(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】高比周波数逓倍クロック信号を生成するためのデジタルクロック回路
(51)【国際特許分類】
H03L 7/18 20060101AFI20240501BHJP
H03L 7/089 20060101ALI20240501BHJP
H03K 5/26 20060101ALI20240501BHJP
H03K 3/02 20060101ALI20240501BHJP
H03K 3/03 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H03L7/18
H03L7/089 110
H03K5/26 F
H03K3/02 S
H03K3/03
(21)【出願番号】P 2021567871
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 CN2019112164
(87)【国際公開番号】W WO2021077246
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】519385216
【氏名又は名称】北京京▲東▼方技▲術▼▲開▼▲発▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING BOE TECHNOLOGY DEVELOPMENT CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 407,Building 1,No.9 Dize Road,BDA,Beijing,100176,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】シャンイェ・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リミン・シュ
(72)【発明者】
【氏名】イミン・バイ
(72)【発明者】
【氏名】シン・リ
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0012414(US,A1)
【文献】米国特許第08664988(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第101272142(CN,A)
【文献】特開2007-235739(JP,A)
【文献】特表2010-524317(JP,A)
【文献】XIU LIMING, et al.,A full digital fractional-N TAF-FLL for digital applocations: demonstration of the principle of a frequency-locked loop built on time-average-frequency,IEEE TRANSACTIONS ON VERY LARGE SCALE INTEGRATION SYSTEMS,米国,IEEE,2019年01月04日,Vol 27, No.3,p.524-534
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K3/00-3/86
H03K5/00-5/26
H03L1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高比周波数逓倍クロック信号を生成するためのデジタルクロック回路であって、
周波数制御ワード
Fによって駆動されて複数の第1のパルスから合成された第1の周期信号の第1の出力周波数を制御するように構成された第1のデジタル制御発振器と、前記第1の出力周波数の1/Mに等しい周波数を有するトリガー信号を生成するように構成された第1の周波数分割器とを含む第1のサブ回路と、
フィードバックのループを含む第2のサブ回路であって、前記フィードバックのループは、入力周波数をフィードバック周波数と比較するように構成された周波数検出器と、前記周波数検出器の出力に基づいて前記周波数制御ワードFを調整するように構成されたコントローラと、前記周波数制御ワードF+定数Cによって駆動されて、前記トリガー信号によって誘起された複数の第2のパルスから合成された第2の周期信号の第2の出力周波数を制御するように構成された第2のデジタル制御発振器と、前記フィードバック周波数を前記フィードバックのループ内の前記第2の出力周波数の1/Nに等しく設定するように構成された第2の周波数分割器とを含む、第2のサブ回路と、を備え、
前記第1の出力周波数は、前記入力周波数よりも実質的に数桁高い、デジタルクロック回路。
【請求項2】
前記第1のサブ回路は、ノイズに基づいて振動を発生させ、等間隔位相シフトを有する第1の周波数を有する複数の第1のパルスを出力するように構成された自走発振器を更に含む、請求項1に記載のデジタルクロック回路。
【請求項3】
前記自走発振器は、前記第1の周波数の逆数で与えられる第1の周期の1/K
hの等間隔位相シフトを有するK
h個の第1のパルスを生成するために、K
h/2段にカスケード接続された多段のNANDゲート回路を含み、各段に一対のNANDゲートベースのフリップフロップ構造を有する、請求項2に記載のデジタルクロック回路。
【請求項4】
前記第1のデジタル制御発振器は、累算器を介して前記周波数制御ワードFの小数部分によって制御される累算レジスタに結合され、K
h個の第1のパルスを下位経路を介して入力して低レベルの前記第1の周期信号を生成する第1のK
h‐1マルチプレクサと、加算器を介して前記周波数制御ワードFの整数部分の半分によって制御される加算器レジスタに結合され、前記K
h個の第1のパルスを上位経路を介して入力して高レベルの前記第1の周期信号を生成する第2のK
h‐1マルチプレクサと、前記上位経路と前記下位経路との間の遷移を制御して、前記周波数制御ワードFを超える係数K
hで前記第1の周波数に比例する前記第1の出力周波数を有する前記第1の周期信号を出力するように構成された2‐1マルチプレクサ及びD型フリップフロップとを含む直接周期合成器を含む、請求項2に記載のデジタルクロック回路。
【請求項5】
前記第1の周波数分割器は、各段の入力における入力周波数の1/2に等しい各段の出力における出力周波数を生成し、前記第1の出力周波数の1/Mで最後のL番目の段の出力で前記トリガー信号を出力するように構成されたL段カスケード型高周波トグルフリップフロップを含み、M=2
Lである、請求項1に記載のデジタルクロック回路。
【請求項6】
前記第1のサブ回路は、前記トリガー信号によって駆動されて、等間隔位相シフトを有する第2の周波数の複数の第2のパルスを生成するトリガー発振器を更に含む、請求項1に記載のデジタルクロック回路。
【請求項7】
前記トリガー発振器は、前記第1の出力周波数の1/Mの逆数によって与えられる第2の周期の1/K
lの等間隔位相シフトを有するK
l個の第2のパルスを出力するように構成されたK
l/2段ジョンソンカウンタを含む、請求項6に記載のデジタルクロック回路。
【請求項8】
