(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 3/06 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
B60H3/06 611A
(21)【出願番号】P 2021049731
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591150797
【氏名又は名称】株式会社デンソーエアクール
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧田 貴文
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-112619(JP,U)
【文献】実開昭56-021124(JP,U)
【文献】特開2014-231296(JP,A)
【文献】実開平06-078027(JP,U)
【文献】特開2004-150717(JP,A)
【文献】特開2011-144987(JP,A)
【文献】特開2020-152258(JP,A)
【文献】特開2001-295319(JP,A)
【文献】特開2019-196872(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0136426(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の吸込口部(111)を有する空調用のケース(110)と、
平面枠状であり、中空部分が前記吸込口部の開口部分に重なるように、前記吸込口部に設置されるフォルダ(130)と、
前記ケースの前記吸込口部に対して前記フォルダを脱着可能に設置する脱着部(150~152)と、
前記フォルダに設置され、前記ケースの前記吸込口部を介して前記ケースの内部に吸い込まれる前記空気を清浄するフィルタ(170)と、
を含み、
前記フォルダは、前記フォルダの平面に沿って前記フィルタをスライドさせると共にスライド方向に沿って前記フィルタを脱着可能な状態で支持するレール(135~138)を有し、前記スライド方向が前記フォルダの平面の面方向のうちの任意の方向に設定された状態で、前記脱着部によって前記ケースの前記吸込口部に脱着可能に設置され、
前記フィルタは、前記フォルダが前記脱着部によって前記ケースの前記吸込口部に設置された状態で前記フォルダに対して前記任意の方向に脱着が可能であると共に、前記フォルダに装着された状態で前記脱着部によって前記ケースの前記吸込口部に対して脱着が可能であ
り、
前記吸込口部は、前記フォルダの平面に垂直な垂直方向において前記ケースの外側に向かって突出すると共に、前記吸込口部の開口部分を一周囲む突出部(120)を有し、
前記突出部は、前記フォルダの平面における外形が正方形であり、
前記フォルダは、前記フォルダの平面における外形が正方形であり、
前記吸込口部の前記突出部が前記フォルダに嵌め込まれることで、前記フォルダが前記ケースの前記吸込口部に設置される、空調装置。
【請求項2】
前記レールは、前記フィルタが前記スライド方向に沿って差し込まれる差込口(143、144)を有し、
前記フォルダは、前記フォルダの平面において、前記レールの前記差込口が前記任意の方向に向けられた状態と、前記レールの前記差込口が前記任意の方向に対して直交する直交方向に向けられた状態と、に脱着可能に設置される、請求項
1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記脱着部は、前記ケースに対して前記フォルダを繰り返し脱着させることが可能なリベット(150~152)である、請求項1
または2に記載の空調装置。
【請求項4】
前記フィルタは、枠部(171)を有し、
前記枠部は、前記枠部が前記フォルダに装着された状態で、前記枠部のうちの前記レールに対応する部分に、前記フォルダの平面に垂直な垂直方向に突出すると共に前記レールに引っ掛かる引っ掛かりリブ(172)を有する、請求項1ないし
3のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項5】
前記レールは、前記スライド方向に沿って連続的または断続的に設けられる、請求項1ないし
4のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項6】
前記フォルダは、前記フォルダを補強するフォルダ補強リブ(131)を有し、
