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特許7481271噴出ディスペンサの位置的制御システム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】噴出ディスペンサの位置的制御システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/26 20060101AFI20240501BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240501BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240501BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240501BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05C5/00 101
B05C11/10
G05B11/36 Q
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020572801
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 US2019038968
(87)【国際公開番号】W WO2020005929
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】62/689,694
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391019120
【氏名又は名称】ノードソン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】フェルバー アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー リチャード
(72)【発明者】
【氏名】デーリング フレデリック
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-526210(JP,A)
【文献】特表2019-523698(JP,A)
【文献】特開2016-098828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00-21/00
B05D1/00-7/26
G05B 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質をアプリケータから噴出させるための前記アプリケータの可動部品の動きを制御する方法であって、
ニードルに作動的に連結された圧電装置に電圧波形を提供することによって前記圧電装置を作動させて前記可動部品が第1の小出し操作で位置的経路に沿って並進するようにするステップを含み、
前記可動部品の位置をある期間にわたって検出するステップを含み、前記位置は、前記圧電装置に印加される前記電圧波形に対する前記可動部品の動的応答を示す前記可動部品の時間依存性位置的プロフィールを定め、
前記可動部品の検出された位置に基づいて、前記圧電装置に印加されるべき電圧波形に対する前記可動部品の動的応答のモデルを生成するステップを含み、
第2の小出し操作のためのパラメータを受け取るステップを含み、
前記第2の小出し操作のための前記パラメータに基づいて、前記第2の小出し操作に対する前記圧電装置の所望の動きを特徴付ける前記第2の小出し操作のための所望の位置的プロフィールを決定するステップを含み、
前記第2の小出し操作のための前記所望の位置的プロフィールを前記モデルに適用することによって前記圧電装置に印加されるべき所要の電圧波形を決定して前記第2の小出し操作を実行するステップを含み、
前記所要の電圧波形を前記圧電装置に印加して前記第2の小出し操作を実行するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記圧電装置に印加されるべき前記所要の電圧波形を決定して前記第2の小出し操作を実行する前記ステップは、前記第2の小出し操作に関する前記パラメータ及び複数の小出しサイクルの間、前記可動部品の前記検出位置に基づくパラメータに基づいている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記所要の電圧波形を印加する前記ステップは、一義的な電圧と時間の関係を有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記可動部品は、前記圧電装置に作動的に連結された増幅器、前記増幅器に作動的に連結されたプッシュロッド、又は前記ニードルである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ニードルの前記位置は、ホール効果センサを用いて検出される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記圧電装置に印加されるべき前記所要の電圧波形を決定して前記第2の小出し操作を実行する前記ステップは、前記第2の小出し操作において小出しされるべき前記物質のモデルパラメータを参照するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記第2の小出し操作の前記パラメータは、前記第2の小出し操作で小出しされるべき前記物質の種類又はサイズを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記所要の電圧波形の形状は、台形である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記圧電装置を作動させる前記ステップは、前記圧電装置の動きを増幅させるステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記モデルは、最良適合モデルである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記モデルは、複数の小出し操作を含むある期間にわたる前記可動部品の検出された位置に基づいて生成される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
可動部品の動きをアクチュエータに印加される電圧に関連させる方法であって、
電圧波形を前記可動部品に作動的に連結された圧電装置に提供して前記可動部品が小出し操作において位置的経路に沿って並進するようにするステップを含み、
前記小出し操作中における前記可動部品の位置を検出するステップを含み、前記位置は、前記圧電装置に印加される前記電圧波形に対する前記可動部品の動的応答を示す前記可動部品の時間依存性位置的プロフィールを定め、
前記可動部品の検出された位置に基づいて、前記可動部品の前記動的応答のモデルを前記圧電装置に印加された前記電圧波形に生成するステップを含む、方法。
【請求項13】
前記可動部品は、前記圧電装置に作動的に連結された増幅器、前記増幅器に作動的に連結されたプッシュロッド、又は前記プッシュロッドに作動的に連結されたニードルである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記モデルは、最良適合モデルに従って決定される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記可動部品の前記位置を検出する前記ステップは、ホール効果センサを用いて実施される、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記小出し操作中、所定間隔で前記可動部品の前記位置をモニタするステップをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
所望の小出し操作のパラメータを受けるステップと、
前記所望の小出し操作のパラメータに基づいて前記可動部品の動きを特徴付ける第2の小出し操作のための所望の位置的プロフィールを前記第2の小出し操作のパラメータに基づいて決定するステップとをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記所望の位置的プロフィールを決定する前記ステップは、前記圧電装置に印加された前記電圧波形と前記可動部品の前記時間依存性位置的プロフィールを関係付ける噴出されるべき物質のパラメータを参照するステップを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
物質を噴出させるアプリケータであって、前記アプリケータは、
弁を有し、前記弁は、弁座及び前記弁から物質を噴出させるために小出し操作の際に第1の位置と第2の位置との間で並進するよう構成されたニードルを有し、
電圧波形の受け取りに応じて前記ニードルを動かす圧電装置を有し、
前記圧電装置と前記ニードルとの間に作動的に連結された増幅器を有し、
可動部品の位置をモニタする位置センサを有し、前記位置は、前記圧電装置に印加される前記電圧波形に対する前記可動部品の動的応答を示す前記可動部品の時間依存性位置的プロフィールを定め、前記可動部品は、前記ニードル、前記増幅器、又は前記増幅器に作動的に連結されたプッシュロッドを含み、
