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特許7481335ダイの配置誤差を補正するための適応配線
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ダイの配置誤差を補正するための適応配線
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/00 20060101AFI20240501BHJP
   H01L 25/04 20230101ALI20240501BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240501BHJP
【FI】
H05K3/00 D
H01L25/04 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021522063
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 IL2019051074
(87)【国際公開番号】W WO2020084607
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】62/749,131
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501005438
【氏名又は名称】オルボテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オロン ラム
(72)【発明者】
【氏名】ブルディノフ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ゴシェン エラド
(72)【発明者】
【氏名】カミンスキー ロナルド エフ
(72)【発明者】
【氏名】ラベ ゴネン
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-011264(JP,A)
【文献】国際公開第2017/077532(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02367200(EP,A1)
【文献】特表2013-520826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/00
H01L 25/04
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子モジュールの少なくとも一部分のレイアウト設計を受信するステップであって、前記設計は、少なくとも、(i)少なくとも1つの基板に結合された電子デバイスと、(ii)前記電子デバイスに接続される、設計されたルートを有する電気トレースとを指定している、ステップと、
実際の電子モジュールの少なくとも一部分を表すデジタル入力を受信するステップであって、前記実際の電子モジュールは、前記電気トレースの少なくとも一部分は含まずに、前記レイアウト設計に従って製造されたものである、ステップと、
前記デジタル入力に基づいて、前記レイアウト設計に対する、前記電子デバイスと前記基板の結合における誤差を見積もるステップと、
前記電気トレースの少なくとも前記一部分について、前記誤差を補正する実際的なルートを計算するステップであり、
前記実際の電子モジュールに対して、
(i)前記電子デバイスを取り囲み、その周りに第1のマージンを保持し、前記電子デバイスのサイズ、位置、及び向きに従う第1のフレームと、(ii)前記第1のフレームを取り囲み、前記電子デバイスの周りに前記第1のマージンよりも大きい第2のマージンを保持する第2のフレームと、を規定するステップと、
前記第1のフレームと前記第2のフレームの間で、前記実際的なルートを計算するステップと、
を含む、ステップと、
前記実際の電子モジュールの基板上に、前記電気トレースの少なくとも前記一部分を、前記設計されたルートではなく前記実際的なルートに沿って形成するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記第2のフレームを規定するステップが、前記電子デバイスと前記基板の結合における前記誤差に基づいて、前記第2のマージンを設定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デジタル入力を受信するステップが、(a)少なくとも前記第1及び第2のフレームの内部に配置された、前記実際の電子モジュールの画像と、(b)少なくとも前記第1のフレームと前記第2のフレームの間に配置された、前記電気トレースの少なくとも前記部分の幅の計測値と、からなるリストから選択された少なくとも1つの入力を受信するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記デジタル入力に基づいて、前記電子デバイスの少なくとも一部分が前記第2のフレームを超えるときに、前記実際の電子モジュールを不適格にするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記誤差を見積もるステップが、(a)前記レイアウト設計で指定された第1の位置から、前記デジタル入力で受信された第2の位置への、前記電子デバイスのシフトと、(b)前記レイアウト設計に対する、前記デジタル入力における前記電子デバイスの回転と、(c)前記電子デバイスと前記基板との間のスケーリング誤差と、からなるリストから選択された1つ又は複数の誤差タイプを見積もるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記設計されたルートが、その設計されたルートの第1の縁上の第1の位置に配置された少なくとも1つのポイントを含み、前記実際的なルートを計算するステップが、前記デジタル入力に基づいて、前記ポイントの、前記第1の位置からそれと異なる第2の位置への変位を見積もるステップと、前記第2の位置に基づいて、前記実際的なルートにおける第1の計算縁を、その第1の計算縁上に前記第2の位置が配置されるように計算するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記実際的なルートを計算するステップが、前記実際的なルートが前記レイアウト設計の1つ又は複数の設計ルールに違反しているかどうかをチェックするステップと、前記実際的なルートを前記設計ルールに適合するように調整するステップと、を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記電気トレースを形成するステップが、ダイレクトイメージングシステムを使用して、前記実際的なルートに沿って、前記電気トレースを生成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記基板がプリント回路基板(PCB)を含み、前記電子デバイスが前記PCBに載置された集積回路(IC)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電子デバイスが埋め込みダイパッケージングプロセスを使用して、前記基板に結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
プロセッサであって、
電子モジュールの少なくとも一部分のレイアウト設計を受信し、前記設計は少なくとも、(i)少なくとも1つの基板に結合された電子デバイスと、(ii)前記電子デバイスに接続される、設計されたルートを有する電気トレースとを指定し、
実際の電子モジュールの少なくとも一部分を表すデジタル入力を受信し、前記実際の電子モジュールは、前記電気トレースの少なくとも一部分は含まずに、前記レイアウト設計に従って製造されたものであり、
前記デジタル入力に基づいて、前記レイアウト設計に対する、前記電子デバイスと前記基板の結合における誤差を見積もり、
前記電気トレースの少なくとも前記一部分について、前記誤差を補正する実際的なルートを計算するように構成され、前記実際の電子モジュールに対して、(i)前記電子デバイスを取り囲み、その周りに第1のマージンを保持し、前記電子デバイスのサイズ、位置、及び向きに従う第1のフレームと、(ii)前記第1のフレームを取り囲み、前記電子デバイスの周りに前記第1のマージンよりも大きい第2のマージンを保持する第2のフレームを、規定し、前記第1のフレームと前記第2のフレームの間で、前記実際的なルートを計算する、
ように構成されるプロセッサと、
ダイレクトイメージングサブシステムであって、前記実際的なルートに基づいて、前記実際の電子モジュールの基板上に、前記電気トレースの少なくとも前記一部分を、前記設計されたルートではなく前記実際的なルートに沿って形成するように構成される、ダイレクトイメージングサブシステムと、
を備える、システム。
【請求項12】
