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特許7481443金属ホログラムから形成される個人化画像を有するセキュリティ文書及びその製作方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】金属ホログラムから形成される個人化画像を有するセキュリティ文書及びその製作方法
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/328 20140101AFI20240501BHJP
   B42D 25/23 20140101ALI20240501BHJP
   B42D 25/435 20140101ALI20240501BHJP
【FI】
B42D25/328 120
B42D25/23
B42D25/435
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022532007
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 FR2020052053
(87)【国際公開番号】W WO2021105582
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】1913513
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519260337
【氏名又は名称】アイデミア フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100202201
【弁理士】
【氏名又は名称】兒島 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】デュリエ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】アズエロス,ポール
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-517415(JP,A)
【文献】特開平5-16581(JP,A)
【文献】特開2017-111344(JP,A)
【文献】特開2001-199167(JP,A)
【文献】特開2018-39269(JP,A)
【文献】特表2013-508186(JP,A)
【文献】特開2019-155727(JP,A)
【文献】特表2020-531309(JP,A)
【文献】特表2013-527938(JP,A)
【文献】特開2008-142914(JP,A)
【文献】特開2005-219296(JP,A)
【文献】特開平9-311614(JP,A)
【文献】国際公開第2011/124774(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3521052(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3279003(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1997643(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 1/00-25/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティ文書(2)において、
-各々が異なる色の複数のサブピクセル(31)を含むピクセル(30)の配置(29)を形成する金属ホログラフィック構造(32)を含む第一の層(24)と、
-前記第一の層と対向して位置付けられた第二の層(34)であって、少なくとも可視波長スペクトルに対して不透明である第二の層(34)と、
を含み、
-前記第一の層は第一のレーザビーム(LS1)により形成される第一の穿孔(40)を含み、前記第一の穿孔(40)の少なくとも第一の部分は、前記ホログラフィック構造を通して、前記第一の穿孔(40)の前記少なくとも第一の部分と対向する位置にある前記第二の不透明層の下地領域(41)により生成される前記サブピクセル内の複数の暗領域(42)を局所的に出現させて、前記ピクセル(30)の配置と前記暗領域(42)との組み合わせから個人化画像(IG)を形成するセキュリティ文書(2)。
【請求項2】
前記ピクセルの配置の各ピクセルは、前記ピクセル内で各サブピクセルが1つの色を有するように構成される、請求項1に記載の文書。
【請求項3】
前記第一の層は、
-ホログラフィックアレイのレリーフを形成する樹脂下層と、
-前記樹脂下層の前記レリーフの上に堆積される金属下層であって、前記樹脂下層のそれより高い屈折率を有する金属下層と、
