(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】車輌用前照灯
(51)【国際特許分類】
F21S 41/43 20180101AFI20240501BHJP
F21S 41/32 20180101ALI20240501BHJP
F21W 102/135 20180101ALN20240501BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240501BHJP
【FI】
F21S41/43
F21S41/32
F21W102:135
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2021567166
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2020045470
(87)【国際公開番号】W WO2021131639
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2019238794
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019238795
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】本宮 大士
(72)【発明者】
【氏名】望月 優介
(72)【発明者】
【氏名】松本 昭則
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-179994(JP,A)
【文献】特開2011-258485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/43
F21S 41/32
F21W 102/135
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光の一部を遮蔽するシェードを備え、
前記シェードの所定の端縁が配光パターンのカットラインを形成するカットライン形成部とされ、
前記シェードには前記カットライン形成部の後方に位置された減光部が設けられ、
前記カットライン形成部と前記減光部によって配光パターンの一部に他の部分より輝度の低い低輝度部が形成され、
前記シェードにおける前記カットライン形成部を含む部分が平板状の機能面部として設けられ、
少なくとも前記機能面部が後下がりに傾斜され
、
前記減光部が平板状に形成され、
前記シェードは前記機能面部を有するベース部材と前記減光部を有し前記ベース部材に取り付けられた板状部材とによって構成され、
前記ベース部材には前記機能面部に対して折り曲げられたベース面部が設けられ、
前記ベース面部に前記板状部材が取り付けられた
車輌用前照灯。
【請求項2】
前記機能面部の少なくとも一部が前記光源から出射された光を反射する反射面として形成され、
前記反射面で反射された光が配光パターンを形成する光の一部として用いられる
請求項1に記載の車輌用前照灯。
【請求項3】
光源から出射された光の一部を遮蔽するシェードを備え、
前記シェードの所定の端縁が配光パターンのカットラインを形成するカットライン形成部とされ、
前記シェードには配光パターンの一部に他の部分より輝度の低い低輝度部を形成する減光部が設けられ、
前記減光部の下面が前記カットライン形成部の上端より上方に位置された
車輌用前照灯。
【請求項4】
前記シェードにおける前記カットライン形成部を含む部分が平板状の機能面部として設けられ、
前記シェードには一端が前記機能面部に連続する連結部が設けられ、
前記連結部の他端に前記減光部が連続して設けられ、
前記連結部が前記機能面部から突出する形状に形成された
請求項3に記載の車輌用前照灯。
【請求項5】
前記減光部が前記連結部に対して折り曲げられることにより形成された
請求項4に記載の車輌用前照灯。
【請求項6】
前記機能面部が折り返された形状に形成され、
前記機能面部における折返部の両側の部分がそれぞれ第1の部分と第2の部分として設けられ、
前記第1の部分と前記第2の部分が厚み方向において接し、
前記第1の部分に前記カットライン形成部が形成され、
前記連結部が前記第2の部分から突出された
請求項4又は請求項5に記載の車輌用前照灯。
【請求項7】
前記機能面部と前記連結部と前記減光部が一体に形成された
