(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】シール機構、および原料撹拌装置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20240501BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
F16J15/10 N
F16J12/00 D
F16J15/10 U
(21)【出願番号】P 2021010292
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2020030529
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 特許法第30条第2項適用、令和元年9月12日 日本アイリッヒ株式会社 九州事業所(福岡県北九州市若松区南二島四丁目9-1)において開催された機械メーカ・商社に対しての内覧会で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】597009046
【氏名又は名称】日本アイリッヒ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】嶺井 政尚
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/175305(WO,A1)
【文献】国際公開第00/001254(WO,A1)
【文献】実開昭60-114367(JP,U)
【文献】特開2001-050394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F16J 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を内部に収容し、回転する回転容器と、該回転容器の上部開口を塞ぐ蓋部材との間の隙間をシールするシール機構であって、
前記蓋部材に連結され、前記回転容器に圧接されるシール部材と、
前記シール部材の半径方向内側に配置されるバリアと、
前記シール部材および前記バリアを前記蓋部材に連結するホルダと、を備え、
前記ホルダには、前記シール部材と前記バリアとの間の空間に加圧気体を導入するための流路が形成されて
おり、
前記蓋部材が前記回転容器の上部開口を塞ぐと、前記バリアの外周面と前記回転容器の内側面との間に、前記加圧気体の噴出口として機能する隙間が形成されることを特徴とするシール機構。
【請求項2】
前記シール部材のシール性能の低下を監視するシール監視機構をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のシール機構。
【請求項3】
前記シール監視機構は、前記空間の圧力を監視する圧力計を含むことを特徴とする請求項
2に記載のシール機構。
【請求項4】
前記シール監視機構は、前記空間内に進入した前記原料の量を検知可能な粉塵センサを含むことを特徴とする請求項2または3に記載のシール機構。
【請求項5】
前記シール部材は、前記回転容器に圧接される第1リップと第2リップとを備え、前記第2リップが前記第1リップの半径方向外側に配置されるダブルリップシールであり、
前記流路は、前記第1リップと前記バリアとの間の第1空間に第1加圧気体を導入するための第1流路と、前記第1リップと第2リップとの間の第2空間に第2加圧気体を導入するための第2流路とを含むことを特徴とする請求項1に記載のシール機構。
【請求項6】
前記第2加圧気体は、前記第1加圧気体の圧力よりも高い圧力を有することを特徴とする請求項5に記載のシール機構。
【請求項7】
前記第2加圧気体は、前記第1加圧気体の圧力よりも低い圧力を有することを特徴とする請求項5に記載のシール機構。
【請求項8】
前記第2加圧気体は、前記第1加圧気体の圧力と同一の圧力を有することを特徴とする請求項5に記載のシール機構。
【請求項9】
前記シール部材のシール性能の低下を監視するシール監視機構をさらに備えることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一項に記載のシール機構。
【請求項10】
前記シール監視機構は、前記第1空間および/または前記第2空間の圧力を監視する圧力計を含むことを特徴とする請求項9に記載のシール機構。
【請求項11】
前記シール監視機構は、前記第1空間および/または前記第2空間内に進入した前記原料の量を検知可能な粉塵センサを含むことを特徴とする請求項9または10に記載のシール機構。
【請求項12】
前記回転容器のシール面と前記シール部材の間の距離を調整するためのシール調整部材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至11に記載のシール機構。
【請求項13】
原料を内部に収容し、回転する回転容器と、
前記回転容器の上部開口を塞ぐ蓋部材と、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のシール機構と、を備え、
前記シール機構によって、前記回転容器と前記蓋部材との間の隙間がシールされることを特徴とする原料撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料を収容して回転する回転容器と、該回転容器の上部開口を塞ぐ蓋部材との間の隙間をシールするシール機構、および該シール機構を備えた原料撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原料撹拌装置は、原料の造粒、コーティング、混合、混練、撹拌、および乾燥などの各種処理を行う装置であり、医薬品、化学薬品、食品、化粧品、ファインケミカル、鋳物、建築材料、塗料、およびダスト処理などの様々な産業分野で用いられている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。この原料撹拌装置は、軸線周りに回転駆動される回転容器と、該回転容器の上部開口を開閉する蓋部材と、回転容器と蓋部材との間の隙間をシールするシール機構と、を備えている。回転容器は、一般に、有底円筒形状を有している。原料撹拌装置で処理される原料は、回転容器の上部開口から該回転容器に投入され、その後、回転容器の上部開口が蓋部材により閉じられる。そして、回転容器を所定の回転速度で回転させることにより、上記各種処理が行われる。