を含む、請求項1又は2に記載の文書。
【請求項4】
前記第二の不透明層は、前記第一の層と対向する不透明な黒い表面を含むか、又はその全体に不透明化のための黒い色素を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の文書。
【請求項5】
前記第一のレーザビームは、前記可視波長スペクトルとは異なる第一の波長スペクトルである、請求項1~4の何れか1項に記載の文書。
【請求項6】
前記第一の穿孔の前記少なくとも第一の部分は、前記ホログラフィック構造の厚さ全体を通じて延び、前記第二の不透明層の前記下地領域を出現させる貫通穿孔である、請求項5に記載の文書。
【請求項7】
第三の層(50)であって、前記第二の層(34)と対向し、前記第二の層が前記第一の層(24)と前記第三の層(50)との間に挟まれるように配置される第三の層(50)を含み、
-前記第三の層は透明であるか、又は第二の不透明層より薄い色であり、前記個人化画像(IG)の背景を形成し、
-前記第二の層(34)は、前記第一のレーザビームとは異なる第二のレーザビーム(LS2)により形成される第二の穿孔(52)を含み、前記第二の穿孔は、前記第一の穿孔の第二の部分の延長部内に位置付けられ、対向する位置にある前記第一及び第二の穿孔が、前記ホログラフィック構造を通して、及び前記第二の不透明層を通して、前記第二の穿孔と対向する位置にある前記第三の層の下地領域により生成される前記サブピクセル内の複数の明領域を局所的に出現させて、前記ピクセルの配置と前記暗領域と、及び前記明領域との組み合わせから個人化画像を形成する、
請求項1~6の何れか1項に記載の文書。
【請求項8】
前記第二の穿孔は、前記第二の層の厚さ全体を通じて延び、対向する位置にある第一の穿孔の前記第二の部分と共に、第一及び第二の層を通して前記不透明な第三の層の前記下地領域を出現させる貫通穿孔である、請求項7に記載の文書。
【請求項9】
前記明領域は前記暗領域より明るい領域である、請求項7又は8に記載の文書。
【請求項10】
文書の製造方法において、
-各々が異なる色の複数のサブピクセルを含むピクセルの配置を形成する金属ホログラフィック構造を含む第一の層を供給するステップ(S2)と、
-前記第一の層と対向して第二の層を位置付けるステップ(S4)であって、前記第二の層は少なくとも可視波長スペクトルに対して不透明であるステップ(S4)と、
-前記第一の層内に、第一のレーザビームによって第一の穿孔を形成するステップであって、前記第一の穿孔の少なくとも第一の部分は、前記ホログラフィック構造を通して、前記第一の穿孔の前記少なくとも第一の部分と対向する位置にある前記第二の不透明層の下地領域により生成される前記サブピクセル内の複数の暗領域を局所的に出現させて、前記ピクセルの配置と前記暗領域との組み合わせから個人化画像を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記第一のレーザビーム(LS1)は、前記可視波長スペクトルとは異なる第一の波長スペクトル(SP1)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
-第三の層を前記第二の層と対向して、前記第二の層が前記第一の層と前記第三の層との間に挟まれるように位置付けるステップ(S10)であって、前記第三の層は透明であるか、前記第二の不透明層より薄い色であり、前記個人化画像の背景を形成するステップと、
-前記第二の層内に、前記第一のレーザビームとは異なる第二のレーザビームにより第二の穿孔を形成するステップ(S12)であって、前記第二の穿孔は前記第一の穿孔の第二の部分の延長部内に位置付けられ、それによって対向する位置にある前記第一及び第二の穿孔は、前記ホログラフィック構造を通して、及び前記第二の不透明層を通して、前記第二の穿孔と対向する位置にある前記第三の層の下地領域により生成される前記サブピクセル内の複数の明領域を局所的に出現させて、前記ピクセル配置と前記暗領域との、及び前記明領域との組み合わせから個人化画像を形成するステップと、
を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記第三の層は前記第一及び第二のレーザビームを透過させる、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像を形成するための技術に関し、より詳しくは、カラー画像を形成するもとになるピクセルの配置を形成するホログラフ構造を含む文書に関する。
【背景技術】
【0002】