請求項4、請求項5又は請求項6に記載の車輌用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から出射された光の一部を遮蔽するシェードを備えた車輌用前照灯についての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用前照灯には、例えば、カバーとランプハウジングによって構成された灯具外筐の内部に、光を出射する光源や光源から出射された光の一部を遮蔽するシェードが配置されたものがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1及び特許文献2に記載された車輌用前照灯においては、灯具外筐の内部に光源、シェード、リフレクター及び投影レンズ等を有するランプユニットが配置され、光源から出射された光がリフレクターで反射され投影レンズによって略平行光にされてカバーを透過され前方へ向けて照射される。このときリフレクターで反射された光の一部がシェードによって遮蔽され、シェードによって遮蔽されなかった光によって配光パターンが形成される。
【0004】
シェードは所定の端縁がカットライン形成部として形成され、カットライン形成部によって配光パターンのカットラインが形成される。
【0005】
また、配光パターンには他の部分より輝度の低い低輝度部が形成される場合があり、この場合にはカットライン形成部の後方に位置された減光部とカットライン形成部とによって光源から出射された光が制御されて低輝度部が形成される。配光パターンに低輝度部が形成されることにより先行車や対向車の搭乗者等に対する幻惑光(グレア光)の発生が抑制される。
【0006】
シェードは金属材料によって形成されることが多く、カットライン形成部の少なくとも一部は配光パターンと低輝度部を形成するための所定の条件を満たすために金属材料の一部が折り曲げられて形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-49730号公報
【文献】特開2011-258485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記のように金属材料の一部が折り曲げられることによりカットライン形成部の少なくとも一部が形成されると、折曲加工によりシェードの全体に対するカットライン形成部の位置精度が低下するおそれがあると共にシェードの製造時に折曲工程が必要になり車輌用前照灯の製造コストが増加してしまう。
【0009】
そこで、本発明車輌用前照灯は、シェードの全体に対するカットライン形成部の高い位置精度を確保すると共に製造コストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1に、本発明に係る車輌用前照灯は、光源から出射された光の一部を遮蔽するシェードを備え、前記シェードの所定の端縁が配光パターンのカットラインを形成するカットライン形成部とされ、前記シェードには前記カットライン形成部の後方に位置された減光部が設けられ、前記カットライン形成部と前記減光部によって配光パターンの一部に他の部分より輝度の低い低輝度部が形成され、前記シェードにおける前記カットライン形成部を含む部分が平板状の機能面部として設けられ、少なくとも前記機能面部が後下がりに傾斜され、前記減光部が平板状に形成され、前記シェードは前記機能面部を有するベース部材と前記減光部を有し前記ベース部材に取り付けられた板状部材とによって構成され、前記ベース部材には前記機能面部に対して折り曲げられたベース面部が設けられ、前記ベース面部に前記板状部材が取り付けられたものである。
【0011】
これにより、カットライン形成部を有する平板状の機能面部が後下がりに傾斜されることによりカットライン形成部によって配光パターンのカットラインが形成されると共に減光部とカットライン形成部によって配光パターンに低輝度部が形成される。
【0013】
これにより、平板状の減光部によって配光パターンに低輝度部が形成される。
【0015】
これにより、シェードがベース部材と板状部材の二つの部材によって構成される。
【0017】
これにより、カットライン形成部を有する機能面部と一体に形成され機能面部に連続して設けられたベース面部に減光部を有する板状部材が取り付けられる。
【0018】
上記した本発明に係る車輌用前照灯においては、前記機能面部の少なくとも一部が前記光源から出射された光を反射する反射面として形成され、前記反射面で反射された光が配光パターンを形成する光の一部として用いられることが望ましい。
【0019】
これにより、機能面部の少なくとも一部が配光パターンを形成する光を反射する反射面にされる。
【0020】
本発明に係る別の車輌用前照灯は、光源から出射された光の一部を遮蔽するシェードを備え、前記シェードの所定の端縁が配光パターンのカットラインを形成するカットライン形成部とされ、前記シェードには配光パターンの一部に他の部分より輝度の低い低輝度部を形成する減光部が設けられ、前記減光部の下面が前記カットライン形成部の上端より上方に位置されたものである。
【0021】