【0003】
シール機構は、各種処理を実行している間に、回転容器と蓋部材との間の隙間から原料が漏洩すること、および異物が回転容器内に外部から侵入することを防止する。このようなシール機構は、蓋部材の下面に連結されたシール部材を備えており、シール部材は、回転容器の内周面に所定の押圧力で押し付けられる。原料撹拌装置で各種処理を実行している間、原料が投入された回転容器は回転されるが、蓋部材、および蓋部材に連結されたシール部材は回転させない。以下では、シール部材が押し付けられる回転容器の内周面を「シール面」と称することがある。
【0004】
なお、本明細書では、原料撹拌装置の回転容器に投入される材料を総称して、「原料」と称する。原料は、粉体、およびスラッジなどの固体材料であってもよいし、水およびオイルなどの液体材料であってもよいし、固定材料と液体材料との混合物であってもよい。さらに、原料撹拌装置では、複数の材料のそれぞれが所定の時間間隔を開けて回転容器に投入されることがある。例えば、固体材料を回転容器に投入して、該回転容器を回転させてから所定の時間が経過した後に、回転容器に液体材料を投入することがある。この場合、原料は、固体材料と液体材料である。また、本明細書では、各種処理を行った後で、回転容器から取り出される物体を総称して、「製品」と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-17923号公報
【文献】特開2016-2536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原料撹拌装置で、シール機構が適切なシール性能を発揮するためには、シール部材を適切な押圧力で回転容器に押し付ける必要がある。例えば、シール部材がリップシールである場合は、リップの先端を所定の押圧力で、回転容器のシール面に押し付ける必要がある。
【0007】
しかしながら、回転容器に投入される原料の性状(例えば、原料の比重、粒度、および含水率など)次第で、回転容器から原料の漏洩を防止するために必要とされる押圧力が異なる。例えば、軽く、細かい粒子状の原料を回転容器内で処理する場合は、原料は高い浮遊性を有するので、シール部材を回転容器のシール面に押し付ける押圧力が大きくなる。
【0008】
上記押圧力の大きさが大きいほど、シール部材、および該シール部材が接触する回転容器のシール面が摩耗によって劣化および変形する。さらに、シール部材およびシール面からより多くの摩耗粉が発生するおそれもある。シール部材およびシール面の劣化は、シール性能の低下を招き、回転容器からの原料の漏洩につながる。そのため、シール部材の交換頻度が増加し、その結果、原料撹拌装置のランニングコストが上昇する。さらに、原料撹拌装置は、食品、医薬品などの異物の混入を嫌う製品の製造工程にも使用されるため、シール部材およびシール面の摩耗粉の発生をできるだけ低減したいとの要望がある。したがって、原料撹拌装置で行われる処理によっては、大きな押圧力でシール部材を回転容器に押し付けることができない場合がある。
【0009】
さらに、上記押圧力の大きさが大きいほど、シール部材と回転容器のシール面との間に大きな摩擦熱が発生する。発生した摩擦熱が回転容器を介して処理中の原料に伝わると、原料に悪影響を与えるおそれがある。例えば、原料が低融点材料の場合は、原料が溶融してしまうおそれがある。したがって、シール部材を回転容器に押し付ける押圧力を極力低減したいとの要望がある。
【0010】
そこで、本発明は、シール部材を回転容器に押し付ける押圧力を低減できるシール機構を提供することを目的とする。また、本発明は、このようなシール機構を備えた原料撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、原料を内部に収容し、回転する回転容器と、該回転容器の上部開口を塞ぐ蓋部材との間の隙間をシールするシール機構であって、前記蓋部材に連結され、前記回転容器に圧接されるシール部材と、前記シール部材の半径方向内側に配置されるバリアと、前記シール部材および前記バリアを前記蓋部材に連結するホルダと、を備え、前記ホルダには、前記シール部材と前記バリアとの間の空間に加圧気体を導入するための流路が形成されていることを特徴とするシール機構が提供される。
【0012】
一態様では、前記シール部材のシール性能の低下を監視するシール監視機構をさらに備える。
一態様では、前記シール監視機構は、前記空間の圧力を監視する圧力計を含む。
一態様では、前記シール監視機構は、前記空間内に進入した前記原料の量を検知可能な粉塵センサを含む。
【0013】
一態様では、前記シール部材は、前記回転容器に圧接される第1リップと第2リップとを備え、前記第2リップが前記第1リップの半径方向外側に配置されるダブルリップシールであり、前記流路は、前記第1リップと前記バリアとの間の第1空間に第1加圧気体を導入するための第1流路と、前記第1リップと第2リップとの間の第2空間に第2加圧気体を導入するための第2流路とを含む。
一態様では、前記第2加圧気体は、前記第1加圧気体の圧力よりも高い圧力を有する。
一態様では、前記第2加圧気体は、前記第1加圧気体の圧力よりも低い圧力を有する。
一態様では、前記第2加圧気体は、前記第1加圧気体の圧力と同一の圧力を有する。
【0014】
一態様では、前記シール部材のシール性能の低下を監視するシール監視機構をさらに備える。
一態様では、前記シール監視機構は、前記第1空間および/または前記第2空間の圧力を監視する圧力計を含む。
一態様では、前記シール監視機構は、前記第1空間および/または前記第2空間内に進入した前記原料の量を検知可能な粉塵センサを含む。
一態様では、前記シール機構は、前記回転容器のシール面と前記シール部材の間の距離を調整するためのシール調整部材をさらに備える。
【0015】
