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特許7481259スプレー溶液の連続調整を伴うスプレードライプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】スプレー溶液の連続調整を伴うスプレードライプロセス
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20240501BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240501BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240501BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240501BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K47/30
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/08
A61K47/22
A61K47/06
A61K47/20
A61K47/14
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020544414
(86)(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 GB2019050495
(87)【国際公開番号】W WO2019162688
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】110585
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(73)【特許権者】
【識別番号】315015195
【氏名又は名称】ホビオネ サイエンティア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110004059
【氏名又は名称】弁理士法人西浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセンテ,ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】サ クート,クララ
(72)【発明者】
【氏名】フェレイラ,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】テムテム,マルシオ
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/156841(WO,A1)
【文献】特表2010-513474(JP,A)
【文献】特表2017-505789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00-9/72
47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの成分および少なくとも1つの溶媒を含む懸濁液を少なくとも1つのマイクロ流動化デバイスに連続的に供給するステップ;
等質的なスプレー溶液を生成するためにマイクロ反応またはマイクロ流動化によって前記マイクロ流動化デバイス内の前記懸濁液を混合するステップ;
前記スプレー溶液を連続モードでスプレードライヤーに供給するステップ;
少なくとも1つの噴霧ノズルを使用して複数の液滴を生成するために前記スプレー溶液を噴霧するステップ;及び
複数の粒子を得るために、乾燥チャンバー内で前記複数の液滴を乾燥させるステップを含む複数のアモルファス固体分散体または複数の医薬品有効成分(API)単独の粒子の製造のためのプロセス。
【請求項2】
前記懸濁液は、連続または非連続モードで少なくとも1つの成分を少なくとも1つの溶媒と混合することによって調製される請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの成分は、少なくとも1つの医薬品有効成分(API)、少なくとも1つの賦形剤、または医薬品有効成分(API)と賦形剤の組み合わせを含む請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
(i)前記少なくとも1つの賦形剤は、ポリマー、界面活性剤、表面修飾剤、糖、アミノ酸、キチン、キトサン、アルギネート、多糖、セルロース系多糖またはそれらの誘導体、ビニル基を有するポリマー、またはアクリルまたはその誘導体を有するポリマー、およびそれらの組み合わせを含む群から選択されること;及び
(ii)前記溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ブタノン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、ヘキサン、DMSO、酢酸エチル、n-ヘプタンおよびそれらの組み合わせを含む群から選択されること;
の少なくとも1つの特徴を備えた請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
(i)前記マイクロ流動化は、少なくとも1つのマイクロ反応器および/または少なくとも1つのマイクロチャンバーを使用して達成されること;
(ii)前記マイクロ流動化は、再循環モードで作動する少なくとも1つのマイクロ反応器および/または少なくとも1つのマイクロチャンバーを使用して達成されること;及び
(iii)前記マイクロ流動化は、複数のマイクロ反応器を使用して達成され、前記マイクロ反応器は、直列または並列に配置されること;
の少なくとも1つの特徴を備えた請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
(i)前記マイクロ反応器は、連続フロー反応器であること;
(ii)前記マイクロ反応器またはマイクロチャンバーは、1以上のチャネルを含み、任意で前記チャネルの数が1から10の範囲にあること;及び
(iii)前記マイクロ反応器またはマイクロチャンバーは、それぞれが10ミクロンから1000ミクロン(10μmから1000μm)の範囲または50ミクロンから400ミクロン(50μmから400μm)の範囲の直径を有する1以上のチャネルを含むこと;
の少なくとも1つの特徴を備えた請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記懸濁液は、連続または非連続モードで、ポンプ(3,14)に接続された第1のバッファタンク(10,13)内の少なくとも1つの溶媒中に少なくとも1つの成分を分散させることによって調製され、前記第1のバッファタンク(10,13)からの前記懸濁液が前記ポンプ(3,14)を使用し前記マイクロ流動化デバイス(4)に供給され、任意で、前記ポンプ(3,14)は増圧ポンプ(3,14)を含み、
