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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】自動車用光輝性塗料
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240501BHJP
   C09D 101/04 20060101ALI20240501BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240501BHJP
   C09D 5/36 20060101ALI20240501BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240501BHJP
   C09D 101/02 20060101ALI20240501BHJP
   C09D 7/43 20180101ALI20240501BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D101/04
C09D7/61
C09D5/36
C09D7/65
C09D101/02
C09D7/43
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021529950
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2020023683
(87)【国際公開番号】W WO2021002196
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019124125
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020010590
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 健次
(72)【発明者】
【氏名】成田 信彦
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/129422(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/175468(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/002014(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、分散剤(A)、セルロースナノファイバー(B)及び光輝性顔料(C)を含有する自動車用光輝性塗料であって、
前記セルロースナノファイバー(B)が酸化セルロースナノファイバーであり、
前記酸化セルロースナノファイバーの絶乾質量に対するカルボキシル基量が、0.4~1.0mmol/gである自動車用光輝性塗料
【請求項2】
前記分散剤(A)が、アニオン性高分子化合物である請求項1記載の自動車用光輝性塗料。
【請求項3】
前記アニオン性高分子化合物が、カルボキシル基を有する高分子化合物又はリン酸基を有する高分子化合物である請求項2記載の自動車用光輝性塗料。
【請求項4】
全成分合計100質量部に対して、固形分を0.1~10質量部含む請求項1~のいずれか一項に記載の自動車用光輝性塗料。
【請求項5】
前記セルロースナノファイバーの透明度が80%以上である請求項1~4のいずれか一項に記載の自動車用光輝性塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用光輝性塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗料を塗装する目的は、主に素材の保護及び美観の付与である。工業製品においては、その商品力を高める点から、美観、なかでも特に「質感」が重要である。消費者が求める工業製品の質感は多様なものであるが、近年、自動車外板、自動車部品等の分野において、金属や真珠のような光沢感が求められている(以下、金属のような光沢感と真珠のような光沢感とを併せて「金属又は真珠調光沢」と表記する)。
【0003】
金属又は真珠調光沢とは、鏡面のように表面に粒子感がなく、さらに、塗装板を正反射光近傍で見たとき(ハイライト)は光り輝き、正反射光から離れた反射光強度の比較的小さい部分で見たとき(シェード)は暗くみえる、すなわちハイライト領域とシェード領域の輝度差が大きいことを特徴とする質感である。
【0004】
かかる金属又は真珠調光沢を工業製品の表面に付与する技術には、金属めっき処理や金属蒸着処理等(例えば、特許文献1)があるが、塗料によって金属又は真珠調光沢が付与できれば、簡便さ及びコスト等の観点から有利であり、さらにその塗料が水性であれば環境負荷の点からなお有利である。
【0005】
特許文献2には、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料と、20~150mgKOH/g(固形分)の酸価を有する水性セルロース誘導体とを含み、前記水性セルロース誘導体を主たるバインダー樹脂とし、前記光輝性顔料の含有量がPWCで20~70質量%であることを特徴とする水性ベース塗料組成物が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献2に記載の塗料組成物によって形成される塗膜では、金属又は真珠調光沢が不十分である。
【0007】
また、特許文献3には、鱗片状光輝性顔料を含んでなる水性ベースコート塗料の塗装方法であって、塗料中の固形分が20~40重量%になるように調整された水性ベースコート塗料(A1)を乾燥膜厚で1~15μmとなるように被塗物に塗装した後、未硬化の塗膜の上に、塗料中の固形分が2~15重量%になるように調整された水性ベースコート塗料(A2)を乾燥膜厚で0.1~5μmとなるように塗装することを特徴とする水性ベースコート塗料の塗装方法が開示されている。
【0008】
しかし、特許文献3に記載の塗装方法によって形成される塗膜では、金属又は真珠調光沢が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭63-272544号公報
【文献】特開2009-155537号公報
【文献】特開2006-95522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、金属又は真珠調光沢に優れた塗膜を形成することができる自動車用光輝性塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、水、分散剤(A)、セルロースナノファイバー(B)及び光輝性顔料(C)を含有する自動車用塗料を用いることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の1つの態様によれば、水、分散剤(A)、セルロースナノファイバー(B)及び光輝性顔料(C)を含有する自動車用光輝性塗料が提供される。
【0013】
一つの実施形態において、前記分散剤(A)が、アニオン性高分子化合物である。
【0014】
別の実施形態において、前記アニオン性高分子化合物が、カルボキシル基を有する高分子化合物又はリン酸基を有する高分子化合物である。
【0015】
別の実施形態において、前記セルロースナノファイバー(B)が、アニオン変性セルロースナノファイバーである。
【0016】
別の実施形態において、前記アニオン変性セルロースナノファイバーが、酸化セルロースナノファイバーである。
【0017】
別の実施形態において、前記酸化セルロースナノファイバーのカルボキシル基量が、0.4~1.0mmol/gである。
【0018】
別の実施形態において、自動車用光輝性塗料は、全成分合計100質量部に対して、固形分を0.1~10質量部含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、金属又は真珠調光沢に優れた塗膜を形成することができる自動車用光輝性塗料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
自動車用光輝性塗料 本発明の実施形態の自動車用光輝性塗料は、水、分散剤(A)、セルロースナノファイバー(B)及び光輝性顔料(C)を含有することを特徴とする。
【0021】
分散剤(A)
分散剤(A)としては、本発明の効果を奏する限り特に制限なく用いることができ、例えば、カルボン酸、ウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、脂肪酸など、いずれの低分子又は高分子化合物も用いることができる。本発明の自動車用光輝性塗料に配合するセルロースナノファイバー(B)及び光輝性顔料(C)の性質を考慮して、良好な分散性を得られる化合物を選択することが好ましい。なお、セルロースナノファイバー(B)は水酸基を多く含有するため、分散剤に疎水基が多く含まれると分散性を阻害するおそれがある。また、アニオン性、カチオン性、ノニオン性の種類についても、いずれの種類でも用いることができる。分散剤(A)は、1種類を単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。なお、本発明に用いる分散剤(A)は、後述するセルロースナノファイバー(B)を含まない。
【0022】
分散剤(A)として、アニオン性の高分子化合物を用いる場合は、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、硫酸エステル基などの官能基を有する高分子化合物を用いることができ、それぞれの官能基のpKa(酸解離係数)より高いpHで使用することでアニオン性基となる。このため、アニオン変性セルロースナノファイバーの分散液を凝集させることなく自動車用光輝性塗料を調製できる。調製する自動車用光輝性塗料のpHや必要な塩基性度に応じて、適宜官能基を選択すればよい。
【0023】
カルボキシル基を有する高分子化合物としては、ポリカルボン酸、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸等が例示される。ポリカルボン酸としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、スチレン・無水マレイン酸共重合物、オレフィン・無水マレイン酸共重合物などが挙げられる。分散剤(A)としてカルボキシル基を有する高分子化合物を用いる場合、カルボキシル基は金属塩型でもよいし、アンモニウム塩型でも良い。なかでも、得られる塗膜の金属又は真珠調光沢の観点から、金属塩型が好ましく、ナトリウム塩型がより好ましい。また、本発明の自動車用光輝性塗料を、耐水性を求められる用途に使用する場合には、アンモニウム塩型を適宜選択することができる。
【0024】
リン酸基を有する高分子化合物としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンフェニルエーテルリン酸、アルキルリン酸エステル等が挙げられる。
【0025】
ウレタン系の化合物としては、ウレタン会合型の化合物等が挙げられ、例えば主骨格のポリウレタンに、側鎖としてポリエステル鎖あるいはポリエーテル鎖とすることで、相溶性や立体障害安定性を調整することができる。
【0026】
ポリエーテル系の化合物としては、プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物、ポリエーテルアミン等が挙げられ、例えばポリオキシエチレンやポリオキシプロピレンの比率を変えることで、親水性・疎水性のバランスを調整することができる。
【0027】
ポリエステル系の化合物としては、ヒドロキシカルボン酸の脱水縮合物である脂肪族ポリエステルとその変性物等が挙げられる。
【0028】
脂肪酸系の化合物としては、脂肪族アルコール硫酸塩、脂肪族アミン、脂肪族エステル等が挙げられる。
【0029】
本発明の自動車用光輝性塗料に対する分散剤(A)の添加量は、光輝性顔料(C)を充分に分散可能な量を添加すればよく、光輝性顔料(C)100質量部に対して0.01~25質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0030】
セルロースナノファイバー(B)
本発明において、セルロースナノファイバー(Cellulose Nanofiber, CNF)(B)は、パルプなどのセルロース原料がナノメートルレベルまで微細化されたもので、繊維径が3~500nm程度の微細繊維である。上記セルロースナノファイバーは、セルロースナノフィブリル、フィブリレーティドセルロース、又はナノセルロースクリスタルと称されることもある。セルロースナノファイバーの平均繊維径及び平均繊維長は、原子間力顕微鏡(AFM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、各繊維を観察した結果から得られる繊維径及び繊維長を平均することによって求めることができる。
【0031】
セルロースナノファイバー(B)は、パルプなどのセルロース原料に機械的な力を加えて微細化することで得られ、あるいは、アニオン変性したセルロース(カルボキシル化したセルロース(酸化セルロースとも呼ぶ)、カルボキシメチル化したセルロース、リン酸エステル基を導入したセルロース等)、カチオン変性したセルロースなどの化学変性により得られた変性セルロースを解繊することによって得ることができる。微細繊維の平均繊維長と平均繊維径は、酸化処理、解繊処理により調整することができる。
【0032】
本発明に用いるセルロースナノファイバー(B)の平均アスペクト比は、下限は特に限定されないが、通常50以上である。上限は特に限定されないが、通常1000以下であり、より好ましくは700以下であり、さらに好ましくは500以下である。平均アスペクト比は、下記の式により算出することができる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径。
【0033】
<セルロース原料>
セルロースナノファイバー(B)の原料であるセルロース原料の由来は、特に限定されないが、例えば、植物(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、晒クラフトパルプ(BKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ)、古紙等)、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等が挙げられる。セルロース原料としては、これらのいずれかであってもよいし2種類以上の組み合わせであってもよいが、好ましくは植物又は微生物由来のセルロース原料(例えば、セルロース繊維)であり、より好ましくは植物由来のセルロース原料(例えば、セルロース繊維)である。
【0034】
セルロース原料の数平均繊維径は特に制限されないが、一般的なパルプである針葉樹クラフトパルプの場合は30~60μm程度、広葉樹クラフトパルプの場合は10~30μm程度である。その他のパルプの場合、一般的な精製を経たパルプは50μm程度である。例えばチップ等の数cm大のセルロース原料を精製する場合、リファイナー、ビーター等の離解機で原料の機械的処理を行い、50μm程度に調整することが好ましい。
【0035】
<化学変性>
本発明においては、変性セルロースは、アニオン変性されたセルロースであってもよいし、カチオン変性されたセルロースであってもよく、本発明の自動車用光輝性塗料に配合する前記分散剤(A)及び光輝性顔料(C)の種類に併せて、光輝性顔料(C)の分散が良好となるような変性セルロースとすることが好ましい。例えば、前記分散剤(A)としてアニオン性高分子化合物を用いる場合は、光輝性顔料(C)の凝集を抑制するための相乗効果が得られやすい観点から、アニオン変性セルロースナノファイバーを選択することが好ましい。
【0036】
アニオン変性により導入される官能基としては、カルボキシル基、カルボキシメチル基、スルホン基、リン酸エステル基、ニトロ基が挙げられる。中でも、カルボキシル基、カルボキシメチル基、リン酸エステル基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。
【0037】
(カルボキシル化)
本発明において、変性セルロースとしてカルボキシル化(酸化)したセルロースを用いる場合、カルボキシル化セルロース(酸化セルロースとも呼ぶ)は、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシル化(酸化)することにより得ることができる。カルボキシル化の際には、本発明の自動車用光輝性塗料の粘度安定性ならびに得られる塗膜の耐水性、金属又は真珠調光沢の観点から、カルボキシル化セルロースナノファイバー(酸化セルロースナノファイバー)の絶乾質量に対して、カルボキシル基の量が0.2~1.55mmol/gとなるように調整することが好ましく、0.4~1.0mmol/gになるように調整することがより好ましい。なかでも特に、カルボキシル化セルロースナノファイバー(酸化セルロースナノファイバー)の絶乾質量に対して、カルボキシル基の量が0.5~1.0mmol/gであることが好ましく、0.6~1.0mmol/gであることがより好ましい。カルボキシル基の量が少なすぎると、高透明で均一なセルロースナノファイバー分散液を得るために解繊に多大なエネルギーが必要となる。高透明なセルロースナノファイバー分散液は、未解繊繊維等の粗大物の残存が少ないため、優れた金属又は真珠調光沢を有する塗膜を得るのに有用である。また、カルボキシル基の量が多すぎると、酸化薬品を過剰に添加して反応することによる繊維の劣化で生じるセルロースナノファイバー分散液の粘度低下や、撹拌処理による粘度保持率の低下が懸念される。カルボキシル基量と粘度保持率の関係は必ずしも定かではないが、低い変性度の変性パルプを十分に解繊した方が、化学的に表面処理されていない水酸基を持つ箇所が露出し、酸化CNFの表面電荷の減少に加えて酸化CNF同士が相互的に水素結合を形成しやすくなり低せん断での粘度が保持されると推定される。なお、本明細書において、変性度を示す場合、カルボキシル基の量は、カルボキシル基(-COOH)の量、及びカルボキシレート基(-COO-)の量の合計量を示す。