一態様では、原料を内部に収容し、回転する回転容器と、前記回転容器の上部開口を塞ぐ蓋部材と、上記シール機構と、を備え、前記シール機構によって、前記回転容器と前記蓋部材との間の隙間がシールされることを特徴とする原料撹拌装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シール部材とバリアとの間に導入された加圧気体が回転容器内に向けて噴出される気流を形成する。この気流によって、シール部材に向かって流動してくる原料を回転容器内に押し返すことができる。特に、気流は、軽く、細かい粒子状の原料(浮遊性の高い原料)を回転容器内に効率的に押し返すことができる。さらに、気流は、シール部材およびバリアに原料が付着することを防止できる。その結果、原料がシール部材に到達することが抑制されるので、シール部材を回転容器に押し付ける押圧力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る原料撹拌装置の正面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係るシール機構を説明するための概略断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す連通孔を通る断面で見たシール機構の概略断面図である。
【
図6】
図6は、他の実施形態に係るシール機構を説明するための概略断面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す第1連通孔を通る断面で見たシール機構の概略断面図である。
【
図9】
図9は、
図7に示す第2連通孔を通る断面で見たシール機構の概略断面図である。
【
図10】
図10は、
図3に示すシール機構が備えるシール監視機構の一例を示す模式図である。
【
図11】
図11は、
図3に示すシール機構が備えるシール監視機構の他の例を示す模式図である。
【
図12】
図12(a)および
図12(b)は、
図6に示すシール機構が備えるシール監視機構の一例を示す模式図である。
【
図13】
図13(a)および
図13(b)は、
図6に示すシール機構が備えるシール監視機構の他の例を示す模式図である。
【
図14】
図14は、シール調整部材の一例を拡大して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る原料撹拌装置の正面図である。
図2は、
図1に示す原料撹拌装置の側面図である。
図1および
図2に示すように、原料撹拌装置は、原料を収容して回転する回転容器(混合パン)1と、回転容器1を回転させるための第1駆動装置(モータ)2と、回転容器1内の原料を撹拌するロータユニット3と、ロータユニット3を回転させるための第2駆動装置(モータ)4とを備えている。
【0019】
本実施形態では、駆動装置2,4は制御装置(図示せず)に接続されており、制御装置はこれら駆動装置2,4の回転速度および回転方向を自在に制御するように構成されている。このような構成により、回転容器1およびロータユニット3をそれぞれ所望の回転速度および回転方向で独立して回転させることができる。
【0020】
回転容器1は、有底円筒形状を有しており、カバー9の内部に回転可能に配置されている。本実施形態では、カバー9の上部には、蓋部材5が設けられており、該蓋部材5によって、回転容器1の上端に形成された開口が塞がれる。
図1に示すように、蓋部材5は、原料を回転容器1に供給するための供給口5aを有している。原料は、供給口5aから直接回転容器1内に供給されてもよいし、供給口5aにシュート、ノズル、またはホッパーなどの原料供給設備(図示せず)を連結し、該原料供給設備および供給口5aを介して、回転容器1に供給されてもよい。製品を製造するときは、原料が投入された回転容器1とロータユニット3を回転させる。
【0021】
なお、
図1および
図2に示した実施形態では、蓋部材5が図示しない駆動機構(例えば、エアシリンダ、油圧シリンダ、または電動シリンダ)により回転容器1の回転軸と平行な方向に上昇することで、カバー9および回転容器1の上部開口が開かれるようになっている。図示はしないが、蓋部材5が旋回軸を支点として回動することにより、カバー9および回転容器1の上部開口が開閉されてもよい。蓋部材5を上昇させて、回転容器1の上部開口が開かれたときに、原料を上部開口から回転容器1に投入してもよい。この場合、上記供給口5aを省略してもよい。回転容器1から製品を取り出すときは、蓋部材5を上昇させて、回転容器1の上部開口を開いてもよい。
【0022】
蓋部材5は、回転容器1の上部開口を塞ぐ限り、該上部開口を開閉しなくてもよい。この場合、回転容器1の底壁または側壁に製品を回転容器1から取り出すための排出口(図示せず)が形成されてもよい。排出口が回転容器1に設けられる場合、原料撹拌装置は、排出口を開閉可能な排出口ゲートを有していてもよい。製品を回転容器1から取り出すときは、排出口ゲートを移動させて排出口を開く。さらに、原料撹拌装置は、排出口に連結可能な吸い出しラインを備えていてもよい。この場合、製品は、排出口に連結された吸い出しラインを介して回転容器1から吸い出される。
【0023】
原料撹拌装置は、所定量の原料が投入され、蓋部材5で上部開口が塞がれた回転容器1を回転させ、同時に、ロータユニット3を回転容器1内で回転させることにより、原料の造粒、コーティング、混合、混練、撹拌、乾燥などの各種処理を実行する。原料の処理を実行している間、回転容器1およびロータユニット3が回転しても、蓋部材5は回転しない。
【0024】
上記処理を実行している間に、回転容器1と蓋部材5との間の隙間から原料が漏洩することを防止するために、原料撹拌装置は、回転容器1と蓋部材5との間に配置されるシール機構を有している。このシール機構によって、回転容器1と蓋部材5との間の隙間がシールされる。
【0025】
図3は、一実施形態に係るシール機構を説明するための概略断面図である。
図3に示すシール機構30は、略環形状を有するシール部材36を有している。シール部材36は、蓋部材5が回転容器1の上部開口を塞いだときに、該回転容器1の上端部のシール面1aに圧接される。
図3に示す例では、シール部材36は、回転容器1のシール面1aに圧接されるリップ36aと、リップ36aが接続され、円環形状を有するリップシール本体36cとを有するリップシールである。リップ36aは、リップシール本体36cの下面からリップシール本体36cの全周にわたって延びている。したがって、蓋部材5が回転容器1の上部開口を塞ぐと、シール部材36は、蓋部材5と回転容器1との間の隙間を回転容器1の全周にわたってシールする。
【0026】
以下の説明では、シール部材36をリップシール36と称して、シール機構30を説明するが、本実施形態のシール部材36は、回転容器1のシール面1aに圧接される限り、リップシールに限定されない。例えば、シール部材36は、シールリングであってもよい。
