(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】セルロース樹脂組成物を収容するため容器及びこれとセルロース樹脂組成物とを有する包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20240501BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B65D65/40 D
C08J5/04 CES
C08J5/04 CEY
C08J5/04 CEZ
C08J5/04 CFD
C08J5/04 CFG
(21)【出願番号】P 2022189857
(22)【出願日】2022-11-29
(62)【分割の表示】P 2020546186の分割
【原出願日】2020-05-21
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019095464
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】上野 功一
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-183845(JP,U)
【文献】国際公開第2015/002074(WO,A1)
【文献】特開2005-060855(JP,A)
【文献】特開平08-119292(JP,A)
【文献】特開2010-229564(JP,A)
【文献】特開2000-143946(JP,A)
【文献】特開2003-095246(JP,A)
【文献】特許第3907650(JP,B2)
【文献】国際公開第2020/235653(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/00-33/38
B65D 65/40
B65D 81/24-81/30
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース樹脂組成物の保管時の変色を抑制するための容器と、前記容器内に収容された、熱可塑性樹脂及びセルロースを含むセルロース樹脂組成物とを有する、包装体であって、
前記セルロースが、セルロースナノファイバーであり、
前記容器が、リグニン含有率10質量%以上の高リグニン部材と、リグニン含有率1質量%以下の低リグニン部材とを含み、
前記容器の前記セルロース樹脂組成物との接触面の全部が前記低リグニン部材で構成されている、包装体。
【請求項2】
前記セルロースのリグニン含有率が20質量%以下である、請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記高リグニン部材のリグニン含有率(Lo)、前記低リグニン部材のリグニン含有率(Li)、及び前記セルロースのリグニン含有率(Lc)が、下記式:
Lo>Lc≧Li
の関係を満たす、請求項2に記載の包装体。
【請求項4】
前記低リグニン部材の、JIS Z0208:1976に記載の方法で測定される水蒸気透過度が50g/m
2・24h以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項5】
前記高リグニン部材で構成された外体と、前記低リグニン部材で構成された内体とを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項6】
前記外体が、箱体又は袋体であり、
前記内体が、前記外体に固定されており又は固定されていないシート体である、請求項5に記載の包装体。
【請求項7】
前記高リグニン部材(但し、顔料含有部及び印刷部を除く。)の黄色度(YI)値が20以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項8】
前記高リグニン部材が、未晒パルプ及び/又は古紙から得られた紙材である、請求項1~7のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項9】
前記セルロース樹脂組成物がペレット形状である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項10】
前記容器内に、0.01kg~550kgの前記セルロース樹脂組成物が収容されている、請求項1~
9のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項11】
前記セルロース樹脂組成物の、JIS K0113:2005に記載の方法で測定される吸水率が1000質量ppm以下である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項12】
前記包装体を、温度60℃、相対湿度75%、大気下、常圧にて、720時間、高温高湿処理したときに、前記セルロース樹脂組成物の高温高湿処理前の黄色度(YI)値と高温高湿処理後の黄色度(YI)値との差が20以下である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項13】
熱可塑性樹脂及びセルロースを含むセルロース樹脂組成物の保管時の変色を抑制する方法であって、
容器に前記セルロース樹脂組成物を収容することを含み、
前記セルロースが、セルロースナノファイバーであり、
前記容器が、リグニン含有率10質量%以上の高リグニン部材と、リグニン含有率1質量%以下の低リグニン部材とを含み、
前記容器の前記セルロース樹脂組成物との接触面の全部が前記低リグニン部材で構成されている、方法。
【請求項14】
熱可塑性樹脂及びセルロースを含むセルロース樹脂組成物を含む成形体の製造方法であって、
セルロース樹脂組成物の保管時の変色を抑制するための容器に収容された前記セルロース樹脂組成物を用意する工程、及び
前記容器に収容された前記セルロース樹脂組成物を金型内で射出成形する工程
を含み、
前記セルロースが、セルロースナノファイバーであり、
前記容器が、リグニン含有率10質量%以上の高リグニン部材と、リグニン含有率1質量%以下の低リグニン部材とを含み、
前記容器の前記セルロース樹脂組成物との接触面の全部が前記低リグニン部材で構成されており、
前記成形体のYI値が、50以下である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース樹脂組成物を収容するための容器、該容器とセルロース樹脂組成物とを有する包装体、セルロース樹脂組成物の保管時の変色を抑制する方法、及びセルロース樹脂組成物を含む樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種樹脂組成物の運搬に際しては、当該樹脂組成物を加工用材料(ペレット、粉体等)又は成形製品等の形態で箱体、袋体等の容器に収容することが一般的に行われ、容器の材質としては、軽量かつ低コストである点でクラフト紙等の紙材が広く活用されている。例えば特許文献1は、ポリアミド繊維又は樹脂或いはそれらからなる製品用の紙製包装材を記載する。特許文献1に記載される包装体は、ポリアミド繊維又は樹脂或いはそれらからなる製品の黄変をある程度防止し得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、補強材料としてセルロースを用いてなる樹脂組成物が種々提案されており、当該樹脂組成物の貯蔵及び運搬のための容器としてもクラフト紙等の紙材が用いられている。しかし、熱可塑性樹脂とセルロースとを含む樹脂組成物(本開示でセルロース樹脂組成物ともいう。)を、紙材を用いた容器内で保管した場合、セルロース樹脂組成物の変色がセルロース不含有の樹脂組成物よりも生じ易いという問題に加え、成形時に特有の臭気を生じたり、成形が困難となるといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決し、セルロース樹脂組成物を経時的に変色させずに貯蔵可能な容器、該容器とセルロース樹脂組成物とを有する包装体、該容器を用いてセルロース樹脂組成物の変色を抑制する方法、及び該容器を用いることを含む樹脂成形体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、特定構成の容器内にセルロース樹脂組成物を収容することで、当該セルロース樹脂組成物の経時的な変色を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