前記フィルタは、枠部(171)と、前記枠部を補強すると共に前記フォルダの平面において前記フォルダ補強リブと同一形状及び同一面積のフィルタ補強リブ(173)と、を有し、前記フォルダの平面に垂直な垂直方向において、前記フィルタ補強リブが前記フォルダ補強リブに重なるように、前記フォルダに装着される、請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項7】
前記フィルタは、枠部(171)を有し、
前記枠部は、前記枠部が前記フォルダに装着された状態で、前記枠部のうちの前記レールに対応する部分に、前記フォルダの平面に垂直な垂直方向に突出すると共に前記レールに接触する風漏れ防止リブ(174)を有し、
前記風漏れ防止リブは、前記レールに接触することにより、前記枠部のうちの前記風漏れ防止リブが設けられた側とは反対側の反対面(177)を前記フォルダに押さえ付ける、請求項1ないし
6のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項8】
前記吸込口部は、前記フォルダの平面に垂直な垂直方向に突出すると共に、前記吸込口部の開口部分を一周囲む突出部(120)を有し、
前記突出部は、前記垂直方向における先端面(128)の全体が前記フォルダに接触する、請求項1ないし
7のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項9】
前記フォルダは、前記スライド方向において前記フォルダのうちの前記フィルタの差し込み側の一端部(139)とは反対側の他端部(140)に、前記脱着部によって前記ケースに脱着可能に固定される固定部(134)を有し、
前記固定部は、前記フォルダの平面に垂直な垂直方向に突出すると共に前記フィルタに接触する部分であり、前記フォルダに対する前記スライド方向における前記フィルタの位置を決めるストッパとしての台座部(145)を有する、請求項1ないし
8のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項10】
前記レールは、前記フィルタが前記スライド方向に沿って差し込まれる差込口(143、144)を有し、
前記差込口は、前記フィルタが前記スライド方向に沿って前記フォルダに差し込まれる方向に向かって開口サイズが小さくなるテーパ形状である、請求項1ないし
9のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項11】
前記フィルタは、枠部(171)を有し、
前記ケース、前記フォルダ、及び前記フィルタの前記枠部は、同一の樹脂材料によって形成されたものである、請求項1ないし
10のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項12】
前記ケースは、車両(200)に搭載されると共に、前記吸込口部が前記車両の室内(210)に位置するように設置される、請求項1ないし
11のいずれか1つに記載の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空調装置のフィルタ取付構造が、例えば特許文献1で提案されている。空調装置は、空気通路が設けられたケースと、ケースに取り付けられるフィルタと、を備える。ケースは、側壁に設けられた取付窓を有する。フィルタは、取付窓からケースの内部に挿入されると共に、ケースに固定される。フィルタは、ケースから取り外すことが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、ケースに対するフィルタの脱着方向は、取付窓の開口方向だけである。すなわち、脱着方向は、1方向のみである。このため、ケースに対してフィルタを他の方向に脱着させることが困難である。ケースに対してフィルタを他の方向に脱着させるためには、フィルタを他の方向に脱着させることができる別のケースを用意する必要がある。
【0005】
例えば、空調装置は、配置される場所に応じて、フィルタの脱着が容易な方向が異なる。よって、空調装置が配置される場所に応じたケースを用意することなく、空調装置がどの場所に設置されたとしても、フィルタの脱着が容易であることが望まれる。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、ケースに対して様々な方向にフィルタを脱着することができる空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、空調装置は、空調用のケース(110)、フォルダ(130)、脱着部(150~152)、及びフィルタ(170)を含む。