【0027】
シール機構30は、リップシール36の半径方向内側に配置され、円筒形状を有するバリア38と、リップシール36およびバリア38を保持した状態で蓋部材5に固定されるホルダ39と、をさらに備える。本実施形態では、ホルダ39は、円環形状を有している。蓋部材5が回転容器1の上部開口を塞ぐと、リップシール36の中心軸線とバリア38の中心軸線は、回転容器1の中心軸線に一致する。リップシール36は、その内面がホルダ39の外周面に接触した状態で、ねじなどの固定具(図示せず)を介してホルダ39に接続されている。
【0028】
図示した例では、回転容器1の上端部には、半径方向外側に突出するフランジ部が形成されており、該フランジ部の内周面が、リップシール36のリップ36aが圧接されるシール面1aとして機能する。蓋部材5が回転容器1の上部開口を塞ぐと、リップ36aの先端は所定の押圧力で回転容器1のシール面1aに押し付けられ、リップシール36の半径方向に変形する。
【0029】
リップシール(シール部材)36は、適切なシール性能を発揮可能なある程度弾性がある材料から選定される。このような材料は、例えば、合成ゴムである。リップシール36を構成する合成ゴムは、一般的なシール部材の材料として多用されている合成ゴムから選定されるのが好ましい。この理由は、リップシール36を安価に製造することができるからである。このような合成ゴムの例としては、ニトリルゴム(NBR)、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、ポリウレタン(PU)、およびウレタンゴムなどが挙げられる。なお、リップシール36の材料は、適切な弾性を有している限り、合成ゴムに限定されない。例えば、リップシール36を樹脂から構成してもよい。
【0030】
バリア38は、その上端に半径方向外側に突出するフランジ38aを有している。ホルダ39は、その上端部における内周面に、フランジ38aの形状に対応して形成された段部を有している。バリア38のフランジ38aをホルダ39の段部に係合させた状態で、ホルダ39は、複数のねじ45によって蓋部材5に固定される。具体的には、ホルダ39は、ねじ45が係合するねじ孔39aを有しており、蓋部材5にはねじ孔39aに対応する位置に貫通孔が形成されている。ねじ45を蓋部材5の貫通孔に挿入した状態で、ねじ45をホルダ39のねじ孔39aに螺合させることにより、ホルダ39が蓋部材5に固定される。
図3では、1つのねじ45とそのねじ孔39aのみが描かれているが、実際は、ホルダ39は、該ホルダ39の円周方向に等間隔で配置された複数のねじ孔39aを有している。したがって、ホルダ39は、複数のねじ45によって蓋部材5に固定される。
【0031】
ねじ45によって、ホルダ39を蓋部材5に固定すると、バリア38のフランジ部38aが蓋部材5とホルダ39に形成された段部とによって挟まれ、これにより、バリア38およびリップシール36がホルダ39を介して蓋部材5に連結される。バリア38およびリップシール36が連結された蓋部材5が回転容器1の上部開口を塞ぐと、バリア5の外周面と回転容器1の内側面との間に僅かな隙間Gが形成される。すなわち、バリア5は、回転容器1と接触しない。この隙間Gの大きさは、例えば、数mm(0.3~5mm)である。
【0032】
図4は、
図3に示すホルダ39の上面図である。
図4に示すように、ホルダ39は、複数の(
図4では、5つの)連通孔39bを有している。これら連通孔39bは、後述する流路を構成する。
図4に示す例では、ホルダ39は、5つの連通孔39bを有しているが、本実施形態はこの例に限定されない。例えば、ホルダ39は、1つの連通孔39bのみを有していてもよい。すなわち、ホルダ39は少なくとも1つの連通孔39bを有する。
【0033】
図5は、
図4に示す連通孔39bを通る断面で見たシール機構の概略断面図である。本実施形態では、連通孔39bは、ホルダ39の上面から下面まで延びる貫通孔である。蓋部材5には、連通孔39bに対応する位置に貫通孔5bが形成されており、蓋部材5にホルダ39を固定すると、貫通孔5bは連通孔39bと接続される。蓋部材5の貫通孔5bには、加圧気体供給ライン48が接続される。加圧気体供給ライン48の末端は、加圧気体供給源(図示せず)に接続されており、加圧気体供給ライン48を介して、貫通孔5bに加圧気体が供給される。
【0034】
貫通孔5bに供給された加圧気体は、ホルダ39に形成された連通孔39bに流れ込む。連通孔39bは、バリア38(の外周面)とリップシール36(のリップ36aの内周面)との間に形成された空間に開口している。したがって、蓋部材5の貫通孔5bに供給された加圧気体は、連通孔39bからバリア38とリップシール36との間に形成された空間に放出され、該空間内を満たす。本実施形態では、連通孔39bは、バリア38とリップシール36との間に形成された空間に加圧気体を導入するための流路として機能する。
【0035】
バリア38とリップシール36との間に形成された空間は、回転容器1の内部に隙間Gを介して連通している。そのため、この空間を満たした加圧気体は隙間Gから回転容器1内に噴出する気流を形成する。この加圧気体の気流によって、リップシール36に向かって流動してくる原料を回転容器1内に押し返すことができる。特に、加圧気体の気流は、軽く、細かい粒子状の原料(
図5参照)を回転容器1内に効率的に押し返すことができる。さらに、気流は、リップシール36およびバリア38に原料が付着することを防止できる。その結果、原料がリップシール36に到達することが抑制されるので、リップシール36を回転容器1のシール面1aに押し付ける押圧力を低減することができる。
【0036】
さらに、本実施形態のシール機構によれば、シール部材36(のリップ36a)が回転容器1のシール面1aに加圧気体によって均一に押し付けられている。そのため、万が一原料が隙間Gを通ってバリア38とリップシール36との間に形成された空間に進入しても、原料が回転容器1から漏洩することを効果的に防止することができる。
【0037】
