(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】甘味素材組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20240501BHJP
C12P 19/18 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
A23L27/00 E
C12P19/18 ZNA
(21)【出願番号】P 2021543213
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(86)【国際出願番号】 KR2020006678
(87)【国際公開番号】W WO2020251185
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】10-2019-0070876
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM KCCM12561P
(73)【特許権者】
【識別番号】508139664
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CHEILJEDANG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center,330,Dongho-ro,Jung-gu,Seoul,Republic Of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソン・チュ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ヒ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ボ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジョン・チェ
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0189861(US,A1)
【文献】特表2009-517032(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0014227(KR,A)
【文献】国際公開第2016/144175(WO,A1)
【文献】特表2015-532840(JP,A)
【文献】特表2010-527610(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0116988(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0053790(KR,A)
【文献】米国特許第04219571(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウ糖を含む二糖類、ステビオール配糖体、およびラクトバチルス・マリ(Lactobacillus mali)またはこれに由来した配列番号1の配列を含む糖転移酵素を含む
、甘味素材組成物の製造用の組成物
であって、
前記甘味素材組成物は、糖転移ステビアおよび糖類を含み、
前記糖類は、全体100重量部に対して、重合度(DP)が3以上のイソマルトオリゴ糖を5~90重量部含み、
前記糖転移ステビアは、ステビオール配糖体内の19番炭素に連結されたOHに少なくとも1つのブドウ糖が付加された糖転移ステビオシド及び糖転移レバウジオシドAである、甘味素材組成物の製造用の組成物。
【請求項2】
前記ブドウ糖を含む二糖類は、スクロースおよびマルトースのうち少なくとも1つを含む、請求項
1に記載の製造用の組成物。
【請求項3】
前記ブドウ糖を含む二糖類は、スクロースおよびマルトースを1:20~20:1の混合重量比で含む、請求項
2に記載の製造用の組成物。
【請求項4】
ブドウ糖を含む二糖類およびステビオール配糖体の混合物をラクトバチルス・マリまたはこれに由来した配列番号1の配列を含む糖転移酵素と接触して糖転移ステビアおよび糖類を生産するステップを含み、
前記糖類は、重合度3以上のオリゴ糖を含む
、甘味素材組成物の製造方法
であって、
前記甘味素材組成物は、糖転移ステビアおよび糖類を含み、
前記糖類は、全体100重量部に対して、重合度(DP)が3以上のイソマルトオリゴ糖を5~90重量部含み、
前記糖転移ステビアは、ステビオール配糖体内の19番炭素に連結されたOHに少なくとも1つのブドウ糖が付加された糖転移ステビオシド及び糖転移レバウジオシドAである、甘味素材組成物の製造方法。
【請求項5】
前記糖類は、全体100重量部に対して、重合度(DP)が3以上のオリゴ糖を5~90重量部含む、請求項
4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ブドウ糖を含む二糖類は、スクロースおよびマルトースのうち少なくとも1つを含む、請求項
