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特許7481327異なる近接場走査パターンにより提供されるレーザエネルギー分布を視覚化するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】異なる近接場走査パターンにより提供されるレーザエネルギー分布を視覚化するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20240501BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20240501BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240501BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/082
B23K26/21 A
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021517466
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 US2019053376
(87)【国際公開番号】W WO2020069266
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】62/737,538
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501012517
【氏名又は名称】アイピージー フォトニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユーリー・ヴィー・マークショフ
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ・コスクン
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリー・ノヴィコフ
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-532686(JP,A)
【文献】特表2018-520007(JP,A)
【文献】特開2014-219199(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0116518(US,A1)
【文献】国際公開第2017/089126(WO,A1)
【文献】米国特許第04760537(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
C21D 1/09
G01J 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザエネルギー源、およびウォブルパターンでレーザ運動を提供する走査レーザ処理ヘッドを含むレーザ処理システムにより実施されるレーザ処理動作におけるレーザエネルギー分布を視覚化するための方法であって、
前記レーザエネルギー源に関連付けられたレーザ処理パラメータ、および前記走査レーザ処理ヘッドにより提供される前記レーザ運動に関連付けられたレーザ運動パラメータを受け取るステップであって、前記レーザ処理パラメータおよび前記レーザ運動パラメータは、前記レーザエネルギー源および前記走査レーザ処理ヘッドを含む前記レーザ処理システムにより実施されるレーザ処理動作において使用される、ステップと、
前記受け取ったレーザ処理パラメータおよび前記レーザ運動パラメータに少なくとも部分的に基づいて、前記ウォブルパターンに含まれる複数の位置におけるレーザエネルギー分布を決定するステップと、
前記ウォブルパターンに含まれる前記複数の位置における前記レーザエネルギー分布の視覚的表現を表示するステップであって、前記レーザエネルギー分布の前記視覚的表現は、前記レーザ処理動作のトラブルに対処するために、および/または前記レーザ処理動作における実際のレーザエネルギー分布を予測するために使用される、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記レーザ処理システムを使用して、加工物に対してレーザ処理動作を実施するステップをさらに含み、前記レーザ処理動作は、前記レーザエネルギー分布の前記視覚的表現を表示するために使用された前記レーザ処理パラメータおよび前記レーザ運動パラメータを使用して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザ処理パラメータおよび前記レーザ運動パラメータを使用して、前記レーザエネルギー分布の前記視覚的表現を表示する前に、前記レーザ処理動作が実施され、前記レーザエネルギー分布の前記視覚的表現は、前記レーザ処理動作のトラブルに対処するために使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザ処理パラメータおよび前記レーザ運動パラメータを使用して、前記レーザエネルギー分布の前記視覚的表現を表示した後に、前記レーザ処理動作が実施され、前記レーザエネルギー分布の前記視覚的表現は、前記レーザ処理動作におけるレーザエネルギー分布を予測するために使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザ運動は、30×30mm未満の視野に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記レーザ運動パラメータは、レーザ運動パターン、レーザ運動方向、レーザ運動周波数、およびレーザ運動振幅からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記レーザ運動パラメータは、少なくともレーザ運動パターンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記レーザ運動パターンは、円パターン、数字8パターン、無限大パターン、および線パターンからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザ運動パターンは、ユーザに定義される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記レーザ運動パラメータは、レーザ運動周波数、およびレーザ運動振幅をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザ処理パラメータは、ビーム輪郭、ビーム直径、速度、およびレーザパワーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザエネルギー分布を決定するステップは、前記レーザ処理パラメータおよび前記レーザ運動パラメータに基づいて、前記複数の位置のそれぞれに対するビーム照射時間を計算するステップと、前記ビーム照射時間に基づいて、前記複数の位置のそれぞれに対するエネルギー密度を計算するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記視覚的表現を表示するステップは、前記複数の位置のそれぞれに対する前記エネルギー密度を色へと変換するステップと、画面上の各位置において、前記色を表示するステップとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記視覚的表現を表示するステップは、画面上の各位置において、前記レーザエネルギー分布に関連付けられた色を表示するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記レーザエネルギー分布は、複数のレーザ運動パターンに対して決定され、前記視覚的表現は、前記レーザ運動パターンのそれぞれに対して表示される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