【0007】
[1] 熱可塑性樹脂及びセルロースを含むセルロース樹脂組成物を収容するための容器であって、
前記容器が、リグニン含有率10質量%以上の高リグニン部材と、リグニン含有率1質量%以下の低リグニン部材とを含み、
前記容器の前記セルロース樹脂組成物との接触面の全部が前記低リグニン部材で構成されている、容器。
[2] 前記セルロースのリグニン含有率(Lc)が20質量%以下であり、
前記高リグニン部材のリグニン含有率(Lo)、前記低リグニン部材のリグニン含有率(Li)、及び前記セルロースのリグニン含有率(Lc)が、下記式:
Lo>Lc≧Li
の関係を満たす、上記態様1に記載の容器。
[3] 前記低リグニン部材の、JIS Z0208:1976に記載の方法で測定される水蒸気透過度が50g/m2・24h以下である、上記態様1又は2に記載の容器。
[4] 前記高リグニン部材で構成された外体と、前記低リグニン部材で構成された内体とを有する、上記態様1~3のいずれかに記載の容器。
[5] 前記外体が、箱体又は袋体であり、
前記内体が、前記外体に固定されており又は固定されていないシート体である、上記態様1~4のいずれかに記載の容器。
[6] 前記高リグニン部材の黄色度(YI)値が20以上である、上記態様1~5のいずれかに記載の容器。
[7] 前記高リグニン部材が、未晒パルプ及び/又は古紙から得られた紙材である、上記態様1~6のいずれかに記載の容器。
[8] 前記低リグニン部材がポリオレフィンを含む、上記態様1~7のいずれかに記載の容器。
[9] 容器と、前記容器内に収容された、熱可塑性樹脂及びセルロースを含むセルロース樹脂組成物とを有する、包装体であって、
前記容器が、リグニン含有率10質量%以上の高リグニン部材と、リグニン含有率1質量%以下の低リグニン部材とを含み、
前記容器の前記セルロース樹脂組成物との接触面の全部が前記低リグニン部材で構成されている、包装体。
[10] 前記セルロースのリグニン含有率が20質量%以下である、上記態様9に記載の包装体。
[11] 前記高リグニン部材のリグニン含有率(Lo)、前記低リグニン部材のリグニン含有率(Li)、及び前記セルロースのリグニン含有率(Lc)が、下記式:
Lo>Lc≧Li
の関係を満たす、上記態様10に記載の包装体。
[12] 前記低リグニン部材の、JIS Z0208:1976に記載の方法で測定される水蒸気透過度が50g/m2・24h以下である、上記態様9~11のいずれかに記載の包装体。
[13] 前記高リグニン部材で構成された外体と、前記低リグニン部材で構成された内体とを有する、上記態様9~12のいずれかに記載の包装体。
[14] 前記外体が、箱体又は袋体であり、
前記内体が、前記外体に固定されており又は固定されていないシート体である、上記態様9~13のいずれかに記載の包装体。
[15] 前記高リグニン部材の黄色度(YI)値が20以上である、上記態様9~14のいずれかに記載の包装体。
[16] 前記高リグニン部材が、未晒パルプ及び/又は古紙から得られた紙材である、上記態様9~15のいずれかに記載の包装体。
[17] 前記セルロースがセルロースナノファイバーである、上記態様9~16のいずれかに記載の包装体。
[18] 前記セルロース樹脂組成物がペレット形状である、上記態様9~17のいずれかに記載の包装体。
[19] 前記容器内に、0.01kg~550kgの前記セルロース樹脂組成物が収容されている、上記態様9~18のいずれかに記載の包装体。
[20] 前記セルロース樹脂組成物の、JIS K0113:2005に記載の方法で測定される吸水率が1000質量ppm以下である、上記態様9~19のいずれかに記載の包装体。
[21] 前記包装体を、温度60℃、相対湿度75%、大気下、常圧にて、720時間、高温高湿処理したときに、前記セルロース樹脂組成物の高温高湿処理前の黄色度(YI)値と高温高湿処理後の黄色度(YI)値との差が20以下である、上記態様9~20のいずれかに記載の包装体。
[22] 熱可塑性樹脂及びセルロースを含むセルロース樹脂組成物の保管時の変色を抑制する方法であって、
容器に前記セルロース樹脂組成物を収容することを含み、
前記容器が、リグニン含有率10質量%以上の高リグニン部材と、リグニン含有率1質量%以下の低リグニン部材とを含み、
前記容器の前記セルロース樹脂組成物との接触面の全部が前記低リグニン部材で構成されている、方法。
[23] 熱可塑性樹脂及びセルロースを含むセルロース樹脂組成物を含む成形体の製造方法であって、
容器に収容された前記セルロース樹脂組成物を用意する工程、及び
前記容器に収容された前記セルロース樹脂組成物を金型内で射出成形する工程
を含み、
前記容器が、リグニン含有率10質量%以上の高リグニン部材と、リグニン含有率1質量%以下の低リグニン部材とを含み、
前記容器の前記セルロース樹脂組成物との接触面の全部が前記低リグニン部材で構成されており、
前記成形体のYI値が、50以下である、方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セルロース樹脂組成物を経時的に変色させずに貯蔵可能な容器、該容器とセルロース樹脂組成物とを有する包装体、該容器を用いてセルロース樹脂組成物の変色を抑制する方法、及び該容器を用いることを含む樹脂成形体の製造方法が提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示の態様について説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0010】
≪容器≫
本発明の一態様は、熱可塑性樹脂及びセルロースを含むセルロース樹脂組成物を収容するための容器を提供する。一態様において、容器は、リグニン含有率10質量%以上の高リグニン部材と、リグニン含有率1質量%以下の低リグニン部材とを含む。一態様においては、容器のセルロース樹脂組成物との接触面である内表面の全部(より具体的には99面積%以上、特に100面積%)が低リグニン部材で構成されている。上記「内表面の全部」とは、上記内表面のうち低リグニン部材で構成されていない部位が本発明の効果を損なわない程度で存在することを排除しない(例えば、えぐれ、ほつれ等の欠陥、及び縫い目等によって、低リグニン部材が内表面上に露出していない部位が存在することを排除しない)ことを意図する。
【0011】
本発明者は、セルロースを含む樹脂組成物ではセルロースを含まない樹脂組成物と比べて容器内での貯蔵中に変色が顕著が生じるところ、容器のリグニン含有率を低減させると変色が顕著に抑制されることを見出した。詳細は不明であるが、リグニンの化学構造(例えばフェノール性水酸基)に起因するリグニンと樹脂組成物との何らかの化学的な作用(例えば、リグニン中のフェノール性水酸基がセルロース樹脂組成物中の窒素含有化合物と反応したときの着色成分(例えばニトロフェノール)の生成)がセルロース樹脂組成物の変色をもたらしており、リグニン量の低減によれば当該作用を抑制でき、したがって変色が抑制されると考えられる。容器中のリグニンに起因する変色は特にセルロース樹脂組成物において顕著にみられる特異な現象であることから、本開示の容器は、セルロース樹脂組成物の収容という特定の用途に特に適したものである。
【0012】
高リグニン部材のリグニン含有率は、10質量%以上であり、一態様では、15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上であってよい。高リグニン部材のリグニン含有率は、一態様において70質量%以下、又は50質量%以下、又は35質量%以下であってよい。本開示のリグニン含有率はクラーソンリグニン法で測定される値である。
【0013】
高リグニン部材としては、未晒パルプ(すなわち未漂白パルプ)及び/又は古紙を含む(より典型的には未晒パルプ及び/又は古紙から得られた)紙材等が挙げられる。未晒パルプ及び古紙は低コストである点で有利である。
【0014】
典型的な態様において、高リグニン部材は比較的高い黄色度(YI)値を有する。高リグニン部材のYI値は、一態様において、20以上、又は50以上、又は70以上であってよく、一態様において120以下、又は110以下、又は100以下であってよい。本開示において、黄色度(YI)値は、JIS K7373に準拠して測定される値である。
【0015】
