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特許7481346試料を収容するための空洞を有する試料容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】試料を収容するための空洞を有する試料容器
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240501BHJP
   G01N 1/04 20060101ALI20240501BHJP
   B01L 3/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
G01N1/04 J
B01L3/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021539098
(86)(22)【出願日】2020-01-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2020050149
(87)【国際公開番号】W WO2020144145
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】102019100256.7
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518329804
【氏名又は名称】ザルトリウス オートメーテッド ラボ ソリューションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】エバハート イエンス
(72)【発明者】
【氏名】ネレップ コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】ボアンマン ゲアド
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-531369(JP,A)
【文献】特表2011-511933(JP,A)
【文献】Small,2018年,Vol.14, No.1801890,PP.1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(8)を収容するための空洞(2)と、
前記試料(8)を導入するための第1の開口部(3)と、
前記第1の開口部(3)とは反対側の底部(4)と、
前記空洞(2)の第1の開口部(3)の縁上で2つの対向する追加開口部(5)と、を備える試料容器(1)であって、
前記2つの追加開口部(5)はそれぞれ、前記底部(4)とは反対側の前記空洞(2)の側において前記空洞(2)の外側に開いていることを特徴とする、試料容器(1)。
【請求項2】
前記2つの追加開口部(5)はそれぞれ、前記空洞(2)内へと開いているチャネルに接続していることを特徴とする、請求項1に記載の試料容器(1)。
【請求項3】
前記追加開口部(5)は、実質的に、前記第1の開口部(3)を有する平面内に存在し、前記第1の開口部(3)に接続していることを特徴とする、請求項1または2に記載の試料容器(1)。
【請求項4】
前記第1の開口部(3)は、0.5mm以下の内径(A)を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の試料容器(1)。
【請求項5】
前記第1の開口部(3)は、0.3mm以下の内径(A)を有することを特徴とする、請求項4に記載の試料容器(1)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の試料容器(1)を複数備える、キャリアプレート(12)。
【請求項7】
請求項1に記載の試料容器(1)の空洞(2)から試料(8)を排出する方法であって、
前記空洞(2)内へと導かれる媒体(10)のフロー、および前記空洞(2)から外に導かれる前記媒体(10)のフローが、
前記空洞(2)内へと別々に開いている少なくとも2つのチャネルを使用し、
前記チャネル内に圧力差を生じさせることにより前記フローを生成させ、
このようにして生成されるフローならびに前記空洞(2)内での前記フローの輸送能力を調整して、前記試料(8)が前記空洞(2)から流れ出るようにすることにより、生成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料容器、特にいわゆるナノウェルと、本発明による試料容器を含むキャリアプレートと、排出針とに関する。本発明は更に、試料容器から試料を排出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、生化学、細胞生物学、または遺伝学において使用され、0.4mL以上の空洞を有する試料容器は、例えば、独国特許出願公開第3029718(A1)号(特許文献1)から公知である。液体媒体によって形成される試料は、空洞の底部領域にある追加チャネルから吸い込まれ、空洞のリザーバ内に収容される。貯蔵された試料の、リザーバからの抽出は、第1の開口部を介して生じる。
