部44を閉じるように圧力逃がし弁40/弁体46を押すばね力Fを提供する。一実施形態において、開口部44を介するハウジング12の流出経路32からの流体連通を閉塞するために、弁体46が押されて圧力逃がし開口部44と接触し、場合によっては、少なくとも部分的に圧力逃がし開口部44内に進入する。
図4に示す一実施形態においては、中空内部34がバネ48を受けるように構成され、弁体46がバネ48の上に設けられ、かつピボットピン22の中空内部34内に少なくとも部分的に配置されている態様を示している。ばね力Fは、弁体46を押して圧力逃がし開口部44の端部と接触させ、開口部44通ってハウジングの外部に出る潤滑剤の連通を閉塞および/または制限する。図示のような実施形態では、バネ48はコイルバネまたは螺旋圧縮バネである。しかしながら、これは限定することを意図したものではなく、例えば、他の実施形態では、バネ48は板バネまたは円錐バネであってもよい。
【0034】
弁体46に加えられるバネ48のばね力Fは、流出経路32内の潤滑剤の圧力を受けているか、またはそれにさらされている弁体46のサイズ/面積(ARV)と、弁体46を移動させる際の所望の圧力(Poutlet)とに基づいて決定されてもよい。例えば、一実施形態において、流出経路32内の加圧潤滑剤の出力圧力が10バールよりも大きい場合に圧力を逃がし始めることが望ましい場合がある。所望の圧力と、上記の圧力を受ける弁体46の設計/面積(例えば、受圧面42)に基づいて、バネ48のばね力Fが計算されてもよい。したがって、このようなバネ48のばね力Fの実施形態は、例えば、バネを形成するために使用される材料、設計、サイズ、ピッチ、コイルの数などに基づいてもよい。一実施形態において、弁体46を移動させるために弁体46に加えられる出力潤滑剤の圧力の範囲は、約3バールから約30バール(両端を含む)である。別の実施形態において、この圧力は約10バールから約20バール(両端を含む)である。一実施形態において、ばね力Fは約25Nから約200N(両端を含む)の範囲内である。一実施形態において、ばね力Fは約50Nから約150N(両端を含む)の範囲内である。任意の数の材料をバネ48に使用することができる。一実施形態において、バネ48はクロム-シリコン製である。一実施形態において、圧力を受けている弁体46の面積ARVは約94mm2である。一実施形態において、圧力にさらされ、圧力を受ける弁体46の周囲および/または表面上の領域(表面42)は、与えられた環境空間内で設計された強固なバネを可能にするように調整されてもよい。すなわち、受圧面42、丸みを帯びたヘッド52、および/またはカバー15/ハウジング12は、必要に応じて変更されてもよい。一実施形態において、バネ48はその全高に到達してはならない(すなわち、バネのピッチは、少なくともいくらかの応力を受けたままで、完全に伸長可能ではないように計算されなければならない)か、あるいは、過剰な応力を受けてはならない。
【0035】
このように、付勢バネ48の力は、前述の圧力または力の所定量、すなわちそれを上回る圧力または力を受圧面42に加えることが必要な圧力または力の量に影響を与え、および/またはそれを決定することができる。したがって、圧力逃がし弁40をその開口方向(すなわち、
図4に示すように、バネ48に抗して下向きに)に押して移動させるために、(弁体46に加えられる)ばね力Fよりも大きな力が受圧面42に加えられなければならない。一実施形態において、ピボットピン22の本体22Aに対する弁体46の相対的な移動の範囲または量は、少なくとも受圧面42に加えられる圧力の量に正比例しており(ただし、弁体46を移動させるための最小圧力に達している場合に限る)、また圧力負荷領域内での圧力の量に正比例している。すなわち、受圧面42に加えられる加圧潤滑剤の押圧力が大きくなると、バネ48の付勢力Fに抗して弁体46が本体22Aの内部34に下降移動する量も大きくなる可能性がある。したがって、弁40は、必ずしも弁40が移動して到達する規定の開位置(または第2の位置)を有しているわけではない。
【0036】
図6Aおよび6Bは、ポンプ10のピボットピン22および流出経路32を通る断面図であり、本明細書の一実施形態に従って、圧力逃がし弁(パニックバルブ)40の2つの例示的な位置、すなわち、閉位置または非作動位置(
図6A)および開位置または作動位置(
図6B)を示す。通常の動作状況では、
図6Aに示すように、バルブ40が非作動状態、すなわち閉状態であるとき、弁体46の少なくとも上部は、圧力逃がし開口部44を介する流体連通を閉塞する(
図6Aの矢印Aの「x」を参照)ようにカバー15と接触している。さらに、流体連通がピボットピン22の上方および流出経路32の上部を移動することが実質的に制限および/または阻止される(
図6Aの矢印Bの「x」を参照)。加圧された流体/潤滑剤は、ピボットピンの下方(
図6Aの矢印Cを参照)および/または流出経路32内の本体22Aの周りを、吐出口16に向かってのみ流れることができる。
【0037】
