(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】半島状突出部と島状突出部とを有する旋削インサート及び旋削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/14 20060101AFI20240501BHJP
B23B 27/22 20060101ALI20240501BHJP
B23B 27/16 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B23B27/14 C
B23B27/22
B23B27/16 A
(21)【出願番号】P 2021505833
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 IL2019050971
(87)【国際公開番号】W WO2020065641
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-14
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ダクウォー,アムジャッド
(72)【発明者】
【氏名】ヘン,ダニエル
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0254909(US,A1)
【文献】特開2008-000837(JP,A)
【文献】中国実用新案第205386638(CN,U)
【文献】中国実用新案第203030940(CN,U)
【文献】特開2004-090198(JP,A)
【文献】特開2004-237438(JP,A)
【文献】特開2009-107052(JP,A)
【文献】特開2009-006437(JP,A)
【文献】特開平08-257822(JP,A)
【文献】特表2001-502250(JP,A)
【文献】実開平05-053804(JP,U)
【文献】国際公開第2001/060554(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00-29/34
B23C 1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸(H)を有する旋削インサート(14)であって、前記旋削インサート(14)は、
2つの対向する多角形主要面(16)、及び前記多角形主要面(16)の間に延在する外周面(18)であって、前記外周面(18)は、前記中心軸(H)回りに円周方向で延在し、2<N<9(Nは整数)であるN個の側面を有し、前記旋削インサート(14)は、中間平面(P)回りに鏡面対称を有し、前記中心軸(H)回りに360を前記Nで除した(360/N)度の回転対称を有し、前記中間平面(P)は、前記中心軸(H)に直交して向けられ、前記外周面(18)を通じて2つの前記主要面(16)の間の中間を通過する、2つの対向する多角形主要面(16)、及び前記多角形主要面(16)の間に延在する外周面(18)と、
それぞれが、前記外周面(18)と前記2つの主要面(16)との間のそれぞれの交線に形成される2つの主要縁部(20)と、を備え、前記各主要縁部(20)は、
前記N個の主切れ刃(22)と前記N個のコーナ切れ刃(24)とを備え、各前記コーナ切れ刃(24)は、2つの隣接する前記主切れ刃(22)の間に延在し、2つの隣接する前記主切れ刃(22)を接続し、各前記主切れ刃(22)は、2つの隆起縁部分(28)と、前記隆起縁部分(28)の間に延在する下縁部分(26)と、を備え、前記隆起縁部分(28)は、前記中心軸(H)に沿った方向で前記下縁部分(26)よりも前記中間平面(P)から遠くに位置し、
各前記主要面(16)は、
それぞれが、それぞれの前記主切れ刃(22)から前記中心軸(H)に向かって延在する前記N個の主要すくい面(31)と、
それぞれが、それぞれの前記コーナ切れ刃(24)から前記中心軸(H)に向かって延在し、2つの隣接する前記主要すくい面(31)の間に位置する前記N個のコーナすくい面(33)と、
それぞれが、前記中心軸(H)から関連する前記コーナ切れ刃(24)に向かう方向で延在する前記N個の少なくとも部分的に凸形の半島状突出部(42)と、
それぞれが、関連する主要すくい面(31)上に少なくとも部分的に位置する少なくとも前記N個の凸形島状突出部(34)であって、所定の主要すくい面(31)に関連する任意及び全ての前記島状突出部(34)は、2つの隣接する前記半島状突出部(42)の間に位置し、各対の隣接する前記半島状突出部(42)の間に、少なくとも1つの島状突出部(34)が位置する、少なくとも前記N個の凸形島状突出部(34)と、を備え、