【0003】
ナノウェルは、その容積測定能力および/またはその寸法ゆえに、以下では集合的に試料と称する、1つまたはごく少数の生体細胞または同等サイズの対象物、だけを保持することができる試料容器であると理解されている。多くのナノウェルは、ホルダ(チップ)上のナノウェルアレイとして形成され得る。このようなナノウェルアレイは市販されている。
【0004】
例として、空洞とも称される、そのようなナノウェルについて記載されている、未公開の独国特許出願公開第102017113454号(特許文献2)が参照される。試料は、第1の開口部を通して空洞内へと導入され、そして再び空洞から外に輸送される。
【0005】
ナノウェルは、特に、理想的には、空洞ごとにそれぞれ対象物、例えば細胞、を1つだけ収容し、必要に応じて、選択的な抽出および/または分析を可能にするために使用される。個々の細胞を抽出するために、例えば、ガラスのキャピラリまたはカニューレのような中空針がツールとして使用される。
【0006】
その工程では、それぞれの空洞から抽出される対象物は、流体フロー(吸引)によって中空針の中へと吸い込まれる。その工程では、対象物を損傷から保護するために、ツールとの直接接触は回避されることになっている。したがって、ツールの吸入開口部は、吸い込まれる対象物の直径よりも大きくなければならない。ナノウェルの寸法が極めて小さく、ツールの吸入開口部が、上述した理由ゆえに、要望通りに縮小できないという必要性が生じた場合、フローに関する困難さが生じる。これらの課題は、例えば、対応する吸入フローまたは吸引フローが生成されることなく、空洞内に相当な負圧が不利なことに生成される場合に存在する。吸引フローが生じる場合であっても、それが空洞全体にわたって広がらず、吸い込まれる対象物が空洞から出てツール内へと輸送されることがない、または確実に輸送されることがないことが生じ得る。
【0007】
したがって、発明の根底にあるのは、従来技術と比較して改善された、試料容器の空洞から対象物を抽出する可能性を提案するという目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第3029718(A1)号
【文献】独国特許出願公開第102017113454号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
試料容器の設計に関して、目的は請求項1の主題によって解決される。本発明による方法に関して、課題は請求項8の主題によって解決される。加えて、本発明によるキャリアプレートと、排出針とが提案される。本発明の有利な更なる発展形態が、従属請求項の主題である。
【0010】
試料容器は、試料を収容するための空洞を含む。試料は、例えば、生体細胞、細胞の群、および/または同等のサイズの対象物の群である。空洞は、試料を空洞内に導入するための第1の開口部を有する。試料はまた、第1の開口部を通して空洞から除去される。第1の開口部とは反対側に、空洞の底部がある。
【0011】
本発明によると、空洞の少なくとも1つの追加開口部が設けられ、追加開口部は、底部とは反対側の空洞の側において空洞の外側に開いている。追加開口部における、空洞の外側への入口は、実質的に第1の開口部の平面内に位置していてもよい。追加開口部は、更なる実施形態では、第1の開口部を越えて突出していてもよい、または空洞の半分の深さと第1の開口部の平面との間に開いていてもよい。
【0012】
本発明の主旨は、試料を吸い込むために使用するツール、すなわち中空針と、空洞の第1の開口部とが、たとえ同じまたはほぼ同じ寸法を有する場合であっても、追加開口部を用いて空洞内への媒体の供給をサポートして吸引フローの形成を実現することである。
【0013】
