(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ポリマー厚膜誘電体ペースト組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 71/12 20060101AFI20240501BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240501BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240501BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20240501BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20240501BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240501BHJP
C08G 18/80 20060101ALI20240501BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240501BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20240501BHJP
C09D 171/12 20060101ALI20240501BHJP
C09D 167/02 20060101ALI20240501BHJP
H01B 1/20 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
C08L71/12
C08L67/02
C08K3/22
C08K3/38
C08G18/08 038
C08G18/48 079
C08G18/80
C08L75/04
C09D17/00
C09D171/12
C09D167/02
H01B1/20 A
(21)【出願番号】P 2020570874
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 US2019037659
(87)【国際公開番号】W WO2019246042
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-05-18
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523478687
【氏名又は名称】デュポン チャイナ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヒ ヒョン リー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンチェンツォ アランチョ
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-147403(JP,A)
【文献】特開平08-208856(JP,A)
【文献】国際公開第2012/050083(WO,A1)
【文献】特開2017-128637(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012440(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/056062(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0260367(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08G 18/00- 18/87
C08G 71/00- 71/04
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
H01B 1/00- 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)二酸化チタン及び窒化ホウ素粉末の混合物と;
(b)ポリエステルポリオール及びフェノキシ樹脂の樹脂ブレンドと;
(c)直鎖状脂肪族ポリエステル、ブロックコポリマー、ブロックト脂肪族ポリイソシ
アネート、並びに湿潤剤及び分散剤からなる群から選択される1種以上の添加物と;