【0008】
ケースは、空気の吸込口部(111)を有する。フォルダは、平面枠状であり、中空部分が吸込口部の開口部分に重なるように、吸込口部に設置される。脱着部は、ケースの吸込口部に対してフォルダを脱着可能に設置する。フィルタは、フォルダに設置され、ケースの吸込口部を介してケースの内部に吸い込まれる空気を清浄する。
【0009】
フォルダは、フォルダの平面に沿ってフィルタをスライドさせると共にスライド方向に沿ってフィルタを脱着可能な状態で支持するレール(135~138)を有する。フォルダは、スライド方向がフォルダの平面の面方向のうちの任意の方向に設定された状態で、脱着部によってケースの吸込口部に脱着可能に設置される。
【0010】
フィルタは、フォルダが脱着部によってケースの吸込口部に設置された状態でフォルダに対して任意の方向に脱着が可能であると共に、フォルダに装着された状態で脱着部によってケースの吸込口部に対して脱着が可能である。
吸込口部は、フォルダの平面に垂直な垂直方向においてケースの外側に向かって突出すると共に、吸込口部の開口部分を一周囲む突出部(120)を有している。
突出部は、フォルダの平面における外形が正方形である。フォルダは、フォルダの平面における外形が正方形である。
吸込口部の突出部がフォルダに嵌め込まれることで、フォルダがケースの吸込口部に設置される。
【0011】
これによると、フォルダが脱着部によってケースの吸込口部に脱着可能になっている。このため、フィルタを任意の方向に脱着できるように、フォルダを吸込口部に設置することができる。また、フォルダにフィルタを装着した状態で吸込口部に対してフィルタを脱着することができる。したがって、ケースに対して様々な方向にフィルタを脱着することができる。
【0012】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1に示された空調装置の分解斜視図である。
【
図7】一方向に沿ってフィルタが脱着可能となるように、ケースに対してフォルダが固定された様子を示した図である。
【
図8】他方向に沿ってフィルタが脱着可能となるように、ケースに対してフォルダが固定された様子を示した図である。
【
図14】一方向に沿ってフィルタを脱着する様子を示した図である。
【
図15】他方向に沿ってフィルタを脱着する様子を示した図である。
【
図16】フォルダの平面に垂直な方向に沿ってフィルタを脱着する様子を示した図である。
【
図17】車両の室内に空調装置を配置した様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一実施形態について図を参照して説明する。本実施形態に係る空調装置は、車両に搭載される。車両は、自動車等の一般車両、トラックやバス等の大型車両、建機や農機等の農建機車両を含む。農建機車両は、例えば、油圧ショベル、ブルドーザ、トラクタ等である。タイヤで移動する車両に限られず、クローラによって移動する車両でも良い。
【0015】
図1及び
図2に示されるように、空調装置100は、空調用のケース110、平面枠状のフォルダ130、複数のリベット150~152、及びフィルタ170を備える。
【0016】
ケース110は、内部に空気通路が設けられた筐体部品である。ケース110は、吸込口部111、複数のフランジ部112~117、送風部118、及び温度調整部119を有する。
【0017】
吸込口部111は、ケース110の内部に空気を吸い込むための開口部である。
図2~
図4に示されるように、吸込口部111は、突出部120を有する。突出部120は、フォルダ130の平面に垂直な垂直方向に外側に向かって突出する部分である。また、突出部120は、吸込口部111の開口部分を一周囲む形状である。
図3に示されるように、突出部120は、フォルダ130の平面における外形が正方形である。
【0018】
図2及び
図3に示されるように、フランジ部112~117は、吸込口部111にフォルダ130を固定するためのつば状の部分である。フォルダ130は、3箇所のフランジ部112~114によって、あるいは、3箇所のフランジ部115~117によって、吸込口部111に固定される。
【0019】
ここで、
図2に示されるように、フォルダ130の平面において、フォルダ130とフィルタ170とが配置された方向を一方向と定義する。また、フォルダ130の平面において、一方向に垂直な方向を他方向と定義する。
【0020】