前記プロセッサが、前記電子デバイスと前記基板の結合における前記誤差に基づいて、前記第2のマージンを設定するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサが、(a)少なくとも前記第1及び第2のフレームの内部に配置された、前記実際の電子モジュールの画像と、(b)少なくとも前記第1のフレームと前記第2のフレームの間に配置された、前記電気トレースの少なくとも前記部分の幅の計測値と、からなるリストから選択された少なくとも1つの入力を受信するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記デジタル入力に基づいて、前記プロセッサが、前記電子デバイスの少なくとも一部分が前記第2のフレームを超えるときに、前記実際の電子モジュールを不適格にするように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサが、(a)前記レイアウト設計で指定された第1の位置から、前記デジタル入力で受信された第2の位置への、前記電子デバイスのシフトと、(b)前記レイアウト設計に対する、前記デジタル入力における前記電子デバイスの回転と、(c)前記電子デバイスと前記基板との間のスケーリング誤差と、からなるリストから選択された1つ又は複数の誤差タイプを見積もるように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記設計されたルートが、その設計されたルートの第1の縁上の第1の位置に配置された少なくとも1つのポイントを含み、前記プロセッサが、前記デジタル入力に基づいて、前記ポイントの、前記第1の位置からそれと異なる第2の位置への変位を見積もり、前記第2の位置に基づいて、前記実際的なルートにおける第1の計算縁を、その第1の計算縁上に前記第2の位置が配置されるように計算するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記プロセッサが、前記実際的なルートが前記レイアウト設計の1つ又は複数の設計ルールに違反しているかどうかをチェックし、前記設計ルールに適合するように前記実際的なルートを調整するように構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記ダイレクトイメージングサブシステムが、前記実際的なルートに沿って、前記電気トレースを焼き付けるように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記基板がプリント回路基板(PCB)を含み、前記電子デバイスが前記PCBに載置された集積回路(IC)を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項20】
前記電子デバイスが埋め込みダイパッケージングプロセスを使用して、前記基板に結合される、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電子モジュールの製造、詳細には、電子モジュールの基板上にある電子デバイスの相互接続体を適応的に配線するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子モジュール及びシステムは、典型的には、電気相互接続体を使用して基板に電気的に接続された1つ又は複数の電子デバイスを含む。この電気相互接続体をパターニングする様々な技術が当技術分野で知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に、電気回路を製造するためのシステム及び方法が記載されている。このシステム及び方法では、電気回路図を不均一に修正することによってデジタル制御画像が生成される。したがってそのデジタル制御画像を使用して基板上に記録される電気回路パターンは、電気回路のすでに形成された部分に正確に適合する。
【0004】
特許文献2に、パネルベースのパッケージ構造体を製造するための適応パターニングの方法及びシステムが記載されている。パネルすなわち網目模様がついたウエハ内における個々のデバイスユニットの位置ずれの調整が、個々のデバイスユニットの位置を計測し、それらの各デバイスユニットにそれぞれ重ねて、ユニット別のパターンを形成することによって行われ得る。
【0005】
特許文献3に、パネル状パッケージングのための、動的にビアを切り取る適応パターニングの半導体デバイス及び方法が記載されている。封入材を含んだパネルが形成され、この封入材は複数の半導体ダイの周りに配設されている。上記パネルに含まれている複数の半導体ダイの、それぞれの実際の位置が計測される。第1のキャプチャパッドを含んだ導電性の再配線層(RDL)が形成される。この第1のキャプチャパッドは、上記複数の半導体ダイのそれぞれの実際の位置と位置合わせされる。複数の第2のキャプチャパッドが形成される。この第2のキャプチャパッドは、上記第1のキャプチャパッド上に少なくとも部分的に配設され、複数の半導体パッケージのそれぞれのパッケージの輪郭と位置合わせされる。複数の導電性ビアの公称フットプリントが、各半導体ダイとそれに対応するパッケージの輪郭との間の位置ずれを考慮するように調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第7,508,515号
【文献】米国特許第8,799,845号
【文献】米国特許第9,040,316号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子モジュールの製造は、典型的には、少なくとも1つの電子デバイスを基板に結合するステップを含む。それには、例えば、この電子デバイスを、ダイシングしたウエハからダイとしてピックアップして基板上に配置していく。典型的には、この電子デバイスを、基板上にある他の構成部品に、電気トレースを使用して接続する。
【0008】
場合によっては、上記のダイの配置に誤差が発生する。この誤差は、基板上で電子デバイスと電気トレースとの位置ずれを引き起こす可能性があり、その結果、電子モジュールが機能低下を起こしたり、不適格になったりする。
【0009】
以下に説明する本発明の実施形態は、電子デバイスの配置誤差を見積もり、基板上の電気トレースをそれに適応するように配線することによって補正するためのシステム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に記載の本発明の一実施形態が、電子モジュールの少なくとも一部分のレイアウト設計を受信するステップを含む方法を提供し、上記設計は少なくとも、(i)少なくとも1つの基板に結合された電子デバイスと、(ii)上記電子デバイスに接続される、設計されたルートを有する電気トレースとを指定している。実際の電子モジュールの少なくとも一部分を表すデジタル入力が受信され、上記実際の電子モジュールは、上記電気トレースの少なくとも一部分は含まずに、上記レイアウト設計に従って製造されたものである。上記レイアウト設計に対する、上記電子デバイスと上記基板の結合における誤差が、上記デジタル入力に基づいて見積もられる。上記電気トレースの少なくとも上記部分について、上記見積誤差を補正する実際的なルートが計算される。上記実際の電子モジュールの基板上に、上記電気トレースの少なくとも上記部分が、上記設計ルートではなく上記実際的なルートに沿って形成される。
【0011】
いくつかの実施形態では、上記実際的なルートを計算するステップが、上記実際の電子モジュールに対して、(i)上記電子デバイスを取り囲み、その周りに第1のマージンを保持する、第1のフレームと、(ii)上記第1のフレームを取り囲み、上記電子デバイスの周りに上記第1のマージンよりも大きい第2のマージンを保持する、第2のフレームと、を規定するステップを含む。上記第1のフレームと上記第2のフレームの間で、上記実際的なルートが計算される。他の実施形態では、上記第2のフレームを規定するステップが、上記電子デバイスと上記基板の結合における上記見積誤差に基づいて、上記第2のマージンを設定するステップを含む。他の実施形態では、上記デジタル入力を受信するステップが、(a)少なくとも上記第1及び第2のフレームの内部に配置された、上記実際の電子モジュールの画像と、(b)少なくとも上記第1のフレームと上記第2のフレームの間に配置された、上記電気トレースの少なくとも上記部分の幅の計測値と、からなるリストから選択された少なくとも1つの入力を受信するステップを含む。
【0012】
一実施形態では、上記方法が、上記デジタル入力に基づいて、上記電子デバイス又は上記第1のフレームの少なくとも一部分が上記第2のフレームを超えるときに、上記実際の電子モジュールを不適格にするステップを含む。別の実施形態では、上記誤差を見積もるステップが、(a)上記レイアウト設計で指定された第1の位置から、上記デジタル入力で受信された第2の位置への、上記電子デバイスのシフトと、(b)上記レイアウト設計に対する、上記デジタル入力における上記電子デバイスの回転と、(c)上記電子デバイスと上記基板との間のスケーリング誤差と、からなるリストから選択された1つ又は複数の誤差タイプを見積もるステップを含む。別の実施形態では、上記設計ルートが、その設計ルートの第1の縁上の第1の位置に配置された少なくとも1つのポイントを含み、上記実際的なルートを計算するステップが、上記デジタル入力に基づいて、上記ポイントの、上記第1の位置からそれと異なる第2の位置への変位を見積もるステップと、上記第2の位置に基づいて、上記実際的なルートにおける第1の計算縁を、その第1の計算縁上に上記第2の位置が配置されるように計算するステップと、を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、上記実際的なルートを計算するステップが、上記実際的なルートが上記レイアウト設計の1つ又は複数の設計ルールに違反しているかどうかをチェックするステップと、上記実際的なルートを上記設計ルールに適合するように調整するステップと、を含む。他の実施形態では、上記電気トレースを形成するステップが、ダイレクトイメージングシステムを使用して、上記実際的なルートに沿って、上記電気トレースを生成するステップを含む。
【0014】
一実施形態では、上記基板がプリント回路基板(PCB)を含み、上記電子デバイスが上記PCBに載置された集積回路(IC)を含む。別の実施形態では、上記電子デバイスが埋め込みダイパッケージングプロセスを使用して、上記基板に結合される。
【0015】
さらに、本発明の一実施形態によると、プロセッサとダイレクトイメージングサブシステムとを備えるシステムが提供される。上記プロセッサは、(a)電子モジュールの少なくとも一部分のレイアウト設計を受信し、上記設計は少なくとも、(i)少なくとも1つの基板に結合された電子デバイスと、(ii)上記電子デバイスに接続され、設計されたルートを有する電気トレースとを指定し、(b)実際の電子モジュールの少なくとも一部分を表すデジタル入力を受信し、上記実際の電子モジュールは、上記電気トレースの少なくとも一部分は含まずに、上記レイアウト設計に従って製造されたものであり、(c)上記デジタル入力に基づいて、上記レイアウト設計に対する、上記電子デバイスと上記基板の結合における誤差を見積もり、(d)上記電気トレースの少なくとも上記部分について、上記見積誤差を補正する実際的なルートを計算する、ように構成される。上記ダイレクトイメージングサブシステムは、上記実際的なルートに基づいて、上記実際の電子モジュールの基板上に、上記電気トレースの少なくとも上記部分を、上記設計ルートではなく上記実際的なルートに沿って形成するように構成される。