(d)1種以上の極性非プロトン性溶媒であって、前記樹脂ブレンド及び任意の添加物
が前記1種以上の極性非プロトン性溶媒に溶解させられ、且つ、前記二酸化チタン及び窒
化ホウ素粉末が前記1種以上の溶媒中に分散させられる溶媒と
を含む、ポリマー厚膜誘電体ペースト組成物。
【請求項2】
前記ペースト組成物が、40~65重量%の二酸化チタン
(TiO
)及び窒化ホウ素
(BN
)粉末の混合物と、5~20重量%の樹脂ブレンドと、15~40重量%の1種以
上の溶媒とを含み、前記樹脂ブレンドが1~5重量%のポリエステルポリオール及び4~
15重量%のフェノキシ樹脂を含み、前記重量%は前記ペースト組成物の総重量を基準と
する、請求項1に記載のペースト組成物。
【請求項3】
前記TiO
2粉末の重量対前記BN粉末の重量の比率、TiO
2/BNが、2~25の範
囲にある、請求項2に記載のペースト組成物。
【請求項4】
前記1種以上の添加物が、1~5重量%の直鎖状脂肪族ポリエステル、1~5重量%の
ブロックコポリマー、0.5~5重量%のブロックト脂肪族ポリイソシアネート、並びに
0.1~0.5重量%の湿潤剤及び分散剤の量で存在し、前記重量%は前記ペースト組成
物の総重量を基準とする、請求項2に記載のペースト組成物。
【請求項5】
(a)二酸化チタン及び窒化ホウ素粉末の混合物と;
(b)ポリエステルポリオール及びフェノキシ樹脂の樹脂ブレンドと;
(c)直鎖状脂肪族ポリエステル、ブロックコポリマー、ブロックト脂肪族ポリイソシ
アネート、並びに湿潤剤及び分散剤からなる群から選択される1種以上の添加物と;
(d)1種以上の極性非プロトン性溶媒であって、前記樹脂ブレンド及び任意の添加物
が前記1種以上の極性非プロトン性溶媒に溶解させられ、且つ、前記二酸化チタン及び窒
化ホウ素粉末が前記1種以上の溶媒中に分散させられる溶媒と
を含むポリマー厚膜誘電体ペースト組成物から形成されるポリマー厚膜誘電体層を含有す
る電気回路を含む物品。
【請求項6】
前記ペースト組成物が、40~65重量%の二酸化チタン
(TiO
2
)及び窒化ホウ素
(BN
)粉末の混合物と、5~20重量%の樹脂ブレンドと、15~40重量%の1種以
上の溶媒とを含み、前記樹脂ブレンドが、1~5重量%のポリエステルポリオール及び4
~15重量%のフェノキシ樹脂を含み、前記重量%は前記ペースト組成物の総重量を基準
とする、請求項5に記載の物品。
【請求項7】
前記TiO
2粉末の重量対前記BN粉末の重量の比率、TiO
2/BNが、2~25の範
囲にある、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記1種以上の添加物が、1~5重量%の直鎖状脂肪族ポリエステル、1~5重量%の
ブロックコポリマー、0.5~5重量%のブロックト脂肪族ポリイソシアネート、並びに
0.1~0.5重量%の湿潤剤及び分散剤の量で存在し、前記重量%は前記ペースト組成
物の総重量を基準とする、請求項6に記載の物品。
【請求項9】
前記物品が熱成形されている、請求項5に記載の物品。
【請求項10】
前記物品が着用可能な衣類である、請求項5に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールドエレクトロニクス及び衣服用のポリマー厚膜誘電体層を形成するのに使用するためのポリマー厚膜誘電体ペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱成形可能な多層回路が必要とされる用途における及び可撓性の誘電体が必要とされる着用可能な衣類での使用のための誘電体がますます必要とされている。
【0003】
インモールド電子(IME)業界において、誘電体層は、導電性層、例えば、銀層を保護するのに役立ち、それ故、最小化されたピンホール形成でスクリーン印刷可能である、及び容易に熱成形可能である、並びに決して導電性層の導電特性に悪影響を与えないものでなければならない。これらの誘電体層は、また、水分バリアを提供しなければならない。高粘性ポリウレタン樹脂ベースのペースト組成物は、スクリーン印刷プロセス中のピンホール形成に問題があり得る。
【0004】
伸縮性誘電体は、電気回路において、着用可能な衣類において導電性層を保護するために必要である。そのような誘電体は、最小限のピンホール形成で印刷可能である及び伸縮性水分バリアである並びに洗浄及び乾燥サイクルに耐えることができる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