前記周波数検出器は、前記入力周波数を有する入力信号を受信する第1の入力ポートと、前記フィードバック周波数を有する前記フィードバックのループからフィードバック信号を受信する第2の入力ポートと、1/2周波数分割器を介して前記第1の入力ポートに結合され、かつ部分的にインバータを介して第2の入力ポートに結合され、前記入力周波数が前記フィードバック周波数よりも大きいか小さいかを判定するように構成された4つのD型フリップフロップを含むトリガーサブ回路と、前記トリガーサブ回路に結合された2つのXORゲート、2つのインバータ、及び2つのANDゲートを含み、前記入力周波数が前記フィードバック周波数よりも大きいと判定された場合に第1の時間フレーム内で第1の制御ポートに第1の制御信号を出力し、前記入力周波数が前記フィードバック周波数よりも小さいと判定された場合に第2の時間フレーム内で第2の制御ポートに第2の制御信号を出力する結合論理サブ回路とを含む、請求項1に記載のデジタルクロック回路。
【請求項9】
前記コントローラは、前記第1の制御信号に応答して、前記第1の時間フレーム内でフィードバックの各ループにおいて前記周波数制御ワードFを1だけ減少させ、前記第2の制御信号に応答して、前記第2の時間フレーム内でフィードバックの各ループにおいて前記周波数制御ワードFを1だけ増加させ、又は前記第1の制御信号及び前記第2の制御信号が受信されていないことに応答して、前記周波数制御ワードFを変更しないように構成される、請求項8に記載のデジタルクロック回路。
【請求項10】
前記第2のデジタル制御発振器は、累算器を介して前記周波数制御ワードFの小数部分によって制御される累算レジスタに結合され、K
l個の第2のパルスを下位経路を介して入力して低レベルの前記第2の周期信号を生成する第1のK
l‐1マルチプレクサと、加算器を介して前記周波数制御ワードFの整数部分の半分によって制御される加算器レジスタに結合され、前記K
l個の第2のパルスを上位経路を介して入力して高レベルの前記第2の周期信号を生成する第2のK
l‐1マルチプレクサと、前記上位経路と前記下位経路との間の遷移を制御して、前記周波数制御ワードFと前記定数
Cの合計を超える係数K
lで前記第2の周波数に比例する前記第2の出力周波数を有する前記第2の周期信号を出力する2‐1マルチプレクサ及びD型フリップフロップとを含む直接周期合成器を含む、請求項7に記載のデジタルクロック回路。
【請求項11】
前記第2の出力周波数は、前記周波数制御ワードFが前記フィードバックのループにおいて整数IとI+1との間で切り替えられる状態で時間平均周波数に設定される、請求項10に記載のデジタルクロック回路。
【請求項12】
前記フィードバックのループは、動的平衡にあり、前記フィードバック周波数を前記入力周波数にロックし、前記第1の出力周波数が、前記周波数制御ワードFと前記定数Cの合計にM・Nを乗算した逓倍係数で前記入力周波数に実質的に線形に依存するようにする、請求項11に記載のデジタルクロック回路。
【請求項13】
前記第1の出力周波数を有する前記第1の周期信号は、前記定数
Cを前記整数Iよりも実質的に大きい整数として選択することにより、精度が向上した高周波クロック信号として出力される、請求項12に記載のデジタルクロック回路。
【請求項14】
前記第2の周波数分割器は、NがMよりも小さくなるように設定された低周波プログラマブルカウンタであるように構成される、請求項12に記載のデジタルクロック回路。
【請求項15】
高比周波数逓倍クロック信号を生成するためのデジタルクロック発生器であって、
入力ポートから受信した入力周波数の入力信号を、フィードバックのループからのフィードバック周波数のフィードバック信号と比較して制御信号を生成するように構成された周波数検出器と、
前記周波数検出器に結合され、前記制御信号に基づいて前記フィードバックのループ内の周波数制御ワードFを調整するコントローラと、
前記コントローラ及び第1の振動発生器に結合され、等間隔位相シフトを有する第1の周波数の複数の第1のパルスを受信し、前記周波数制御ワードFによって制御される第1の出力周波数を有する出力ポートへの第1の合成信号を生成するように構成された第1のデジタル制御発振器と、
前記出力ポートに結合され、前記第1の出力周波数の1/Mを有するトリガー信号を生成する第1の周波数分割器と、
前記トリガー信号によって誘起されて、等間隔位相シフトを有する第2の周波数の複数の第2のパルスを生成する第2の振動発生器と、
前記コントローラ及び前記第2の振動発生器に結合され、前記周波数制御ワードF+定数Cによって制御される第2の出力周波数を有する前記フィードバックのループへの第2の合成信号を生成するように構成された第2のデジタル制御発振器と、
前記フィードバック周波数が前記第2の出力周波数の1/Nである前記フィードバック信号を生成する前記フィードバックのループ内の第2の周波数分割器と、を備え、
前記フィードバックのループは、前記第1の出力周波数がM・N・(F+C)で逓倍する前記入力周波数に実質的に線形に依存するように、前記フィードバック周波数を前記入力周波数にロックする、デジタルクロック発生器。
【請求項16】
FPGA又はASIC形式のいずれかでデジタル集積回路に実装された請求項1~14のいずれか一項に記載のデジタルクロック回路を含む、高比周波数逓倍クロック信号を生成するためのチップ。
【請求項17】
低周波数入力信号から高比周波数逓倍クロック信号を生成するための方法であって、
低周波入力信号をフィードバックのループ内のフィードバック信号と比較して、制御信号を生成するステップと、
前記制御信号に基づいて周波数制御ワード
Fを生成するステップと、
前記周波数制御ワードFの少なくとも最下位ビットを使用して、等間隔位相シフトを有する複数の第1の周期パルスに基づいて第1の出力周波数の第1の合成信号を生成するように第1のデジタル制御発振器を駆動するステップと、
前記第1の出力周波数をMで除算して前記第1の出力周波数の1/Mを有するトリガー信号を取得するステップと、
前記周波数制御ワードF+定数Cを使用して、前記トリガー信号によって誘起された等間隔位相シフトを有する複数の第2の周期パルスに基づいて第2の出力周波数の第2の合成信号を生成するように第2のデジタル制御発振器を駆動するステップと、
前記第2の出力周波数をNで除算して、前記フィードバックのループへの前記第2の出力周波数の1/Nを有するフィードバック周波数を取得するステップと、
M・N・(F+C)で逓倍する前記低周波入力信号の入力周波数に実質的に線形に依存する前記第1の出力周波数で前記第1の合成信号をクロック信号として出力するステップと、を含む、方法。
【請求項18】
デジタル自走発振器を使用して、任意の外部クロック信号なしにランダムノイズから第1の周波数の前記複数の第1の周期パルスを生成するステップを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ジョンソンカウンタを使用して、前記トリガー信号によって誘起された前記第1の出力周波数の1/Mに等しい第2の周波数の前記複数の第2の周期パルスを生成するステップを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記定数Cは、前記フィードバックのループが、前記周波数制御ワードFがIとI+1との間で切り替えられている状態で動的平衡に達するとき、前記周波数制御ワードFよりも実質的に大きくなるように選択される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ送信技術に関し、より具体的には、入力周波数に対して自走高比周波数逓倍を有するクロック信号を生成するためのデジタルクロック回路に関する。