低リグニン部材のリグニン含有率は、1質量%以下である。当該リグニン含有率は、低いほど好ましく、好ましくは0質量%である。
【0016】
低リグニン部材としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)のポリマー、アルミニウム等の金属等が挙げられる。セルロース樹脂組成物の吸水をより良好に抑制できる点で、低リグニン部材は、好ましくはポリオレフィン及び/又は金属(特に好ましくはアルミニウム)を含み、より好ましくはポリオレフィン及び/又は金属(特に好ましくはアルミニウム)からなる。また、ポリオレフィンは低コストである点でも有利である。
【0017】
一態様において、低リグニン部材は比較的低い水蒸気透過度を有する。低リグニン部材が低いリグニン含有率とともに低い水蒸気透過度を有する場合、セルロース樹脂組成物の変色の抑制に加えて吸水の抑制も可能である。吸水はセルロース樹脂組成物中の成分の加水分解等による劣化を招来することから、吸水の抑制は好ましい。低リグニン部材の、JIS Z0208:1976に記載の方法で測定される水蒸気透過度は、一態様において50g/m2・24h以下、又は20g/m2・24h以下、又は10g/m2・24h以下であってよい。上記水蒸気透過率は低いほど好ましいが、容器の製造容易性の観点から、例えば1g/m2・24h以上、又は5g/m2・24h以上、又は10g/m2・24h以上であってもよい。
【0018】
容器は、一態様において、実質的に高リグニン部材及び低リグニン部材からなることができ、一態様において、高リグニン部材及び低リグニン部材、並びに追加の部材を有することができる。追加の部材は、本開示の「高リグニン部材」及び「低リグニン部材」のいずれにも包含されない部材全般が包含される。追加の部材としては、接着剤等が挙げられる。
【0019】
容器全体に対する高リグニン部材の質量比率は、高リグニン部材の使用による容器のコスト低減の観点から、例えば10質量%以上、又は30質量%以上、又は50質量%以上であってよく、低リグニン部材の使用による利点を良好に得る観点から、例えば99.9質量%以下、又は99質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
【0020】
容器全体に対する低リグニン部材の質量比率は、低リグニン部材の使用による利点を良好に得る観点から、例えば0.1質量%以上、又は1質量%以上、又は10質量%以上であってよく、高リグニン部材の使用による容器のコスト低減の観点から、例えば90質量%以下、又は70質量%以下、又は50質量%以下であってよい。
【0021】
容器全体に対する追加の部材の質量比率は、当該追加の部材を使用する目的に応じて適宜選択でき、例えば、0.01質量%~90質量%、又は0.1質量%~50質量%、又は1質量%~30質量%であってよい。
【0022】
一態様において、容器は、高リグニン部材で構成された外体と低リグニン部材で構成された内体とを有する。典型的な態様においては、少なくとも内体が容器の内表面(すなわちセルロース樹脂組成物との接触面)の大部分を構成していればよい。典型的な態様において、外体は容器の外表面を構成するが、外体の表面に高リグニン部材ではない部材(例えばコーティング層)が配置されていることによって、容器の外表面に高リグニン部材が露出していないこともできる。一態様において、外体と内体との間に別の部材が配置されてもよい。一態様において、外体及び内体の各々は複数層を有する積層体であることができ、この場合、層の間に別の部材が配置されていてもよい。
【0023】
外体と内体との組合せとしては、外体が箱体又は袋体であり、内体が該外体に固定されており又は固定されていないシート体である組合せを例示できる。内体が外体に固定されていない容器としては、外体が箱体又は袋体であり、内体が当該外体の内側に配置された箱体又は袋体である容器が挙げられる。このような容器の一例は、外体が紙材(好ましくは未晒パルプ及び/又は古紙から得られた紙材)で構成された箱体又は袋体であり、内体がポリオレフィンを含む袋体である容器である。内体が外体に固定されている容器としては、上記の内体が外体に固定されていない容器における内体の少なくとも一部と外体の少なくとも一部とを接着剤等で固定した容器、外体が袋体であり、内体が、当該袋体の内表面に直接又は接着剤等を介して積層された、コーティング又はラミネートである容器、等が挙げられる。
【0024】
外体の厚みは、セルロース樹脂組成物を収容するための良好な機械強度を得る観点、及びセルロース樹脂組成物の吸水を良好に抑制する観点から、0.01mm以上、又は0.1mm以上、又は1mm以上であってよく、取り扱い性及びコストの観点から、20mm以下、又は10mm以下、又は5mm以下であってよい。
【0025】
内体の厚みは、セルロース樹脂組成物を収容するための良好な機械強度を得る観点、及びセルロース樹脂組成物の変色及び吸水を良好に抑制する観点から、0.001mm以上、又は0.01mm以上、又は0.1mm以上であってよく、取り扱い性及びコストの観点から、5mm以下、又は3mm以下、又は1mm以下であってよい。
【0026】
容器(例えば、一態様に係る外体及び内体)の形状及び寸法は限定されず、目的に応じて適宜選択できる。例えば箱体は、直方体及び立方体の他、各種変形形状であることができる。例えばセルロース樹脂組成物が成形製品である場合、箱体は当該成形製品の形状に応じた変形形状を有してよい。同様に、例えば袋体は、長方形及び正方形(並びにこれらにマチが付された形状)の他、各種変形形状であることができる。一態様において、箱体の寸法は、最大縦長50mm~2000mm×最大横長50mm~2000mm×最大高さ50mm~2000mmであることができる。一態様において、袋体の寸法は、最大縦長50mm~2000mm×最大横長50mm~2000mm×最大マチ50mm~2000mmであることができる。
【0027】
≪包装体≫
本発明の一態様は、容器と、該容器内に収容された、熱可塑性樹脂及びセルロースを含むセルロース樹脂組成物とを有する、包装体を提供する。
【0028】
本開示の包装体が有する容器は前述した本開示の容器であってよい。したがって、当該容器は、リグニン含有率10質量%以上の高リグニン部材と、リグニン含有率1質量%以下の低リグニン部材とを含む。包装体が有する容器の好ましい態様は、本開示の≪容器≫の項で例示したのと同様であってよい。
【0029】
セルロース樹脂組成物は、熱可塑性樹脂及びセルロースを含み、一態様において、任意の追加成分を更に含むことができる。
【0030】
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂としては、種々の樹脂を使用できる。一態様において、熱可塑性樹脂は数平均分子量5000以上を有する。なお本開示の数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)を用い、標準ポリメタクリル酸メチル換算で測定される値である。熱可塑性樹脂としては、100℃~350℃の範囲内に融点を有する結晶性樹脂、又は、100~250℃の範囲内にガラス転移温度を有する非晶性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、ホモポリマーでもコポリマーでもよい1種又は2種以上のポリマーで構成されてよい。
【0031】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂(ポリフェニレンエーテルを他の樹脂とブレンド又はグラフト重合させて変性させた変性ポリフェニレンエーテルも含む)、ポリアリレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリフェニレンエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばα-オレフィン(共)重合体)、各種アイオノマー等が挙げられる。
【0032】