改善された誘電性ポリマー厚膜ペースト組成物が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(a)二酸化チタン及び窒化ホウ素粉末の混合物と;
(b)ポリオール及びフェノキシ樹脂の樹脂ブレンドと;
(c)直鎖状脂肪族ポリエステル、ブロックコポリマー、ブロックト脂肪族ポリイソシアネート、並びに湿潤剤及び分散剤からなる群から選択される1種以上の添加物と;
(d)1種以上の極性、非プロトン性溶媒であって、樹脂ブレンド及び任意の添加物が1種以上の溶媒に溶解させられ、且つ、二酸化チタン及び窒化ホウ素粉末が1種以上の溶媒中に分散させられる溶媒と
を含む、ポリマー厚膜誘電体ペースト組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、ポリマー厚膜誘電体ペースト組成物に関する。
【0008】
一実施形態において、本ペースト組成物は、熱成形される電気回路における導体のための保護層として使用される。ペースト組成物は、印刷プロセス中にスクリーンメッシュ開口部を通しての良好な流れを有し、それはピンホール形成を最小限にするか又は排除する及び良好な誘電体絶縁を達成する。乾燥した誘電体層はまた、導体又はプラスチック基材に付着する。
【0009】
別の実施形態において、ペースト組成物は、着用可能な衣類及びシートなどの物品における電気回路のための保護可能な伸縮性誘電体層を形成するために使用される。
【0010】
本発明はまた、そのような誘電体を含有する物品を提供する。
【0011】
「誘電体」としての本ペースト組成物の記載は、組成物をある構造へ成形する、その後処理して誘電特性を示すことができることを意味するように行われる。
【0012】
ペースト組成物が、着用可能な衣類及びシートなどの物品用の伸縮性誘電体膜を形成するために使用される場合、ペースト組成物から形成された誘電体膜は、それがその上に堆積している基材に十分に付着しなければならない。物品が着用可能な衣類である場合、膜は、洗濯及び乾燥サイクルを受けるにもかかわらずその導電特性を維持しなければならない。
【0013】
本ポリマー厚膜誘電体ペースト組成物は、二酸化チタン(TiO2)及び窒化ホウ素(BN)粉末の混合物と、ポリオール及びフェノキシ樹脂の樹脂ブレンドと、直鎖状脂肪族ポリエステル、ブロックコポリマー、ブロックト脂肪族ポリイソシアネート、並びに湿潤剤及び分散剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加物と、1種以上の極性、非プロトン性溶媒であって、樹脂ブレンド及び1種以上の添加物が1種以上の溶媒に溶解させられ、無機粉末が1種以上の溶媒中に分散させられる溶媒とを含む。
【0014】
本ペースト組成物は、ポリマーが誘電体膜中の構成要素として残るので、ポリマー厚膜ペースト組成物と呼ばれる。様々な構成要素が、以下のセクションにおいて詳細に考察される。
【0015】
二酸化チタン及び窒化ホウ素粉末
本ペースト組成物は、TiO2及びBN粉末のブレンドを含む。
【0016】
本ペースト組成物に使用されるTiO2及びBN粉末は、限定なしに、以下のモルフォロジー:フレーク状、球形、棒状、粒状、結節状、プレートレット状、層状若しくは被覆状、又は他の不整形状の任意の1つ以上などの、任意のモルフォロジーを有する微粉化粒子として供給され得る。これらのタイプの2つ以上の粒子の混合物又は異なるサイズ分布を有する同じタイプの粒子の混合物もまた考えられる。
【0017】
粉末の粒径は、必要とされる機能特性が達成できるという条件で、いかなる特定の制限も受けない。本明細書で用いるところでは、「粒径」は、「メジアン径」又はd50(50%体積分布サイズを意味する)を言うことを意図する。粒度分布はまた、粒子の90体積%がd90よりも小さいことを意味する、d90、又は粒子の10%がd10よりも小さいことを意味する、d10などの、他のパラメータによって特徴付けられ得る。体積分布径は、Microtrac X100粒度分析計(Montgomeryville,PA)により用いられるレーザー回折及び分散法を含むが、それらに限定されない、当業者により理解される多数の方法によって測定され得る。例えば、Horiba Instruments Inc.(Irvine,CA)から市販されているLA-910型粒度分析計を用いる、レーザー光散乱も使用され得る。様々な実施形態において、無機粒子のメジアン径は、Microtrak X100分析計を用いて測定されるように、0.1μm超及び10μm未満である。