追加開口部は、試料容器の周囲環境から空洞内への媒体の流入、および吸引フローの形成を可能にする。特に細胞生物学、免疫学の分野において、更に遺伝学においても、例えば、細胞が単離され、空洞内に配置され、栄養媒体が被せられる。通常、隣接する空洞および試料にも同じ栄養媒体が被せられるように、複数の空洞を含むアレイが使用される。個々の空洞から試料を選択的に抽出するために、吸引フローの形成は、選択された空洞のそれぞれに、可能な限り最も広く限定されなければならない。追加開口部は、有利には、第1の開口部と同じ寸法を有する吸込み開口部を有する中空針の使用を可能にする一方で、同時に、十分に大きい吸引フローが形成される。付随して、被せられている媒体のフローは局所に限定されるので、隣接する試料に対して不利な影響を及ぼす危険性は低い。
【0014】
本発明による試料容器の場合には、試料を吸い込むために使用するツールは、有利には、第1の開口部に向かって数マイクロメートルまで前進してもよい、または第1の開口部のエッジに当接さえしてもよい。
【0015】
試料容器の一実施形態では、空洞内へのチャネル開口部は、少なくとも1つの追加開口部に接続されてもよい。有利には、底部の近くに位置する試料を吸引フローによって捕獲し、その試料を第1の開口部に向かう方向に輸送するために、空洞内のチャネルの入口は底部の近傍に形成される。
【0016】
チャネルは、少なくともその長さの一部にわたって、空洞から壁によって分離されていてもよい。更なる実施形態では、チャネルはまた、実質的に追加開口部から底部に向かう方向に延びる、空洞の壁におけるリブまたはリッジによって形成されてもよい。
【0017】
追加開口部は、実質的に、第1の開口部を有する平面上にあり、第1の開口部に接続され、例えば、第1の開口部内へと直接移行してもよい。この実施形態は、技術的に正確で、かつ費用効果の高い方法で製造され得る。
【0018】
本発明による試料容器は、第1の開口部が、0.5mm以下、特に0.3mm以下の内径を有する小さい空洞の場合に特に有利である。
【0019】
有利には、追加開口部、および/またはそれに接続されたチャネルは、試料が意図せずに追加開口部を通って流れ出ることを回避するために、第1の開口部よりも小さい寸法を有する。第1の開口部および/または追加開口部の寸法は、試料に応じて選択されてもよい。
【0020】
本発明による複数の試料容器が、キャリアプレート上に形成されてもよい。このようにして形成された試料容器または空洞のアレイにより、多数の試料の迅速な分析もしくは同時分析、および/または効果的な取り扱いが可能になる。
【0021】
本発明の着想はまた、それに対応して修正されたツールによって実現され得る。本明細書では排出針と称するツールは、試料容器の空洞から試料を選択的に抽出する役割を担う。排出針は主チャネルを有し、加えて、少なくとも1つの2次チャネルが設けられ、主チャネルおよび2次チャネルは、排出針の先端領域において別々に開いていることを特徴とする。本明細書では、2次チャネルは、有利には、排出針の周囲環境に接続している。例えば、主チャネルを介して吸引フローが空洞において生成される場合、周囲環境からの媒体が2次チャネルを通って流れ込み、有利には、吸引フローをサポートする、または更には単に吸引フローの形成および安定化を可能にする。有利には、市販の試料容器またはアレイを使用してもよい。
【0022】
試料容器の空洞から試料を排出する方法により、目的が更に解決される。その工程では、空洞内へと別々に開いている少なくとも2つのチャネルを使用して、空洞内へと導かれる媒体のフロー、および空洞から出るように導かれる媒体のフローが生成される。フローは、チャネル内に圧力差を生じさせることにより生成される。例えば、一方のチャネルに負圧または正圧が印加されてもよい。それに対応して、他方のチャネルには正圧または負圧が印加される。その工程では、正圧は、例えばポンプ装置を用いて、能動的に印加されてもよい。これは、負圧印加による吸込み効果の結果として正圧が生成され、負圧の方向への媒体のフローにつながる場合と等価である。このようにして生成されるフローならびに空洞内でのその輸送能力が調整されて、試料は空洞から流れ出る。
【0023】
本発明を、実施形態および具体例に基づいて、以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による試料容器ならびに本発明による方法の実施形態の概略図を示す。
図2】本発明による試料容器の第1の実施形態による試料容器のアレイと、キャピラリとの概略図を示す。
図3】本発明による試料容器の第2の実施形態による試料容器のアレイと、キャピラリとの概略図を示す。
図4】本発明による試料容器の第3の実施形態による試料容器のアレイと、キャピラリとの概略図を示す。
図5】第1の開口部の実施形態、および本発明による試料容器の追加開口部の概略図を示す。
図6】第1の開口部の別の実施形態、および本発明による試料容器の追加開口部の概略図を示す。