【背景技術】
【0002】
クロック発生回路では、高周波クロック信号を生成するために、超高逓倍係数を有する位相ロックループ(PLL)をいかに形成するかが難しい課題である。PLL設計を有する従来のクロック回路では、周波数逓倍係数/分周係数は基本的に16/32/64/128に設定される。周波数逓倍係数を約1000に設定するための複雑なカスケードアルゴリズムに基づく設計はほとんどない。基本的には、周波数逓倍係数/分周係数が大きくなると、従来のクロック回路のPLLの出力のジッタがますます大きくなり、クロック信号の品質が急速に低下する。一般に、クロック信号のジッタはクロック周期の5%を超えることができず、これは、PLL設計を通じて超高周波数逓倍係数/分周係数を得るオプションを実質的に制限する。したがって、改善されたデジタルクロック回路が望まれている。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本開示は、高比周波数逓倍クロック信号を生成するためのデジタルクロック回路を提供する。デジタルクロック回路は、周波数制御ワードFによって駆動されて複数の第1のパルスから合成された第1の周期信号の第1の出力周波数を制御するように構成された第1のデジタル制御発振器を含む第1のサブ回路を含む。第1のサブ回路はまた、第1の出力周波数の1/Mに等しい周波数を有するトリガー信号を生成する第1の周波数分割器を含む。更に、デジタルクロック回路は、フィードバックのループを有する第2のサブ回路を含む。フィードバックのループは、入力周波数をフィードバック周波数と比較する周波数検出器と、周波数検出器の出力に基づいて周波数制御ワードFを調整するコントローラと、周波数制御ワードF+定数Cによって駆動されて、トリガー信号によって誘起された複数の第2のパルスから合成された第2の周期信号の第2の出力周波数を制御するように構成された第2のデジタル制御発振器とを含む。第2のサブ回路はまた、フィードバック周波数をフィードバックのループ内の第2の出力周波数の1/Nに等しく設定する第2の周波数分割器を含む。第1の出力周波数は、入力周波数よりも実質的に数桁の逓倍係数だけ高い。
【0004】
任意選択で、第1のサブ回路は、ノイズに基づいて振動を発生させ、等間隔位相シフトを有する第1の周波数を有する複数の第1のパルスを出力するように構成された自走発振器を更に含む。
【0005】
任意選択で、自走発振器は、第1の周波数の逆数で与えられる第1の周期の1/Khの等間隔位相シフトを有するKh個の第1のパルスを生成するために、Kh/2段にカスケード接続された多段のNANDゲート回路を含み、各段に一対のNANDゲートベースのフリップフロップ構造を有する。
【0006】
任意選択で、第1のデジタル制御発振器は、累算器を介して周波数制御ワードFの小数部分によって制御される累算レジスタに結合され、Kh個の第1のパルスを下位経路を介して入力して低レベルの第1の周期信号を生成する第1のKh‐1マルチプレクサと、加算器を介して周波数制御ワードFの整数部分の半分によって制御される加算器レジスタに結合され、Kh個の第1のパルスを上位経路を介して入力して高レベルの第1の周期信号を生成する第2のKh‐1マルチプレクサと、上位経路と下位経路との間の遷移を制御して、周波数制御ワードFを超える係数Khで第1の周波数に比例する第1の出力周波数を有する第1の周期信号を出力する2‐1マルチプレクサ及びD型フリップフロップとを含む直接周期合成器を含む。
【0007】
任意選択で、第1の周波数分割器は、各段の入力における入力周波数の1/2に等しい各段の出力における出力周波数を生成するように構成されたL段カスケード型高周波トグルフリップフロップを含む。L段カスケード型高周波トグルフリップフロップは、第1の出力周波数の1/Mで最後のL番目の段の出力でトリガー信号を出力し、M=2Lである。
【0008】
任意選択で、第1のサブ回路は、トリガー信号によって駆動されて、等間隔位相シフトを有する第2の周波数の複数の第2のパルスを生成するトリガー発振器を更に含む。
【0009】
任意選択で、トリガー発振器は、第1の出力周波数の1/Mの逆数によって与えられる第2の周期の1/Klの等間隔位相シフトを有するKl個の第2のパルスを出力するように構成されたKl/2段ジョンソンカウンタを含む。
【0010】
任意選択で、周波数検出器は、入力周波数を有する入力信号を受信する第1の入力ポートと、フィードバック周波数を有するフィードバックのループからフィードバック信号を受信する第2の入力ポートと、トリガーサブ回路と、結合論理サブ回路とを含む。トリガーサブ回路は、1/2周波数分割器を介して第1の入力ポートに結合され、かつ部分的にインバータを介して第2の入力ポートに結合され、入力周波数がフィードバック周波数よりも大きいか小さいかを判定するように構成された4つのD型フリップフロップを含む。結合論理サブ回路は、トリガーサブ回路に結合された2つのXORゲート、2つのインバータ、及び2つのANDゲートを含む。結合論理サブ回路は、入力周波数がフィードバック周波数よりも大きいと判定された場合に第1の時間フレーム内で第1の制御ポートに第1の制御信号を出力し、入力周波数がフィードバック周波数よりも小さいと判定された場合に第2の時間フレーム内で第2の制御ポートに第2の制御信号を出力するように構成される。
【0011】
任意選択で、コントローラは、第1の制御信号に応答して、第1の時間フレーム内でフィードバックの各ループにおいて周波数制御ワードFを1だけ減少させ、第2の制御信号に応答して、第2の時間フレーム内でフィードバックの各ループにおいて周波数制御ワードFを1だけ増加させ、又は第1の制御信号及び第2の制御信号が受信されていないことに応答して、周波数制御ワードFを変更しないように構成される。
【0012】
任意選択で、第2のデジタル制御発振器は、累算器を介して周波数制御ワードFの小数部分によって制御される累算レジスタに結合され、Kl個の第2のパルスを下位経路を介して入力して低レベルの第2の周期信号を生成する第1のKl‐1マルチプレクサを含む直接周期合成器を含む。第2のデジタル制御発振器はまた、加算器を介して周波数制御ワードFの整数部分の半分によって制御される加算器レジスタに結合され、Kl個の第2のパルスを上位経路を介して入力して高レベルの第2の周期信号を生成する第2のKl‐1マルチプレクサを含む。第2のデジタル制御発振器は、上位経路と下位経路との間の遷移を制御して、周波数制御ワードFと定数の合計を超える係数Klで第2の周波数に比例する第2の出力周波数を有する第2の周期信号を出力する2‐1マルチプレクサ及びD型フリップフロップを更に含む。
【0013】