前記中間平面(P)に直交する前記旋削インサート(14)の平面視において、各前記島状突出部(34)は楕円形状を有するとともに、各前記島状突出部(34)の最大寸法は、隣接する前記下縁部分(26)に平行に延在する長手方向(L)にあ
り、
各前記主要面(16)は、平坦な主要当接面(36)を備え、前記主要当接面(36)は、前記中間平面(P)に平行であり、前記島状突出部(34)よりも前記中間平面(P)から更に遠くに位置する、
旋削インサート(14)。
【請求項2】
各前記コーナ切れ刃(24)は2つのワイパ縁部(23)を備え、前記2つのワイパ縁部(23)は、135度~160度の間の範囲を有するコーナ角(β)を規定する、請求項1に記載の旋削インサート(14)。
【請求項3】
前記コーナ角(β)は135度~145度の間の範囲を有する、請求項2に記載の旋削インサート(14)。
【請求項4】
各前記半島状突出部(42)は、関連するコーナすくい面(33)上に位置する、請求項1~3のいずれか1項に記載の旋削インサート(14)。
【請求項5】
各前記主要面(16)は、前記中間平面(P)に平行な主要当接面(36)を備え、各前記半島状突出部(42)は、それぞれの前記主要当接面(36)と同一平面内にある少なくとも1つの平坦部分を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の旋削インサート(14)。
【請求項6】
各前記島状突出部(34)は、前記主要当接面(36)から離間する、請求項5に記載の旋削インサート(14)。
【請求項7】
あらゆる所定の前記主切れ刃(22)に関し、2つの前記隆起縁部分(28)及び前記下縁部分(26)のそれぞれは、それぞれの移行縁部分(29)によって接続される、請求項1~6のいずれか1項に記載の旋削インサート(14)。
【請求項8】
前記島状突出部(34)は、前記中間平面(P)に直交する方向において、前記下縁部分(26)よりも前記中間平面(P)から遠くに延在しない、請求項1~7のいずれか1項に記載の旋削インサート(14)。
【請求項9】
各前記半島状突出部(42)は、前記中間平面(P)に直交する方向において、隣接する前記隆起縁部分(28)よりも前記中間平面(P)から遠くに延在する、請求項1~8のいずれか1項に記載の旋削インサート(14)。
【請求項10】
前記Nは5に等しい、請求項1~
9のいずれか1項に記載の切削インサート(14)。
【請求項11】
各前記主要面(16)は、全ての対の隣接する前記半島状突出部(42)の間に等しく分散する少なくとも2×前記N個の島状突出部(34)を備える、請求項1~
10のいずれか1項に記載の旋削インサート(14)。
【請求項12】
各前記主要面(16)は、全ての対の隣接する前記半島状突出部(42)の間に等しく分散する厳密に3×前記N個の島状突出部(34)を備える、請求項1~
11のいずれか1項に記載の旋削インサート(14)。
【請求項13】
前記旋削インサート(14)は、前記中心軸(H)と前記コーナ切れ刃(24)のいずれかとの間に島状突出部(34)を有さない、請求項1~
12のいずれか1項に記載の旋削インサート(14)。
【請求項14】
ポケット(12)を有する旋削工具本体(11a)又は高速送り旋削工具本体(11b)と、前記ポケット(12)内に固着される、請求項1~
13のいずれか1項に記載の旋削インサート(14)と、を備える旋削工具(10)。
【請求項15】
前記ポケット(12)は、ポケット基部当接面(58)と、当接壁(60)と、を備え、前記当接壁(60)は、前記基部当接面(58)から離れて横断的に外側に延在し、
前記ポケット基部当接面(58)は、前記旋削インサート(14)の2つの前記主要当接面(36)の1つに当接し、
前記外周面(18)は、前記当接壁(60)を係合する、請求項
14に記載の旋削工具(10)。
【請求項16】
前記ポケット(12)は、締結部材を備え、前記締結部材は、前記旋削インサート(14)を前記ポケット基部当接面(58)及び前記当接壁(60)に強制的に押し付ける、請求項1
5に記載の旋削工具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001] 本出願の主題は、旋削機械加工工具及びインサートに関する。詳細には、本出願の主題は、チップ・ブレーカ又はチップ生成器を有する旋削インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