図7】第1の開口部の別の実施形態、および本発明による試料容器の追加開口部の概略図を示す。
図8】本発明による試料容器からの1つの試料の選択的な抽出を示し、選択された試料容器が抽出の前と後でカラムごとにマークされている(オリジナル画像)。
図9】本発明による試料容器からの1つの試料の選択的な抽出を概略図で示し、選択された試料容器が抽出の前と後でカラムごとにマークされている。
図10】本発明による試料容器の2つのアレイを含むキャリアプレートの一実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1では、本発明による試料容器1を側面断面図で示す。試料容器1の空洞2は、第1の開口部3および反対側の底部4を含む。第1の開口部3の横に、2つの追加開口部5が設けられる。追加開口部はそれぞれ、チャネル6に接続されており、チャネル6は、壁7によって空洞2から分離され、底部4の領域において空洞2内へと開いている。空洞2において、試料8、例えば生体細胞が、底部4上に配置される。
【0026】
第1の開口部3の上に、試料8を受け取るツールとしてキャピラリ9が配置される。キャピラリ9内では負圧が生成され、負圧は空洞2へも連通している。空洞2内が負圧である結果として、試料容器1上に被せられた媒体10が、追加開口部5およびチャネル6を通って空洞2内へと吸い込まれる。結果として、底部4から第1の開口部3およびキャピラリ9に向かう吸引フロー(矢印で示される)が空洞2内で生成される。その輸送能力のおかげで、試料8は空洞2を出てキャピラリ9内へと輸送される。
【0027】
図2は、試料容器1のアレイ11内の試料容器1に割り当てられた例示的なキャピラリ9を示す。第1の開口部3は、円形形状を有する。第1の開口部3の2つの反対側の端部にそれぞれ、追加開口部5が形成されている。追加開口部5は、第1の開口部3と同じ平面上にあり、第1の開口部3に接続している。キャピラリ9は第1の開口部3を実質的に覆う一方で、追加開口部5の延長部の一部がキャピラリ9を越えて突出している。本発明による方法を使用して、空洞2内に存在する試料8が、空洞2からキャピラリ9内へと輸送され得る。
【0028】
追加開口部5の他の可能な形状および構成を図3に示す。円形の第1の開口部3は、図1に関連して説明されるように形成された追加開口部5に接続されている。
【0029】
図4では、六角形の第1の開口部3を有する試料容器1を含むアレイ11を示す。追加開口部5は、矩形凹部として形成され、第1の開口部3に接続している。
【0030】
第1の開口部3および追加開口部5の実施例を図5図7に示す。第1の開口部3は、内径Aと、相互距離BまたはピッチBとを有する六角形として形成されてもよい。内径Aに等しい外径を有する円形開口部を有するキャピラリ9が、これらの第1の開口部3に接触した場合、キャピラリ9によって覆われていない、内径Aよりも互いに離れている第1の開口部3の角の区画が、追加開口部5として機能して得る。
【0031】
内径aおよび距離Bを有する図6に示す正方形の第1の開口部3にも、同じことが当てはまる。
【0032】
図7に示す第1の開口部3は円形であり、それぞれ、例えば45°の角度で、追加開口部5を有する。
【0033】
図5図7に示す第1の開口部3は、例えば、15、30、45、または200μmの内径を有する。距離Bは、例えば10μmである。
【0034】
本発明による試料容器1の機能は、図8および図9において例として明示されている。3つの異なる形態で実現された第1の開口部3および追加開口部5について、それぞれ、試料容器1のアレイ11を示す。それぞれ、試料8を含む1つの試料容器1が選択され、マーク(円)によって強調されている。上列では、試料8を抽出する前の試料容器1の状態をそれぞれ示し、下列では、本発明による方法を用いて抽出した後の試料容器1の状態をそれぞれ示す。全ての場合について、選択された試料8は空洞2から除去された一方で、隣接する空洞2内の試料8は影響を受けないままである。
【0035】
複数の試料容器1の効果的な分析を可能にするために、アレイ11がキャリアプレート12上に配置されてもよい。図10は、2つのアレイ11を含む例示的なキャリアプレート12、およびキャピラリ9を示す。
【符号の説明】
【0036】
1 試料容器
2 空洞
3 第1の開口部
4 底部
5 追加開口部
6 チャネル
7 壁部
8 試料
9 キャピラリ
10 媒体
11 アレイ
12 キャリアプレート
A 内径
B 距離(ピッチ)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10