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▶ プリマ インドゥストリー ソシエタ ぺル アチオニの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】付加製造のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/366 20210101AFI20240501BHJP
   B22F 10/25 20210101ALI20240501BHJP
   B22F 12/49 20210101ALI20240501BHJP
   B22F 12/53 20210101ALI20240501BHJP
   B22F 12/44 20210101ALI20240501BHJP
   B22F 10/36 20210101ALI20240501BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240501BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240501BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240501BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20240501BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20240501BHJP
   B22F 12/47 20210101ALI20240501BHJP
【FI】
B22F10/366
B22F10/25
B22F12/49
B22F12/53
B22F12/44
B22F10/36
B33Y10/00
B33Y30/00
B23K26/21 Z
B23K26/34
B23K26/082
B22F12/47
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021547262
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 IB2020052579
(87)【国際公開番号】W WO2020194149
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】102019000004681
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521170213
【氏名又は名称】プリマ インドゥストリー ソシエタ ぺル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】PRIMA INDUSTRIE Spa
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】デ キーリコ,ミケーレ
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0009369(US,A1)
【文献】特開2015-196265(JP,A)
【文献】特表2017-524827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/366
B22F 10/25
B22F 12/49
B22F 12/53
B22F 12/44
B22F 10/36
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B23K 26/21
B23K 26/34
B23K 26/082
B22F 12/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造のための方法であって、
付加製造ヘッド(12)が、金属末の1以上の粉末ジェット(PJ)を作業面(110)の領域(PD)に向けることと、
前記付加製造ヘッド(12)が、前記領域(PD)にレーザービーム(L)を同時に向けて、前記領域(PD)上に前記レーザービーム(L)の焦点スポット(LS)を形成することと、
前記粉末ジェット(PJ)および前記レーザービーム(L)を前記領域(PD)に向けている間に、前記焦点スポット(LS)により前記粉末に伝達されるパワー(D)の結果として前記粉末が溶融することにより得られるトレース(MPP)を生じさせるように、前記付加製造ヘッド(12)が前記レーザービーム(L)の方向と交差する方向に同時に並進(1012)することと
を含み、
前記交差する方向における前記付加製造ヘッド(12)の並進(1012)の間に、前記付加製造ヘッド(12)に対する動的な動きがヘッド(12)により放射される前記レーザービーム(L)に付与(1014)され、
前記動的な動きは、前記レーザービーム(L)の前記焦点スポット(LS)の大きさに依存せず、前記トレース(MPP)の幅(c)に対応する幅を有する見かけのスポットの単純な並進によって生成されるものと同等の前記トレース(MPP)の幅(c)が得られるように、構成されており、
前記動的な動きは、前記レーザービーム(L)によって前記トレース(MPP)に伝達されるパワー(D)の分布が前記トレース(MPP)の幅(c)の方向に沿って変化するように、構成されており、
前記レーザービーム(L)に付与された動きは、前記粉末が前記トレース(MP,MP’)の中央領域においてより高いレベル(q、q’)で蓄積される傾向があるにも関わらず、前記幅(c)と比較して相対的に小さく、予め設定され制御された深さ(h)を有する前記トレース(MPP)が得られるように、前記トレースの中央領域が前記レーザービーム(L)から、前記トレースの側方領域よりも低いパワーを受けるようになっている、方法。
【請求項2】
前記レーザービーム(L)に付与(1014)された前記動的な動きは、各サイクルにおいて前記レーザービーム(L)の前記焦点スポット(LS)が予め設定されたパターン(LP)を描くような周期運動である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザービーム(L)に付与(1014)された前記動的な動きは、動的な振動(ω)の運動である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザービーム(L)に付与(1014)された前記動的な動きは、歳差運動に実質的に対応する振動(ω)の周期運動であり、前記歳差運動の各サイクルにおいて、前記レーザービーム(L)の前記焦点スポット(LS)は、予め設定されたパターン(LP)を描く、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記予め設定されたパターンは、円形パターン(L,LP)、楕円形パターン(L,LP)、線形パターン(L,LP)、および8の字形状のパターン(L,LP)を備える複数のパターンの中から選択される、請求項またはに記載の方法。
【請求項6】