【0016】
本発明については、その実施形態の以下の詳細な説明を各図面と併せ読めば、よく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による、基板上に導体を焼き付けるためのダイレクトイメージング(DI)システムの模式図である。
図2A】本発明の一実施形態による、電子モジュールのレイアウト設計の模式図である。
図2B】本発明の一実施形態による、電子デバイスと基板の結合における誤差を補正するためのレイアウトの模式図である。
図3】本発明の一実施形態による、電子デバイスと基板の結合における見積誤差を補正する方法を概略的に示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態による、電子モジュールの一区画のレイアウト設計の模式図である。
図5】本発明の一実施形態による、電子デバイスと基板の結合における見積誤差を補正する、電気トレースの実際的なルートを計算するための処理シーケンスの模式図である。
図6】本発明の一実施形態による、ある特定の電子モジュールのレイアウト設計と、その特定の電子モジュールの実際に製造された構成部品の画像との間の変換行列を生成するための処理シーケンスの模式図である。
図7】本発明の一実施形態による、2つの電子デバイスの間の基板を介した電気的結合に対する誤差を補正するためのレイアウトの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
概要
いくつかの実施形態では、上記システムは、上記電子モジュールの少なくとも一部分のレイアウト設計を受信するように構成されたプロセッサを備える。受信されたレイアウト設計は少なくとも、上記基板に結合された上記電子デバイスと、その電子デバイスに接続され、設計されたルートを有する電気トレースとを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサはさらに、実際の電子モジュールの少なくとも一部分の、例えば画像及び計測値などのデジタル入力を受信する。この実際の電子モジュールは、1つ又は複数の上記電気トレースの少なくとも1つの区画は含まずに、上記レイアウト設計に従って製造されたものである。いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、上記デジタル入力に基づいて、上記レイアウト設計に対する、上記基板上の電子デバイスの位置の誤差を見積もるように構成される。上記プロセッサはさらに、1つ又は複数の電気トレースの少なくとも上記区画について、上記見積誤差を補正する実際的なルートを計算するように構成される。
【0020】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、上記レイアウト設計及び指定された誤差に基づいて、電子デバイスを取り囲む内側及び外側のフレームを計算するように構成される。内側のフレームは、例えば、電子デバイスを、所定のマージンをとって同軸に取り囲み、外側のフレームは、指定された誤差以上のマージンを有して、内側のフレームを取り囲む。上記内側フレームと外側フレームの間のマージンは、本明細書では「補正ゾーン」とも呼ばれる。
【0021】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、上記区画の設計ルートの特定の一方の縁に沿って、1つ又は複数のポイントを選択するように構成される。上記プロセッサは、選択ポイントごとに、上記特定の縁に対向すると反対側の上記区画の縁に沿って、その選択ポイントから最小距離に位置するポイントを見つけるように構成される。この最小距離は、本明細書では設計幅と呼ばれる。
【0022】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、上記デジタル入力に基づいて、上記補正ゾーン内で、上記区画の計算ルートを計算するように構成される。この計算は、少なくとも上記設計ルートの上記選択ポイントを、上記デジタル入力に適合するように変換することによって行われる。上記プロセッサはさらに、選択ポイントごとに幅を計算する。この計算は、それぞれの選択ポイントから最小距離に位置する、上記区画の反対側の縁にある対応ポイントを見つけることによって行われる。
【0023】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、例えば1つ又は複数の選択ポイントのところでそれに対応する上記設計幅と上記計算幅を比較するなどによって、上記計算ルートが上記区画の設計ルールに適合しているかどうかチェックし、そして必要に応じて、その計算ルートを設計ルールに適合するように調整することによって、実際的なルートを計算するように構成される。
【0024】
いくつかの実施形態では、上記システムはさらに、ダイレクトイメージングサブシステムを備え、このダイレクトイメージングサブシステムは、上記実際的なルートに基づいて、実際の電子モジュールの基板上に、上記電気トレースの少なくとも上記区画を、上記設計ルートではなく上記実際的なルートに沿って生成するように構成される。
【0025】
ここで開示する技術は、電子モジュールのピックアンドプレース工程のばらつきを補償するようにデバイスと基板との間の配線を調整することによって、例えばPCB又は埋め込みダイパッケージに組み込まれる電子モジュールの品質を改善する。それに加えて、この開示技術は、製造歩留まりを向上させ、基板の決まったスペース上に製造される電子モジュールの高密度化を可能にすることによって、かかる電子モジュールの生産効率も改善する。
【0026】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、基板106上にパターンを焼き付けるためのダイレクトイメージング(DI)システム100の模式図である。
【0027】
いくつかの実施形態では、システム100は、光学支持テーブル(図示せず)に取り付けられたシャシ101を備える。シャシ101は基板支持面104を備え、この基板支持面104は、システム100が基板106にパターンを焼き付けるために、その基板106を保持するように構成される。いくつかの実施形態では、基板106は、その基板106に対して実行されるコンピュータ直接書き込みに適した任意の基板を含むことができ、このパターニングは、典型的には、基板106の1つ又は複数の表面を覆うフォトレジストをレーザ光に露光することによって、その表面上にオブジェクトを画定する。他の実施形態では、上記パターニングは、基板106の1つ又は複数の表面を覆う他の任意の適当な感光性材料をレーザ光に露光することによって、その表面上にオブジェクトを画定し得る。いくつかの実施形態では、システム100は、複数のオブジェクトの設計を焼き付ける目的で、基板に直接書き込み工程を適用するように構成される。
【0028】
本発明の文脈では、オブジェクトという用語は、コンピュータ直接書き込みによって基板106上にパターニングされ得る、電子モジュールなどの任意のユニットの特徴的部分を表す。このユニットはそれぞれ、典型的には、基板106上に位置する他の隣接するユニットから隔置されている。いくつかの実施形態では、システム100は、様々なタイプのモジュールを処理するように構成される。様々なタイプのモジュールとは、例えば、プリント回路基板(PCB)に載置された1つ又は複数のデバイスと電気的に接続するように構成された電子回路や、集積回路(IC)デバイスなどの、埋め込みダイとして任意の適当な基板にパッケージングされた1つ又は複数のデバイスなどであるが、これらに限定されない。上記埋め込みダイパッケージは、例えば、様々なタイプのデバイスのファンイン及び/又はファンアウトパッケージを含み得る。様々なタイプのデバイスとは、例えば、プロセッサ、コントローラ、メモリデバイス、様々なタイプの1つ又は複数のセンサ、及び様々なタイプの1つ又は複数の光源などである。
【0029】
いくつかの実施形態では、基板106は、ガラス繊維織物、ポリイミド、エポキシ化合物又は他の任意のタイプの剛性若しくは可撓性を有するポリマーのうちの少なくとも1つを含んだパネル、或いは半導体材料(例えば、シリコン、シリコン-ゲルマニウム、又は化合物半導体)、ガラス材、プラスチックモールド材又は他の任意の適当な材料から作られたウエハを含み得る。さらに、基板106は、製造中にガラスなどの剛性を有する支持層に接着され、その後、製造工程を終了した後にそこから除去される可撓性を有する基板でもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、システム100は、基板支持面104に対して直線運動するように配置されたブリッジ112を備え、その直線運動は、シャシ101に対して規定された第1の軸114に平行な軸に沿って行われる。他の実施形態(図示せず)では、上記ブリッジは固定的であってもよく、上記支持面が、その上に配置された基板と共に移動するように構成され、或いは上記ブリッジと上記支持面の両方が互いに対して移動する。
【0031】
いくつかの実施形態では、システム100は、ブリッジ112に沿って取り付けられた少なくとも1つの読み取り/書き込み組立体を備える。図1の例では、単一の読み取り/書き込み組立体116が、第1の軸114に直交する第2の軸118に沿って、ブリッジ112に対して選択可能に位置決めされるように配置されている。この構成により、1回の走査ごとに複数のオブジェクト120が生成される逐次並列走査を複数回にわたって基板106の一面に実行することが可能になる。
【0032】
他の実施形態では、システム100は、複数の読み取り/書き込み組立体116を備えることができ、この複数の読み取り/書き込み組立体116は、第2の軸118に沿ってブリッジ112上に横並びの構成で配置され得る。この構成により、1回ごとに複数のオブジェクト120が生成される走査を、各組立体116によって複数同時に、又は部分的に同時に、基板106の一面に実行することが可能になる。