フランジ部112及びフランジ部113は、一方向において、吸込口部111のうちの一方の端部121に離間して設けられる。フランジ部114は、一方向において、吸込口部111のうちの他方の端部122に設けられる。
【0021】
フランジ部115及びフランジ部116は、他方向において、吸込口部111のうちの一方の端部123に離間して設けられる。一方の端部123は、吸込口部111において、温度調整部119の側とは反対側の端部である。フランジ部117は、他方向において、吸込口部111のうちの他方の端部124に設けられる。
【0022】
送風部118は、吸込口部111から吸い込まれる空気を温度調整部119の側に送風する空気通路である。送風部118は、遠心ファン125を収容する。遠心ファン125は、ケース110に設置されたモータ部126によって回転する。吸込口部111は、送風部118において、遠心ファン125のうちのモータ部126の側とは反対側に設けられる。遠心ファン125は、吸込口部111を介してモータ部126の側とは反対側の領域から回転軸の軸方向に空気を吸い込むと共に、吸い込んだ空気を回転軸の径方向に吹き出す。
【0023】
温度調整部119は、送風部118から送られる空気の温度を調整する空気通路である。温度調整部119は、例えば、ヒータコア127を収容する。ヒータコア127は、図示しないポンプによって供給されるエンジン冷却水と、送風部118から送風される空気と、を熱交換させて、送風空気を加熱する熱交換器である。つまり、空調装置100は、温水式の暖房装置である。温度調整部119は、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータを収容しても良い。あるいは、温度調整部119は、ガソリンや軽油等を燃やしてエネルギー源とする燃焼式ヒータを収容しても良い。
【0024】
なお、温度調整部119は、エバポレータを収容しても構わない。エバポレータは、コンプレッサ、コンデンサ、及びエキスパンジョンバルブ等と共に蒸気圧縮式冷凍サイクルを構成する。この場合、空調装置100は、冷房装置である。あるいは、空調装置100は、いわゆるHVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning Unit)として構成されていても良い。この場合、空調装置100は、例えば、ヒートポンプサイクル、冷凍サイクル、あるいはこれらの組み合わせによって空気を加熱、冷却する冷暖房装置である。
【0025】
フォルダ130は、フィルタ170を支持するための部品である。
図2に示されるように、フォルダ130は、垂直方向において、中空部分がケース110の吸込口部111の開口部分に重なるように、吸込口部111に設置される。また、
図5に示されるように、フォルダ130は、フォルダ130の平面における外形が正方形である。
【0026】
フォルダ130は、フォルダ補強リブ131、複数の固定部132~134、及びレール135~138を有する。
【0027】
フォルダ補強リブ131は、フォルダ130を補強する部分である。フォルダ補強リブ131は、フォルダ130の平面において、スライド方向に沿った直線部分と、スライド方向に垂直な方向に沿った直線部分と、が十字状に交差する形状である。スライド方向とは、フォルダ130の平面に沿ってフィルタ170をスライドさせる方向である。
図2では、スライド方向が一方向に対応する。フォルダ補強リブ131は、フォルダ130を通過する空気の流れを阻害しないように、フォルダ130を補強しつつ、フォルダ130の平面における面積が小さくなるように設計される。
【0028】
固定部132~134は、各リベット150~152によってフォルダ130をケース110の吸込口部111に脱着可能に固定するためのつば状の部分である。固定部132及び固定部133は、スライド方向において、フォルダ130のうちのフィルタ170の差し込み側の一端部139に離間して設けられる。フォルダ130のうちのフィルタ170の差し込み側とは、
図2に示されるように、フォルダ130のうち、フィルタ170がフォルダ130に差し込まれる前にフォルダ130に対してフィルタ170が配置される側である。固定部134は、スライド方向において、一端部139の側とは反対側の他端部140に設けられる。
【0029】
固定部132がリベット150によってフランジ部112またはフランジ部115に固定される。固定部133がリベット151によってフランジ部113またはフランジ部116に固定される。固定部134がリベット152によってフランジ部114またはフランジ部117に固定される。