前記付加製造ヘッド(12)の並進速度(V)および/または前記レーザービーム(L)の前記焦点スポット(LS)が前記レーザービーム(L)の振動の各サイクルにおけるパターン(LP)を描くときの速度(ω)は、前記トレース(MPP)の前記幅(c)の方向において、前記レーザービーム(L)により前記トレース(MPP)に伝達される所望のパワー(D)の分布が得られるように、予め決定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記パターン(LP)、前記付加製造ヘッド(12)の並進速度(V)、および/または前記レーザービーム(L)の前記焦点スポット(LS)が前記レーザービーム(L)の振動の各サイクルにおける前記パターン(LP)を描くときの速度(ω)は、前記トレース(MPP)の前記幅(c)の方向に対して、前記レーザービーム(L)により前記トレース(MPP)に伝達される所望のパワーのプロファイル(D)が生じるように、選択される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
付加製造のためのシステムであって、
作業面(110)の領域(PD)に1以上の金属粉末のジェット(PJ)を向けるための1以上のノズル(34)と、前記金属粉末のジェットを向けるのと同時に前記領域(PD)にレーザービーム(L)を向けて前記領域(PD)にレーザービーム焦点スポット(LS)を形成するレーザービーム集光・方向付け装置とを有する付加製造ヘッド(12)を備え、
前記付加製造ヘッド(12)は、前記金属粉末のジェット(PJ)および前記レーザービーム(L)を向けている間に、前記レーザービームの放射方向の横方向に並進(1014)するように構成されており、
前記付加製造ヘッド(12)は、
放射する前記レーザービームを方向付けるレーザービーム方向付け装置(12d)と、
前記付加製造ヘッド(12)の並進(1014)の動きを制御し、前記レーザービーム方向付け装置(12d)を制御する少なくとも1つの電子コントローラと
を備え、
前記少なくとも1つの電子コントローラは、前記横方向における前記付加製造ヘッド(12)の並進の間に、前記付加製造ヘッド(12)により放射された前記レーザービーム(L)に前記付加製造ヘッド(12)に対する動的な動きを付与(1014)するために、前記レーザービーム方向付け装置(12d)を制御するように構成されており、
付与された動的な動き(1014)は、前記レーザービーム(L)の焦点スポット(LS)の大きさに依存せず、トレースの幅(c)に対応する幅を有する見かけのスポットの単純な並進によって生成されるものと同等の前記トレースの幅(c)が得られるように、構成されており、
付与された動的な動きは、前記レーザービーム(L)によって前記トレース(MPP)に伝達されるパワー(D)の分布が前記トレース(MPP)の幅(c)の方向に沿って変化するように、構成されており、
前記付与された動的な動き(1014)は、前記粉末が前記トレース(MP,MP’)の中央領域においてより高いレベル(q、q’)で蓄積される傾向があるにも関わらず、前記幅(c)と比較して相対的に小さく、予め設定され制御された深さ(h)を有する前記トレース(MPP)が得られるように、前記トレースの中央領域が前記レーザービーム(L)から、前記トレースの側方領域よりも低いパワーを受けるようになっている、システム。
【請求項9】
前記レーザービーム(L)に付与(1014)された前記動的な動きは、動的な振動(ω)であり、
前記動的な動き(ω)は、前記レーザービーム(L)の焦点スポット(LS)の大きさに依存せず、前記トレース(MPP)の幅(c)に対応する幅を有する見かけのスポットにより生成されるものと同等の金属トレースの幅(c)を得るように構成されており
前記動的な動き(ω)は、前記レーザービーム(L)から前記トレース(MPP)に伝達されるパワー(D)の分布が前記トレースの幅(c)の方向に沿って変化するように構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記レーザービーム方向付け装置(12d)は、
前記レーザービーム(L)の光路に沿って順に配置され、互いに直交する軸(α,β)を中心にそれぞれ揺動するように取り付けられた一対のミラー(M1,M2)と、
前記ミラー(M1,M2)のそれぞれの揺動運動をそれぞれ制御する2つのアクチュエータ装置(A1,A2)と
を備える、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記1以上のノズル(34)は、各アクチュエータを介して方向付けられる、請求項に記載のシステム。
【請求項12】
前記レーザービーム方向付け装置(12d)は、複数の光学部品を備える、請求項に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数の光学部品は、回転プリズムおよび/または適応型コリメーターを含む、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造のための方法およびシステムに関する。特に、本発明は、付加製造ヘッドが、1以上の粉末のジェット、特に金属粉末のジェットを作業表面の領域に向け、前記ヘッドが同時にレーザービームを前記領域に向けるタイプの付加製造のための方法およびシステムに関する。また、本発明は、前記粉末ジェットおよび前記レーザービームを前記領域に向けている間に、前記焦点スポットによって前記粉末に伝達されたパワーの結果としての前記粉末の溶融により得られたトレースを発生させるように、前記付加製造ヘッドが同時にレーザービームの方向に交差する方向に並進するタイプの付加製造のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
上述したタイプの付加製造のためのシステムは、本出願人の名前で出願された国際公開第2018/069809号で説明されている。
【0003】
この種類の付加製造のためのシステムは、「指向性エネルギー堆積(DED)」と言及されることがある。
【0004】
前述したように、DEDシステムは、以下に適したヘッドを備えてもよい。
材料(例えば粉末のジェット、特に1以上の金属材料から得られる金属粉末のジェット)を作業領域に堆積させること。
堆積と同時に、集束された熱エネルギー、すなわち堆積される材料を溶融するために集束されたエネルギー源(例えば、レーザービーム、電子ビーム、またはプラズマアーク)を用いて上記粉末を熱処理すること。
【0005】
粉末は、粉末ジェットを噴射するように構成されたノズル、例えばヘッドに対して固定または移動可能なノズルを用いて作業領域に堆積されてもよい。これらの粉末は、堆積されると、作業領域または作業表面において特定の空間分布をとる傾向があり、例えば作業表面上に粉末のベル(または円筒の一部)のようなものを形成する。ベルの密度は、中央において最大値をとり、中央からの径方向距離に比例して減少する値をもつ。
【0006】
粉末の同時熱処理の間、レーザービームは、レーザービームのスポットが粉末のベル型の空間分布に重なるように駆動される。「レーザースポット」とは、作業表面上でのレーザービーム自体の法線部分の領域を意味する。
【0007】
このような全体的なまたは部分的な重なりにより、ある量の粉末は、レーザープールに遮られ、これによりレーザービームから伝達されたパワーにより溶融する。このようにしてレーザースポットにより遮断されたそのような材料の量は、「メルトプール」と呼ばれ、冷却されて固化されると、金属などの固体材料の盛り上がった領域を形成する。
【0008】
作業表面における1つの方向にヘッドを並進させることにより、すなわちレーザービームおよび粉末ジェットを同時に動かすことにより、溶けて固まった一連のプールは、ヘッドの並進方向、例えば作業表面上の長手方向xに延びたトレースを形成する。一連のメルトプールを有するこのトレースは、例えば、長手方向xに交差する方向yにおける断面において幅と深さを有する。