図5に示すように、加圧気体供給ライン48に圧力調整弁50を設けてもよいし、流量調整器(例えば、ニードル弁、マスフローコントローラーなど)54を設けてもよい。圧力調整弁50によって、隙間Gから噴出する加圧気体の圧力を調整することができる。流量調整器54によって、隙間Gから噴出する加圧気体の流量を調整することができる。したがって、圧力調整弁50および流量調整器54によって、回転容器1内の原料の性状に応じた加圧気体の圧力および流量の調整が可能となる。一実施形態では、シール機構30は、圧力調整弁50および流量調整器54のいずれか一方を有していてもよい。
【0038】
図6は、他の実施形態に係るシール機構30を説明するための概略断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態の構成と同様であるため、同一又は相当する構成要素には同一の符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0039】
図6に示すシール部材36は、蓋部材5が回転容器1の上部開口を塞いだときに、回転容器1のシール面1aに圧接される第1リップ36aおよび第2リップ36bと、リップシール本体36cと、を有するダブルリップシール(以下、単に「リップシール」と称する)である。リップシール36は、その上面がホルダ39の下面に接触した状態で、ねじなどの固定具(図示せず)を介してホルダ39に接続されている。
【0040】
第1リップ36aおよび第2リップ36bは、回転容器1のシール面1aに圧接される。第2リップ36bは、第1リップ36aの半径方向外側に配置される。第1リップ36aおよび第2リップ36bは、リップシール本体36cの下面からリップシール本体36cの全周にわたって延びている。したがって、蓋部材5が回転容器1の上部開口を閉じると、リップシール36の第1リップ36aおよび第2リップ36bは、蓋部材5と回転容器1との間の隙間を回転容器1の全周にわたってシールする。
【0041】
本実施形態では、第1リップ36aの基端部と第2リップ36bの基端部との間に、円環形状を有するブロック47が配置されている。ブロック47の内周面は、第1リップ36aの外周面に接触しており、ブロック47の外周面は、第2リップ36bの内周面に接触している。蓋部材5が回転容器1の上部開口を塞ぐと、第1リップ36aおよび第2リップ36bの先端は所定の押圧力で回転容器1のシール面1aに押し付けられ、リップシール36の半径方向に変形する。一方で、ブロック47によって、第1リップ36aの基端部と第2リップ36bの基端部とがシールリップ36の半径方向に変形するのが阻止される。一実施形態では、ブロック47を省略してもよい。
【0042】
図7は、
図6に示すホルダ39の上面図である。
図7に示すように、ホルダ39は、複数の(
図4では、5つの)第1連通孔39bと、複数の(
図4では、5つの)第2連通孔39cと、を有している。第1連通孔39bは、後述する第1流路を構成し、第2連通孔39cは、後述する第2流路の一部を構成する。
【0043】
図7に示す例では、ホルダ39は、5つの第1連通孔39bを有しているが、本実施形態はこの例に限定されない。例えば、ホルダ39は、1つの第1連通孔39bのみを有していてもよい。すなわち、ホルダ39は少なくとも1つの第1連通孔39bを有する。
【0044】
図8は、
図7に示す第1連通孔39bを通る断面で見たシール機構の概略断面図である。本実施形態では、第1連通孔39bは、ホルダ39の上面から下面まで屈曲しつつ延びる貫通孔である。蓋部材5の貫通孔5bには、第1加圧気体供給ライン48が接続される。第1加圧気体供給ライン48の末端は、第1加圧気体供給源(図示せず)に接続されており、第1加圧気体供給ライン48を介して、貫通孔5bに第1加圧気体が供給される。
【0045】
貫通孔5bに供給された第1加圧気体は、ホルダ39に形成された第1連通孔39bに流れ込む。さらに、第1加圧気体は、第1連通孔39bから、バリア38(の外周面)とリップシール36の第1リップ36a(の内周面)との間に形成された空間(以下、「第1空間」と称する)に放出され、該第1空間を満たす。本実施形態では、第1連通孔39bは、第1空間に第1加圧気体を導入するための第1流路として機能する。
【0046】
第1空間は、回転容器1の内部に隙間Gを介して連通している。そのため、第1空間を満たした第1加圧気体は隙間Gから回転容器1内に噴出する気流を形成する。この第1加圧気体の気流によって、リップシール36に向かって流動してくる原料を回転容器1内に押し返すことができる。特に、この第1加圧気体の気流は、軽く、細かい粒子状の原料(
図5参照)を回転容器1内に効率的に押し返すことができる。さらに、気流は、リップシール36およびバリア38に原料が付着することを防止できる。その結果、原料がリップシール36に到達することが抑制されるので、リップシール36を回転容器1のシール面1aに押し付ける押圧力を低減することができる。
【0047】
図9は、
図7に示す第2連通孔39cを通る断面で見たシール機構の概略断面図である。
図7および
図9に示すように、ホルダ39は、第2連通孔39cを有していてもよい。本実施形態では、第2連通孔39cは、ホルダ39の上面から下面まで直線状に延びる貫通孔である。
図7に示す例では、ホルダ39は、5つの第2連通孔39cを有しているが、本実施形態はこの例に限定されない。例えば、ホルダ39は、少なくとも1つの第2連通孔39cを有していてもよい。
【0048】
蓋部材5には、第2連通孔39cに対応する位置に貫通孔5cが形成されている。蓋部材5にホルダ39を固定すると、貫通孔5cは第2連通孔39cに接続される。蓋部材5の貫通孔5cには、第2加圧気体供給ライン49が接続される。第2加圧気体供給ライン49の末端は、第2加圧気体供給源(図示せず)に接続されており、第2加圧気体供給ライン49を介して、貫通孔5cに第2加圧気体が供給される。
【0049】
本実施形態では、ホルダ39の第2連通孔39cは、リップシール36に形成された貫通孔36dに接続され、リップシール36に形成された貫通孔36dは、ブロック47に形成された貫通孔47aに接続される。したがって、第2加圧気体供給ライン49を介して貫通孔5cに供給された第2加圧気体は、ホルダ39の第2連通孔39c、リップシール36の貫通孔36d、およびブロック47の貫通孔47aを通って、リップシール36の第1リップ36a(の外周面)と第2リップ36b(の内周面)との間に形成された空間(以下、「第2空間」と称する)に導入される。第2空間は、第2加圧気体によって満たされる。本実施形態では、ホルダ39の第2連通孔39b、リップシール36の貫通孔36d、およびブロック47の貫通孔47aは、第2空間に第2加圧気体を導入するための第2流路として機能する。ブロック47が省略される実施形態では、ホルダ39の第2連通孔39b、およびリップシール36の貫通孔36dが第2空間に第2加圧気体を導入するための第2流路として機能する。