これにより、減光部が間隙を挟んでカットライン形成部の上方に位置される。
【0022】
上記した本発明に係る別の車輌用前照灯においては、前記シェードにおける前記カットライン形成部を含む部分が平板状の機能面部として設けられ、前記シェードには一端が前記機能面部に連続する連結部が設けられ、前記連結部の他端に前記減光部が連続して設けられ、前記連結部が前記機能面部から突出する形状に形成されることが望ましい。
【0023】
これにより、カットライン形成部を有する機能面部に対する連結部の突出量及び突出方向に応じて減光部のカットライン形成部に対する位置が定められる。
【0024】
上記した本発明に係る別の車輌用前照灯においては、前記減光部が前記連結部に対して折り曲げられることにより形成されることが望ましい。
【0025】
これにより、減光部の連結部に対する折曲角度に応じて減光部のカットライン形成部に対する向きが定められる。
【0026】
上記した本発明に係る別の車輌用前照灯においては、前記機能面部が折り返された形状に形成され、前記機能面部における折返部の両側の部分がそれぞれ第1の部分と第2の部分として設けられ、前記第1の部分と前記第2の部分が厚み方向において接し、前記第1の部分に前記カットライン形成部が形成され、前記連結部が前記第2の部分から突出されることが望ましい。
【0027】
これにより、カットライン形成部を有する第1の部分と連結部が突出された第2の部分とが厚み方向において接する状態にされるため、連結部のカットライン形成部に対する位置精度が高くなる。
【0028】
上記した本発明に係る別の車輌用前照灯においては、前記機能面部と前記連結部と前記減光部が一体に形成されることが望ましい。
【0029】
これにより、機能面部と連結部と減光部が一つの部材によって形成される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、カットライン形成部を有する平板状の機能面部が後下がりに傾斜されることによりカットライン形成部によって配光パターンのカットラインが形成されると共に減光部とカットライン形成部によって配光パターンに低輝度部が形成されるため、シェードの製造時にカットライン形成部の形成のための折曲工程が必要なく、シェードの全体に対するカットライン形成部の高い位置精度を確保すると共に車輌用前照灯の製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図2乃至
図5と共に本発明車輌用前照灯の実施の形態を示すものであり、本図は、車輌用前照灯の概略断面図である。
【
図3】
図2とは異なる方向から見た状態で示すシェードの斜視図である。
【
図6】
図2乃至
図7と共に本発明車輌用前照灯の実施の形態を示すものであり、本図は、車輌用前照灯の概略断面図である。
【
図8】
図2とは異なる方向から見た状態で示すシェードの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明車輌用前照灯を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0033】
<第1の実施の形態に係る車輌用前照灯>
まず、第1の実施の形態に係る車輌用前照灯1について説明する(
図1乃至
図5参照)。
【0034】
車輌用前照灯1は、それぞれ車体の前端部における左右両端部に取り付けられて配置されている。
【0035】
車輌用前照灯1は前方に開口を有するランプハウジング2とランプハウジング2の開口面を閉塞するカバー3とを備えている(
図1参照)。ランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐4が構成され、灯具外筐4の内部空間が灯室5として形成されている。
【0036】
灯室5にはランプユニット6が配置されている。ランプユニット6は筒状に形成されたレンズホルダー7とレンズホルダー7の前端部に取り付けられた投影レンズ8とレンズホルダー7の後方に配置された放熱ベース9と下端部が放熱ベース9に取り付けられたリフレクター10と放熱ベース9上に配置された光源11と光源11から出射される光の一部を遮蔽するシェード12とを有している。
【0037】
ランプユニット6はランプハウジング2に図示しない光軸調整機構を介して支持されている。従って、光軸調整機構を動作させることによりランプユニット6をランプハウジング2に対して上下方向又は左右方向へ移動させて光源11から出射される光の光軸調整を行うことが可能にされている。
【0038】
投影レンズ8は前方側の表面が凸面に形成され後方側の表面が後方を向く平面に形成されている。投影レンズ8は後側焦点を含む焦点面上の像を反転して前方へ投影する機能を有している。
【0039】