【0009】
具体的には、メルトプールの幅は、レーザースポットのサイズ、例えば堆積された粉末に重ね合わされるレーザースポットの幅によって主に決定され、そのスポットのエネルギー密度によって補助的に決定される。このため、レーザースポットの幅は、DEDを用いて任意のオブジェクトを得るための「トレース」または「基本的な製造ブロック」の形状を決定する。
【0010】
実際、DED付加製造を用いてオブジェクトを得るために、付加製造ヘッドは、オブジェクトの断面を得るために予め調整され、予め設定された経路に沿って移動するように駆動される。隣接する材料のトレースは、生産される三次元のオブジェクトを構成する(重ねて形成された)一連の層の中の1つの層を構成する。例えば、円筒管を得るために、ヘッドは、円形の経路に沿って駆動されてもよく、付加的に円筒を得るために、各円周の終了時に垂直方向Zに変位するように駆動されてもよい。
【0011】
指向性エネルギー堆積による付加製造技術によって生産されたオブジェクトの特徴は、1以上の一連のメルトプールを有するトレースの特徴(またはパラメータ、特性)に依存し、その機能を果たす。
【0012】
特に、トレースの幅および深さは、性能指数である。「深さ」とは、メルトプールの垂直軸Zにおける最大厚さを意味する。
【0013】
添付の図面の図1Aおよび図1Bは、メルトプールのこれらの特徴、およびそれを決定するレーザービームの形状の例を提供する。具体的には、図1Aおよび図Bのそれぞれは、上段において、レーザーが粉末に伝達するパワーの半径方向の分布のグラフを示している。ここで、横軸は、半径方向の距離を例えばメートル(m)で表し、縦軸は、パワーPを例えばワット(W)で表す。また、図1Aおよび図1Bのそれぞれは、下段において、対応する上段でのパワーの分布の伝達により得られるトレース断面MP(トレースが延びる長手方向に交差する方向における)を示している。
【0014】
図面は、単なる例示であり、正確な縮尺でないことに留意されたい。
【0015】
図1Aでは、粉末の熱処理に用いられるレーザービームから伝達されるパワーの(例えば準ガウシアン分布を有する)半径方向のプロファイルの第1の設定がGで表示されている。同図1Aのトレースの断面MPは、準ガウシアン分布のパワーを適用しながら堆積された金属粉末を処理して得られたメルトプールの断面に対応してもよい。例えば、ある幅のトレースMPは、準ガウシアンパワー分布プロファイルGの1つを適用して、このように伝達されたパワーを材料自体で熱伝達させることにより得られる。
【0016】
ノズルから出力された粉末ジェットに交差する断面における粉末の密度分布を分析すると、粉末の密度分布は、半径方向rを含む断面において典型的なベル型のプロファイルを有していることがわかる。その結果、レーザービームGを適用することで得られたトレースMPは、半径方向軸rに沿った中央からの距離の関数として変化する深さ、例えば、中央で最大値qを有し、両端でゼロをとる傾向にある最小値を有する厚みを有している。ここで、両端は互いに距離aを開けて位置しており、例えば、レーザービームのパワー分布Gの最小値の間の距離はaである。
【0017】
同様に、図1Bの上段は、例えば、Tで示されたトップハット分布を有するタイプのレーザービームの伝達されたパワーのプロファイルの第2のセットが示されている。トップハット分布は、トレース(および対応するメルトプール)の断面MP’を生じさせる。断面MP’は、中央で最大値q’を有する厚みと両端でゼロとなる傾向にある最小値を有する厚みとの間の深さを有する。両端は、レーザービームのパワーの最小値の間の距離に等しい距離bを開けて配置されている。考慮している例において、トップハットレーザースポットのプロファイルTが典型的に準ガウシアンスポットのプロファイルGよりも広範囲である限りにおいて、値bは値aよりも大きい。例えば、ある幅のトレースMP’は、伝達されたパワーの材料自体における熱伝達を介して、トップハットパワー分布プロファイルTの1つを適用することにより得られる。
【0018】
パワー分布Gを有するレーザービームを放射するために設けられたヘッドを並進させることで、図1Aに例示するように、比較的「薄い」トレース(すなわち、例えば、トップハットビームTの場合に得られる厚みq’と比較して小さい厚みq)を得ることができる。この比較的「薄い」トレースにより、低い生産性、すなわち(図1Aのトレースが図1Bのトレースと比較して比較的薄く、これにより所定の構成および所定の寸法を有するオブジェクトを得るための「回数」が増加する限りにおいて)長い生産時間にも関わらず、(薄いトレースが解像度の向上を容易にする限りにおいて)製品の良好な表面品質を得ることができる。
【0019】
代わりに、トップハットパワー分布を有するレーザービームを放射するように構成されたヘッドを並進させることで、例えば図1Bに例示するように、メルトプールに大量の材料を堆積させることを特徴とする第2のタイプのトレースが得られ、これにより、生産性を向上できるが、解像度が損なわれる。「解像度」とは、生産するオブジェクトの詳細を得る能力を意味する。
【0020】
レーザーパワーのトップハット分布により得られたトレースの幅bが大きくなると、粉末の空間分布がベル型になり、厚みq’も大きくなる。
【0021】
したがって、DED付加製造システムには、完成品の精度および品質を損なうことなく、可能な限り短い時間で所望の製品を得ることのできる高い生産性を実現するという問題、すなわち課題がある。実際、レーザービームの特定のパワー分布でヘッドを動作させると、ある種のタイプのトレースでオブジェクトを生産できる。異なる特徴を有するトレースを得るためには、例えば、準ガウシアンビームを放射するように構成されたヘッドとトップハットビームを放射するように構成されたヘッドとを処理中に互いに入れ替えるか、そうでなければ1種類のヘッドと他の種類のヘッドの両方を使用することで複数のヘッドを使用することができる。しかしながら、これらの解決策は、製造時間、コスト、およびシステムの複雑性(並びに、所望のオブジェクトを得るためにシステムを駆動させるコマンドの事前調整の複雑性)の大幅な増加を招く。
【0022】
2つのヘッドを使用する解決策の更なる欠点は、互いに入れ替えるかまたは平行して動作させる場合であっても、異なる厚さ(例えば、q,q’)の厚さのトレースを並べて重ねて設置されて得られたオブジェクトは、オブジェクト内に隙間、例えば異なる厚みq’、qの差で与えられる大きさの隙間が残りやすくなるため、得られたオブジェクトの多孔率が増加するという事実による。
【0023】
レーザースポットの直径を変化できるようにする適応型コリメーターを使用する解決策も知られている。しかしながら、これらの解決策には、エネルギー分布の変化を許容しないという欠点があり、その結果、常に中央にピークを有するタイプのエネルギー分布になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本明細書で説明される実施形態の目的は、上述したように、従来技術の方法およびシステムを改良することである。
【0025】
具体的には、本発明の目的は、高い生産性を容易にする指向性エネルギー堆積付加製造のための方法およびシステムである。高い生産性とは、完成品の高い精度および品質を容易にすると同時に、できるだけ短い時間で所望の製品を得る能力として理解される。