レーザエネルギー源、およびウォブルパターンでレーザ運動を提供する走査レーザ処理ヘッドを含むレーザ処理システムにより実施されるレーザ処理動作におけるレーザエネルギー分布を視覚化するための方法であって、
前記レーザ処理システムを使用して、加工物に対してレーザ処理動作を実施するステップであって、前記レーザ処理動作は、前記レーザエネルギー源に関連付けられたレーザ処理パラメータ、および前記走査レーザ処理ヘッドにより提供される前記レーザ運動に関連付けられるレーザ運動パラメータを使用して実施される、ステップと、
前記レーザ処理パラメータおよび前記レーザ運動パラメータを、視覚化システムに入力するステップと、
前記視覚化システムに入力された前記レーザ処理パラメータおよび前記レーザ運動パラメータに少なくとも部分的に基づいて、前記ウォブルパターンに含まれる複数の位置におけるレーザエネルギー分布を決定するステップと、
前記ウォブルパターンに含まれる前記複数の位置における前記レーザエネルギー分布の視覚的表現を表示するステップであって、前記レーザエネルギー分布の前記視覚的表現は、前記レーザ処理動作のトラブルに対処するために使用される、ステップと
を含む方法。
【請求項17】
レーザエネルギー源、およびウォブルパターンでレーザ運動を提供する走査レーザ処理ヘッドを含むレーザ処理システムにより実施されるレーザ処理動作におけるレーザエネルギー分布を視覚化するための方法であって、
前記レーザエネルギー源に関連付けられたレーザ処理パラメータ、および前記走査レーザ処理ヘッドにより提供される前記レーザ運動に関連付けられたレーザ運動パラメータを、視覚化システムに入力するステップと、
前記視覚化システムに入力された前記レーザ処理パラメータおよび前記レーザ運動パラメータに少なくとも部分的に基づいて、前記ウォブルパターンに含まれる複数の位置におけるレーザエネルギー分布を決定するステップと、
前記ウォブルパターンに含まれる前記複数の位置における前記レーザエネルギー分布の視覚的表現を表示するステップと、
前記レーザ処理システムを使用して、加工物に対してレーザ処理動作を実施するステップであって、前記レーザ処理は、前記レーザエネルギー分布の前記視覚表現を生成した前記レーザ処理パラメータおよび前記レーザ運動パラメータを使用して実施される、ステップと
を含む方法。
【請求項18】
コンピュータ可読命令を含む非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読命令は、プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
レーザエネルギー源に関連付けられたレーザ処理パラメータ、および走査レーザ処理ヘッドにより生成されるウォブルパターンにあるレーザ運動に関連付けられたレーザ運動パラメータを受け取ることであって、前記レーザ処理パラメータおよび前記レーザ運動パラメータは、前記レーザエネルギー源および前記走査レーザ処理ヘッドを含むレーザ処理システムにより実施されるレーザ処理動作において使用される、受け取ることと、
前記受け取ったレーザ処理パラメータおよび前記レーザ運動パラメータに少なくとも部分的に基づいて、前記ウォブルパターンに含まれる複数の位置におけるレーザエネルギー分布を決定することと、
前記ウォブルパターンに含まれる前記複数の位置における前記レーザエネルギー分布の視覚的表現を表示することであって、前記レーザエネルギー分布の前記視覚的表現は、前記レーザ処理動作のトラブルに対処するために、および/または前記レーザ処理動作における実際のレーザエネルギー分布を予測するために使用される、表示することと
を含む動作を実施させる、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
前記レーザ処理パラメータおよび前記レーザ運動パラメータを受け取ることは、レーザ処理システムに入力された前記レーザ処理パラメータおよび前記レーザ運動パラメータを受け取るために、前記レーザ処理システムと通信することを含む、請求項18に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
レーザ溶接システムであって、
出力ファイバを含むファイバレーザと、
前記ファイバレーザの前記出力ファイバに結合された溶接ヘッドであって、
ファイバレーザの出力ファイバに結合されるように構成されたコリメータ、
前記コリメータから平行化されたレーザビームを受け取り、前記ビームを少なくとも1つの軸において動かすように構成された少なくとも1つの可動ミラー、および
前記レーザビームを集束させるように構成された焦点レンズ
を備える溶接ヘッドと、
少なくとも前記ファイバレーザ、および前記少なくとも1つのミラーの位置を制御するための制御システムと、
前記ファイバレーザに関連付けられたレーザ処理パラメータ、および前記溶接ヘッドにおける前記少なくとも1つのミラーによるウォブルパターンにあるレーザ運動に関連付けられたレーザ運動パラメータを受け取り、前記受け取ったレーザ処理パラメータおよび前記レーザ運動パラメータに少なくとも部分的に基づいて、前記ウォブルパターンに含まれる複数の位置におけるレーザエネルギー分布を決定し、前記ウォブルパターンに含まれる前記複数の位置における前記レーザエネルギー分布の視覚的表現を表示するようにプログラムされたレーザエネルギー分布視覚化システムと
を備えるレーザ溶接システム。
【請求項21】
前記ファイバレーザは、イッテルビウムファイバレーザを含む、請求項20に記載のレーザ溶接システム。
【請求項22】
前記制御システムは、ウォブルパターンを提供するために、前記少なくとも1つのミラーを制御するように構成される、請求項20に記載のレーザ溶接システム。
【請求項23】
前記制御システムは、前記ビームの運動および/または位置に応じて、レーザパワーを調整すべく前記ファイバレーザを制御するように構成される、請求項20に記載のレーザ溶接システム。
【請求項24】