前記圧電装置及び前記位置センサと電気的連絡状態にあるコントローラを有し、前記コントローラは、前記可動部品の検出された位置に基づいて、前記可動部品の前記動的応答のモデルを前記圧電装置に印加された前記電圧波形に生成するように構成され、
前記圧電装置に印加されるべき所望の電圧波形を決定し、前記小出し操作のための所望の位置的プロフィールを前記モデルに適用することにより小出し操作を実行するように構成されている、アプリケータ。
【請求項20】
前記可動部品に作動的に連結された磁石をさらに有し、前記位置センサは、ホール効果センサである、請求項19記載のアプリケータ。
【請求項21】
前記増幅器は、実質的に丸い断面を有するディスクである、請求項19記載のアプリケータ。
【請求項22】
前記増幅器は、レバーである、請求項19記載のアプリケータ。
【請求項23】
前記ニードルは、前記第1の位置において前記弁座から間隔を置いて位置し、前記ニードルは、前記第2の位置において前記弁座に接触する、請求項19記載のアプリケータ。
【請求項24】
前記ニードルは、前記第1の位置において前記弁座から第1の距離だけ間隔を置いて位置し、かつ前記第2の位置において前記弁座から第2の距離だけ間隔を置いて位置し、前記第2の距離は、前記第1の距離よりも短い、請求項19記載のアプリケータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容、すなわち本発明は、一般に、噴出(ジェッティング)システムに関し、特に、噴出システム内におけるニードルの位置を制御するための閉ループフィードバック制御に関する。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本願は、2018年6月25日に出願された米国特許仮出願第62/689,694号の権益主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その開示内容を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
流動物、例えば接着剤、はんだペースト、共形被膜(コンフォーマルコーティング)、封入剤、アンダーフィル材料、及び表面実装接着剤を噴出させる公知の噴出システムは、一般に、ニードルを往復動作させることによって少量の流動物を基材上に噴出させるよう働く。ニードルを作動させる一方法は、圧電装置によってであり、この圧電装置は、高レベルの制御及び操作の変化に対する迅速な応答を提供する。噴出操作中、各下降ストローク時、ニードルは、弁座に接触して少量の物質を噴出システムのノズルから噴出させる明確な高圧パルスを生じさせる。ニードルの往復動は、特定の目的に合った規定の寸法形状特性を有する物質の噴出ドットを維持するために正確でなければならない。
【0004】
首尾一貫した往復ニードル運動を経時的に維持することは、特定の噴出作業と小出しされた物質、及び噴出システムの各組み合わせが特有のニードル運動パターンを必要とする場合があるので困難であると言える。幾つかの場合、物質の噴出ドットの寸法形状は、意図した値から経時的に外れる場合がある。これは、一つには物質摩耗、環境上の変化、部品許容誤差、部品交換などに起因している場合がある。これらの変化を考慮に入れることなしに、望ましくない流体パターンを適用する場合があり、それにより望ましくない最終製品が生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その結果、噴出物質の首尾一貫したドット寸法形状を提供するためにニードルストロークの動的補正を許容するシステムが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、物質をアプリケータから噴出させるためのアプリケータの可動部品の動きを制御する方法である。本方法は、ニードルに作動的に連結された圧電装置に電圧波形を提供することによって圧電装置を作動させて可動部品が第1の小出し操作で位置的経路に沿って並進するようにするステップを含む。本方法は、可動部品の位置をある期間にわたって検出するステップをさらに含み、かかる位置は、可動部品の時間依存性位置的プロフィールを定め、本方法は、第2の小出し操作のためのパラメータを受け取るステップと、第2の小出し操作に関するパラメータ及び可動部品の時間依存性位置的プロフィールに基づくパラメータに基づいて、圧電装置に印加されるべき所要の電圧波形を決定して第2の小出し操作を実行するステップとをさらに含む。本方法は、所要の電圧波形を圧電装置に印加して第2の小出し操作を実行するステップをさらに含む。
【0007】
本発明の別の実施形態は、可動部品の動きをアクチュエータに印加される電圧に関連させる方法である。本方法は、電圧波形を可動部品に作動的に連結された圧電装置に提供して可動部品が小出し操作において位置的経路に沿って並進するようにするステップと、小出し操作中における可動部品の位置を検出するステップとを含み、かかる位置は、可動部品の時間依存性位置的プロフィールを定める。本方法は、可動部品の時間依存性位置的プロフィールと圧電装置に印加された電圧波形との関係を生成するステップをさらに含む。
【0008】
本発明の別の実施形態は、物質を噴出させるアプリケータである。アプリケータは、弁を有し、弁は、弁座及び弁から物質を噴出させるために小出し操作の際に第1の位置と第2の位置との間で並進するよう構成されたニードルを有する。アプリケータは、電圧の受け取りに応じてニードルを動かす圧電装置と、圧電装置とニードルとの間に作動的に連結された増幅器と、可動部品の位置をモニタする位置センサとを有し、かかる位置は、可動部品の時間依存性位置的プロフィールを定め、可動部品は、ニードル、増幅器、又は増幅器に作動的に連結されたプッシュロッドを含む。アプリケータは、圧電装置及び位置センサと電気的連絡状態にあるコントローラをさらに有し、コントローラは、可動部品の時間依存性位置的プロフィールと圧電装置に印加された電圧波形との関係を定めるよう構成されている。
【0009】
上記概要説明並びに以下の詳細な説明は、添付の図面と関連して読まれると、良好に理解されよう。図面は、本発明の例示の実施形態を示している。しかしながら、理解されるべきこととして、本願は、図示の配置及び構成そのものには限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の例示の実施形態に係るアプリケータの斜視図である。
図2図1の2‐2線に沿って取った図1に示されているアプリケータの断面図である。
図2A図2に示されたアプリケータの弁組立体の拡大断面図であり、ニードルを第1の位置で示す図である。
図2B図2Aに示された弁組立体の拡大断面図であり、ニードルが第2の位置にある状態を示す図である。
図3図1に示されたアプリケータの圧電装置の部分分解組立斜視図である。
図4図3に示された圧電装置の斜視図であり、ある特定の要素が内部の内側の細部を良好に示すために破線で示されている状態を示す図である。
図5図3に示された圧電装置の下側部分の側面図である。
図6】本発明の変形実施形態に係るアプリケータの等角図である。
図7図6の7‐7線に沿って取った図6に示されているアプリケータの一部分の断面図である。
図8図7に示されたアプリケータの断面図の拡大部分図である。
図9A図6に示されたアプリケータの弁組立体の断面図の拡大部分図であり、ニードルが第1の位置にある状態を示す図である。
図9B図9Aに示された弁組立体の拡大断面図であり、ニードルが第2の位置にある状態を示す図である。
図10図9Aに示された弁組立体の機械式増幅器の等角図である。
図11図10に示された機械式増幅器の別の等角図である。
図12図10に示された機械式増幅器の断面図であり、機械式増幅器が非変形形態にある状態を示す図である。
図13図10に示された機械式増幅器の断面図であり、機械式増幅器が変形後の形態にある状態を示す図である。
図14図10に示された機械式増幅器の断面図であり、弁組立体が別の位置にある状態を示す図である。
図15】本発明の実施形態に係るアプリケータの可動部品の動きを制御する方法のプロセス流れ図である。
図16A】経時的な所望の可動部品軌道及び本発明の実施形態に従って生じた実際の可動部品軌道を示すグラフ図である。
図16B図16Aに示された実際の可動部品軌道を生じさせるために本発明の実施形態に従って生じた電圧波形を示すグラフ図である。
図17A】従来型開ループシステムを用いて生じた実際の可動部品軌道を示すグラフ図である。
図17B図17Aに示された実際の可動部品軌道を生じさせるために用いられた電圧波形を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1図4を参照すると、本発明の実施形態に係るアプリケータ10が主要構成要素として、コントローラ14に結合された噴出(ジェッティング)ディスペンサ12を有する。噴出ディスペンサ12は、アクチュエータハウジング18に結合された流体本体16を有する。具体的に説明すると、流体本体16は、流体本体ハウジング19内に保持され、この流体本体ハウジングは、噴出操作の必要性に応じて、1つ又は2つ以上の加熱器(図示せず)を有するのが良い。流体本体16は、適当な物質供給源20、例えば注射器筒(図示せず)から圧力下で物質を受け入れる。弁組立体22がハウジング18に結合されており、この弁組立体は、流体本体16中に延びている。機械式増幅器(例えば、レバー24)が圧電装置26と弁組立体22との間に結合され、これについては以下にさらに説明する。