放熱ベース9は下端部に複数の放熱フィン9a、9a、・・・を有している。従って、光源11の駆動時に発生する熱が主に放熱フィン9a、9a、・・・から放出され、光源11の良好な駆動状態が確保される。
【0040】
リフレクター10は内面が反射面10aとして形成され、反射面10aは、例えば、楕円球面に形成されている。リフレクター10は反射面10aの一方の焦点が光源11に一致され反射面10aの他方の焦点が投影レンズ8の後側焦点に一致される向きで配置されている。
【0041】
光源11としては、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が用いられている。
【0042】
シェード12は、例えば、固定シェードであり、ランプユニット6の一部、例えば、図示しないブラケット等の取付部材に取り付けられている。但し、シェード12は可動シェードとして設けられていてもよい。
【0043】
シェード12は何れも金属材料によって形成されたベース部材13と板状部材14によって構成され、板状部材14がベース部材13に取り付けられている(
図2乃至
図4参照)。シェード12は、車輌の前後方向に延びる基準線を基準線Sとしたときに、基準線Sに対して後下がりに傾斜した状態で配置されている。
【0044】
ベース部材13は板状の部材が所定の形状に折り曲げられて形成され、略前後方向を向く横長の略矩形状に形成されたベース面部15と、ベース面部15の上縁から前方に折り曲げられた機能面部16と、ベース面部15の左右両側縁からそれぞれ前方に折り曲げられた側面部17、17と、側面部17、17の下縁からそれぞれ側方(外方)に折り曲げられた被取付面部18、18とを有している。T
機能面部16は略上下方向を向く平板状に形成され、前縁が配光パターンのカットラインを形成するカットライン形成部19として形成されている。カットライン形成部19の左右方向における中央部には、カットラインの左右方向における中央部を形成するための段差部19aが形成されている。
【0045】
機能面部16における上面の少なくとも一部は反射面16aとして形成されている。反射面16aは、例えば、機能面部16の一部にアルミニウムの蒸着等が施されることにより形成されている。
【0046】
板状部材14は略前後方向を向く平板状に形成され、上端部が上方に凸の部分を有する減光部14aとして設けられ、減光部14a以外の部分が被取付部14bとして設けられている。従って、減光部14aも平板状に形成されている。但し、減光部14aは被取付部14bに対して折り曲げられた形状に形成されていてもよい。
【0047】
板状部材14は被取付部14bがベース面部15の後面に溶接や接着等によって取り付けられている。従って、減光部14aはベース面部15より上方に位置される。尚、減光部14aはベース面部15又は機能面部16に一体に形成されていてもよい。
【0048】
上記のように、シェード12はカットライン形成部19を含む機能面部16と減光部14aを含む板状部材14とが何れも平板状に形成されている。シェード12は被取付面部18、18がブラケット等の取付部材に取り付けられている。
【0049】
シェード12は、上記したように、基準線Sに対して後下がりに傾斜した状態で配置され、基準線Sに対する傾斜角度θは、例えば、14度から24度にされている。但し、シェード12の基準線Sに対する傾斜角度θは、投影レンズ8の径や投影レンズ8の後側焦点の位置やリフレクター10の二つの焦点の各位置等によって定められ、14度から24度以外の角度に設定されてもよい。
【0050】
上記のように構成された車輌用前照灯1において、光源11から光が出射されると、出射された光はリフレクター10の反射面10aで投影レンズ8へ向けて反射され、投影レンズ8によって略平行光にされカバー3を透過され前方へ向けて照射される。このときリフレクター10の反射面10aで反射された光の一部がシェード12によって遮蔽され、配光パターンP1が形成される(
図5参照)。尚、
図5には、水平線Hと垂直線Vを示す。
【0051】
配光パターンP1は上縁がカットラインC1であり、カットラインC1がシェード12のカットライン形成部19によって形成される。このとき、光源11から出射された光の一部が減光部14aとカットライン形成部19によって制御(遮蔽)されることにより、配光パターンP1にはカットラインC1の近傍の位置に低輝度部D1が形成される(
図5に破線で示す部分)。
【0052】
低輝度部D1は配光パターンP1において他の部分より輝度の低い部分であり、配光パターンP1に低輝度部D1が形成されることにより先行車や対向車の搭乗者等に対する幻惑光(グレア光)の発生が抑制される。
【0053】