【0026】
繰り返しになるが、本発明の別の目的は、そのような目的を比較的単純で低コストの手段を用いて達成することであり、同様に、オブジェクト自体を生産するシステムを駆動するコマンドの事前調整の複雑さを単純化することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
様々な実施形態は、下記特許請求の範囲に記載してある特徴を有する、付加製造のための方法および付加製造のための対応するシステムのおかげで、上述した目的の1以上を達成する。特許請求の範囲は、本発明に関して本明細書で提供される技術的な教示の不可欠な部分を形成する。
【0028】
具体的には、本開示による解決策の目的は、本明細書の冒頭で言及した特徴を有し、さらに、そのような横方向における付加製造ヘッドの並進の間に、ヘッドに対して、ヘッドから放射されたレーザービームに動的な動きが付与することを特徴とする。このような動的な動きは、レーザービームの焦点スポットの大きさに依存せず、トレースの幅に対応する幅を有する見かけのスポットの単純な並進により得られるものと類似、すなわち実質的に等しい金属トレースの幅が得られるように構成されている。そのような動的な動きは、さらに、レーザービームからトレースに伝達されるパワーの分布がトレースの幅方向に沿って変化するように構成されている。
【0029】
このようにして、レーザービームに付与された動的な動き(ここではレーザービームの放射方向に付与された動きと理解される)により、作業表面がレーザービームの「プロファイル」または「見かけのスポット」によって照らされる。この形状のプロファイルのジオメトリは、ヘッドに対してレーザービームに付与された動的な動きによって生じたパターンに決定される。その結果、作業表面に配置された粉末の溶融によって得られたトレースの特性は、作業表面を照らすプロファイルによりそこに堆積した粉末に伝達されたパワーの分布により決定される。
【0030】
そのような特徴のおかげで、比較的広く薄い金属トレース、すなわち、深さと幅とが互いに切り離された方法で変化するものが得られる。このようなプロセスの可能性は、一方で、比較的短い時間(より広いトレースでの必須のトレースの数が減少する限りにおいて)で所定の製品を得ることを容易にし、他方では、(減少した)深さの層を重ねることで高解像度の製品を製造することを可能にする。
【0031】
様々な実施形態は、周期的な動き(例えば、回転、並進、または回転並進)がレーザービームに付与されて、各サイクルにおいてレーザービームの焦点スポットが予め設定されたパターンを描く付加製造のための方法のおかげで、上述した目的の1以上を達成する。
【0032】
様々な実施形態において、特に、動的な振動ωの動きがレーザービームに付与される。
【0033】
本明細書およびその後に続く特許請求の範囲において、「動的な振動」という用語は、予め設定された周波数で時間的に可変であり、これにより周期的かつ定期的な方法で焦点スポットが予め設定されたパターンに従うようになる周期的、連続的または断続的な振動を示すために使用されている。
【0034】
好ましい実施形態によれば、レーザービームに付与された振動は、トレースの中央領域がトレースの側方領域よりも低いパワーをレーザービームから受けとるように、予め設定されている。これにより、トレースの中央領域において粉末がより高く堆積する傾向があるにも関わらず、トレースの幅方向において予め設定され制御された深さを有し、幅と比較して相対的に薄いトレースを得ることができる。
【0035】
このようにして、高解像度かつ低生産性、または低解像度かつ高生産性、または高解像度かつ高生産性など、加工サイクルの間に柔軟に動作できるように、このような動きから得られるレーザースポットのジオメトリを選択できる。
【0036】
好ましい例では、歳差運動に実質的に対応する周期的な振動の動きがレーザービームに付与される。そのような歳差運動の各サイクルにでは、レーザービームの焦点スポットが、例えば、円形パターン、楕円形パターン、線形パターン、および8の字形状のパターンから選択される予め設定されたパターンを描く。上記パターンのリストは、ここで議論されている解決策が、得られるトレースの深さと幅とが切り離されるように、トレースの幅に実質的に対応する幅を有する見かけのスポットにより生産されたものと等しいトレースの幅を得るために、動的な動きを付与するのに適した任意の他のパターンの使用方法を教示している限りにおいて、単に例示であることに留意されたい。
【0037】
1以上の実施形態において、付加製造ヘッドの並進速度およびレーザービームの焦点スポットがレーザービームの動きの各サイクルにおいてそのようなパターンを描く速度は、トレースの幅方向においてレーザービームからトレースに伝達されるパワーの所望の分布が得られるように、予め設定されている。具体的には、このパターン、ヘッドの並進速度および/またはレーザービームの動きの各サイクルにおいてレーザービームの焦点スポットがそのようなパターンを描く速度は、トレースの幅方向に関して、中央の谷と中央の谷の両側にある少なくとも2つの対称なピークとを有する、レーザービームにより伝達されるパワーのプロファイルが生じるように選択される。これにより、得られた金属トレースは、トレースの中央領域において粉末が高く蓄積される傾向があるにも関わらず、予め設定され制御された深さを有し、その結果、トレースの深さは、粉末がそのように蓄積された場合の深さに対して減少する。
【0038】
例えば、得られるトレースは、トレースの中央領域において粉末がより高く蓄積される傾向があるにもかかわらず、既知の解決策で得られるものと比較して中央においてより平坦であり、トレースの最大厚さの点と最小厚さの点との間のレベルの差が小さい形状を有することがある。その結果、トレースの深さは、粉末がそのように蓄積された場合の深さに対して減少する。
【0039】
有利には、実施形態によれば、(およびガウシアン形状およびトップハット形状の間の離散的な物でなく)連続的なメルトプールの特性の管理を容易にするために、レーザービームの形状を調整し制御することができる。これにより、よりよい解像度、つまりよりよい精度と表面仕上げを得るために、得られた製品の多孔率を増加させる隙間を生じることなく、例えば、ピースの外側をより狭いトレースで、内側部を同じ深さでより広いトレースで得ることができる。
【0040】
様々な実施形態は、作業表面の領域に1以上の金属粉末のジェットを向けるための1以上のノズルを含む付加製造ヘッドと、そのような領域にレーザービームの焦点スポットを形成するために、そのような金属粉末のジェットを向けるのと同時にそのような領域にレーザービームを向けるためのレーザービーム集光・方向付け装置とを備える付加製造のためのシステムのおかげで、上述した目的の1以上を達成する。ここで、このような付加製造ヘッドは、そのような金属粉末のジェットおよびそのようなレーザービームが向いている間に、レーザービームの放射方向に交差する方向に並進するように構成されている。そのようなヘッドは、放射されたレーザービームを方向付ける装置と、ヘッドの並進運動を制御しそのようなレーザービーム方向付け装置を管理する少なくとも1つの電子コントローラとを更に備える。
【0041】