【0012】
圧電装置26を冷却する目的で、空気が源27から入口ポート28中に導入され、そして排気ポート30から排出されるのが良い。変形例として、冷却の必要性に応じて、入口ポート28と排気ポート30の両方は、図2に示されているように源27から冷却用空気を受け入れても良い。かかる場合、1つ又は2つ以上の他の排気ポート(図示せず)がハウジング18に設けられる。温度及びサイクル制御部36が噴出操作中に圧電装置26をサイクル動作させるとともに小出しされた物質を所望の温度に維持するために噴出ディスペンサ12によって指示された1つ又は2つ以上の加熱器(図示せず)を制御するために設けられている。もう1つのオプションとして、温度及びサイクル制御部36、又は別の制御部が閉ループ方式で圧電装置26の冷却の必要性を制御することができる。さらに図4に示されているように、圧電装置26は、圧電素子のスタック40をさらに有する。このスタック40は、スタック40の互いに反対側の側部に結合されたそれぞれの扁平な圧縮ばね要素42,44によって圧縮状態に維持されている。具体的に説明すると、扁平なばね要素42,44を圧電素子のスタック40がこれらばね要素相互間に位置した状態で互いに保持する上側及び下側ピン46,48が設けられている。上側ピン46は、圧電装置26の上側アクチュエータ部分26a内に保持され、下側ピン48は、スタック40の下端部に直接的に又は間接的に係合している。上側アクチュエータ部分26aは、圧電素子のスタック40を固定的に収容し、その結果、スタック40は、何らかの側方の動きを生じないよう安定化されている。この実施形態では、下側ピン48は、下側アクチュエータ部分26b、より具体的に言えば、機械式アーマチュア50(図2)に結合されている。
【0013】
機械式アーマチュア50の上面50aは、圧電スタック40の下端部に当接している。ばね要素42,44は、ピン46,48相互間に引き延ばされており、その結果、ばね要素42,44は、図4の矢印53によって示されているように一定の圧縮力をスタック40に及ぼすようになっている。扁平なばね要素42,44は、より具体的に言えば、ワイヤEDMプロセスから形成されるのが良い。圧電素子スタック40の上端部は、上側アクチュエータ部分26aの内面に当たった状態で保持されている。したがって、上側ピン46は、静止状態にあり、他方、下側ピン48がばね要素42,44及び機械式アーマチュア50と一緒に浮動し又は動き、これについては後述する。圧電波形が圧電スタック40に印加されると、スタック40は、膨張し又は長くなり、これにより、アーマチュア50がばね要素42,44の力に抗して下方に動く。スタック40は、印加された電圧波形の大きさに比例して経時的に長さを変える。
【0014】
さらに図2に示されているように、機械式アーマチュア50は、機械式増幅器に作動的に結合され、この機械式増幅器は、この例示の実施形態では、全体として第1の端部24aのところが機械式アーマチュア50に結合されかつ第2の端部24bのところがプッシュロッド68に結合されたレバー24として形成されている。レバー24は、例えばEDMプロセスにより下側アクチュエータ部分26bから一体に形成されるのが良く、このEDMプロセスはまた、機械式アーマチュア50とレバー24との間に一連のスロット56を形成する。以下にさらに説明するように、レバー24又は別の機械式増幅器は、スタック40が膨張し又は長くなる距離を所望の量だけ増幅する。例えば、この実施形態では、スタック40及び機械式アーマチュア50の下方の動き又は運動距離は、レバー24の第2の端部24bのところで約8倍に増幅される。
【0015】
いま、特に図2図2A図2B及び図5を参照すると、屈曲部分60がレバー24を機械式アーマチュア50に結合している。図5に最も良く示されているように、レバー24は、レバー24の第2の端部24bとほぼ同一の水平高さ位置のところにあるピボット点62回りに回動する。ピボット点62のこの位置は、レバー24の回転円弧の作用を最小限に抑えるのに役立つ。下側アクチュエータ部分26bに形成された一連のスロット56は、屈曲部分60を形成している。圧電スタック40が図5の矢印66によって示されているようにコントローラ14によって電圧波形の印加の影響を受けた状態で長くなると、レバー24は、スタック40が機械式アーマチュア50を押し下げているときにピボット点62回りに全体的に時計回りに回転する。レバー24の僅かな回転が屈曲部分60によって印加される弾性付勢力に抗して起こる。第2の端部24bがピボット点62回りに僅かに時計回りの方向に回転しているとき、この第2の端部は、下方に動き、同様に図5の矢印67によって指示されているように、取り付け状態のプッシュロッド68を下方に動かす(図2)。
【0016】
コントローラ14は、本明細書において説明するようにアプリケータ10の種々の作動をモニタするとともに制御するためのソフトウェアアプリケーションをホストとして処理するよう構成された任意適当なコンピュータ計算装置を有するのが良い。理解されるように、コントローラ14は、任意適当なコンピュータ計算装置を含むことができ、かかるコンピュータ計算装置の例示としては、プロセッサ、デスクトップ型コンピュータ計算装置、サーバコンピュータ計算装置、又は携帯型コンピュータ計算装置、例えばラップトップ、タブレット、又はスマートホンが挙げられる。具体的に説明すると、コントローラ14は、メモリ15及びHMIデバイス17を有するのが良い。メモリ15は、揮発性(例えば、幾つかの形式のRAM)、不揮発性(例えば、ROM、フラッシュメモリなど)、又はこれらの組み合わせであるのが良い。コントローラ14は、追加の記憶装置(例えば、リムーバブル記憶装置及び/又は取り外しができない記憶装置)を有するのが良く、かかる追加の記憶装置としては、テープ、フラッシュメモリ、スマートカード、CD‐ROM、ディジタル多用途ディスク(DVD)又は他の光記憶装置、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置、ユニバーサル・シリアス・バス(USB)準拠メモリ、又は情報を記憶するために使用できるとともにコントローラ14によってアクセス可能な任意他の媒体が挙げられるが、これらには限定されない。HMIデバイス17は、例えばボタン、ソフトキー、マウス、音声作動式制御部、タッチスクリーン、コントローラ14の運動、ビジュアルキュー(例えば、コントローラ14に設けられたカメラの前での手の動き)などによりコントローラ14を制御することができる能力を提供する入力を有するのが良い。HMIデバイス17は、グラフィカル・ユーザ・インターフェースを介して出力を提供することができ、かかるグラフィカル・ユーザ・インターフェースは、視覚的情報、例えばニードル76の現在の位置及び速度の値の視覚表示並びにディスプレイを介するこれらパラメータの許容範囲を含む。他の出力は、聴覚情報(例えば、スピーカを介する)、機械的情報(例えば、振動機構体を介する)、又はこれらの組み合わせを含むのが良い。種々の構成例では、HMIデバイス17は、ディスプレイ、タッチスクリーン、キーボード、マウス、運動検出器、スピーカ、マイクロホン、カメラ、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。HMIデバイス17は、バイオメトリック情報、例えば指紋情報、網膜情報、音声情報、及び/又は顔の特徴に関する情報を入力してコントローラ14にアクセスするための特定のバイオメトリック情報を必要とする任意適当な装置をさらに含むのが良い。
【0017】
レバー24の第2の端部24bは、適当なねじ山付き締結具(ねじ部品)70,72を用いてプッシュロッド68に固定されている。プッシュロッド68は、案内ブッシュ74内で移動して弁組立体22のニードル76の上側頭部分76aに当接する下側頭部分68aを有する。案内ブッシュ74は、図2A及び図2Bで最も良く分かるようにピン75との圧力嵌めによってハウジング18内に保持されている。プッシュロッド68、案内ブッシュ74及びピン75から成る組立体は、作動中におけるプッシュロッド68の適正な動きを保証するための幾分かの「屈従性(give)」を考慮に入れている。加うるに、プッシュロッド68は、ニードル76及びレバー24と一緒のその往復運動中に、弾性的に側方に僅かに曲がる材料で作られている。弁組立体22は、環状要素80を用いてアクチュエータハウジング18の下側部分内に設けられたコイルばね78をさらに含む。弁組立体22は、Oリング84によって流体本体16内に保持されたインサート82をさらに含む。環状要素80及びインサート82は、この実施形態では、一体形要素、すなわちカートリッジ本体を有する。十字穿孔ウィープホール85がOリング86を越えて漏れる液体がどのようなものであってもこれが逃げることができるようにするためにばね78の下端部とほぼ一線をなしている。追加のOリング86がタペット又はニードル76を封止し、その結果、流体本体16の流体ボア88内に収容された加圧物質が漏れ出ることがないようになっている。物質が流体本体16の入口90及び通路92,94を通って流体供給源20から流体ボア88に供給される。Oリング84は、ボア88及び通路94内の加圧液体から見て環状要素80及びインサート82によって形成されたカートリッジ本体の外側を封止する。流体通路92,94は、流体本体16にねじ込まれたプラグ部材95によって封止されている。プラグ部材95は、内部通路94のクリーニングのために接近可能であるよう取り外し可能であるのが良い。