【0033】
いくつかの実施形態では、オブジェクト120は、典型的に、必ずしも互いに類似しているとは限らず、図1に示されているように、第1の軸114に平行な方向に次々に、且つ第2の軸118に平行な方向に横並びに配置され得る。或いは、オブジェクト120は、非直線状の繰り返し又は非繰り返しのパターンなど、他の任意の適当なパターンで配置され得る。いくつかの実施形態では、電子モジュール200は、集積回路(IC)などのデバイス202、或いはメモリデバイス又は他の任意の適当な電子デバイスを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、システム100は、本明細書では制御組立体124とも呼ばれる操作コンソールを備え、この制御組立体124は、例えば1つ又は複数のプロセッサ及び1つ又は複数のメモリデバイス(図示せず)などの様々なデバイスを含んだコンピュータ126と、ユーザインターフェース128とを備える。コンピュータ126はさらに、ソフトウェアモジュールを含み、このソフトウェアモジュールは、システム100の読み取り/書き込み組立体116、ブリッジ112及び他の構成部品の動作を制御するように構成される。
【0035】
本発明の文脈、及び特許請求の範囲では、「コンピュータ126のプロセッサ」という用語は、簡潔にするために、以下では単に「上記プロセッサ」と呼ばれる。
【0036】
いくつかの実施形態では、制御組立体124はさらに、コンピュータ支援設計(CAD)命令を含んだ書き込み命令データベース130を含む。このCAD命令は、本発明の一実施形態によると、基板106の少なくとも1つの表面上に、オブジェクト120を書き込むために使用される。
【0037】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの読み取り/書き込み組立体116が、基板106の光学画像134を取得するように構成された自動光学イメージング(AOI)サブシステム132を備え、この光学画像134をコンピュータ126のプロセッサが受信する。かかる光学画像134は、オブジェクト120の1つ又は複数の適当な特徴的部分(例えば、固有の形状を有する部分)、及び/又は基板106上の任意の適当な基準点135の光学画像を含み得る。この基準点は、典型的には、システム100の位置合わせ及び/又は較正に使用される。いくつかの実施形態では、AOIサブシステム132はさらに、電子モジュールの特徴的部分の様々な寸法、ならびに、例えば、隣接する特徴的部分間の距離を計測するように構成される。
【0038】
いくつかの実施形態では、読み取り/書き込み組立体116はさらに、例えばレーザダイレクトイメージング(LDI)サブシステム136などの、ダイレクトイメージングサブシステムを備える。レーザダイレクトイメージング(LDI)サブシステム136は、コンピュータ126のプロセッサから受信した直接書き込みデータ138に応答してオブジェクト120を生成するための、基板106へのレーザ書き込みを可能にするように構成された光学走査組立体を備える。尚、本明細書では、AOIサブシステム132とLDIサブシステム136が両方ともイメージングサブシステムの一種と称されるが、各サブシステムによって実行されるイメージングは、互いに異なる性質のものであることに留意されたい。AOIサブシステム132は、基板106の光学画像を取得するために、基板106の光学イメージングを実行する。少なくともその目的は、基板106への直接書き込みを実行する前に、システム100の計測、検査、位置合わせ及び較正を行うことである。それに対して、LDIサブシステム136は、基板106上にパターンをレーザ描画することによって、基板106への直接書き込みを実行する。本発明の文脈、及び特許請求の範囲では、「LDIサブシステム」という用語は、簡潔にするために、以下では単に「LDI」又は「DI」と呼ばれる。
【0039】
いくつかの実施形態では、LDI136は、本発明と同じ譲受人に譲渡された、米国特許第8,531,751号に記載されているタイプのレーザスキャナを含み得る。本発明での使用に適したダイレクトイメージングシステムの他の例は、株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ(日本、東京)から入手可能なダイレクトイメージングシステム(型式番号DW-3000)と、ハイデルベルクインスツルメンツ社(ドイツ、ハイデルベルク)から入手可能なマスクレスアライナシステム(型式番号MLA150)を含む。
【0040】
一実施形態では、AOIサブシステム132は、LDIサブシステム136のダイレクトイメージング工程を改善するための位置合わせ検査サブシステムとして機能するように構成される。
【0041】
いくつかの実施形態では、コンピュータ126のプロセッサは、データベース130から、基板106に直接書き込むための電気回路設計データを含んだコンピュータ支援設計(CAD)ファイルを受信するように構成される。このCADファイルは、基板106上に生成される複数のオブジェクト120のCADデータを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、コンピュータ126のプロセッサは、読み取り/書き込み組立体116を制御するように構成される。この制御では、1つ又は複数のレーザビームを、上記CADデータに基づいて方向付ける。上記1つ又は複数のレーザビームは、基板106に複数回の並列走査でデータを直接書き込むためのものである。この複数回の並列走査は、図1に示されているように、単一の位置変更可能な読み取り/書き込み組立体によって逐次実行され得るか、又は複数の読み取り/書き込み組立体を使用して同時に、又は部分的に同時に実行され得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、制御組立体124は、直接書き込みマシン自動構成(ADWMC)ユニットとも呼ばれ、CADファイルを受信するように構成される。上記CADファイルは、基板106の少なくとも1つの表面に直接書き込むための電気回路設計データを含む。制御組立体124はさらに、少なくとも1つの読み取り/書き込み組立体116を備えた直接書き込みマシンを自動構成するように構成される。この自動構成は、上記CADデータに基づいた直接書き込みデータを基板106に複数回の走査で直接書き込むように行われる。
【0044】
一実施形態では、コンピュータ126のプロセッサは、直接書き込みデータを自動構成する。この自動構成は、複数回の走査のそれぞれで、各走査の幅内に、多数のオブジェクト120が横並びの形で収まるように書き込まれるように行われる。したがって、複数回の走査にわたって書き込まれるオブジェクトがないことで、隣り合う走査間で直接書き込みデータをつなぎ合わせる必要がなくなる。
【0045】
いくつかの実施形態では、制御組立体124によって、読み取り/書き込み組立体116が制御される。この制御では、基板106に複数のオブジェクト120が、典型的には複数回の走査の通過で作成され、隣り合う走査通過の継ぎ目は、各オブジェクトの内部に位置しない。したがって、隣り合う走査間で直接書き込みデータをつなぎ合わせる必要がなくなる。尚、この継ぎ目は、オブジェクト120同士の間にあり、オブジェクト120の内部に重ならないように配置される。
【0046】
いくつかの実施形態では、LDI136が提供する最大走査長に固有の制限があることから、基板106の全幅を走査するには、典型的には複数回の走査の通過が必要になる。かかる複数回の走査の通過は、単一の位置変更可能な走査ヘッドを使用して逐次実行されるか、或いは同時に動作する複数の走査ヘッドによって少なくとも部分的に同時に実行され得る。上記の走査長の制限は、他の要因の中でもとりわけ、維持しなければならない重要な比によって決定づけられる。その比とは、基板表面に直接書き込みを実行する集束レーザビームの所要サイズと、LDI136の走査レンズの走査長との比である。
【0047】
いくつかの実施形態では、基板106は、その上にパターニングされた単層のオブジェクト120のみを有する単層基板であることに限定されない。むしろ、システム100は、層ごとに基板を選択的に変更して三次元構造を作成するために、付加していく形で使用され得る。したがって、オブジェクト120は複数の層で形成されてもよく、それらの複数の層は、読み取り/書き込み組立体116によって、位置合わせした状態で重ねて逐次書き込まれ得る。
【0048】
典型的には、コンピュータ126は汎用コンピュータを含み、その汎用コンピュータは、本明細書に記載の機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされる。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でコンピュータにダウンロードされ得るか、或いは、その代わりに又はそれに加えて、磁気的、光学的、又は電子的なメモリなどの非一時的な有形の媒体で提供且つ/又は格納され得る。
【0049】
図2Aは、本発明の一実施形態による、電子モジュール200のレイアウト設計の模式図である。電子モジュール200は、例えば、上述の図1のオブジェクト120の電子モジュールに置き換わり得る。いくつかの実施形態では、電子モジュール200は、上述の図1に示されているデバイス202を備える。
【0050】
一実施形態では、デバイス202は基板255に結合される。この基板255は、例えば、上述の図1の基板106に置き換わり得る。この実施形態では、デバイス202と基板255は、任意の適当な構成を使用して、互いに結合され得る。例えば、デバイス202は、PCBを含む基板255に取り付けられ得る。別の例では、デバイス202は、基板255内に、例えばファンイン(半導体基板など)やファンアウト(プラスチックモールド基板など)といった任意の適当な埋め込みダイパッケージング技術を使用して、埋め込まれ得る。いくつかの実施形態では、基板255は、デバイス202に接続される電気トレース222を含み、各電気トレース222は、例えばデバイス202のパッド204と基板255のコネクタ206との間に、設計されたルートを有する。コネクタ206は、本明細書では接続パッドとも呼ばれる。