少なくとも1つの電子コントローラは、ヘッドのこのような横方向の運動の間に、ヘッドにより放射されたレーザービームに動的な動きを付与するために、このようなレーザービーム方向付け装置を管理するように構成されている。動的な動きは、レーザービームの焦点スポットの大きさに依存せず、トレースの幅と実質的に対応する幅を有する見かけのスポットにより生産されるものと同等のトレースの幅を得るように構成されている。また、動的な動きは、レーザービームからトレースに伝達されるパワーの分布がトレースの幅方向に沿って変化するように構成されている。
【0042】
様々な実施形態において、例えば、このようなレーザービーム方向付け装置は、レーザービームの経路に沿って順に配置され、それぞれの互いに直交する軸を中心として揺動するように取り付けられた一対のミラーと、それぞれのミラーの揺動運動をそれぞれ制御する2つのアクチュエータ装置とを備える。
【0043】
様々な実施形態では、例えば、レーザービーム方向付け装置は、複数の光学部品、好ましくは、回転プリズムおよび/または適応型コリメーターを備えてもよい。
【0044】
様々な実施形態において、1以上のノズルは、それぞれのアクチュエータを介して向き付けられてもよい。
【0045】
繰り返しになるが、有利には、トレースの特性を連続的に改変できるので、設計に先立って、ヘッドを並進させる経路を用意するステップ、例えばCAMプログラミングのステップを簡素化できる。例えば、層を形成するトレースの深さや特性を常に同じに維持しつつ、オブジェクトの各層の特性を決定できる。
【0046】
本開示の技術的な解決策の更なる特徴および利点は、純粋に非限定的な例として提供された添付の図面を参照した以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1A,1Bは、従来技術による方法で得られる、2つの異なるレーザービームと、それに対応するトレースとを示す(前述した)図である。
図2図2は、付加製造システムの図である。
図3図3は、付加製造システムのヘッドの図であり、図3Aは、ヘッドの詳細を示す拡大図である。
図4図4は、本明細書で例示された解決策に係るシステムの制御構造の図である。
図5】本解決策の根底にある動作原理を簡略化して示す図である。
図6】本解決策に係るシステムの構造および動作の詳細に関する例示的な図である。
図7】本解決策に係るシステムの構造および動作の詳細に関する例示的な図である。
図8】本解決策に係るシステムの構造および動作の詳細に関する例示的な図である。
図9】本明細書に係る方法による動作を示す例示的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
続く説明において、例として提供される実施形態の最大限の理解を可能にするために、多くの具体的詳細が示される。実施形態は、具体的詳細の有無に関わらず、他の方法、構成要素、材料などとともに実施可能である。他の状況では、周知の構造、材料、または操作は、実施形態の態様が不明瞭にならないように、詳細に図示または説明しない。本説明において、「実施形態」または「一実施形態」に言及する場合、実施形態と結びついて説明された特有の特性、構造、または特徴が少なくとも1つの実施形態で備えられていることを意味する。従って、本説明の様々な箇所に存在する「実施形態では」または「一実施形態では」のようなフレーズは、必ずしも1つの同一の実施形態に言及するものではない。また、特有の特性、構造、または特徴は、1以上の実施形態において、任意の便利な方法で組み合わされてもよい。
【0049】
ここで使用される文字および符号は、単に読者の便宜のために提供されるもののであり、実施形態の範囲または意味を定義するものではない。
【0050】
図2および図3を最初に参照すると、本明細書による指向性エネルギー堆積(DED)付加製造用の装置10の光学ユニット(光学ヘッド)を備えるヘッドまたは可動部は全体として12で示されている。
【0051】
以下説明される機械は、以下の解決策を適用可能な機械の実施例を構成するに過ぎないことに留意されたい。この種類の機械は、同一の出願人の名前で出願されている国際公開第2018/069809号に図示されている。しかしながら、本明細書で説明される解決策は、本明細書で例として示されているものと異なる他の構成または配置を有する機械においても実施できることを考慮すると、完全に一般的な用途であることが理解される。
【0052】
図示された例を参照すると、DED付加製造装置は、制御ユニットによって駆動されるアクチュエータを介してヘッド12に配置されるように構成された1以上のアームを有する、例えば冗長軸を有する直交座標機械10を備えていてもよい。
【0053】
次に、図2は、全体が参照符号10で指定されたDED付加製造装置の実施形態の模式的な斜視図である。DED付加製造装置は、第1の複数軸、具体的には3つの直交軸X,Y,Zに沿って支持体11dを変位させるように設計された搬送構造体を備える。支持体11dには、粉末の直接堆積による付加製造用のヘッドまたは可動部12がしっかりと関連付けられている。
【0054】
この目的のため、搬送構造体11は、ベース11mと、上部に設けられ、水平軸Xに沿って延びたレール11hとを有するガイド構造体11aを備える。レール11h上には、レール11hの延長線に沿って自在にスライドするスライド11cが配置されている。スライド11c上には、レール11hが延びた方向に直交する方向、例えばX軸に直交するY軸に沿って延びた片持ち梁11bの端部が載置されている。そのような片持ち梁11bの端部は、片持ち梁11bの端部が載置されたスライド11cにスライド可能に関連付けられている。梁11bの他の自由端は、垂直ガイド11jを有する支持体11kを有する。ヘッド12を搬送する支持体11dは、垂直ガイド11jを介して、垂直軸、例えばXY平面に垂直なZ軸に沿って案内される。支持台11dのZ軸に沿った運動は、モータ11fによって制御される。
【0055】
スライド11cに対する梁11bの動き、およびガイド構造体11aに対するスライド11cの動きは、図2に図示されないが、モータによって駆動される。
【0056】
この構成の結果、ヘッド12の変位は、作業容積100、すなわち基本的には平行六面体の中で行われる。作業容積100の寸法は、ヘッド12の水平軸X,Yおよび垂直軸Zに沿った移動によって画定される。
【0057】
作業容積を形成する六面体100の一方の面(例えば、底面)は、作業表面110である。作業表面110を基点として、後述するように、付加製造によって生産される対象の部分が高温で熱処理(例えば、溶融)される。
【0058】
変形形態では、作業表面110は、例えば基板(または、基板が存在するベンチ)の表面であって、その上に粉末が堆積され、粉末の溶融が実行されるもの、または、本明細書で説明される処理によって構造が付加的に成長する要素として理解されてもよい。従って、一般的に「作業表面」とは、処理が実行される(例えば、Z軸に沿った)レベルの表面を意味する。
【0059】
代替的には、搬送構造体11は、例えば、門型であってもよい。
【0060】
以下で説明されるヘッド12の構造は、それ自体、本出願人の名前で提出された国際公開第2018/069809号により知られている。繰り返しになるが、この構造は、本明細書において純粋に例示のために示されている。本解決策は、続く説明から明確に浮かび上がるように、本解決策の根底にある原理を実施する可能性と両立して、異なるヘッド構造体にも適用可能であることが理解される。
【0061】