【0050】
本実施形態でも、第2加圧気体供給ライン49に圧力調整弁51を設けてもよいし、流量調整器(例えば、ニードル弁、マスフローコントローラーなど)55を設けてもよい。圧力調整弁51によって、第2加圧気体の圧力を調整することができる。流量調整器55によって、第2加圧気体の流量を調整することができる。一実施形態では、シール機構30は、圧力調整弁51および流量調整器55のいずれか一方を有していてもよい。
【0051】
第2加圧気体の圧力は、第1加圧気体の圧力よりも高くてもよいし、低くてもよい。あるいは、第2加圧気体の圧力は、第1加圧気体の圧力と同一であってもよい。
【0052】
第2加圧気体が第1加圧気体の圧力よりも高い圧力を有する場合は、第2空間を満たした第2加圧気体によって、第1リップ36aがバリア38に向かって移動され、第2空間が第1空間と連通する。その結果、第2加圧気体が第1空間に流れ込み、第1加圧気体と第2加圧気体の両者が隙間Gから回転容器1内に噴出する。したがって、第1加圧気体のみが隙間Gから噴出する実施形態と比較して、隙間Gから回転容器1内に噴出する加圧気体の流量が増加するので、原料がリップシール36により到達しづらくなる。その結果、リップシール36を回転容器1のシール面1aに押し付ける押圧力をより低減することができる。
【0053】
第2加圧気体が第1加圧気体の圧力よりも低い圧力を有する場合は、第1加圧気体と第2加圧気体の圧力差に応じて、第1リップ36aを回転容器1のシール面1aにより強固に、かつ均一に密着させることができる。その結果、原料が隙間Gを通過してしまっても、第1リップ36aによって、原料が第2空間に侵入することが防止される。したがって、リップシール36を回転容器1のシール面1aに押し付ける押圧力をより低減することができる。
【0054】
第2加圧気体が第1加圧気体の圧力と同一の圧力を有する場合は、第1リップ36aはその復元力のみで回転容器1のシール面1aに押し付けられるとともに、バリア38に向かって移動しない。この場合、第2加圧気体が第1加圧気体の圧力よりも低い圧力を有する実施形態と比較すると、第1リップ36aの摩耗量と、第1リップ36aと回転容器1との間で発生する摩擦熱を低減することができる。したがって、第1リップ36aの交換頻度が低下するので、原料撹拌装置のランニングコストを減少させることができる。さらに、製品に混入する摩耗粉の量が低減される。第2加圧気体が第1加圧気体の圧力よりも高い圧力を有する実施形態と比較すると、第2加圧気体が第2空間から第1空間へ流れ込むことが阻害され、その結果、第2加圧気体の消費量を低減することができる。その結果、原料撹拌装置のランニングコストを減少させることができる。
【0055】
なお、第1加圧気体の圧力の大きさと第2加圧気体の圧力の大きさの関係がいかようであっても、第1加圧気体は隙間Gから回転容器1内に噴出する。このため、原料がリップシール(シール部材)36に到達することが抑制されるので、リップシール36を回転容器1のシール面1aに押し付ける押圧力を低減することができる。
【0056】
さらに、本実施形態のシール機構によれば、シール部材36の第2リップ36bが回転容器1のシール面1aに加圧気体によって均一に押し付けられている。そのため、万が一原料が第1リップ36aとシール面1aとの間の隙間を通過して第2空間に進入しても、原料が回転容器1から漏洩することを効果的に防止することができる。
【0057】
第1加圧気体は、第2加圧気体と同一の気体であってもよいし、異なる気体であってもよい。例えば、第1加圧気体は、加圧窒素である一方で、第2加圧気体は、加圧窒素とは異なる圧縮空気であってもよい。回転容器1内の原料のなかには、大量の空気と触れることにより変質してしまう(例えば、酸化してしまう)材料が含まれていることがある。このような場合は、回転容器1内に噴出する第1加圧気体として、不活性ガスを用いるのが好ましい。不活性ガスの例としては、窒素、アルゴンなどが挙げられる。一実施形態では、第1加圧気体として二酸化炭素を用いてもよい。第2加圧気体が回転容器1内に噴出する場合(すなわち、第2加圧気体が第1加圧気体よりも高い圧力を有している場合)は、第2加圧気体も不活性ガスまたは二酸化炭素であるのが好ましい。一方で、第2加圧気体が回転容器1内に噴出しない場合(すなわち、第2加圧気体が第1加圧気体よりも低い圧力を有している場合)は、第2加圧気体として、不活性ガスおよび二酸化炭素よりも安価な圧縮空気を用いて、原料撹拌装置のランニングコストを低下させるのが好ましい。
【0058】
原料撹拌装置で原料の処理が繰り返し行われると、シール機構のリップシール(シール部材)36が劣化して(例えば、摩耗、破損して)、リップシール36のシール性能が許容範囲よりも低下するおそれがある。シール性能の低下は、原料の漏洩につながる。そこで、シール機構は、リップシール36のシール性能の低下を監視するシール監視機構を有していてもよい。
【0059】
図10は、
図3に示すシール機構が備えるシール監視機構の一例を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0060】
図10に示すシール監視機構60は、バリア38(の外周面)とリップシール36(の内周面)との間に形成された空間内の圧力を測定する圧力計61と、該圧力計61をこの空間と連通させる圧力監視ライン62とを備える。圧力監視ライン62は、圧力計61から蓋部材5とホルダ39とを貫通して延びる配管である。
【0061】
リップシール36が劣化して、リップシール36のシール性能が低下すると、バリア38とリップシール36との間の空間に供給された加圧気体が回転容器1から漏洩し、その結果、バリア38とリップシール36との間の空間内の気体の圧力が低下する。圧力計61は、図示しない制御装置に接続されており、制御装置は、圧力計61から送られてくる測定値に基づいてバリア38とリップシール36との間の空間内の気体の圧力を監視している。具体的には、制御装置は、原料の性状、バリア38とリップシール36との間の空間に供給される加圧気体の圧力などに応じて設定される所定の閾値を予め記憶しており、空間内の気体の圧力がこの閾値以下であるか否かを監視している。例えば、バリア38とリップシール36との間の空間に供給される加圧気体の圧力が0.3MPaである場合に、制御装置は、空間内の気体の圧力が0.25MPa以下であるか否かを監視する。この場合、所定の閾値は、0.25MPaである。なお、所定の閾値は、原料の性状、原料撹拌装置で実行される処理条件(例えば、回転容器1の回転速度)、および加圧気体の圧力などに応じて、任意に設定できる。