【0018】
図2及び図3図5を参照すると、アプリケータ10は、第2の端部24bの近くでレバー24に取り付けられた基準コンポーネント69並びにアクチュエータハウジング18内に設けられた位置センサ71を有するのが良い。位置センサ71は、レバー24が圧電スタック40の伸長及び収縮時に回動しているときに基準コンポーネント69の位置を検出するとともにモニタするよう構成されている。位置センサ71は、コントローラ14と電子連絡状態にあり、この位置センサは、基準コンポーネント69の位置を連続的に又は定期的にモニタしてこれをコントローラ14に伝えることができる。基準コンポーネント69の位置をモニタすることによって、位置センサ71はまた、小出し操作中に基準コンポーネント69が取り付けられたレバー24の位置をモニタする。一実施形態では、基準コンポーネント69は、磁石であり、位置センサ71は、ホール効果センサであり、ただし、他の構成もまた想定される。また、基準コンポーネント69は、レバー24に取り付けられるものとして図示されているが、基準コンポーネント69は、レバー24、プッシュロッド68、又はニードル76の任意のものに取り付け可能である。レバー24、プッシュロッド68、ニードル76をひとまとめにアクチュエータの「可動部品」と言う場合がある。基準コンポーネント69を異なって位置決めすることができるので、位置センサ71は、同様に、基準コンポーネント69の位置を最も良くモニタするようアクチュエータハウジング18内に再位置決め可能である。位置センサ71及び基準コンポーネント69を用いてアプリケータ10を制御する方法について以下にさらに説明する。
【0019】
液滴状態の又は少量の物質を噴出させるアプリケータ10の作動は、図2図4を再検討することによって最も良く理解される。図2Aは、圧電スタック40への電圧波形が十分に除かれたときに引っ込み状態の第1の位置に上昇させられたニードル76を示している。これにより、スタック40が収縮する。スタック40が収縮しているときに、扁平なばね要素42,44は、アーマチュア50を上方に引き、そしてこれにより、レバー24の第2の端部24bが持ち上げられるとともにプッシュロッド68が持ち上げられる。かくして、この場合、弁組立体22のコイルばね78は、ニードル76の上側頭部分76aを上方に押してニードル76の遠位端部76bを上昇させてこれを流体本体16に取り付けられている弁座96から離すことができる。この位置では、流体ボア88及びニードル76の遠位端部76bの下に位置する領域は、噴出ディスペンサ12を「チャージ」するよう追加の物質で一杯になり、そして次の噴出サイクルのために噴出ディスペンサ12を準備する。
【0020】
圧電スタック40を作動させると、すなわち、電圧波形をコントローラ14によって圧電スタック40に印加すると(図1)、スタック40は、膨張して機械式アーマチュア50に押し当たる。これにより、レバー24が時計回りに回転するとともに第2の端部24bが下方に動き、さらにプッシュロッド68が下方に動く。プッシュロッド68の下側頭部分68aは、図2Bに示されているようにニードル76の上側頭部分76aを押し下げ、ニードル76は、コイルばね78の力に抗して迅速に下方に動き、ついには、遠位端部76bが第2の位置において弁座96に係合する。運動のプロセスの際、ニードル76の遠位端部76bは、物質の液滴97を排出出口98から押し出す。次に、電圧を圧電スタック40から除き、すると、これにより、これらコンポーネントの各々の運動が反転して次の噴出サイクルのためにニードル76を上昇させる。幾つかの実施形態では、ニードル76は、コイルばね78の力に抗して迅速に下方に動くことができ、ついには、遠位端部76bは、第2の位置において弁座96の近くに来るが、これには接触せず、それにより物質の液滴97を排出出口98から押し出す。ニードル76の遠位端部76bを弁座96に接触させない場合の利益は、アプリケータ10の小出し特性を変更する仕方でこれらコンポーネントのうちのいずれか一方又は両方に対する摩耗又は損傷を阻止することにある。
【0021】
圧電装置26を逆向きに利用しても液滴を噴出させることができるということは理解されよう。この場合、レバー24を含む種々の機械式作動構造体を上記とは異なる設計にして、電圧が圧電スタック40から除かれたときのスタック40の結果としての収縮により生じる弁座96及び排出出口104に向かうニードル76の動きが物質の液滴97を排出させるようにする。次に、スタック40への電圧波形の印加時点、増幅システム及び他の作動コンポーネントは、流体ボア88に次の噴出操作のための追加の物質をチャージするためにニードル76を上昇させる。この実施形態では、ニードル76は、常態では閉じられ、すなわち、このニードルは、圧電スタック40に電圧が印加されない場合には弁座96に係合していることになる。
【0022】
さらに図2に示されているように、上側アクチュエータ部分26aは、下側アクチュエータ部分26bとは別体であり、これらの部分26a,26bはそれぞれ、互いに異なる材料で作られている。具体的に言えば、上側アクチュエータ26aは、下側アクチュエータ部分26bを形成している材料よりも小さい熱膨張率の材料で作られている。上側及び下側アクチュエータ部分26a,26bは各々、下側アクチュエータ部分26bから上側アクチュエータ部分26a中に延びているねじ山付き締結具(図示せず)を用いて互いにしっかりと締結されている。次に、上側及び下側アクチュエータ部分26a,26bの組立体を複数のボルト99によってハウジングに締結する。より具体的には、下側アクチュエータ部分26bは、PH17‐4ステンレス鋼で作られるのが良く、上側アクチュエータ部分26aは、ニッケル‐鉄合金、例えば、インバール(Invar)で作られるのが良い。17‐4PHステンレス鋼は、屈曲部分60の寿命を延ばす極めて高い耐久限度又は疲労強度を有する。このステンレス鋼の熱膨張率は、約10μm/m‐Cであり、インバールの熱膨張率は、約1μm/m‐Cである。熱膨張率の比は、これら材料とほぼ10対1の比よりも高い場合があり又は低い場合がある。上側及び下側アクチュエータ部分26a,26bと関連した熱膨張率は互いに相殺する特性を提供すると効果的である。それにより、上側及び下側アクチュエータ部分26a,26bの互いに異なる熱膨張率により、圧電アクチュエータ26は、広い温度範囲にわたって首尾一貫して働くことができる。具体的には、この温度範囲は、圧電アクチュエータ26を高い周波数でかつよりアグレッシブな波形を持った状態で稼働させることができる。また、圧電スタックは、高いデューティサイクルでの動作時に、相当な熱を発生させることができる。インバールの使用により、圧電アクチュエータ26の端部のより絶対的な位置決めが可能であり、それゆえより正確かつ使用可能なストロークが得られる。
【0023】
図6図14を参照すると、物質を基材上に噴出させるアプリケータの別の実施形態が示されている。アプリケータ100は、アクチュエータハウジング118に結合された流体本体116を有する状態で示されている。流体本体116は、流体本体ハウジング119内に保持され、この流体本体ハウジングは、用途の必要性に応じて1つ又は2つ以上の加熱器(図示せず)を備えることができる。流体本体116は、適当な物質供給源120、例えば注射器筒から圧力下で物質を受け入れるよう構成されている。弁組立体122がハウジング118に結合されており、この弁組立体は、流体本体116中に延びている。機械式増幅器206が圧電装置126と弁組立体122との間に結合されており、これについては以下にさらに説明する。圧電装置126は、複数のボルト(図示せず)又は他の適当な締結具によってアクチュエータハウジング118に締結されるのが良い。圧電装置126は、種々の材料で構成でき、かかる材料としては、例えば、ステンレス鋼又はニッケル‐鉄合金が挙げられるが、これらには限定されない。
【0024】
さらに、図7及び図8に示されているように、圧電装置126は、圧電素子のスタック140、近位端部218、及び近位端部218と反対側の遠位端部220を有する。圧電素子は、電圧波形の印加時及び/又はその除去時に変形するよう構成されている。このスタック140は、圧電装置126に結合された圧縮ばね144によって圧縮状態に維持されている。
【0025】
スタック140は、遠位端部220のところの圧縮ばね144と例えばハウジング18の内面に当たっている硬質の表面(図示せず)との間に圧縮状態で保持されるのが良い。硬質表面は、近位端部218に接触するのが良い。幾つかの観点では、スタック140は、複数の圧縮ばね144、例えば近位端部218のところの第1の圧縮ばね144と遠位端部220のところの第2の圧縮ばね144によって保持されるのが良い。
【0026】