例において、以下により十分に説明されるように、ヘッド12は、粉末ジェットを放射または注入するためのノズル34と、そのような粉末を熱処理するためのレーザービームを同時に照射するための光学ユニットとを備える。機械10は、例えば、図2および図3には図示しないが、懸垂線を備えている。この懸垂線は、ヘッド12のレーザー光学ユニットにおいて、例えばヘッド12に対して離れて配置されたレーザー光線源から発生する放射線を搬送するように、ヘッド12のケーブル配線50を介して接続された光ファイバケーブルを含む。レーザー光学ユニットは、コリメーション装置12c(例えば、適応型または安定型コリメーション)と、レーザービームの配向(または偏向)のための光学装置12dとを備える。
【0062】
「光学装置」とは、一般的に、レーザービームの光学特性を変化させるように構成されたシステムを意味し、例えば、スキャナ、圧電性アクチュエータ、1以上のプリズム、またはレーザービームの光路を制御された方法で変化させるように構成された他の光学要素を備える光学偏向装置を意味する。
【0063】
変形形態では、ヘッド12は、レーザー源自体を含んでいてもよい。
【0064】
上述した懸垂線は、溶融プロセス用の例えばアルゴンまたは窒素のようなプロセスガスを搬送してもよい。繰り返しになるが、考慮される例において、上述した懸垂線は、機械10に対して離れて配置されたそれぞれの供給装置から溶融した粉末を搬送する導管を備える。さらに、上述した懸垂線は、電機制御ケーブルと、冷却水を搬送するための管とを備える。
【0065】
図3は、ヘッド12の斜視図である。ヘッド12は、レーザー光学ユニット12dを実質的に収容する上部12aを備える。実際は、上部12aには、ケーブル配線50が接続されている。ケーブル配線50は、既に述べたように、離れて位置しており、従って図2および図3に図示されないレーザー源から放射されたレーザービームLを搬送する光学ファイバを内部に有する。
【0066】
ケーブル配線50は、上部12aにおいて、第2の箱状体12dの上壁に配置された第1の箱状体12cに入る。
【0067】
そのような第1の箱状体12cは、図3においてより明確に視認できるように、適応型コリメーション装置をその内部に収容している。適応型コリメーション装置は、垂直軸Zに平行な軸に沿ってレーザービームLを受け取る。
【0068】
第2の箱状体12dは、後述するように(特に、図6を参照して)、例えばレーザービームを方向付ける光学走査手段を備える光学装置をその内部に収容する。
【0069】
ヘッド12は、上部12aに加えて、底部12bを更に備える。底部12bは、上部12aの下に配置され、上部と関連付けられている。また、底部12bは、その上壁を介して、光学走査手段を収容する第2の箱状体12dの底壁に関連付けられている。
【0070】
そのような底部12bは、貫通導管12eを備える。貫通導管12eの主軸は、垂直軸Zに平行であるが、水平面XYにおいて適応型コリメーション装置12cの軸に対してずらして配置されている。好ましくは加圧されている貫通導管(またはスペーサ)12eは、管状の形状を有しており、それ自体の開放端を介して、および作動モータ(図示せず)に関連付けられた回転作動システム12fを介して箱状体12bに関連付けられている。これにより、貫通導管12eのそれ自体の主軸回りの回転を容易にしている。
【0071】
ここで説明する例では、上部12aは、底部12bの対応するサイズよりも大きいサイズを有するように示されている。これらのサイズの比率は例示として提供されているに過ぎない。一方で、1以上の実施形態において、これらのサイズの比率は、図2,3および3Aにおいて例示されたものに対して、異なってもよいし逆転してもよいことが理解される。具体的には、底部は、上部よりもかなり短くてもよい。
【0072】
貫通導管12eの他の開放端は、加圧状態を維持するために、レーザー光線の波長を透過するシール要素が設けることができる限り、少なくとも光学的な観点から開放されている。そのような他の開放端は、作業容積100に向き合うように配置されると共に、ツールホルダフレーム30を備えるエンドエフェクタに確実な方法で接続されている。ツールホルダフレーム30上には、粉末ジェットPJの放射/注入のために複数のノズル34が取り付けられている。そのようなツールホルダフレーム30は、貫通導管12eのそのような開放端に確実に関連付けられている。
【0073】
図3Aを参照すると、導管12eの末端部分と、ヘッド12のツールホルダフレーム30とを拡大して示している。
【0074】
考慮している例では、上述のフレーム30は、環状であるので、それに応じて、その内部の円形の通過領域を特定する円周形状の周囲を画定している。ここで説明している例では、フレーム30に対して固定されているノズル34は、フレーム30の円周に沿って、径方向に対向する2点の組で互いに90度の角度をなして4つ配置されている。
【0075】
ここで説明された4つのノズルの数は、単に例示として提供されている。他の実施形態において、ノズルの数は任意である。
【0076】
説明された例では、ツールホルダフレーム30は、作業表面110に平行に配置されている、すなわちその周囲および領域がXY平面に平行になっている。ノズル34は、好ましくは、それぞれのノズル放射軸Uがフレーム30の周囲の中心を通過する入射軸Iに対して傾斜し、入射軸I自体と鋭角の傾斜角度を形成するように、配置されている。その結果、これらのノズル軸Uは、粉末堆積点PDで交差する。
【0077】
好適な実施形態によれば、1以上の上述のノズル34は、プロセスガスの噴霧用のノズルである。
【0078】
他の好適な実施形態によれば、1以上の上述のノズル34は、溶融され保護ガスによって囲まれた粉末を噴霧するためのノズルである。
【0079】
第2の箱状体12dは、その内部に、レーザー光線Lを搬送し、レーザー光線Lの焦点を作業容量100のレーザースポットLSに合わせる光学ユニットを備える。このレーザー光線Lは、溶融に適したパワー特性を有するレーザー放射から始まるそのようなレーザースポットLSの直径および焦点の変化を容易にするコリメーション装置12cから得られるものであり、遠隔地のレーザー源からケーブル50の光学ファイバを通して搬送されるか、あるいは、光学チェーンまたはヘッド12内に配置されたレーザー放射源を介して搬送される。
【0080】
適応型コリメーション装置12cの下流において、レーザー光線Lが伝搬する垂直軸に沿って、固定ミラー(図示せず)は、レーザー光線Lを垂直に、すなわち水平方向に偏向させる。このミラーは、好ましくは、周波数選択特性を有しており(すなわち、例えば、ダイクロイックミラーである)、光源または処理エリア110から得られる無反射放射線の監視を実行する。特に、加工中のトレースまたはメルトプールから発生する反射放射線は、光路を逆に覆う。ダイクロイックミラーは、通過させるいくつかの周波数を選び、例えば、監視要素またはシステムに向けてその周波数を有する光を送る。
【0081】
第2の箱状体12d内に配置された光学ユニットまたは装置は、入射レーザービームLを偏向および/または操作する光学部品のセットを有する。例えば、光学装置12dは、以下で図6に関連して説明するように、1以上の配向ミラーM1,M2を備えてもよい。配向ミラーM1,M2は、2つのミラーM1,M2(これによりレーザービームLが偏向される)を回転させるように構成されたそれぞれのガルバノアクチュエータA1,A2(図6において共に模式的に示す)を介して、互いに直交する回転軸に沿って移動可能である。