【0038】
カルボキシル基の量の測定方法の一例を以下に説明する。酸化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mLを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定する。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量a〔mL〕から、下式を用いて算出することができる。
【0039】
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/酸化セルロース質量〔g〕
本発明の自動車用光輝性塗料においては、形成される塗膜の金属又は真珠調光沢の観点から、上記セルロースナノファイバー(B)として、1.0質量%水分散液における透明度が好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上であるセルロースナノファイバーを使用することが好ましい。
【0040】
本明細書において、透明度は、セルロースナノファイバー(B)を固形分1.0%(w/v)の水分散体とした際の、波長660nmの光の透過率をいうものとする。該セルロースナノファイバー(B)の透明度は、セルロースナノファイバー(B)の分散体(固形分1.0%(w/v)、分散媒:水)を調製し、UV-VIS分光光度計UV-1800(島津製作所製)を用い、光路長10mmの角型セルを用いて、波長660nmの光の透過率を測定することにより求めることができる。
【0041】
本発明で用いるセルロースナノファイバー(B)は、長時間シェアをかけても粘度変化しにくいものであることが好ましく、具体的には、本発明の自動車用光輝性塗料を6時間静置して測定したせん断速度0.1(s-1)における粘度に対する、本発明の自動車用光輝性塗料を回転数1000rpmのスターラーを用いて24時間撹拌した後、6時間静置して測定したせん断速度0.1(s-1)における粘度の変化率が60%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満であるものを用いることが好適である。
【0042】
カルボキシル化(酸化)方法の一例として、セルロース原料を、N-オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物もしくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物との存在下で酸化剤を用いて水中で酸化する方法を挙げることができる。この酸化反応により、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、表面にアルデヒド基と、カルボキシル基(-COOH)又はカルボキシレート基(-COO-)とを有するセルロース繊維を得ることができる。反応時のセルロースの濃度は特に限定されないが、5質量%以下が好ましい。
【0043】
N-オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。N-オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、N-オキシル化合物としては、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル(TEMPO)及びその誘導体(例えば4-ヒドロキシTEMPO)が挙げられる。
【0044】
N-オキシル化合物の使用量は、原料となるセルロースを酸化できる触媒量であればよく、特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.01~10mmolが好ましく、0.01~1mmolがより好ましく、0.05~0.5mmolがさらに好ましい。また、N-オキシル化合物の使用量は、反応系に対し0.1~4mmol/L程度が好ましい。
【0045】
臭化物とは臭素を含む化合物であり、その例には、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、その例には、ヨウ化アルカリ金属が含まれる。臭化物又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物及びヨウ化物の合計量は、例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.1~100mmolが好ましく、0.1~10mmolがより好ましく、0.5~5mmolがさらに好ましい。
【0046】
酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などを使用できる。中でも、安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。酸化剤の使用量としては、例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.5~500mmolが好ましく、0.5~50mmolがより好ましく、1~25mmolがさらに好ましく、3~10mmolが最も好ましい。また、例えば、N-オキシル化合物1molに対して1~40molが好ましい。
【0047】
セルロースの酸化は、比較的温和な条件であっても反応を効率よく進行させられる。よって、反応温度は4~40℃が好ましく、また15~30℃程度の室温であってもよい。反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHの低下が認められる。酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを好ましくは8~12、より好ましくは10~11程度に維持する。反応媒体は、取扱容易性や、副反応が生じにくいこと等から、水が好ましい。
【0048】
酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常は0.5~6時間、例えば0.5~4時間程度である。
【0049】
また、酸化反応は、2段階に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一又は異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化させることができる。
【0050】
カルボキシル化(酸化)方法の別の例として、オゾンを含む気体とセルロース原料とを接触させることにより酸化する方法を挙げることができる。この酸化反応により、グルコピラノース環の少なくとも2位及び6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。オゾンを含む気体中のオゾン濃度は、50~250g/m3であることが好ましく、50~220g/m3であることがより好ましい。セルロース原料に対するオゾン添加量は、セルロース原料の固形分を100質量部とした際に、0.1~30質量部であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましい。オゾン処理温度は、0~50℃であることが好ましく、20~50℃であることがより好ましい。オゾン処理時間は、特に限定されないが、1~360分程度であり、30~360分程度が好ましい。オゾン処理の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となる。任意選択で、オゾン処理を施した後に、酸化剤を用いて、追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物や、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸などが挙げられる。例えば、これらの酸化剤を水又はアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を作成し、溶液中にセルロース原料を浸漬させることにより追酸化処理を行うことができる。
【0051】
酸化セルロースのカルボキシル基の量は、上記した酸化剤の添加量、反応時間等の反応条件をコントロールすることで調整することができる。
【0052】
(カルボキシメチル化)
本発明において、変性セルロースとして、カルボキシメチル化したセルロースを用いる場合、カルボキシメチル化したセルロースは、上記のセルロース原料を市販のカルボキシメチル化剤を用いた公知の方法でカルボキシメチル化することにより製造してもよいし、市販品を用いてもよい。いずれの場合も、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度が0.01~0.50となるものが好ましい。そのようなカルボキシメチル化したセルロースを製造する方法の一例として次のような方法を挙げることができる。セルロースを発底原料にし、溶媒として3~20質量倍の水及び/又は低級アルコールを使用する。低級アルコールとは炭素数が5以下のアルコールを指す。溶媒は、具体的には水、メタノール、エタノール、N-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N-ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の単独、又は2種以上の混合媒体であり得る。なお、混合媒体に、炭素数が5以下の低級アルコールを用いる場合の低級アルコールの混合割合は、60~95質量%である。マーセル化剤としては、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5~20倍モルの水酸化アルカリ金属を使用する。水酸化アルカリ金属は、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムであり得る。発底原料と溶媒、マーセル化剤を混合し、反応温度0~70℃、好ましくは10~60℃、かつ反応時間15分~8時間、好ましくは30分~7時間、マーセル化処理を行う。その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05~10.0倍モル添加し、反応温度30~90℃、好ましくは40~80℃、かつ反応時間30分~10時間、好ましくは1時間~4時間、エーテル化反応を行う。
【0053】
なお、本明細書において、セルロースナノファイバー(B)の調製に用いる変性セルロースの一種である「カルボキシメチル化したセルロース」は、水に分散した際にも繊維状の形状の少なくとも一部が維持されるものをいう。したがって、本明細書において分散剤(A)として例示した水溶性高分子の一種であるカルボキシメチルセルロースとは区別される。「カルボキシメチル化したセルロース」の水分散液を電子顕微鏡で観察すると、繊維状の物質を観察することができる。一方、水溶性高分子の一種であるカルボキシメチルセルロースの水分散液を観察しても、繊維状の物質は観察されない。また、「カルボキシメチル化したセルロース」はX線回折で測定した際にセルロースI型結晶のピークを観測することができるが、水溶性高分子のカルボキシメチルセルロースではセルロースI型結晶はみられない。
【0054】
(リン酸エステル化)
化学変性セルロースとして、リン酸エステル化したセルロースを使用できる。当該セルロースは、前述のセルロース原料にリン酸系化合物Pの粉末や水溶液を混合する方法、セルロース原料のスラリーにリン酸系化合物Pの水溶液を添加する方法により得られる。
【0055】
上記リン酸系化合物Pとしては、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸あるいはこれらのエステルが挙げられる。これらは塩の形態であってもよい。これらの中でも、低コストであり、扱いやすく、またパルプ繊維のセルロースにリン酸基を導入して、解繊効率の向上が図れるなどの理由から、リン酸基を有する化合物が好ましい。リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム等が挙げられる。これらは1種、あるいは2種以上を併用できる。これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、下記解繊工程で解繊しやすく、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩がより好ましい。特にリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムが好ましい。また、反応の均一性が高まり、かつリン酸基導入の効率が高くなることから前記リン酸系化合物Pは水溶液として用いることが好ましい。リン酸系化合物Pの水溶液のpHは、リン酸基導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましく、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3~7が好ましい。
【0056】
リン酸エステル化セルロースの製造方法の一例として以下の方法を挙げることができる。固形分濃度0.1~10質量%のセルロース原料の分散液に、リン酸系化合物Pを撹拌しながら添加してセルロースにリン酸基を導入する。セルロース原料を100質量部とした際に、リン酸系化合物Pの添加量はリン元素量として、0.2~500質量部であることが好ましく、1~400質量部であることがより好ましい。リン酸系化合物Pの割合が前記下限値以上であれば、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。しかし、前記上限値を超えると収率向上の効果は頭打ちとなるのでコスト面から好ましくない。
【0057】
リン酸エステル化セルロースの製造の際、セルロース原料、リン酸系化合物Pの他に、これ以外の化合物Qの粉末や水溶液を混合してもよい。化合物Qは特に限定されないが、塩基性を示す窒素含有化合物が好ましい。ここでの「塩基性」は、フェノールフタレイン指示薬の存在下で水溶液が桃~赤色を呈すること、又は水溶液のpHが7より大きいことと定義される。本発明で用いる塩基性を示す窒素含有化合物は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、アミノ基を有する化合物が好ましい。例えば、尿素、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられるが、特に限定されない。この中でも低コストで扱いやすい尿素が好ましい。化合物Qの添加量はセルロース原料の固形分100質量部に対して、2~1000質量部が好ましく、100~700質量部がより好ましい。反応温度は0~95℃が好ましく、30~90℃がより好ましい。反応時間は特に限定されないが、1~600分程度であり、30~480分がより好ましい。エステル化反応の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度にエステル化されて溶解しやすくなることを防ぐことができ、リン酸エステル化セルロースの収率が良好となる。得られたリン酸エステル化セルロース懸濁液を脱水した後、セルロースの加水分解を抑える観点から、100~170℃で加熱処理することが好ましい。さらに、加熱処理の際に水が含まれている間は好ましくは130℃以下、より好ましくは110℃以下で加熱し、水を除いた後、100~170℃で加熱処理することが好ましい。
【0058】
リン酸エステル化されたセルロースのグルコース単位当たりのリン酸基置換度は0.001~0.40であることが好ましい。セルロースにリン酸基置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このため、リン酸基を導入したセルロースは容易にナノ解繊することができる。なお、グルコース単位当たりのリン酸基置換度が0.001より小さいと、十分にナノ解繊することができない。一方、グルコース単位当たりのリン酸基置換度が0.40より大きいと、膨潤あるいは溶解するため、ナノファイバーが得られなくなる場合がある。解繊を効率よく行なうために、上記で得たリン酸エステル化されたセルロース原料は煮沸した後、冷水で洗浄されることが好ましい。
【0059】
(カチオン化)
化学変性セルロースとして、前記カルボキシル化セルロースをさらにカチオン化したセルロースを使用することができる。当該カチオン変性されたセルロースは、前記カルボキシル化セルロース原料に、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハライド又はそのハロヒドリン型などのカチオン化剤と、触媒である水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を、水又は炭素数1~4のアルコールの存在下で反応させることによって得ることができる。
【0060】
グルコース単位当たりのカチオン置換度は0.02~0.50であることが好ましい。セルロースにカチオン置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このため、カチオン置換基を導入したセルロースは容易にナノ解繊することができる。グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.02より小さいと、十分にナノ解繊することができない。一方、グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.50より大きいと、膨潤あるいは溶解するため、ナノファイバーが得られなくなる場合がある。解繊を効率よく行なうために、上記で得たカチオン変性されたセルロース原料は洗浄されることが好ましい。当該カチオン置換度は、反応させるカチオン化剤の添加量、水又は炭素数1~4のアルコールの組成比率によって調整できる。
【0061】
本発明において、セルロース原料をアニオン変性して得られるアニオン変性セルロースが塩型である場合には、塩型の種類は問わないが、ナトリウムやアンモニウムなど、解繊性、分散性が良好な塩を選択することが好ましい。
【0062】
<解繊>