4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ブドウ糖を含む二糖類は、スクロースおよびマルトースを1:20~20:1の混合重量比で含む、請求項
6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ステビオール配糖体は、総重量を基準に、レバウジオシドAの含量が30~70重量%である、請求項
4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、甘味素材組成物およびその製造方法に関する。具体的に、本出願は、糖転移ステビオール配糖体を含む甘味素材組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
砂糖(Sucrose)は、最も多く知らされて汎用に用いられている甘味料であって、インスタントコーヒーをはじめとするコーヒー飲料、ジュース類、炭酸飲料などの清涼飲料水に多量に用いられている。しかし、ウェルビーイングを追求する社会的雰囲気により、肥満、糖尿などの成人病と虫歯の原因になる砂糖の含量を低減したり、砂糖の代わりができる高甘味度の甘味料を用いたりする傾向が増加している実情や、サッカリン、アスパルテームのような人工甘味料は、毒性、アレルギー誘発などの有害性と安定性の問題があるため、その使用が益々規制される傾向にある。このため、新しい機能性糖転移糖質素材に対する必要性が台頭している。
【0003】
ステビオール配糖体(Steviol Glycosides)またはステビオシド(Stevioside)は、ステビア(Stevia)の葉に入っている、甘味を出す甘味料であって、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性を有しており、発酵が起こらない成分として知られている。ステビア甘味料としての世界的な消費先は、韓国が約30%、日本が27%、中国が30%、残りの13%がその他の国と報告されており、特に、韓国では、食品としてステビア甘味料を消費する形態は、酵素を用いてステビオール配糖体にグルコースを付加して甘味質を改良した製品、すなわち、酵素処理ステビア製品が全体の約80%以上を占めている。ステビオール配糖体甘味料のうち酵素処理ステビアが有する長所は、甘味質が砂糖に近く、苦味がなく、甘味度が砂糖の100~250倍に高いものの、実質的にカロリーがないということである。また、熱と酸に安定しており、加工、保存中の甘味変化が少ないという長所がある。それのみならず、微生物の栄養源になり難く、口腔では実質的に非齲蝕性であり、メイラード反応を引き起こさず、食品加工により褐変し難く、酸味を緩和させ、氷点降下が小さい。また、浸透圧を上げず、他の甘味料との相乗効果があるため甘味のための費用節減に有効である。しかし、上記のような長所とステビア葉抽出物での精製工程および酵素反応による甘味質の補完にもかかわらず、酵素処理ステビアは、他の糖質甘味料(砂糖、フルクトースなど)と比較して、甘味の上昇が遅く、後味の甘味が比較的に長く残り、いわゆる、甘味の仕上がりが悪いという特徴がある。
【0004】
ステビアの甘味成分のうち、味質が砂糖に近く、甘味度が高い成分は、レバウジオシドA(rebaudioside A)である。レバウジオシドAは、最近、FDAにより食品への使用が許可されることにより、コカコーラとペプシで甘味料として用いられている。ステビアの抽出物のうち、レバウジオシドAが占める含量は30%程度であり、ステビオール配糖体が約50%を占めている(大韓民国公開特許公報第2001-0111560号)。よって、甘味に優れたレバウジオシドAを高濃度で含有する製品の需要が増加しているが、高レバウジオシドAだけを分離する場合、必然的に副産物としてステビオール配糖体が発生せざるを得ない実情であり、レバウジオシドAの需要が増加するにつれて、レバウジオシドAより甘味質が良くないステビオール配糖体を処理する問題が製品化における課題として台頭している。
【0005】
そこで、本発明の発明者らは、ステビオール配糖体から生産される酵素処理ステビアを用いつつ、その甘味質を著しく改善するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】大韓民国公開特許公報第2001-0111560号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願の一目的は、甘味度に優れた甘味素材組成物およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
本出願の他の目的は、優れた甘味度を示しながらも、熱量を下げた甘味素材組成物を提供することにある。
【0009】
本出願のまた他の目的は、オリゴ糖を用いることで、ビフィドバクテリアの成長を促進し、腸の機能を改善し、免疫力向上などの機能性を有する甘味素材組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するために、本出願は、糖転移ステビアおよび糖類を含み、前記糖類は、全体100重量部に対して、重合度(Degree of polymerization、DP)が3以上のオリゴ糖を5~90重量部含む、甘味素材組成物を提供する。