【0051】
いくつかの実施形態では、コンピュータ126のプロセッサは、電子モジュール200の、デバイス202を取り囲むフレーム210を計算するように構成される。このフレーム210は、本明細書でゾーン233と呼ばれる、デバイス202の縁からの所定のマージンを有する。尚、フレーム210は、デバイス202のサイズ、位置、及び向きに従うことに留意されたい。例えば、デバイス202が設計レイアウトに対してある特定の回転角度で回転している場合、フレーム210も同じ角度で回転する。
【0052】
上記プロセッサはさらに、電子モジュール200の、フレーム210を取り囲むフレーム220を計算するように構成される。このフレーム220は、フレーム210との間に、本明細書でゾーン211又は補正ゾーンと呼ばれるもう一つのマージンを有する。フレーム220のサイズ及びゾーン211の幅を計算する方法については、後述の図2Bで詳細に示す。尚、フレーム210及び220は、電子モジュール200の設計上に、上記プロセッサによって配置された仮想フレームであることに留意されたい。一実施形態では、フレーム210と220との間の上記補正ゾーンが、後述の図2Bで詳細に説明するように、基板255上のデバイス202の配置誤差を補正するために使用される。
【0053】
いくつかの実施形態では、電子モジュール200の各トレース222は、3つの区画を備える。つまり、パッド204とフレーム210との間に配置された、本明細書では区画218とも呼ばれる内側区画と、フレーム220とコネクタ206との間に配置された、本明細書では区画216とも呼ばれる外側区画と、フレーム210と220との間に配置され、区画216と218との間を接続する、本明細書では区画244とも呼ばれる中間区画である。
【0054】
ダイと基板との結合誤差の見積もりと、その見積誤差を補正するルートの計算
図2Bは、本発明の一実施形態による、電子モジュール260の模式図である。モジュール260は、例えば、上述の図2Aのモジュール200に置き換わり得る。モジュール260の製造工程では、デバイス202が、ダイとして基板(例えば、シリコンウエハ)から切り取られ、テープ又は他の任意の適当な技術を使用して隣接するダイと隔てられる。
【0055】
その後、デバイス202は、ピックアンドプレースシステム(図示せず)によってテープからピックアップされ、基板255上の所定の位置に結合される。このピックアンドプレースシステムが工程のばらつきを有し得る結果、デバイス202と基板255の結合工程に誤差が生じ得る。例えば、ピックアンドプレースシステムは、デバイス202を、基板255上に、例えば上述の図2Aに示されている設計レイアウトの所定の位置からオフセットして配置し得る。このオフセット誤差は、本明細書では「平行移動」又は「シフト」とも呼ばれる。
【0056】
上記結合工程は、回転誤差など、他にも誤差を有し得る。回転誤差は、例えば上述の図2Aに示されている設計レイアウトで指定された向きに対する、デバイス202の望ましくない回転によって引き起こされる。さらに、製造工程における熱サイクルによって、上述の図2Aに示されているレイアウト設計と比較して、デバイス202と基板255のサイズ比及び/又は面積比の差異が生じ得る。例えば、基板255は、デバイス202の熱膨張係数(CTE)よりも大きいCTEを有するポリマーを含むことができ、典型的にはシリコンから作られる。このCTEの違いが、例えば、本明細書ではデバイス202と基板255との間のスケーリング誤差とも呼ばれる上述の異なる比をもたらし得る。
【0057】
上述の図1に示されているように、上記基板は、複数のオブジェクト120、したがって、それぞれが少なくともデバイス202を含んでいる複数の電子モジュール260を(例えば1000個超)含み得る。電子モジュール260のこの例示的な製造工程では、1000個を超えるデバイス202が基板255に結合され、その基板255を横断する複数の電子モジュール260の画像を、位置合わせ検査システム又はAOIサブシステム132などの適当な計測システムが取得する(例えば、5つの電子モジュールをサンプリングする)。
【0058】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、データベース130から、電子モジュール200全てとほぼ同じであるフレーム210全ての領域と位置のみ(基板全域ではない)を抽出し、その情報をコンピュータ126のメモリに保存するように構成される。これらの実施形態では、上記プロセッサは、コンピュータ126のメモリ及び通信リソースへの負荷を低減し、また、LDIサブシステム136の動作の速度及び信頼性の改善も可能にする。
【0059】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、位置合わせ検査システム及び/又はAOIサブシステム132からデジタル入力を受信するように構成される。これらのデジタル入力とは、例えば、サンプリングされた電子モジュール260のそれぞれから取得された画像のセット及び/又は計測値のセット(例えば、電子モジュール260の実際に生成された特徴的部分のサイズ、向き、及び設計された特徴的部分との間の位置合わせ)などである。尚、上記デジタル入力は、例えば上述の図2Aに示されているレイアウト設計に従って製造された、本明細書では実際の電子モジュール260とも呼ばれる、生成された電子モジュール260の少なくとも一部分を含むが、この電子モジュール260は、電気トレース222の少なくとも一部分(例えば区画244)は含まない。
【0060】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、上記デジタル入力の画像及び計測値に基づいて、レイアウト設計(例えば、上述の図2Aに示されているもの)に対する、デバイスと基板255の結合における誤差を見積もるように構成される。尚、この見積誤差は典型的には、上述のシフト、回転及びスケーリングの各誤差の組み合わせを含むことに留意されたい。
【0061】
代替実施形態では、上記見積誤差は、上述の誤差のうちの1つのみ、又は追加の誤差、或いは位置合わせ検査システム又は他の任意のイメージング及び/若しくは計測システムから受信したデジタル入力に基づいて見積もられた2つ以上の誤差の組み合わせを含み得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、基板255上のデバイス202の最大配置誤差に基づいて、ゾーン211の幅(すなわち、フレーム210と220の間のマージン)を設定するように構成される。この最大誤差は典型的には、上述のシフト誤差と回転誤差とスケーリング誤差の組み合わせである。一実施形態では、上記プロセッサは、ゾーン211の幅を設定するための最大誤差に係数(例えば、5)を適用する。例えば、1mmのサイズ(例えば、長さ及び幅)を有するデバイス202の場合、指定シフト誤差は30μmであり、指定回転誤差は10ミリラジアン(mrad)であり(その結果、回転に起因して最大10μmの変位が生じる)、指定スケーリング誤差は1%である(その結果、デバイス202の少なくとも1つと基板255のスケーリング誤差に起因して追加の10μmの誤差が生じる)。この例では、複合的な最大誤差は合計で50μmになり、したがって、ゾーン211の選定幅は250μmに設定される。
【0063】
他の実施形態では、上記プロセッサは、ゾーン211の幅の設定に適した他の任意の計算を適用し得る。例えば、最大誤差に適用される係数は、1より大きく5より小さくし得る。係数を例として1.5にすると、ゾーン211の幅が250μmから75μmに減少することにより、フレーム220のフットプリントが縮小する。この係数により、基板255上により多数の電子モジュール260を組み込むことが可能になるが、総誤差が指定値の50μmを超える場合、例えば、総誤差が合計で80μmになると、製造歩留まりが低下し得る。この例では、一電子モジュール260のデバイス202の少なくとも一部分が、場合によりフレーム220の領域を超える。したがってコンピュータ126のプロセッサは、その電子モジュール260を不適格にする。
【0064】
代替実施形態では、上記プロセッサは、ゾーン211の幅の計算に、1つの誤差(例えば、シフト誤差)のみ、又は上述の誤差のうちから選択された2つの組み合わせ(例えば、シフト誤差と回転誤差)、又は例えばAOIサブシステム132などから提供される別の計測値の別の誤差、又はそれらの組み合わせ、又は他の任意の適当な方法を使用し得る。
【0065】
それに加えて又はその代わりに、ある特定の電子モジュールの見積誤差が指定された値を超える場合、上記プロセッサは、その特定の電子モジュールを不適格にするアラームを発行し得る。一実施形態では、AOIサブシステム132はさらに、例えばある特定の電子モジュール260などの中にある、欠陥を検出するように構成される。これにより、その特定の電子モジュールで上述の見積誤差が仕様の範囲内にあっても、上記プロセッサが、上記欠陥のためにその特定の電子モジュールを不適格にできるようになる。
【0066】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、電気トレース222の少なくとも区画244について、上述の見積誤差を補正する実際的なルートを計算するように構成される。図2Bに示されているように、トレース222の区画218及び216は、例えば、上述の図2Aに示されている設計レイアウトのように、デバイス202のパッド204に対して保持される。したがって、区画244の実際的なルートは、フレーム210と220にそれぞれ位置する区画218と216の端を接続することにより、誤差を補償する。
【0067】
尚、各区画218は、それぞれのパッド204に対して同じ位置及び向きで保持されるが、実際には、上述の誤差のためにそれらのパッド204は変位していることに留意されたい。一実施形態では、上記プロセッサは、区画244の実際的なルートを計算するのと同じ方法を使用して、各区画218の実際的なルートを計算するように構成される。