本発明において、解繊する装置は特に限定されないが、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの装置を用いて前記水分散体に強力なせん断力を印加することが好ましい。特に、効率よく解繊するには、前記水分散体に50MPa以上の圧力を印加し、かつ強力なせん断力を印加できる湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。前記圧力は、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。また、高圧ホモジナイザーでの解繊・分散処理に先立って、必要に応じて、高速せん断ミキサーなどの公知の混合、撹拌、乳化、分散装置を用いて、上記のCNFに予備処理を施すことも可能である。解繊装置での処理(パス)回数は、1回でもよいし2回以上でもよく、2回以上が好ましい。
【0063】
分散処理においては通常、溶媒に変性セルロースを分散する。溶媒は、変性セルロースを分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等の親水性の有機溶媒)、それらの混合溶媒が挙げられる。セルロース原料が親水性であることから、溶媒は水であることが好ましい。
【0064】
分散体中の変性セルロースの固形分濃度は特に限定されないが、下限は、通常は0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。これにより、セルロース繊維原料の量に対する液量が適量となり効率的である。上限は、通常10質量%以下、好ましくは6質量%以下である。これにより流動性を保持することができる。
【0065】
解繊処理又は分散処理に先立ち、必要に応じて予備処理を行ってもよい。予備処理は、高速せん断ミキサーなどの混合、撹拌、乳化、分散装置を用いて行えばよい。
【0066】
解繊工程を経て得られた変性セルロースナノファイバーが塩型の場合は、そのまま用いても良いし、鉱酸を用いた酸処理や、陽イオン交換樹脂を用いた方法等により酸型として用いても良い。また、カチオン性添加剤を用いた方法により疎水性を付与して用いても良い。
【0067】
本発明に用いるセルロースナノファイバー(B)には、改質剤を添加しても構わない。例えば、アニオン変性セルロースナノファイバーについては、含窒素化合物、含燐化合物、オニウムイオンなどの改質剤を、セルロースナノファイバー表面のアニオン基に結合させ、極性等の性質を変更することにより、溶媒への親和性や、光輝性顔料(C)の分散性を調整することができる。
【0068】
アニオン変性セルロースを解繊して得られたアニオン変性セルロースナノファイバーに酸型が存在する場合には、光輝性顔料(C)の分散性が悪化するおそれがあるため、適宜、水酸化ナトリウムやアンモニウムなどの塩基性化合物を追添加して、塩型としてもよい。本発明の自動車用光輝性塗料においては、得られる塗膜の金属又は真珠調光沢の観点から、アニオン変性セルロースナノファイバーは金属塩型が好ましく、ナトリウム塩型がより好ましい。また、本発明の自動車用光輝性塗料を、耐水性を求められる用途に使用する場合には、例えば、アニオン変性セルロースナノファイバーとして、アンモニウム塩型のものを用いると、乾燥時にアンモニアが揮発し、酸型となり、塗膜が耐水化するため好ましい。
【0069】
【化1】
【0070】
本発明の自動車用光輝性塗料におけるセルロースナノファイバー(B)の含有量は金属調又は真珠調光沢に優れた塗膜を得る観点から、自動車用光輝性塗料中の合計固形分100質量部に対し、固形分として0.1~97質量%の範囲内であることが好ましく、0.5~80質量%の範囲内であることがより好ましく、1~60質量%の範囲内であることがさらに好ましく、3~40質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0071】
光輝性顔料(C)
本発明の自動車用光輝性塗料における光輝性顔料(C)としては、例えば、蒸着金属フレーク顔料、アルミニウムフレーク顔料、光干渉性顔料等を挙げることができる。これらの顔料は得られる塗膜に求められる質感によって1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。金属調光沢に優れた塗膜を得る観点では、蒸着金属フレーク顔料、アルミニウムフレーク顔料が好適である。一方、真珠調光沢に優れた塗膜を得る観点では、光干渉性顔料が好適である。上記光輝性顔料(C)は鱗片状であることが好ましい。
【0072】
上記蒸着金属フレーク顔料は、ベース基材上に金属膜を蒸着させ、ベース基材を剥離した後、蒸着金属膜を粉砕することにより得られる。上記基材としては、例えばフィルム等を挙げることができる。
【0073】
上記金属の材質としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等が挙げられる。なかでも特に入手しやすさ及び取扱いやすさ等の観点から、アルミニウム又はクロムが好適である。本明細書では、アルミニウムを蒸着して得られた蒸着金属フレーク顔料を「蒸着アルミニウムフレーク顔料」と呼び、クロムを蒸着して得られた蒸着金属フレーク顔料を「蒸着クロムフレーク顔料」と呼ぶ。
【0074】
蒸着金属フレーク顔料としては、蒸着金属皮膜1層から形成されたものを使用することができるが、蒸着金属皮膜にさらに他の金属や金属酸化物が形成された複層のタイプのものを使用してもよい。
【0075】
蒸着アルミニウムフレーク顔料は、表面がシリカ処理されていることが、貯蔵安定性、及び金属調光沢に優れた塗膜を得る等の観点から好ましい。
【0076】
上記蒸着アルミニウムフレーク顔料として使用できる市販品としては例えば、「METALURE」シリーズ(商品名、エカルト社製)、「Hydroshine WS」シリーズ(商品名、エカルト社製)、「Decomet」シリーズ(商品名、シュレンク社製)、「Metasheen」シリーズ(商品名、BASF社製)等を挙げることができる。
【0077】
上記蒸着クロムフレーク顔料として使用できる市販品としては例えば、「Metalure Liquid Black」シリーズ(商品名、エカルト社製)等を挙げることができる。
【0078】
上記蒸着金属フレーク顔料の平均厚みは、好ましくは0.01~1.0μm、より好ましくは、0.015~0.1μmである。
【0079】
上記蒸着金属フレーク顔料の平均粒子径(D50)は、ハイライトで高い光沢度を有し、粒子感が小さく緻密な金属調塗膜を形成する観点から、1~50μmの範囲内であることが好ましく、5~20μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0080】
ここでいう平均粒子径(D50)は、マイクロトラック粒度分布測定装置 MT3300(商品名、日機装社製)を用いてレーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。厚さは、該光輝性顔料を含む塗膜断面を顕微鏡にて観察して厚さを画像処理ソフトを使用して測定し、100個以上の測定値の平均値として定義するものとする。
【0081】
前記アルミニウムフレーク顔料は、一般にアルミニウムをボールミル又はアトライターミル中で粉砕媒液の存在下、粉砕助剤を用いて粉砕、摩砕して製造される。該アルミニウムフレーク顔料の製造工程における粉砕助剤としては、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸のほか、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコールが使用される。上記粉砕媒液としてはミネラルスピリットなどの脂肪族系炭化水素が使用される。
【0082】
上記アルミニウムフレーク顔料は、粉砕助剤の種類によって、リーフィングタイプとノンリーフィングタイプに大別することができる。本発明の自動車用光輝性塗料においては、耐水性に優れ、かつハイライトで高い光沢度を有し、粒子感が小さく緻密な金属調塗膜を形成する観点からノンリーフィングタイプの鱗片状アルミニウム顔料を使用することが好ましい。ノンリーフィングタイプの鱗片状アルミニウム顔料としては、表面を特に処理していないものも使用できるが、表面を樹脂で被覆せしめたもの、シリカ処理を施したもの及びリン酸やモリブデン酸、シランカップリング剤で表面を処理したものも使用することができる。以上の各種表面処理の中から一種の処理をせしめたものを使用することができるが、複数種類の処理をせしめたものを使用してもよい。
【0083】
また上記アルミニウムフレーク顔料は、アルミニウムフレーク顔料表面に着色顔料を被覆してさらに樹脂被覆せしめたものや、アルミニウムフレーク顔料表面に酸化鉄等の金属酸化物を被覆したものなどの着色アルミニウム顔料を使用してもよい。
【0084】
上記アルミニウムフレーク顔料の平均粒子径(D50)は、ハイライトで高い光沢度を有し、粒子感が小さく緻密な金属調塗膜を形成する観点から、1~100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは5~50μmの範囲内、特に好ましくは7~30μmの範囲内である。アルミニウムフレーク顔料の厚さは0.01~1.0μmの範囲内であることが好ましく、特に好ましくは0.02~0.5μmの範囲内である。
【0085】
本発明の自動車用光輝性塗料における光輝性顔料(C)は前記蒸着金属フレーク顔料と上記アルミニウムフレーク顔料を併用することが、耐水性及び塗料安定性の観点から好ましい。かかる場合、蒸着金属フレーク顔料とアルミニウムフレーク顔料の配合比は、質量比で9/1~1/9、好ましくは2/8~8/2であることが好適である。
【0086】
前記光干渉性顔料としては、透明又は半透明な基材を酸化チタンで被覆した光干渉性顔料を使用することが好ましい。本明細書では、透明な基材とは、可視光線を少なくとも90%透過する基材を指す。半透明な基材とは、可視光線を少なくとも10%~90%未満透過する基材を指す。
【0087】
光干渉性顔料とは、マイカ、人工マイカ、ガラス、酸化鉄、酸化アルミニウム、及び各種金属酸化物などの透明又は半透明な鱗片状基材の表面に、該基材とは屈折率が異なる金属酸化物が被覆された光輝性顔料である。上記金属酸化物としては、酸化チタン及び酸化鉄などを挙げることができ、該金属酸化物の厚さの違いによって、光干渉性顔料は種々の異なる干渉色を発現することができる。
【0088】
該光干渉性顔料としては具体的には、下記に示す金属酸化物被覆マイカ顔料、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料などを挙げることができる。
【0089】
金属酸化物被覆マイカ顔料は、天然マイカ又は人工マイカを基材とし、該基材表面を金属酸化物が被覆した顔料である。天然マイカとは、鉱石のマイカ(雲母)を粉砕した鱗片状基材である。人工マイカとは、SiO2、MgO、Al23、K2SiF6、Na2SiF6などの工業原料を加熱し、約1500℃の高温で熔融し、冷却して結晶化させて合成したものであり、天然のマイカと比較した場合において、不純物が少なく、大きさ及び厚さが均一なものである。人工マイカの基材としては具体的には、フッ素金雲母(KMg3AlSi3102)、カリウム四ケイ素雲母(KMg2.5AlSi4102)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg2.5AlSi4102)、Naテニオライト(NaMg2LiSi4102)、LiNaテニオライト(LiMg2LiSi4102)などが知られている。
【0090】
金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料は、アルミナフレークを基材とし、基材表面を金属酸化物が被覆した顔料である。アルミナフレークとは、鱗片状(薄片状)酸化アルミニウムを意味し、無色透明なものである。該アルミナフレークは酸化アルミニウム単一成分である必要はなく、他の金属の酸化物を含有するものであってもよい。
【0091】
金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料とは、鱗片状のガラスを基材とし、基材表面を金属酸化物が被覆した顔料である。該金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料は、基材表面が平滑なため、強い光の反射が生じる。
【0092】
金属酸化物被覆シリカフレーク顔料は、表面が平滑で且つ厚さが均一な基材である鱗片状シリカを金属酸化物が被覆した顔料である。
【0093】
上記光干渉性顔料は、分散性、耐水性、耐薬品性、耐候性などを向上させるための表面処理が施されたものであってもよい。
【0094】
上記光干渉性顔料の平均粒子径は、真珠調光沢に優れた塗膜を得る観点から、好ましくは5~30μm、特に好ましくは7~20μmの範囲内である。
【0095】
上記光干渉性顔料の厚さは、真珠調光沢に優れた塗膜を得る観点から、好ましくは0.05~1μm、特に好ましくは0.1~0.8μmの範囲内である。
【0096】
本発明の自動車用光輝性塗料における光輝性顔料(C)の平均粒子径は、ハイライトで高い光沢度を有し、粒子感が小さく緻密な金属調又は真珠調光沢を有する塗膜を形成する観点から、1~100μmの範囲内のものを使用することが好ましく、より好ましくは5~50μmの範囲内、特に好ましくは7~30μmの範囲内のものである。光輝性顔料(C)の厚さは0.01~1.0μmの範囲内であることが好ましく、特に好ましくは0.02~0.5μmの範囲内である。
【0097】
本発明の自動車用光輝性塗料における光輝性顔料(C)の含有量は、金属調又は真珠調光沢に優れた塗膜を得る観点から、自動車用光輝性塗料中の合計固形分100質量部に対し、固形分として2~97質量%の範囲内であることが好ましく、5~65質量%の範囲内であることが特に好ましく、10~60質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0098】
その他の成分
本発明の自動車用光輝性塗料は、さらに必要に応じて、前記水、分散剤(A)、セルロースナノファイバー(B)及び光輝性顔料(C)以外の成分を含有することができる。該成分としては、例えば、該セルロースナノファイバー(B)以外の粘性調整剤、該光輝性顔料(C)以外の顔料、バインダー樹脂、架橋性成分、湿潤剤、有機溶剤、紫外線吸収剤及び光安定剤、塩基性化合物等が挙げられる。
【0099】
セルロースナノファイバー(B)以外の粘性調整剤
本発明の自動車用光輝性塗料は、得られる塗膜の耐水性、金属調又は真珠調光沢等の観点から、前記セルロースナノファイバー(B)以外の粘性調整剤を含有することができる。該セルロースナノファイバー(B)以外の粘性調整剤としては、例えば、ポリアミド系粘性調整剤、鉱物系粘性調整剤、ポリアクリル酸系粘性調整剤等を使用することができる。
【0100】
ポリアミド系粘性調整剤としては、ポリアミドアミン塩、脂肪酸ポリアミド等が挙げられる。
【0101】
鉱物系粘性調整剤としては、その結晶構造が2:1型構造を有する膨潤性層状ケイ酸塩が挙げられる。具体的には、天然又は合成のモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、バイデライト、ノントロナイト、ベントナイト、ラポナイト等のスメクタイト族粘土鉱物や、Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na塩型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等の膨潤性雲母族粘土鉱物及びバーミキュライト、又はこれらの置換体や誘導体、或いはこれらの混合物が挙げられる。
【0102】
ポリアクリル酸系粘性調整剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0103】
該ポリアクリル酸系粘性調整剤の市販品として、例えば、ダウケミカル社製の「プライマルASE-60」、「プライマルTT615」、「プライマルRM5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。ポリアクリル酸系粘性調整剤の固形分酸価としては、30~300mgKOH/g、好ましくは80~280mgKOH/gの範囲内のものを使用することができる。
【0104】
本発明の自動車用光輝性塗料が上記セルロースナノファイバー(B)以外の粘性調整剤を含有する場合、その含有量は、前記セルロースナノファイバー(B)の固形分含有量100質量部に基づいて、固形分で1~200質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50~150質量部の範囲内である。
【0105】
光輝性顔料(C)以外の顔料
本発明の自動車用光輝性塗料は、前記光輝性顔料(C)以外の顔料を含有することができる。
【0106】
該光輝性顔料(C)以外の顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料等を使用することができる。
【0107】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などが挙げられる。
【0108】
また、上記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。
【0109】
上記光輝性顔料(C)以外の顔料は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0110】
バインダー樹脂
本発明の自動車用光輝性塗料は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、バインダー樹脂を含有することができる。
【0111】
上記バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。また、該バインダー樹脂は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基を有していることが好ましい。
【0112】
本発明の自動車用光輝性塗料が上記バインダー樹脂を含有する場合、その含有量は、光輝性顔料(C)の含有量100質量部を基準として、好ましくは0.01~500質量部、より好ましくは5~300質量部、さらに好ましくは10~200質量部である。