現時点で、アイデンティティ市場においてはますます安全性の高い身分証明文書(ID文書としても知られる)が必要とされている。これらの文書は、認証は容易で、偽造は困難(可能であれば変造不能)でなければならない。この市場は、身分証明カード、パスポート、通行証、運転免許証(カード、冊子等)をはじめとする多種多様な文書に関係している。
【0003】
特に人を安全に識別するために、画像を含む各種のセキュリティ文書が長年にわたり開発されてきた。現在ではより多くのパスポート、身分証明カード、又はその他の公式文書がセキュリティ要素を含んでおり、これが文書を認証し、不正行為、変造、又は偽造のリスクを制限するために使用される。例えば電子パスポート等のチップカードを含む電子身分証明文書は近年、著しい普及を遂げている。
【0004】
これまで、カラー印刷を行うために様々な印刷技術が開発されてきた。特に、上述のような身分証明文書の作成には、悪意の個人による変造のリスクを制限するために、安全にカラー画像を生成することが必要となる。このような文書、特に所有者の身分証明用画像の製造は、無許可の個人による複製又は変造を困難にするのに十分に複雑である必要がある。
【0005】
それゆえ、既知の解決策は、カラーサブピクセルからなるピクセルマトリクスを裏材に印刷し、ピクセルマトリクスに面するレーザ加工可能層にレーザ炭化によりグレイの陰影を形成することによって、例えば変造又は複製が困難な個人化されたカラー画像を出現させることにある。この技術の例示的な実施形態は、例えば欧州特許第2 580 065 B1号明細書(2014年8月6日付)及び欧州特許第2 681 053 B1号明細書(2015年4月8日付)の文献の中に記載されている。
【0006】
この既知の技術は良好な結果を提供するものの、依然として、特にこのように形成される画像の視覚的レンダリングの品質の点で改良の余地がある。これは、この画像形成技術を用いたのでは高レベルの彩度を実現するのが難しいからである。換言すれば、この既知の技術の色域(ある範囲の色を再現する能力)は限定的であることが判明しており、これは使用のケースによっては問題となりかねない。これは特に、カラーサブピクセルが従来の印刷方法、例えば「オフセット」型印刷により形成されるからであり、これは十分に直線的で連続的な行のピクセルを形成できず、それによって、サブピクセルを印刷する際の均一性の欠陥(ピクセル行の中断、不ぞろいな輪郭等)、及び比色レンダリングの劣化が起こる。
【0007】
現在の印刷技術では位置決め精度も限定的であり、これは印刷機械の不正確さによるもので、それによって最終的な画像の品質も、ピクセル及びサブピクセルの相互に関する位置決めの不良(ピクセルの重複、ミスアラインメント等の問題)により、又はサブピクセル間の印刷されない許容間隔の存在により、低下する。
【0008】
図1は、ピクセルオフセット4による印刷2の例を示し、これは異なる色のサブピクセルの行6の形態をとっている。図のように、サブピクセルの各行6の輪郭は不規則部を含む。これらの行の位置決めに当たっては、印刷中の位置決めの不正確さから、許容誤差を含めなければならない。
【0009】
図1に示されるように、各ピクセルのサブピクセルの均一性及び位置決めのこれらの不良を補償するため(及び、それゆえ隣接するピクセル間のあらゆる重複と所望の色の劣化を回避するため)に、サブピクセルを、それらの間に白領域8が保持されるように印刷することが可能である。しかしながら、このように白領域を追加する方式には、それによって、ある色について得られる可能性のある色域レベルが限定され、その結果、満足できる色域が得られなくなるという点で欠点がある。
【0010】
現在、特に身分証明文書、公式文書、又はその他の文書等の文書において、個人化画像(カラー又は白黒)を安全に形成するニーズがある。特に、カラー画像を柔軟に、及び安全に個人化し、このように生成された画像が変造又は複製しにくく、且つ容易に認証できるものとなるようにすることが求められている。
【0011】
現在、適切なレベルのセキュリティとフレキシビリティを提供できても、十分な色域と共に良好なレベルの画像輝度を得ること、また特に、例えば画像領域がある色において高い彩度レベルを有していなければならない場合に、特定の高品質のカラー画像を形成するのに必要なカラーの陰影(color shade)を得ることも可能にするような解決策はない。
【0012】
上述の問題及び不適当さに鑑み、レーザ加工可能な層にカラーピクセル配置を形成するホログラフィック構造を配置することによって、及びレーザ加工可能層の中にレーザに対して不透明な領域を形成してピクセル配置内にグレイの陰影を生成することによって、カラー画像を形成することが考案されている。
【0013】