前記少なくとも1つの可動ミラーは、約1~2°の走査角により画定される限られた視野内だけで、前記ビームを動かすように構成される、請求項20に記載のレーザ溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、「SYSTEM AND METHOD FOR VISUALIZING LASER ENERGY DISTRIBUTIONS PROVIDED BY DIFFERENT NEAR FIELD SCANNING PATTERNS」と題する2018年9月27日に出願された米国仮出願第62/737,538号の利益を主張し、その全体を、参照により本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本開示は、レーザ処理に関し、より詳細には、異なる近接場走査パターンにより提供されるレーザエネルギー分布を視覚化するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ファイバレーザなどのレーザは、溶接などの材料処理用途に使用されることが多い。従来のレーザ溶接ヘッドは、レーザ光を平行にするためのコリメータと、レーザ光を溶接される目標エリアに集束させるための焦点レンズとを含む。例えば、撹拌溶接または「ウォブラ(wobbler)」技法を用いてビームを様々なパターンで移動させて、2つの構造の溶接を容易にすることができる。溶接位置に沿ってレーザ処理ヘッドまたは加工物を動かす、または平行移動させながら、近接場で(すなわち、近接場走査で)ビームを移動するために、様々な技法を使用することができる。これらの近接場走査技法は、例えば、回転もしくは螺旋パターンを形成するために、回転プリズム光学素子を使用してビームを回転させること、およびジグザグパターンを形成するように、X-Yステージ上の溶接ヘッド全体を枢動または移動させることを含む。ビームをより迅速に、かつ正確に移動させるための別の技法は、例えば、本願の権利者が所有し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2016/0368089号でより詳細に開示されるように、可動ミラーを用いてビームによるウォブルパターンを提供することを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2016/0368089号
【文献】国際出願第PCT/US2015/45037号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加工物に沿って異なる近接場走査パターン、または「ウォブル」パターンのビームを移動させることは、特に溶接用途において、レーザエネルギーの好ましい分布を提供することができる。異なるパターンは、様々なプロセスパラメータおよびビーム運動パラメータに応じて、加工物に対して異なるレーザエネルギー分布を生ずる。しかし、既存のシステムは、これらのパラメータから生ずる可能性の高い様々なレーザエネルギー分布を(例えば、レーザ処理動作の前に)ユーザが視覚化する方法を提供することなく、したがって、ユーザは、特定の用途に最も適したパターンおよび/またはパラメータに対して、情報に基づく決定を行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらのおよび他の特徴ならびに利点は、図面と併せて以下の詳細な説明を読めばよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の実施形態と一致する、異なる近接場走査パターンにより提供されるレーザエネルギー分布を視覚化するためのシステムおよび方法で使用され得るレーザ溶接システムの概略的なブロック図である。
図2】本開示の実施形態と一致する、ウォブリングのためのデュアルミラー(dual mirror)により提供される比較的狭い運動範囲を備えた集束レーザビームの概略図である。
図3A】本開示の実施形態と一致する、これらのウォブルパターンにより形成されたサンプル溶接の顕微鏡写真と共に、様々なウォブルパターンを示す概略図である。
図3B】本開示の実施形態と一致する、これらのウォブルパターンにより形成されたサンプル溶接の顕微鏡写真と共に、様々なウォブルパターンを示す概略図である。
図3C】本開示の実施形態と一致する、これらのウォブルパターンにより形成されたサンプル溶接の顕微鏡写真と共に、様々なウォブルパターンを示す概略図である。
図3D】本開示の実施形態と一致する、これらのウォブルパターンにより形成されたサンプル溶接の顕微鏡写真と共に、様々なウォブルパターンを示す概略図である。
図4】本開示の実施形態と一致する、共に組み立てられ、かつ集束ビームを放出するコリメータモジュール、ウォブラモジュール、およびコアブロックモジュールを備えたレーザ溶接ヘッドの斜視図である。
図5】本開示の実施形態と一致する、共に組み立てられかつ集束ビームを放出するコリメータモジュール、ウォブラモジュール、およびコアブロックモジュールを備えたレーザ溶接ヘッドの斜視図である。
図6】本開示の実施形態と一致する、異なる近接場走査パターンにより提供されるレーザエネルギー分布を視覚化するための方法を示す流れ図である。
図6A】本開示の実施形態と一致する、レーザエネルギー分布を計算する一例を示す図である。
図7】異なる近接場走査パターンにより提供されるレーザエネルギー分布を視覚化するためのユーザインターフェースの実施形態の図である。
図8】レーザエネルギー分布を視覚化するためのユーザインターフェースの別の実施形態の図である。
図9】レーザエネルギー分布を視覚化するためのユーザインターフェースのさらなる実施形態の図である。
図9A】別の実施形態に一致する、レーザエネルギー分布を視覚化するためのシステムおよび方法で使用されるレーザ運動パターンを画定するためのユーザインターフェースの図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の実施形態と一致するシステムおよび方法は、走査レーザ処理ヘッドにより生成される1つまたは複数のレーザ運動に含まれるレーザエネルギー分布を視覚化するために使用することができる。システムおよび方法は、受け取ったレーザ処理パラメータおよびレーザ運動パラメータに少なくとも部分的に基づいて、レーザ運動に含まれる複数の位置におけるレーザエネルギー分布を決定する。レーザエネルギー分布の視覚的表現が次いで表示されて、レーザ処理動作に対する適切なパターンおよびパラメータをユーザが視覚化し、選択または画定できるようにする。視覚化システムおよび方法は、レーザ処理動作前のレーザエネルギー分布を視覚化することにより、レーザ処理動作における実際のレーザエネルギー分布を予測するために、かつ/またはレーザ処理動作後のレーザエネルギー分布を視覚化することにより、レーザ処理動作のトラブルに対処するために使用することができる。
【0009】