【0113】
また上記バインダー樹脂としては、得られる塗膜の耐水性等の観点から、少なくともその一種として樹脂水分散体を使用することが好ましい。
【0114】
上記樹脂水分散体としては、樹脂が水性溶媒に分散されているものを使用することができる。該樹脂水分散体としては、例えば、ウレタン樹脂水分散体、アクリル樹脂水分散体、ポリエステル樹脂水分散体、オレフィン樹脂水分散体及びこれらの樹脂の複合体からなる群から選択される少なくとも一種を含有することができる。該樹脂水分散体は変性されていてもよい。
【0115】
これらのうち、得られる塗膜の耐水性の観点から、ウレタン樹脂水分散体、アクリル樹脂水分散体が好ましく、さらに水酸基含有ウレタン樹脂水分散体及び水酸基含有アクリル樹脂水分散体が好ましい。
【0116】
水酸基含有アクリル樹脂水分散体は特に、コアシェル型であることが好ましい。
【0117】
本発明の自動車用光輝性塗料が上記樹脂水分散体を含有する場合、その含有量は自動車用光輝性塗料中の合計固形分100質量部に基づいて、1~60質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10~40質量部の範囲内である。
【0118】
架橋性成分
本発明の自動車用光輝性塗料は、得られる塗膜の耐水付着性等の観点から、架橋性成分をさらに含有することができる。
【0119】
上記架橋性成分は、自動車用光輝性塗料が上記バインダー樹脂を含有する場合には、これを加熱により架橋硬化させるための成分であり、上記バインダー樹脂を含まない場合には、自己架橋するものであってもよい。又は、上記架橋性成分は、後述する着色塗膜を形成する着色塗料の一部やクリヤー塗膜を形成するクリヤー塗料の一部と架橋硬化させるための成分であってもよい。架橋性成分としては、例えばアミノ樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、活性メチレン化合物でブロックされたポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。これらのうち、水酸基と反応し得るアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物、カルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましい。ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物については、後述のクリヤー塗料の項で述べるものを使用することができる。上記架橋性成分は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0120】
本発明の自動車用光輝性塗料が上記架橋性成分を含有する場合、その含有量は、得られる塗膜の耐水性等の点から、本発明の自動車用光輝性塗料中の光輝性顔料(C)の含有量100質量部を基準として、固形分として1~100質量部の範囲内であることが好ましく、5~95質量部の範囲内であることがより好ましく、10~90質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0121】
本発明の自動車用光輝性塗料が、上記バインダー樹脂及び/又は架橋性成分を含有する場合、該バインダー樹脂及び架橋性成分の合計含有量は、得られる塗膜の金属又は真珠調光沢及び耐水付着性の観点から、該自動車用光輝性塗料中の光輝性顔料(C)の固形分100質量部を基準として、固形分として0.1~500質量部の範囲内であることが好ましく、1~300質量部の範囲内であることがより好ましく、10~100質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0122】
湿潤剤
本発明の自動車用光輝性塗料は、得られる塗膜の金属、真珠調光沢等の観点から、湿潤剤をさらに含んでいてもよい。
【0123】
上記湿潤剤としては、被塗物への自動車用光輝性塗料の塗装時に、該自動車用光輝性塗料を被塗物上に一様に配向するのを支援する効果のある材料であれば特に制限なく使用することができる。
【0124】
このような作用をもつ材料は、湿潤剤以外にも、ヌレ剤、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤、界面活性剤、スーパーウェッターなどと称されることがあり、上記湿潤剤としては、ヌレ剤、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤、界面活性剤、スーパーウェッターも含まれる。
【0125】
本発明の自動車用光輝性塗料における湿潤剤の配合量は、光輝性顔料(C)の固形分100質量部を基準として固形分で好ましくは4~400質量部、より好ましくは5~100質量部、さらに好ましくは8~60質量部である。
【0126】
湿潤剤としては、例えばシリコーン系、アクリル系、ビニル系、フッ素系、アセチレンジオール系などの湿潤剤が挙げられる。上記湿潤剤はそれぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0127】
湿潤剤としては、耐水性に優れ、金属又は真珠調光沢を形成することができ、さらに安定性の高い自動車用光輝性塗料を得る観点からアセチレンジオール系の湿潤剤及び/又はエチレンオキサイド鎖をもつ湿潤剤を使用することが好ましい。
【0128】
特に、湿潤剤としては、アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物である湿潤剤を使用することが好ましい。
【0129】
湿潤剤の市販品は例えば、ビックケミー社製のBYKシリーズ、エヴォニック社製のTegoシリーズ、共栄社化学社製のグラノールシリーズ、ポリフローシリーズ、楠本化成社製のディスパロンシリーズ、エボニックインダストリーズ社製のサーフィノールシリーズなどが挙げられる。
【0130】
シリコーン系の湿潤剤としては、ポリジメチルシロキサン及びこれを変性した変性シリコーンが使用される。変性シリコーンとしては、ポリエーテル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーンなどが挙げられる。
【0131】
本発明の自動車用光輝性塗料における湿潤剤の含有量は、得られる複層塗膜が金属又は真珠調光沢に優れる観点から、自動車用光輝性塗料の固形分100質量部を基準として、固形分で0.01~20質量部であることが好ましく、0.02~15質量部であることがより好ましく、0.05~10質量部であることがさらに好ましい。
【0132】
本発明の自動車用光輝性塗料は、得られる塗膜の金属又は真珠調光沢の観点から、該自動車用光輝性塗料の全成分合計100質量部に対して、固形分を0.1~10質量部含むことが好ましく、0.5~9質量部含むことがより好ましく、1~8質量部含むことがさらに好ましい。
【0133】
なかでも、本発明の自動車用光輝性塗料は、得られる塗膜の金属又は真珠調光沢の観点から、水、前記分散剤(A)、セルロースナノファイバー(B)、光輝性顔料(C)及び湿潤剤を含有し、かつ該自動車用光輝性塗料の全成分合計100質量部に対して、固形分を好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~9質量部、さらにより好ましくは1~8質量部含有する自動車用光輝性塗料である。
【0134】
粘度
本明細書において、粘度は、一定条件での測定開始1分後の粘度として定義する。具体的には、調製した自動車用光輝性塗料を所定の容器に入れて、回転式攪拌機を使用して、回転数を1000回転/分の条件に設定して、均一になるまで攪拌混合する。その後、温度20℃においてB型粘度計で6回転/分(6rpm)の条件で回転開始1分後の粘度(本明細書では「B6値」とも称する)を測定する。このとき、使用する粘度計は、LVDV-I(商品名、BROOKFIELD社製、B型粘度計)である。6rpmという回転数は、擬塑性を持つ液体の粘度を管理する際の一般的な条件である。
【0135】
本発明の自動車用光輝性塗料は、得られる塗膜の金属又は真珠調光沢の観点から、回転数が6回転/分(6rpm)の条件における粘度(B6値)が、好ましくは100~10000mPa・sec、より好ましくは200~8000mPa・sec、さらに好ましくは400~6000mPa・secの範囲内である。
【0136】
さらに、金属又は真珠調光沢に優れる塗膜を得る観点から、本発明の自動車用光輝性塗料は、温度20℃においてB型粘度計で測定する60回転/分(60rpm)で回転開始1分後の粘度(本明細書では「B60値」とも称する)が30~2000mPa・sの範囲内であることが好ましく、40~1800mPa・sの範囲内であることがより好ましく、50~1500mPa・sの範囲内であることがさらに好ましい。このとき、使用する粘度計は、LVDV-I(商品名、BROOKFIELD社製、B型粘度計)である。
【0137】
Ti値
本明細書において、「Ti値(チクソトロピックインデックス)」とは、JIS K 5101-6-2(2004)、顔料試験方法 第2節 回転粘度計法に記載されるもので、B型粘度計を用い、20℃、回転数6rpm及び60rpmでの粘度(mPa・s)を測定して、「6rpmでの粘度測定値/60rpmでの粘度測定値(B6値/B60値)」での粘度測定値の値を算出して求めることができる。Ti値は、得られる塗膜の金属又は真珠調光沢の観点から、1.5~10の範囲内であることが好ましく、2~9の範囲内であることがより好ましく、2.5~8の範囲内であることがさらに好ましい。Ti値が1.5以上であることが顔料の沈降し難さの点で好ましく、Ti値が10以下であることが顔料の凝集を抑制する点で好ましい。
【0138】
複層塗膜形成方法
本発明の自動車用光輝性塗料は、金属又は真珠調光沢に優れた塗膜を形成することができるので、水性ベースコート塗料として使用することが好ましい。なかでも、本発明の自動車用光輝性塗料は、被塗物上に、着色塗料を塗装して着色塗膜を形成すること、形成される硬化又は未硬化の着色塗膜上に、本発明の自動車用光輝性塗料を塗装して光輝性塗膜を形成すること、及び形成される硬化又は未硬化の光輝性塗膜上に、クリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成することを含む複層塗膜形成方法において好適に使用することができる。
【0139】
上記着色塗膜と光輝性塗膜との間には、透明であってもよいベース塗料によるベース塗膜が形成されてもよい。
【0140】
本発明の複層塗膜形成方法は、例えば、具体的に次のような順で塗膜が積層される工程を挙げることができる。
複層塗膜形成方法(1):被塗物/着色塗膜/光輝性塗膜/クリヤー塗膜
複層塗膜形成方法(2):被塗物/着色塗膜/透明であってもよいベース塗膜/光輝性塗膜/クリヤー塗膜
複層塗膜形成方法(1)において、着色塗膜、光輝性塗膜及びクリヤー塗膜はそれぞれウェットオンウェットで積層され、3層同時に硬化されることが好ましい。
【0141】
複層塗膜形成方法(2)において、着色塗膜の形成後は硬化され、その後に透明であってもよいベース塗膜、光輝性塗膜、及びクリヤー塗膜がそれぞれウェットオンウェットで積層され、3層同時に硬化されることが好ましい。
【0142】
被塗物
本発明の複層塗膜は、以下に示す被塗物上に形成される。被塗物は、乗用車、トラック、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品等を挙げることができる。被塗物の素材としては、鉄、亜鉛、アルミニウム等の金属やこれらの金属少なくとも1種を含む合金などの金属材、これらの金属の少なくとも1種による成型物、ガラス、プラスチック(プラスチック発泡体を含む)などによる成型物、プラスチックフィルム等を挙げることができる。これら素材に応じて適宜、脱脂処理や表面処理して被塗物とすることができる。該表面処理としては例えばリン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等が挙げられる。さらに、上記被塗物の素材が金属であれば、表面処理された金属素材の上にカチオン電着塗料等によって下塗り塗膜が形成されていることが好ましい。なかでも、該下塗り塗膜は硬化された塗膜であることが好ましく、カチオン電着塗料等によって形成された塗膜が硬化された塗膜であることがより好ましい。
【0143】
また、被塗物の素材がプラスチックである場合には、脱脂処理されたプラスチック素材の上にプライマー塗料によってプライマー塗膜が形成されていることが好ましい。
【0144】
着色塗料
着色塗料としては、具体的には、基体樹脂、架橋剤、顔料ならびに有機溶剤及び/又は水等の溶媒を主成分とするそれ自体既知の熱硬化性塗料を使用することができる。上記熱硬化性塗料としては、例えば中塗り塗料及びベース塗料等が挙げられる。
【0145】
着色塗料に使用される基体樹脂としては、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂等が挙げられるが、耐水性、耐薬品性、耐候性等の観点から、熱硬化性樹脂であることが望ましい。
【0146】
基体樹脂としては、耐候性及び透明性の点から、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等であることが好ましい。
【0147】
上記アクリル樹脂としては、例えば、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸、水酸基、アミド基、メチロール基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及びその他の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等を共重合して得られる樹脂を挙げることができる。
【0148】
ポリエステル樹脂としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールと、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸などの多価カルボン酸成分との縮合反応によって得られるポリエステル樹脂等を使用することができる。
【0149】
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合反応により製造される、いわゆるビスフェノールA型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0150】
ウレタン樹脂としては、例えば、ジイソシアネート化合物と多価アルコールとの付加反応により得られる化合物、上記アクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂にジイソシアネート化合物を反応させて高分子量化したものを挙げることができる。
【0151】
着色塗料は、水性塗料、溶剤系塗料のいずれであってもよいが、塗料の低VOC化の観点から、水性塗料であることが望ましい。着色塗料が水性塗料である場合、上記基体樹脂は、樹脂を水溶性化もしくは水分散するのに十分な量の親水性基、例えばカルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン結合等、最も一般的にはカルボキシル基を含有する樹脂を使用し、該親水性基を中和してアルカリ塩とすることにより基体樹脂を水溶性化もしくは水分散化することができる。その際の親水性基、例えばカルボキシル基の量は特に制限されず、水溶性化もしくは水分散化の程度に応じて任意に選択することができるが、一般には、酸価に基づいて約10mgKOH/g以上、好ましくは30~200mgKOH/gの範囲内とすることができる。また中和に用いるアルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、アミン化合物等を挙げることができる。
【0152】
また、上記樹脂の水分散化は、重合性成分を界面活性剤や水溶性樹脂の存在下で乳化重合せしめることによっても行うことができる。さらに、上記樹脂を例えば乳化剤などの存在下で水中に分散することによっても得られる。この水分散化においては、基体樹脂中には前記親水性基を全く含んでいなくてもよく、あるいは上記水溶性樹脂よりも少なく含有することができる。
【0153】
前記架橋剤は、上記基体樹脂を加熱により架橋硬化させるためのものであり、前記の本発明の自動車用光輝性塗料の説明欄において架橋性成分として例示したものを使用することができる。
【0154】
着色塗料における上記各成分の比率は、必要に応じて任意に選択することができるが、耐水性、仕上がり性等の観点から、基体樹脂及び架橋剤は、一般には、該両成分の合計質量に基づいて、前者が60~90質量%、特に70~85質量%、後者が10~40質量%、特に15~30質量%の範囲内とすることが好ましい。
【0155】
前記顔料は、着色塗料により形成される着色塗膜に色彩、下地隠蔽性を与えるものである。該顔料の種類や配合量は、複層塗膜に求める色相又は明度に応じて適宜調整することができる。例えば、該顔料の種類や配合量を調整することによって、着色塗料によって得られる塗膜の明度L値を0.1~90、好ましくは0.1~70、さらに好ましくは0.1~60の範囲内となるように調整することができる。該顔料としては例えば、メタリック顔料、防錆顔料、着色顔料、体質顔料等を挙げることができ、なかでも着色顔料を使用することが好ましく、下地隠蔽性、金属調光沢に優れる塗膜を得る等の観点から、黒色顔料を使用することがさらに好ましい。着色塗料における顔料の種類や配合量は、着色塗膜のLを上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0156】
着色塗料により得られる着色塗膜の硬化膜厚は、下地の隠蔽性及び複層塗膜の金属調光沢感等の観点から、好ましくは3μm~50μmであり、より好ましくは5~45μm、さらに好ましくは8~40μmである。例えば、硬化膜厚は15μm~50μmであることができ、好ましくは18~45μm、より好ましくは20~40μmである。
【0157】