[002] 本技術分野の旋削インサートは、例えば、米国特許第9,630,257号によって開示されている。
【発明の概要】
【0003】
[003] 本出願の主題の第1の態様によれば、中心軸を有する旋削インサートを提供し、旋削インサートは、
2つの対向する多角形主要面、及び多角形主要面の間に延在する外周面であって、外周面は、中心軸回りで円周方向に延在し、2<N<9である整数N個の側面を有し、旋削インサートは、中間平面回りに鏡面対称を有し、中心軸回りに360/N度の回転対称を有し、中間平面は、中心軸に直交して向けられ、外周面を通じて2つの主要面の間の中間を通過する、2つの対向する多角形主要面、及び多角形主要面の間に延在する外周面と、
それぞれが、外周面と2つの主要面との間のそれぞれの交線に形成される2つの主要縁部と、を備え、各主要縁部は、
N個の主切れ刃とN個のコーナ切れ刃とを備え、各コーナ切れ刃は、2つの隣接する主切れ刃の間に延在し、2つの隣接する主切れ刃を接続し、各主切れ刃は、2つの隆起縁部分と、隆起縁部分の間に延在する下縁部分とを備え、隆起縁部分は、中心軸に沿った方向において、下縁部分よりも中間平面から遠くに位置し、
各主要面は、
それぞれが、それぞれの主切れ刃から中心軸に向かって延在するN個の主要すくい面と、
それぞれが、それぞれのコーナ切れ刃から中心軸に向かって延在し、2つの隣接する主要すくい面の間に位置するN個のコーナすくい面と、
それぞれが、主要面から突出し、中心軸から、関連するコーナ切れ刃に向かう方向で延在するN個の少なくとも部分的に凸形の半島状突出部と、
それぞれが、主要面から突出し、関連する主要すくい面上に少なくとも部分的に位置する少なくともN個の凸形島状突出部であって、所定の主要すくい面に関連する任意及び全ての島状突出部は、2つの隣接する半島状突出部(42)の間に位置し、各対の隣接する半島状突出部の間に、少なくとも1つの島状突出部が位置する、少なくともN個の凸形島状突出部と、を備える。
【0004】
[004] 以下の特徴のいずれも、単独であれ、組合せであれ、本出願の主題に対する上記態様のいずれかに適用可能とすることができる。
【0005】
[005] 各コーナ切れ刃は、2つのワイパ縁部を有することができ、2つのワイパ縁部は、135度~160度の間、好ましくは、135度~145度の間の範囲を有し得るコーナ角を規定する。
【0006】
[006] 各半島状突出部は、好ましくは、関連するコーナすくい面上に位置する。
【0007】
[007] 各主要面は、中間平面に平行な主要当接面を備え、各半島状突出部は、それぞれの主要当接面と同一平面内にある少なくとも1つの平坦部分を有することができる。
【0008】
[008] 各島状突出部は、主要当接面から離間することができる。
【0009】
[009] あらゆる所定の主切れ刃に関し、2つの隆起縁部分及び下縁部分のそれぞれは、それぞれの移行縁部分によって接続することができる。
【0010】
[0010] 島状突出部は、中間平面に直交する方向において、下縁部分よりも中間平面から遠くに延在しない。
【0011】
[0011] 各半島状突出部は、中間平面に直交する方向において、隣接する隆起縁部分よりも中間平面から遠くに延在する。
【0012】
[0012] 中間平面に直交する旋削インサートの平面視において、各島状突出部は、楕円形状を有することができる。
【0013】
[0013] 中間平面に直交する旋削インサートの平面視において、各島状突出部の最大寸法は、隣接する下縁部分に平行に延在する長手方向にある。
【0014】
[0014] 各主要面は、平坦な主要当接面を有し、主要当接面は、中間平面に平行であり、島状突出部よりも更に遠くに位置する。
【0015】
[0015] 各すくい面は、それぞれの主切れ刃から延在する主要すくい面と、それぞれのコーナ切れ刃から延在するコーナすくい面と、を備える。
【0016】
[0016] Nは5に等しくてよい。
【0017】
[0017] 各主要面は、少なくとも2×N個の島状突出部を備え、島状突出部は、全ての対の隣接する半島状突出部の間に等しく分散する。
【0018】
[0018] 各主要面は、厳密に3×N個の島状突出部を有することができ、島状突出部は、全ての対の隣接する半島状突出部の間に等しく分散する。