【0011】
また、本出願は、ブドウ糖を含む二糖類、ステビオール配糖体、およびラクトバチルス・マリ(Lactobacillus mali)またはこれに由来した糖転移酵素を含む、甘味素材製造用の組成物を提供する。
【0012】
また、本出願は、ブドウ糖を含む二糖類およびステビオール配糖体の混合物をラクトバチルス・マリまたはこれに由来した糖転移酵素と接触して糖転移ステビアおよび糖類を生産するステップを含み、前記糖類は、重合度3以上のオリゴ糖を含む、甘味素材組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本出願の甘味素材組成物を用いると、甘味度に優れ、同一の甘味度を示す砂糖を用いる場合に比べて低い熱量を提供することができる。
【0014】
また、本出願の甘味素材製造用の組成物を用いると、ビフィドバクテリアの成長を促進し、腸の機能を改善し、免疫力向上などの機能性を有する甘味素材組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】酵素反応前の原料として用いるステビオール配糖体のHPLCの結果のグラフである。
【
図2】原料から酵素反応後に生成される生成物のHPLCの結果のグラフである。
【
図3】本発明により製造される甘味素材組成物の官能評価の結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願の一態様は、糖転移ステビアおよび糖類を含み、前記糖類は、全体100重量部に対して、重合度(degree of polymerization、DP)が3以上のオリゴ糖を5~90重量部含む、甘味素材組成物を提供する。
【0017】
前記オリゴ糖は、例えば、下記化学式1で表される化合物を含んでもよく、具体的に、イソマルトース(isomaltose)、パノース(panose)、およびイソマルトトリオース(isomaltotriose)などの分岐オリゴ糖を主成分としてもよい。本出願において、前記オリゴ糖は、ブドウ糖を含む二糖類からの酵素反応により生成されてもよい。前記オリゴ糖は、ブドウ糖がα-1,4結合で連結された直鎖結合糖の他に、1個以上のα-1,6結合を有する少糖類、または重合度(DP)が1~9の糖類を主成分としてもよい。
【0018】
[化学式1]
【化1】
(前記化学式1中、nは1~9の整数である。)
【0019】
前記オリゴ糖は、柔らかな甘味を保有し、例えば、スクロースの甘味の50%の甘味を示し、保湿性が大きく、各種食品において良い保水効果を示し、デンプン質の老化防止に効果が大きいため、食品の保湿剤、光沢剤、賦形剤、および機能性原料などとして食品産業の全般にわたって用いられることができる。また、前記オリゴ糖は、腸内の乳酸菌の発酵を活性化させたりビフィズス菌を増殖させたりする効能があり、整腸作用、虫歯の予防、老化防止、およびダイエットにも効能があり得る。このため、本出願の前記オリゴ糖を含む甘味素材組成物は、乳加工品、発酵乳、および飲料などの加工食品分野に多様に用いられることができる。
【0020】
具体的に、本出願に係る甘味素材組成物は、全体糖類100重量部に対して、DPが3以上のオリゴ糖を、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、25重量部以上、30重量部以上、35重量部以上、40重量部以上、45重量部以上、50重量部以上、55重量部以上、60重量部以上、65重量部以上、70重量部以上、および/または、90重量部以下、85重量部以下、80重量部以下の含量で含んでもよい。重合度が3以上のオリゴ糖を前記含量で含むことで、消費者の好み度に優れた効果を示すのに有利である。
【0021】
一側面において、前記甘味素材組成物は、総重量を基準に、糖類を10~60重量%の含量で含んでもよい。例えば、15~55重量%、20~50重量%、25~45重量%、25~40重量%、25~35重量%、または25~30重量%の含量で含んでもよい。
【0022】
本出願において、前記糖転移ステビアおよびオリゴ糖は、ブドウ糖を含む二糖類およびステビオール配糖体の混合物の酵素反応の生成物であってもよく、具体的に、前記酵素反応は、前記ブドウ糖を含む二糖類およびステビオール配糖体の混合物がラクトバチルス・マリ(Lactobacillus mali)またはこれに由来した糖転移酵素と接触して行われてもよい。
【0023】
ここで、前記「ブドウ糖を含む二糖類」は、二糖類を構成する単糖類のうち少なくとも1つがブドウ糖である二糖類を示す。本出願において、具体的に、前記ブドウ糖を含む二糖類は、スクロース(sucrose)およびマルトース(maltose)のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0024】
より具体的に、前記ブドウ糖を含む二糖類およびステビオール配糖体は、これに制限されるものではないが、酵素反応の効率性の面で、0.1:1~15:1、0.2:1~10:1、0.5:1~5:1、1:1~3:1、または1:1の重量比で混合されてもよい。