着色塗料の塗装は、通常の方法に従って行なうことができ、着色塗料が水性塗料である場合には例えば、着色塗料に脱イオン水、必要に応じ増粘剤、消泡剤などの添加剤を加えて、固形分を30~70質量%程度、粘度を500~6000cps/6rpm(B型粘度計)に調整した後、前記被塗物面に、スプレー塗装、回転霧化塗装等により行うことができる。塗装の際、必要に応じて静電印加を行うこともできる。
【0158】
着色塗料(X)は、色安定性等の観点から、白黒隠蔽膜厚が好ましくは80μm以下、より好ましくは10~60μm、さらに好ましくは15~50μmである。本明細書において、「白黒隠蔽膜厚」とは、JIS K5600-4-1の4.1.2に規定される白黒の市松模様の隠蔽率試験紙を、鋼板に貼り付けた後、膜厚が連続的に変わるように塗料を傾斜塗りし、乾燥又は硬化させた後、拡散昼光の下で塗面を目視で観察し、隠蔽率試験紙の市松模様の白黒の境界が見えなくなる最小の膜厚を電磁式膜厚計で測定した値である。
【0159】
前記複層塗膜形成方法(1)のように、着色塗料による未硬化の塗膜上に本発明の自動車用光輝性塗料を塗装する場合には、上記着色塗料を塗装後に、常温で15~30分間放置したり、50~100℃の温度で30秒~10分間加熱せしめた後に本発明の自動車用光輝性塗料を塗装することができる。
【0160】
また前記複層塗膜形成方法(2)のように、着色塗膜を硬化させる場合は、加熱温度は好ましくは110~180℃、特に好ましくは120~160℃の範囲内である。また、加熱処理の時間は好ましくは10~60分間、特に好ましくは15~40分間の範囲内である。
【0161】
透明であってもよいベース塗料
透明であってもよいベース塗料(以下単に「ベース塗料」と称することがある)としては、それ自体既知の塗料組成物を使用することができる。特に、ベース塗料として、自動車車体などを塗装する場合に通常用いられる塗料組成物を使用することが好適である。
【0162】
ベース塗料は、基体樹脂及び硬化剤と、水及び/又は有機溶剤からなる媒体とを含有する塗料であることが好ましい。
【0163】
該基体樹脂及び硬化剤としては、当該分野で慣用されている公知の化合物を使用することができる。
【0164】
基体樹脂は、耐候性及び透明性などが良好である樹脂が好適であり、具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0165】
アクリル樹脂としては、例えば、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸、水酸基、アミド基、メチロール基などの官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル;その他の(メタ)アクリル酸エステル;スチレンなどのモノマー成分を共重合して得られる樹脂を挙げることができる。
【0166】
ポリエステル樹脂としては、多塩基酸、多価アルコール、変性油を常法により縮合反応させて得られるものを使用することができる。
【0167】
エポキシ樹脂としては、例えばエポキシ基と不飽和脂肪酸との反応によって、エポキシエステルを合成し、この不飽和基にα,β-不飽和酸を付加する方法によって得られるエポキシ樹脂、エポキシエステルの水酸基と、フタル酸及びトリメリット酸のような多塩基酸とをエステル化する方法などによって得られるエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0168】
ウレタン樹脂としては、例えば脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物及び芳香族ジイソシアネート化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート化合物と、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールから成る群から選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物とを反応させてなるウレタン樹脂;上記アクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂にジポリイソシアネート化合物を反応させて高分子量化したウレタン樹脂;などを挙げることができる。
【0169】
ベース塗料は、水性塗料及び溶剤系塗料のいずれであってもよいが、塗料の低VOC化の観点から、水性塗料であることが望ましい。ベース塗料が水性塗料である場合、上記基体樹脂として、樹脂を水溶性化もしくは水分散するのに十分な量の親水性基、例えばカルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン基など、最も好ましくはカルボキシル基を含有する樹脂を使用し、該親水性基を中和してアルカリ塩とすることにより、基体樹脂を水溶性化もしくは水分散化することができる。その際の親水性基、例えばカルボキシル基の量は特に制限されず、水溶性化もしくは水分散化の程度に応じて任意に選択することができるが、一般には、酸価に基づいて約10mgKOH/g以上、好ましくは30~200mgKOH/gの範囲内とすることができる。また中和に用いるアルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、アミン化合物などを挙げることができる。
【0170】
また、上記樹脂の水分散化は、モノマー成分を界面活性剤、及び任意選択で水溶性樹脂の存在下で乳化重合せしめることによっても行うことができる。さらに、上記樹脂を例えば乳化剤などの存在下で水中に分散することによっても得られる。この水分散化においては、基体樹脂中には前記親水性基を全く含んでいなくてもよく、あるいは親水性基を上記水溶性樹脂よりも少なく含有することができる。
【0171】
前記硬化剤は、上記基体樹脂を加熱により架橋硬化させるためのものであり、例えばアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック化していないポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物を含む)、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物などが挙げられる。これらのうち、水酸基と反応し得るアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、及びカルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましい。上記架橋剤は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0172】
具体的には、メラミン、ベンゾグアナミン、尿素などとホルムアルデヒドとの縮合もしくは共縮合によって得られるアミノ樹脂、又は、さらに低級1価アルコールでエーテル化するなどによって得られるアミノ樹脂が好適に用いられる。また、ポリイソシアネート化合物も好適に使用できる。
【0173】
ベース塗料における上記各成分の比率は、必要に応じて任意に選択することができるが、耐水性、仕上がり性などの観点から、基体樹脂及び架橋剤は、一般には、該両成分の合計質量に基づいて、前者が50~90質量%、特に60~85質量%、後者が10~50質量%、特に15~40質量%の範囲内とすることが好ましい。
【0174】
ベース塗料には、必要に応じて有機溶剤を使用することもできる。具体的には、通常塗料に用いられているものを使用することができる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテートなどのエステル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル;ブタノール、プロパノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ジエチレングリコールなどのアルコール;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトンの有機溶剤が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0175】
また、ベース塗料は、上記の成分に加えて、所望により、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、紫外線吸収剤、消泡剤、粘性調整剤、塩基性化合物、防錆剤、表面調整剤などを適宜含有してもよい。
【0176】
ベース塗料は、透明塗料もしくは着色塗料であってもよいが、金属調又は真珠調光沢に優れた塗膜を得る観点から透明塗料であることが好ましい。
【0177】
ベース塗料が透明塗料であるとは、ベース塗料を塗装して得られる膜厚35μmの乾燥膜のヘイズ値が25%以下であることを指す。なお、本発明において、ヘイズ値は、平滑なPTFE板にベース塗料を塗装し、硬化、剥離した塗膜を濁度計COH-300A(商品名、日本電色工業社製)にて測定した拡散光線透過率(DF)及び平行光線透過率(PT)から、次式(1)によって計算された数値として定義するものとする。
【0178】
ヘイズ値=100*DF/(DF+PT) ・・・(1)
ベース塗料が透明塗料である場合には、必要に応じて体質顔料を含有することができる。体質顔料としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、シリカ、炭酸マグネシウム、タルク、アルミナホワイトなどを挙げることができる。
【0179】
上記体質顔料を配合する場合、その配合量は、ベース塗料中の樹脂固形分100質量部に対し0.1~30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量部の範囲内である。
【0180】
ベース塗料が着色塗料である場合には、着色顔料を含有する。ベース塗料は、光線透過制御の観点からは酸化チタン及びカーボンブラック等の着色顔料を含有することができ、さらに必要に応じて酸化チタン及びカーボンブラック以外の従来公知の着色顔料を含有することができる。かかる着色顔料としては、特に制限されるものではないが、具体的には、酸化鉄顔料、チタンイエローなどの複合酸化金属顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料、光輝性顔料などの中から任意のものを1種もしくはそれ以上を組み合わせて使用することができる。光輝性顔料としては、前記着色塗料の欄で例示したものを挙げることができる。
【0181】
上記着色顔料を配合する場合、その配合量は、ベース塗料中の樹脂固形分100質量部に対し0.1~50質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.2~40質量部の範囲内である。
【0182】
ベース塗料により得られるベース塗膜の硬化膜厚は、平滑性及び金属調光沢感などの観点から、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは3~20μm、さらにより好ましくは5~15μmである。
【0183】
ベース塗料の塗装は、通常の方法に従って行なうことができ、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装などの方法が挙げられる。ベース塗料の塗装の際は、必要に応じて、静電印加されていてもよく、中でも、回転霧化方式の静電塗装及びエアスプレー方式の静電塗装が好ましく、回転霧化方式の静電塗装が特に好ましい。
【0184】
また、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装又は回転霧化塗装する場合には、ベース塗料は、適宜、水及び/又は有機溶剤ならびに必要に応じて粘性調整剤、消泡剤などの添加剤を含有して塗装に適した固形分含有率及び粘度に調整されることが好ましい。
【0185】
ベース塗料の固形分含有率は好ましくは10~60質量%、より好ましくは15~55質量%、さらに好ましくは20~50質量%の範囲である。ベース塗料の20℃、6rpmにおけるB型粘度計による粘度が好ましくは200~7000cps、より好ましくは300~6000cps、さらに好ましくは500~5000cpsの範囲である。
【0186】
自動車用光輝性塗料の塗装
本発明の自動車用光輝性塗料は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができる。これらの塗装方法は、必要に応じて、静電印加してもよい。本発明の複層塗膜形成方法においては、特に回転霧化式の静電塗装が好ましい。
【0187】
本発明の自動車用光輝性塗料が被塗物に付着してから1分後の膜厚は、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、好ましくは3~100μm、より好ましくは4~80μm、さらに好ましくは5~60μmである。
【0188】
また、上記自動車用光輝性塗料を塗装後に、常温で15~30分間放置せしめたり、50~100℃の温度で30秒~10分間加熱した後にクリヤー塗料を塗装することができる。
【0189】
本発明の自動車用光輝性塗料によって形成される塗膜の厚さは、乾燥膜厚として、好ましくは0.02~40μm、より好ましくは0.05~30μm、さらに好ましくは0.1~25μmである。
【0190】
また、本発明の自動車用光輝性塗料が、該自動車用光輝性塗料の全成分合計100質量部に対して、固形分を0.1~10質量部、好ましくは0.5~9質量部、より好ましくは1~8質量部含有する場合、該自動車用光輝性塗料によって形成される光輝性塗膜の厚さは、乾燥膜厚として、0.02~7μm、より好ましくは0.1~4μm、さらに好ましくは0.15~3μmであることが好適である。また、該自動車用光輝性塗料が0.01~0.2μmの蒸着金属フレーク顔料及び/又はアルミニウムフレーク顔料を含む場合、該自動車用光輝性塗料によって形成される光輝性塗膜の厚さは、乾燥膜厚として、好ましくは0.02~3.5μm、より好ましくは0.08~3μmである。
【0191】
本発明に係る複層塗膜形成方法においては、上記自動車用光輝性塗料を塗装して得られた光輝性塗膜上に、クリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成することができる。
【0192】
クリヤー塗料
クリヤー塗料は、公知の熱硬化性クリヤーコート塗料組成物をいずれも使用できる。該熱硬化性クリヤーコート塗料組成物としては、例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び硬化剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、水性熱硬化性塗料組成物、粉体熱硬化性塗料組成物等を挙げることができる。
【0193】
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物等を挙げることができる。
【0194】
クリヤー塗料の基体樹脂/硬化剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等が好ましい。
【0195】
また、上記クリヤー塗料は、一液型塗料であってもよいし、二液型塗料等の多液型塗料であってもよい。
【0196】
なかでもクリヤー塗料として好ましくは、得られる塗膜の付着性の観点から下記の水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料である。
【0197】
水酸基含有樹脂
水酸基含有樹脂としては、水酸基を含有するものであれば従来公知の樹脂が制限なく使用できる。該水酸基含有樹脂としては例えば、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリエーテル樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂などを挙げることができ、好ましいものとして、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂を挙げることができ、特に好ましいものとして水酸基含有アクリル樹脂を挙げることができる。
【0198】
水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は、塗膜の耐擦り傷性や耐水性の観点から、80~200mgKOH/gの範囲内であるのが好ましく、100~180mgKOH/gの範囲内であるのがさらに好ましい。
【0199】
水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、塗膜の耐酸性や平滑性の観点から、2500~40000の範囲内であるのが好ましく、5000~30000の範囲内であるのがさらに好ましい。
【0200】
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」、「TSKgel G-2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
【0201】
水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度は-40℃~20℃であることが好ましく、-30℃~10℃の範囲内であることが特に好ましい。ガラス転移温度が-40℃以上であると塗膜硬度が十分であり、また、20℃以下であると塗膜の塗面平滑性を維持することができる。
【0202】
ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。