熱可塑性樹脂の好ましい具体例は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(例えば直鎖状低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系樹脂、ポリ1-ブテン、ポリ1-ペンテン、ポリメチルペンテン、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、EPR(エチレン-プロピレン共重合体)、変性エチレン・ブテン共重合体、EEA(エチレン-エチルアクリレート共重合体)、変性EEA、変性EPR、変性EPDM(エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体)、アイオノマー、α-オレフィン共重合体、変性IR(イソプレンゴム)、変性SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、ハロゲン化イソブチレン-パラメチルスチレン共重合体、エチレン-アクリル酸変性体、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びその酸変性物、(エチレン及び/又はプロピレン)と(不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)との共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)と(不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)との共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化して得られるポリオレフィン、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素のブロック共重合体、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素のブロック共重合体の水素化物、他の共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体、天然ゴム、各種ブタジエンゴム、各種スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、イソブチレンとp-メチルスチレンの共重合体の臭化物、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリロブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル等のアクリル、アクリロニトリルを主成分とするアクリロニトリル系共重合体、アクリロニトリル・ブタンジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、塩化ビニル/エチレン共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、及びエチレン/酢酸ビニル共重合体のケン化物等が挙げられる。
【0033】
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、ポリマーアロイとして用いてもよい。また、上記した熱可塑性樹脂が、不飽和カルボン酸、その酸無水物又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物により変性されたものも用いることもできる。
【0034】
これらの中でも、耐熱性、成形性、意匠性及び機械特性の観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、及びポリフェニレンスルフィド系樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂が好ましい。なお、例えばポリアミド系樹脂は、フェノール性水酸基よる変色、及び吸湿等が生じ易い傾向がある。本発明の一態様に係る容器は、このようなポリアミド系樹脂を含むセルロース樹脂組成物の収容に特に有利である。
【0035】
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン類(例えばα-オレフィン類)を含むモノマー単位を重合して得られる高分子である。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、特に限定されないが、低密度ポリエチレン(例えば線状低密度ポリエチレン)、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等に例示されるエチレン系(共)重合体、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体等に例示されるポリプロピレン系(共)重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体等に代表されるα-オレフィンと他のモノマー単位との共重合体等が挙げられる。
【0036】
ここで最も好ましいポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレンが挙げられる。特に、ISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されたメルトマスフローレイト(MFR)が、3g/10分以上60g/10分以下であるポリプロピレンが好ましい。MFRの下限値は、より好ましくは5g/10分であり、さらにより好ましくは6g/10分であり、最も好ましくは8g/10分である。また、上限値は、より好ましくは25g/10分であり、さらにより好ましくは20g/10分であり、最も好ましくは18g/10分である。MFRは、組成物の靱性向上の観点から上記上限値を超えないことが望ましく、組成物の流動性の観点から上記下限値を超えないことが望ましい。
【0037】
また、セルロースとの親和性を高めるため、酸変性されたポリオレフィン系樹脂も好適に使用可能である。
【0038】
熱可塑性樹脂として好ましいポリアミド系樹脂としては、特に限定されないが、ラクタム類の重縮合反応により得られる、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12等;1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、2-メチル-1-6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、2-メチル-1,7-ヘプタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、m-キシリレンジアミン等のジアミン類と、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ベンゼン-1,2-ジカルボン酸、ベンゼン-1,3-ジカルボン酸、ベンゼン-1,4ジカルボン酸等、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸等のジカルボン酸類との共重合体として得られる、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド9,T、ポリアミド10,T、ポリアミド2M5,T、ポリアミドMXD,6、ポリアミド6,C、ポリアミド2M5,C等;及び、これらがそれぞれ共重合された共重合体(一例としてポリアミド6,T/6,I)等の共重合体;が挙げられる。
【0039】
これらポリアミド系樹脂の中でも、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12といった脂肪族ポリアミド、及びポリアミド6,C、ポリアミド2M5,Cといった脂環式ポリアミドがより好ましい。
【0040】
ポリアミド系樹脂の末端カルボキシル基濃度には特に制限はないが、下限値は、20μモル/gであると好ましく、より好ましくは30μモル/gである。また、末端カルボキシル基濃度の上限値は、150μモル/gであると好ましく、より好ましくは100μモル/gであり、更に好ましくは80μモル/gである。
【0041】
ポリアミド系樹脂において、全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])は、0.30~0.95であることが好ましい。カルボキシル末端基比率下限は、より好ましくは0.35であり、さらにより好ましくは0.40であり、最も好ましくは0.45である。またカルボキシル末端基比率上限は、より好ましくは0.90であり、さらにより好ましくは0.85であり、最も好ましくは0.80である。上記カルボキシル末端基比率は、セルロースの樹脂組成物中への分散性の観点から0.30以上とすることが望ましく、得られ樹脂組成物の色調の観点から0.95以下とすることが望ましい。