【0068】
つまり、デバイス202が変位するとともに変位したそれぞれのパッド204に対して各区画218の設計位置及び向きを保持するために、区画218の実際的なルートは、その区画218の設計ルートと異なるものになる。その区画218の実際的なルートと設計ルートとの間の相対的な変位を補償するために、区画244の実際的なルートは、その区画244の設計ルートと異なるものになる。
【0069】
その後、計算された実際的なルートに基づいて、LDIサブシステム136は、上述のように、トレース222の全ての区画(例えば、区画216、244及び218)を焼き付ける。
【0070】
図2Bの方法及びレイアウトは、明確にするために簡略化されており、また、本発明の実施形態が対処する特定の問題を説明する目的と、それらの実施形態の、DIシステム100などの任意のDIシステムの性能を向上させる際の適用例を示す目的で、例として示されている。
【0071】
ただし、本発明の実施形態は、この特定の種類の例示的なDIシステム及び/又は方法及び/又はレイアウトに限定されず、本明細書に記載の原理は、他の任意の種類のシステム、方法及びレイアウトにも同様に適用され得る。
【0072】
代替実施形態では、上記プロセッサは、デバイス202と基板255の結合における上記見積誤差を補正する他の任意の適当な方法を適用し得る。例えば、DIシステム100の代わりにインクジェットシステム、又は金属プリンタなどの他の任意の適当なタイプの積層造形技術、又は任意のCAMステーションの再配線ソリューション、又はデバイス202と基板255との間の結合における見積誤差を補正するための他の任意の適当な方法を使用する。
【0073】
図3は、本発明の一実施形態による、デバイス202と基板255の結合における見積誤差を補正する方法を概略的に示すフローチャートである。この方法は、設計受信ステップ300で開始し、上記プロセッサが、例えばデータベース130から、基板255上にレイアウトされたパネルの設計を受信する。上記プロセッサはさらに、システム100のユーザからの入力、及び/又はデータベース130の1つ又は複数のファイルに基づいて、着目領域と、各着目領域のそれぞれのサイズとを規定するように構成される。例えば、上記ユーザ入力は、各電子モジュール(例えば、電子モジュール200)の位置、デバイス202のサイズ及び上記で説明した指定のシフト、回転、及びスケーリングの各誤差を含み得る。
【0074】
パネル学習ステップ302では、上記プロセッサは、例えばトレース222に沿って、設計レイアウト内の着目ポイントを決定し、各着目ポイントに近接するポイントを選出する。このパネル学習ステップ302は、本明細書では「オフラインステップ」又は「前処理ステップ」とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、このオフラインステップに基づいて、後述の図5で詳細に説明するように、トレース222の設計幅を計算するように構成される。
【0075】
原則として、パネル学習ステップ302は、例えば、位置合わせ検査システム等からデジタル入力を受信した後など、後の段階で実行され得るが、ステップ302の前処理を行うと、システム100の速度及び効率が改善される。
【0076】
デジタル入力受信ステップ304では、上記プロセッサは、位置合わせ検査システムから(又はAOIサブシステム132などの他の任意の適当なシステムから)、実際の電子モジュール(例えば、電子モジュール260)の少なくとも一部分のデジタル入力(例えば、基板255全域の複数の場所で取得された画像及び/又は計測値)を受信する。この実際の電子モジュールは、電気トレース222の少なくとも区画244は含まずに、上述の図2Aに示されているレイアウト設計に従って製造されたものである。上述の図2Bで説明したように、上記プロセッサは、上記デジタル入力に基づいて、レイアウト設計(例えば、電子モジュール200のもの)に対する、複合的な誤差(例えば、シフト、回転及びスケーリングの誤差)を見積もるように構成される。この複合的な誤差は、デバイス202を基板255に結合する工程で引き起こされるものである。尚、ステップ300及び302はオフラインステップとみなされ、デジタル入力を受信した後に上記プロセッサによって実行される他の全ての操作はオンラインステップとみなされることに留意されたい。オフラインステップとオンラインステップについては、後述の図4~6で詳細に示す。
【0077】
変換ステップ306では、上記プロセッサは、区画244及び任意選択で電子モジュール206の他の要素の、前処理されたデータ(ステップ302で上述)を変換して、ステップ304で受信したデジタル入力に適合した計算ルートを形成する。つまり、上記プロセッサは、電気トレース222の着目の特徴的部分の設計パターンを、基板255の設計レイアウトよりもデバイス202の実際の位置に適合するように、変換する。求める変換式については、後述の図5で詳細に示す。
【0078】
検証ステップ308では、上記プロセッサは、上述のステップ306で得られた計算ルートに、上記電子モジュールの一連の設計ルールを適用する。この設計ルールとは、例えば、トレース222の最小幅、電子モジュールの隣接する特徴的部分間の最小距離、着目の特徴的部分の許容される形状、その他の設計ルールなどである。いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、設計ルールをチェックするためのソフトウェアを使用してもよく、且つ/又は任意の適当な市販の設計ルールチェックステーション(図示せず)にインターフェースで接続してもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、設計ルールを適用した後、その設計ルールに違反する(すなわち、適合できない)1つ又は複数の電子モジュールを識別し得る。つまり、その各電子モジュールでは、ステップ304の見積誤差を、区画244の上記計算ルートでは補正できない、又はその補正を設計ルールに適合させることに失敗し得る。これらの実施形態では、上記プロセッサは、本明細書では「スクラップ」とも呼ばれる、そういった電子モジュールを不適格とするように構成される。これは、LDIサブシステム136の稼働時間を、設計ルールに適合する電子モジュールに集中させるためである。
【0080】
他の実施形態では、上記プロセッサは、この工程の後の段階で実行され得る補正工程ステップのために、上記の電子モジュールにマーキングするように構成される。このマーキングは、例えば1つ又は複数の各電子モジュールの座標を含んだファイルなどを使用した電子的なマーキング、及び/又は任意の適当な技術を使用した物理的なマーキングであり得る。上記で指摘したが、上記プロセッサは、区画244、及び/又は電気トレース222の別の部分の、新たなルートを計算することができ、トレース222における算出した誤差を補正するために、1つ又は複数の命令ファイルをLDIサブシステム136に送信することができる。
【0081】
調整ステップ310では、上記プロセッサは、設計ルールに基づいて計算ルートを調整して、少なくとも区画244(及び任意選択で電子モジュールの他の要素)の、実際的なルートを計算する。この実際的なルートは、見積誤差を補正し、電子モジュールの設計ルールにも適合している。いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、実際的なルートを得た後、その実際的なルートをトレース222の区画244に適用するための1つ又は複数の命令ファイルを、LDIサブシステム136(又は他の任意の適当なタイプのパターニングシステム)に送信する。これにより、上記方法のオンラインステップが終了する。
【0082】
例示的な一実施形態では、ある特定のポイントでは、設計ルールに基づくと、区画216、218及び244に沿った電気トレース222の設計幅は10μmである。変換ステップ306の後、少なくとも1つの区画244の計算幅は8μmであり、その結果、誤差が2μmになるので、上記プロセッサは区画244の幅を広げる必要がある。この実施形態では、上記プロセッサは、その特定のポイントにある区画244の2つの縁をそれぞれ、区画244の中心から遠ざかる方向に誤差の半分(例えば、1μm)だけシフトさせ、それにより、区画244の幅を8μmから10μmに広げる。
【0083】
別の例示的な実施形態では、ある特定の位置におけるトレース222の計算幅は14μmであるが、その特定の位置におけるトレースの設計幅は10μmであるため、上記プロセッサは、そのトレースの幅を4μm狭める必要がある。この実施形態では、上記プロセッサは、その特定の位置にあるトレース222の両側の縁をそれぞれ、中心に向かって2μmだけシフトさせる。
【0084】
他の実施形態では、上記プロセッサは、2つの隣接するライン間の最小距離など、他の設計ルールに適合するように、2つの縁の間に非対称の調整を適用し得る。計算幅8μm(設計ルールの指定幅は10μmである)を有する区画244の例では、上記プロセッサは、計算幅と設計ルールとの2μmの差を補償するために、例えば一方の縁を0.5μm、もう一方の縁を1.5μmだけ区画244の中心から遠ざかるようにシフトさせ得る。他の実施形態では、上記プロセッサは、一方の縁のみを2μmだけシフトさせることができ、もう一方の縁は移動しない。
【0085】
他の実施形態では、上記プロセッサは、他の任意の適当な調整を、ライン、及び/又はライン間の間隔、及び/又はトレンチ、及び/又はオブジェクト120の他の特徴的部分及びパターンに適用するように構成される。
【0086】
パターニングステップ312では、LDIサブシステム136が、1つ又は複数の命令ファイルを実行して、実際的なルートに基づいて、基板255上に少なくとも区画244を形成する。尚、LDIサブシステム136は、設計ルートの代わりに、デバイス202の配置誤差を補償し且つ設計ルールに適合するような実際的なルートに沿って、区画244を焼き付けることに留意されたい。パターニングステップ312で、図3の方法は終了する。
【0087】