任意選択で、第2の出力周波数は、周波数制御ワードFがフィードバックのループにおいて整数IとI+1との間で切り替えられる状態で時間平均周波数に設定される。
【0014】
任意選択で、フィードバックのループは、動的平衡にあり、フィードバック周波数を入力周波数にロックし、第1の出力周波数が、周波数制御ワードFと定数Cの合計にM・Nを乗算した逓倍係数で入力周波数に実質的に線形に依存するようにする。
【0015】
任意選択で、第1の出力周波数を有する第1の周期信号は、定数を整数Iよりも実質的に大きい整数として選択することにより、精度が向上した高周波クロック信号として出力される。
【0016】
任意選択で、第2の周波数分割器は、NがMよりも小さくなるように設定された低周波プログラマブルカウンタであるように構成される。
【0017】
別の態様では、本開示は、高比周波数逓倍クロック信号を生成するためのデジタルクロック発生器を提供する。デジタルクロック発生器は、入力ポートから受信した入力周波数の入力信号を、フィードバックのループからのフィードバック周波数のフィードバック信号と比較して制御信号を生成するように構成された周波数検出器を含む。デジタルクロック発生器は、周波数検出器に結合され、制御信号に基づいてフィードバックのループ内の周波数制御ワードFを調整するコントローラを更に含む。更に、デジタルクロック発生器は、コントローラ及び第1の振動発生器に結合され、等間隔位相シフトを有する第1の周波数の複数の第1のパルスを受信し、周波数制御ワードFによって制御される第1の出力周波数を有する出力ポートへの第1の合成信号を生成するように構成された第1のデジタル制御発振器を含む。デジタルクロック発生器は、出力ポートに結合され、第1の出力周波数の1/Mを有するトリガー信号を生成する第1の周波数分割器を更に含む。更に、デジタルクロック発生器は、トリガー信号によって誘起されて、等間隔位相シフトを有する第2の周波数の複数の第2のパルスを生成する第2の振動発生器を含む。デジタルクロック発生器は、コントローラ及び第2の振動発生器に結合され、周波数制御ワードF+定数Cによって制御される第2の出力周波数を有するフィードバックのループへの第2の合成信号を生成するように構成された第2のデジタル制御発振器を更に含む。更に、デジタルクロック発生器は、フィードバック周波数が第2の出力周波数の1/Nであるフィードバック信号を生成するフィードバックのループ内の第2の周波数分割器を含む。フィードバックのループは、第1の出力周波数がM・N・(F+C)で逓倍する入力周波数に実質的に線形に依存するように、フィードバック周波数を入力周波数にロックする。
【0018】
更に別の態様では、本開示は、本明細書に記載のデジタルクロック回路を含む、高比周波数逓倍クロック信号を生成するためのチップを提供する。チップは、FPGA又はASIC形式のいずれかでデジタル集積回路に実装される。
【0019】
更に別の態様では、本開示は、低周波数入力信号から高比周波数逓倍クロック信号を生成するための方法を提供する。この方法は、低周波入力信号をフィードバックのループ内のフィードバック信号と比較して、制御信号を生成するステップを含む。この方法は、制御信号に基づいて周波数制御ワードFを生成するステップを更に含む。更に、この方法は、周波数制御ワードFの少なくとも最下位ビットを使用して、等間隔位相シフトを有する複数の第1の周期パルスに基づいて第1の出力周波数の第1の合成信号を生成するように第1のデジタル制御発振器を駆動するステップを含む。この方法は、第1の出力周波数をMで除算して第1の出力周波数の1/Mを有するトリガー信号を取得するステップを更に含む。更に、この方法は、周波数制御ワードF+定数Cを使用して、トリガー信号によって誘起された等間隔位相シフトを有する複数の第2の周期パルスに基づいて第2の出力周波数の第2の合成信号を生成するように第2のデジタル制御発振器を駆動するステップを含む。この方法は、第2の出力周波数をNで除算して、フィードバックのループへの第2の出力周波数の1/Nを有するフィードバック周波数を取得するステップを更に含む。更に、この方法は、M・N・(F+C)で逓倍する低周波入力信号の入力周波数に実質的に線形に依存する第1の出力周波数で第1の合成信号をクロック信号として出力するステップを含む。
【0020】
任意選択で、この方法はまた、デジタル自走発振器を使用して、任意の外部クロック信号なしにランダムノイズから第1の周波数の複数の第1の周期パルスを生成するステップを含む。
【0021】
任意選択で、この方法はまた、ジョンソンカウンタを使用して、トリガー信号によって誘起された第1の出力周波数の1/Mに等しい第2の周波数の複数の第2の周期パルスを生成するステップを含む。
【0022】
任意選択で、定数Cは、フィードバックのループが、周波数制御ワードFがIとI+1との間で切り替えられている状態で動的平衡に達するとき、周波数制御ワードFよりも実質的に大きくなるように選択される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下の図面は、開示された様々な実施形態による例示の目的のための単なる例であり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【
図1】本開示の一部の実施形態による、高比周波数逓倍クロック信号を生成するためのデジタルクロック回路のブロック図である。
【
図2】本開示の一実施形態による、自走式多段カスケード型NANDゲート発振器の回路図である。
【
図3】本開示の一実施形態による、デジタル制御発振器にロードされる基本時間単位Δの等間隔位相を有するK個の入力パルスを示す概略図である。
【
図4】本開示の一実施形態による、時間平均周波数直接周期合成のための論理回路の機能図である。
【
図5】本開示の一実施形態による、分周係数Mを有する高周波周波数分割器の回路図である。
【
図6】本開示の一実施形態によるK
l/2段ジョンソンカウンタの回路図である。
【
図7】本開示の一実施形態による周波数検出器の論理回路の概略図である。
【
図8】本開示の一実施形態による、入力/出力周波数と周波数制御ワードとの間の関係を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、以下の実施形態を参照して、本開示をより具体的に説明する。一部の実施形態の以下の説明は、例示及び説明のみを目的として本明細書に提示されることに留意されたい。網羅的であること、又は開示された正確な形態に限定されることを意図するものではない。
【0025】
位相ロックループ(PLL)設計に基づく従来のクロック回路は、クロック信号における大きなジッタのために、その周波数逓倍係数/分周係数を約1000以下に設定することに限界がある。ほとんどのクロック回路は、入力クロック信号を提供するために水晶発振器などに依存しており、それは、高比周波数逓倍クロック信号を生成するために高い消費電力と大きなチップ面積を必要とし、チップに統合するのが難しい。
【0026】
したがって、本開示は、とりわけ、従来技術の制限及び欠点に起因する1つ以上の問題を実質的に排除する、高比周波数逓倍クロック信号を生成するためのデジタルクロック回路、それを有するICチップ、及びその方法を提供する。