【0030】
各レール135~138は、フォルダ130の平面に沿ってフィルタ170をスライド方向にスライドさせると共に、スライド方向に沿ってフィルタ170を脱着可能な状態で支持する部分である。各レール135~138は、フォルダ130の平面において、フォルダ130のうちのスライド方向に垂直な方向の両端部141、142に設けられる。
【0031】
レール135及びレール136は、端部141において、スライド方向に沿って断続的に設けられる。つまり、レール135とレール136とは離間して設けられる。同様に、レール137及びレール138は、端部142において、スライド方向に沿って断続的に設けられる。レール137とレール138とは離間して設けられる。すなわち、各端部141、142におけるレール135~138の体積を最小限にすることで、フォルダ130のコストを低減できる。
【0032】
また、レール135は、フィルタ170がスライド方向に沿って差し込まれる差込口143を有する。同様に、レール137は、フィルタ170がスライド方向に沿って差し込まれる差込口144を有する。
図6に示されるように、各差込口143、144は、フィルタ170がスライド方向に沿ってフォルダ130に差し込まれる方向に向かって開口サイズが小さくなるテーパ形状である。言い換えると、各差込口143、144は、フィルタ170がスライド方向に沿ってフォルダ130から取り外される方向に向かって開口サイズが大きくなるテーパ形状である。これにより、スライド方向に沿ってフィルタ170をフォルダ130に差し込みやすくなる。
【0033】
各リベット150~152は、ケース110の吸込口部111に対してフォルダ130を繰り返し脱着可能に設置するための部品である。各リベット150~152は、例えば、ナイロン等の樹脂材料によって形成されたものである。
【0034】
各リベット150~152は、フォルダ130の各固定部132~134をケース110のフランジ部112~114に固定する。これにより、フォルダ130は、スライド方向がフォルダ130の平面の面方向のうちの任意の方向に設定された状態で、各リベット150~152によってケース110の吸込口部111に脱着可能に配置される。
【0035】
すなわち、フォルダ130は、フォルダ130の平面において、レール135、137の差込口143、144が任意の方向に向けられた状態に脱着可能に設置される。具体的には、
図7に示されるように、レール135、137の差込口143、144の開口方向は一方向に向けられる。つまり、任意の方向は、例えば一方向である。
【0036】
一方、各リベット150~152は、フォルダ130の各固定部132~134をケース110のフランジ部115~117に固定することもできる。すなわち、フォルダ130は、フォルダ130の平面において、レール135、137の差込口143、144が任意の方向に対して直交する直交方向に向けられた状態に脱着可能に設置される。具体的には、
図8に示されるように、レール135、137の差込口143、144の開口方向は他方向に向けられる。つまり、任意の方向に対して直交する直交方向は、例えば他方向である。
【0037】
このように、フォルダ130の平面において、ケース110の吸込口部111に対してフォルダ130を2方向に脱着可能に設置することができる。
【0038】
なお、ケース110においてフランジ部112、113とフランジ部114との位置を逆転させても良い。これにより、一方向においてレール135、137の差込口143、144が空調装置100の設置面の側に向くようにフォルダ130を吸込口部111に脱着可能に設置することもできる。同様に、ケース110においてフランジ部115、116とフランジ部117との位置を逆転させても良い。これにより、他方向においてレール135、137の差込口143、144がケース110の温度調整部119の側に向くようにフォルダ130を吸込口部111に脱着可能に設置することもできる。
【0039】
ここで、
図9~
図11に示されるように、吸込口部111の突出部120は、垂直方向における先端面128がフォルダ130に接触する。また、突出部120の先端面128の全体がフォルダ130に接触する。これにより、吸込口部111とフォルダ130との間の風漏れを防止することができる。
【0040】
図2及び