【0062】
空間内の圧力が所定の閾値以下になると、制御装置は、警報を発して、作業者にシール性能の低下を知らせる。この警報によって、作業者は、現在実行されている処理が完了した後でリップシール36の状態を確認したり、リップシール36を交換したりすることができる。その結果、リップシール36の劣化によって、原料が回転容器1から漏洩することが防止される。
【0063】
図11は、
図3に示すシール機構が備えるシール監視機構の他の例を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図10に示す実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0064】
図11に示すシール監視機構60は、バリア38とリップシール36との間に形成された空間に進入した原料の量を測定可能な粉塵センサ71と、該粉塵センサ71をこの空間と連通させる粉塵監視ライン72とを備える。粉塵監視ライン72は、粉塵センサ71から蓋部材5とホルダ39とを貫通して延びる配管である。
【0065】
上述したように、リップシール36が劣化すると、バリア38とリップシール36との間の空間内の気体の圧力が低下する。そのため、この空間内に原料が進入しやすくなる。そこで、本実施形態では、バリア38とリップシール36との間の空間に進入した原料の量を粉塵センサ71で監視することによって、リップシール36の劣化を監視する。具体的には、粉塵センサ71は、図示しない制御装置に接続されており、制御装置は、粉塵センサ71から送られてくる測定値に基づいてバリア38とリップシール36との間の空間に進入した原料の量を監視している。制御装置は、原料の性状、原料撹拌装置で実行される処理条件(例えば、回転容器1の回転速度)、および加圧気体の圧力などに応じて設定される所定の閾値を予め記憶しており、粉塵センサ71の測定値がこの閾値を超えた場合に警報を発する。
【0066】
所定の閾値は、例えば、以下のように決定される。リップシール36が適切なシール性能を発揮しているときに、バリア38とリップシール36との間の空間に進入する原料の量を粉塵センサ71を用いて測定する。この原料の量に所定の係数(例えば、1.5)を乗算することよって、所定の閾値を決定する。
【0067】
このような構成でも、作業者は警報によってリップシール36の劣化を知ることができる。警報が発せされると、作業者は、現在実行されている処理が完了した後でリップシール36の状態を確認したり、リップシール36を交換したりすることができる。その結果、リップシール36の劣化によって、原料が回転容器1から漏洩することが防止される。
【0068】
シール監視機構60は、
図6を参照して説明したシール機構に設けることも可能である。
図12(a)および
図12(b)は、
図6に示すシール機構が備えるシール監視機構の一例を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図10を参照して説明した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0069】
図12(a)に示すように、シール監視機構60は、バリア38(の外周面)とリップシール36の第1リップ36a(の内周面)との間に形成された第1空間内の圧力を測定する第1圧力計64と、該第1圧力計64をこの第1空間と連通させる第1圧力監視ライン65とを備える。第1圧力監視ライン65は、第1圧力計64から蓋部材5とホルダ39とを貫通して延びる配管である。第1圧力計64は、図示しない制御装置に接続されており、第1空間内の気体の圧力を監視している。
【0070】
図12(b)に示すように、シール監視機構60は、リップシール36の第1リップ36a(の外周面)と第2リップ36b(の内周面)との間に形成された第2空間内の圧力を測定する第2圧力計66と、該第2圧力計66をこの第2空間と連通させる第2圧力監視ライン67とを備える。第2圧力監視ライン67は、第2圧力計66から蓋部材5、ホルダ39、リップシール36、およびブロック47を貫通して延びる配管である。第2圧力計66は、図示しない制御装置に接続されており、第2空間内の気体の圧力を監視している。
【0071】
リップシール36のシール性能が低下すると、第1空間内の気体の圧力、および第2空間内の気体の圧力が低下する。図示しない制御装置は、第1空間内の気体の圧力が所定の第1閾値以下であるか否か、および第2空間内の気体の圧力が所定の第2閾値以下であるか否かを監視している。本実施形態では、第1空間内の気体の圧力が所定の第1閾値以下であるか、または第2空間内の気体の圧力が所定の第2閾値以下である場合に、制御装置はリップシール36の劣化の警報を発するように構成されている。
【0072】
このような構成により、作業者は警報によってリップシール36の劣化を知ることができる。警報が発せされると、作業者は、現在実行されている処理が完了した後でリップシール36の状態を確認したり、リップシール36を交換したりすることができる。その結果、リップシール36の劣化によって、原料が回転容器1から漏洩することが防止される。
【0073】
一実施形態では、第1空間内の気体の圧力が所定の第1閾値以下であり、かつ第2空間内の気体の圧力が所定の第2閾値以下である場合に、制御装置はリップシール36の劣化の警報を発するように構成されていてもよい。あるいは、シール監視機構60は、第1圧力計64と、第2圧力計66のいずれか一方のみを備えていてもよい。この場合、省略された圧力計に接続される圧力監視ラインも省略される。
【0074】
図13(a)および
図13(b)は、
図6に示すシール機構が備えるシール監視機構の他の例を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図12(a)および