【0018】
一実施形態において、TiO2及びBN粉末は、ペースト組成物の総重量を基準として、ペースト組成物の約40重量%~約65重量%を占める。TiO2粉末の重量対BN粉末の重量の比率、TiO2/BNは、約2~約25の範囲にある。
【0019】
ポリオール及びフェノキシ樹脂の樹脂ブレンド
樹脂ブレンドは、ポリオール及びフェノキシ樹脂のものである。
【0020】
ポリオールは、多数のヒドロキシ基を含有し、イソシアネートと反応してポリウレタンを形成する。
【0021】
下記の基本的な繰り返し形態:
-[O-C6H4-C(CH3)2-C6H4-O-CH2CHOHCH2]-
及び構造
【0022】
【化1】
を有するフェノキシ樹脂はまた、ヒドロキシ基を含有する。
【0023】
一実施形態において、樹脂ブレンドは、ペースト組成物の総重量を基準として、ペースト組成物の約5重量%~約20重量%を占める。
【0024】
一実施形態において、ポリオールは、ペースト組成物の総重量を基準として、ペースト組成物の約1重量%~約5重量%を占め、フェノキシ樹脂は、ペースト組成物の総重量を基準として、ペースト組成物の約4重量%~約15重量%を占める。
【0025】
添加物
本ペースト組成物は、直鎖状脂肪族ポリエステル、ブロックコポリマー、ブロックト脂肪族ポリイソシアネート、並びに湿潤剤及び分散剤からなる群から選択される1種以上の添加物を含む。
【0026】
ブロックト脂肪族ポリイソシアネートは、室温で安定であるが、加熱されたときに解離してイソシアネート官能性を再生するイソシアネート反応生成物である。ブロックトポリイソシアネートにおけるイソシアネート官能基は、室温で一見したところ不活性である化合物を生成するブロッキング剤の使用によってマスクされているけれども、高温で反応性の高いイソシアネート官能性をもたらす。本明細書で使用されるブロックト脂肪族イソシアネートについて、110~160℃の硬化温度は、ブロッキング剤を放出する。結果として生じるポリイソシアネートは、樹脂ブレンド中の活性ヒドロキシ含有化合物と反応することができる。
【0027】
典型的な脂肪族ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)である。
【0028】
典型的なブロッキング剤は、3,5-ジメチルピラゾール(DMP)、ジエチルマロネート(DEM)、ジイソプロピルアミン(DIPA)、1,2,4-トリアゾール(TRIA)及びメチルエチルケトン(MEKO)である。
【0029】
典型的なブロックト脂肪族ポリイソシアネートは、両方ともHDI及びIPDIを使用するDMPブロックトHDI、(DEM)/(DIPA)ブロックトHDI及びDEMブロックトポリイソシアネートである。H12MDIを使用するMEKOブロックトポリイソシアネートも使用することができる。
【0030】
一実施形態において、ブロックト脂肪族ポリイソシアネートは、ペースト組成物の総重量を基準として、ペースト組成物の約0.5重量%~約5重量%を占める。
【0031】
ある実施形態において、直鎖状脂肪族ポリエステルは、ペースト組成物の総重量を基準として、ペースト組成物の約1重量%~約5重量%を占める。一実施形態において、直鎖状脂肪族ポリエステルは、直鎖状脂肪族ポリカーボネートポリエステルである。
【0032】
ある実施形態において、ブロックコポリマーは、ペースト組成物の総重量を基準として、ペースト組成物の約1重量%~約5重量%を占める。一実施形態において、ブロックコポリマーは、末端第二級ヒドロキシ基を有する非イオン性の二官能性ブロックコポリマー界面活性剤である。
【0033】
湿潤剤及び分散剤は、TiO2及びBN粒子を安定させるために使用される。ある実施形態において、湿潤剤及び分散剤は、ペースト組成物の総重量を基準として、ペースト組成物の約0.1重量%~約0.5重量%を占める。
【0034】
溶媒:
1種以上の極性、非プロトン性溶媒が、ペースト組成物中に存在する。樹脂ブレンド及び1種以上の添加物は、1種以上の溶媒に溶解させられ、TiO2及びBN粉末は、1種以上の溶媒中に分散させられる。少量の追加の溶媒が、計量分配又は印刷向けに最終粘度を調整するためにペースト組成物に添加されてもよい。