【0019】
[0019] インサートは、中心軸とコーナ切れ刃のいずれかとの間に島状突出部を有さない。
【0020】
[0020] 旋削工具は、ポケットを有する旋削工具本体又は高速送り旋削工具本体と、ポケット内に固着される旋削インサートと、を有する。
【0021】
[0021] ポケットは、ポケット基部当接面と、当接壁とを備え、当接壁は、基部当接面から離れて横断的に外側に延在し、ポケット基部当接面は、旋削インサートの2つの主要当接面の1つに当接し、外周面は、当接壁を係合する。
【0022】
[0022] ポケットは、締結部材を備え、締結部材は、インサートをポケット基部当接面及び当接壁に強制的に押し付ける。
【0023】
[0023] 高速送り旋削工具本体のポケットは、旋削工具本体のポケットの向きとは異なる向きを有し、それぞれ、それぞれの異なる機械加工用途で構成される。
【0024】
[0024] 本出願の主題をより良好に理解し、本出願を実際にどのように実行し得るかを示すため、次に、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】高速送り旋削工具本体と、高速送り旋削工具本体のポケット内に固着される旋削インサートとを有する旋削工具の等角図である。
【
図2】
図1の高速送り旋削工具本体の等角図である。
【
図6】
図1の旋削インサートの主要面の1つの平面図である。
【
図7】半島状突出部を示す
図6の線VIIによる詳細図である。
【
図8】主要すくい面から延在する島状突出部を示す、
図6の線VIII-VIIIに沿って取った断面図である。
【
図9】2つの島状突出部の間の
図6の線IX-IXに沿って取った断面図である。
【
図10】半島状突出部を示す
図6の線X-Xに沿って取った断面図であり、半島状突出部は、コーナすくい面から延在し、主要当接面と合流する。
【
図11】
図4の旋削インサートを有する
図1の高速送り旋削工具の平面図、及び高速送り機械加工動作が実施される工作物の断面図である。
【
図12】
図4の旋削インサートを有する標準的な非高速送り旋削工具本体の一実施形態の平面図、及び標準的な旋削動作が実施される工作物の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[0025] 適切であると見なされる場合、参照数字は、対応又は類似する要素を示すため、図面の中で繰り返すことがある。
【0027】
[0026] 以下の説明では、本出願の主題の様々な態様を説明する。説明のために、特定の構成及び細部を十分詳細に示し、本出願の主題に対する完全な理解を提供する。しかし、本明細書で提示する特定の構成及び細部を伴わずに本出願の主題を実行し得ることも当業者には明らかであろう。
【0028】
[0027]
図1に注意を向けられたい。いくつかの実施形態によれば、旋削工具10は、高速送り旋削工具本体11a又は旋削工具本体11bを有し、高速送り旋削工具本体11a又は旋削工具本体11bは、ポケット12と、ポケット12内に固着される旋削インサート14とを有する。旋削インサート10は、中心軸Hを有する。
【0029】
[0028] 旋削インサート14は、2つの対向する主要面16と、主要面16の間に延在する外周面18と、を含む。外周面18は、中心軸H回りで円周方向に延在する。各主要面16は、その平面視では全体が多角形形状を有する。特に、各主要面16は、全体が規則的な多角形形状を有する。各主要面16は、その平面視で五角形形状を有することができる。旋削インサート14は、中間平面P回りに鏡面対称を呈し、中間平面Pは、中心軸Hに直交して向けられ、外周面18を通じて2つの主要面16の間の中間を通過する。各主要面16は、平行な、中心軸Hに沿った方向で中間平面Pから最も近くに位置する最低部分平面LP、及び中間平面Pから最も遠くに位置する最高部分平面HPを規定する。中心軸Hに沿った方向で測定すると、最高部分平面HPと中間平面Pとの間の距離は、最低部分平面LPと中間平面Pとの間の距離よりも大きい。最低部分平面LP及び最高部分平面HPは、中間平面Pに平行である。各主要面16は、最低部分平面LPと最高部分平面HPとの間にのみ形成される。
【0030】