【0042】
ポリアミド系樹脂の末端基濃度の調整方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリアミドの重合時に所定の末端基濃度となるように、ジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル、モノアルコール等の末端基と反応する末端調整剤を重合液に添加する方法が挙げられる。
【0043】
末端アミノ基と反応する末端調整剤としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;及びこれらから任意に選ばれる複数の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、封止末端の安定性、価格等の点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及び安息香酸からなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましく、酢酸が最も好ましい。
【0044】
末端カルボキシル基と反応する末端調整剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン及びこれらの任意の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格等の点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン及びアニリンからなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましい。
【0045】
これら、アミノ末端基及びカルボキシル末端基の濃度は、1H-NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から求めるのが精度、簡便さの点で好ましい。それらの末端基の濃度を求める方法として、具体的に、特開平7-228775号公報に記載された方法が推奨される。この方法を用いる場合、測定溶媒としては、重トリフルオロ酢酸が有用である。また、1H-NMRの積算回数は、十分な分解能を有する機器で測定した際においても、少なくとも300スキャンは必要である。そのほか、特開2003-055549号公報に記載されているような滴定による測定方法によっても末端基の濃度を測定できる。ただし、混在する添加剤、潤滑剤等の影響をなるべく少なくするためには、1H-NMRによる定量がより好ましい。
【0046】
熱可塑性樹脂として好ましいポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリアリレート(PAR)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)(3-ヒドロキシアルカン酸からなるポリエステル樹脂)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカーボネート(PC)等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でより好ましいポリエステル系樹脂としては、PET、PBS、PBSA、PBT、及びPENが挙げられ、更に好ましくは、PBS、PBSA、及びPBTが挙げられる。
【0047】
熱可塑性樹脂として好ましいポリアセタール系樹脂には、ホルムアルデヒドを原料とするホモポリアセタールと、トリオキサンを主モノマーとし、例えば1,3-ジオキソランをコモノマー成分として含むコポリアセタールとが一般的であり、両者とも使用可能であるが、加工時の熱安定性の観点から、コポリアセタールが好ましく使用できる。
【0048】
<セルロース>
セルロースの種類はセルロース樹脂組成物の所望の特性に応じて選択でき、例えばセルロースファイバーを好適に使用できる。セルロースのリグニン含有率は、一態様において、20質量%以下である。リグニン含有率は低いほど好ましく、0質量%(すなわちリグニンが含有されないこと)が最も好ましい。例えば、コットンリンター等のリグニン不含有の原料を用いることで、リグニン含有率を0質量%とすることができる。セルロースのリグニン含有率が20質量%以下であるようなセルロース樹脂組成物においては、本開示の容器を用いることによる変色防止効果が特に顕著である。
【0049】
一態様においては、セルロースのリグニン含有率(Lc)が20質量%以下であり、高リグニン部材のリグニン含有率(Lo)、低リグニン部材のリグニン含有率(Li)、及びセルロースのリグニン含有率(Lc)が、下記式:
Lo>Lc≧Li
の関係を満たす。高リグニン部材、低リグニン部材及びセルロースのリグニン含有率が上記関係を満たす場合、本開示の容器を用いることによる変色防止効果が特に顕著である。
【0050】
一態様において、セルロースはセルロースナノファイバー(すなわち、平均繊維径1000nm以下のセルロースファイバー)である。セルロースナノファイバーの好適例は、特に限定されないが、例えばセルロースパルプを原料としたセルロースナノファイバー又はこれらセルロースの変性物の1種以上を用いることが出来る。これらの中でも、安定性、性能等の点から、セルロースの変性物の1種以上が好ましく使用可能である。セルロースナノファイバーの平均繊維径は、樹脂成形体の良好な機械的強度(特に引張弾性率)を得る観点から、1000nm以下であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下である。平均繊維径は小さい方が好ましいが、加工容易性の観点からは、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは30nm以上であることができる。上記平均繊維径は、レーザー回折/散乱法粒度分布計で、積算体積が50%になるときの粒子の球形換算直径(体積平均粒子径)として求められる値である。
【0051】
上記平均繊維径は、以下の方法で測定することができる。セルロースナノファイバーを固形分40質量%として、プラネタリーミキサー(例えば(株)品川工業所製、5DM-03-R、撹拌羽根はフック型)中において、126rpmで、室温常圧下で30分間混練し、次いで0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(例えば日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED-7」処理条件)を用い、回転数15,000rpm×5分間で分散させ、遠心分離機(例えば久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」、ロータータイプRA-400型)を用い、処理条件:遠心力39200m2/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116000m2/sで45分間遠心処理し、遠心後の上澄みを採取する。この上澄み液を用いて、レーザー回折/散乱法粒度分布計(例えば堀場製作所(株)製、商品名「LA-910」又は商品名「LA-950」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(すなわち、粒子全体の体積に対して、積算体積が50%になるときの粒子の球形換算直径)を、体積平均粒子径とする。
【0052】
典型的な態様において、セルロースナノファイバーのL/D比は、20以上である。セルロースナノファイバーのL/D下限は、好ましくは30であり、より好ましくは40であり、より好ましくは50であり、さらにより好ましくは100である。上限は特に限定されないが、取扱い性の観点から好ましくは10000以下である。本開示の樹脂組成物の良好な機械的特性を少量のセルロースナノファイバーで発揮させるために、セルロースナノファイバーのL/D比は上述の範囲内であることが望ましい。
【0053】