【0025】
本出願の一様相において、前記ステビオール配糖体に対する、ブドウ糖を含む二糖類の前記重量比の範囲で、前記ブドウ糖を含む二糖類の含量が大きくなるほど、高い重合度のオリゴ糖生成率が増加することができる。
【0026】
より具体的に、前記ブドウ糖を含む二糖類は、スクロースおよびマルトースを含んでもよく、前記スクロースおよびマルトースを1:20~20:1の混合重量比で含んでもよく、具体的に1:15~15:1、1:10~10:1、2:8~8:2、3:7~7:3、4:6~6:4、または5:5の混合重量比で含んでもよい。
【0027】
一実施形態において、前記スクロース:マルトース:ステビオール配糖体を10-20:5-20:1、具体的に12:7:1の混合重量比で含む混合物から、糖転移ステビアおよびオリゴ糖を含む甘味素材組成物を得た。
【0028】
前記ステビオール配糖体は、ステビオシドおよびレバウジオシドAを含んでもよい。
【0029】
前記ステビオシドは、前記ステビオール配糖体の総重量を基準に、30~70重量%、例えば、35~70重量%、35~67重量%、35~65重量%、37~70重量%、37~67重量%、37~65重量%、または37~43重量%の含量で含んでもよい。
【0030】
前記レバウジオシドAは、前記ステビオール配糖体の総重量を基準に、30~70重量%、例えば、35~70重量%、35~67重量%、35~65重量%、37~70重量%、37~67重量%、37~65重量%、または37~43重量%の含量で含んでもよい。
【0031】
前記ステビオール配糖体は、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドF、ズルコシド、およびルブソシドからなる群から選択される何れか1つ以上をさらに含んでもよい。
【0032】
前記糖転移ステビアは、ステビオール配糖体内の19番炭素に連結されたOH位置に少なくとも1つのブドウ糖が付加されたものであってもよい。具体的に、ステビオール配糖体内の19番炭素位置に結合されたヒドロキシ基(-OH)と、ブドウ糖を含む二糖類から転移されるブドウ糖が縮合反応により付加されてもよい。
【0033】
甘味素材は、グルコース、フルクトース、およびスクロースのうち少なくとも1つの重合度2以下である糖類をさらに含んでもよい。
【0034】
一側面において、本出願に係る甘味素材組成物は、総重量を基準に、グルコースを10重量%以下の含量で含んでもよい。例えば、グルコースの含量は、本出願の甘味素材組成物の総重量を基準に、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、または0重量%(すなわち、全く含まない)の含量で含んでもよい。グルコースを前記含量で含むことで、甘味素材組成物の熱量をさらに下げるという効果を示すことができる。
【0035】
一側面において、本出願に係る甘味素材組成物は、総重量を基準に、フルクトースを10重量%以下の含量で含んでもよい。例えば、フルクトースの含量は、本出願の甘味素材組成物の総重量を基準に、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量以下%、または0重量%(すなわち、全く含まない)の含量で含んでもよい。フルクトースを前記含量で含むことで、甘味素材組成物の熱量をさらに下げるという効果を示すことができる。
【0036】
一側面において、本出願に係る甘味素材組成物は、総重量を基準に、スクロースを10重量%以下の含量で含んでもよい。例えば、スクロースの含量は、本出願の甘味素材組成物の総重量を基準に、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、または0重量%(すなわち、全く含まない)の含量で含んでもよい。スクロースを前記含量で含むことで、甘味素材組成物の熱量をさらに下げるという効果を示すことができる。
【0037】
本出願の他の一態様は、ブドウ糖を含む二糖類、ステビオール配糖体、およびラクトバチルス・マリ(Lactobacillus mali)またはこれに由来した糖転移酵素を含む、甘味素材製造用の組成物を提供する。
【0038】
ブドウ糖を含む二糖類、ステビオール配糖体、ラクトバチルス・マリ、および糖転移酵素は、甘味素材組成物において上述したものと同様である。
【0039】
本出願のまた他の一態様は、ブドウ糖を含む二糖類およびステビオール配糖体の混合物をラクトバチルス・マリまたはこれに由来した糖転移酵素と接触して糖転移ステビアおよび糖類を生産するステップを含み、前記糖類は、重合度(DP)が3以上のオリゴ糖を含む、甘味素材組成物の製造方法を提供する。
【0040】
ブドウ糖を含む二糖類、ステビオール配糖体、ラクトバチルス・マリ、および糖転移酵素は、甘味素材組成物において上述したものと同様である。
【0041】