[0029] 各主要面16と外周面18との間の交線は主要縁部20を形成する。したがって、旋削インサート14は、2つの主要縁部20を有する。各主要縁部20は、2<N<9個のまっすぐな主切れ刃22と、N個のコーナ切れ刃24とを有し、Nは正の整数である。主切れ刃22は、仮想多角形体上にあり、したがって、仮想多角形体を形成する。全てのコーナ切れ刃24は、2つの隣接する主切れ刃22を接続し、2つの隣接する主切れ刃22の間に延在する。本実施形態では、各主要縁部20は、5つの主切れ刃22と、5つのコーナ切れ刃24と、を含む。
【0031】
[0030] 各主切れ刃22は、1つの下縁部分26と2つの隆起縁部分28とを含む。各下縁部分26は、同じ主切れ刃22に属する2つの隣接する隆起縁部分28の間に位置し、2つの隣接する隆起縁部分28を接続する。各下縁部分26は、移行縁部分29を介して隣接する隆起縁部分28に接続することができる。各隆起縁部分28は、単一コーナ切れ刃24に隣接し、隣接する隆起縁部分28は、単一コーナ切れ刃24を共有する、隣接する主切れ刃22に属する。様々な機械加工条件下で多くの試験を行う間、下縁部分26が、機械電力要件を下げ、インサート及び工具の寿命を延長するのに有利であることがわかった。下縁部分26のこの利点は、以下で更に説明するように、他の特徴と合わせると最良に実現された。
【0032】
[0031] 各コーナ切れ刃24は2つのワイパ縁部23を含む。各ワイパ縁部23は、中心軸Hに平行に見るとまっすぐであり得る。各ワイパ縁部23は、第1の半径R1を有する第1のコーナ縁部25を介して主切れ刃22に接続される。各ワイパ縁部23は、第2の半径R2を有する第2のコーナ縁部27を介して隣接するワイパ縁部23にも接続される。同じ図では、各ワイパ縁部23は、隣接するまっすぐな主切れ刃22と共に、あるワイパ角αを形成する接線を有する。本実施形態によれば、ワイパ角αは、16度に等しい。内側多角形の角度γは、全ての隣接する2つの主切れ刃22の間に規定される。規則的な多角形では、γ=(N-2)×l80/Nである。本発明の多角形形状では、N=5であり、したがって、多角形の角度γは108に等しい。
【0033】
[0032] 各下縁部分26は、中間平面Pに平行に見るとまっすぐであり得る。更に、各下縁部分26は、中間平面Pに直交して見るとまっすぐであり得る。本実施形態によれば、各下縁部分26は、コーナ切れ刃24に位置しない、又はコーナ切れ刃24に重ならない。別の言い方をすれば、各下縁部分26は、それぞれの主切れ刃22の境界内にのみ位置することができる。
【0034】
[0033] 各隆起縁部分28は、中間平面Pに平行に見るとまっすぐであり得る。隆起縁部分28は、中間平面Pに直交する方向で(即ち、中心軸Hに沿って)下縁部分26よりも中間平面Pから遠くに位置する。隆起縁部分28は、中間平面Pから同じ高さ又は同じ距離に位置することができる。本実施形態では、中間平面Pに平行に見ると、全ての隆起縁部分28は、中間平面Pに平行な単一平面内にある。ここで、用語「同じ高さ」及び/又は「同じ単一平面内にある」は、製造公差/開発公差内にあるおおよその用語であると理解されることに留意されたい。
【0035】
[0034] 旋削インサート14は、締め付け貫通孔30を有することができ、締め付け貫通孔30は、両方の主要面16の間に延在し、両方の主要面16に開口する。締め付け孔30は、少なくとも1つの円形断面を有し、中間平面Pに直交する中心軸Hに沿って延在する。中間平面Pに直交する主要面16のいずれか1つの平面視では、中心軸Hは、インサート14の中心を規定する。同じ図において、インサート14は、中心軸H回りに360/N度の回転対称を有する。
【0036】
[0035] 各主要面16は、N個の主要すくい面31とN個のコーナすくい面31とを含む。各主要すくい面31は、それぞれの主切れ刃22から締め付け孔30に向かって延在する。各コーナすくい面33は、それぞれのコーナ切れ刃24から締め付け孔30に向かって延在する。各コーナすくい面33は、2つの主要すくい面31の間に位置する。
【0037】