圧電装置126は、プッシュロッド168に作動的に係合し、この圧電装置は、プッシュロッド168を第1の方向に動かすよう構成されている。図9A及び図9Bを参照すると、プッシュロッド168は、案内ブッシュ174で移動して弁組立体122と関連したニードル176の近位端部176aに当接する下側頭部分168aを有し、ニードル176は、可動シャフトであるのが良い。案内ブッシュ174は、ピン175との圧力嵌めによってアクチュエータハウジング118内に保持されるのが良い。プッシュロッド168、案内ブッシュ174及びピン175から成る組立体は、作動中におけるプッシュロッド168の適正な動きを保証するための幾分かの「屈従性(give)」を考慮に入れている。
【0027】
弁組立体122は、環状要素180を用いてアクチュエータハウジング118の下側部分内に設けられたコイルばね178をさらに含むのが良い。インサート182がOリング184によって流体本体116内に保持されるのが良い。環状要素180及びインサート182は、図示の観点では、一体形要素、すなわちカートリッジ本体を有する。
【0028】
追加のOリング186がニードル176を封止し、その結果、流体本体116の流体ボア188内に収容された加圧物質が漏れ出ることがないようになっている。物質が流体本体116の入口190及び通路192,194を通って流体供給源120から流体ボア188に供給される。Oリング184は、ボア188及び通路194内の加圧液体から見て環状要素180及びインサート182によって形成されたカートリッジ本体の外側を封止する。十字穿孔ウィープホール185がOリング186を越えて漏れる液体があったとしてもこれが逃げることができるようにするためにコイルばね178の下端部とほぼ一線をなしている。
【0029】
電圧波形がスタック140に印加されると、圧電素子を変形し、スタック140が膨張し又は長くなり、それにより遠位端部220は、ばね144によって及ぼされている力に抗して近位端部218から遠ざかる方向に動く。スタック140は、経時的にスタック140に印加された電圧波形の大きさに比例して長さを変化させるよう構成されているのが良い。印加された電圧が除かれ又は十分に減少すると、スタック140は、電圧の印加前におけるスタックの長さと実質的に同一の長さまで収縮し又は短くなる。
【0030】
スタック140の動きにより、圧電装置126に作動的に結合されているプッシュロッド168が動く。プッシュロッド168は、弁組立体122に設けられたニードル176に作動的に結合されるのが良い。プッシュロッド168を動かしているとき、ニードル176もまた動いて弁組立体122に設けられている排出出口204を開閉する。スタック140の動きの繰り返しの結果として、ニードル176の往復動が生じるとともに液滴状態又は少量の物質がアプリケータ100の排出出口204を通って小出しされ又は噴出する。幾つかの実施形態では、ニードル176は、ニードル176が排出出口204の近くに至るがこれに接触しないところまで迅速に下方に動くことができる。
【0031】
再び図7及び図8を参照すると、機械式増幅器206がスタック140の動きを比例的に増幅させるようアプリケータ100内に設けられるのが良い。増幅器206は、スタック140及び弁組立体122に結合され、その結果、スタック140の動きにより、増幅器206の少なくとも一部分が動き、それによりニードル176が動く。電圧波形がスタック140に印加されると、スタック140の動きにより、力が増幅器206に及ぼされるとともに増幅器206が同様に動くとともにニードル176を動かす。理解されるように、元々の動きの量の増幅が所望される場合、増幅器206によりニードル176の動きの大きさは、スタック140の動きの大きさよりも大きいであろう。
【0032】
図10及び図11を参照すると、増幅器206は、実質的に丸い断面を備えたディスクであるのが良い。しかしながら、理解されるように、増幅器206は、任意適当な形状のものであって良く、例えば、長方形、三角形、又は別の多角形断面形状を有することができる。
【0033】
増幅器206は、アプリケータ100と一体であっても良く、単一の一体形コンポーネントのいずれか一方の部分であって良く、あるいはアプリケータ100に取り付けられた別個のコンポーネントであっても良い。幾つかの観点では、増幅器206は、アプリケータ100に取り外し可能に結合されかつスタック140及び弁組立体122と選択的に係合し又はこれから外されるよう構成された別個のコンポーネントであるのが良い。アプリケータ100は、増幅器を係合させた状態で又は増幅器を係合させない状態のいずれかで働くよう構成可能である。幾つかの観点では、アプリケータ100は、選択的に係合し又は外されてその結果として様々な増幅度を提供することができる複数の増幅器206を有するのが良い。アプリケータ100は、多数の増幅器206に同時に係合させた状態で働くよう構成可能である。幾つかの観点では、増幅器206は、異なる増幅度を結果的にもたらすよう別の増幅器206と交換可能であるのが良い。
【0034】
依然として図10及び図11を参照すると、増幅器206は、本体208を有し、本体208は、一次的表面210及び一次的表面210と反対側の二次的表面212を有する。本体208は、力を加えると変形させることができる変形可能な材料から成るのが良い。変形可能な材料は、変形を生じさせる力を減少させ又は除いたときに本体208が実質的にその非変形状態に戻るよう十分に弾性であるべきである。本体208は、スタック140から力を受け取るとともに損傷を受けないで(例えば、亀裂又は破断を)生じさせない及び力をニードル176に加えるのに足るほど剛性であるべきである。理解されるように、完全に弾力的でありかつ無限に耐久性のある材料は存在せず、当業者であれば、所望の機能を適当な度合いまで実行する材料を認識するであろう。
【0035】
増幅器206は、本体208を貫通して一次的表面210を二次的表面212に連結する開口部214を有するのが良い。中心軸線Aが開口部214の幾何学的中心を貫通している。中心軸線Aはまた、スタック140及びプッシュロッド168の中心線と共通しているのが良い。幾つかの観点では、1つ又は2つ以上のローブ216が本体208の周囲から中心軸線Aに向かって開口部214中に半径方向内方に延びるのが良い。ローブ216は、増幅器206が変形形態にはない場合に中心軸線Aに実質的に垂直であるのが良い。増幅器206は、2つ、3つ、・・・10個、又は別の適当な数のローブを有することができる。変形例として、増幅器206は、本体208から延びるローブを備えていなくても良く、かかる増幅器は、ドーナツの形をしていても良い。
【0036】
増幅器206は、プッシュロッド168に作動的に結合されるのが良く、その結果、増幅器206を動かすと、プッシュロッド168もまた動くようになっている。理解されるように、プッシュロッド168は、任意適当な仕方で、例えば摩擦嵌めにより、接着剤を用いて、締結具を用いるなどして増幅器206に結合されるのが良い。変形例として、プッシュロッド168は、増幅器206と一体に形成されても良い。図11に示された諸観点を参照すると、プッシュロッド168は、増幅器本体208の開口部214を貫通するのが良い。かかる観点では、プッシュロッド168の少なくとも一部分は、これが開口部214を自由に貫通することができるような寸法形状のものであるべきである。プッシュロッド168の上側頭部分168bは、例えば一次的表面210のところで増幅器206に接触するのが良い。上側頭部分168bは、これが開口部214を貫通することがないよう開口部214よりも大きな寸法及び形状のものであるのが良い。幾つかの観点では、増幅器206を変形させる場合、開口部214は、増幅器206を変形させない場合の開口部よりも大きいのが良い。かかる観点では、上側頭部分168bは、同様に変形後の増幅器206の開口部214よりも大きいように寸法決めされるべきである。
【0037】
上側頭部分168bは、開口部214を貫通するよう構成されたプッシュロッド168の部分に一体的に取り付けられている。増幅器206は、力を上側頭部分168bに及ぼすのが良く、この力は、次に、プッシュロッド168の残部に伝えられる。
【0038】
増幅器206は、スタック140から力を受け取って力をプッシュロッド168に及ぼすレバー機構として働くのが良い。増幅器206は、圧電装置126の遠位端部220と基部230との間に設けられるのが良い。再び図7及び図8を参照すると、一次的表面210は、遠位端部220に取り付けられるのが良く、二次的表面212は、基部230に隣接して位置するのが良い。
【0039】
幾つかの観点では、力の伝達の精度を高めるため、遠位端部220及び基部230に設けられた特定の接触領域を増幅器206に接触させる。図8に示されているように、例えば、一次的突出部222が遠位端部220に設けられるのが良く、この一次的突出部は、この遠位端部から増幅器206の一次的表面210に向かう方向に延びるのが良い。同様に、基部230は、二次的突出部232を有するのが良く、この二次的突出部は、基部から増幅器206の二次的表面212に向かう方向に延びている。一次的突出部222及び二次的突出部232がそれぞれ、任意の許容限度内の角度で遠位端部220及び基部230から延びるのが良いが、伸長角度の少なくとも一成分は、一次的表面210及び二次的表面212に実質的に垂直であるべきであることは理解されよう。
【0040】