一例では、レーザエネルギー分布視覚化システムおよび方法は、ウォブルパターンを用いて溶接動作を実施する、可動ミラーを備えたレーザ溶接ヘッドを用いることができる。可動ミラーは、例えば、1~2°の走査角度により画定される、比較的小さな視野内の1つまたは複数のビームのウォブリング運動(近接場走査とも呼ばれる)を提供する。可動ミラーは、ガルボコントローラを含む制御システムによって制御可能なガルバノメータミラーとすることができる。レーザ溶接ヘッドはまた、動かされる1つまたは複数のビームを形成するための回折性光学素子を含むこともできる。
【0010】
図1を参照すると、本開示の実施形態と一致する、レーザエネルギー分布視覚化システム101は、ファイバレーザ112の出力ファイバ111と結合された(例えば、コネクタ111aを用いて)レーザ溶接ヘッド110を含むレーザ溶接システム100で使用することができる。レーザ溶接ヘッド110は、例えば、シーム104を溶接して溶接ベッド106を形成することにより、加工物102に対する溶接を行うために使用され得る。レーザ溶接ヘッド110および/または加工物102は、シーム104の方向に沿って、互いに対して動く、または平行移動することができる。レーザ溶接ヘッド110は、例えば、シーム104の長さに沿ってなど、少なくとも1つの軸に沿って加工物102に対して溶接ヘッド110を動かす、または平行移動させるための移動ステージ114上に位置することができる。加えて、または代替的に、加工物102は、レーザ溶接ヘッド110に対して加工物102を動かす、または平行移動させるための移動ステージ108上に位置することができる。レーザ溶接ヘッド110および/または加工物102は、互いに対して平行移動され、レーザ溶接ヘッド110は、近接場走査またはウォブリングと呼ばれる、加工物102に対するわずかなレーザ運動を生ずる。
【0011】
レーザエネルギー分布視覚化システム101は、レーザ処理パラメータおよびレーザ運動パラメータに基づき、加工物102上のレーザエネルギー分布を視覚化するために使用され得るが、それは、以下でより詳細に述べるものとする。レーザエネルギー分布視覚化システム101は、受け取ったレーザ処理パラメータおよびレーザ運動パラメータに少なくとも部分的に基づいて、レーザ運動に含まれる複数の位置におけるレーザエネルギー分布を決定するようにプログラムされた任意のコンピュータシステムを含むことができる。レーザエネルギー分布視覚化システム101はまた、レーザエネルギー分布の視覚的表現を表示するためのディスプレイ、または他の視覚出力を含むこともできる。レーザエネルギー分布視覚化システム101は、レーザ溶接システム100の特定の実施形態の文脈で述べられているが、視覚化システム101は、任意のタイプのレーザ処理システムと共に使用することができる。
【0012】
ファイバレーザ112は、近赤外線スペクトル範囲(例えば、1060~1080nm)のレーザを生成できるイッテルビウムファイバレーザを含むことができる。イッテルビウムファイバレーザは、いくつかの実施形態では、最高で1kWのパワーを有する、また他の実施形態では、最高で50kWのより高いパワーを有するレーザビームを生成できる単一モード、またはマルチモードの連続波イッテルビウムファイバレーザとすることができる。ファイバレーザ112の例は、IPG Photonics Corporationから販売されているYLR SMシリーズまたはYLR HPシリーズレーザを含む。ファイバレーザ112はまた、IPG Photonics Corporationから販売されているYLS-AMBシリーズレーザなど、調整可能モードビーム(ABM)を含むこともできる。ファイバレーザ112はまた、「Multibeam Fiber Laser System」と題する、2015年8月13に出願された国際出願第PCT/US2015/45037号で開示されたタイプなど、マルチビームファイバレーザを含むことができ、それは、複数のファイバを介して、1つまたは複数のレーザビームを選択的に送達することができる。
【0013】
レーザ溶接ヘッド110は、概して、出力ファイバ111からのレーザビームを平行化するためのコリメータ122と、平行化されたビーム116を反射し、かつ移動させるための少なくとも第1および第2の可動ミラー132、134と、集束ビーム118を集束させ、かつ加工物102へと送達するための焦点レンズ142とを含む。示された実施形態では、平行化されたレーザビーム116を、第2の可動ミラー134から焦点レンズ142へと導くために、固定ミラー144も使用される。コリメータ122、可動ミラー132、134、焦点レンズ142、および固定ミラー144は、共に結合され得る別々のモジュール120、130、140で提供することができ、それは、以下でさらに詳細に述べられる。レーザ溶接ヘッド110はまた、例えば、ミラー132、134が、第2のミラー134から焦点レンズ142の方向に光が反射されるように配置される場合、固定ミラー144を使用せずに構成することもできる。
【0014】
可動ミラー132、134は、異なる軸131、133の回りで枢動することができ、平行化されたビーム116を動かし、したがって、集束ビーム118を、少なくとも2つの異なる直角軸2、4において、加工物102に対して動かす(例えば、ウォブルさせる)。可動ミラー132、134は、ガルボモータによって動かすことのできるガルバノメータミラーとすることができ、それは、迅速に方向を逆にすることができる。他の実施形態では、ステップモータなど、ミラーを動かすために他の機構を使用することができる。レーザ溶接ヘッド110において、可動ミラー132、134を使用することにより、溶接ヘッド110全体を動かす必要なく、かつ回転プリズムを使用することなく、ビームウォブリングのために、正確に、制御可能に、かつ迅速にレーザビーム118を動かすことが可能になる。
【0015】
溶接ヘッド110の実施形態において、可動ミラー132、134は、図2で示すように、10°未満の走査角α、またより具体的には、約1~2°内でビーム118を枢動させることにより、比較的小さい視野(例えば、30×30mm未満)内だけでビーム118を移動し、それにより、ビームのウォブルを可能にする。それとは対照的に、従来のレーザ走査ヘッドは、概して、はるかに大きい視野(例えば、50×50mmを超える、また250×250mmの大きさ)内のレーザビームの運動を提供し、またより大きい視野および走査角に適応するように設計される。したがって、レーザ溶接ヘッド110において比較的小さな視野を提供するに過ぎない可動ミラー132、134を使用することは、直感的に相いれないものであり、ガルボスキャナを使用するときのより広い視野を提供する従来の知識とは対照的なものである。視野および走査角を制限することは、溶接ヘッド110においてガルボミラーを用いたとき、例えば、より高速を可能にし、レンズなどの費用のかからない構成要素の使用を可能にすることにより、かつエアナイフおよび/またはガス支援アクセサリなどのアクセサリと共に使用できるようにすることにより、利点を提供する。
【0016】