[0036] 各主要面16は、少なくともN個の別個の島状突出部34を更に含み、島状突出部34のそれぞれは、周囲主要面16から全ての側が突出する。用語「別個」は、島状突出部34が、別の島状突出部34と接触しない(即ち、交差しない)という意味で使用される。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、各主要面16は、少なくとも2×N個の島状突出部34を含むことができる。特に、各主要面16は、厳密に3×N個の別個の島状突出部34を含むことができる。各島状突出部34は、関連する主要すくい面31上に少なくとも部分的に位置する。更に、全ての島状突出部34は、必ずしも厳密に同じサイズを有さない。各主切れ刃22は、少なくとも1つの島状突出部34に関連する、又は少なくとも1つの島状突出部34に隣接して位置する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、島状突出部34は、主切れ刃22から離間することができる。試験中、島状突出部34は、チップを破断するのに有利であることがわかった。特に、島状突出部34と下縁部分26との間の組合せは、全体的な機械加工結果を改善し、より良好なチップの流れ及び破断をもたらした。更に、この特徴の組合せは、以下で説明するインサートの向きの汎用性も改善した。
【0038】
[0037] 本実施形態では、各主切れ刃22は3つの島状突出部34に関連する。本実施形態では、中間島状突出部34aは、隆起縁部分28により近い、他の隣接する側方島状突出部34bよりも大きい。インサート14は、中心軸Hとコーナ切れ刃24のいずれかとの間には島状突出部34を有さない。したがって、中心軸Hと所定のコーナ切れ刃24との間に延在する径方向の線は、島状突出部34に交差しない。言い換えれば、各主要面16の平面視において、それぞれのコーナ切れ刃24を二等分する二等分線軸Bは、島状突出部34を通過しない。コーナ角βは、隣接するワイパ縁部23に接する2つの直線の間に形成される。コーナ角βは、以下の式:β=2×α+γを満たす。コーナ角βは、135度~160の間の範囲とし得る。本実施形態によれば、コーナ角は、140度に等しい。二等分線Bは、主切れ刃22に関連する島状突出部34のいずれにも交差しない。各島状突出部34は、最低部分平面LPから部分的に突出させることができる。
図6に注意を向けられたい。各主要面16の平面視において、各島状突出部34は、楕円形状を有し、この楕円形状は、少なくとも丸形状の突出部と比較すると、切削した工作物のチップを成形し、破断するのに経験上有利であることがわかった。同じ図において、各島状突出部34は、主切れ刃22に平行な方向に延在し得る長手方向Lで最大寸法を有することができる。本実施形態によれば、長手方向Lに直交する断面(
図8)において、各島状突出部34は、平坦な上面を含まず、したがって、「凸形」島状突出部であるとみなされる。島状突出部34は、島状突出部34が周囲の主要面16の上で全ての側で突出するという意味で、島のような形状を有する。図からわかるように、凸形島状突出部34は、平坦な上面がない一方で、中間平面Pに向かって傾斜する表面によって囲まれた頂点35を含むことができ、頂点35は、最高部分であるか、又は島状突出部34のあらゆる他の部分よりも中間平面Pから遠く位置する。
【0039】
[0038]
図8に注意を向けられたい。中心軸Hの方向では、各島状突出部34は、主要縁部20よりも中間平面Pから遠く突出しない。別の言い方をすれば、インサートの中間平面Pに平行な図(
図4、
図5)において、島状突出部34は見えない。特に、頂点35は、それぞれの主切れ刃22に達するが、それぞれの主切れ刃22を通過しない。
【0040】
[0039] 各主要面16は、主要当接面36を有する。主要当接面36は、平坦で、中間平面Pに平行とすることができる。中心軸Hに沿った方向において、主要当接面36は、あらゆる島状突出部34よりも中間平面Pから遠く位置する。同じ方向において、主要当接面36は、最も近い主要縁部20よりも中間平面Pから遠く位置する。本実施形態によれば、主要当接面36は、最高部分平面HPと一致する。締め付け孔30は、主要当接面36に開口することができる。
【0041】
[0040] 各主要面16は、N個の主要偏向面38とN個のコーナ偏向面40とを含む。各コーナ偏向面40は、2つの隣接する主要偏向面38の間に延在する。主要偏向面及びコーナ偏向面40のそれぞれは、主要当接面36又は最高部分平面HPから最低部分平面LPに向かって傾斜する又は下方に延在する。各主要偏向面38は、島状突出部34と少なくとも部分的に接続する。更に、島状突出部34は、主切れ刃22に平行な方向に沿って互いに離間するため、各主要偏向面38は、2つの隣接する島状突出部34の間を少なくとも部分的に通過し、最低部分平面LPと接続している(
図3、
図6)。
【0042】