本開示で、セルロースナノファイバーの長さ(L)、径(D)及びL/D比は、セルロースナノファイバーの水分散液を、高剪断ホモジナイザー(例えば日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED-7」)を用い、処理条件:回転数15,000rpm×5分間で分散させた水分散体を、0.1~0.5質量%まで純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾したものを測定サンプルとし、光学顕微鏡、又は高分解能走査型顕微鏡(SEM)、又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測して求める。具体的には、少なくとも100本のセルロースナノファイバーが観測されるように倍率が調整された観察視野にて、無作為に選んだ100本のセルロースナノファイバーの長さ(L)及び径(D)を計測し、比(L/D)を算出する。また、本開示のセルロースナノファイバーの長さ及び径とは、上記100本のセルロースの数平均値である。
【0054】
セルロースナノファイバーは、パルプ等を100℃以上の熱水等で処理し、ヘミセルロース部分を加水分解して脆弱化したのち、高圧ホモジナイザー、マイクロフリュイダイザー、ボールミル、ディスクミル等を用いた粉砕法により解繊したセルロースであってよい。
【0055】
一態様において、セルロースナノファイバーは変性物(すなわち変性セルロースナノファイバー)であってよい。セルロースナノファイバーの変性物としては、エステル化剤、シリル化剤、イソシアネート化合物、ハロゲン化アルキル化剤、酸化アルキレン及び/又はグリシジル化合物から選択される1種以上の変性剤によりセルロースが変性されたものが挙げられる。
【0056】
≪追加成分≫
セルロース樹脂組成物は、熱可塑性樹脂及びセルロースに加えて、追加成分を任意に含んでよい。追加成分としては、表面処理剤、酸化防止剤、無機充填剤、潤滑油等が挙げられる。これらの成分は、各々、1種又は2種以上の組み合わせで使用してよい。またこれらの成分は市販の試薬又は製品であってもよい。
【0057】
表面処理剤の好適例としては、親水性セグメントと疎水性セグメントとを分子内に有する化合物が挙げられ、より具体的には、親水性セグメントを与える化合物(例えば、ポリエチレングリコール)、疎水性セグメントを与える化合物(例えば、ポリプロピレングリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMEG)、ポリブタジエンジオール等)をそれぞれ1種以上用いて得られる共重合体(例えば、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとのブロック共重合体、テトラヒドロフランとエチレンオキシドとのブロック共重合体)等が挙げられる。
【0058】
セルロース樹脂組成物中の表面処理剤の好ましい含有率は、セルロース樹脂組成物中でのセルロースの分散性を高める観点から、好ましくは、0.1質量%以上、又は0.2質量%以上、又は0.5質量%以上であり、セルロース樹脂組成物の可塑化を抑制し、強度を良好に保つ観点から、好ましくは、50質量%以下、又は30質量%以上、又は20質量%以上、又は18質量%以上、又は15質量%以上、又は10質量%以上、又は5質量%以上である。
【0059】
セルロース100質量部に対する表面処理剤の好ましい量は、セルロース樹脂組成物中でのセルロースの分散性を高める観点から、好ましくは、0.1質量部以上、又は0.5質量部以上、又は1質量部以上であり、セルロース樹脂組成物の可塑化を抑制し、強度を良好に保つ観点から、好ましくは、100質量部以下、又は99質量部以下、又は90質量部以下、又は80質量部以下、又は70質量部以下、又は50質量部以下、又は40質量部以下である。
【0060】
酸化防止剤としては、熱による劣化の防止効果の観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びリン系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤及びヒンダードフェノール系酸化防止剤がより好ましく、リン系酸化防止剤及び/又はヒンダードフェノール系酸化防止剤と、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)との併用がさらに好ましい。
【0061】
酸化防止剤の好ましい量は、セルロース樹脂組成物の全体に対し、好ましくは0.01質量%以上、又は0.02質量%以上、又は0.03質量%以上、又は0.05質量%以上であり、好ましくは、5質量%以下、又は4質量%以下、又は3質量%以下、又は2質量%以下、又は1質量%以下である。
【0062】
無機充填剤としては、繊維状粒子、板状粒子、無機顔料等が挙げられる。繊維状粒子及び板状粒子は、平均アスペクト比が5以上であってよい。セルロース樹脂組成物中の無機充填剤の量は、セルロース樹脂組成物から樹脂成形体に成形する際の取扱い性を高める観点から、熱可塑性樹脂100質量部に対して好ましくは0.002質量部~50質量部である。
【0063】
潤滑油としては、天然オイル(エンジンオイル、シリンダーオイル等)、合成炭化水素(パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等)、シリコーン系オイル、等が挙げられる。潤滑油の分子量は、例えば100以上、又は400以上、又は500以上であってよく、また例えば500万以下、又は200万以下、又は100万以下であってよい。
【0064】
潤滑油の融点は、例えば-50℃以上、又は-30℃以上、又は-20℃以上であってよく、また例えば50℃以下、又は30℃以下、又は20℃以下であってよい。なお上記融点は潤滑油の流動点の2.5℃低い温度であり、流動点はJIS K2269に準拠して測定することができる。
【0065】
熱可塑性樹脂100質量部に対する潤滑油の含有量は、耐摩耗性向上の観点から、好ましくは、0.1質量部以上、又は0.2質量部以上、又は0.3質量部以上であり、セルロース樹脂組成物の不所望の軟化を回避する観点から、好ましくは、5.0質量部以下、又は4.5質量部以下、又は4.2質量部以下である。
【0066】
セルロース樹脂組成物中の追加成分の総量は、例えば、0質量%以上、又は1質量%以上、又は10質量%以上であってよく、例えば、70質量%以下、又は50質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0067】
好ましい一態様において、セルロース樹脂組成物は、熱可塑性樹脂30質量%~99質量%、セルロース1質量%~60質量%、及び追加成分0質量%~69質量%を含む。好ましい別の一態様において、セルロース樹脂組成物は、熱可塑性樹脂50質量%~97質量%、セルロース3質量%~20質量%、及び追加成分0質量%~47質量%、又は、熱可塑性樹脂65質量%~95質量%、セルロース5質量%~15質量%、及び追加成分0質量%~20質量%を含む。
【0068】
セルロース樹脂組成物の形状は特に限定されず、例えば、加工用材料(ペレット、粉体等)又は成形製品であってよい。成形製品としては、電子機器部品、車両用部品、建築材料、生活用品等の広範な製品が挙げられる。
【0069】
容器内に収容されているセルロース樹脂組成物の量は、一態様において、0.01kg以上、又は1kg以上、又は20kg以上であることができ、一態様において、550kg以下、又は100kg以下、又は30kg以下であることができる。
【0070】
セルロース樹脂組成物の、JIS K0113:2005に記載の方法(カールフィッシャー法)によって測定される吸水率は、一態様において、1000質量ppm以下、又は900質量ppm以下、又は800質量ppm以下であることができる。本実施形態の包装体において、高リグニン部材と低リグニン部材との組合せを有する容器を用いることは、セルロース樹脂組成物の吸水率の低減という利点を与える。セルロース樹脂組成物の吸水率は、セルロース樹脂組成物の品質を良好に保つ観点からは低い方が好ましいが、包装体の製造容易性の観点から、一態様において、10質量ppm以上、又は100質量ppm以上、又は500質量pmm以上であってもよい。
【0071】
包装体を、温度60℃、相対湿度75%、大気下、常圧にて、720時間(すなわち30日)、高温高湿処理したときに、セルロース樹脂組成物の高温高湿処理前の黄色度(YI)値と高温高湿処理後の黄色度(YI)値との差(以下、YI差ともいう。)は、25以下、又は20以下、又は16以下であることができる。上記YI差が小さいほど、セルロース樹脂組成物の変色が良好に抑制されていることになる。上記YI差は、セルロース樹脂組成物の品質を良好に保つ観点からは低い方が好ましいが、包装体の製造容易性の観点から、一態様において、1以上、又は10以上、又は20以上であってもよい。