【0027】
一態様では、本開示は、高比周波数逓倍クロック信号を生成するための自走発振に基づくデジタルクロック回路を提供する。
図1は、本開示の一部の実施形態による、高比周波数逓倍クロック信号を生成するためのデジタルクロック回路のブロック図を示す。
図1を参照すると、デジタルクロック回路は主に2つの部分で構成されている。第1のサブ回路10は、第1のデジタル制御発振器100を含む。第1のデジタル制御発振器100は、自走振動発生器からの振動信号に基づいて高周波クロック信号を生成及び出力するように構成され、第1のサブ回路10は、M分割周波数信号を第2のサブ回路20に供給するように構成される。第2のサブ回路20は、低周波入力信号を受信し、フィードバックのループを使用して周波数制御ワードFを決定して、第2のデジタル制御発振器200を制御して、M分割周波数信号に基づいて合成クロック信号を取得させ、N分割周波数信号をFLLループ内のフィードバック信号として供給させるように構成された時間平均周波数周波数ロックループ(FLL)を含む。周波数制御ワードFはまた、第1のサブ回路10内の第1のデジタル制御発振器を制御するために使用される。
【0028】
図1を参照すると、特に、第1のサブ回路10は、自走発振周波数を生成する自走発振器50を含む。第1のサブ回路10はまた、制御信号を受信する制御ポート101と、複数の入力パルスを受信する複数の入力ポート102と、第1の出力信号を出力する出力ポート103とを有し、高周波直接周期合成器であるように構成された第1のデジタル制御発振器100を含む。
【0029】
一実施形態では、自走発振器50は、カスケード型NANDゲートユニットに基づく論理回路を使用して、電圧パルス源又は水晶発振器を使用せずに自走発振周波数の生成を実現する。
図2は、本開示の一実施形態による、自走式多段カスケード型NANDゲート発振器の回路図を示す。
図2を参照すると、回路は、一例として、8段のNANDゲートユニット(P0、P1…P15)をクロスカスケードすることによって構築される。各段は、一対のNANDゲートユニットを含む。発振回路全体は、すべてのノイズに基づいて振動を発生させ、フィルタとして機能して、最終的な平衡状態においてすべての振動を固定周波数値で徐々に安定化させるように構成される。更に、(
図2のすべての16ユニットのうちの)各NANDゲートユニットは、同じ発振周波数を有するが、(これらのパルスの)周期の1/16に等しいシフトされた位相を有する1つの周期パルスを出力するように構成される。
【0030】
自走発振器50内のK/2段カスケード構造の任意の2つの最も隣接するNANDゲートユニットについて位相シフトがΔであると仮定すると、
図3の例示的な図に示されるように、第1の周波数f
1を有するK個のパルスが生成される。第1の周波数f
1は主に、自走発振器50内のNANDゲートユニットの製造プロセスに依存する。任意選択で、第1の周波数f
1は、1MHzまでの範囲の超高周波数として提供される。特に、各NANDゲートユニットは1つの位相遅延Δを導入する。
図1を参照すると、一例では、K=K
h、Δ=Δ
hであり、自走発振器50は、等間隔位相シフトΔ
hを有する第1の周波数f
1のK
h個の第1のパルスを生成する。これらのK
h個の第1のパルスは、第1のデジタル制御発振器100の入力ポート102に供給される。
【0031】
再び
図1を参照すると、一実施形態では、第1のデジタル制御発振器100は、制御ポート101から受信した周波数制御ワードF
hである制御信号を使用して、自走発振器50から入力ポート102を介して受信したK
h個の第1のパルスの入力に基づいて、出力ポート103に出力される合成周期信号の第1の出力周波数を制御するように構成された時間平均周波数直接周期合成器として提供される。
図4は、時間平均周波数直接周期合成器の論理回路の機能図を示す。K
h個の第1のパルスは、超高周波数である第1の周波数f
1において等間隔位相シフトΔ
hを有する自走発振器50によって生成される。
【0032】
等間隔位相シフトΔhと、Iが整数、rが0<r<1の分数である周波数制御ワードFh=I+rとを有するKh個の第1のパルスから開始して、第1のデジタル制御発振器100に関連付けられた時間平均周波数直接周期合成器は、それぞれの2つの時間フレーム内で2つのタイプのサイクルTA=I・Δh及びTB=(I+1)・Δhを生成する。次に、それは、TAとTBをインターリーブ方式で使用して出力パルス列を生成する。TA(ひいてはTB)が発生する可能性は、rの値によって制御される。出力周波数fTAF/周期TTAFは1/fTAF=TTAF=Fh・Δhによって計算することができる。十分なリソース(rで使用されるビット数)があれば、ほとんどすべての周波数を生成することができる。更に、個々の第1のパルスが直接構築されるため、出力信号の波形を瞬時に変化させることができる。
【0033】
K
h個の第1のパルスは、それぞれ2つのK‐1マルチプレクサに入力される。ここで(
図4)、K=K
hである。図の下半分にある第1のK‐1マルチプレクサ(MUX_A)は、累算器を介して周波数制御ワードF
hによって制御される2パイプラインレジスタに結合され、K
h個の第1のパルスが下位経路を通過して第1の出力MUXOUT_Aとなることを可能にする。ここで(
図4)、F=F
hである。
【0034】
遷移時間t6で、下位経路に関連付けられた累算器は、クロックの立ち上がりエッジごとに累積計算を実行して、周波数制御ワードFhが、整数部分Iを超える小数部分rを含む実数であることを処理する。下位経路のK‐1マルチプレクサは、低電圧レベルで出力CLK1の論理「0」の長さを支配する。第1の遷移時間t1で、SEL_LOWはCLK2の立ち上がりエッジで第1(又は下位)のK‐1マルチプレクサMUX_Aに供給される。したがって、それは、Kh個の第1のパルスのうちの1つのパルスを第1の出力MUXOUT_Aとして選択する。
【0035】
第2のK‐1マルチプレクサ(MUX_B)は、加算器を介して半周波数制御ワードFh/2によって制御される2パイプラインレジスタに結合され、Kh個の第1のパルスを上位経路を介して入力して高レベルの第2の出力MUXOUT_Bを生成する。上位経路のみに関連付けられた加算器は、周波数制御ワードFhの整数部分Iによって駆動される。上位経路にあるK‐1マルチプレクサMUX_Bは、高電圧レベルで出力CLK1の論理「1」の長さを支配する。
【0036】
更に、
図3を参照すると、CLK1によって制御される2‐1マルチプレクサMUX_Cは、上位経路及び下位経路の遷移を制御する。これで、上位経路又は下位経路のいずれかから1つの信号のみが、D型フリップフロップ及び2つのインバータを含むトグルフリップフロップ回路に到達し、クロックの立ち上がりエッジごとに出力MUXOUTを「1」から「0」に、又は「0」から「1」に切り替える。
【0037】
第2の遷移時間t2で、選択された信号は第1のK‐1マルチプレクサMUX_Aを通過し、2‐1マルチプレクサMUX_Cに供給される。
【0038】