【0035】
使用される典型的な溶媒は、ジプロピレングリコールメチルエーテル、2-ブトキシエタノール及びトリエチルホスフェートである。
【0036】
一実施形態において、溶媒は、ペースト組成物の総重量を基準として、ペースト組成物の約15重量%~約40重量%を占める。
【0037】
ポリマー厚膜誘電体ペースト組成物の調製
樹脂ブレンドは、溶媒中に分散させられるか、又は樹脂ブレンドを溶解させるために溶媒と混合される。それは、例えば、70℃に加熱し、樹脂を溶解させて有機媒体を形成するために撹拌することができる。樹脂ブレンドの部分は、異なる溶媒に又は同じ溶媒に溶解させて追加の有機媒体を形成することができる。或いはまた、単一の有機媒体を使用することができる。1種以上の添加物は、有機媒体の1つに添加され、混合される。TiO2及びBN粉末は、有機媒体の1つに添加され、混合される。TiO2及びBN粉末は、典型的には、各添加後に混合してより良好な湿潤を確実にしながら徐々に添加される。典型的には、BN粉末が先ず添加され、これにTiO2粉末が続いた。2種以上の有機媒体が調製されている場合には、媒体は、上記の工程のいずれかの後に組み合わせることができ、結果として生じたペースト組成物はミルにかけられる。溶媒は、ペースト組成物を計量分配する又は印刷する前に粘度を調整するために添加され得る。
【実施例】
【0038】
実施例1~4、比較実験A~B
実施例1~4の誘電体ペースト組成物は、以下のやり方で調製した。
【0039】
使用されるポリマー媒体は、以下の通りであった:
ポリマー媒体1(PM-1) - 30重量%のフェノキシ樹脂及びポリエステルポリオール(PKHM-301,Gabriel,Akron,OH)のブレンドを70重量%のジプロピレングリコールメチルエーテル(DowanolTM DPM,Dow Chemical Co.,Midland,MI)と混合することによって調製した。PKHM-301の製造業者は、それが334のヒドロキシ分(OH当量、g/当量)及び39,000ダルトンの分子量を有すると言っている。この混合物を加熱し、3時間又は樹脂が全て溶解するまで70~90℃で撹拌し、次いで室温に冷却した。
【0040】
ポリマー媒体2(PM-2) - 20重量%のフェノキシ樹脂(PKHH Gabriel,Akron,OH)を80重量%のジプロピレングリコールメチルエーテル(DowanolTM DPM,Dow Chemical Co.,Midland,MI)と混合することによって調製した。PKHHの製造業者は、それが280のヒドロキシ分(OH当量、g/当量)及び52,000ダルトンの分子量を有すると言っている。この混合物を加熱し、3時間又は樹脂が全て溶解するまで70~90℃で撹拌し、次いで室温に冷却した。
co
【0041】
ポリマー媒体4(PM-4) - 5重量%のフェノキシ樹脂(PKHH Gabriel,Akron,OH)及び20重量%の直鎖状ヒドロキシルポリウレタン(Desmocoll(登録商標)406,Covestro,Pittsburgh,PA)を75重量%のジプロピレングリコールメチルエーテル(DowanolTM DPM,Dow Chemical Co.,Midland,MI)と混合することによって調製した。Desmocoll(登録商標)406の製造業者は、このポリマーが主に直鎖状ヒドロキシルポリウレタンであると言っている。それは、低い結晶化率の可撓性ポリウレタンである。この混合物を加熱し、3時間又は樹脂が全て溶解するまで70~90℃で撹拌し、次いで室温に冷却した。
【0042】
ポリマー媒体5(PM-5) - 20.5重量%の直鎖状ヒドロキシルポリウレタン(Desmocoll(登録商標)530,Covestro,Pittsburgh,PA)を79.5重量%の二塩基性エステル(Flexisolv(登録商標)DBE(登録商標)-9 Esters,Invista,Wichita,KS)と混合することによって調製した。Desmocoll(登録商標)530の製造業者は、このポリマーが主に直鎖状ヒドロキシルポリウレタンであると言っている。それは、高い結晶化率及び非常に低い熱可塑性の可撓性ポリウレタンである。この混合物を加熱し、3時間又は樹脂が全て溶解するまで70~90℃で撹拌し、次いで室温に冷却した。
【0043】