また、光源11から出射されリフレクター10で反射された光の一部は、シェード12における機能面部16に形成された反射面16aで反射され、投影レンズ8及びカバー3を透過され前方へ向けて照射される。従って、光源11から出射された光のうち、シェード12によって遮蔽されなかった光に加え、機能面部16の反射面16aで反射された光も配光パターンP1を形成する光の一部として用いられる。
【0054】
このように車輌用前照灯1においては、シェード12における機能面部16の少なくとも一部が光源11から出射された光を反射する反射面16aとして形成され、反射面16aで反射された光が配光パターンP1を形成する光の一部として用いられる。
【0055】
従って、機能面部16の少なくとも一部が配光パターンP1を形成する光を反射する反射面16aにされるため、光源11から出射された光の利用効率の向上を図ることができる。
【0056】
以上に記載した通り、車輌用前照灯1にあっては、シェード12の所定の端縁が配光パターンP1のカットラインC1を形成するカットライン形成部19とされ、シェード12にはカットライン形成部19の後方に位置された減光部14aが設けられ、カットライン形成部19と減光部14aによって配光パターンP1の一部に他の部分より輝度の低い低輝度部D1が形成され、少なくとも機能面部16が後下がりに傾斜されている。
【0057】
従って、カットライン形成部19を有する平板状の機能面部16が後下がりに傾斜されることによりカットライン形成部19によって配光パターンP1のカットラインC1が形成されると共にカットライン形成部19と減光部14aによって低輝度部D1が形成される。これにより、シェード12の製造時にカットライン形成部19の形成のための折曲工程が必要なく、シェード12の全体に対するカットライン形成部19の高い位置精度を確保することができると共に車輌用前照灯1の製造コストの低減を図ることができる。
【0058】
特に、金属材料を打ち抜き加工することにより曲げ加工を行うことなくカットライン形成部19を形成することが可能であるため、カットライン形成部19の高い位置精度を確保した上で車輌用前照灯1の製造を容易に行うことができる。
【0059】
また、シェード12にはカットライン形成部19の後方に位置され配光パターンP1の一部に他の部分より輝度の低い低輝度部D1を形成する減光部14aが設けられ、減光部14aが平板状に形成されている。
【0060】
従って、平板状の減光部14aによって配光パターンP1に低輝度部D1が形成されるため、低輝度部D1を形成する部分が簡素な構成にされ、製造コストの低減を図った上で適正な配光パターンP1を形成することができる。
【0061】
さらに、シェード12は機能面部16を有するベース部材13と減光部14aを有しベース部材13に取り付けられた板状部材14とによって構成されている。
【0062】
従って、シェード12がベース部材13と板状部材14の二つの部材によって構成されるため、シェード12の高い機能性を確保した上で構造の簡素化を図ることができる。
【0063】
さらにまた、ベース部材13には機能面部16に対して折り曲げられたベース面部15が設けられ、ベース面部15に板状部材14が取り付けられている。
【0064】
従って、カットライン形成部19を有する機能面部16と一体に形成され機能面部16に連続して設けられたベース面部15に減光部14aを有する板状部材14が取り付けられるため、カットライン形成部19と板状部材14の位置精度の向上を図ることができる。
【0065】
<第2の実施の形態に係る車輌用前照灯>
次に、第2の実施の形態に係る車輌用前照灯51について説明する(
図6乃至
図12参照)。
【0066】
なお、以下に示す車輌用前照灯51は、上記した車輌用前照灯1と比較して、シェード12に代えてシェード52が用いられることのみが相違する。したがって、車輌用前照灯1と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については車輌用前照灯1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0067】
シェード52は、例えば、固定シェードであり、ランプユニット6の一部、例えば、図示しないブラケット等の取付部材に取り付けられている(
図6参照)。但し、シェード52は可動シェードとして設けられていてもよい。
【0068】
シェード52は金属材料によって各部が一体に形成されている(
図7乃至
図9参照)。シェード52は機能面部53と傾斜面部54、54と端面部55、55と側面部56、56と被取付面部57、57と連結部58と減光部59を有している。
【0069】
機能面部53は下端部において折り返された形状に形成され、略前後方向を向く横長の略矩形の平板状に形成された第1の部分60と、略前後方向を向く縦長の略矩形の平板状に形成された第2の部分61とを有し、折り返された部分が折返部62として設けられている。