【0072】
≪セルロース樹脂組成物の変色を抑制する方法≫
本発明の一態様は、熱可塑性樹脂及びセルロースを含むセルロース樹脂組成物の保管時の変色を抑制する方法であって、容器にセルロース樹脂組成物を収容することを含む方法を提供する。該方法において用いる容器は前述した本開示の容器であってよい。したがって、当該容器は、リグニン含有率10質量%以上の高リグニン部材と、リグニン含有率1質量%以下の低リグニン部材とを含む。該方法で用いる容器の好ましい態様は、本開示の≪容器≫の項で例示したのと同様であってよい。
【0073】
≪成形体の製造方法≫
本発明の一態様は、熱可塑性樹脂及びセルロースを含むセルロース樹脂組成物を含む成形体の製造方法であって、容器に収容されたセルロース樹脂組成物を用意する工程、及び容器に収容されたセルロース樹脂組成物を金型内で射出成形する工程を含む方法を提供する。該方法において用いる容器は前述した本開示の容器であってよい。したがって、当該容器は、リグニン含有率10質量%以上の高リグニン部材と、リグニン含有率1質量%以下の低リグニン部材とを含む。該方法で用いる容器の好ましい態様は、本開示の≪容器≫の項で例示したのと同様であってよい。
【0074】
上記の成形体の製造方法によれば、変色の少ない成形体を得ることができる。一態様において、上記の成形体の製造方法で得られる成形体のYI値は、50以下、又は40以下、又は30以下、又は25以下であることができる。成形体のYI値は、成形体の良好な品質を実現する観点からは、小さい方が好ましいが、成形体の製造容易性の観点から、一態様において、1以上、又は5以上、又は10以上であってもよい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を挙げて本発明の例示の態様を更に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0076】
[特性評価]
特性評価は以下の方法で行った。
【0077】
<ポリアミドの末端アミノ基濃度[NH2]の測定>
秤量した試料を、90質量%フェノール水溶液に溶解し、25℃にて1/50N塩酸で電位滴定して算出した。
【0078】
<ポリアミドの末端カルボキシル基濃度[COOH]の測定>
秤量した試料を、160℃のベンジルアルコールに溶解し、指示薬に25℃にて1/50N塩酸で電位滴定して算出した。
【0079】
<セルロースの重合度>
「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定した。
<セルロースの結晶形、結晶化度>
X線回折装置(株式会社リガク製、多目的X線回折装置)を用いて粉末法にて回折像を測定(常温)し、Segal法で結晶化度を算出した。また、得られたX線回折像から結晶形についても測定した。
【0080】
<セルロースの平均繊維径及び平均L/D>
セルロースを、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED-7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1~0.5質量%まで純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾したものを、原子間力顕微鏡(AFM)で測定した。測定は、少なくとも100本のセルロース繊維が観測されるように倍率を調整して行い、無作為に選んだ100本のセルロースの長径(L)、短径(D)及びこれらの比(L/D)を求め、100本のセルロースの加算平均を算出した。
【0081】
<リグニン含有率>
クラーソン法に従い、下記手順で測定した。
セルロースの分散液、又はセルロース樹脂組成物から樹脂を溶解除去して得たセルロースの再分散液から分散媒を除去し、セルロース残渣を回収して、105℃で乾燥した乾燥試料の質量を測定した。乾燥したセルロース残渣を粉砕して、粉砕試料をソックスレー抽出器でアルコール(エタノール)/ベンゼン混合溶媒で6時間抽出した後、アルコールでさらに4時間抽出を行って脱脂試料を得た。
脱脂試料300mgに、72質量%硫酸3mLを加え、30℃で1時間静置した後、蒸留水84mLで耐圧びん(125mL容量)に流し入れた。120℃で1時間のオートクレーブ処理を行い、冷める前にガラスフィルターでろ過して酸不溶性リグニンをろ別し、ろ液も回収した。酸不溶性リグニンは蒸留水で洗浄して105℃で乾燥後、酸不溶性リグニン画分の質量を測定し、ろ液は紫外可視分光光度計で吸光度を測定した。
【0082】
下記式から酸不溶性リグニン及び酸可溶性リグニンの含有率を算出した。これらを合計して総リグニン含有率を求めた。
酸不溶性リグニン(%) = 酸不溶性リグニン画分(g)/試料量(無水ベース)(g)×100
酸可溶性リグニン(%)=((d × v ×(As-Ab))/(a × w))×100
リグニン(%)=酸不溶性リグニン(%)+酸可溶性リグニン(%)
d : 希釈倍率
v : ろ液定容量(L)
As: 試料溶液の吸光度
Ab: ブランク溶液の吸光度
a : リグニンの吸光係数(110 L/g・cm)
w : 試料量(無水ベース)(g)
【0083】
<内体の水蒸気透過度>
JIS Z0208:1976に準拠して測定した。
【0084】
<セルロース樹脂組成物又は比較の樹脂組成物の吸水率>
JIS K0113:2005に準拠して測定した。包装体の作製直後(初期)、及び温度23℃、相対湿度50%の条件下での24時間保管後の各々について、包装体中のセルロース樹脂組成物又は比較の樹脂組成物の吸水率を測定した。
【0085】
<黄色度(YI)>
JIS K7373に準拠して測定した。なおセルロース樹脂組成物又は比較の樹脂組成物のYIについては、包装体の作製直後(初期)、及び温度60℃、相対湿度75%の高温高湿条件下での720時間養生後の各々について、包装体中のセルロース樹脂組成物又は比較の樹脂組成物のYI値を測定し、また初期と養生後とでのYI値の差をΔYIとした。
【0086】
<成形時の臭気及び成形性>
実施例及び比較例で得られたセルロース樹脂組成物又は比較の樹脂組成物の包装体を、温度60℃、相対湿度75%の高温高湿条件下で720時間養生した後開封し、ペレットを得た。最大型締圧力4000トンの射出成形機のシリンダー温度をポリアミド樹脂組成物の場合は250℃に、ポリプロピレン樹脂の場合は200℃に設定し、該ペレットを用いて10回パージ作業を行った後、成形を行い、以下の3段階で臭気を評価した。
良 成型機周辺で感知できる程度の甘い臭気
可 成型機周辺で感知できる程度の焦げた臭気
不良 室内全域で感知できるほどの焦げた臭気
また、上記と同様の成形実験を行い、以下の3段階で成形性を評価した。
良 成形における特筆するべき問題無し
可 シルバー、ボイドなどの不良が発生
不良 計量不良により、成形ができない
【0087】
<使用材料>
[セルロース樹脂組成物]
(熱可塑性樹脂)
ポリアミド6:宇部興産(株)製「1013B」(カルボキシル末端基比率 [COOH]/[全末端基]=0.65)
ポリプロピレン:プライムポリマー(株)製「J704LB」
【0088】
(セルロース)
セルロース1は、下記手順で調製した。
ろ紙を裁断し、オートクレーブを用いて、120℃以上の熱水中で3時間加熱し、ヘミセルロース部分を除去して得た精製パルプを、圧搾し、純水中に固形分率が1.5質量%になるように叩解処理により高度に短繊維化及びフィブリル化させた後、そのままの濃度で高圧ホモジナイザー(操作圧:85MPaにて10回処理)により解繊することにより解繊セルロースを得た。ここで、叩解処理においては、ディスクリファイナーを用い、カット機能の高い叩解刃(以下カット刃と称す)で4時間処理した後に解繊機能の高い叩解刃(以下解繊刃と称す)を用いてさらに1.5時間叩解を実施し、セルロース1を得た。得られたセルロース1の特性を前述の方法で評価した。結果を下記に示す。
平均L/D=300
平均繊維径=90nm
結晶化度=80%
重合度=600
【0089】
セルロース2は、上記セルロース1と、後述のセルロース4との、セルロース1:セルロース4(質量比)65:35の混合物である。