ポリマー媒体6(PM-6) - 27重量%のフェノキシ樹脂(PKHH Gabriel,Akron,OH)及び73%の二塩基性エステル(Flexisolv(登録商標)DBE(登録商標)-9 Esters,Invista,Wichita,KS)を混合することによって調製した。この混合物を加熱し、3時間又は樹脂が全て溶解するまで70~90℃で撹拌し、次いで室温に冷却した。
【0044】
使用される添加物は、以下の通りであった:
A-1 - 直鎖状の脂肪族ポリカーボネートポリエステル(Desmophen(登録商標)C 1200,Covestro,Pittsburgh,PA)
A-2 - 末端第二級ヒドロキシル基を有する非イオン性の二官能性ブロックコポリマー界面活性剤(Pluronic(登録商標)31R1,BASF)
A-3 - ブロックト脂肪族H12MDI-ポリイソシアネート(Desmodur BL 5375,Covestro,Pittsburgh,PA)
A-4 - 湿潤剤及び分散剤(DISPERBYK-111,Palmerholland,North Olmsted,OH)
【0045】
使用される無機粉末は、以下の通りであった:
TiO2 - ルチル型二酸化チタン、およそ球形、平均粒径 約0.29μm(Ti-PureTM R-101,Chemours,Wilmington,DE)
BN - 窒化ホウ素板状六方晶構造粉末(CarboThermTM CTF10 Boron Nitride Powder,Saint-Gobain)
【0046】
使用される溶媒は、以下の通りであった:
S-1 - ジプロピレングリコールメチルエーテル(DowanolTM DPM,Dow Chemical Co.,Midland,MI)
S-2 - トリエチルホスフェート(TEP)(Eastman Chemical Co.,Kingsport,TN)
S-3 - 二塩基性エステル(DBE-9,Invista,Wichita,KS)
【0047】
表1の各サンプルについて必要量のポリマー媒体、添加物、及び溶媒を量り、次いで混合して有機ビヒクルを形成した。TiO2及びBN粉末を有機ビヒクルに添加し、更に混合してペースト組成物を形成した。これらの無機粉末を、各添加後に混合してより良好な湿潤を確実にしながら、徐々に添加した。典型的には、BNを先ず添加し、これにTiO2が続いた。
【0048】
前述の混合工程のそれぞれは、自転公転ミキサー中で実施され得るであろう。1000rpmで30秒運転されるThinky(登録商標)ミキサー(Thinky(登録商標)USA,Inc.,Laguna Hills,CAから入手可能な)が好適であった。十分に混合した後に、0から150psi(約1.04MPa)まで次第に増加する圧力で25μmギャップの3ロールミルにペースト組成物を繰り返し通した。好適なミルは、Charles Ross and Son,Hauppauge,NYから入手可能である。
【0049】
各ペースト組成物の分散度は、ASTM International,West Conshohocken,PAにより公表されており、参照により本明細書に援用される、ASTM標準試験方法D 1210-05に従って、市販の磨砕度(FOG)ゲージ(例えば、Precision Gage and Tool,Dayton,Ohioから入手可能なゲージ)を使用して測定され得る。得られるデータは、通常、検出される最も大きい粒子のサイズがXμmであり、メジアン径がYμmであることを意味する、X/Yとして表されるFOG値として表現される。ある実施形態において、本ペースト組成物のFOG値は、典型的には20/10以下であり、それは、典型的には良好な印刷性にとって十分であることが分かった。
【0050】
通常、処理されたペースト組成物は、計量分配、ステンシル又はスクリーン印刷に好適である粘度を得るために必要とされるような少量の溶媒を印刷前に添加することによって調整される。粘度値は、#14スピンドル及び#6カップのBrookfield粘度計(Brookfield,Inc.,Middleboro,MA)を用いて得られ得る。典型的には、約60~90Pa・s(10rpm/3分で測定される)の最終粘度が良好な計量分配印刷結果をもたらすことが分かり、25~70Pa・s(10rpm/3分で測定される)の最終粘度が良好なスクリーン印刷結果をもたらすことが分かるが、いくらかの変動、例えば±30Pa・s以上は、正確な印刷装置及びパラメータに依存して、許容されるであろう。
【0051】