任意で、前記懸濁液は、1バールから3500バール(100kPaから350000kPa)の範囲の圧力または1バールから2000バール(100kPaから200000kPa)の範囲の圧力で前記マイクロ流動化デバイス(4)に供給される請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記マイクロ流動化デバイス(4)からの前記スプレー溶液が、スプレードライヤー(5)に接続された第2のバッファタンクに送達される請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記マイクロ流動化デバイス(4)からの前記スプレー溶液は、前記少なくとも1つの成分を含む流れおよび前記少なくとも1つの溶媒を含む流れが組み合わされて前記第1のバッファタンク(10,13)に再循環される請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第1のバッファタンク(13)からの前記溶液は、前記スプレードライヤー(16)に接続された第2のバッファタンク(15)に輸送され、任意で、前記第2のバッファタンク(15)からの前記溶液は、前記スプレードライヤー(16)に連続的に供給される請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
(i)前記スプレー溶液は、少なくとも1つのポンプを使用して前記スプレードライヤーに連続的に供給され、任意で、前記ポンプが増圧ポンプを含むこと;
(ii)前記少なくとも1つの噴霧ノズルは、二流体ノズル、圧力ノズル、回転ノズル、超音波ノズル、およびそれらの組み合わせを含む群から選択されること;
(iii)前記スプレー溶液から形成される前記複数の液滴は、1μmから200μmの範囲または30μmから80μmの範囲であること;
(iv)前記スプレー溶液は、1バールから200バール(100kPaから20000kPa)の範囲または10バールから100バール(1000kPaから10000kPa)の範囲の流体力学的圧力で前記噴霧ノズルに供給されること;及び
(v)前記複数の液滴は、ガスを使用して前記乾燥チャンバー内で乾燥され、任意で、前記ガスが窒素、空気、二酸化炭素、またはそれらの組み合わせを含むこと;
の少なくとも1つの特徴を備えた請求項1乃至10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
(i)前記乾燥チャンバーに入るときの前記ガスは、-20℃から200℃の範囲、または-10℃から100℃の範囲の温度を有すること;
(ii)前記乾燥チャンバーを出る前記ガスの温度は、前記乾燥チャンバーに入るときの前記ガスの温度よりも低いこと;
(iii)前記ガスは、凝縮器を通過した後、前記乾燥チャンバーに再循環されること;及び
(iv)スプレードライヤーでスプレードライされた粒子を二次乾燥非連続操作で乾燥させ、任意で、前記二次乾燥非連続操作は、室圧より低く減圧すること、室温より高く加熱すること、または攪拌を含むこと;
の少なくとも1つの特徴をさらに備えた請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
等質的なスプレー溶液を生成するために、マイクロ反応またはマイクロ流動化によって、少なくとも1つの成分と少なくとも1つの溶媒からなる複数の粒子を含む懸濁液を混合するためのマイクロ流動化デバイスと、任意で、前記マイクロ流動化デバイスが、少なくとも1つのマイクロ反応器および/または少なくとも1つのマイクロチャンバーを含み、
前記懸濁液を前記マイクロ流動化デバイスに連続的に供給するための手段と、
複数の液滴を生成するために前記スプレー溶液を噴霧するための少なくとも1つの噴霧ノズルと、複数の粒子を得るために前記複数の液滴を乾燥させるための乾燥チャンバーとを含むスプレードライヤーと、
を含む複数のアモルファス固体分散体または複数の医薬品有効成分(API)単独の粒子の製造のためのシステム。
【請求項14】
(i)少なくとも1つの成分および少なくとも1つの溶媒を連続または非連続モードで混合することによって前記懸濁液を調製するための手段を含み、任意で、前記懸濁液を調製するための前記手段がバッファタンクであること;及び
(ii)前記マイクロ流動化デバイスから前記スプレー溶液を受け取るための手段を含み、任意で、前記スプレー溶液を受け取るための前記手段がバッファタンクであること;
の少なくとも1つの特徴をさらに備えた請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記複数のバッファタンクは、前記システムが連続モードで動作するように、前記マイクロ流動化デバイスおよび前記スプレードライヤーにそれぞれ接続するように構成される請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記懸濁液を前記マイクロ流動化デバイスに連続的に供給するための手段、及び前記スプレー溶液を前記スプレードライヤーに連続的に供給するための手段は、増圧ポンプを含む請求項13乃至15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
第1のバッファタンク(13)および第2のバッファタンク(15)をさらに含み、前記第1のバッファタンク(13)は、懸濁液を形成するために、少なくとも1つの成分を含む流れ(11)および少なくとも1つの溶媒を含む流れ(12)を受け取り、任意で、前記第1のバッファタンク(13)は、前記溶液を前記マイクロ流動化デバイス(4)から前記第1のバッファタンク(13)に輸送するために、再循環モードで動作する前記マイクロ流動化デバイス(4)に接続され、前記懸濁液を前記第1のバッファタンク(13)から前記マイクロ流動化デバイスに輸送するために、前記第1のバッファタンク(13)は増圧ポンプ(14)に接続される請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記第2のバッファタンク(15)は、半連続モードで前記第1のバッファタンク(13)から溶液の複数のバッチを受け取るために前記第1のバッファタンク(13)に接続され、前記第2のバッファタンク(15)からの前記溶液は、前記スプレードライヤー(16)に連続的に供給される請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単一成分粒子、アモルファスまたは結晶形態の複数の多成分粒子、およびマイクロおよび/またはナノ範囲の粒子寸法を有するアモルファス固体分散体を製造するためのプロセスの技術分野に関する。より具体的には、本発明は、スプレー溶液が連続モードで調製され、スプレードライヤーに連続的に供給されるスプレードライプロセスに関する。本発明はまた、溶媒系における粒子の溶解反応速度、溶解度および安定性を改善する装置を使用してスプレー溶液を連続的に調製するためのプロセスに関する。このプロセスは、医薬品の分野、特に医薬品有効成分(API)、中間医薬品、または医薬品のプロセスに適用できる。このプロセスは、単一の製造ステップで複数の粒子状固体分散体(particulate solid dispersions)の製造と粒子エンジニアリング(particle engineering)を可能にするように設計されており、スプレードライ前のスプレー溶液の保持時間を削減する。