図12(b)を参照して説明した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0075】
図13(a)および
図13(b)に示すシール監視機構60は、第1圧力計64の代わりに、第1粉塵センサ74を有しており、第2圧力計66の代わりに、第2粉塵センサ76を有している。第1粉塵センサ74は第1粉塵監視ライン75を介して第1空間と連通し、第2粉塵センサ76は第2粉塵監視ライン76を介して第2空間と連通する。
【0076】
上述したように、粉塵センサが測定する原料の量によってもリップシール36のシール性能の低下を決定することができる。第1粉塵センサ74および第2粉塵センサ76は、図示しない制御装置に接続されており、制御装置は、第1粉塵センサ74の測定値が所定の第1閾値以上であるか、または第2粉塵センサ76の測定値が所定の第2閾値以上である場合に、警報を発して、リップシール36の劣化を作業員に知らせることができる。
【0077】
一実施形態では、第1粉塵センサ74の測定値が所定の第1閾値以上であり、かつ第2粉塵センサ76の測定値が所定の第2閾値以上である場合に、制御装置はリップシール36の劣化の警報を発するように構成されていてもよい。あるいは、シール監視機構60は、第1粉塵センサ74と、第2粉塵センサ76のいずれか一方のみを備えていてもよい。この場合、省略された粉塵センサに接続される粉塵監視ラインも省略される。
【0078】
シール機構は、回転容器1のシール面1aとシール部材36のリップ36aの間の距離を調整するためのシール調整部材を有してもよい。
図14は、シール調整部材の一例を示す模式図である。
【0079】
図14に示す回転容器1は、容器本体1bと、容器本体1bの上端部に接続されるシールリング1cとから構成される。上記シール面1aは、シールリング1cに形成される。シールリング1cは、フランジ状に形成された容器本体1bの上端部に複数のねじ(連結部材)81によって連結される。より具体的には、回転容器1の上端部には、ねじ81が挿入される貫通孔が形成されており、シールリング1cは、貫通孔に対応する位置に形成されたねじ孔1dを有している。ねじ孔1dは、シールリング1cの下面から上面に向かって延びている。シールリング1cをフランジ状の容器本体1bの上面に載せた状態で、ねじ81を貫通孔に通し、これらねじ81をねじ孔1dに螺合させることにより、シールリング1cが容器本体1bに連結される。
【0080】
図14では、1つのねじ81とそのねじ孔1dのみが描かれているが、実際は、シールリング1cは、該シールリング1cの円周方向に等間隔で配置された複数のねじ孔1dを有している。したがって、シールリング1cは、複数のねじ81によって容器本体1bに連結される。複数のねじ81を用いてシールリング1cを容器本体1bに連結すると、シールリング1cの中心軸線は、容器本体1bの中心軸線に一致する。
【0081】
本実施形態において、シールリング1cを容器本体1bに連結するための連結部材はねじ81であるが、連結部材はこの例に限定されない。例えば、連結部材は、回転容器1の容器本体1bのフランジ状の上端部とシールリング1cとを挟むクリップであってもよい。
【0082】
シール機構は、シールリング1cと容器本体1bとの間の隙間から原料が漏洩することを防止するために、シールリング1cの下面と容器本体1bの上面とで挟まれる容器シール部材80を有している。本実施形態では、容器シール部材80はoリングである。なお、容器シール部材80は、シールリング1cと容器本体1bとの間の隙間から原料が漏洩することを防止可能である限り、oリングに限定されない。例えば、容器シール部材80は、樹脂製のシール板であってもよい。
【0083】
図14に示すように、シール機構は、回転容器1とシールリング33の間に挟まれたシール調整部材(調整板)86を有している。調整板86は、リップシール36に対するシールリング1c(すなわち、回転容器1)の距離を調整する所謂「シム(shim)」として機能する。
図14に示す調整板86は、円環形状を有している。さらに、調整板86は、ねじ81が通る貫通孔86aを有している。貫通孔86aは、回転容器1のフランジ状の上端部に形成された貫通孔に対応して設けられている。すなわち、貫通孔86aは、シールリング1cを容器本体1bに連結するためのねじ81に対応して形成されている。
【0084】
調整板46の厚さ(すなわち、シールリング1cの中心軸線の延びる方向における調整板46の大きさ)を変更することにより、リップシール36に対するシールリング1cの位置(すなわち、リップシール36と回転容器1との間の距離)を変更することができる。このような調整板46を用いることにより、リップシール36がシールリング1cに押し付けられる押圧力を自在に調整することができる。例えば、調整板46の厚さを大きくすればするほど、リップシール36はシールリング1cのシール面に大きめの押圧力で押し付けられる。
【0085】
したがって、摩耗によってリップシール36のシール性能が低下したとき(例えば、上述した警報が発せられたとき)、摩耗によるリップシール36および/またはシールリング1cの変形量に応じた厚さを有する調整板46を容器本体1bとシールリング1cとの間に挟むことにより、リップシール36のシール性能を回復することができる。
【0086】
図14では、
図6に示されるリップシール36を有するシール機構が調整板(シール調整部材)46を有する例が説明されたが、
図3に示されるリップシール36を有するシール機構が調整板46を有していてもよい。
【0087】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0088】
1 回転容器(混合パン)
2 第1駆動装置
3 ロータユニット
4 第2駆動装置
5 蓋部材
7 架台
9 カバー
30 シール機構
36 リップシール(シール部材)
36a 第1リップ
36b 第2リップ
36d 貫通孔
38 バリア
39 ホルダ
39b 第1連通孔
39c 第2連通孔
45 ねじ(固定具)
47 ブロック
48 第1加圧気体供給ライン
49 第2加圧気体供給ライン
50,51 圧力調整弁
54,55 流量調整器
60 シール監視機構
61,64,66 圧力計
62,65,67 圧力監視ライン
71,74,76 粉塵センサ
72,75,76 粉塵監視ライン
86 調整板(シール調整部材)