図4は、本発明の一実施形態による、電子モジュール200の中間区画のレイアウト設計の模式図である。図4のレイアウト設計は、電子モジュール200のレイアウト設計に対する、基板255上のデバイス202の配置誤差を見積もる上述の方法を詳細に例示している。
【0088】
いくつかの実施形態では、「p」は、トレース222の縁の上に配置されたポイントを表す。ポイントpは、区画244内の、フレーム220から距離dout、且つフレーム210から距離dinをとって位置する。いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、ポイントpの、フレーム210及び220に対する近接度を示すパラメータαを計算する。αの計算は、以下の式(1)を使用して実行される。
(1)α=din/(din+dout
【0089】
αの値は0~1の範囲を有する。ポイントpがポイント402に配置されている場合、dinはゼロに等しく、したがってパラメータαはゼロに等しい。ポイントpがポイント404に配置されている場合、doutはゼロに等しく、したがってパラメータαは1に等しい。
【0090】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、ポイントpなど着目のポイントの位置を、本明細書では「pcalc」と呼ばれる計算位置に変換することによって、(設計ルールを適用する前に)区画244の計算ルートを計算するように構成される。pcalcの計算は、以下の式(2)を使用して実行される。
(2)pcalc=α×p+(1-α)×T(p)
ここで、T(p)は、例えば変換行列などの変換関数である。尚、式(2)は、フレーム210及び220に対するポイントpの近接度に基づいて変換行列を適用することに留意されたい。したがって、αが1に等しい場合、pcalcはpに等しくなる。これは、ポイントpの変換が行われないことを意味する。αがゼロに等しい場合、pcalcはT(p)に等しくなる。これは、ポイントpで完全な変換が行われることを意味する。ポイントpなど着目のポイントの変換については、後述の図5で概略的に示す。図2Bに示されているように、区画244は、例えば、フレーム210及び220にそれぞれ位置する区画218及び216の端部の間に配設された直線状の形状を有し得る。したがって、pcalcの位置は、フレーム210及び220からのポイントpの距離を表すαに応じて決まる。
【0091】
図5は、本発明の一実施形態による、区画244の実際的なルートを計算するための処理シーケンスの模式図である。
【0092】
ここで、図5のオフライン部を参照する。いくつかの実施形態では、上記プロセッサが、データベース130から、中間区画の設計ルート502を受信する。この設計ルート502は、例えば、基板255上に配置された上述の図2Aの設計区画244に置き換わり得る。パネル学習ステップ302で説明したように、上記プロセッサは、設計ルート502の前処理済みのバージョンである前処理ルート504上に示されている、ポイントpdesign、p1及びp2などの着目のポイントを、設計レイアウト内で識別する。
【0093】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサはさらに、最小距離を識別して、前処理ルート504の設計幅(本明細書では「Wdesign」とも呼ばれ、これは前処理ルート504に示されている)を計算する。この最小距離は、例えば、前処理ルート504の左側の縁506に位置するポイントpdesignと、それに最も近い、前処理ルート504の右側の縁508に位置するポイント(本明細書ではqdesignと呼ばれる)との間の距離である。
【0094】
尚、上記オフラインステップは、1つの電子モジュールの設計に対して実行されるが、基板255など、それに対応する1つの基板に結合されている同じ設計を有する全ての電子モジュールに適用可能である。
【0095】
次に、図5のオンライン部を参照する。このオンライン部は、上記オフラインステップでプロセッサによって計算された前処理ルート504のコピーを含む。上述の図3のステップ304で説明したように、上記プロセッサは、位置合わせ検査システムから、各実際の電子モジュール(例えば、電子モジュール260)のデジタル入力を受信する。この実際のモジュールは、上記電気トレースの少なくとも中間区画は含まずに、電子モジュール200のレイアウト設計に従って製造されたものである。
【0096】
尚、以下のオンラインステップは、電子モジュールごとに実行される。これは、デバイスと各基板との結合における見積誤差がそれぞれ異なるためである。
【0097】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、デバイス202を基板255上に配置する工程で引き起こされる、レイアウト設計に対するシフト、回転、及びスケーリングの複合誤差を、上記デジタル入力に基づいて見積もるように構成される。この見積誤差に基づいて、上記プロセッサは各ポイントpのα及びT(p)を計算し、その計算したα及びT(p)に基づいて、ルート504の前処理データを変換して、受信したデジタル入力に適合する計算ルート510を形成する。
【0098】
図5の例では、ポイントp1calcは、上述の図2Bの区画216の端とフレーム220との交点に近接した中間区画上のポイントに対応することができ、ポイントp2calcは、上述の図2Bの区画218の端とフレーム210との交点に近接した中間区画上のポイントに対応し得る。
【0099】
図2Bに示されているように、上記誤差の大部分はデバイス202の縁で発生し、区画216の端とフレーム220との交点の近くでは誤差はほとんど観察されない。したがって、ポイントp1calcはポイントp1に近接して位置する。つまり、ポイントp1からポイントp1calcへの変換における変位の距離はほぼゼロである。
【0100】
計算ルート510に示されているように、ポイントp2は、計算ルート510上のデバイス202に最も近接した位置にあり、したがって、ポイントp2からポイントp2calcへの変換は、大幅な変位を伴う。同様に、この例では、ポイントpdesignからpcalcへの変換は、ポイントp1からp1calcへの変換よりも大きく、ポイントp2からp2calcへの変換よりも小さい変位を伴う。
【0101】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、上記変換により、中間区画のパターンを表す1つ又は複数の多角形を得、その多角形の縁(辺)508に沿って、ポイントpcalcから最小距離に位置するポイントqcalcを探索する。ポイントpcalcとqcalcとの間の距離は、本明細書では計算幅と呼ばれ、Wcalcとも呼ばれる。Wcalcは計算ルート510上に示されている。
【0102】
上記プロセッサは、ポイントp1calc及びp2calcなど、他のポイントに同じ方法を適用して、それぞれの最小距離Wcalc1、Wcalc2をとったところに、それぞれ対応するポイントq1calc、q2calcを生成し、それによって計算されたルート510の完全なパターンを計算する。尚、計算幅のうち(例えば、Wcalc、Wcalc1及びWcalc2のうち)の少なくとも2つは、互いに異なり得ることに留意されたい。
【0103】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、計算ルート510に電子モジュールの一連の設計ルールを適用して、設計ルールへの適合を検証し、必要に応じて、計算ルート510のパターンを調整する。図5の例では、上記プロセッサは、計算ルート510の幅が、設計ルールの指定幅に適合しているかどうかをチェックする。上記プロセッサは、ルート504に沿って設計幅を学習し、その幅を計算ルート510に適用した後に、例えば以下の式(3)を使用することによって、補正の方向を決定するように構成される
(3)dir=(pcalc-qcalc)/|pcalc-qcalc
ここで、「dir」は、デカルト座標系の傾きにおいて、pcalcからそれに対応する縁508上のqcalcへ向かう補正方向を示す単位ベクトルである。
【0104】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサはさらに、例えば以下の式(4)を使用して、補正量を計算するように構成される
(4)X=(Wdesign-|pcalc-qcalc|)/2
ここで、Xはベクトル「dir」に沿って計算された補正量であり、|pcalc-qcalc|は計算幅の絶対値を表す(図5にWcalcとして示されている)。
【0105】
尚、Xの計算では、両方の縁上にあるポイント、つまり縁506上のポイントと508上のポイントを移動させるため、設計幅と計算幅の差を2で除算していることに留意されたい。他の実施形態では、上記プロセッサは、一方のポイントのみを移動させることによって(例えば、506上のポイントをアンカーとして設定し、508上のポイントのみを移動させることによって、又はその逆によって)Xを計算し得る。これらの実施形態では、式(4)から、2による除算が省かれる。
【0106】
その後、上記プロセッサは、計算ルート510に沿って選択した複数のポイント(例えば、ポイントp1calc及びp2calc)に、式(3)及び(4)を適用し、計算ルート510の少なくともいくつかのポイントを検証又は調整することによって、実際的なルート520を生成する。
【0107】
図5の例では、上記プロセッサは、pcalc及びqcalcにそれぞれ対応して、本明細書ではpact及びqactと呼ばれる実際的な位置を設定する。この実際的な位置は、実際的なルート520に示されている実際的な幅(本明細書ではWactとも呼ばれる)の位置に設定される。ここで、Wactは、対応する電子モジュールの設計ルールに適合している。
【0108】
上記プロセッサはまた、p1actとq1act、の対、p2actとq2actの対などの追加のポイント対を検証又は調整して、実際的なルート520を生成する。
【0109】
上述の処理シーケンス及び方法は、例として提供されており、代替実施形態では、他の適当な方法も使用され得る。例えば、特定のシフトと回転の事前に計算した正確な解の間で補間又は外挿を実行したり、ダイの実際の位置に基づいた変形格子に沿ってトレースを変換したり、設計ルールの下でトレースの経路の最適化を実行したりする。