【0070】
第1の部分60は垂直方向に対して稍前下がりに傾斜され、上縁が配光パターンのカットラインを形成するカットライン形成部63として形成されている。カットライン形成部63の左右方向における中央部には、カットラインの左右方向における中央部を形成するための段差部63aが形成されている。
【0071】
第2の部分61は第1の部分60の左右方向における中央部に折返部62を介して連続され、左右の幅が第1の部分60の幅より小さくされている。第2の部分61は第1の部分60の後側に位置され、前面が第1の部分60の後面に接した状態にされている。従って、第2の部分61も第1の部分60と同様に垂直方向に対して稍前下がりに傾斜されている。
【0072】
傾斜面部54、54は機能面部53の左右両側縁からそれぞれ前方に折り曲げられ、機能面部53から側方において離隔するに従って前方に変位するように傾斜されている。端面部55、55は傾斜面部54、54の側方における外側の端縁からそれぞれ後方に折り曲げられ、略前後方向を向く状態で位置されている。側面部56、56は端面部55、55の側方における外側の端縁からそれぞれ前方に折り曲げられ、略左右方向を向く状態で位置されている。被取付面部57、57は側面部56、56の前縁からそれぞれ側方において互いに近づく方向に折り曲げられている。
【0073】
連結部58は第2の部分61の一方の側縁の一部から後方に折り曲げられ、第2の部分61から後方に突出され略左右方向を向く状態で位置されている。
【0074】
減光部59は連結部58の上縁の一部から側方に折り曲げられ、厚み方向が略上下方向にされ、稍前上がりの状態で傾斜されている。減光部59は前後に延びる形状に形成され後端部が連結部58に連続されている。
【0075】
減光部59はカットライン形成部63の後側に位置され、下面59aがカットライン形成部63の上端63bより上方に位置されている(
図9及び
図10参照)。減光部59は下面59aがカットライン形成部63の上端63bより上方に位置され、下面59aと上端63bの間には間隙Aが形成されている。また、減光部59はカットライン形成部63の後側に位置され、前端59bと上端63bの間には間隙Bが形成されている。尚、減光部59は下面59aの少なくとも一部がカットライン形成部63の上端63bより上方に位置されていてもよい。
【0076】
シェード52は被取付面部57、57がブラケット等の取付部材に取り付けられている。
【0077】
上記のように構成された車輌用前照灯51において、光源11から光が出射されると、出射された光はリフレクター10の反射面10aで投影レンズ8へ向けて反射され、投影レンズ8によって略平行光にされカバー3を透過され前方へ向けて照射される。このときリフレクター10の反射面10aで反射された光の一部がシェード52によって遮蔽され、配光パターンP2が形成される(
図11参照)。尚、
図11には、水平線Hと垂直線Vを示す。
【0078】
配光パターンP2は上縁がカットラインC2であり、カットラインC2がシェード52のカットライン形成部63によって形成される。このとき、光源11から出射された光の一部が減光部59によって制御(遮蔽)されることにより、配光パターンP2にはカットラインC2の近傍の位置に低輝度部D2が形成される(
図11に破線で示す部分)。
【0079】
低輝度部D2は配光パターンP2において他の部分より輝度の低い部分であり、配光パターンP2に低輝度部D2が形成されることにより先行車や対向車の搭乗者等に対する幻惑光(グレア光)の発生が抑制される。
【0080】
ところで、特許文献1に記載された車輌用前照灯において、配光パターンには他の部分より輝度の低い低輝度部が形成される場合があり、この場合にはシェードに設けられた減光部によって光源から出射された光が制御されて低輝度部が形成される。配光パターンに低輝度部が形成されることにより先行車や対向車の搭乗者等に対する幻惑光(グレア光)の発生が抑制される。
【0081】
特許文献1においては、カットラインを形成する前方延出部(123a)の後方に位置された後方延出部(123b)が低輝度部を形成する減光部として設けられ、後方延出部が背面壁(121a)の後面に密着された延出部(121a1)の上端部として設けられている(特許文献1の
図6参照)。
【0082】
ところが、特許文献1に記載されたような構成においては、配光パターンのカットラインを形成する前方延出部と配光パターンに低輝度部を形成する後方延出部とが正面視において前後で重なる状態にされている。従って、配光パターンにおいて本来減光が必要のない部分まで輝度が低下し、低輝度部として本来形成される部分の周囲の部分の輝度も低下してしまい、車輌の運転者における視認性の低下を来すおそれがある。