【背景技術】
【0002】
現在、医薬品研究パイプラインでは、溶解度の低い(生物学的利用能[bioavailability]の低下につながることが多い)薬物候補(drug candidates)の数が増えている。これに関連して、アモルファス固体分散体は、吸収部位での薬物過飽和(drug supersaturation)を促進できるため、薬物放出を可能にするプラットフォームとして浮上してきた。他の技術の中でも、スプレードライプロセスは、アモルファス固体分散体の製造において、ますます評価が高い。
【0003】
スプレードライ医薬品を製造するプロセスは、一般に、(i)スプレー溶液を調製することおよび(ii)溶液をスプレードライすることの2つの主要な非連続ステップを含む。
【0004】
最初に、スプレー溶液は、少なくとも1つの医薬品有効成分を1以上の水性または非水性溶媒に、単独で、または1以上の賦形剤と共に溶解することによって、攪拌タンク内で調製される。固体の完全な溶解が攪拌タンク内で達成された後、スプレー溶液は噴霧ノズルを通してスプレードライチャンバーに供給され、そこで溶媒は熱乾燥ガスによって複数の微細液滴(fine droplets)から蒸発して複数の固体粒子を生成する。
【0005】
多くの場合、医薬品有効成分および/または賦形剤は、水性または非水性の溶媒への溶解反応速度が遅く、スプレー溶液を調製するために、撹拌タンクなどの従来の方法/装置を使用して完全に溶解するのに何時間もかかる。また、溶解度の低い医薬品有効成分の場合、供給タンクの容量が特に制限される可能性がある。これらの場合、非常に低濃度/大量のスプレー溶液が必須であり、スプレー溶液の複数のバッチの製造が必要になる。さらに、多くの医薬品有効成分(APIs)および賦形剤は、溶液中での安定性が低く、化学分解(chemical degradation)のためにバッチモード(固有の保持時間)でのスプレー溶液の調製は不適切な方法になる。これは、医薬品有効成分または賦形剤の溶解反応速度が遅く、溶解度が低い場合に特に関係がある。
【0006】
要約すると、医薬品有効成分および賦形剤の溶解反応速度が遅く、供給タンクの容量が不十分であり、安定性/溶解度が低いため、バッチモード(攪拌タンクなど)でのスプレー溶液の調製が医薬品スプレードライ製品の製造に適さなくなる可能性がある。
【0007】
溶解反応速度が遅い医薬品有効成分および賦形剤は、通常、粉砕されて粒子寸法が小さくなり、したがって、固相から液相へ(from the solid to the liquid phase)の物質移動(mass transfer)に利用できる表面積が増加する。より高い表面積の結果として、溶解に必要な時間が減少する。現在の技術は、ジェットミリング(jet milling)、高せん断混合(high shear mixing)、およびボールミリング法(ball milling methods)など、粒子寸法を小さくするためのいくつかの技法(techniques)を含む。これらの技法はしばしば効果的だが、スプレー溶液の調製において少なくとも1つの追加の非連続なステップを伴う。
【0008】
スプレー溶液の大規模なバッチを調製する際の別の一般的な問題は、妥当な時間内に原体(drug substance)および/または賦形剤をプロセス溶媒に完全に溶解できないことである。これは、溶解反応速度が遅い原体の場合、またはポリマー賦形剤が十分に分散されていない場合に当てはまる。ポリマー賦形剤の場合、ポリマーが凝集して、ポリマー溶媒界面(polymer-solvent interface)に拡散制限ゲル層(diffusion limiting gel layer)を形成し、溶解反応速度を低下させる可能性がある。
【0009】
さらに、多くの医薬品有効成分は溶液中での安定性が低く、時間の経過とともに劣化する傾向がある。結果として、スプレードライされた材料の純度は、溶液の後でスプレーされた部分についてより低くなる可能性があり、スプレードライされた製品はバッチ全体で同じ投与量を有さないため、均一性の問題を引き起こす。
【0010】
最先端技術には、溶解度および溶解反応速度が遅い薬物の複数の粒子を調製するための多くの例が含まれている。
【0011】
例えば、米国公開第2005/0031692号は、溶解度の低い薬物およびポリマーを溶解することによってスプレー溶液を調製するためのプロセスに関する。この文献は、スプレー溶液を調製する非連続な方法に関する。米国公開第2014/0319071号は、ポリマー溶解システムが使用される非連続プロセスに関連する。
【0012】
米国特許第5222807号は、低せん断混合(low shear mix)を使用するポリマー溶解のみのための連続低せん断固体溶解システム(continuous low shear solids dissolution system)に関する。また、米国特許第585773号では、圧力下で化合物を溶解するために、静的混合機(static mixers)を介してポリマーと溶液の混合物を加速するために圧力ポンプが使用されている。
【0013】
国際公開第2010/111132号は、スプレードライプロセスに関するものであり、スプレー溶液は、非連続プロセスではあるが、外部エネルギー入力を使用して温度をT2に上昇させる熱交換器を通過する温度T1の供給懸濁液によって形成される。供給懸濁液中の固形成分は、温度効果により可溶化し、スプレー溶液を形成する。多くのスプレー溶液では、温度の上昇は固体の溶解度を上げるのに適切だが、これは溶解反応速度を大幅に改善するには十分ではない。溶解反応速度を改善するために、好ましくは、液相への固体の拡散を促進するための温度上昇とともに、固体サイズの減少が通常必要とされる。
【0014】
国際公開第2016/156841号は、マイクロおよび/またはナノ粒子を連続的に製造する方法を開示しており、少なくとも1つの成分および少なくとも1つの溶媒を含む第1の溶液と、第1の溶液に含まれる少なくとも1つの成分の少なくとも1つの非溶媒を含む第2の溶液を調製するステップを含んでいる。第1の溶液と第2の溶液はマイクロ反応器に供給され、マイクロ反応器に供給され、マイクロ流動化によって混合されて、沈殿または共沈によって懸濁液を生成する。次に、懸濁液を濾過システムに供給して、固形分濃度(solids concentration)を増加させる。次に、懸濁液からの固体粒子は、スプレードライによって単離される。より具体的には、国際公開第2016/156841号の方法では、マイクロ反応技術を使用して、製造プロセス中の粒子の沈殿を制御する。