【0082】
ある実施形態では、光学装置12dにおいて使用される光学部品としては、例えば、プリズム、レンズ、回折格子、ビームスプリッタ、偏光板、エキスパンダー、および周知の他の部品など、複数および/または異なる種類のものが含まれるが、ここで説明する方法によるレーザービームの特性の制御を容易にする方法で組み合わされる。
【0083】
さらに、図3には、ノズル34と、レーザービームLが通過する加圧された配管12eと搬送するフレーム30が示されている。
【0084】
更に他の任意に選択できる実施形態によれば、上述のノズル34は、移動可能、すなわち、時間の経過と共にそれらの軸Uの相対的な位置を変化できるように、入射軸Iに対して調整可能である。フレーム30は、上述したように、アクチュエータ(図示せず)を介して、Z軸に平行であり、ノズル34によって画定された周囲の中心を通過する、それ自体の垂直軸回りの回転により任意に移動する。一般的に、フレームの軸は、法線方向の入射軸Iと一致する。例として提供される実施形態では、加圧された配管12eはフレーム30に対して固定されており、配管12eとフレーム30とは、代わりに支持体11dに対して固定された上部12aに対して固定的に回転する。すなわち、配管12eは、搬送システム11の第1の複数の運動軸X,Y,Zにのみ沿って移動できる。
【0085】
代替的な実施形態では、加圧された配管12eは、上部12aに対して固定されているが、一方で、フレーム30は、代わりに、円盤またはリングとして理解される場合に、フレームの主な垂直慣性軸に対応する配管12eの長手方向の軸回りに回転可能な方法で、配管12eの底部に関連付けられている。この場合、作動手段がフレーム30を回転させるために配管12eの内部に配置されていてもよい。
【0086】
図4に、アクチュエータ、すなわち、ヘッド12のX,Y,Z軸を動かし、スライド31u,31vを動かす搬送構造体11のモータ、および光学装置12dの軸、すなわち、回転軸α,βのガルバノアクチュエータの制御を管理するための数値制御ユニット60の構造の原理図を示す。ユニット60は、パーソナルコンピュータ61,62を備える。パーソナルコンピュータ61は、指示および命令を第2のパーソナルコンピュータ62に送信するためのユーザインターフェースとして動作する。第2のパーソナルコンピュータ62は、好ましくは、機械の管理のためのリアルタイムタイプ62bの拡張機能に関連付けられた関連するオペレーティングシステム62aを備えている。オペレーティングシステムは、例えば、Linux(登録商標)、またはWinCEタイプであってもよく、あるいはプロプライエタリソリューションを介して得られるものであってもよい。したがって、パーソナルコンピュータ62は、アクチュエータを制御するためのDSP PCIタイプのサーボコントロールカード63に追従すべき軌道を供給する。
【0087】
以下により詳細に説明されるシステムを管理する処理は、パーソナルコンピュータ62およびサーボコントロールカード63で実施される。
【0088】
数値制御ユニット60は、従来技術で周知の処理に従って、加速度および速度の所定の仕様を有する仮想マシンの所謂部品プログラムに対応する一連の指示Pを生成する。そのような一連の指示Pは、パーソナルコンピュータ61からのものであり、機械の軌道および運動のオフラインでの設定のために適切に設定されたプログラムによって生成される。これには補間機能が適用されており、一連の指示Pに基づいて、工作機械10の軌道を生成する。工作機械10のこの軌道は、工作機械10の点、例えば、ジョイントまたはターミナル、またはツールセンターポイント(TCP)の動きを経時的に記述する運動学的座標に対応する。この補間は、一連の指令Pの中で送信された準備コードまたはGコードに応じて動作する。補間動作は、パーソナルコンピュータ62内のソフトウェアを介して実施される。
【0089】
さらに、説明されたDED付加製造機械10では、ユニット60は、例えば、粉末ジェットの速度およびプロセスガスの流量の調節に関するさらなるコマンドを送信するように構成されていることに留意されたい。これらのコマンドは、工作機械の軌道によって定義された所定のポイントおよび所定の瞬間に発生するように、また、以下に説明するように、ガルバノミラーM1,M2のアクチュエータを駆動するために、一連の指令Pに関連付けられてもよい。
【0090】
本明細書で説明する解決策の主な態様によれば、箱状体12d内の光学装置は、加工サイクルの間、レーザービームLに動的な動き、例えば、ヘッドから放射されたレーザービームが作業表面110の領域PD上に衝突する角度の周波数ωの動的な変化を付加するようにコントロールユニット60によって駆動される。
【0091】
様々な実施形態において、ヘッドから放射されたレーザービームに動的な振動、すなわち、予め設定された周波数で時間的に可変な連続的または間欠的な周期的振動を付加してもよい。これにより、焦点スポットLSが、予め設定されたパターン、例えば、円形パターンに周期的かつ定期的に従うようになる。
【0092】
以下では、簡単のために、例として上述された動的な振動の動きを参照して解決策の原理を説明するが、一方でこの例は決して限定的なものではないことを理解されたい。様々な実施形態では、実際、レーザービームに付加された動的な動きは、レーザービームの移動、レーザービームの回転、または他のあらゆるレーザービームの動き、および/または動きの組み合わせを含む。
【0093】
以下では簡潔のために、時間的に変化しない出射軸に対する位置を取ることができるノズル34で動作するヘッド12について言及する。しかしながら、ここで説明される解決策は、上述したように、ノズルが移動する場合にも同様に適用できることを理解されたい。
【0094】
図5は、本明細書で説明される解決策の根底にある原理の実例を示す。
【0095】
上述したように、ノズル34を介して粉末を堆積すると共に、スキャナモジュール12dを介して制御されたレーザービームを介して粉末を同時に熱処理するように、ヘッド12は、三次元空間、例えばX,Y,Z軸に従って、例えば、速度Vで並進できる。レーザーLとノズル34との両方は、制御ユニット60から受け取った指示に従って駆動される。
【0096】
上述した並進の結果として、粉末堆積点PDは、ヘッド12と一体となって並進する堆積点PDのシーケンスによって生成された粉末のストリップを作成するように、速度Vでのヘッド12の移動に対して剛体的に並進する。
【0097】
同様に、粉末トレースに配置された粉末の処理のために同時に使用されるレーザースポットLSは、例えば、図5において破線で示されるエピサイクロイド形状の光路LPに沿って移動する。
【0098】
ヘッド12の並進の間にレーザービームに付加された動きの結果として、結果的に「照らされた」部分は、レーザービームに付加された振動の振幅に対応した大きさの形状のスポットまたは「見かけのスポット」の並進の結果と等しい分布を有するパワーを粉末に伝達する。
【0099】
上述されたことは、可動ノズル34の場合、および固定ノズル34の場合の両方に適用されることに留意されたい。図6は、例として提供された、例えばヘッド12のスキャナモジュール12dとして使用可能な可動光学系の図が示されている。
【0100】
例えば、光学装置12dは、レーザーLの光路を備えてもよく、この光路は、