焦点レンズ142は、レーザ溶接ヘッドでの使用が知られた、かつ例えば、100mmから1000mmの範囲の様々な焦点距離を有する焦点レンズを含むことができる。従来のレーザ走査ヘッドは、より大きな視野内でビームを集束させるために、はるかに大きな直径(例えば、33mm直径ビームに対する300mm直径レンズなど)を備えたFシータレンズ、フィールド平坦化レンズ、またはテレセントリックレンズなど、多素子走査レンズを使用する。可動ミラー132、134は、比較的小さな視野内でビームを移動させているので、大きな多素子走査レンズ(例えば、Fシータレンズ)は必要ではなく、使用されない。本開示と一致する溶接ヘッド110の1つの例示的な実施形態では、50mm直径の平凸F300焦点レンズは、約15×5mmの視野に含まれる運動を行うように約40mm直径を有するビームに集束させるために使用することができる。小型の焦点レンズ142を使用することはまた、エアナイフおよび/またはガス支援アクセサリなどの付加的なアクセサリを、溶接ヘッド110の端部に使用できるようにする。従来のレーザ走査ヘッドに必要な大型の走査レンズは、このようなアクセサリの使用を制限していた。
【0017】
溶接部に対して少なくとも2つのビームスポット(例えば、溶接の両側に対して)を提供するためにレーザビームを分割するためのビームスプリッタなど、他の光学的な構成要素もまた、レーザ溶接ヘッド110で使用することができる。さらなる光学的な構成要素はまた、回折性光学素子を含むことができ、コリメータ122とミラー132、134の間に配置することができる。
【0018】
保護ウィンドウ146を、溶接プロセスにより生成される破片から、レンズおよび他の光学素子を保護するために、レンズ142の前に設けることができる。レーザ溶接ヘッド110はまた、破片を除くために、保護ウィンドウ146または焦点レンズ142にわたって高速の空気流を送るためのエアナイフ、および/または溶接プルームを抑制するために、溶接部位と同軸に、または軸外にシールドガスを送達するためのガス支援アクセサリなど、溶接ヘッドアクセサリ116を含むこともできる。したがって、可動ミラーを備えるレーザ溶接ヘッド110は、既存の溶接ヘッドアクセサリと共に使用することができる。
【0019】
レーザ溶接システム100の示された実施形態はまた、例えば、ビーム118の先行する位置において、シーム104を検出し、かつ位置を特定するためのカメラなどの検出器150を含む。カメラ/検出器150は、溶接ヘッド110の一方の側に概略的に示されているが、カメラ/検出器150は、シーム104を検出し、場所を特定するために、溶接ヘッド110を通る方向に向けることもできる。
【0020】
レーザ溶接システム100の示された実施形態は、例えば、溶接ヘッド110における感知された状態、シーム104の検出された位置、ならびに/またはレーザビーム118の運動および/もしくは位置などに応じて、ファイバレーザ112を制御し、可動ミラー132、134および/または移動ステージ108、114の位置を制御するための制御システム160をさらに含む。レーザ溶接ヘッド110は、温度状態を感知するために、各第1および第2の可動ミラー132、134の近傍に、第1および第2の温度センサ162、164などのセンサを含むことができる。制御システム160は、可動ミラー132、134の近傍の温度状態を監視するデータを受け取るためのセンサ162、164に電気的に接続される。制御システム160はまた、例えば、シーム104の検出された位置を表すなど、カメラ/検出器150からのデータを受け取ることにより、溶接動作を監視することもできる。
【0021】
制御システム160は、例えば、レーザを遮断する、レーザパラメータ(例えば、レーザパワー)を変更する、または任意の他の調整可能なレーザパラメータを調整することにより、ファイバレーザ112を制御することができる。制御システム160は、レーザ溶接ヘッド110における感知された状態に応じて、ファイバレーザ112を遮断させることができる。感知される状態は、センサ162、164の一方または両方により感知され、かつ高温を生ずるミラーの誤動作を表す温度状態、または高パワーレーザにより生ずる他の状態とすることができる。
【0022】
制御システム160は、安全インターロックをトリガすることにより、ファイバレーザ112を遮断させることができる。安全インターロックは、出力ファイバ111とコリメータ122の間に構成され、出力ファイバ111がコリメータ122から接続が解除されたとき、安全インターロック状態がトリガされ、レーザが遮断されるようにする。示された実施形態では、レーザ溶接ヘッド110は、安全インターロック機構を可動ミラー132、134へと延ばすインターロック経路166を含む。インターロック経路166は、出力ファイバ111と制御システム160の間で延び、レーザ溶接ヘッド110において検出された潜在的に危険な状態に応じて、制御システム160が安全インターロック状態をトリガできるようにする。この実施形態では、制御システム160は、センサ162、164の一方もしくは両方により検出された事前定義の温度状態に応じて、インターロック経路166を介して安全インターロック状態をトリガさせることができる。
【0023】
制御システム160はまた、レーザ112を止めることなく、ビーム118の運動またはその位置に応じて、レーザパラメータ(例えば、レーザパワー)を制御することもできる。可動ミラー132、134の一方がビーム118を範囲外に動かす、または動きが遅すぎる場合、制御システム160は、レーザパワーを低下させて、レーザによる損傷を回避するために、ビームスポットのエネルギーを動的に制御することができる。制御システム160は、マルチビームファイバレーザにおいて、レーザビームの選択をさらに制御することができる。
【0024】
制御システム160はまた、例えば、シーム104を見出し、追跡し、かつ/または従うように、集束ビーム118の位置を修正するために、カメラ/検出器150からシーム104の検出された位置に応じて、可動ミラー132、134の位置を制御することもできる。制御システム160は、カメラ/検出器150からのデータを用いて、シーム104の位置を識別することにより、シーム104を見出し、次いで、ビーム118がシーム104に一致するまで、ミラー132、134の一方または両方を動かすことができる。制御システム160は、ビーム118が、溶接を実施するようにシームに沿って移動するとき、ビームがシーム104と一致するように、ミラー132、134の一方または両方を動かして、ビーム118の位置を連続的に調整または修正することにより、シーム104に従うことができる。制御システム160はまた、溶接中にウォブル運動を提供するように、可動ミラー132、134の一方または両方を制御することもできるが、以下でさらに詳細に述べる。
【0025】