【0110】
図6は、本発明の一実施形態による、ある特定の電子モジュールのレイアウト設計600と、その特定の電子モジュールの実際に製造された構成部品のデジタル入力を表す画像620との間における、変換行列を生成するための処理シーケンスの模式図である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の処理シーケンスは、上述の図3のステップ306で基本的に説明した変換ステップの一部分の詳細な説明を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、データベース130からレイアウト設計600を受信する。このレイアウト設計600は、4つの位置合わせマーク604を有するパネル602と、4つの位置合わせマーク610及び612をそれぞれ有する2つの電子モジュール606及び608とを含む。他の実施形態では、パネル602と各電子モジュール606及び608は、互いに異なり得る他の任意の適当な数の位置合わせマークを有し得る。さらに、電子モジュール606及び608は、互いに異なる構成、例えば、異なる数及びタイプのデバイス、及び/又は異なるパターンの電気トレースを有し得る。
【0112】
他の実施形態では、レイアウト設計600は、両電子モジュール606と608の代わりに、2つのダイを含んだ単一の電子モジュールを有し得る。以下の説明は、「電子モジュール」という用語を「ダイ」という用語に置き換えることによって、これらの実施形態に適用可能である。
【0113】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、位置合わせ検査システム及び/又はAOIサブシステム132から、レイアウト設計600のパネル602に対応するパネル622を含んだ、デジタル入力の画像620を受信する。パネル622は、位置合わせマーク604に対応する4つの位置合わせマーク624と、2つの電子モジュール626及び628とを含み、電子モジュール626及び628はそれぞれ、4つの位置合わせマーク630、632を有する。電子モジュール626及び628はそれぞれ電子モジュール606、608に対応し、位置合わせマーク630及び632はそれぞれレイアウト設計600の位置合わせマーク610、612に対応する。
【0114】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、レイアウト設計600及び画像620の上述の特徴的部分と、任意選択でその電子モジュールの追加の特徴的部分とに基づいて、中間区画の計算ルートを生成するための変換行列を求める。
【0115】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、電子モジュール606の座標系で位置合わせマーク610と630とを突き合わせることによって、位置合わせマーク610に初期変換行列「B」を適用する。同様に、上記プロセッサは、電子モジュール608の座標系で位置合わせマーク612と632とを突き合わせることによって、位置合わせマーク612に初期変換行列「C」を適用する。
【0116】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、画像620のパネル622の座標系でそのパネル622の位置合わせマーク624の位置とパネル602の位置合わせマーク604の位置とを突き合わせることによって、位置合わせマーク624に変換行列「A」を適用する。
【0117】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、初期変換行列「B」及び「C」を調整するために変換行列「A」を適用し、その結果、電子モジュール606の着目のポイントの変換式を生成するための合成変換「AB」、及び電子モジュール608の着目のポイントの変換式を生成するための合成変換「AC」が得られる。
【0118】
図7は、本発明の一実施形態による、電子デバイス702と712の間の基板777を介した電気的結合に対する誤差を補正するためのレイアウト700の模式図である。基板777は例えば、基板255に置き換わることができ、デバイス702と712はそれぞれ、例えば上述の図2Bのデバイス202に置き換わり得る。尚、デバイス702と712は、互いに類似していても、異なっていてもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、レイアウト700は、上述の図2Aに示されているものではなく、2つのデバイスを備えた電子モジュールの少なくとも一部分のレイアウトを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、レイアウト700は、デバイス702のパッド704と基板777のコネクタ706との間を接続する電気トレース708を含む。同様に、電気トレース718は、デバイス712のパッド714と基板777のコネクタ716との間に配設されている。いくつかの実施形態では、レイアウト700はさらに、デバイス702のパッド704とデバイス712のパッド714との間を接続する電気トレース710を含む。電気トレース708、710及び718は、典型的には類似しているが、その代わりに、例えば長さ、及び/又は幅、及び/又は材料の組成が互いに異なっていてもよい。例えば、電気トレース710は電気トレース708と異なり得る。
【0121】
例えば上述の図2Bで説明したように、1つ又は複数のピックアンドプレースシステムが、デバイス702及び712を、1つ又は複数の対応するテープからピックアップし、基板777上のそれぞれの所定の位置に結合する。この基板777に対するデバイス702及び712の結合の配置誤差は、典型的には、図2Bで説明したデバイス202と基板255の結合における配置誤差に類似している。しかしながら、デバイス702と712の間が近接していることにより、電気トレース710を配線することによって補正すべき誤差の大きさが、例えば2倍に増加し得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、上記プロセッサは、典型的には、例えば電気トレース708と電気トレース710とに、上述の方法と同じ誤差の見積方法及び実際的なルートの計算方法を適用するが、許容誤差のセットは異なるものを適用し得る。
【0123】
他の実施形態では、上記プロセッサは、実際的なルートを計算するための変換行列及び/又は設計ルールの異なるセットを、例えば電気トレース708と電気トレース710とに適用し得る。
【0124】
代替実施形態では、上記プロセッサは、パッド704及び714うちの少なくともいくつかを、例えば基板777を介してではなく、互いに直接電気的接続するため、類似又は代替のルートを計算し得る。これらの実施形態では、この直接配線が、LDIサブシステム136によって実行されるLDI工程を使用して、又はワイヤボンディングなどの任意の適当な生成工程を使用して、実行され得る。
【0125】
この電気トレース710の例では、上記プロセッサは、各電気トレース710を3つの区画に、つまり、デバイス702のパッド704と物理的な縁703の間の第1の区画と、デバイス712のパッド714と物理的な縁713の間の第2の区画と、第1の区画と第2の区画の間を接続する、ゾーン720とも呼ばれる第3の区画とに分割し得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、上述の方法に従って、上記プロセッサは、各パッド(例えばパッド704及び714)とゾーン720との間にある電気トレース710の各区間の実際的なパターンを調整することができ、この調整は、それぞれのパッドに対してこれらの区画の設計ルートを保持するように行われる。上記プロセッサは、レイアウト設計に対するデバイス702と712の配置の複合的な誤差によって引き起こされた見積誤差を補正する実際的なルートを、ゾーン720の内部で計算し得る。その後、上記プロセッサは、この計算した実際的なルートを少なくとも含んだ1つ又は複数の実行ファイルを、電気トレース710の実際的なルートを生成するためにLDIサブシステム136に送信し得る。
【0127】
尚、実際には、上記プロセッサは、各電気トレース710の全ての区画の実際的なルートを計算することに留意されたい。上述の図2Bで説明したように、上記プロセッサは、ゾーン720と各パッド(例えばパッド704及び714)との間を接続するトレース710の各区画の実際的なルートを計算することによって、これらトレース710の各区画の、それぞれのパッド704及び714に対する相対的な位置及び向きが、設計レイアウトのものと同様に保持される。つまり、パッド704及び714は元の設計に対して変位しており、したがって、これらのパッドに結合された区画はそれに応じて、パッド704及び714のそれぞれと確実に接続するようにシフトされられる。
【0128】
本明細書に記載の実施形態は主に、PCB及び/又は埋め込みダイのプロセスをベースにした電子モジュールの製造に対処するが、本明細書に記載の方法及びシステムは、ディスプレイ又は他の電子回路などの他の用途にも使用され得る。
【0129】
したがって、上述の実施形態は例として引用されているものであり、本発明が、上記で具体的に示し、説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記で説明した様々な特徴の組み合わせと部分的組み合わせの両方、並びに、当業者なら上記の説明を読めば思いつくであろう、従来技術には開示されていないそれらの変形形態及び変更形態を含む。本特許出願に参照により組み込まれる文献は、本出願の一部とみなすべきであるが、例外として、これらの組み込まれる文献に、本明細書で明示的又は暗黙的になされた定義と相容れない形で用語が定義されている限りにおいては、本明細書の定義のみを考慮すべきである。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7