幾つかの別の観点では、一次的突出部222は、増幅器本体208の一次的表面210に一体であるのが良くかつこの一次的表面から遠位端部220に向かって延びるのが良い。同様に、二次的突出部232は、増幅器本体208の二次的表面212に一体でありかつこの二次的表面から基部230に向かって延びるのが良い。別の観点では、突出部は、増幅器206、遠位端部220及び/又は基部230のうちの1つ又は2つ以上から延びるのが良く、本発明は、上述した突出部の特定の構成には限定されない。
【0041】
作用を説明すると、アプリケータ100は、液滴状態又は少量の物質を噴出させるよう構成されている。スタック140を作動させると、すなわち、電圧波形を主電子制御部(図示せず)により圧電素子に印加すると、スタック140は、膨張して増幅器206に一次的表面210のところで圧接する。上述した一次的及び二次的突出部222,232の位置に基づいて、増幅器206は、変形して力をプッシュロッド168の上側頭部分168bに及ぼす。この力により、プッシュロッド168は、圧電装置126に向かう開き方向に動く。上側頭部分168bが増幅器206によって動かされる距離は、好ましくは、スタック140の遠位端部220によって動かされる距離よりも長い。プッシュロッド168と一体である下側頭部分168aもまた同一の開き方向に動く。下側頭部分168aがニードル176から遠ざかって動くと、ニードル176もまた、第1の位置に向かって開き方向に動くようになる。ニードル176は、コイルばね178によって開き方向に向かって付勢されるのが良く、プッシュロッド168がニードル176から遠ざかって動くと、コイルばね178は、ニードル176も開き方向に動かす。
【0042】
電圧がスタック140から除かれ又は十分に減少すると、上述の動きが逆になる。スタック140は長さが短くなり、かくして増幅器206に加えられる力が減少する。次に、増幅器206は、その実質的に非変形状態に戻ることができ、それによりプッシュロッド168の上側頭部分168bに加えられる力が減少する。プッシュロッド168は、コイルばね169によって開き方向とは逆の閉じ方向に付勢されるのが良い。増幅器206によってプッシュロッド168に加えられる力が減少してコイルばね169の付勢力を下回ると、コイルばね169は、プッシュロッド168を閉じ方向に動かす。下側頭部分168aは、ニードル176の近位端部176aに接触してニードル176をコイルばね178の力に抗して閉じ方向に押し、ついには、近位端部176aの反対側でニードル176に設けられている遠位端部176bが弁座200に当たり又は第1の位置から間隔を置いて位置する第2の位置で弁座200に近づくようになる。コイルばね178は、コイルばね169よりも低いスチフネスを有するのが良く、その結果、外力が存在しない場合、閉じ方向にコイルばね169によって及ぼされている力は、開き方向にコイルばね178によって及ぼされている力よりも大きくなる。
【0043】
ニードル176を第1の位置から第2の位置に動かすプロセスにおいて、ニードル176の遠位端部176bは、遠位端部176bが排出出口204の弁座200に当たったとき又はその近くに位置したとき、物質の液滴202を排出出口204から押し出すのが良い。加うるに、この小出し操作中、アプリケータ100は、システムの可動部品のうちの1つの動きをモニタするのが良い。このようにするため、アプリケータ100は、プッシュロッド168に上側頭部分168bのところで取り付けられた基準コンポーネント148並びにアクチュエータハウジング118内に設けられた位置センサ150を有するのが良い。位置センサ150は、プッシュロッド168が圧電スタック140の伸長及び収縮時に上下に動いているときの基準コンポーネント148の位置を検出してこれをモニタするよう構成されている。位置センサ150は、コントローラ112と電子連絡状態にあり、この位置センサは、基準コンポーネント148の位置を連続的に又は定期的にモニタしてこれをコントローラ112に伝えるのが良い。基準コンポーネント148の位置をモニタすることによって、位置センサ150はまた、小出し操作中に位置センサが接触状態にある機械式増幅器206の位置をモニタする。一実施形態では、基準コンポーネント148は、磁石であり、位置センサ150は、ホール効果センサであり、ただし、他の構成もまた想定される。また、基準コンポーネント148は、プッシュロッド168に取り付けられた状態で示されているが、基準コンポーネント148は、機械式増幅器206、プッシュロッド168、又はニードル176のうちの任意のものに取り付け可能である。機械式増幅器206、プッシュロッド168、ニードル176をひとまとめにアクチュエータの「可動部品」と言う場合がある。基準コンポーネント148を異なる位置に配置することができるので、位置センサ150は、同様に、基準コンポーネント148の位置を最も良くモニタするようアクチュエータハウジング118内に再位置決め可能である。位置センサ148及び基準コンポーネント150を用いてアプリケータ100を制御する方法について以下にさらに説明する。
【0044】
コントローラ112は、本明細書において説明するようにアプリケータ10の種々の作動をモニタするとともに制御するためのソフトウェアアプリケーションをホストとして処理するよう構成された任意適当なコンピュータ計算装置を有するのが良い。理解されるように、コントローラ112は、任意適当なコンピュータ計算装置を含むことができ、かかるコンピュータ計算装置の例示としては、プロセッサ、デスクトップ型コンピュータ計算装置、サーバコンピュータ計算装置、又は携帯型コンピュータ計算装置、例えばラップトップ、タブレット、又はスマートホンが挙げられる。具体的に説明すると、コントローラ112は、メモリ113及びHMIデバイス114を有するのが良い。メモリ113は、揮発性(例えば、幾つかの形式のRAM)、不揮発性(例えば、ROM、フラッシュメモリなど)、又はこれらの組み合わせであるのが良い。コントローラ112は、追加の記憶装置(例えば、リムーバブル記憶装置及び/又は取り外しができない記憶装置)を有するのが良く、かかる追加の記憶装置としては、テープ、フラッシュメモリ、スマートカード、CD‐ROM、ディジタル多用途ディスク(DVD)又は他の光記憶装置、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置、ユニバーサル・シリアス・バス(USB)準拠メモリ、又は情報を記憶するために使用できるとともにコントローラ112によってアクセス可能な任意他の媒体が挙げられるが、これらには限定されない。HMIデバイス114は、例えばボタン、ソフトキー、マウス、音声作動式制御部、タッチスクリーン、コントローラ112の運動、ビジュアルキュー(例えば、コントローラ112に設けられたカメラの前での手の動き)などによりコントローラ112を制御することができる能力を提供する入力を有するのが良い。HMIデバイス114は、グラフィカル・ユーザ・インターフェースを介して出力を提供することができ、かかるグラフィカル・ユーザ・インターフェースは、視覚的情報、例えばニードル176の現在の位置及び速度の値の視覚表示並びにディスプレイを介するこれらパラメータの許容範囲を含む。他の出力は、聴覚情報(例えば、スピーカを介する)、機械的情報(例えば、振動機構体を介する)、又はこれらの組み合わせを含むのが良い。種々の構成例では、HMIデバイス114は、ディスプレイ、タッチスクリーン、キーボード、マウス、運動検出器、スピーカ、マイクロホン、カメラ、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。HMIデバイス114は、バイオメトリック情報、例えば指紋情報、網膜情報、音声情報、及び/又は顔の特徴に関する情報を入力してコントローラ112にアクセスするための特定のバイオメトリック情報を必要とする任意適当な装置をさらに含むのが良い。
【0045】
圧電装置126を逆向きに利用しても液滴を噴出させることができるということは理解されよう。この場合、種々の機械式作動構造体は、電圧波形がスタック140に印加されたときのスタック140の結果としての膨張により生じる弁座200及び排出出口104に向かうニードル176の動きが物質の液滴102を排出させるように上記とは異なる設計にされるのが良い。次に、スタック140への電圧の除去時、増幅システム及び他の作動コンポーネントは、流体ボア188に次の噴出操作のための追加の物質をチャージするためにニードル176を上昇させる。かかる観点では、ニードル176は、常態では開いており、すなわち、このニードルは、スタック140に電圧が印加されない場合には弁座200に係合していない。
【0046】
増幅器206の変形量及びその結果としてのスタック140の動きの増幅度は、1つには、一次的及び二次的突出部222,232がそれぞれ一次的及び二次的表面210,212に接触したときに一次的及び二次的突出部222,232の相対位置によって求められる。電圧波形がスタック140に印加されると、スタック140は、長くなって遠位端部220を動かし、それにより力を増幅器206に加える。遠位端部220のところの一次的突出部222は、増幅器206の比較的中心を通る中心軸線Aから第1の距離D1遠ざかったところで増幅器206の一次的表面210に接触するのが良い。基部230は、増幅器206の他方の側に設けられており、その結果、この基部は、二次的表面212に接触するよう構成されている。二次的突出部232が中心軸線Aから第2の距離D2遠ざかったところで二次的表面212に接触するのが良い。遠位端部220によって動かされる距離を増幅させるよう適当なレバー作用を生じさせるため、第1の距離D1と第2の距離D2は、互いに異なるべきである。