制御システム160は、したがって、レーザとミラーを共に制御するために共に動作するレーザ制御とミラー制御の両方を含む。制御システム160は、例えば、ファイバレーザおよびガルボミラーの制御で使用することが知られたハードウェア(例えば、汎用コンピュータ)およびソフトウェアを含むことができる。例えば、既存のガルボ制御ソフトウェアを使用することができ、本明細書で述べるようにガルボミラーを制御できるように修正することができる。制御システム160は、例えば、選択されたパラメータを受け取るために、レーザエネルギー分布視覚化システム101と通信することができる。レーザ処理パラメータおよびレーザ運動パラメータは、制御システム160に入力され、次いで、視覚化システム101に転送することができる、または、視覚化システム101に入力され、次いで、制御システム160に転送することができる。代替的に、レーザエネルギー分布視覚化システム101は、制御システム160と一体化することもできる。
【0026】
図3A図3Dは、シームの撹拌溶接を実施するために使用され得るウォブルパターンの例を、それにより形成されたサンプル溶接部と共に示す。本明細書で使用される場合、「ウォブル(wobble)」は、レーザビームの往復運動(例えば、1つまたは2つの軸において)を示し、それは、10°未満の走査角により画定される比較的小さな視野に含まれる。図3Aは、時計回りの円形パターンを示す、図3Bは、直線パターンを示し、図3Cは、数字の8のパターンを示し、また図3Dは、無限大パターンを示す。いくつかのウォブルパターンが示されているが、他のウォブルパターンも、本開示の範囲に含まれる。レーザ溶接ヘッド110において、可動ミラーを用いることの1つの利点は、様々な異なるウォブルパターンに従って、ビームを動かすことができることである。
【0027】
図4および図5は、さらに詳細に、走査レーザ溶接ヘッド410の例示的な実施形態を示す。1つの特定の実施形態が示されているが、本明細書で述べられるレーザ溶接ヘッド、ならびにシステムおよび方法の他の実施形態も、本開示の範囲に含まれる。図4で示されるように、レーザ溶接ヘッド410は、コリメータモジュール420、ウォブラモジュール430、およびコアブロックモジュール440を含む。ウォブラモジュール430は上記で論じられた第1および第2の可動ミラーを含み、コリメータモジュール420とコアブロックモジュール440の間に結合される。
【0028】
コリメータモジュール420は、レーザ溶接ヘッドで使用されることが知られたタイプなど、固定された対のコリメータレンズを備えたコリメータ(図示せず)を含むことができる。他の実施形態では、コリメータは、ビームスポットサイズおよび/または焦点を調整できる可動レンズなど、他のレンズ構成を含むことができる。ウォブラモジュール430は、異なる直角軸に関して、ガルボミラー(図示せず)を動かすための第1および第2のガルバノメータ(図示せず)を含むことができる。レーザ走査ヘッドで使用することが知られたガルバノメータを使用することができる。ガルバノメータは、ガルボ制御装置(図示せず)に接続することができる。ガルボ制御装置は、ミラーの運動を、したがって、レーザビームの運動および/または位置を制御するようにガルバノメータを制御するためのハードウェアおよび/またはソフトウェアを含むことができる。知られたガルボ制御ソフトウェアを使用することができ、また本明細書で述べられる機能、例えば、シーム発見、ウォブラパターン、およびレーザを用いる通信などを提供するために修正することができる。コアブロックモジュール440は、ウォブラモジュール430から受け取ったビームを焦点レンズに、次いで加工物へと転送する固定ミラー(図示せず)を含むことができる。
【0029】
図4および図5は、モジュール420、430、440のそれぞれが共に結合され、かつ集束ビーム418を放出する、組み立てられたレーザ溶接ヘッド410を示す。コリメータモジュール420の中に結合されたレーザビームは平行化され、平行化されたビームは、ウォブラモジュール430へと導かれる。ウォブラモジュール430は、ミラーを用いて、平行化されたビームを動かし、動いている平行化されたビームをコアブロックモジュール440へと送る。コアブロックモジュール440は、次いで、動いているビームを集束させ、集束されたビーム418は、加工物(図示せず)へと送られる。
【0030】
図6を参照すると、レーザエネルギー分布を視覚化するための方法600が示され、かつ述べられる。図1で示されるレーザエネルギー分布システム101は、限定することなく、実行可能なソフトウェアを動作させる汎用コンピュータを含む、図6で示された方法600を実施するようにプログラムされた任意のコンピュータシステムを含むことができる。方法600は、レーザエネルギー源に関連付けられたレーザ処理パラメータと、1つまたは複数のレーザ運動に関連付けられたレーザ運動パラメータとを受け取るステップ610を含む。パラメータは、以下でさらに詳細に述べるように、例えば、グラフィカルユーザインターフェースを用いてユーザにより入力することができる。
【0031】
レーザ処理パラメータは、例えば、ビーム輪郭、ビーム直径、速度、およびレーザパワーを含むことができる。ビーム輪郭は、例えば、ガウス分布、一定もしくは「上部が平坦な」輪郭、またはカスタム設計されたビーム輪郭を含むことができる。速度は、加工物に対して動くレーザ処理ヘッドの速度、および/またはレーザ処理ヘッドに対して動く加工物の速度を含むことができる。レーザ処理パラメータはまた、調整可能モードビーム(AMB)レーザに対するレーザパワーパラメータを含むことができ、それは、コアおよび/または外側リングにおけるパワーを制御することにより、ビーム輪郭に対して独立した、動的な制御を提供する。AMBレーザパワーパラメータは、コアにおけるレーザパワー、および外側リングにおけるレーザパワーを含むことができる。
【0032】
レーザ運動パラメータは、例えば、運動パターン、運動方向、運動周波数、および運動振幅を含むことができる。一実施形態では、運動パターンは、ウォブル周波数およびウォブル振幅を有するウォブルパターンである。運動パターンは、1群の事前定義の運動パターン(例えば、円パターン、線パターン、数字8のパターン、または無限大パターン)から選択することができる。運動パターンはまた、例えば、進んだユーザモードインターフェースを用いるなど、ユーザによって定義することができ、それは、以下でより詳細に述べるものとする。
【0033】
方法600はまた、受け取ったパラメータに少なくとも部分的に基づいて、レーザ運動に含まれる複数の位置におけるレーザエネルギー分布を決定するステップ612を含む。レーザエネルギー分布を決定するステップは、例えば、レーザ処理パラメータおよびレーザ運動パラメータに基づいて、照射位置のそれぞれに対するビーム照射時間(すなわち、ビームが各位置上にある時間の長さ)を計算するステップを含む。次に、ビーム照射時間に基づき、かつパワー分布曲線を用いて、照射位置のそれぞれに対するエネルギー密度が計算される。
【0034】
レーザエネルギー分布を計算する一例によれば、図6Aで示されるように、1辺がa mmで中心点A(x0、y0)を有する小正方形を考える。a<<ビーム直径である場合、エネルギー密度は、そこで一定であると考えられる。供給源が、点B(x、y)であり、かつパワー分布が関数f(x)で記述される場合、点B(x、y)が、わずかな時間dtにおいてB'(x+dx、y+dy)に移動したとき、正方形におけるパワー密度ρは、式(1)により見出すことができる。