【0015】
米国公開第2009/0269250号および米国特許第6221332号は、増圧ポンプおよびマイクロ反応器を介して少なくとも2つの液体供給流を連続的に処理するためのシステムに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国公開第2005/0031692号
【文献】米国公開第2014/0319071号
【文献】米国特許第5222807号
【文献】米国特許第585773号
【文献】国際公開第2010/111132号
【文献】国際公開第2016/156841号
【文献】米国公開第2009/0269250号
【文献】米国特許第6221332号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
要約すると、最先端技術は、難溶性薬物のスプレー溶液および粒子状物質を調製するための戦略のみを開示している。しかし、最先端技術で開示されている方法はいずれも、溶液調製とスプレードライの間の保持時間、低い溶解反応速度、供給タンクの不十分な容量、医薬品有効成分の低い安定性/溶解度、または賦形剤とバッチモード法に関連する問題に対処していない。
【0018】
本発明の発明者は、上記の問題を効果的に克服するプロセスおよびシステムが必要であることを認識している。
【0019】
したがって、本発明の目的は、低い溶解度および/または遅い溶解反応速度および/または溶液中での低い安定性で、医薬品有効成分および/または賦形剤を可溶化する問題を解決することである。より具体的には、本発明は、粒子寸法の減少、発熱、およびスプレー溶液の等質的な混合を含む単一ステップの操作で、医薬品有効成分および/または賦形剤を連続的に可溶化する方法を提供することを目的とする。これらすべての現象は、連続スプレー溶液調製における溶解反応速度と固体溶解度を増加させる。本発明では、スプレー溶液を調製するために追加のバッチ操作が必要とされないので、より効率的なプロセスが達成される。本発明の発明者らは、スプレー溶液の調製およびスプレードライステップの両方を連続的かつ同時に実行することができるプロセスおよびシステムを設計した。さらに、本発明は、バッチサイズが供給タンク容量によって制限されず、溶液調製とスプレードライとの間の保持時間が必要とされず、潜在的なスプレー溶液の安定性の問題を排除するプロセスおよびシステムを提供する。
【0020】
本発明はまた、スプレー溶液は連続モードで調製され、定義されたマイクロ反応チャンバーおよび/またはマイクロチャネル内のマイクロ、ナノ、および分子レベルのスプレー溶液成分は、高エネルギー混合または強制的な接触(forced contact)によって溶媒系における溶解反応速度および/または溶解度を改善する装置を使用してスプレードライヤーに連続的に供給されるプロセスを提供することを目的とする。マイクロ反応チャンバーおよび/またはマイクロチャネルで使用される高エネルギー現象は、固体の微粉化、局所的な発熱、およびすべての成分の等質的な混合を同時に引き起こし、より速い溶解反応速度および溶媒系への溶解度の向上を促進する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によれば、以下のステップを含む、複数の単一成分粒子および/または複数の多成分粒子の連続製造のためのプロセスが提供される:
少なくとも1つの成分および少なくとも1つの溶媒を含む懸濁液を少なくとも1つのマイクロ流動化デバイスに連続的に供給するステップ;
等質的なスプレー溶液を生成するために、マイクロ反応またはマイクロ流動化によってマイクロ流動化デバイス内の懸濁液を混合するステップ;
スプレー溶液を連続モードでスプレードライヤーに供給するステップ;
少なくとも1つの噴霧ノズルを使用して複数の液滴を生成するためにスプレー溶液を噴霧するステップ;及び
複数の粒子を得るために、乾燥チャンバー内で複数の液滴を乾燥するステップ。
【0022】
好ましくは、懸濁液は、連続または非連続モードで、少なくとも1つの成分を含む溶液を、少なくとも1つの溶媒を含む溶液と混合することによって調製される。少なくとも1つの成分は、少なくとも1つの医薬品有効成分(API)を単独で、または少なくとも1つの賦形剤と組み合わせて含み得る。好ましくは、医薬品有効成分は、溶解度、溶解反応速度が低いか、または溶液中での安定性が低い。好ましくは、単一成分粒子および/または多成分粒子は、複数のアモルファス固体分散体を含む。好ましくは、マイクロ流動化は、少なくとも1つのマイクロ反応器および/または連続フロー反応器であり得る少なくとも1つのマイクロチャンバーを使用して行われる。
【0023】
好ましくは、マイクロ流動化デバイスは再循環モードで動作する。有効成分および溶媒を含む懸濁液は、好ましくは、少なくとも1つの増圧ポンプを使用して、約1バールから約3500バールの好ましい圧力範囲、任意で約1バールから約2000バールの圧力範囲で、マイクロ反応器/マイクロチャネルに供給される。
【0024】
好ましくは、有効成分および溶媒を含む懸濁液は、有効成分の粒子寸法が微粉化によって減少し、熱が発生するように、マイクロ反応器/マイクロチャネルの1以上のチャネル内で混合される。
【0025】
本発明の別の態様によれば、複数の単一成分粒子および/または複数の多成分粒子の連続製造のための以下を含むシステムが提供される。
等質的なスプレー溶液を生成するために、マイクロ反応またはマイクロ流動化によって、少なくとも1つの成分および少なくとも1つの溶媒を含む懸濁液を混合するためのマイクロフルイダイザー;
懸濁液をマイクロフルイダイザーに連続的に供給するための手段であり、これは、好ましくは、少なくとも1つのマイクロ反応器および/または少なくとも1つのマイクロチャンバーを含む;及び
複数の液滴を生成するためにスプレー溶液を噴霧するための少なくとも1つの噴霧ノズルと、複数の粒子を得るために複数の液滴を乾燥させるための乾燥チャンバーとを含むスプレードライヤー。
【0026】
本発明の別の態様によれば、本発明によるシステムを使用して、複数の単一成分粒子および/または複数の多成分粒子を製造するためのプロセスが提供される。好ましくは、複数の単一成分粒子または複数の多成分粒子は、複数のアモルファス固体分散体または微粒子アモルファス分散体(particulate amorphous dispersion)を含む。
【0027】
本発明の別の態様によれば、APIの生物学的利用能を高めるのに使用するために、本発明のプロセスによって得られる複数の単一成分粒子または複数の多成分粒子または1つの粒子状アモルファス分散体が提供される。