【0047】
図12及び図13を参照すると、第1の距離D1は、第2の距離D2よりも長いのが良い。力が一次的突出部222によって一次的表面210に加えられると、二次的突出部232は、支点として作用する。かくして、中心軸線Aから見て第2の距離D2よりも遠くに位置する増幅器206の一部分が一次的突出部222によって一方向に(例えば、下方に)押されると、第2の距離D2よりも中心軸線Aの方の近くに位置する増幅器206の別の部分が反対側の方向に(例えば、上方に)てこ作用を受ける。例えば一次的表面210又はローブ216と上側頭部分168bの相互作用のところで増幅器に作動的に結合されたプッシュロッド168は、かくして、同一の方向に動かされる。図13は、スタック140が長くなり、力が増幅器206の一次的表面210に加えられる例示の観点を示している。増幅器206がかくして変形し、上側頭部分168bは、プッシュロッド168の残部と一緒に、中心軸線Aに沿って軸方向に動かされる。
【0048】
プッシュロッド168の動く距離は、第1及び第2の距離D1,D2に応じて動く。第2の距離D2が長くなると(すなわち、支点が中心軸線Aから見て遠くに位置すると)、プッシュロッド168の動く距離もまた長くなる。増幅量は、第2の距離D2を長くし又は短くすることによって制御できる。図14は、例えば、中心軸線Aから第2の距離D2′遠くのところに設けられた二次的突出部232′を備えた基部230′を有する変形実施形態を示している。第2の距離D2′は、第2の距離D2よりも短い。したがって、基部230′を有する実施形態では、プッシュロッド168は、基部230を利用する観点の場合よりも動く距離が短くなり、その結果、小さな同等の増幅量が生じる(他の全ての要因が等しいと見なして)。
【0049】
第2の距離D2を変化させることは、増幅量を調節する適当な方法であるが、増幅量を種々の仕方で変化させることができる。幾つかの観点では、増幅器206は、容易に変形するよう構成された材料(例えば、この材料は、軟質であり又は弾力性がある)又はより剛性であるよう構成された材料(例えば、この材料は、剛く又は弾力性が低い)を含むことができる。本体208の厚さを増大させることができ(剛性を高めるために)、あるいは減少させることができる(柔軟性を高めるために)。幾つかの観点では、ローブ216は、厚さ、材料特性、及び/又は長さ(すなわち、ローブ216が本体208から中心軸線Aまで延びる距離)に関して変更することができる。
【0050】
増幅器206の本体208は、これを貫通する方向に漸変厚さ(すなわち、一次的表面210と二次的表面212との間の距離)を有するのが良い。幾つかの観点では、例えば、本体208は、開口部214から見て最も遠ざかったところの厚さが最大であり、開口部214の最も近くに位置するところの厚さが最小であるのが良く、この厚さは、最大厚さから最小厚さまで次第に減少している。変形例として、本体208は、1つ又は2つ以上の段部(図示せず)を有しても良く、各段部は、異なる厚さを有し、例えば、開口部214から最も遠くに位置する段部は、最大厚さの状態にあり、開口部214の最も近くに位置する段部は、最小厚さの状態にある。
【0051】
上述したように、アプリケータ10,100の各々は、位置センサ71,150及びアプリケータ10,100のそれぞれの可動部品に取り付けられた対応の基準コンポーネント69,148を有するのが良い。図15を参照すると、物質をアプリケータ10,100から噴出させるためのアプリケータ10,100の可動部品の動きを制御する方法300が示されている。上述したように、可動部品は、ニードル76,176、増幅器24,206、又はプッシュロッド68,168であるのが良い。当初、ステップ302において、ニードル76,176にそれぞれ作動的に取り付けられた圧電装置26,126を作動させるのに電圧波形を圧電装置26,126に提供する。この電圧波形が提供された結果として、ニードル76,176は、小出し操作における第1の位置と第2の位置との間で位置的経路に沿って並進するのが良く、この小出し操作を第1の小出し操作とも言う場合もある。一実施形態では、ステップ302中に印加される電圧波形は、ニードル76,176の迅速な動きを誘起させる台形の形をしている。この小出し操作は、通常の小出し操作(すなわち、物質をアプリケータ10,100から噴出させる操作)であるのが良く、あるいは、変形例として、ニードル76,176の動きをモニタするためだけの操作であっても良い。さらに、ステップ302は、機械式増幅器、例えばレバー24又は機械式増幅器206の使用により圧電装置26,126の動きを作動させるステップを含むのが良い。
【0052】
方法300の次のステップでは、ステップ306における小出し操作中にアプリケータ10,100の可動部品の位置を経時的に検出する。一実施形態では、期間は、500~1000ミリ秒(ms)であるのが良く、ただし、種々の他の期間が想定される。可動部品の経時的な検出位置をこれら検出位置が生じる時間とともに、ひとまとめに、時間依存性位置的プロフィールと称する場合がある。ステップ310は、位置センサ71,150によって実施されるのが良く、これら位置センサは、基準コンポーネント69,148の位置をモニタする。上述したように、基準コンポーネント69,148は、アプリケータ10,100の可動部品(かかる可動部品は、ニードル76,176、増幅器24,206、又はプッシュロッド68,168であるのが良い)のうちの任意のものに取り付けられるのが良い。位置センサ71,150が基準コンポーネント69,148の位置を経時的に検出すると、位置センサ71,150は、それぞれの基準コンポーネント69,148の時間依存性位置的プロフィールをコントローラ14,112に連続的に送信するのが良い。変形例として、位置センサ71,150は、それぞれの基準コンポーネント69,148の時間依存性位置的プロフィールを単一の又は複数の小出しサイクルにわたって飛び飛びの間隔でコントローラ14,112に間欠的に送信しても良い。さらにまた、時間依存性位置的プロフィールに基づいて定められたパラメータを時間依存性位置的プロフィール自体に代えてコントローラ14,112に送信しても良い。上述したように、位置センサ71,150は、ホール効果センサであるのが良く、基準コンポーネント69,148は、磁石であるのが良い。
【0053】
小出し操作が始まって可動部品の位置が検出された後、コントローラ14,112は、ステップ310において、別の小出し操作のパラメータを受け取るのが良く、かかる小出し操作を第2の小出し操作と言う場合がある。コントローラ14,112は、コントローラ14,112のそれぞれのHMIデバイス17,114中へのユーザ入力によりパラメータを受け取るのが良く、かかるパラメータは、噴出されるべき物質の種類もしくはサイズ、噴出操作の特定の形式、物質を噴出させる基材又はパターン、所望のニードルの動きなどの形態をしているのが良い。ステップ306は、ステップ302の直後に実施されるステップとして示されているが、方法300中の任意他の時点で実施できる。
【0054】
引き続き図15を参照すると、方法300の次に、コントローラ14,112は、ステップ314において、ある期間にわたる可動部品の時間依存性位置的プロフィールと小出し操作中に圧電装置26,126に印加される電圧波形との関係を求めるのが良い。この関係は、圧電装置26,126に印加されるに電圧波形に対する可動部品の動的応答をモデル化するパラメータ化数学方程式の形態を取ることができる。例えば、この方程式は、時間領域における多項式であるのが良い。これを行うため、コントローラ14,112は、経時的に位置センサ71,150によって検出される可動部品の動き並びに圧電装置26,126に提供された電圧波形を最良適合モデルに入力してモデル方程式を生成するのが良い。一実施形態では、最良適合モデルは、外的入力付きの自己回帰移動平均(autoregressive moving average with exogenous input:ARMAX)モデルであり、ただし、他の最良適合モデルが想定される。モデル方程式を生成するために利用される位置センサ71,150による電圧波形及び可動部品の動きの検出期間は、圧電装置26,126の1回の小出し操作(一種類の別個の量の物質を噴出させるための動き)、多数回の小出し操作などであるのが良い。
【0055】