【0035】
【数1】
【0036】
ここで、L(t)は、点AとBの距離であり、式(2)により表すことができる。
【0037】
【数2】
【0038】
全体の密度を計算するために、式(1)は、以下のように時間で積分される。
【0039】
【数3】
【0040】
一例では、パワー分布f(x)は、ガウス関数g(r)により表すことができる。
【0041】
【数4】
【0042】
ここで、rは、ビーム中心からの距離であり、またσは、ビーム直径に従属するパラメータである。エネルギー密度分布を決定するための他の計算および技法も可能であり、本開示の範囲に含まれる。
【0043】
方法600は、レーザ運動に含まれる照射位置におけるレーザエネルギー分布の視覚的表現を表示するステップ614をさらに含む。レーザエネルギー分布は、例えば、単一の運動パターンに対して、またパターンが移動すると形成される一連の連続する運動パターンに対して表示され得る。視覚的表現を表示するために、照射位置のそれぞれに対して計算されたエネルギー密度は、色に変換することができ、色が、パターンおよび/または一連のパターン上の各照射位置に表示され得る。色は、エネルギー密度の範囲を表す色のスペクトルを含むことができる。色のスペクトルは、例えば、最も低いエネルギー密度を表す青、最も高いエネルギー密度を表す赤、および中間的なエネルギー密度を表す緑を含むことができる。他の色またはさらなる色を使用することもできる。
【0044】
図7を参照すると、レーザエネルギー分布視覚化システムに対するグラフィカルユーザインターフェース700の例が示され、述べられる。グラフィカルユーザインターフェース700は、例えば、視覚化システムソフトウェアを動作させるコンピュータシステムに結合される表示デバイスの画面上に表示することができる。
【0045】
この例では、ユーザインターフェース700は、ビーム直径(μm)712、互いに対して移動するレーザ処理ヘッドおよび/または加工物の速度(mm/s)714、ならびにレーザパワー(W)716を含むプロセスパラメータ710の入力を提供する。ユーザインターフェース700はまた、事前定義のウォブルパターン722、パターン方向(度)724、ウォブル周波数(Hz)726、およびウォブル振幅(mm)728を含むウォブルパラメータ720の入力を提供する。事前定義のウォブルパターンは、例えば、時計回りの円、反時計回りの円、水平線、垂直線、数字8、および無限大パターンを含むことができる。パラメータはまた、ウォブルパターンの開始点のための座標730(例えば、X、Y軸で)を含むことができる。他のパターンおよびパラメータもまた企図され、本開示の範囲に含まれる。例えば、レーザ処理パラメータはまた、ビーム形状および/または輪郭を含むことができる。
【0046】
グラフィカルユーザインターフェース700はまた、異なる色で示された、計算されたレーザエネルギー密度を有する異なるレーザ運動(例えば、異なるパターン)に対するレーザエネルギー分布の視覚的表現を示す視覚化セクション740を含む。視覚的表現は、単一パターンのレーザエネルギー分布742、ならびに複数の期間にわたって反復された一連のパターン(すなわち、レーザ処理ヘッドおよび/または加工物が互いに対して移動するとき)に対する移動するレーザエネルギー分布744、746を含むことができる。この例では、赤色は、最も高いエネルギー密度を有する照射位置を示し、また青色は、最も低いエネルギー密度を有する照射位置を示す。
【0047】
示された例では、異なる周波数パラメータに対して異なる組の視覚的表現が共に示されている。例えば、異なる周波数におけるレーザエネルギー分布をユーザが比較できるように、20Hzウォブル周波数、および40Hzウォブル周波数に対して、レーザエネルギー分布のそれぞれが示されている。視覚化セクション740はまた、比較できるようにするために、他のパラメータに対する異なる組の視覚的表現も示すことができる。任意の数の異なるパターンを視覚化し、かつ比較することができる。
【0048】
レーザエネルギー分布を視覚化し、かつ比較した後、ユーザは、望ましいパラメータに基づいて、レーザ処理動作を開始するために、望ましいプロセスパラメータおよび/またはウォブルパラメータを選択し、かつそのパラメータを入力することができる(例えば、制御システム160に)。プロセスパラメータ710および/またはウォブルパラメータ720をさらに、レーザ処理動作のトラブルへの対処を行うためにレーザ処理動作に続いて、インターフェース700に入力することができる。
【0049】
図8は、レーザエネルギー分布視覚化システムに対する別の例のグラフィカルユーザインターフェース800を示す。この例では、1つだけの選択されたパターンに対するレーザエネルギー分布が表示されている。上記で述べたように、プロセスパラメータ810およびウォブルパラメータ820を選択することに加えて、このユーザインターフェース800は、限定することなく、一定な、または「上部が平坦な」輪郭、およびガウス分布を含むビーム輪郭をユーザが選択できるようにするビーム輪郭パラメータ818を含む。選択されたビーム輪郭は、次いで、他の選択されたプロセスパラメータ810、および選択されたウォブルパラメータ820と共に使用されて、レーザエネルギー密度を計算し、かつ表示されるレーザエネルギー分布を生成することができる。
【0050】
パラメータを選択した後、計算ボタン802が、計算を開始するために使用されて、得られたレーザエネルギー分布を視覚化セクション840に表示させることができる。レーザエネルギー分布は、計算が完了した後、直ちにすべて視覚化セクション840に表示され得る、またはレーザ走査および動きをシミュレートするように形成され得る。ユーザインターフェース800のこの実施形態はまた、視覚化セクションに表示されるレーザエネルギー分布におけるレーザエネルギー密度を計算するために使用されたパラメータを表示するための「で計算された(calculated at)」セクション849を含む。
【0051】
ユーザインターフェース800のこの例は、色のスペクトルに対応するエネルギー密度の範囲をユーザが選択できるようにするためのエネルギー密度表示設定848をさらに含む。示された例では、色のスペクトルは、赤から青までの可視スペクトルを含み、赤は最も高いエネルギー密度を表し、また青はゼロを表す。この例では、エネルギー密度表示設定848は、赤色に対応する最高のエネルギー密度をユーザが設定できるスライダを含む。エネルギー密度設定が変更されたとき、選択されたエネルギー密度範囲に基づいて、表示された予測レーザエネルギー分布上の色が変化する。こうすることは、計算されたレーザエネルギー密度の範囲に応じて、予測されるレーザエネルギー密度分布をユーザがより良好に視覚化できるようにする。
【0052】