【0203】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)などの脂肪族ジイソシアネート;2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0204】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0205】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0206】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4-TDI)もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6-TDI)もしくはその混合物、4,4'-トルイジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4',4''-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;4,4'-ジフェニルメタン-2,2',5,5'-テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
【0207】
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDIなどを挙げることができる。該ポリイソシアネートの誘導体は、単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。
【0208】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。
【0209】
脂肪族ジイソシアネートのなかでもヘキサメチレンジイソシアネート系化合物、脂環族ジイソシアネートのなかでも4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を好適に使用することができる。その中でも特に、付着性、相溶性等の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体が最適である。
【0210】
また、前記ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、該ポリイソシアネートと反応し得る、例えば、水酸基、アミノ基などの活性水素基を有する化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーを使用してもよい。該ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水等が挙げられる。
【0211】
また、ポリイソシアネート化合物として、上記ポリイソシアネート及びその誘導体中のイソシアネート基をブロック剤でブロックした化合物であるブロック化ポリイソシアネート化合物を使用することもできる。
【0212】
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N-フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール又はイミダゾール誘導体;2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0213】
ブロック化を行なう(ブロック剤を反応させる)にあたっては、必要に応じて溶剤を添加して行なうことができる。ブロック化反応に用いる溶剤としてはイソシアネート基に対して反応性でないものが良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)のような溶剤を挙げることができる。
【0214】
ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0215】
本発明において、塗膜の硬化性及び耐擦り傷性等の観点から、水酸基含有樹脂の水酸基のポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する当量比(OH/NCO)は好ましくは0.5~2.0、さらに好ましくは0.8~1.5の範囲内である。
【0216】
クリヤー塗料として水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料を使用する場合は、貯蔵安定性から、水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物とが分離した形態であることが好ましく、使用直前に両者を混合して調整される。
【0217】
クリヤー塗料としては、1液型塗料を使用してもよい。1液型塗料における基体樹脂/硬化剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等がある。
【0218】
クリヤー塗料には、さらに必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜含有することができる。
【0219】
上記クリヤー塗料には、透明性を損なわない範囲内において、着色顔料を適宜配合することができる。着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。その添加量は、適宜決定されて良いが、該クリヤー塗料(Z)中のビヒクル形成樹脂組成物100質量部に対して、30質量部以下、好ましくは0.01~10質量部である。
【0220】
クリヤー塗料の形態は特に制限されるものではないが、通常、有機溶剤型の塗料組成物として使用される。この場合に使用する有機溶剤としては、各種の塗料用有機溶剤、例えば、芳香族又は脂肪族炭化水素系溶剤;エステル系溶剤;ケトン系溶剤;エーテル系溶剤等が使用できる。使用する有機溶剤は、水酸基含有樹脂等の調製時に用いたものをそのまま用いても良いし、更に適宜加えても良い。
【0221】
クリヤー塗料の固形分濃度は、30~70質量%程度であるのが好ましく、40~60質量%程度の範囲内であるのがより好ましい。
【0222】
前記光輝性塗膜上に、前述のクリヤー塗料の塗装が行なわれる。クリヤー塗料の塗装は、特に限定されず前記着色塗料と同様の方法で行うことができ、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などの塗装方法により行なうことができる。これらの塗装方法は、必要に応じて、静電印加してもよい。これらのうち静電印加による回転霧化塗装が好ましい。クリヤー塗料の塗布量は、通常、硬化膜厚が10~50μm程度となる量とするのが好ましい。
【0223】
また、クリヤー塗料の塗装にあたっては、クリヤー塗料の粘度を、塗装方法に適した粘度範囲、例えば、静電印加による回転霧化塗装においては、20℃でフォードカップNo.4粘度計による測定で、15~60秒程度の粘度範囲となるように、有機溶剤等の溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
【0224】
本発明の複層塗膜形成方法においては、未硬化の着色塗膜、未硬化の光輝性塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させることができる。加熱は公知の手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を適用できる。加熱温度は70~150℃、好ましくは80~140℃の範囲内にあることが適している。加熱時間は、特に制限されるものではないが、好ましくは10~40分間、より好ましくは20~30分間の範囲内である。
【0225】
複層塗膜及び各種評価
本発明は、着色塗料から形成された着色塗膜と、着色塗膜上に形成された、本発明の自動車用光輝性塗料から形成された光輝性塗膜と、光輝性塗膜上に形成された、クリヤー塗料から形成されたクリヤー塗膜とを備えた複層塗膜を包含する。着色塗料、本発明の自動車用光輝性塗料、クリヤー塗料、及び複層塗膜形成方法については上述した通りである。着色塗膜と光輝性塗膜とクリヤー塗膜とからなる3つの未硬化の塗膜を加熱することによって、同時に硬化させることもできるし、着色塗膜を形成後、硬化させ、硬化した着色塗膜の上に、透明であってもよいベース塗膜、光輝性塗膜、クリヤー塗膜を形成し、該3つの未硬化の塗膜を同時に加熱硬化させることもできる。また、着色塗膜、透明であってもよいベース塗膜、光輝性塗膜、クリヤー塗膜を形成し、該4つの未硬化の塗膜を同時に加熱硬化させることもできる。
【0226】
60度鏡面光沢度(60°グロス)
本発明における自動車用光輝性塗料は、得られる塗膜の金属又は真珠調光沢の観点から、着色塗膜上もしくは着色塗膜及び透明であってもよいベース塗膜上に、乾燥膜厚として、0.1~4μmとなるように塗装して光輝性塗膜を形成せしめた後に、さらに該光輝性塗膜の上にクリヤー塗膜を形成して得られた複層塗膜の60度鏡面光沢度が好ましくは90~240、より好ましくは90~220、さらに好ましくは90~200の範囲内である。
【0227】
本発明において、乾燥塗膜として0.1~4μmとなるように塗装して得られた光輝性塗膜上にさらにクリヤー塗膜を積層した複層塗膜における60度鏡面光沢度を規定しているが、光輝性塗膜の膜厚が、0.1~4μmすべての場合に60度鏡面光沢度が上記範囲内であることを意味するものではなく、上記範囲内のいずれかの数値にあるときの60度鏡面光沢度について規定するものとする。
【0228】
鏡面光沢度とは、物体表面からの鏡面反射と基準面(屈折率1.567のガラス)からの鏡面反射光との比を意味し、JIS-Z8741に定義された数値である。具体的には、測定試料面に規定された入射角で規定の開き角の光束を入射し、鏡面反射方向に反射する規定の開き角の光束を受光器で測るもので、いわゆる光沢計を使用して測定される数値である。本明細書においては、光沢計(micro-TRI-gloss、BYK-Gardner社製)を用いて測定した60度鏡面光沢度(60°グロス)として定義するものとする。60度鏡面光沢度の数値が大きいほど、塗膜の光沢度が高い。
【0229】
一実施形態において、光輝性顔料(C)として蒸着金属フレーク顔料を含有し、かつ該自動車用光輝性塗料の全成分合計100質量部に対して固形分を0.1~10質量部含む本発明の自動車用光輝性塗料を、着色塗膜もしくは着色塗膜及び透明であってもよいベース塗膜上に、乾燥膜厚として、0.1~4μmとなるように塗装して光輝性塗膜を形成せしめた後に、さらに透明なクリヤー塗膜を形成して得られた複層塗膜の60度鏡面光沢度が、好ましくは130~240、より好ましくは135~235、さらに好ましくは140~230の範囲内であることが、金属調塗膜の緻密性の点で好ましい。
【0230】
粒子感
本発明において、乾燥塗膜として0.1~4μmとなるように塗装して得られた光輝性塗膜上にさらにクリヤー塗膜を積層した複層塗膜におけるHG値を粒子感として規定するが、光輝性塗膜の膜厚が、0.1~4μmすべての場合にHG値が上記範囲内であることを意味するものではなく、上記範囲内のいずれかの数値にあるときのHG値について規定するものとする。
【0231】
一実施形態において、光輝性顔料(C)として蒸着金属フレーク顔料及び/又はアルミニウムフレーク顔料を含有し、かつ該自動車用光輝性塗料の全成分合計100質量部に対して固形分を0.1~10質量部含む本発明の自動車用光輝性塗料を、着色塗膜もしくは着色塗膜及び透明であってもよいベース塗膜上に、乾燥膜厚として、0.1~4μmとなるように塗装して前記自動車用光輝性塗料により光輝性塗膜を形成せしめた後に、さらに透明なクリヤー塗膜を形成して得られた複層塗膜のHG値は、好ましくは10~55、より好ましくは10~50、さらに好ましくは10~48の範囲内であることが、金属調塗膜の緻密性の点で好ましい。
【0232】
別の実施形態において、光輝性顔料(C)として光干渉性顔料を含有し、かつ該自動車用光輝性塗料の全成分合計100質量部に対して固形分を0.1~10質量部含む本発明の自動車用光輝性塗料を、着色塗膜もしくは着色塗膜及び透明であってもよいベース塗膜上に、乾燥膜厚として、0.1~4μmとなるように塗装して前記自動車用光輝性塗料により光輝性塗膜を形成せしめた後に、さらに透明なクリヤー塗膜を形成して得られた複層塗膜のHG値は、好ましくは10~65、より好ましくは10~63、さらに好ましくは10~60の範囲内であることが、金属調塗膜の緻密性の点で好ましい。
【0233】
粒子感は、Hi-light Graininess値(以下、「HG値」と略記する)によって表される。HG値とは、微視的に観察した場合における質感であるミクロ光輝感の尺度の一つで、ハイライト(塗膜を入射光に対して正反射近傍から観察)側の粒子感を表わすパラメータである。塗膜を入射角15度/受光角0度にてCCDカメラで撮像し、得られたデジタル画像データ、すなわち2次元の輝度分布データを2次元フーリエ変換処理し、得られたパワースペクトル画像から、粒子感に対応する空間周波数領域のみを抽出し、算出した計測パラメータを、さらに0から100の数値を取り且つ粒子感との間に直線的な関係が保たれるように変換して得られるものである。具体的には、ミクロ光輝感測定装置を使用して測定することができる。
【0234】
HGは次式によって求められる。
IPSL≧0.32の場合、HG=500・IPSL-142.5
0.32>IPSL≧0.15の場合、HG=102.9・IPSL-15.4
0.15>IPSLの場合、HG=0
ここで、IPSL(Integration of Power Spectrum of Low Frequency)は次式によって求められる。
【0235】
ここで、P ( ν , θ ) は、取得した画像データから生成した2 次元の輝度分布データを2 次元フーリエ変換処理して得られるパワースペクトル、νは空間周波数、θは角度である。0~Nは粒子感に対応する空間周波数領域である。
測定方法の詳細については、“塗料の研究”(関西ペイント技報)、No.138、2002年8月:p.8-p.24及び“塗料の研究”(関西ペイント技報)、No.132、1999年4月:p.22-p.35に記載している。粒子感のHG値が低いほど、塗膜の表面に粒子感が少なくなる。
【0236】
本発明は以下の構成を採用することもできる。
【0237】
項1.水、分散剤(A)、セルロースナノファイバー(B)及び光輝性顔料(C)を含有する自動車用光輝性塗料。
【0238】
項2.前記分散剤(A)が、アニオン性高分子化合物である項1記載の自動車用光輝性塗料。
【0239】
項3.前記アニオン性高分子化合物が、カルボキシル基を有する高分子化合物またはリン酸基を有する高分子化合物である項2記載の自動車用光輝性塗料。
【0240】
項4.前記アニオン性高分子化合物が、カルボキシル基を有する高分子化合物またはリン酸基を有する高分子化合物である項2又は3記載の自動車用光輝性塗料。
【0241】
項5.光輝性顔料(C)100質量部に対して前記分散剤(A)を0.01~25質量部含有する項1~4のいずれか一項に記載の自動車用光輝性塗料。
【0242】
項6.光輝性顔料(C)100質量部に対して前記分散剤(A)を0.1~10質量部含有する項1~4のいずれか一項に記載の自動車用光輝性塗料。
【0243】
項7.前記セルロースナノファイバー(B)が、アニオン変性セルロースナノファイバーである項1~6のいずれか一項に記載の自動車用光輝性塗料。
【0244】
項8.前記アニオン変性セルロースナノファイバーが、酸化セルロースナノファイバーである項7記載の自動車用光輝性塗料。
【0245】
項9.前記酸化セルロースナノファイバーの絶乾質量に対するカルボキシル基量が、0.4~1.0mmol/gである項7又は8記載の自動車用光輝性塗料。 項10.前記光輝性顔料(C)が、蒸着金属フレーク顔料、アルミニウムフレーク顔料、光干渉性顔料、又はそれらの組み合わせを含む項1~9のいずれか一項に記載の自動車用光輝性塗料。
【0246】
項11.前記光輝性顔料(C)が蒸着金属フレーク顔料とアルミニウムフレーク顔料を含む項1~10のいずれか一項に記載の自動車用光輝性塗料。
【0247】
項12.前記光輝性塗料における光輝性顔料(C)の含有量は、自動車用光輝性塗料中の合計固形分100質量部に対し、固形分として2~97質量%の範囲内である項1~11のいずれか一項に記載の自動車用光輝性塗料。
【0248】
項13.ウレタン樹脂水分散体、アクリル樹脂水分散体、又はそれらの組み合わせから選択される樹脂水分散体をさらに含む項1~12のいずれか一項に記載の自動車用光輝性塗料。
【0249】
項14.前記樹脂水分散体の含有量は、自動車用光輝性塗料中の合計固形分100質量部に対し、固形分として1~60質量%の範囲内である項13に記載の自動車用光輝性塗料。
【0250】
項15.湿潤剤をさらに含む項1~15のいずれか一項に記載の自動車用光輝性塗料。
【0251】
項16.前記湿潤剤の含有量は、自動車用光輝性塗料中の合計固形分100質量部に対し、固形分として0.01~20質量%の範囲内である項15に記載の自動車用光輝性塗料。
【0252】
項17.全成分合計100質量部に対して、固形分を0.1~10質量部含む項1~16のいずれか一項に記載の自動車用光輝性塗料。
【0253】
項18.着色塗膜と、着色塗膜上に形成された、項1~17のいずれか一項に記載の自動車用光輝性塗料から形成された光輝性塗膜と、光輝性塗膜上に形成された、クリヤー塗膜とを備えた複層塗膜。
【0254】
項19.光輝性塗膜の乾燥膜厚が0.02~40μmである項18に記載の複層塗膜。
【0255】
項20.着色塗膜と光輝性塗膜の間に、透明であってもよいベース塗膜をさらに備える項18又は19に記載の複層塗膜。
【0256】
項21.光輝性顔料(C)が蒸着金属フレーク顔料を含有し、かつ前記光輝性塗膜が、項17に記載の自動車用光輝性塗料を、着色塗膜上、もしくは着色塗膜及び透明であってもよいベース塗膜上に、乾燥膜厚が0.1~4μmとなるように塗装したものであり、前記複層塗膜の60度鏡面光沢度が、好ましくは130~240、より好ましくは135~235、さらに好ましくは140~230の範囲内である項18~20のいずれか一項に記載の複層塗膜。
【0257】
項22.光輝性顔料(C)が蒸着金属フレーク顔料及び/又はアルミニウムフレーク顔料を含有し、かつ前記光輝性塗膜が、項17に記載の自動車用光輝性塗料を、着色塗膜上、もしくは着色塗膜及び透明であってもよいベース塗膜上に、乾燥膜厚が0.1~4μmとなるように塗装したものであり、前記複層塗膜のHG値は、好ましくは10~55、より好ましくは10~50、さらに好ましくは10~48の範囲内である項18~20のいずれか一項に記載の複層塗膜。
【0258】