t2と同時に発生する第3の遷移時間t3で、CLK2が立ち上がりエッジの後に論理「1」の状態にあるとき、CLK1は論理「0」の状態にある。したがって、2‐1マルチプレクサMUX_Cは、トグルフリップフロップに送信されるMUXOUTとして、上位経路から第2の出力MUXOUT_Bを選択する。
【0039】
第4の遷移時間t4で、第2の出力MUXOUT_Bの立ち上がりエッジはトグルフリップフロップに到達し、0から1への遷移が終了する。
【0040】
第5の遷移時間t5で、CLK1は1に遷移する。したがって、2‐1マルチプレクサMUX_Cは、下位経路の第1の出力MUXOUT_Aを選択してトグルフリップフロップに送信する。プロセス全体が繰り返される。
【0041】
したがって、周波数制御ワードFhは、第1のデジタル制御発振器100によって使用され、出力ポート103において、第1の出力周波数fh=Kh・f1/Fh=1/(Fh・Δh)を有する第1の周期信号として、Kh個の第1のパルスから1つのパルスを選択する。
【0042】
図1に戻ると、第1のサブ回路10はまた、出力ポート103に結合されて第1の出力周波数f
hを有する第1の周期信号を受信する第1の周波数分割器120を含む。一実施形態では、第1の周波数分割器は、分周係数Mを有する分割器であり、Mは整数である。任意選択で、第1の周波数分割器120は高周波分割器であり、L段カスケード型トグルフリップフロップ回路を使用して周波数を段ごとにデジタル的に分割するように構成される。このタイプの周波数分割器は、1MHzの高周波範囲で動作する場合でも、非常に低いノイズを導入する。
図5は、直列にカスケード接続されたL段トグルフリップフロップ(TFF)回路の概略図を示す。各TFF段は入力ポート及び出力ポートを有する。第1のTFF段は、第1のデジタル制御発振器100の出力ポート103から第1の出力周波数f
hを受信する入力を有する。信号がそれぞれの1段を通過するとき、その出力ポートにおける周波数はその入力ポートにおける周波数の半分に低減される。最後の(L番目の)TFF段は、元の入力周波数の1/M=1/2
L、すなわちf
h/Mを有するM分割信号を最終的に出力する出力ポートを有する。
【0043】
任意選択で、M分割信号は、追加の発振パルスを誘起するためのトリガー信号として機能する。一実施形態では、
図1を更に参照すると、第1のサブ回路10は、トリガー信号によって駆動されて、等間隔位相シフトを有する第2の周波数の複数の第2のパルスを生成するトリガー発振器150を更に含む。
図6は、本開示の一実施形態による、K
l/2段ジョンソンカウンタとして構成されたトリガー発振器の一例を示す。K
l/2段ジョンソンカウンタは、直列にカスケード接続されたK
l/2段D型フリップフロップを含み、各フリップフロップ段は、トリガー信号を受信するクロック入力ポートと、パルスP
iを出力するQ出力ポートと、別のパルスP
Kl/2+iを出力するQn出力ポートとをそれぞれ有する。K
l/2段ジョンソンカウンタの場合、すべてのQ出力ポートはK
l/2個のパルスP
1、P
2、P
3をP
Kl/2まで順次出力し、すべてのQn出力ポートは、K
l/2個のパルスP
Kl/2+1、P
Kl/2+2、P
Kl/2+3をP
Klまで順次出力する。機能的には、トリガー発振器150は、自走発振器50と実質的に同様であり、ただし、トリガー発振器150は、等間隔位相シフトΔ
lを有する第2の周波数f
2のK
l個の第2のパルスを生成するために、クロック入力ポートに入力されたトリガー信号を必要とし、ここでK
l・f
2=1/Δ
lである。一実施形態では、K
l・f
2=f
h/Mであり、これらのK
l個の第2のパルスは、フィードバックの周波数ロックループとして構成された第2のサブ回路20内の第2のデジタル制御発振器200にロードされる準備ができている。
【0044】
再び
図1を参照すると、第2のサブ回路20は、入力周波数f
iを有する入力信号を受信する第1の入力ポートと、フィードバック周波数f
bを有するフィードバック信号を受信する第2の入力ポートとを有する周波数検出器(FD)210を含む。周波数検出器(FD)210は、フィードバックのFLLループ内の第1の要素として機能し、入力周波数をフィードバック周波数と比較して、入力周波数f
iとフィードバック周波数f
bの比較結果に基づいて制御信号を出力するように構成される。
【0045】
一実施形態では、周波数検出器210は、入力周波数f
iをフィードバック周波数f
bと比較して、第1の制御信号fast及び第2の制御信号slowを交互に生成して、フィードバックのFLLループ内の周波数制御ワードFを決定するように構成される。
図7は、本開示の一実施形態による周波数検出器の論理回路の概略図を示す。
図7を参照すると、周波数検出器210は、
図1のf
iの入力信号であり得るf1の第1の信号を受信する第1の入力ポートと、
図1のf
bのフィードバック信号であり得るf2の第2の信号を受信する第2の入力ポートとを含む。更に、周波数検出器210は、第1の入力ポート及び第2の入力ポートに結合され、第1の周波数f1と第2の周波数f2との間の関係を検出するように構成されたトリガーサブ回路2101を含む。周波数検出器210は、トリガーサブ回路2101に結合され、第1の時間フレーム内で第1の制御ポートへの第1の制御信号fastを生成し、第2の時間フレーム内で第2の制御ポートへの第2の制御信号slowを生成する結合論理サブ回路2102を更に含む。第1の時間フレームと第2の時間フレームは次々に交互に現れる。
【0046】
一実施形態では、トリガーサブ回路2101は、周波数分割器を介して第1の入力ポートに結合され、かつ部分的にインバータを介して第2の入力ポートに結合された4つのD型フリップフロップを含む。トリガーサブ回路2101は、第1の周波数f1が第2の周波数f2よりも大きいか小さいかを判定するように構成される。結合論理サブ回路2102は、2つのXORゲート、2つのインバータ、及び2つのANDゲートを含み、第1の周波数f1が第2の周波数f2よりも大きいという判定に基づいて第1の時間フレーム内で第1の制御ポートに第1の制御信号fastを出力するか、又は第1の周波数f1が第2の周波数f2よりも小さいという判定に基づいて第2の時間フレーム内で第2の制御ポートに第2の制御信号slowを出力するように構成される。
【0047】
更に、第2のサブ回路20は、周波数検出器210に結合されて第1 /第2の制御信号を受信するコントローラ220を含む。本実施形態では、第1の制御信号fastは、コントローラ220を駆動して周波数制御ワードFを1だけ減少させ、第2の制御信号slowはコントローラ220を駆動して各ループ動作において周波数制御ワードFを1だけ増加させる。周波数検出器210から制御信号が受信されない場合、コントローラ220は、周波数制御ワードFを変更せずに維持するように構成される。最終的に、第1の制御信号fastと第2の制御信号slowが交互に生成され、周波数制御ワードFがIとI+1との間で切り替えられるとき、フィードバックのループ全体は動的平衡に達することができる。この平衡状態では、第2の周波数f2は実質的に第1の周波数f1にロックされている。入力周波数が変化すると、即ち、ロッキングターゲットが変更されると、周波数検出器210は、周波数制御ワードFを決定するように動作し、それは、デジタルクロック回路の第2のサブ回路20に関連するフィードバックのループにおける周波数ロッキングを達成するために使用され、また、第1のデジタル制御発振器を駆動するために使用される。