示された例では、赤は約50J/mm2のエネルギー密度を表し、黄は約38J/mm2のエネルギー密度を表し、緑は約25J/mm2のエネルギー密度を表し、淡緑青色は約13J/mm2のエネルギー密度を表し、かつ青は0のエネルギー密度を表す。この示された例における視覚化セクション840は、赤色部分852と、赤色部分852の境界をなし、かつその間にある黄色部分854と、黄色部分854を囲む緑色部分856と、緑色部分856の境界をなす淡緑青色858とを含むエネルギー分布850を示している。視覚セクション840の残部は青である。このエネルギー分布850から、指定されたパターンにおける無限大ウォブルパターンが、赤色部分852により表されるより高いエネルギー密度の2本線を形成することが観察され得る。
【0053】
このユーザインターフェース800はまた、ユーザが作業領域のサイズ(例えば、mm当たりのピクセル)を変更できるようにする作業領域パラメータ834を含む。このユーザインターフェース800は、ユーザが時間単位(例えば、ms)当たりのエネルギー低下レベルのパーセンテージを設定できるようにする低下エネルギーシミュレーションパラメータ832をさらに含み、それにより、エネルギー損失のシミュレーションが可能になる。
【0054】
図9は、レーザエネルギー分布視覚化システムに対するさらなる例のグラフィカルユーザインターフェース900を示す。インターフェース900は、上記で述べたインターフェース800を同様であるが、プロセスパラメータ910、ビーム輪郭918、ウォブルパラメータ920、およびエネルギー密度表示設定948の選択を提供する。インターフェース900はまた、AMBレーザに対する視覚化を提供するAMBモード960を含む。AMBモード960が活動化されたとき、プロセスパラメータは、レーザパワーコアパラメータ918およびレーザパワーリングパラメータ919を含む。
【0055】
インターフェース900はまた、パターン内の最大、最小、および平均ビーム速度を示すビーム速度セクション962を含む。パターンが動く、または平行移動する間(すなわち、レーザ処理ヘッドおよび/または加工物が互いに対して移動するとき)、レーザビームはウォブルパターン内で動いているため、ビーム速度は、パターン内の異なる位置で変化し得る。例えば、ビームが、レーザ処理ヘッドおよび/または加工物の移動速度とは反対の、パターンの一部を通って動いているとき、ビーム速度は遅くなる。
【0056】
インターフェース900のこの実施形態は、ユーザがパターンを画定できるようにするユーザ定義のウォブルパターンオプション(例えば、パターン=「ユーザ」)をさらに含む。この実施形態では、ウォブルパラメータ920におけるウォブルパターンとして、「ユーザ」を選択することは、例えば、図9Aで示されるように、進んだユーザモードインターフェース970を活動化させる。進んだユーザモードインターフェース970は、パターン例972、パターンを生成するために使用されるパターン式974、パターン式974における係数の値を変えるためのパターン設定976を表示する。例示的な実施形態では、式974は、図1で示されたウォブルレーザ溶接ヘッド110におけるミラー132、134のそれぞれの運動を制御するための電圧信号を表す。進んだユーザモードインターフェース970はまた、設定を有する式により生成されたパターン978を表示する。
【0057】
ユーザは、パターン例972のうちの1つを選択することができ、またパターン978は、選択されたパターン例を生成するのに使用されたパターン設定976を用いて表示されることになる。ユーザは、次いで、表示されたパターン978を改変するために、選択されたパターン設定976を変更することができる。ユーザが、表示されるパターン978の定義を終了したとき、ユーザは、次いで、視覚化において使用されるユーザ定義パターンとして、表示されたパターン978をセーブし、かつ適用することができる。ユーザ定義パターン978は、インターフェース900上にウォブルパラメータ920と共に表示することができる。
【0058】
したがって、本明細書で述べられた諸実施形態と一致するレーザエネルギー分布視覚化システムおよび方法は、ウォブルパターンを用いる様々な溶接用途に対して、レーザエネルギー分布の向上させた視覚化を可能にする。
【0059】
本発明の原理が、本明細書で述べられてきたが、当業者であれば、この記述は、本発明の範囲に関する限定としてではなく、例として行われているに過ぎないことを理解されたい。本明細書で示され、かつ述べられた例示的な実施形態に加えて、他の実施形態も、本発明の範囲に含まれるように企図される。当業者による変更および置き換えは、本発明の範囲に含まれるものと見なされ、以下の特許請求の範囲によるもの以外は限定されない。
【符号の説明】
【0060】
2 軸
4 軸
100 レーザ溶接システム
101 レーザエネルギー分布視覚化システム
102 加工物
104 シーム
106 溶接ベッド
108 移動ステージ
110 レーザ溶接ヘッド
111 出力ファイバ
111a コネクタ
112 ファイバレーザ
114 移動ステージ
116 平行化されたビーム、溶接ヘッドアクセサリ
118 集束ビーム
120 モジュール
122 コリメータ
130 モジュール
131 軸
132 第1の可動ミラー
133 軸
134 第2の可動ミラー
140 モジュール
142 焦点レンズ
144 固定ミラー
146 保護ウィンドウ
150 カメラ/検出器
160 制御システム
162 第1の温度センサ
164 第2の温度センサ
166 インターロック経路
410 レーザ溶接ヘッド
418 集束ビーム
420 コリメータモジュール
430 ウォブラモジュール
440 コアブロックモジュール
700 グラフィカルユーザインターフェース
710 プロセスパラメータ
712 ビーム直径
714 レーザ処理ヘッドおよび/または加工物の速度
716 レーザパワー
720 ウォブルパラメータ
722 ウォブルパターン
724 パターン方向
726 ウォブル周波数
728 ウォブル振幅
730 ウォブルパターンの開始点のための座標
740 視覚化セクション
742 単一パターンのレーザエネルギー分布
744 移動するレーザエネルギー分布
746 移動するレーザエネルギー分布
800 グラフィカルユーザインターフェース
802 計算ボタン
810 プロセスパラメータ
818 ビーム輪郭パラメータ
820 ウォブルパラメータ
832 低下エネルギーシミュレーションパラメータ
834 作業領域パラメータ
840 視覚化セクション
848 エネルギー密度表示設定
849 「で計算された」セクション
850 エネルギー分布
852 赤色部分
854 黄色部分
856 緑色部分
858 淡緑青色
900 グラフィカルユーザインターフェース
910 プロセスパラメータ
918 ビーム輪郭、レーザパワーコアパラメータ
919 レーザパワーリングパラメータ
920 ウォブルパラメータ
948 エネルギー密度表示設定
960 AMBモード
962 ビーム速度セクション
970 進んだユーザモードインターフェース
972 パターン例
974 パターン式
976 パターン設定
978 パターン
α 走査角
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図6A
図7
図8
図9
図9A