実施例及び比較実験に使用される構成要素のそれぞれのグラム(g)単位での量を表Iに示す。
【0052】
【0053】
印刷特性化
表Iの実施例1~2及び比較実験A~Bの誘電体ペースト組成物の印刷性能を、以下の手順によって評価した。
1.Tekra製の20ミル厚さのポリカーボネートを、3×4インチサイズにカットし、Natgraphベルト乾燥機を通過させた。
2.第1銀導体(DuPontTM ME603,Silver Conductor,DuPont Co.,Wilmington,DE)に、80硬度計ダイヤモンドスキーギー及び325/1.1s/s(ステンレス鋼)メッシュスクリーンを用いて印刷し、これにNatgraphベルト乾燥機での乾燥が続いた。
3.60硬度計ダイヤモンドスキーギー及び280s/sメッシュスクリーンを用いて、順繰りに、実施例1~2及び比較実験A~Bの誘電体ペースト組成物を使用して2つの誘電体層を第1導体の上に印刷して複合誘電体を第1導体一面に形成した。各誘電体層を、印刷後にNatgraphベルト乾燥機で乾燥させた。
4.第2銀導体(DuPontTM ME603,Silver Conductor,DuPont Co.,Wilmington,DE)に、80硬度計ダイヤモンドスキーギー及び325/1.1s/s(ステンレス鋼)メッシュスクリーンを用いて複合誘電体層上で印刷し、これにNatgraphベルト乾燥機での乾燥が続いた。
5.手動マイクロメーターを用いて複合誘電体層の厚さを測定した。
6.HiPotテスターを用いて降伏電圧(BDV)を測定した。各サンプルについて8つのそのような測定値があった。
【0054】
このようにして測定されるような平均降伏電圧データ(kV/ミル)を、ピンホールの数に関する観察に沿って表IIに示す。
【0055】
【0056】
熱成形
表Iの実施例3~4及び比較実験Bの誘電体ペースト組成物の熱成形性能を、以下の手順によって評価した。
1.15ミル厚さのポリカーボネート(Makrofol Clear G/M,Covestro DE1-4)を、12×12インチサイズにカットし、Natgraphベルト乾燥機を通過させた。
2.第1銀導体(DuPontTM ME603,Silver Conductor,DuPont Co.,Wilmington,DE)に、80硬度計ダイヤモンドスキーギー及び325/1.1s/s(ステンレス鋼)メッシュスクリーンを用いて印刷し、これにNatgraphベルト乾燥機での乾燥が続いた。
3.60硬度計ダイヤモンドスキーギー及び280s/sメッシュスクリーンを用いて、順繰りに、実施例3~4及び比較実験Bの誘電体ペースト組成物を使用して2つの誘電体層を第1導体の上に印刷して複合誘電体を第1導体一面に形成した。各誘電体層を、印刷後にNatgraphベルト乾燥機で乾燥させた。
4.第2銀導体(DuPontTM ME603,Silver Conductor,DuPont Co.,Wilmington,DE)に、80硬度計ダイヤモンドスキーギー及び325/1.1s/s(ステンレス鋼)メッシュスクリーンを用いて複合誘電体層上で印刷し、これにNatgraphベルト乾燥機での乾燥が続いた。
5.印刷されたサンプルを、次いで、Formec Thermoforming Machineを用いて熱成形した。
6.HiPotテスターを用いて降伏電圧(BDV)を測定した。各サンプルについて49のそのような測定値があった。
【0057】
このようにして測定されるような平均降伏電圧データ(kV/ミル)を表IIIに示す。
【0058】
【0059】
表IIのBDVデータは、ポリオール及びフェノキシ樹脂の樹脂ブレンドと、可撓性ブロックコポリマー並びに湿潤剤及び分散剤の添加物の混合物とを含有する実施例1~2のペースト組成物で印刷された誘電体層が、ポリウレタン及びフェノキシ樹脂を含有するが、ポリオールを含有しない比較実験A~Bペーストで印刷された誘電体層よりも望ましくも高いBDVを示すことを明らかにする。表IIIのBDVは、ポリオール及びフェノキシ樹脂の樹脂ブレンドと、可撓性ポリエステル並びに湿潤剤及び分散剤の添加物の混合物とを含有する実施例3、並びにポリオール及びフェノキシ樹脂の樹脂ブレンドと、可撓性ポリエステル、ブロックト脂肪族ポリイソシアネート並びに湿潤剤及び分散剤の添加物の混合物とを含有する実施例4が、比較実験Bについて見出されたものとは対照的に良好な可撓性を示し、したがって熱成形後でさえも高いBDVを示すことを示す。