ポンプ10内の圧力が高まり、したがって流出経路32内の圧力が高まって所望のレベルを超えると、圧力逃がし弁40は作動状態となり開く。加圧流体によって発生した力は、少なくとも弁の外径と、弁体46のカバー15との接触径との間の圧力負荷領域において、弁体46の受圧面42に作用する。
図6Bに示すように、流体/潤滑剤の増加した圧力は、弁体46を(表面42上で押すことによって)下向きに開位置まで移動させ、付勢バネ48の力に抗してそれを上回る力で押し、それによって弁体46をカバー15から離れた位置に移動させて、弁体46の少なくとも上面とカバー15/圧力逃がし開口部44の下面との間に隙間Gを生じさせることができる。この隙間Gが開いて、圧力逃がし開口部44を通る流体の流れを許容する。したがって、弁40は開位置において、弁体46の上方の流体の流れ(
図6Bの矢印Bを参照)と、圧力逃がし開口部44を通る流体連通によるポンプ10の外部への流体の流れ(
図6Bの矢印Aを参照)を許容するとともに、ピボットピン22の下方(
図6Bの矢印C)および/または本体22Aの周りから流出経路32の残りの部分を通って吐出口16に至る流れを許容する。弁/弁体46がその開位置まで下向きに移動される際に圧力逃がし開口部44と圧力逃がし弁40の上部との間に生じる隙間Gにより、流出経路32からの潤滑剤がカバー15の開口部44を通って外部に流れることが可能になる。その結果、流出経路32内の圧力が低下する。
【0038】
流出経路32内の圧力が低下すると、弁体46に作用する流体圧力も低下する。このようにして、弁体46は、弁体46に作用する付勢バネ48からの力の結果として、
図6Aに示されているように、そのホーム位置または閉位置に戻るように移動してもよい。
【0039】
一実施形態において、圧力逃がし開口部44は、外部の大気に対して開放されている。したがって、圧力逃がし弁が開かれると、圧力逃がし開口部44を介して逃がされている流出経路32から流出する潤滑剤は、大気に排出されてもよい。別の実施形態では、圧力逃がし開口部44は、加圧潤滑剤のサンプ17(
図8参照)(またはタンク)に流体連通する。さらに別の実施形態では、圧力逃がし開口部44を介して逃がされる流出経路32からの潤滑剤は、潤滑剤ソース18(
図8参照)に向けられてもよい。さらに別の実施形態では、圧力逃がし開口部44を介して逃がされる流出経路32からの潤滑剤は、ポンプ10自体の吸込口14に戻されてもよい。任意の数の実施形態において、圧力逃がし開口部44は、サンプ17、潤滑剤ソース18、吸込口14、および/または周囲の大気または環境のうちの1つ以上と流体連通するための管路(図示せず)と接続してもよい。
【0040】
ピボットピン22における本開示の圧力逃がし弁40の使用に際し、サイズまたは寸法における制限は意図されず、また、ピボットピン22自体のサイズおよび/または寸法における制限も意図されない。本体22Aの長さは、ロータ、ベーン、および回転要素の長さ、ならびにポンプの周囲のハウジングおよび環境に依存する。一実施形態において、ピボットピン22は、圧力逃がし弁の部品を収容するために、標準的なピボットピンの直径(例えば、6~8mm)と比較して、より大きな直径(例えば、12~25mm)を有してもよい。一実施形態において、ピボットピン22は、約14mm(ミリメートル)から約20mm(両端を含む)の外径を有する。より大きな直径のピボットピン体、すなわち12mmよりも大きい直径のピボットピン体を使用することは、追加のコストを含む多くの理由から、ベーンポンプの分野では一般的ではない。しかし、この場合、ピボットピン内にパニックバルブ/圧力逃がし弁を組み込むことで、追加のコストは限定的となり得る。例えば、周囲の環境に、別個のバルブを収容するか、または当該バルブのための別個のハウジングを設ける必要がなくなる場合もある。
【0041】
一実施形態において、弁体46の外径ODおよびピボットピンの中空内部34の内径IDは、約12mm(ミリメートル)以上である。
【0042】
圧力逃がし弁開口部44の大きさまたは直径は、限定することを意図していない。一実施形態において、開口部44の直径は約9mmである。
【0043】
一実施形態において、丸みを帯びたヘッド52の接触直径DC(
図4参照)は、圧力逃がし弁開口部44の直径と近似しているか、または同じである。一実施形態において、接触直径DCは約9mmである。
【0044】
別の実施形態によれば、弁体46は、ピボットピン22の中空内部34に対する相対的な上下方向の動きを制限する機能をさらに有してもよい。例えば、
図7に図示されているように、一実施形態において、中空内部34の壁に形成された受け溝58内に円形クリップ56が配置されてもよい。さらに、弁体46は、その周囲に設けられ外径OD内に延在する凹部54を有してもよく、この凹部54はクリップ56の少なくとも一部を受けるように構成されている。凹部54は長さLを有し、その両端部に上側縁部62および下側縁部60を含んでもよい。下側縁部60は、付勢バネ48が弁40の閉位置に向かって弁体46を押すときに、弁体46の上向きの動きを制限するために、弁体46の下端に設けられてもよい。上側縁部62は、加圧潤滑剤が弁40を開位置に移動させるために受圧面を押すときに、弁体46が中空内部34内に、かつピボットピン22の本体22Aに対して相対的に、下方向に長さLに相当する長さだけ移動するように、弁体46の下方向への移動を制限してもよい(したがって、移動の結果として生じる、圧力逃がし潤滑剤が圧力逃がし開口部44を通って流れることを可能にする流出経路内の隙間または開口の大きさを制限する)。