【0028】
本発明の他の態様は、本発明の方法によって得られる複数の単一成分粒子、複数の多成分粒子および複数の粒子状アモルファス固体分散体、ならびに前記複数の単一成分粒子、複数の多成分粒子および複数の粒子状アモルファス固体分散体を含む医薬組成物に関する。
【0029】
「固体」という用語は、少なくとも1つの医薬有効成分および/または少なくとも1つの賦形剤を含む、固体または複数の固体の混合物として定義される。
【0030】
「アモルファス固体分散体」という用語は、アモルファス状態でのマトリックス中の少なくとも1つのAPIの分散体として定義される。このマトリックスは、結晶性またはアモルファスのポリマー、界面活性剤、またはそれらの混合物を含み得る。
【0031】
「APIのみ」という用語は、複数の賦形剤の非存在下で少なくとも1つのAPIを含む複数の粒子として定義される。
【0032】
「賦形剤」という用語は、薬物または他の活性物質の媒介物(vehicle)または媒体(medium)として機能する物質として定義される。
【0033】
本発明による「溶媒」という用語は、溶媒または複数の溶媒の混合物であり、ここで、固体、例えば、医薬品有効成分、および該当する場合は、1つまたは複数の関連する賦形剤は可溶性である。
【0034】
本発明による「懸濁液」という用語は、「固体」流と「溶媒」流の混合物であり、固体は溶媒に完全に可溶化されていない。
【0035】
「マイクロ反応」という用語は、マイクロ反応器、マイクロミキサー、マイクロチャネル、またはフィールド内に含まれるその他のコンポーネント内での物理的および/または化学的反応を伴う技術を指す。「マイクロ流動化」という用語は、これらのマイクロチャネルを介した連続的な流体処理を含み、メソおよびマイクロミキシング範囲での高せん断、キャビテーション、および等質的な混合を含む。好ましくは、複数の多成分粒子の場合、1以上の賦形剤に対する少なくとも1つの医薬品有効成分の比率は、95%から5%(w/w)から5%から95%(w/w)の範囲である。
【0036】
「複数の単一成分粒子」という用語は、単一成分または物質、例えば、医薬品有効成分、賦形剤を含む複数の粒子を指す。
【0037】
「複数の多成分粒子」という用語は、いくつかの成分または物質、例えば、医薬品有効成分、賦形剤の混合物を含む複数の粒子を指す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1A】最先端のプロセスステップの概略図である。
図1B】本発明のプロセスステップの概略図である。
図2A】本発明のシステムの実施形態の概略図である。
図2B】本発明のシステムの実施形態の概略図である。
図2C】本発明のシステムの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の前述および他の特徴および利点は、本発明の以下の詳細な説明および添付の図面を考慮することにより、より容易に理解されるであろう。
【0040】
本発明は、少なくとも1つの医薬品有効成分、少なくとも1つの賦形剤、または1以上のAPIと複数の賦形剤の組み合わせ、および少なくとも1つの溶媒を含むスプレー溶液の連続調製およびスプレードライを特徴とする連続スプレードライ法を開示する。
【0041】
本発明をより詳細に参照すると、図2Aには、少なくとも1つの溶媒流1および少なくとも1つの固体流2を受け取る任意のバッファタンク;ポンプ3;マイクロ流動化装置(apparatus)/デバイス(device)4;任意のバッファタンク;乾燥チャンバー5および乾燥粒子を回収するための手段7を含むスプレードライヤー、を含むシステムが示されている。
【0042】
好ましくは、溶媒流1および固体流2は、バッファタンクに供給され、非連続的または連続的に、好ましくは個別に制御された速度で組み合わされて、懸濁液を形成する。
【0043】
好ましくは、バッファタンクはポンプ3に接続され、ポンプ3は次にマイクロ流動化装置4に接続され得る。ポンプ3は、懸濁液をマイクロ流動化装置4に連続的に輸送するのに十分な圧力でバッファタンク内の懸濁液をポンプ輸送するのに適した、増圧ポンプまたは当業者に知られた任意のポンプを含む。
【0044】
好ましくは、マイクロ流動化装置4は、1以上のマイクロ反応器および/またはマイクロチャネルを含む。好ましくは、マイクロ流動化装置4は、再循環モードで作動される。
【0045】
好ましくは、マイクロ反応器内の反応チャンバーは、明確に定義された直径およびサイズの1以上のチャネルを含む。好ましくは、チャネルの直径は、約10μmから約1000μmまたは約10ミクロンから約400ミクロンの範囲である。より好ましくは、直径は、約50ミクロンから約200ミクロンの範囲である。マイクロチャネルはまた、1μmから10μmまたは1μmから5μmの範囲の直径を有し得る。
【0046】
本発明で使用されるマイクロチャネルおよび/またはマイクロ反応器の数は限定されないが、好ましくは1から10の範囲である。複数のマイクロ反応器を使用する実施形態では、マイクロ反応器は直列または並列に配置される。
【0047】
マイクロ流動化装置は、懸濁液中の複数の粒子のさらなる混合および微粉化を容易にして、等質的なスプレー溶液を形成する。マイクロ流動化装置はまた、懸濁液中の複数の固体の溶解度を増加させる発熱または温度上昇を促進する。
【0048】
マイクロ流動化装置は、スプレードライユニット5に接続されている。好ましくは、マイクロ流動化装置は、バッファタンクを介してスプレードライユニット5に接続されている。
【0049】
好ましくは、バッファタンクを使用して、スプレードライヤー5に供給される前に、マイクロ流動化装置から等質的なスプレー溶液を排出する。
【0050】
好ましくは、増圧ポンプを使用して、複数の固体粒子を乾燥および分離するために、スプレー溶液をバッファタンクまたはマイクロ流動化装置からスプレードライヤー内の噴霧器に連続的に輸送する。
【0051】
好ましくは、マイクロ流動化装置は再循環モードで動作する。マイクロ流動化装置は、少なくとも1つの成分および少なくとも1つの溶媒が組み合わされるバッファタンクに接続されて、所望の固体溶解が達成されるまでマイクロ流動化装置から溶液を再循環させる。好ましくは、システムは、第2のバッファタンクからの溶液がスプレードライヤーに連続的に供給されるように、半連続モードで第1のバッファタンクから溶液の複数のバッチを受け取るために第1のバッファタンクに接続された第2のバッファタンクを提供する。
【0052】
本発明の実施形態では、スプレードライユニットが、懸濁液から固体材料を乾燥および回収するために使用される。スプレードライユニットは、当該技術分野で知られている任意の適切なスプレードライ装置でもよい。好ましくは、スプレードライ装置は、液体流の形態のマイクロ流動化装置4からの溶液が噴霧ノズルを使用して連続的に供給されて複数の液滴を形成し、複数の液滴が乾燥ガス6で乾燥されるスプレー乾燥チャンバー5を含む。