[0041] 各主要面16は、主要面16から突出するN個の半島状突出部42を有する。各半島状突出部42は、それぞれのコーナ切れ刃24に関連する。各半島状突出部42は、関連するコーナすくい面33上に直接位置することができる。各半島状突出部42は、中心軸Hから関連するコーナ切れ刃24に向かう方向で延在する。各半島状突出部42は、2つの隣接する島状突出部34の間に位置する。各半島状突出部42は、半島状突出部42が、上記の島状突出部34とは異なり、周囲の主要面16から全ての側が突出しないという意味で、半島のような形状を有する。半島状突出部42は、平坦上面及び非平坦上面の両方を含むことができる。上記の一例として、各半島状突出部42は、主要当接面36から延在し、主要当接面36と少なくとも部分的に合流することができる。
図10の断面からわかるように、半島状突出部42の第1の部分44は、主要当接面36と同一平面内にあるように見える一方で、半島状突出部42の第2の部分46は、第1の部分46に対して下方に傾斜している。したがって、各半島状突出部42は、平坦部分44と、凸部分46とを有することができ、半島状突出部を「部分的に凸形」にしている。しかし、他の実施形態では、半島状突出部は、非平坦上面のみを有する、即ち、凸部分のみを有することができ、この場合、半島状突出部は、「完全凸形」とみなされる。所定の主切れ刃22に沿って位置する任意及び全ての島状突出部34、並びに関連する所定の主要すくい面31は、2つの隣接する半島状突出部42の間に位置する(したがって、中間島状突出部34aは、厳密に言うと、2つの側方島状突出部34bの間に位置するにもかかわらず、依然として、2つの隣接する半島状突出部42の間に位置するとみなされると理解されたい)。島状突出部34は、各対の隣接する半島状突出部42の間に、少なくとも1つの島状突出部34が位置するように構成される。島状突出部34は、全ての対の隣接する半島状突出部42の間に等しく分散させることができる。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、半島状突出部42は、コーナ切れ刃24から離間することができる。島状突出部34が主要面16の側部に関連し、「側部島状突出部」としてみなし得るのとは対照的に、半島状突出部42は、主要面16のコーナに関連し、「コーナ半島状突出部」としてみなすことができる。
【0043】
[0042] 外周面18は、N個の側面48とN個のコーナ面50とを有する。各コーナ面50は、全ての2つの隣接する側面48の間に延在する。各コーナ面50は、4つのワイパ逃げ面52を有し、ワイパ逃げ面52のそれぞれは、それぞれのワイパ縁部23から中間平面Pに向かって延在する。各側面48は、中心軸Hに沿って互いに対向する2つの主切れ刃22で2つの主要面16のそれぞれに接触する。各側面48は、2つの主要逃げ面54を有し、主要逃げ面54のそれぞれは、それぞれの主切れ刃22から延在する。各側面48は、2つの主要逃げ面54の間に位置する側部当接面56を更に有する。
【0044】
[0043] 旋削インサート14は、当技術分野で公知のネガティブ・インサートである。具体的には、主要逃げ面54は、まっすぐで、中間平面Pに直交する。
【0045】
[0044] 旋削工具本体11a、11bは、細長形状を有することができる。旋削工具本体11a、11bは、機械加工端部にポケット12を有する。ポケット12は、ポケット基部当接面58と、当接壁60とを含む。ポケット12は、固着手段を更に含む。本実施形態によれば、ポケット12は、締結ボアに螺入される締結部材13の形態の固着手段を有し、締結ボアは、ポケット基部当接面58に開口する。当接壁60は、基部当接面58に対して横断的に延在する。ポケット12は、互いに横断的に延在する2つの当接壁60を有することができる。固着位置において、主要当接面36は、ポケット基部当接面58に当接し、側部当接面56は、当接壁60に当接する。
【0046】
[0045]
図11及び
図12に注意を向けられたい。高速送り旋削工具本体の11aのポケット12は、高速送り旋削工具本体の11a内で、当技術分野で公知の高速送り用途に従って向けられている。
図12では、非高速送り旋削工具本体11bが示され、同じインサート14がポケット12内に組み付けられている。非高速送り旋削工具本体11bにおいて、ポケットの向きは、高速送り工具のポケット12の向きとは異なり、非高速送りの標準的な旋削動作に適している。このことは、インサートの費用の点で有利である。というのは、顧客は、両方の用途に適した単一種のインサートを購入するだけでよいためである。二重ワイパ縁部設計により、高速送りの向き及び標準的な向きの両方に対し高い表面仕上げを保証する。