【0045】
一実施形態において、弁体46は、受圧面として機能するその上部の近傍に周方向縁部64(
図7参照)または面取り部を含んでもよい。この縁部64は、弁体46の環状肩面および/または丸みを帯びたヘッド52に加えて、またはそれに代えて設けられてもよい。
【0046】
本明細書における一体化されたピボットピン22および圧力逃がし弁40は、ポンプ10のようなベーンポンプで使用するための多くの改良点を有する。例えば、圧力逃がし弁40はポンプハウジング12に組み込まれる。通常、ポンプのハウジングは、ハウジング内に、またはハウジングのすぐ外側に(例えば、上部に、または吐出口と流体連通するように)パニックバルブ(または類似のもの)を収容することができるポケットまたは領域を含むように形成されなければならない。したがって、ポンプが配置される環境は、さらに追加でパニックバルブを収容しなければならない。本開示の圧力逃がし弁40は、ピボットピン22自体に取り付けられ、および/または収容されているので、ハウジングの鋳造およびハウジングの機械加工が容易である。また、システムへのポンプ10の取り付けの際は、必ずしも空間の確保またはパニックバルブの収容を考慮する必要がない。例えば、既知の実施形態のように、パニックバルブが外部に、またはシステムの一部に取り付けられた場合、システムは、そのようなパニックバルブのための領域を含み、および/または入力のためにパニックバルブにつながる流体供給部を含む必要がある。本開示では、パニックバルブは吐出口16への流出経路32に直接露出しているので、パニックバルブへの別個の供給部は必要ない。さらに、ポンプ10はよりコンパクトな設計を有することができる。さらに、圧力逃がし弁40のプリアセンブルも可能である。バネ48及び弁40の設計に必要なパラメータは、限定することを意図したものではない。
【0047】
本開示を通して説明された機能のうち、特に上述の弁40の機能を組み込むことによって、先行技術と比較して有利なパッケージングの選択肢が得られる。多くの既知のベーンポンプは、ピボットピンの一方の側の制御圧を利用するように設計されており、他方の側は吸込圧力を受けるかまたはベントが設けられる。ピボットピンのいずれか一方の側に部品を追加する(例えば、ハウジング内にプレートを追加する)かまたはスライドのシール部材を追加することなく、制御スライドの反対側に吐出圧力の経路を設けてオイルが出口へと通過することを可能にすることはしばしば困難であった。一般的に、吐出ポートからベント/制御圧力部分の反対側への直接の経路は存在しない。また、環境内において圧力逃がし弁の設置位置を見出すことが困難な場合もある。一方、このピボットピン22の設計は、このような困難な問題を解決する。
【0048】
図8は本開示の一実施形態に係るシステム25の概略図であり、当該システムはポンプ10を用いている。システム25は、例えば、車両又は車両の一部である。システム25は、ポンプ10から加圧潤滑剤を受け取るエンジン(例えば、内燃エンジン)またはトランスミッションのような機械システム100を含む。ポンプ10は、潤滑剤ソース18から(吸込口14を介して)潤滑剤(例えば、オイル)を受け取り、加圧してエンジン100に(吐出口16を介して)供給する。潤滑剤サンプ17は、例えばポンプ10への入力用の潤滑剤を保持してもよい。先に詳細に説明したように、サンプ17またはタンクを用いて、ポンプ10から出力される圧力逃がし潤滑剤(バルブ40の移動により圧力逃がし開口部44を介してハウジング12から出力されるもの)および/または追加の潤滑剤を収集してもよい。他の実施形態では、サンプ17またはタンク、および/または潤滑剤ソース18、および/または吸込口14、および/または大気/周囲環境を用いて、圧力逃がし潤滑剤(バルブ40の移動により圧力逃がし開口部44を介してハウジング12から出力されるもの)を収集してもよい。
【0049】
上記の例示的な実施形態において本開示の原理が明確にされたが、本開示の実施に使用される構造、配置、比率、要素、材料及び構成要素に対して様々な変形を加えることが可能であることは当業者であれば理解できる。例えば、本開示のピボットピン22および圧力逃がし弁40は、ベーンを含まないポンプに使用されてもよい。
【0050】
したがって、そのような変形例であっても本開示の特徴が完全に及び有効に達成されることが理解できる。上記に示した望ましい具体的な実施形態は、本開示の機能的及び構造的な原理を例示することを目的として説明及び図示されたものであり、本開示の原理の範囲内において変更可能である。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲の意図および範囲に含まれる全ての変形例を包含する。