図11に示されるように、フォルダ130の固定部134は、台座部145を有する。台座部145は、垂直方向に突出すると共に、フィルタ170がフォルダ130に差し込まれた際にフィルタ170に接触する部分である。すなわち、台座部145は、フォルダ130に対するスライド方向におけるフィルタ170の位置を決めるストッパとして機能する。
【0041】
フィルタ170は、ケース110の吸込口部111を介してケース110の内部に吸い込まれる空気を清浄するための部品である。フィルタ170は、フォルダ130に設置される。
【0042】
図12及び
図13に示されるように、フィルタ170は、枠部171、引っ掛かりリブ172、フィルタ補強リブ173、風漏れ防止リブ174、突起部175、及びフィルタ部材176を有する。
【0043】
枠部171は、フィルタ170の本体部分である。枠部171は、フォルダ130の平面における外形が四角形状である。フォルダ130の平面において、スライド方向に垂直な方向における枠部171の幅は、フィルタ170の外形幅よりも僅かに小さい幅になっている。これにより、フィルタ170がフォルダ130の各レール135~138にスライド可能になる。
【0044】
引っ掛かりリブ172は、フィルタ170をフォルダ130から外れにくくするための部分である。
図1及び
図10に示されるように、引っ掛かりリブ172は、枠部171がフォルダ130に装着された状態で、枠部171のうちのレール135、137に対応する部分に、フォルダ130の平面に垂直な垂直方向に突出するように設けられる。
【0045】
枠部171のうちのレール135に対応する部分とは、枠部171においてレール135とレール136との間のうちのレール135の側の部分である。同様に、枠部171のうちのレール137に対応する部分とは、枠部171においてレール137とレール138との間のうちのレール137の側の部分である。これにより、引っ掛かりリブ172は、スライド方向においてレール135、137に引っ掛かるので、フィルタ170がフォルダ130から容易に外れなくなる。
【0046】
フィルタ補強リブ173は、枠部171を補強する部分である。フィルタ補強リブ173は、フォルダ130の平面において、スライド方向に沿った直線部分と、スライド方向に垂直な方向に沿った直線部分と、が十字状に交差する形状である。フィルタ補強リブ173は、フォルダ130の平面において、フォルダ補強リブ131と同一形状及び同一面積を有する。
【0047】
そして、
図7及び
図8に示されるように、フィルタ補強リブ173は、フォルダ130の平面に垂直な垂直方向において、フォルダ補強リブ131に重なるように、フォルダ130に装着される。例えば、フィルタ170がフォルダ130の固定部134の台座部145によって位置決めされることで、垂直方向においてフォルダ補強リブ131とフィルタ補強リブ173とを重ねることができる。これにより、フィルタ170及びフォルダ130を通過する空気の風量低下を最小限にすることができる。
【0048】
風漏れ防止リブ174は、枠部171とフォルダ130との隙間を無くすための部分である。
図10に示されるように、風漏れ防止リブ174は、枠部171がフォルダ130に装着された状態で、枠部171のうちの各レール135、137に対応する部分に設けられる。風漏れ防止リブ174は、枠部171のうちの各レール136、138に対応する部分に設けられていても良い。
【0049】
風漏れ防止リブ174は、フォルダ130の平面に垂直な垂直方向に突出すると共に、各レール135~138に接触する。また、風漏れ防止リブ174は、枠部171のうちの風漏れ防止リブ174が設けられた側とは反対側の反対面177をフォルダ130に押さえ付ける。反対面177は、フィルタ170がフォルダ130に装着された状態で、フィルタ170のうちのフォルダ130に対向する部分である。これにより、フィルタ170がフォルダ130に密着するので、フィルタ170とフォルダ130との間の風漏れを防止することができる。
【0050】
突起部175は、フィルタ170を持つための部分である。突起部175は、フィルタ170のうちのフォルダ130に差し込まれる側とは反対側に設けられる。フィルタ部材176は、異物を捕獲するシート状の部品である。フィルタ部材176は、枠部171及びフィルタ補強リブ173によって形成された開口部を覆うようにフィルタ170に設けられる。
【0051】
以上が、空調装置100の全体構成である。上記の構成において、ケース110、フォルダ130、及びフィルタ170の枠部171は、樹脂材料、金属材料、樹脂材料と金属材料の複合材料等によって形成される。ケース110、フォルダ130、及びフィルタ170の枠部171は、同一の樹脂材料によって形成されていても良い。同一の樹脂材料として、例えば、PP樹脂やABS樹脂等が採用される。