【0048】
更に、
図1を参照すると、第2のサブ回路20は、コントローラ220に結合されて、周波数制御ワードF
lを受信して、第1のサブ回路10のトリガー発振器150から受信した等間隔位相シフトΔ
lを有する第2の周波数f
2のK
l個の第2のパルスからパルス選択を駆動する第2のデジタル制御発振器200を含む。第2のデジタル制御発振器200は、第1のデジタル制御発振器100と実質的に同様の時間平均周波数直接周期合成器としても構成される。これは、
図4及び上記の関連する段落の説明に示されている。違いは、第2の周波数f
2が第1のデジタル制御発振器100の第1の出力周波数f
hの1/Mであるため、第2のデジタル制御発振器200が比較的低い周波数で動作していることである。ここで、Mは大きな整数として選択される。例えば、M=256である。また、K
lはK
hとは異なり、Δ
lはΔ
hとは異なる。別の違いは、第2のデジタル制御発振器200の周波数制御ワードF
lが、周波数制御ワードF(コントローラ220によって決定される)+定数C、すなわちF
l=F+Cとなるように選択できることである。ここで、Cは大きな整数、例えばC=117として選択される。第2のデジタル制御発振器200は、(フィードバックのループにおける)時間平均周波数直接周期合成に基づいて、実質的にf
l=K
l・f
2/F
lで表される第2の出力周波数f
lを有する第2の周期信号を生成及び出力するように構成される。
【0049】
更に、第2のサブ回路20は、第2のデジタル制御発振器200に結合されて第2の出力周波数f
lの第2の周期信号を受信し、それを1/Nに分割する第2の周波数分割器230を含み、ここで、Nは分周係数である。第2の周波数分割器230は、第1の周波数分割器120と実質的に同様であるように構成される。任意選択で、それは、分周係数Nを生成するために、多段デジタルカウンタ又は複数の遅延線で実装することができる。第2のサブ回路20の時間平均周波数周波数ロックループが周波数をより高速にロックするようにするために、分周係数Nは、整数M(第1の周波数分割器の分周係数)よりも小さい整数となるように選択される。例えば、M=256、N=64である。第2の周波数分割器230の出力は、フィードバック周波数f
b=f
l/Nとして周波数検出器210に直接フィードバックされる(
図1を参照)。
【0050】
制御ワードFl=F+Cによって制御される第2のデジタル制御発振器200に関連付けられた時間平均周波数直接周期合成器を通るフィードバックのループが動的平衡に達すると、フィードバック周波数fbは、入力周波数fiと実質的にロックされる。fb=fl/N、fl=fh/(M・Fl)であるため、第1の出力周波数fhと入力周波数fiとの関係が得られる。
【0051】
fh=M・N・Fl・fi=R・fi
Rは、入力周波数に対する出力周波数の逓倍率であり、分周係数M、分周係数N、及びFlの3つの乗数の積からなる。特に、M>Nであり、第2のデジタル制御発振器200の周波数制御ワードFlは、コントローラ220によって生成された制御ワードF+大きな定数Cによって与えられる。例えば、M=256、N=64、Fl=128であり、逓倍率Rは2097152に等しい。言い換えると、本開示のデジタルクロック回路は、50Hzの低周波の入力パルスを104.8576MHzの超高周波のクロック信号に変えることができる。
【0052】
本開示の別の実施形態では、
図1を参照すると、コントローラ220は、第1のサブ回路10内の第1のデジタル制御発振器100と第2のサブ回路20内の第2のデジタル制御発振器200の両方に周波数制御ワードFを供給するように構成される。言い換えると、第1のデジタル制御発振器100に供給される周波数制御ワードF
hと第2のデジタル制御発振器200に供給される周波数制御ワードF
lの両方は、コントローラ220によって生成された周波数制御ワードFから引き出すことができる。任意選択で、F
h=F、F
l=F+Cであり、ここでCはFよりも実質的に大きい整数である。任意選択で、F
hはF
lの最下位ビットであるように選択される。例えば、F
lは8ビットの制御ワード1xxx‐1101である。F
hは4ビットの制御ワード1101である。F
lはF
h+127として表すことができる。
【0053】
一実施形態では、周波数制御ワードF+実質的により大きな定数(注:原文中の「contact」は「 constant」の間違いであるため、「constant」に従って翻訳しました)Cを使用して第2のサブ回路内の第2のデジタル制御発振器200を駆動するフィードバックの時間平均周波数ロックループ(FLL)は、クロック信号の精度を高めるように設計されている。フィードバックのFLLループにおいて、第2の出力周波数flは、動的平衡での周波数制御ワードFにそれぞれ関連する2つのサイクル周波数fl1とfl2の間の時間平均周波数、すなわちfl=(1-r)・fl1+r・fl2によって決定され、ここで、rは、fl1及びfl2の重みである。公称値Fの場合、fl1とfl2は非常に異なる。例えば、fl1=3000、fl2=3600である。F+C、例えばF=11、C=96、がフィードバックのループ内の第2のデジタル制御発振器200を駆動するために使用される実施形態では、fl1とfl2は、互いにより類似するようになる。例えば、fl1=3200、fl2=3400である。この場合、時間平均周波数flの誤差は小さくなる。(第1の)出力周波数fhの精度は、フィードバックのループにおける(第2の)出力周波数flの精度に依存する。したがって、周波数fhを有する出力クロック信号の精度を向上させることができる。
【0054】
図8は、本開示の一実施形態による、入力/出力周波数と周波数制御ワードとの間の関係を示すプロットを示す。
図8を参照すると、それは、入力周波数及び出力周波数と周波数制御ワードF(固定分周係数M及びNを有する)との間の関係が単調な関係であることを示す。周波数制御ワードFの値が大きい場合、その関係は実質的に線形である。したがって、入力周波数に対して高比逓倍周波数を有する出力信号は、高周波クロック信号として使用することができる。特定の実験では、50Hzの周波数の入力信号が回路基板上のFPGAチップに実装されたクロック回路にロードし、Keysight 53230A周波数計によって測定したところ、得られた出力周波数は124.148MHzであり、逓倍率Rは2482968である。一般に、分周係数M、N、及びデジタルクロック回路を設計するための周波数制御ワードF+定数Cの選択に応じて、本開示のデジタルクロック回路の逓倍率Rは、少なくとも2000より大きい、又は10000より大きい、又は50000より大きい、又は100000より大きい、又は500000より大きい、又は1000000より大きい、又は2000000より大きい。
【0055】