【0083】
そこで、以上に記載した通り、車輌用前照灯51にあっては、シェード52の所定の端縁が配光パターンP2のカットラインC2を形成するカットライン形成部63とされ、シェード52には配光パターンP2の一部に他の部分より輝度の低い低輝度部D2を形成する減光部59が設けられ、減光部59の下面59aがカットライン形成部63の上端63bより上方に位置されている。
【0084】
従って、減光部59が所定の間隙Aを挟んでカットライン形成部63の上方に位置されるため、配光パターンP2において低輝度部D2として形成される領域の周囲の部分の輝度が低下せず、配光パターンP2における必要な領域のみの輝度の低下により、幻惑光の発生を抑制した上で車輌の運転者における視認性の向上を図ることができる。
【0085】
具体的には、間隙を挟んで減光部がカットライン形成部の上方に位置されず正面視において減光部とカットライン形成部が前後で重なる従来の車輌用前照灯の場合には、
図11に示すように、一点鎖線で囲む部分Eの輝度が他の部分より低くなってしまい、配光パターンP2において本来減光が必要のない部分まで輝度が低下してしまう。従って、
図127に示すように、車輌100の路面に対する照射パターンQにおいて、斜線で示す光が照射されない領域Gが形成され、車輌100の運転者における視認性の低下を来してしまう。尚、
図12には、車輌100の進行方向である前方Fと左右方向LRとを示す。
【0086】
一方、間隙Aを挟んで減光部59がカットライン形成部63の上方に位置される車輌用前照灯51の場合には、
図11に示すように、点線で囲む低輝度部D2のみの輝度が他の部分より低くなり、配光パターンP2において本来減光が必要である部分のみの輝度が低下する。従って、
図12に示すように、低輝度部D2に対応するDaを除く実線で囲む部分が車輌100の路面に対する照射パターンQとして形成され、車輌100の運転者における視認性の向上が図られる。
【0087】
また、車輌用前照灯51においては、シェード52におけるカットライン形成部63を含む部分が平板状の機能面部53として設けられ、シェード52には一端が機能面部53に連続する連結部58が設けられ、連結部58の他端に減光部59が連続して設けられ、連結部58が機能面部53から突出する形状に形成されている。
【0088】
従って、カットライン形成部63を有する機能面部53に対する連結部58の突出量及び突出方向に応じて減光部59のカットライン形成部63に対する位置が定められるため、減光部59のカットライン形成部63に対する適正な位置の設定が容易であり、配光パターンP2の所定の範囲に必要な大きさの低輝度部D2を容易に形成することができる。
【0089】
さらに、減光部59が連結部58に対して折り曲げられることにより形成されている。
【0090】
従って、減光部59の連結部58に対する折曲角度に応じて減光部59のカットライン形成部63に対する向きが定められるため、減光部59のカットライン形成部63に対する適正な向きの設定が容易であり、配光パターンP2の所定の範囲に必要な大きさの低輝度部D2を容易に形成することができる。
【0091】
さらにまた、機能面部53が折り返された形状に形成され、機能面部53における折返部62の両側の部分がそれぞれ第1の部分60と第2の部分61として設けられ、第1の部分60と第2の部分61が厚み方向において接し、第1の部分60にカットライン形成部63が形成され、連結部58が第2の部分61から突出されている。
【0092】
従って、カットライン形成部63を有する第1の部分60と連結部58が突出された第2の部分61とが厚み方向において接する状態にされるため、連結部58のカットライン形成部63に対する位置精度が高くなり、連結部58に連続する減光部59のカットライン形成部63に対する高い位置精度を確保することができる。
【0093】
加えて、シェード52の全体が一体に形成され、特に、機能面部53と連結部58と減光部59が一体に形成されているため、機能面部53と連結部58と減光部59が一つの部材によって形成され、シェード52の部品点数の削減を図ることができる。
【符号の説明】
【0094】
1…車輌用前照灯、11…光源、12…シェード、13…ベース部材、14…板状部材、14a…減光部、15…ベース面部、16…機能面部、16a…反射面、19…カットライン形成部、P1…配光パターン、C2…カットライン、D1…低輝度部、51…車輌用前照灯、52…シェード、53…機能面部、58…連結部、59…減光部、59a…下面、60…第1の部分、61…第2の部分、62…折返部、63…カットライン形成部、63b…上端、P2…配光パターン、C2…カットライン、D2…低輝度部