項23.光輝性顔料(C)が光干渉性顔料を含有し、かつ前記光輝性塗膜が、項17に記載の自動車用光輝性塗料を、着色塗膜上、もしくは着色塗膜及び透明であってもよいベース塗膜上に、乾燥膜厚が0.1~4μmとなるように塗装したものである場合に、前記複層塗膜のHG値は、好ましくは10~65、より好ましくは10~63、さらに好ましくは10~60の範囲内である18~20のいずれか一項に記載の複層塗膜。
【0259】
項24.項18~23のいずれか一項に記載の複層塗膜が塗装された自動車部品。
【0260】
項25.項18~23のいずれか一項に記載の複層塗膜が塗装された自動車。
【0261】
項26.被塗物上に、着色塗料を塗装して着色塗膜を形成すること、形成される硬化又は未硬化の着色塗膜上に、項1~17のいずれか一項に記載の自動車用光輝性塗料を塗装して光輝性塗膜を形成すること、及び形成される硬化又は未硬化の光輝性塗膜上に、クリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成することを含む複層塗膜形成方法。
【0262】
項27.着色塗膜、光輝性塗膜及びクリヤー塗膜が3層同時に硬化される項26に記載の複層塗膜形成方法。
【0263】
項28.被塗物の上に、硬化された下塗り塗膜が形成されていることを含む項26又は27に記載の複層塗膜形成方法。
【0264】
項29.形成される硬化又は未硬化の着色塗膜上に、透明であってもよいベース塗料を塗装して透明であってもよいベース塗膜を形成することをさらに含む項26に記載の方法。
【0265】
項30.着色塗膜の硬化後に、透明であってもよいベース塗料、光輝性塗膜及びクリヤー塗膜が3層同時に硬化される項29に記載の方法。
【0266】
項31.被塗物が自動車部品又は自動車である項26~30のいずれか一項に記載の方法。
【実施例
【0267】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0268】
水酸基含有アクリル樹脂(R-1)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート32部、n-ブチルアクリレート27.7部、2-エチルヘキシルアクリレート20部、4-ヒドロキシブチルアクリレート10部、ヒドロキシプロピルアクリレート3部、アクリル酸6.3部、2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート1部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂(R-1)溶液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(R-1)は酸価が51mgKOH/g、水酸基価が52mgKOH/gであった。
【0269】
赤色顔料分散液(P-1)の製造
製造例2
撹拌混合容器に、水酸基含有アクリル樹脂(R-1)60部(固形分33部)、PARIOGEN MAROON L3920(商品名、ペリレン系赤色顔料 BASF社製)35部及び脱イオン水177部を入れ、均一に混合し、更に、2-(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH7.5に調整した。得られた混合物を300ml容の樹脂性のビンに入れ、1.5mm径のジルコニアビーズ130部を投入して密栓し、振とう型ペイントコンディショナーを使用して120分間分散した。分散後100メッシュの金網濾過を行なってジルコニアビーズを除去して、固形分25%の赤色顔料分散液(P-1)を得た。
【0270】
橙色顔料分散液(P-2)の製造
製造例3
撹拌混合容器に、水酸基含有アクリル樹脂(R-1)70.9部(固形分39部)、コスモレイオレンジ L2950(商品名、ジケトピロロピロール系橙色顔料 BASF社製)39部及び脱イオン水241.45部を入れ、均一に混合し、更に、2-(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH7.5に調整した。得られた混合物を300ml容の樹脂性のビンに入れ、1.5mm径のジルコニアビーズ130部を投入して密栓し、振とう型ペイントコンディショナーを使用して120分間分散した。分散後100メッシュの金網濾過を行なってジルコニアビーズを除去して、固形分22.2%の橙色顔料分散液(P-2)を得た。
【0271】
体質顔料分散液(P-3)の製造
製造例4
アクリル樹脂溶液(R-1)を327部(固形分で180部)、脱イオン水360部、サーフィノール104A(商品名、エボニックインダストリーズ社製消泡剤、固形分50%)6部、及びバリファインBF-20(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末、平均粒子径0.03μm)250部を、ペイントコンディショナー中に入れ、ガラスビーズ媒体を加えて、室温で1時間混合分散し、固形分44%の体質顔料分散液(P-3)を得た。
【0272】
アクリル樹脂水分散体(R-2)の製造
製造例5
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水128部、及び「アデカリアソープSR-1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)2部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
【0273】
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2-(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、固形分30%のアクリル樹脂水分散体(R-2)を得た。得られたアクリル樹脂水分散体は、酸価33mgKOH/g、水酸基価25mgKOH/gであった。
【0274】
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40部、「アデカリアソープSR-1025」2.8部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn-ブチルアクリレート21部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
【0275】
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水17部、「アデカリアソープSR-1025」1.2部、過硫酸アンモニウム0.03部、スチレン3部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、メタクリル酸5.1部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn-ブチルアクリレート9部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
【0276】
ポリエステル樹脂水分散体(R-3)の製造
製造例6
撹拌装置、温度計、反応生成水除去装置、窒素ガス導入管を備えた反応器に、イソフタル酸664部、アジピン酸496部、無水フタル酸237部、ネオペンチルグリコール788部、トリメチロールプロパン341部を入れ、窒素ガス雰囲気下において撹拌しながら160℃まで加熱した。160℃にて1時間保持した後、生成する縮合水を除去しながら5時間かけて230℃まで昇温し、同温度で保持した。酸価が7mgKOH/gになった時点で170℃まで冷却し、ε-カプロラクトン490部を入れ、同温度で1時間保持してから、この反応生成物に、無水トリメリット酸77部を添加し、170℃で30分間付加反応を行った。その後、50℃以下に冷却し、2-(ジメチルアミノ)エタノールを酸基に対して0.88当量添加し中和してから、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度40%、pH7.5の水酸基含有ポリエステル樹脂(R-3)水分散体を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂のラクトン変性量は18質量%、数平均分子量は2074、水酸基価は89mgKOH/g、酸価は23mgKOH/gであった。
【0277】
ポリエステル樹脂溶液(R-4)の製造
製造例7
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6-ヘキサンジオール141部、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃から230℃迄3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物に、カルボキシル基を導入するために、無水トリメリット酸38.3部を加えて、170℃で30分間反応させた後、2-エチル-1-ヘキサノールで希釈し、固形分70%のポリエステル樹脂溶液(R-4)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1400であった。
【0278】
透明ベース塗料(X-1)の製造
製造例8
攪拌混合容器に、体質顔料分散液(P-3)を固形分で14部、アクリル樹脂水分散体(R-2)を固形分で40部、ポリエステル樹脂溶液(R-4)を固形分で23部、「ユーコートUX-310」(商品名、三洋化成社製、ウレタン樹脂水分散体、固形分含有率40%)を固形分で10部、及び「サイメル251」(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂、固形分含有率80%)を固形分で27部となるように添加して攪拌混合し、透明ベース塗料(X-1)を調製した。
【0279】
透明ベース塗料(X-2)の製造
製造例9
透明ベース塗料(X-1)中の樹脂固形分100質量部に対して、「Xirallic T60-10 Crystal Silver」を15部配合し、透明ベース塗料(X-2)とした。
【0280】
セルロースナノファイバー(B)の調整
製造例10
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)20mg(絶乾1gのセルロースに対し0.025mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、次亜塩素酸ナトリウムが2.2mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水で洗浄することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は93%であり、酸化反応に要した時間は60分、カルボキシル基量(以下、「変性度」ということがある)は0.75mmol/gであった。これを水で1.0%(w/v)に調整し、高圧ホモジナイザーを用いて、透明度が十分に高くなるまで解繊処理を実施して、透明度が88%である酸化セルロースナノファイバー(B-1)水分散液を得た。平均繊維径は4nm、アスペクト比は280であった。この酸化セルロースナノファイバー水分散液に対し下記安定性試験を実施し、攪拌前と攪拌後のB型粘度の値を得た。このときの粘度保持率は50%であった。
【0281】
<セルロースナノファイバー水分散液の安定性試験>
製造例で得られた1.0質量%の酸化セルロースナノファイバー水分散液210gを600mLのプラスチック容器に測りとった後、濃度が0.7%になるように脱イオン水を添加して撹拌(1000rpm、5分間)することで、0.7質量%の酸化セルロースナノファイバー水分散液300gを得た。また、濃度を調整した直後に、B型粘度計を用いて6rpm、1分間の条件で、B型粘度を測定した(撹拌前の粘度)。B型粘度を測定し終えた酸化セルロースナノファイバー水分散液300gをディスパーで30分間撹拌(1000rpm、23℃)した。30分間撹拌した直後に、B型粘度計を用いて6rpm、1分間の条件で、B型粘度を測定した(撹拌後の粘度)。
粘度保持率は下式により求められる。
粘度保持率(%)=(撹拌後の粘度/撹拌前の粘度)×100
【0282】
製造例11
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、次亜塩素酸ナトリウムが6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水で洗浄することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.51mmol/gであった。これを水で1.0%(w/v)に調整し、高圧ホモジナイザーを用いて解繊処理を実施することで、透明度が95.0%である酸化セルロースナノファイバー(B-2)水分散液を得た。平均繊維径は3nm、アスペクト比は250であった。この酸化セルロースナノファイバー水分散液に対し上記安定性試験を実施し、攪拌前と攪拌後のB型粘度の値を得た。このときの粘度保持率は39%であった。
【0283】
製造例12
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)20mg(絶乾1gのセルロースに対し0.025mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、次亜塩素酸ナトリウムが1.3mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水で洗浄することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は99%であり、酸化反応に要した時間は50分、カルボキシル基量は0.42mmol/gであった。これを水で1.0%(w/v)に調整し、高圧ホモジナイザーを用いて、透明度が十分に高くなるまで解繊処理を実施することで、透明度が75.2%である酸化セルロースナノファイバー(B-3)水分散液を得た。平均繊維径は4nm、アスペクト比は380であった。この酸化セルロースナノファイバー水分散液に対し前記安定性試験を実施し、攪拌前と攪拌後のB型粘度の値を得た。このときの粘度保持率は88%であった。
【0284】
分散剤(A)の製造
製造例13
温度計、撹拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に水148部、及び、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数37個、プロピレンオキサイドの平均付加モル25数3個、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム付加)94部(5モル%)を仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。その後、メタクリル酸35部(40モル%)、アクリル酸5部(7モル%)、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数25個)63部(5モル%)、ヒドロキシプロピルアクリレート60部(43モル%)、3-メルカプトプロピオン酸8部、水165部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム3部及び水47部の混合液とを、各々2時間で、80℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させることにより、固形分36%の共重合体(ポリカルボン酸A)の水溶液を得た。
【0285】
光輝性顔料分散液の調整
製造例14
撹拌混合容器内において、「Hydroshine WS-3001」(商品名、水性用蒸着アルミニウムフレーク顔料、Eckart社製、固形分:10%、内部溶剤:イソプロパノール、平均粒子径D50:13μm、厚さ:0.05μm、表面がシリカ処理されている)12部(固形分1.2部)、「アルペースト EMR-B6360」(商品名、東洋アルミ社製、固形分:47%、ノンリーフィングアルミニウムフレーク、平均粒子径D50:10.3μm、厚さ:0.19μm、表面がシリカ処理されている)を0.79部(固形分0.37部)及びイソプロパノール19.5部を攪拌混合し、光輝性顔料分散液を得た。
【0286】
自動車用光輝性塗料の調整
実施例1
攪拌混合容器に、蒸留水を76.7部、セルロースナノファイバー(B-1)水分散液を固形分で0.5部、「Dynol604」(商品名、アセチレンジオール系湿潤剤、エボニックインダストリーズ社製、エチレンオキサイド鎖あり、固形分100%)を固形分で0.25部、「アロンT-50」(商品名、ポリアクリル酸ナトリウム、固形分43%、東亞合成社製)を固形分で0.25部、製造例14で得た光輝性顔料分散液32.29部、「TINUVIN 479-DW」(商品名、紫外線吸収剤、BASF社製、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、HPT系紫外線吸収剤TINUVIN479をアクリルポリマー中に包含、固形分40%)を固形分で0.14部、「TINUVIN 123-DW」(商品名、光安定剤、BASF社製、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、アミノエーテル基を持つHALS TINUVIN 123をアクリルポリマー中に包含、固形分50%)を固形分で0.11部、製造例5で得たアクリル樹脂水分散体(R-2)を固形分で0.67部、オクタノールを0.51部となるように添加して攪拌混合し、自動車用光輝性塗料(Y-1)を調整した。
【0287】
実施例2~41、比較例1~8
表1に記載の配合とする以外は全て実施例1と同様にして自動車用光輝性塗料(Y-2)~(Y-49)を得た。
【0288】
表1中の数値は、蒸留水、溶剤については液体の量、その他については固形分量を記載している。
【0289】
なお、表1における各成分は以下の通りである。
「アロンT-50」商品名、分散剤、ポリアクリル酸ナトリウム、固形分43%、東亞合成株式会社製。
「アロンA30SL」商品名、分散剤、ポリアクリル酸アンモニウム、固形分40%、東亞合成株式会社製
「アロンA-6114」商品名、分散剤、カルボン酸系共重合体(アンモニウム塩)、固形分40%、東亞合成株式会社製
「デモールEP」商品名、分散剤、高分子ポリカルボン酸、固形分25%、花王株式会社製
「FS600LC」商品名、分散剤、カルボキシメチルセルロース、粉末状、日本製紙株式会社製