【0053】
スプレードライ装置はまた、スプレードライチャンバーから複数の乾燥粒子を回収するための手段を含む。図2Aでは、複数の乾燥粒子はサイクロン7で乾燥ガスから分離され、出口の流れ[outlet stream]9に集められ、乾燥ガスは出口の流れ8の中でサイクロン7を出る。しかしながら、スプレードライチャンバーから複数の乾燥粒子を回収するための手段はまた、フィルターバッグなどの当業者に知られている他の手段の形をとることができる。
【0054】
図1Aは、先行技術の方法の図を示している。当該技術分野では、スプレー溶液は、最初に複数の固体(APIs)を非連続プロセスで粉砕することによって調製され、次に、粉砕された複数の固体の流れおよび溶媒の流れが攪拌タンクに供給され、一定期間にわたって攪拌および混合することにより、複数の固体は溶媒に溶解される。必要に応じて、混合ステップ中に外部ソースから熱を加えることもできる。次に、得られた懸濁液をスプレードライプロセスにかけて、複数の固体粒子を得る。図1Bは、本発明の方法の図を示す。
【0055】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つの溶媒1を含む流れおよび少なくとも1つの固体2を含む流れは、個別に制御された速度で非連続的または連続的に組み合わされて、懸濁液を形成する。好ましくは、複数の固体を含む流れおよび溶媒を含む流れは、バッファタンクに供給される。好ましい実施形態では、溶媒流と固体流との混合は、固体流の溶媒流への分散を促進するために、制御された条件下で起こる。好ましくは、バッファおよび/または静的ミキサーを使用して、固体および溶媒の流れを組み合わせて懸濁液を形成する。好ましくは、固体及び溶媒の流れは、固体が溶媒系における溶解限度内にあり、約1%から約50%(w/w)または約5%から約15%の範囲であるが、これらに限定されない比率で組み合わされる。溶媒と固体の比率を最適化して、スプレードライ後の粒子特性(粒子寸法や密度など)を制御することもできる。
【0056】
好ましくは、懸濁液は、例えば懸濁液の特性による制御された速度で、1以上の増圧ポンプ3に連続的に供給される。次に、懸濁液を1以上の増圧ポンプ3で1以上のマイクロ反応器4に加圧し、懸濁液の成分をマイクロ、ナノ、および分子レベルで相互作用させて、等質的ななスプレー溶液を生成する。マイクロ反応器は、定義された反応チャンバーおよび/またはマイクロチャネル内の懸濁液の成分の非常に効果的な分子接触/相互作用を促進し、固体の微粉化と高エネルギー混合をもたらし、最終的に溶解反応速度と溶解度を改善する。
【0057】
好ましくは、懸濁液は、少なくとも1つの溶媒、少なくとも1つの医薬品有効成分、および/または少なくとも1つの賦形剤を含む。好ましくは、少なくとも1つの医薬品有効成分および/または賦形剤は、溶液中での安定性が低く、溶解度が低く、および/または溶解反応速度特性が遅い。
【0058】
好ましい実施形態では、懸濁液中の固形物の溶解が増加するように、懸濁液中のプロセス圧力および固形分濃度を最適化して、マイクロ反応を促進することができる。
【0059】
好ましい実施形態では、懸濁液は、等質的なスプレー溶液を形成するのに十分な圧力でマイクロ反応器/マイクロチャネルに供給される。
【0060】
圧力は、約1バールから約3500バール、好ましくは約20バールから約3500バール、より好ましくは約100バールから約3000バール、または約300バールから約2500バールの範囲でもよい。好ましくは、圧力はまた、約1バールから約2000バールまたは10バールから1500バールの範囲でもよい。
【0061】
マイクロ反応器での混合ステップ中に、懸濁液は、好ましくは温度Tinで供給され、高エネルギー相互作用の結果として、Toutまでの温度上昇を経験する可能性があることも開示されている。TinとToutとの相違は、動作状況(operating conditions)と懸濁液流(suspension stream)の特性による。好ましくは、固体は、TinとToutとの間に含まれる範囲内で溶媒に可溶である。温度TinとToutは、分解、溶解度及び溶解反応速度を制御するために、外部エネルギー入力によって制御してもよい。
【0062】
温度Tinは、約-10℃から100℃の範囲、好ましくは-5℃から80℃の範囲でもよい。
【0063】
温度Toutは、約0℃から150℃の範囲、好ましくは5℃から130℃の範囲でもよい。
【0064】
好ましくは、スプレー懸濁液は、少なくとも約1から10のマイクロ反応器またはマイクロチャネルを有する直列の複数のマイクロ反応器または/複数のマイクロチャネルにポンプで送られる。
【0065】
好ましくは、マイクロ反応器内で形成された等質的なスプレー溶液は、増圧ポンプなどのポンプまたはスプレードライヤ―5にスプレー溶液を輸送するのに適した任意のポンプを使用してスプレードライヤ―に連続的に供給される。
【0066】
好ましくは、マイクロ反応器またはマイクロ流動化装置からのスプレー溶液は、直ちにかつ連続的にスプレードライヤ―に供給される。
【0067】
好ましくは、バッファタンクは、スプレードライヤ―5に供給される前に、等質的なスプレー溶液を連続的または非連続的に排出するために使用される。増圧ポンプを使用して、スプレー溶液をスプレードライヤ―の噴霧器に輸送してもよい。
【0068】
好ましい実施形態では、複数のマイクロ反応器または複数のマイクロチャネルをバッファタンクに接続するための接続手段/装置が提供され、バッファタンクは次にスプレードライ装置に接続される。
【0069】
好ましい実施形態において、図2Bは、バッファタンク10に接続され、次に増圧ポンプ3に接続され得る溶媒流1および固体流2を有する手段または装置を示す。増圧ポンプ3は複数のマイクロ反応器/複数のマイクロチャネル4に接続され、これらの複数のコンポーネント(つまり、溶媒と固体の流れを含む装置、バッファタンク、ポンプ、およびマイクロ反応器を含むユニット)はスプレードライ装置5に接続される。
【0070】
他の好ましい実施形態において、図2Cにおいて、固体流11及び溶媒流12は、連続