【0052】
上記の構成によると、フォルダ130が各リベット150~152によってケース110のフランジ部112~114に固定される。この場合、
図14に示されるように、フィルタ170は、フォルダ130がケース110の吸込口部111に設置された状態で、フォルダ130に対して一方向に沿って脱着が可能である。
【0053】
また、フォルダ130が各リベット150~152によってケース110のフランジ部115~117に固定される。この場合、
図15に示されるように、フィルタ170は、フォルダ130がケース110の吸込口部111に設置された状態で、フォルダ130に対して他方向に沿って脱着が可能である。
【0054】
さらに、
図16に示されるように、フィルタ170がフォルダ130に装着された状態で、各リベット150~152によってケース110の吸込口部111に対して、フィルタ170の脱着が可能である。この場合、フィルタ170のスライド方向は、空調装置100が設置される場所に影響されない。すなわち、フィルタ170のスライド方向はフォルダ130に平面の面方向においてどの方向に設定されても構わない。
【0055】
上記の構成では、フォルダ130に平面の面方向において、少なくとも2方向にフィルタ170を脱着させることができる。また、フォルダ130の平面に垂直な方向に沿ってフィルタ170を脱着させることができる。したがって、ケース110に対して様々な方向にフィルタ170を脱着することができる。
【0056】
ケース110は、空調装置100が搭載される車両や場所に応じて様々な外形に設計される場合がある。このような場合でも、吸込口部111の突出部120の外形が正方形であると共に、フォルダ130の外形が正方形であれば、フォルダ130を様々な外形のケース110に適用することができる。つまり、部品の共通化を図ることができる。このため、ケース110に応じたフォルダ130の金型等を用意する必要が無く、空調装置100のコストの低減を図ることができる。
【0057】
車両に搭載される空調装置100は、搭載スペースが限られている。例えば、
図17に示されるように、建機や農機等の車両200の室内210は狭い。このような室内環境においても、ケース110の吸込口部111は車両200の室内210に位置するように設置される。空調装置100が例えばシート220の下や乗組員の足下に配置される場合、フォルダ130にフィルタ170を装着した状態でフォルダ130を垂直方向に脱着させる方法が有効である。
【0058】
あるいは、空調装置100が例えば室内210の床230に配置される場合、空調装置100の位置に応じて、フィルタ170を一方向や他方向に脱着したり、フォルダ130にフィルタ170を装着した状態でフォルダ130を脱着させたりすることができる。フォルダ130の厚みのスペースさえあれば、フィルタ170を一方向や他方向に脱着させることができる。このように、室内210において、省スペースでのフィルタ170の脱着が可能である。特に、室内210において、フィルタ170の取り付け取り外しが困難な位置にケース110の吸込口部111が配置された状況で、フィルタ170の脱着を容易に行うことができる。
【0059】
なお、車両200の室内210は、空間部分だけを意味するのではなく、シート220の下の空間や、空調装置100を保護するためのカバーの内部や、柵で囲まれた空間等のように、室内210に設置された設備によって区切られた空間も含む。
【0060】
以上のように、空調装置100は、フォルダ130の平面のうちの任意の方向や、フォルダ130の平面に対して傾斜した方向等、あらゆる方向へのフィルタ170の脱着を可能とする。このため、横置き、縦置き等の様々な空調装置100の搭載向きに対して、車両搭載時のフィルタ170の脱着方向の自由度を確保することができる。すなわち、車両設計において、フィルタ交換のサービス性向上と空調装置100の搭載方向の自由度が高くなる。また、フィルタ交換時のフィルタ170の取り外しが容易となる。
【0061】
もちろん、フィルタ170によって空調装置100の耐久性や目詰まり防止が可能である。空調装置100にフィルタ170が設けられないことでモータロックのヒータ目詰まりによる性能低下を防止することができる。
【0062】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、各リベット150~152が特許請求の範囲の「脱着部」に対応する。