ステップ314をいったん実行すると、ステップ318において、コントローラ14,112は、ステップ306において受け取ったユーザ入力を用いて所望の小出し操作を生じさせる対応の圧電スタック40,140の所望の動きを定め、同様に、ニードル76,176の所望の動きを特定するのが良い。コントローラ14,112は、メモリ15,113に記憶されている物質及び/又はアプリケータ10,100のモデルパラメータ及び/又はユーザ入力に基づいて理想的な位置的プロフィールを経時的に定めるアルゴリズムを用いて第2の小出し操作のための圧電スタック40,140の所望の動きを求めることができる。この所望の動きを用いてステップ322を実行するのが良く、かかるステップ322では、コントローラ14,112は、ニードル76,176が第2の小出し操作を実行するために圧電装置26,126に印加されるべき所要の電圧波形を求める。このステップを実施するにはニードル76,176の所望の動きをコントローラ14,112に入力して電圧波形を生じさせる。次に、この電圧波形をステップ314において作られた数学方程式に入力してニードル76,176の動きを生じさせる。数学方程式のこの出力をニードル76,176の所望の動きと数学方程式によって計算されたニードル76,176の動きの差を求める減算結合に入力するのが良い。しかしながら、電圧波形を生じさせる他の方法が想定される。数学モデルに加えて、コントローラ14,112は、コントローラ14,112のメモリ15,113に記憶されているモデルパラメータ、例えば封止されるべき物質の諸観点を参照して所要の電圧を求めるのが良い。所要の電圧は、台形の波形から成っていても良く、あるいは、所要の圧電装置の動きを生じさせるのに適した任意他の波形から成っていても良い。
【0056】
所要の電圧をステップ322で求めた後、コントローラ14,112は、ステップ326において圧電装置26,126に提供された電圧波形を調節してステップ322において求めた所要の電圧に一致させるのが良い。一実施形態では、電圧波形を5マイクロ秒(μs)ごとに調節するのが良く、ただし、他の増分が想定される。その結果、ステップ322の実施後、アプリケータ10,100は、ステップ306において特定された第2の小出し操作を開始するのが良い。第2の小出し操作が行われている間、可動部品の位置をステップ330において経時的にモニタするのが良い。ステップ330は、モニタされている可動部品の動きの変化を検出することができるようにするとともに圧電装置26,126に提供された電圧波形を微調整して首尾一貫した小出し操作を達成することができるようにする。可動部品の位置を経時的に連続方式で又は間欠的にモニタすることができる。例えば、可動部品の位置を100小出しサイクルごとに1回モニタするのが良い。しかしながら、この小出しサイクルのこの回数は、例示に過ぎない。
【0057】
次に図16A及び図16Bを参照すると、経時的なアプリケータ10,100の可動部品の位置及び図示の動きプロフィールを生じさせるために用いられる方法300に従って決定された電圧波形を示すグラフ図が示されている。図16Aに示されているように、線402によって示された可動部品の所望の位置は、第1の位置からの迅速な動き(230~500μs)、第2の位置における休止(500~1000μs)、及び第2の位置から第1の位置に戻る別の迅速な動き(1000~1275μs)を含む明確に台形の波形を有する。この動きでは、第1の位置は、ニードル76,176の上述の第1の位置に対応すると言え、第2の位置は、ニードル76,176の第2の位置に対応すると言える。所望の位置的プロフィールとは対照的に、経時的な可動部品の実際の位置は、線404を用いて示されている。経時的な実際の位置は、僅かな偏差を伴った状態で所望の位置にぴったりと続くものとして理解できる。さらに、線404は、線402の形状からの比較的数の少ないバンプ又は他の逸脱を示している。これは、図16Bに線406として示されている方法300に従って求められた電圧波形の使用によるものである。方法300により、電圧波形は、アプリケータ10,100の種々の可動部品の減衰、振動、及び運動量を考慮に入れた位置的動きを生じさせることができる。
【0058】
対照的に、図17A及び図17Bを参照すると、経時的なアプリケータの可動部品の位置及びその位置的動きを生じさせるために用いられた電圧波形入力を示すグラフ図が示されており、この場合、電圧波形は、開ループを用いるシステムにより作られている。図17Aに示されているように、可動部品の位置は、図16Aに示されるように線402によって表された可動部品の所望の位置を達成しようとして開ループを用いて線410によって表されている。しかしながら、線410は、望ましくない振動を含み、さらに、所望の値を一貫してオーバーシュートし、このことは、噴出される任意の物質の品質に悪影響を及ぼす。この位置的動きを生じさせるために用いられる電圧波形が図17Bに示されるとともに線414によって表されている。2つの別々の位置的動きを比較すると、方法300に従って得られた電圧波形によってもたらされる位置的動き404は、開フィードバックループから得られた波形によってもたらされる位置的動き410よりも極めて近い動きの所望の軌道に追従する。
【0059】
さらに、上述したアプリケータ10,100は、電圧を圧電装置に印加することができる動的及び個別化された性状に起因して現行の既存の開ループアプリケータシステムと比較して利点を提供する。ニードル並進中に振動を生じさせる種々のアプリケータは、減衰不足であることに加えて、これら自体の固有の許容度、固有振動数、減衰力などを有する。その結果、同一の小出し操作であっても、これら操作は、互いに異なるシステムの圧電装置に印加される互いに異なる電圧を必要とする場合がある。加うるに、ニードルの動きは、部品摩耗又は環境上の変化に起因して経時的に変化する場合がある。アプリケータの可動部品の動的にモニタするとともにこれら部品の動きをモデル化することによって、アプリケータは、所望の小出し操作を正確に実施するために特定の固有のアプリケータについて所要の電圧を決定することができる。また、アプリケータは、この所要の電圧を経時的に変えてアプリケータ内の又はアプリケータが設けられている環境の変化に対応することができる。その結果、オペレータは、圧電装置の励起を単に制御するのではなく、ニードルの動きに対する直接的な制御を実行することができる。これにより、物質小出しのより正確かつ精密なプロセス制御並びに圧電装置に提供される新たな電圧波形の生成を得ることができる。
【0060】
本発明の種々の独創性のある観点、概念、及び特徴を例示の実施形態において組み合わせ状態で具体化されたものとして本願において説明するとともに図示したが、これら種々の観点、概念、及び特徴を個々にあるいは種々のコンビネーション及びそのサブコンビネーションの状態で多くの変形実施形態において使用することができる。本明細書において明示的に排除されていない場合、かかる全てのコンビネーション及びサブコンビネーションは、本発明の範囲に含まれることが意図されている。さらに、本発明の種々の観点、概念、及び特徴に関する種々の変形実施形態、例えば代替材料、構造、形態、方法、回路、装置及びコンポーネント、ソフトウェア、ハードウェア、制御論理、形態、適合及び機能に関する変形例などを本明細書において説明した場合があるが、かかる説明は、現在知られているにせよ後で開発されるにせよいずれにせよ、利用可能な変形実施形態の完全な又は排他的な一覧であることが意図されてはいない。当業者であれば、独創性のある観点、概念、又は特徴のうちの1つ又は2つ以上を容易に採用して追加の実施形態を構成することができ、そしてかかる実施形態が本明細書において明示的に開示されていない場合であっても、本発明の範囲内で用いることができる。加うるに、本発明の幾つかの特徴、概念、又は観点を好ましい構成又は方法であると本明細書において説明することができる場合であっても、かかる説明は、かかる特徴が必要とされ又は必要であるということを示唆することが意図されておらず、このことは、明示的にそのように記載されていない場合であってもそうである。さらにまた、例示の又は代表的な値及び範囲が本開示内容の理解を助けるために含まれている場合があるが、かかる値及び範囲は、限定的な意味で解されるべきではなく、明示的にそのように記載されている場合のみ臨界的な意味を持つ値又は範囲であることが意図されている。さらに、種々の観点、特徴、及び概念が独創的であるとして又は本発明の要部をなすものとして本明細書において明示的に特定されている場合があるが、かかる特定は、網羅的であることを意図しておらず、これとは異なり、このようなものとして又は本発明の一部として明示的に特定されていない場合に本明細書において詳細に説明されている本発明の観点、概念、及び特徴が存在する場合があり、その代わりに、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲又は関連出願又は継続出願の特許請求の範囲に記載されている。例示の方法又はプロセスの説明は、あらゆる場合において必要とされるものとして全てのステップを含むことには限定されず、これらステップが必要とされ又は必要であると解されるように提供されている順序もまた限定されず、ただし、明示的にそのように記載されていない場合にもそうである。
【0061】
本発明を限定された数の実施例を用いて本明細書において説明したが、これら特定の実施形態は、本明細書において違ったやり方で説明されてクレーム請求されている本発明の範囲を限定するものではない。種々の要素の配置そのもの及び本明細書において説明した物品及び方法のステップの順序は、本発明を限定するものと解されるべきではない。例えば、方法のステップが一連の連続した参照符号及び図中のブロックの一連の進捗状況を参照して説明されているが、本方法は、所望に応じて特定の順序で実施できる。
図1
図2
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B