的または非連続的に、第1のバッファタンク13の中に排出されている。バッファタンク13中の複数の固体および溶媒を含む溶液または懸濁液は、好ましくは増圧ポンプ14を使用して、マイクロ反応器/マイクロチャネルに輸送される。マイクロ反応器/マイクロチャネルからの溶液または懸濁液は、所望の固体溶解が達成されるまで、バッファタンク13に再循環されて戻る。半連続モードでは、バッファタンク13からの溶液を第2のバッファタンク15に移してもよく、第2のバッファタンク15は、スプレードライチャンバー16を含むスプレードライ装置に接続される。好ましくは、半連続モードでは、溶液の複数のバッチを第1のバッファタンク13で調製することができる。第1のバッファタンク13内の溶液の複数のバッチは、連続モードで動作しているスプレードライプロセス中に、溶液が第2のバッファタンク15で空にならないように、連続的または非連続的に第2のバッファタンク15に移される。好ましくは、第2のバッファタンク15からの溶液は、噴霧ノズルを使用してスプレードライチャンバー16に連続的に供給されて複数の液滴を形成し、乾燥ガス17で乾燥される。スプレードライ装置はまた、乾燥ガスが出口の流れ18に出る間に、複数の乾燥粒子20をスプレードライチャンバー16から回収するための手段19を含む。
【0071】
本発明において、スプレー溶液は、スプレー溶液を乾燥チャンバー5内の複数の液滴に噴霧する少なくとも1つの噴霧器に連続的に供給され、そこで溶媒が乾燥ガスの効果によって蒸発し、乾燥チャンバー5の出口に設置されたサイクロンまたはフィルターバッグ7に集められたスプレードライ粒子流[spray dried particles stream]9を形成することも開示される。
【0072】
噴霧化は、特定のタイプの噴霧器を使用して促進することができるが、回転ノズル、圧力ノズル、二流体ノズル、超音波ノズル、または溶液を噴霧することができる任意の他の装置、または優先的に、溶液から液滴を形成することができる任意の装置に限定されない。好ましくは、噴霧条件およびスプレードライプロセスのパラメータは、所望の複数の粒子を製造するために最適化することができる。より好ましくは、約1バールから約200バール、または約10バールから約100バールの範囲の流体力学的圧力(hydrodynamic pressures)でスプレー溶液を噴霧することができる圧力ノズルが使用される。本発明で形成される液滴は、好ましくは約1ミクロンから約1000ミクロン、好ましくは1ミクロンから200ミクロン、好ましくは30ミクロンから200ミクロン、または30ミクロンから80ミクロンの範囲である。
【0073】
噴霧器を介してスプレードライチャンバーに連続的に供給されるスプレー溶液は、単独で、または1以上の賦形剤とともに、少なくとも1つの溶解した医薬品有効成分および少なくとも1つの溶媒を含んでもよい。
【0074】
より具体的には、賦形剤は、ポリマー、界面活性剤、表面修飾剤、糖、アミノ酸、多糖類、例えば、セルロース多糖類または誘導体/セルロースベースのポリマー、キチンおよびキトサン、アルギネート、またはビニルポリマーなどの他のポリマー基、例えばポリビニルピロリドン、またはアクリル基を有するポリマー、例えばポリメチルアクリル、および任意の他のポリマーおよびそれらの組み合わせを含む群から選択されてもよい。
【0075】
スプレー溶液の調製に使用される溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ブタノン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、ヘキサン、酢酸エチル、n-ヘプタン、他の有機溶媒、およびそれらの組み合わせを含む群から選択してもよい。
【0076】
好ましくは、水酸化ナトリウム、塩酸、トリス緩衝液またはクエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メグルミンなどのようなpH調整剤が「溶媒」溶液に添加される。好ましくは、溶媒の温度を調整することができる。好ましくは、温度は約-20℃から70℃の範囲で調整される。しかしながら、溶媒中に分散される物質または成分に基づいて、当業者は、温度を適切に調整することができる。
【0077】
好ましくは、噴霧状況およびスプレードライプロセスパラメータは、所望の複数の粒子を製造するために最適化することができる。
【0078】
好ましくは、乾燥ガス流6は、空気、窒素または二酸化炭素を含む。好ましくは、乾燥ガスは、複数の固体粒子が形成される程度まで噴霧スプレー溶液から溶媒を蒸発させるのに十分な流量および温度で供給される。好ましくは、乾燥ガスの流量は、0.1kg/hから5000kg/hの範囲であり、より好ましくは、乾燥ガスの流量は、1kg/hから2000kg/hの範囲である。好ましくは、乾燥ガスの温度は、約-20℃から約200℃の範囲であり、より好ましくは、-10℃から100℃の範囲である。乾燥ガスは、凝縮器ユニットを介して再循環させることができ、ほとんどの溶媒を凝縮する。次に、凝縮した液体をポンプで送り、ガスを約-20oCから約200℃の範囲の温度に加熱してから、乾燥チャンバーに再び入れる。凝縮器ユニットは通常、約-20℃から約30℃の範囲の温度で動作する。
【0079】
スプレードライチャンバー7は、噴霧されたスプレー溶液と、個別に制御された流量で供給される乾燥ガスとの間の接触を許容するのに十分な容積を有する。好ましくは、スプレードライチャンバーは、噴霧されたスプレー溶液と乾燥ガスとの間の接触を許容し、複数の固体粒子が形成される程度まで噴霧されたスプレー溶液から溶媒(複数の場合あり)を蒸発させるのに十分な容積を有する。
【0080】
好ましくは、スプレードライされた材料は、以下の手段の少なくとも1つを使用して、二次乾燥非連続動作でさらに乾燥される:室圧未満に圧力を下げることによって、室温を超えて加熱することによって、または攪拌することによって。
【0081】
本発明において、スプレー溶液は、複数のマイクロチャネルおよび/または複数のマイクロ反応器などの装置において高せん断混合を使用して調製される。このような高せん断混合は、粒子寸法の減少および自然に温度を上昇させるスプレー溶液の局所的な発熱による薬物および/または賦形剤粒子の表面積の増加の結果として、より速い溶解反応速度および高めた溶解度を可能にする。
【0082】
さらに、本発明のプロセスにおいて、マイクロ流動化は、複数のマイクロチャネルおよび/または複数のマイクロ反応器などの装置を使用して達成され、微粉化を促進し、固体の溶解反応速度および溶解度を改善する。本発明において、少なくとも1つの固体成分および少なくとも1つの溶媒を含む懸濁液は、等質的なスプレー溶液を得るために、マイクロ流動化によって微粉化される。次に、得られた等質的なスプレー溶液をスプレードライして、溶媒を除去して、複数の固体粒子をもたらす。
【0083】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの固体成分および少なくとも1つの溶媒を含む懸濁液の1つの流れのみが、スプレー溶液を調製するために使用される。懸濁液の単一の流れは、連続的に1台のマイクロ反応器に供給され、次に1台のスプレードライヤ―に供給されて、複数の固体材料粒子が得られる。
【0084】