ブドウ糖を含む二糖類およびステビオール配糖体の混合物をラクトバチルス・マリまたはこれに由来した糖転移酵素と接触させることにより酵素反応が行われてもよい。前記酵素反応は、例えば、前記ブドウ糖を含む二糖類およびステビオール配糖体にラクトバチルス・マリまたはこれに由来した糖転移酵素を投入し、酵素活性温度で、例えば、30~50℃または35~45℃で行われてよい。
【0042】
前記酵素反応は、適正時間の間、例えば、10時間~30時間または15時間~20時間行ってもよい。
【0043】
前記酵素反応は、pH4~6、例えば、pH5~5.5において行ってもよい。
【0044】
本明細書において、前記「酵素」は、特異的基質と結合して酵素-基質複合体を形成することで、反応の活性化エネルギーを下げて化学反応を媒介するタンパク質触媒を意味する。本発明によると、前記酵素は、糖転移酵素を含んでもよい。
【0045】
本出願において、前記酵素反応は、ラクトバチルス・マリ(Lactobacillus mali)またはこれに由来した糖転移酵素を用いてもよい。
【0046】
一側面において、前記ラクトバチルス・マリとしては、ラクトバチルス・マリ DSM20444(Lactobacillus mali DSM20444)菌株を用いてもよい。
【0047】
一側面において、前記ラクトバチルス・マリに由来した糖転移酵素は、配列番号1で表される配列を含んでもよい。
【0048】
前記ラクトバチルス・マリまたはこれに由来した糖転移酵素を用いることで、優れた糖転移率を示すことができる。
【0049】
具体的に、前記ブドウ糖を含む二糖類は、スクロースおよびマルトースのうち少なくとも1つを含んでもよく、より具体的に、前記ブドウ糖を含む二糖類は、前記スクロースおよびマルトースを1:20~20:1の混合重量比で含んでもよく、具体的に1:15~15:1、1:10~10:1、2:8~9:2、3:7~7:3、4:6~6:4、または5:5の混合重量比で含んでもよい。
【0050】
より具体的に、前記ブドウ糖を含む二糖類およびステビオール配糖体は、これに制限されるものではないが、酵素反応の効率性の面で、0.1:1~15:1、0.2:1~10:1、0.5:1~5:1、1:1~3:1、または1:1の重量比で混合されてもよい。
【0051】
前記ステビオール配糖体は、ステビオシドおよびレバウジオシドAを含んでもよい。
【0052】
前記ステビオシドは、前記ステビオール配糖体の総重量を基準に、30~70重量%、例えば、35~70重量%、35~67重量%、35~65重量%、37~70重量%、37~67重量%、37~65重量%、または37~43重量%の含量で含んでもよい。
【0053】
前記ステビオール配糖体は、レバウジオシド、具体的にはレバウジオシドAを含んでもよく、本出願において、前記ステビオール配糖体は、前記レバウジオシドAを30~70重量%、例えば、35~70重量%、35~67重量%、35~65重量%、37~70重量%、37~67重量%、37~65重量%、または37~43重量%の含量で含んでもよい。前記レバウジオシドAを前記含量で含むステビオール配糖体を用いることで、酵素反応後の甘味の改善程度をさらに改善するという効果を示すことができる。
【0054】
本出願の甘味素材組成物の製造方法は、前記酵素反応後に生成された産物を得るステップをさらに含んでもよい。
【0055】
前記生成された産物を得るステップは、当該分野における公知の方法により行ってもよく、その方法が特に限定されるものではない。例えば、塩析法(salting out)、再結晶法、有機溶媒抽出法、エステル化蒸留法、クロマトグラフィ、および電気透析法を含んでもよい。
【0056】
本出願に係る甘味素材組成物の製造方法により生成された甘味素材組成物は、上記で上述したとおりである。
【0057】
以下、本発明の理解を助けるために実施例などを挙げて詳しく説明することにする。但し、本発明に係る実施例は、種々の他の形態に変形されてもよく、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、本発明が属する分野における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例】
【0058】
実施例1.甘味素材組成物の製造
50mMの酢酸ナトリウムバッファ pH5において、レバウジオシドAおよびステビオシドをそれぞれ約40重量%含有するステビオール配糖体(JiningAoxing Stevia Products Co.Ltd、ステビオール配糖体(ステビオシド41.82重量%、レバウジオシドA 39.94重量%、レバウジオシドC 6.43重量%、レバウジオシドD 1.64重量%、レバウジオシドF 1.32重量%、ズルコシド1.24重量%、ルブソシド0.61重量%)93重量%)8%(w/v)と、スクロース(白砂糖、CJ CHEILJEDANG Corp.)8%(w/v)とを混合し、配列番号1のLactobacillus mali DSM20444に由来した糖転移酵素(最終0.3U/ml)を添加して、40℃で24時間酵素反応して、甘味素材組成物を製造した。
【0059】
配列番号1の糖転移酵素は、公知の方法により組み換え菌株を用いて得た。
【0060】