上述した固定ミラーからのレーザービームLの光路に沿って設置されると共に、適応型コリメーターの下流に設置された少なくとも1つの反射面を有し、連結されたアクチュエータA1を介して第1軸、例えば水平軸Xに沿って向き付け可能な第1可動ミラーM1と、
ミラーM1によって反射されたレーザービームLの光路に沿って設置された反射面を有し、連結されたアクチュエータA2を介して第1可動ミラーM1の向き付け可能性の第1軸に対して直交する(すなわち90度にセットされた)第2軸に沿って向き付け可能であり、垂直軸Zに沿って調整可能である、第2可動ミラーM2と
を備える。
【0101】
アクチュエータA1,A2は、それ自体が周知であるガルバノアクチュエータであってもよい。
【0102】
第2ミラーM2は、更に、出力時において、レーザービームLを作業表面110に向けて供給するように構成されてもよい。
【0103】
レーザービームLが第1可動ミラーM1に衝突したとき、レーザービームLは、ミラーの反射面に垂直な軸に対する特定の角度αで反射される。同様に、第1可動ミラーM1によって反射されたレーザービームLが第2可動ミラーM2に衝突したとき、レーザービームLは、第2ミラーM2の反射面に垂直な軸に対して定義された角度βで反射される。
【0104】
これらの偏向角の値を協調的な方法で時間的に変化させることで、そのような動的な振動を付加できる。
【0105】
いくつかの実施形態では、例えば制御モジュール60を介して対応する指示を送信することで、それぞれのミラーのアクチュエータA1,A2を互いに独立した方法で、または協調的な方法で駆動できる。
【0106】
一定の周期、例えば、動的な振動の周波数ωの逆の周期で、それぞれのアクチュエータA1,A2を介してミラーM1,M2の向きを変える所定の一連の動作を繰り返すことで、特定の形状またはパターンが得られる。逆に、得ようとする特定の形状から始めて、それに応じてアクチュエータを駆動させることもできる。
【0107】
以下では、簡単のために、動的な振動を2つのミラーに付加する場合について説明しているが、ある実施形態では、一方で、任意の数のミラー、例えば、2以上のミラーを使用できることに留意されたい。
【0108】
同様に、以下では、簡単のために、2つのアクチュエータの場合について説明しているが、一方で、ある実施形態では、任意の数のアクチュエータ、例えば、偶数のアクチュエータが使用可能であることを理解されたい。
【0109】
図8は、アクチュエータA1,A2により駆動された可動ミラーM1,M2を用いて得られた例として提供されたいくつかの形状またはパターンを図示している。
【0110】
図8に例示されているように、例えば、
部分A)に示されているように、速度Vで並進したときに、エピサイクロイド光路LPを形成する円形パターンlを得ることができる。このような円形パターンは、例えば、第1ミラーM1を正弦関数に従って動かし、第2ミラーM2を余弦関数に従って動かす(またはその逆)ことで得られる;
部分B)に示されているように、速度Vで並進したときに、並進された楕円の形状を有する螺旋状の光路LSを形成するエピサイクロイド光路パターンLを得ることができる;
部分C)に示されるように、速度Vで並進したときに、V形状の光路LSを形成する線形パターンLを得ることができる。このような線形パターンは、例えば、2つのミラーのうちの1つだけ、例えば第2ミラーM2だけを、ミラーの向きを変えられる2つの最大角度の間のすべての位置を取り得るように動かすことで得られる。;
部分D)に示されるように、速度Vで並進したときに、二重螺旋を形成する8の字形状のパターンLP が得られる。
【0111】
上述された例は、そのように、レーザービームLに動的な振動を付加することによって得られるパターンを何ら制限するものではなく、一方で、ここに例示されているものに加えて、他のパターンが得られることを理解されたい。
【0112】
上述したように、ヘッド12に配置されたスキャナモジュール12d内のミラーM1,M2およびそれぞれのアクチュエータA1,A2を介して付加された円形の動的な振動lのおかげで、ベル型の分布に従って堆積する粉末の特性に関わらず、得られるトレースMPPは、実質的に平坦である。すなわち、トレースの中央部に粉末がより高く蓄積する傾向があるにも関わらず、既知の解決策で得られるものと比較して中心においてより平坦であり、トレースの厚さの最大点と最小点との間のレベルの差が無視できる形状を有しており、トレースMPPの深さは、粉末がそのように堆積した場合に続くであろう高さに対して結果的に減少している。
【0113】
図7に例示するように、例えば、円形タイプlのパターンで、粉末に伝達されるレーザーパワーは、Dで示されるパワー分布を有する。
【0114】
上述した方法で得られたパワー伝達の分布Dのおかげで、トレースMPPの断面の高さhは、並進速度Vに交差する方向のトレースMPPの断面が中央部と両端部(互いに距離cで離れて配置されている)との両方で値hの準均一な厚さを示している限りにおいて、横方向における中央からの距離の関数で大きく変化しない。
【0115】
上述した幅は、実質的に、伝達パワーの分布Dの最大振幅に等しい。その結果、得られたパワーの分布Dのおかげで、比較的広い幅cと比較的薄い厚さhの金属トレースMPPを得ることができる。この金属トレースMPPは、比較的短時間で所定の製品を得る可能性を確保し、他方で、浅い深さhを有する材料の層を重ねることで製造を容易にする。すなわち、高い解像度で製品を製造できる。
【0116】
図9は、本明細書で説明される付加製造のための方法1000の1以上の実施形態の動作の例として提供された図である。
【0117】
例えば、方法1000は、以下を備えてもよい。
1010:例えばノズル34を介して、1以上の粉末ジェット、特に金属粉末のジェットPJを作業表面110の領域上に向けることと、例えばスキャナモジュール12d内の光学系M1,M2を介して、レーザービームLを同時にそのような領域、特に堆積された粉末上に向けて、上記領域上にレーザービームLの焦点スポットLSを形成することとの両方のために構成された付加製造ヘッド12を準備すること;
1012:そのような粉末ジェットPJとそのようなレーザービームL,LSとを向けている間に、付加製造ヘッド12を、レーザービームLの方向に交差する方向に同時に並進させ、例えばX軸またはY軸に沿って並進速度Vで並進させ、特に光路LPのレーザー焦点スポットLによるそのような粉末に伝達されたパワーの結果、それによって粉末の溶融およびそれに続く固化を介して固体トレースMPPを形成すること;
1014:付加製造ヘッド12の横方向における動きの間、ヘッド12から放射された、例えば周波数ωを有するレーザービームLに動的な振動を付加すること。この振動は、レーザービームLの焦点スポットの大きさに依存しないトレースの幅cが得られるように構成されている。またこの振動は、レーザービームによりトレース(レーザービームによって遮断された粉末が凝固して、一連のメルトプールを形成し、結果的にトレース自体を形成する)に伝達されるパワーの分布が幅方向に沿って変化するように、例えば、2つの谷と1つの頂点を有するプロファイルを有するパワーの分布Dに従って変化するように構成されている。
【0118】
根底にある原理を損なうことなく、詳細および実施形態は、純粋に例示として本明細書で説明されたものに対して、添付の特許請求の範囲で定義されている保護範囲から逸脱することなく、大きく異なっていてもよい。
図1
図2
図3
図3A
図4
図5
図6
図7
図8A)】
図8B)】
図8C)】
図8D)】
図9