【0090】
セルロース3は、上記セルロース1と、後述のセルロース4との、セルロース1:セルロース4(質量比)32:68の混合物である。
【0091】
セルロース4は、原料を未晒パルプに変更した他はセルロース1と同様の手順で調製した。得られたセルロース4の特性を前述の方法で評価した。結果を下記に示す。
平均L/D=300
平均繊維径=85nm
結晶化度=80%
重合度=550
【0092】
アセチル化セルロースは、下記手順で調製した。
コットンリンターパルプを1質量部、一軸撹拌機(アイメックス社製 DKV-1 φ125mmディゾルバー)を用いジメチルスルホキサイド(DMSO)30質量部中で500rpmにて1時間、常温で攪拌した。続いて、ホースポンプでビーズミル(アイメックス社製 NVM-1.5)にフィードし、DMSOのみで180分間循環運転させ、微細セルロース繊維スラリーとして、固形分率3.2質量%のスラリーS1(DMSO溶媒)を得た。
【0093】
循環運転の際、ビーズミルの回転数は2500rpm、周速12m/sとし、用いたビーズはジルコニア製で、φ2.0mm、充填率70%とした(ビーズミルのスリット隙間は0.6mmとした)。また、循環運転の際は、摩擦による発熱を吸収するためにチラーによりスラリー温度を40℃に温度管理した。
【0094】
スラリーS1を防爆型ディスパーザータンクに投入した後、酢酸ビニル3.2質量部、炭酸水素ナトリウム0.49質量部を加え、タンク内温度を50℃とし、120分間撹拌を行い、固形分率2.9質量%のスラリー(DMSO溶媒)を得た。
【0095】
反応を停止するため、純水30質量部を加えて十分に撹拌した後、脱水機に入れて濃縮した。得られたウェットケーキを再度30質量部の純水に分散、撹拌、濃縮する洗浄操作を合計5回繰り返すことで、未反応試薬及び溶媒等を除去し、固形分率10質量%のアセチル化セルロース繊維ケーキを10質量部得た。
【0096】
[容器]
(外体)(高リグニン部材として)
外体1:古紙である新聞紙で形成された袋体(縦長850mm×横長500mm×マチ150mmで、下部がシールされているとともに上部が開口している平袋)を用いた。
外体2:未晒クラフト紙で形成されたクラフト紙袋(縦長850mm×横長500mm×マチ150mmで、下部がシールされているとともに上部が開口している平袋)を用いた。
外体3:市販の段ボール箱(長さ600mm×幅400mm×高さ350mm)を用いた。
(内体)(低リグニン部材として)
内体1:ポリプロピレン袋(厚み25μm)
プライムポリマー社製の「F109V」を用いた。押出機にて溶融混練してペレット化した。続いてTダイを備えた押出機より溶融押出し、20℃の冷却ロールで急冷することにより厚さ1500μmのシートを得た。続いてこのシートを、ロールの周速差を利用して130℃の温度で延伸し、厚さ25μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。これを袋状に接着し、内体1を得た。
内体2:ポリプロピレン袋(厚み2.5μm)
厚さ2.5μmとなるまで延伸を行う以外は内体1と同様にして、内体2を得た。
内体3:ポリプロピレン袋(厚み75μm)
厚さ75μmとなるまで延伸を行う以外は内体1と同様にして、内体3を得た。
内体4:ポリプロピレン袋(厚み1000μm)
厚さ1000μmとなるまで延伸を行う以外は内体1と同様にして、内体4を得た。
内体5:高密度ポリエチレン(HDPE)袋(厚み25μm)
三菱ケミカル社製の「HY420」を用いた以外は内体1と同様にして、内体5を得た。
内体6:低密度ポリエチレン(LDPE)袋(厚み25μm)
三菱ケミカル社製の「LF128」を用いた以外は内体1と同様にして、内体6を得た。
内体7:低密度ポリエチレン(LDPE)袋(厚み2.5μm)
厚さ2.5μmとなるまで延伸を行う以外は内体6と同様にして、内体7を得た。
内体8:アルミ袋(厚み200μm)(アズワン製の「アルミラミジップ」)を用いた。
内体9:ポリプロピレン袋(厚み100μm)
厚さ100μmとなるまで延伸を行う以外は内体1と同様にして、内体9を得た。
【0097】
[セルロース樹脂組成物の製造]
(セルロース樹脂組成物1)
セルロース1の水分散液(3質量%)を、遠心分離機を用いて、セルロース比率が20質量%になるまで濃縮した。濃縮した分散液を乾燥処理した後、粉砕処理を実施して、粉末状セルロースを得た。上記ポリアミド6(100質量部)と上記セルロース1(11質量部)とを混合し、東芝機械(株)製のTEM48SS押出機で、スクリュー回転数350rpm、吐出量140kg/hrで溶融混練し、真空脱揮した後、ダイからストランド状に押出し、水浴で冷却し、ペレタイズした。
(セルロース樹脂組成物2)
上記セルロース1に代えて上記セルロース2を用いた他はセルロース樹脂組成物1の製造と同様の手順で、セルロース樹脂組成物2を得た。
(セルロース樹脂組成物3)
上記セルロース1に代えて上記セルロース3を用いた他はセルロース樹脂組成物1の製造と同様の手順で、セルロース樹脂組成物3を得た。
(セルロース樹脂組成物4)
上記ポリアミド6に代えて上記ポリプロピレンを用いた他はセルロース樹脂組成物1の製造と同様の手順で、セルロース樹脂組成物4を得た。
(比較の樹脂組成物5)
上記ポリアミド6を比較の樹脂組成物5とした。
(比較の樹脂組成物6)
上記のポリプロピレンを比較の樹脂組成物6とした。
(セルロース樹脂組成物7)
上記セルロース1に代えて上記アセチル化セルロースを用いた他はセルロース樹脂組成物1の製造と同様の手順で、セルロース樹脂組成物7を得た。
(セルロース樹脂組成物8)
上記セルロース1に代えて上記アセチル化セルロースを用いた他はセルロース樹脂組成物4の製造と同様の手順で、セルロース樹脂組成物8を得た。
【0098】
[容器の製造]
(容器1)
外体1に内体1を挿入して、外体が古紙、内体がポリプロピレン(厚み25μm)である容器1を得た。
(容器2)
外体2に内体1を挿入して、外体が未晒クラフト紙、内体がポリプロピレン(厚み25μm)である容器2を得た。
(容器3)
内体を内体2(ポリプロピレン(厚み2.5μm))に変更した他は容器2と同様の手順で容器3を得た。
(容器4)
内体を内体3(ポリプロピレン(厚み75μm))に変更した他は容器2と同様の手順で容器4を得た。
(容器5)
内体を内体4(ポリプロピレン(厚み1000μm))に変更した他は容器2と同様の手順で容器5を得た。
(容器6)
内体を内体5(HDPE(厚み25μm))に変更した他は容器2と同様の手順で容器6を得た。
(容器7)
内体を内体6(LDPE(厚み25μm))に変更した他は容器2と同様の手順で容器7を得た。
(容器8)
内体を内体7(LDPE(厚み2.5μm))に変更した他は実施例2と同様の手順で容器8を得た。
(容器9)
内体を内体8(アルミ袋(厚み200μm))に変更した他は実施例2と同様の手順で容器9を得た。
(容器10)
外体3に内体1を挿入して、外体が段ボール、内体がポリプロピレン(厚み25μm)である容器10を得た。
(容器11)
内体を内体9(ポリプロピレン(厚み100μm))に変更した他は容器10と同様の手順で容器11を得た。
(容器12)
内体を設けない他は容器2と同様にして、容器12を得た。
【0099】
[実施例1~18、比較例1~4、参考例1~2]
セルロース樹脂組成物又は比較の樹脂組成物と容器との組合せを表1~3のとおりとし、各容器に各セルロース樹脂組成物又は比較の樹脂組成物を25kg収容して内体の開口をテープで封止し、実施例及び比較例に係る包装体を得た。なお実施例8と実施例9とは同じ容器及びセルロース樹脂組成物を用いた例であるが、実施例8は「初期」を室温(23℃)、大気中で2時間の静置後、とした点で実施例9と異なる。容器、セルロース樹脂組成物及び包装体の構成及び評価結果を表1~3に示す。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
表1~3に示す結果から、高リグニン部材と低リグニン部材との組合せを有する容器を用いることによって、セルロース樹脂組成物の黄変、及び更には吸水を良好に抑制し得ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明に係る容器は、セルロース樹脂組成物の変色を抑制可能であることから、セルロース樹脂組成物の収容の用途において特に好適に利用できる。