特定の実施形態では、本開示は、高比周波数逓倍クロック信号を生成するためのデジタルクロック発生器を提供する。デジタルクロック発生器は、入力ポートから受信した入力周波数の入力信号を、フィードバックのループからのフィードバック周波数のフィードバック信号と比較して制御信号を生成するように構成された周波数検出器を含む。デジタルクロック発生器は、周波数検出器に結合され、制御信号に基づいてフィードバックのループ内の周波数制御ワードFを調整するコントローラを更に含む。更に、デジタルクロック発生器は、コントローラ及び第1の振動発生器に結合され、等間隔位相シフトを有する第1の周波数の複数の第1のパルスを受信し、周波数制御ワードFによって制御される第1の出力周波数を有する出力ポートへの第1の合成信号を生成するように構成された第1のデジタル制御発振器を含む。デジタルクロック発生器は、出力ポートに結合され、第1の出力周波数の1/Mを有するトリガー信号を生成する第1の周波数分割器を更に含む。更に、デジタルクロック発生器は、トリガー信号によって誘起されて等間隔位相シフトを有する第2の周波数の複数の第2のパルスを生成する第2の振動発生器を含む。デジタルクロック発生器は、コントローラ及び第2の振動発生器に結合され、周波数制御ワードF+定数Cによって制御される第2の出力周波数を有するフィードバックのループへの第2の合成信号を生成するように構成された第2のデジタル制御発振器を更に含む。更に、デジタルクロック発生器は、フィードバック周波数が第2の出力周波数の1/Nであるフィードバック信号を生成するフィードバックのループ内の第2の周波数分割器を含む。フィードバックのループは、第1の出力周波数がM・N・(F+C)で逓倍する入力周波数に実質的に線形に依存するように、フィードバック周波数を入力周波数にロックする。第1の合成信号は入力周波数に対して高比逓倍クロック周波数を有するクロック信号として出力される。
【0056】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載のデジタルクロック回路を含む、高比周波数逓倍クロック信号を生成するためのチップを提供する。デジタルクロック回路は、高比逓倍クロック周波数を達成するために、高効率及び自走振動発生構造を有する純粋なデジタル回路設計に基づいている。チップは、様々な電子応用のためにFPGA又はASICデジタル集積回路に実装することができる。
【0057】
更に別の態様では、本開示は、低周波数入力信号から高比周波数逓倍クロック信号を生成するための方法を提供する。この方法は、低周波入力信号をフィードバックのループ内のフィードバック信号と比較して、制御信号を生成するステップを含む。この方法は、制御信号に基づいて周波数制御ワードを生成するステップを更に含む。更に、この方法は、周波数制御ワードFの少なくとも最下位ビットを使用して、等間隔位相シフトを有する複数の第1の周期パルスに基づいて第1の出力周波数の第1の合成信号を生成するように第1のデジタル制御発振器を駆動するステップを含む。この方法は、第1の出力周波数をMで除算して第1の出力周波数の1/Mを有するトリガー信号を取得するステップを更に含む。更に、この方法は、周波数制御ワードF+定数Cを使用して、トリガー信号によって誘起された等間隔位相シフトを有する複数の第2の周期パルスに基づいて第2の出力周波数の第2の合成信号を生成するように第2のデジタル制御発振器を駆動するステップを含む。この方法は、第2の出力周波数をNで除算して、フィードバックのループ内の第2の出力周波数の1/Nを有するフィードバック周波数を取得するステップを更に含む。更に、この方法は、M・N・(F+C)で逓倍する低周波入力信号の入力周波数に実質的に線形に依存する第1の出力周波数で第1の合成信号をクロック信号として出力するステップを含む。
【0058】
更に本実施形態では、この方法はまた、デジタル自走発振器を使用して、任意の外部クロック信号なしにランダムノイズから第1の周波数の複数の第1の周期パルスを生成するステップを含む。
【0059】
更に本実施形態では、この方法はまた、ジョンソンカウンタを使用して、トリガー信号によって誘起された第1の出力周波数の1/Mに等しい第2の周波数の複数の第2の周期パルスを生成するステップを含む。
【0060】
更に、方法を実行する実施形態では、定数Cは、フィードバックのループが、周波数制御ワードFがIとI+1との間で切り替えられている状態で動的平衡に達するとき、周波数制御ワードFよりも実質的に大きくなるように選択される。
【0061】
本発明の実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されてきた。網羅的であること、又は本発明を正確な形態若しくは開示された例示的な実施形態に限定することを意図するものではない。したがって、前述の説明は、限定的ではなく例示的であると見なされるべきである。明らかに、多くの修正及び変形は当業者には明らかであろう。実施形態は、本発明の原理及びその最良の形態の実際の適用を説明するために選択及び記載され、それによって、当業者が、企図される特定の使用又は実装に適した様々な修正を加えて様々な実施形態について本発明を理解できるようにする。本発明の範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲及びそれらの同等物によって定義されることが意図され、すべての用語は、特に明記されていない限り、それらの最も広い合理的な意味で意味される。したがって、「発明」、「本発明」などの用語は、必ずしも特許請求の範囲を特定の実施形態に限定するものではなく、本発明の例示的な実施形態への言及は、本発明に対する限定を意味するものではなく、そのような限定は推論されるべきではない。本発明は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲によってのみ限定される。更に、これらの特許請求の範囲は、名詞又は要素に続く「第1」、「第2」などを使用することに言及することができる。そのような用語は、命名法として理解されるべきであり、特定の数が与えられていない限り、そのような命名法によって修飾される要素の数に制限を与えると解釈されるべきではない。記載されているいかなる利点及び利益も、本発明のすべての実施形態に当てはまるとは限らない。以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって記載された実施形態に変更を加えることができることを理解されたい。更に、本開示の要素及び構成要素は、その要素又は構成要素が以下の特許請求の範囲において明示的に記載されているか否かにかかわらず、公衆に提供されることを意図するものではない。
【符号の説明】
【0062】
10 第1のサブ回路
20 第2のサブ回路
50 自走発振器
100 第1のデジタル制御発振器
101 制御ポート
102 入力ポート
103 出力ポート
120 第1の周波数分割器
150 トリガー発振器
200 第2のデジタル制御発振器
210 周波数検出器
220 コントローラ
230 第2の周波数分割器
2101 トリガーサブ回路
2102 結合論理サブ回路