「JEFFAMINE(登録商標) M1000」商品名、分散剤、ポリエーテルアミン、ハンツマン社製
「ディスパロンAQ-330」商品名、分散剤、ポリエーテルリン酸エステル、有効成分100%、楠本化成株式会社製。
「Metalure Liquid Black」商品名:水性用蒸着クロムフレーク顔料、Eckart社製、固形分:10%、内部溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル、平均粒子径D50:14μm、厚さ:0.02μm、
「Xirallic T61-10 Micro Silver」(商品名、酸化チタン被覆アルミナフレーク顔料、メルク社製、一次平均粒子径:約12μm、平均厚さ:約0.3μm)
「Xirallic T60-10 Crystal Silver」(商品名、酸化チタン被覆アルミナフレーク顔料、メルク社製、一次平均粒子径:約19μm、平均厚さ:約0.4μm)
「Pyrisma M40-58 SW AmbercupOrange」(商品名、酸化鉄被覆マイカ顔料、メルク社製、一次平均粒子径:約17.1μm、平均厚さ:約0.65μm)、
「TEGO TWIN4100」商品名、シリコーン系湿潤剤、エボニック・デグサ社製、エチレンオキサイド鎖あり、固形分100%、
「BYK348」商品名、BYK社製、シリコーン系湿潤剤、BYK社製、エチレンオキサイド鎖あり、固形分:100%、
「サーフィノール420」商品名、エボニックインダストリーズ社製、アセチレンジオール系湿潤剤、エチレンオキサイド鎖あり、固形分100%、
「サーフィノール440」商品名、エボニックインダストリーズ社製、アセチレンジオール系湿潤剤、エチレンオキサイド鎖あり、固形分100%、
「サーフィノール460」商品名、エボニックインダストリーズ社製、アセチレンジオール系湿潤剤、エチレンオキサイド鎖あり、固形分100%、
「サーフィノール104A」商品名、エボニックインダストリーズ社製、アセチレンジオール系湿潤剤、エチレンオキサイド鎖なし、固形分50%、
「Acrysol ASE-60」商品名、ダウケミカル社製、ポリアクリル酸系粘性調整剤、固形分:28%、
「ユーコートUX-300」商品名、三洋化成社製、ウレタン樹脂水分散体。
【0290】
【表1】
【0291】
【表2】
【0292】
【表3】
【0293】
【表4】
【0294】
【表5】
【0295】
【表6】
【0296】
【表7】
【0297】
着色塗料(W)の調整
着色塗料(W-1)
「TP-65 ダークグレー」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系溶剤中塗り塗料、得られる塗膜のL値:20)を、着色塗料(W-1)として用いた。
【0298】
着色塗料(W-2)
「TP-65」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系溶剤中塗り塗料、得られる塗膜のL値:85)を、着色塗料(W-2)として用いた。
【0299】
着色塗料(W-3)
「WP-505T」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系水性中塗り塗料、得られる塗膜のL値:60)を、着色塗料(W-3)として用いた。
【0300】
着色塗料(W-4)
「アスカレックス2870CD-1ダークグレー」(商品名、関西ペイント社製、PP素材向けアクリル樹脂系水性導電性プライマー塗料)を、着色塗料(W-4)として用いた。
【0301】
クリヤー塗料(Z)の調製
クリヤー塗料(Z-1)
「KINO6510」(商品名:関西ペイント株式会社、水酸基/イソシアネート基硬化型アクリル樹脂・ウレタン樹脂系2液型有機溶剤型塗料)を、クリヤー塗料(Z-1)として用いた。
【0302】
クリヤー塗料(Z-2)
「KINO6510」に含まれる樹脂固形分100質量部に対して「PARIOGEN MAROON L3920」(商品名、BASF社製、有機ペリレン顔料)を1.21部添加したものを、クリヤー塗料(Z-2)として用いた。
【0303】
クリヤー塗料(Z-3)
「ソフレックス7175クリヤー」(商品名、関西ペイント社製、PP素材向け、水酸基/イソシアネート基硬化型アクリル樹脂・ウレタン樹脂系2液型有機溶剤型塗料)を、クリヤー塗料(Z-3)として用いた。
【0304】
被塗物の調製
被塗物1
脱脂及びリン酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400mm×300mm×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロンGT-10」(商品名:関西ペイント社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に架橋剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させ、電着塗膜を形成せしめ、被塗物1とした。
【0305】
被塗物2
プラスチック材料として、「TSOP-1(TC-6)」(商品名、日本ポリケム社製、350mm×10mm×2mm)を用意した。そして、プラスチック材料の表面を、イソプロピルアルコールを含ませたガーゼで拭いて脱脂処理し、被塗物2とした。
【0306】
試験板の作成
実施例42
工程(1):被塗物1上に、着色塗料(W-1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚25μmになるように静電塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させ着色塗膜を形成した。
工程(2):次いで、該着色塗膜の上に、透明ベース塗料(X-1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚10μmになるように静電塗装し、2分間放置した。
工程(3):さらに、塗膜の上に、自動車用光輝性塗料(Y-1)を、表1に記載の塗料粘度に調整し、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜の膜厚が1.0μmとなるように塗装し光輝性塗膜を形成した。3分間放置後、80℃にて3分間放置した。
工程(4):次いで、乾燥塗膜の塗面に、クリヤー塗料(Z-1)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜の膜厚が35μmとなるように塗装しクリヤー塗膜を形成した。
工程(5):塗装後、室温にて7分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥せしめて試験板とした。
【0307】
ここで、光輝性塗膜の乾燥塗膜の膜厚は、下記式(2)から算出した。以下の実施例についても同様である。
x=(sc*10000)/(S*sg) ・・・(2)
x:膜厚[μm]
sc:塗着固形分[g]
S:塗着固形分の評価面積[cm2]
sg:塗膜比重[g/cm3]
実施例43~83、86及び比較例9~16
【0308】
表2に記載の着色塗料(W)、透明ベース塗料(X)、自動車用光輝性塗料(Y)及びクリヤー塗料(Z)とする以外は全て実施例42と同様にして試験板を得た。
【0309】
実施例84
工程(1):被塗物1上に、着色塗料(W-3)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚25μmになるように静電塗装し、3分間放置し、80℃にて3分間プレヒートして着色塗膜を形成した。
工程(2):次いで、該着色塗膜上に、前述のように作成した自動車用光輝性塗料(Y-1)を、表1に記載の塗料粘度に調整し、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜として、1.0μmとなるように塗装した。3分間放置し、その後、80℃にて3分間プレヒートし、光輝性塗膜を形成した。
工程(3):さらに、この光輝性塗膜上にクリヤー塗料(Z-1)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で乾燥塗膜として、35μmとなるように塗装しクリヤー塗膜を形成した。
工程(4):塗装後、室温にて7分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥せしめて試験板とした。
【0310】
実施例85
工程(1):被塗物1上に、着色塗料(W-3)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚25μmになるように静電塗装し、3分間放置し、80℃にて3分間プレヒートして着色塗膜を形成した。
工程(2):次いで、該着色塗膜の上に、透明ベース塗料(X-1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚10μmになるように静電塗装し、2分間放置した。
工程(3):さらに、塗膜の上に、前述のように作成した自動車用光輝性塗料(Y-1)を、表1に記載の塗料粘度に調整し、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜の膜厚が1.0μmとなるように塗装した。3分間放置し、その後、80℃にて3分間プレヒートし、光輝性塗膜を形成した。
工程(4):さらに、この光輝性塗膜上にクリヤー塗料(Z-1)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で乾燥塗膜として、35μmとなるように塗装しクリヤー塗膜を形成した。
工程(5):塗装後、室温にて7分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥せしめて試験板とした。
【0311】
実施例87
工程(1):被塗物2上に、着色塗料(W-4)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚10μmになるように静電塗装し、3分間放置し、80℃にて3分間プレヒートして着色塗膜を形成した。
工程(2):次いで、該着色塗膜の上に、透明ベース塗料(X-1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚10μmになるように静電塗装し、2分間放置した。
工程(3):さらに、塗膜の上に、前述のように作成した自動車用光輝性塗料(Y-1)を、表1に記載の塗料粘度に調整し、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜の膜厚が1.0μmとなるように塗装した。3分間放置し、その後、80℃にて3分間プレヒートし、光輝性塗膜を形成した。
工程(4):さらに、この光輝性塗膜上にクリヤー塗料(Z-3)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で乾燥塗膜として、35μmとなるように塗装しクリヤー塗膜を形成した。
工程(5):塗装後、室温にて7分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、120℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥せしめて試験板とした。
【0312】
実施例88
工程(1):被塗物2上に、着色塗料(W-4)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚10μmになるように静電塗装し、3分間放置して着色塗膜を形成した。
工程(2):次いで、該着色塗膜の上に、透明ベース塗料(X-1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚10μmになるように静電塗装し、2分間放置した。
工程(3):さらに、塗膜の上に、前述のように作成した自動車用光輝性塗料(Y-1)を、表1に記載の塗料粘度に調整し、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜の膜厚が1.0μmとなるように塗装した。3分間放置し、その後、80℃にて3分間プレヒートし、光輝性塗膜を形成した。
工程(4):さらに、この光輝性塗膜上にクリヤー塗料(Z-3)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で乾燥塗膜として、35μmとなるように塗装しクリヤー塗膜を形成した。
工程(5):塗装後、室温にて7分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、120℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥せしめて試験板とした。
【0313】
【表8】
【0314】
【表9】
【0315】
【表10】
【0316】
【表11】
【0317】
【表12】
【0318】
【表13】
【0319】
【表14】
【0320】
塗膜評価
上記のようにして得られた各試験板について塗膜の外観及び性能ならびに塗料の安定性を評価し、表2にその結果を示した。塗膜外観は、60°鏡面光沢度(60°グロス)及び粒子感により評価し、塗膜性能は、耐水付着性及び長期促進試験後の耐水付着性によって評価した。
【0321】
実施例42及び実施例52~57と比較例9~15との比較から、自動車用光輝性塗料中の光輝性顔料(C)の種類と量が同じ場合、分散剤(A)を含有する実施例の塗膜の方が分散剤(A)を含有しない比較例の塗膜に比べ、60°グロスの値の増大と粒子感のHG値の低下が両方起こり、外観が優れることが確認された。
【0322】
実施例42と比較例16との比較から、自動車用光輝性塗料中の光輝性顔料(C)の種類と量が同じ場合、セルロースナノファイバー(B)を含有する実施例の塗膜の方がセルロースナノファイバー(B)を含有しない比較例の塗膜に比べ、60°グロスの値の増大と粒子感のHG値の低下が両方起こり、外観が優れることが確認された。
【0323】
また、本発明の実施例42~88の複層塗膜は塗膜性能にも優れている。
【0324】
60°鏡面光沢度(60°グロス)
上記で得られた試験板について、光沢計(micro-TRI-gloss、BYK-Gardner社製)を用いて60°グロス値を測定した。値が高い方が良好である。
【0325】
粒子感
粒子感は、Hi-light Graininess値(以下、「HG値」と略記する)で評価した。HG値は、塗膜面を微視的に観察した場合におけるミクロ光輝感の尺度の一つであり、ハイライトにおける粒子感を表す指標である。HG値は、次のようにして、算出される。先ず、塗膜面を、光の入射角15度/受光角0度にてCCDカメラで撮影し、得られたデジタル画像データ(2次元の輝度分布データ)を2次元フーリエ変換処理して、パワースペクトル画像を得る。次に、このパワースペクトル画像から、粒子感に対応する空間周波数領域のみを抽出して得られた計測パラメータを、更に0~100の数値を取り、且つ粒子感との間に直線的な関係が保たれるように変換した値が、HG値である。HG値は、光輝性顔料の粒子感が全くないものを0とし、光輝性顔料の粒子感が最も大きいものを100とした。
【0326】
耐水付着性
試験板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、布で水滴・汚れをふきとり、室温23℃で10分以内に、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、そのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べ、下記基準で耐水性を評価した。
A:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さな縁欠けが生じていない
B:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さな縁欠けが生じており、縁欠けした残存塗膜が10個未満である
C:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さな縁欠けが生じており、縁欠けした残存塗膜が10個以上である
D:ゴバン目塗膜が90~99個残存する
E:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
【0327】
長期促進試験後の耐水付着性
長期促進耐候性試験には、JIS B 7754に規定されたスーパーキセノンウェザオメーター(商品名、スガ試験機社製)を使用し、1時間42分間のキセノンアークランプの照射と18分間の降雨条件における同ランプの照射による2時間を1サイクルとして、4000時間経過後に、上記耐水付着性試験と同様の操作を行った。
【0328】
塗料の粘度安定性
得られた自動車用光輝性塗料を320g用意し、このうち20gは温度23℃で6時間静置した後、レオメーター(HAAKE社製 RS150)により、温度23℃、せん断速度が0.1(s-1)における粘度を測定した(撹拌前の粘度)。残りの自動車用光輝性塗料300gを500mLビーカーに移し、ビーカー内を上下撹拌して均一の状態にしてから、マグネットスターラーを用いて、温度23℃、1,000rpmで24時間撹拌した。なお、撹拌時に水の蒸発を防止するためビーカーの口をパラフィルムで密閉した。上記24時間撹拌した自動車用光輝性塗料を温度23℃で6時間静置した後、レオメーター(HAAKE社製 RS150)により、温度23℃、せん断速度が0.1(s-1)における粘度を測定した(撹拌後の粘度)。
【0329】
次いで、下記式よりせん断速度が0.1(s-1)における粘度変化率(%)を算出し、下記基準で粘度安定性を評価した。C以上が合格である。
せん断速度が0.1(s-1)における粘度変化率(%)=(|撹拌前の粘度-撹拌後の粘度|/撹拌前の粘度)×100
A:粘度変化率が30%未満
B:粘度変化率が30%以上40%未満
C:粘度変化率が40%以上60%未満
D:粘度変化率が60%以上70%未満
E:粘度変化率が70%以上。
【0330】
以上、本発明の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。