具体的に、組み換え菌株は、遺伝子合成方法(BIONEER Corp.)により作製し、得られた遺伝子をpBT7-N-Hisベクターに挿入した後、大腸菌BL21(DE3)に形質転換させた。形質転換された大腸菌は、アンピシリン(Ampicillin)が含まれた平板培地に塗抹して、組み換え菌株(微生物)を得た。
【0061】
一方、前記微生物を、2019年6月11日付けで、ブダペスト条約による国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms)に、寄託番号KCCM12561Pとして寄託した。
【0062】
組み換え菌株から糖転移酵素の発現および精製は、組み換え大腸菌菌株をアンピシリン(Ampicillin)が含まれたLB培地5mlに接種し、600nmにおいて吸光度2.0になるまで、37℃で種培養を施した。種培養された培養液をアンピシリン(Ampicillin)が含まれたLB培地500mlに添加して、本培養を施した。また、600nmにおいて吸光度が0.4になる際、0.1mMのIPTG(イソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド)を添加して、酵素の大量発現を誘導した。前記過程中の、撹拌速度は180rpm、培養温度は37℃が維持されるようにし、IPTGの添加後には、撹拌速度は120rpm、培養温度は16℃にして培養した。前記菌株の培養液を10000xgで4℃で20分間遠心分離し、50mMのトリス塩酸緩衝溶液を添加して、前記細胞溶液を超音波破砕機(sonicator)で破砕した。細胞破砕物は、再び13000xgで4℃で20分間遠心分離して、細胞上清のみを酵素液として分離した。
【0063】
実験例1.甘味素材組成物の成分分析
[オリゴ糖の成分分析]
下記表1の分析条件で、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析によりオリゴ糖の含量を定量化し、その結果を表2に示した。
【0064】
【0065】
【0066】
[糖転移率の分析]
下記表3の分析条件で、HPLC分析により、酵素反応前後の成分分析の結果から糖転移率を確認し、その結果を
図1および
図2に示した。
【0067】
【0068】
原料(RebA 40%、JiningAoxing Stevia Products Co.Ltd)は、レバウジオシドAが主成分として分析された。酵素反応後、原料の減少を基準として91.71%の転換率を確認した。
【0069】
[糖転移生成物の構造の確認]
主成分であるステビオシドおよびレバウジオシドに対してブドウ糖転移結合構造をNMRにより分析した結果、ブドウ糖転移ステビオシドは、13-[(2-O-β-D-glucopyranosyl-β-D-glucopyranosyl)oxy]ent-kaur-16-en-19-oic acid 6-O-α-D-glucopyranosyl-β-D-glucopyranosyl esterであり、ブドウ糖転移レバウジオシドAは、13-[(2-O-β-D-glucopyranosyl-3-O-β-D-glucopyranosyl-β-D-glucopyranosyl)oxy]ent-kaur-16-en-19-oic acid 6-O-α-D-glucopyranose-β-D-glucopyranosyl esterであって、新規化合物であることを確認した。
【0070】
化学式2は、ブドウ糖が転移されたステビオシドの化学構造を示し、化学式3は、ブドウ糖が転移されたレバウジオシドAの化学構造を示す。
【0071】
【0072】
【0073】
実験例2:官能評価
[官能記述分析]
前記実施例1に作成された酵素反応後の試料(糖転移ステビア、オリゴ糖混合物、その他の糖類)2%を製造し、原料(スクロース1%(w/w)、Reb A 40 1%(w/w)混合物)との比較評価のために、記述分析を行った。
【0074】
酵素反応後の試料(糖転移ステビア、オリゴ糖混合物、その他の糖類)と原料(スクロース1%(w/w)、Reb A 40 1%(w/w)混合物)の比較結果は表4および
図3に示した。
【0075】
【0076】
[官能好み度の評価]
前記実施例1のように酵素反応後の試料(糖転移ステビア、オリゴ糖混合物、その他の糖類)2%を製造し、原料(スクロース1%(w/w)、Reb A 40 1%(w/w)混合物)との官能比較評価を行った。
【0077】
15名に前記試料2種に対する甘味好み度と全般的な好み度を9点尺度法を用いて行った(1=大変嫌い、5=好きでも嫌いでもない、9=大変好き)。
【0078】
その後、統計分析は、5点尺度に換算して、Paired T検定により有意な差を検証した(信頼水準95%)。
【0079】
【0080】
表5から確認できるように、原料に比べて、酵素反応後に製造された甘味素材組成物の甘味好み度および全般的な好み度が優れるものであった。
【0081】
[受託番号]
寄託機関名:韓国微生物保存センター(国外)
受託番号:KCCM12561P
受託日付:20190611
【0082】
【配列表】