【0063】
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された空調装置100の構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、上記の実施形態で示された各構成は、全てを備える必要は無く、適宜選択的に採用されても構わない。
【0064】
ケース110はフォルダ130が吸込口部111に固定される形状であれば良く、ケース110の外形は搭載される車両200等に応じて適宜変更できる。
【0065】
吸込口部111は、フォルダ130の平面における外形が正方形以外の形状でも良い。例えば、四角形以外の多角形、円形、楕円形でも構わない。同様に、フォルダ130は、吸込口部111に固定される形状であれば良く、四角形以外の多角形、円形、楕円形でも構わない。フォルダ130が四角形以外の多角形、円形、楕円形だとしてもレール135~138を備えていればフィルタ170をスライドさせて保持することが可能である。
【0066】
さらに、フォルダ130は、フォルダ130の平面において、一方向または他方向の2方向について、吸込口部111に設置される場合に限られない。すなわち、フォルダ130は、フォルダ130の平面において、スライド方向を所望の方向に設定しても良い。これにより、フォルダ130の平面において、フィルタ170をあらゆる方向に脱着させることができる。
【0067】
レール135~138は、フォルダ130の両端部141、142において、スライド方向に沿って連続的に設けられていても良い。この場合、レール135~138は、フィルタ170に対応する部分に溝部を有する。そして、フィルタ170の引っ掛かりリブ172がレール135~138の溝部に嵌まることでフォルダ130に対してフィルタ170が容易に外れなくなる。
【0068】
フォルダ130のフォルダ補強リブ131は十字状に交差する形状に限られず、他の形状でも構わない。フォルダ補強リブ131は、例えば、2本の平行な直線部分として構成されていても構わない。フィルタ170のフィルタ補強リブ173も同様である。
【0069】
ケース110の吸込口部111に対するフォルダ130の固定箇所は3箇所に限られない。すなわち、リベット150~152の数は3個に限られない。リベット150~152の数に応じてフランジ部112~117の数や固定部132~134の数を適宜変更すれば良い。
【0070】
ケース110の吸込口部111に対するフォルダ130の脱着方法は、繰り返し脱着可能なリベット150~152に限られない。例えば、ネジによる脱着、マグネットによる脱着、繰り返し貼り付けと取り外しが可能な粘着テープによる脱着、吸盤による脱着でも良い。これらは特許請求の範囲の「脱着部」に対応する。
【0071】
あるいは、フォルダ130の一端側がケース110に引っ掛かると共に、他端側が爪やスナップフィット等でケース110に脱着可能に固定されるスライドフックを採用しても良い。この場合、フォルダ130の一部及びケース110の一部が特許請求の範囲の「脱着部」に対応する。
【0072】
また、フォルダ130は、一部がヒンジによってケース110に固定されても構わない。この場合、ケース110の吸込口部111に対してフォルダ130を傾斜させた状態でフィルタ170をフォルダ130に脱着させることができる。この場合、ヒンジは特許請求の範囲の「脱着部」に含まれる。
【0073】
フィルタ170を弾性変形させることにより、フォルダ130に対してフィルタ170を繰り返し取り付け及び取り外ししても良い。すなわち、フォルダ130をケース110の吸込口部111に固定した状態で、フィルタ170を垂直方向にたわませることでフォルダ130に脱着させることができる。
【0074】
空調装置100は、車両200に搭載される場合に限られず、据え置き型として構成されていても構わない。この場合も、フィルタ170を様々な方向に脱着可能であると共に、省スペースでのフィルタ170の脱着が可能である。
【符号の説明】
【0075】
100 空調装置、110 ケース、111 吸込口部、120 突出部、128 先端面、130 フォルダ、131 フォルダ補強リブ、134 固定部、135~138 レール、139 一端部、140 他端部、143、144 差込口、145 台座部、150~152 リベット、170 フィルタ、171 枠部、172 引っ掛かりリブ、173 フィルタ補強リブ、174 風漏れ防止リブ、200 車両