さらに、本発明の好ましい実施形態では、溶液をスプレードライヤ―に供給する前に、マイクロ反応器から得られたスプレー溶液を濃縮するための濾過システムは必要ない。また、本発明の好ましい実施形態では、固体流を粉砕プロセスにかける必要はない。結果として、本発明のプロセスは、懸濁液中の複数の固体のより速い/より迅速な溶解を考慮して、保持時間なしでプロセスを実行するために、より少ない装置の要求で、単純でより効率的である。
【0085】
本発明の利点には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
-微粉化により、懸濁液中の複数の固体の粒子寸法を小さくするのに役立つ。
-APIや賦形剤などの難溶性固体の溶解反応速度と溶解度を増加または改善する。
-外部の熱エネルギー源を必要とせずに、微粉化プロセス中に温度を上げることができる。
-スプレー溶液を準備するために追加のバッチ動作が必要ないため、効率的なプロセスが可能になる。
-バッチサイズが供給タンク容量によって制限されないプロセスを提供する。
-溶液調製とスプレードライの間の保持時間が短いか、まったくないため、特に薬物活性物質や賦形剤などの難溶性固体に関連する潜在的なスプレー溶液の安定性の問題が排除される。
-スプレー溶液の連続調製を提供する。
-複数の固体粒子を調製する連続的な方法を提供する。
-簡単にスケーラブル(scalable)な方法を提供する。
【0086】
本開示は、スプレー溶液を連続的に乾燥するためのプロセスを提供し、このプロセスでは、前記スプレー溶液が、マイクロ反応器またはマイクロチャネルシステムに供給されるスプレー懸濁液を形成する少なくとも1つの溶媒に少なくとも1つの固体活性医薬成分および/または少なくとも1つの医薬賦形剤を供給することによって形成される。そしてこのプロセスは、スプレー溶液を連続的に形成し、スプレー溶液はノズルに連続的に供給され、ノズルは乾燥チャンバー内の複数の液滴に前記スプレー溶液を分散させ、そこで乾燥ガスが各液滴から溶媒を蒸発させ、サイクロン上に収集される複数の固体粒子を形成する。
【0087】
本明細書で開示されるのは、以下のステップを含む、複数の単一成分粒子および/または複数の多成分粒子を製造するための方法である。
-懸濁液を形成するために、連続または非連続モードで、少なくとも1つの医薬品有効成分を少なくとも1つの溶媒と、単独で、または1以上の賦形剤と一緒に混合する。
-懸濁液を増圧ポンプに連続的に供給し、増圧ポンプは、懸濁液を少なくとも1つのマイクロ反応器および/または少なくとも1つのマイクロチャンバーに連続的に供給する。
-等質的なスプレー溶液流を生成するためにマイクロ反応またはマイクロ流動化によって、マイクロ反応器(複数の場合あり)および/またはマイクロチャンバー(複数の場合あり)内での懸濁液の高エネルギー混合をする。
-スプレードライヤ―へのスプレー溶液の連続供給をする。
-液滴流を生成するために、少なくとも1つの噴霧ノズルを使用してスプレー溶液流を噴霧する。
-複数の固体粒子を得るために、乾燥チャンバー内で液滴流を乾燥させる。そして
-前記複数の固体粒子を収集する。
【0088】
本発明はまた、複数の固体粒子の連続調製のためのシステムを提供する。
【0089】
本発明はまた、本発明のシステムを使用して複数の固体粒子を連続的に調製するためのプロセスを提供する。本発明はまた、本発明のシステムを使用して複数の固体粒子を連続的に調製するためのプロセスによって得られる製品を提供する。
【0090】
好ましくは、本発明では、懸濁液の1つの流れのみが使用され、プロセスの最後に固体材料を得るためにスプレードライヤ―に懸濁液の1つの流れが連続的に供給される。
【0091】
本発明はまた、本発明によるシステムを使用する本発明のプロセスによって得られる複数の固体粒子を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は医薬品として使用される。好ましくは、複数の固体粒子は、複数の単一成分粒子、アモルファスまたは結晶形態(共結晶)の複数の多成分粒子、および好ましくはマイクロおよび/またはナノ範囲の粒子寸法を有する複数のアモルファス固体分散体を含む。
【0092】
本発明はまた、複数の単一成分粒子および/または複数の多成分粒子の連続製造のためのプロセスにおいて、少なくとも1つの成分および少なくとも1つの溶媒を含む懸濁液中の複数の粒子の微粉化のための少なくとも1つのマイクロ反応器および/または少なくとも1つのマイクロチャンバーの使用方法を提供する。少なくとも1つの成分は、溶液中での安定性が低く、溶解度が低く、および/または溶解反応速度が遅い特性を有する医薬品有効成分および/または賦形剤でもよい。
【0093】
本発明の前述の説明により、当業者は、現在の最良のモードであると考えられるものを作成および使用することができ、当業者は、特定の実施形態、方法、および本明細書の例の変形、組み合わせ、および同等物の存在を理解および認識するであろう。したがって、本発明は、上述の実施形態、方法、および例によって限定されるべきではなく、特許請求される本発明の範囲および精神内のすべての実施形態および方法によって限定されるべきである。
【0094】
本発明を実施する方法を示唆することのみを意図し、本発明の範囲を制限するのに役立たない適切な例は、以下のとおりである。
<実施例>
<実施例1>
ポリビニルピロリドン酢酸ビニル(PVP/VA、11.9g)を、撹拌しながらバッファタンク内の水(467.3g)に室温で加えて、2.5%w/wの固形分負荷を有する懸濁液を調製した。得られた懸濁液を、1862バールの圧力で増圧ポンプ(MicroDeBEE)を用いて、直径500ミクロンのマイクロチャネルを備えた直列の5つのマイクロ反応器に連続的に通した。懸濁液を直列の5つのマイクロ反応器に1回通過させた後、等質的な溶液が得られた。
【0095】
比較のために、PVP/VA(5.0g)を攪拌容器内で室温で水(203.6g)と混合した。PVP/VAの完全な溶解は1時間12分後に達成された。
【0096】
他の医薬品賦形剤と溶媒についても同じ設定で同じ実験を繰り返した。トリハロースは結晶形であり、APIを模倣する結晶分子のモデルとして使用した。得られた結果を以下の表1にまとめた。
【0097】
【表1】
試験結果から、本発明の連続溶液調製では、複数の固体粒子の溶解が直ちにまたは数秒以内に起こる(すなわち、連続溶解)のに対し、最新技術による撹拌タンク溶解では、粒子の溶解にかかる時間は10分から1.12時間の範囲で起こることが分かる。したがって、試験結果は、スプレー溶液が、本発明のプロセスによって、数秒の時間で連続的に調製され得ることを実証している。攪拌容器溶解と比較した場合、溶解反応速度の増加は、マイクロ反応器内の微粉化および高せん断混合効果の結果として説明され得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C