図2は、特定の例により、第一のレーザ加工可能な透明層4と第二のレーザ加工可能な透明層8との間に挟まれたホログラフィック層6により形成されるスタックを含む構造2を示している。ある変形型では、構造2は2つのレーザ加工可能層4及び8のうちの一方のみを含むことができる。
【0014】
この例では、ホログラフィック層4はホログラフィック金属構造を含み、それがホログラフィック効果によってカラーピクセルの配置を形成する。さらに、透明層4及び8は、これらが光の透過を少なくとも部分的に遮断するためにレーザビーム12による炭化によって局所的に不透明化できるという意味で、レーザに対する感受性を有する。レーザ加工可能な層4及び8はそれゆえ、領域(又は体積)14、いわゆる「不透明領域」を含み、これらはレーザビーム12によって局所的に不透明化され、これらの不透明領域は、ピクセルの特定部分をマスクし、それゆえグレイの陰影を生成して個人化されたカラー画像10を出現させるために、ホログラフィック構造に面して位置付けられる。
【0015】
レーザ12により送達されるパワーを変化させることにより、所望の大きさの不透明領域14をこのようにピクセル配置の特定の位置に形成し、個人化画像10を作ることができる。
【0016】
この方式により、有利な点として、不透明領域とホログラフィック層により形成されたピクセル配置との間の相互作用により安全なカラー画像を形成するような方法でカラーの陰影を作り出すことが可能となる。それゆえ、満足できる画像品質を有すると同時に、安全であり、したがって変造及び不正な複製に対する耐性を有するカラー画像を形成することが可能となる。
【0017】
しかしながら、局所的に不透明化されるレーザ加工可能な層と対向する金属ホログラフィック層を含むこのような構造の製造中には、構造上の欠陥が生じることが見られている。特に、レーザ加工可能な層のレーザ炭素化中に構造内に気泡が形成され、それがスタックの剥離及び周辺領域におけるホログラフィック構造の破壊の原因となる。
【0018】
例えば、図3はレーザ加工可能な透明層17(ポリカーボネート製)と対向するように位置付けられた金属ホログラフィック層16を含む構造15の断面図である。図からわかるように、その製造中、気泡18が構造15中に形成されて、不可逆的な損傷を引き起こしている。
【0019】
綿密な研究により、これらの気泡の形成(「ブリスタ形成」効果として知られる)は、レーザ加工可能層内に不透明領域を形成するためのレーザ照射により引き起こされると判断された。具体的には、レーザビームにより送達されるパワーによって金属ホログラフィック構造内で加熱が起こり、これらの気泡が生じ、それゆえ、ホログラフィック構造の不可逆的破壊がもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
そのため、高いコントラストと高い画像品質を有しながら、前述の問題及び欠点を緩和する安全なカラー画像を形成するために、新規な画像形成技術を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的のために、本発明は、
-各々が異なる色の複数のサブピクセルを含むピクセル配置を形成する金属ホログラフィック構造を含む第一の層と、
-第一の層に対向して位置付けられた第二の層であって、少なくとも可視波長スペクトルに対して不透明である第二の層と、
を含み、
第一の層は、第一のレーザビームにより形成された第一の穿孔を含み、第一の穿孔の少なくとも第一の部分は、ホログラフィック構造を通して、第一の穿孔の前記少なくとも第一の部分に対向する位置にある第二の不透明層の下地領域により生成されたサブピクセル内の複数の暗領域を局所的に出現させて、ピクセル配置と暗領域との組み合わせから個人化画像を形成するセキュリティ文書に関する。
【0022】
本発明により、有利な点として、高品質であり(特に高いコントラストを有する)、認証が容易で、不正行為、変造、又は偽造のリスクに関して堅牢な個人化画像をカラー又は白黒で形成することが可能となる。これは特に、本発明によってレーザ炭素化を必要とするレーザ加工可能層の使用を回避できるために可能であり、その使用は前述のように、気泡を発生させ(ブリスタ形成)、したがって構造に破壊又は不可逆的損傷を与える原因となり得る。レーザ加工可能層を持たない個人化画像を形成することによって、強力なレーザを構造に照射することを回避し、それゆえその完全性を保持できる。
【0023】
特定の実施形態によれば、前記ピクセル配置の各ピクセルは、前記ピクセル内で各サブピクセルが1つの色を有するように構成される。
【0024】
特定の実施形態によれば、第一の層は、
-ホログラフィックアレイのレリーフを形成する樹脂下層と、
-樹脂下層のレリーフの上に堆積される金属下層であって、樹脂下層のそれより高い屈折率を有する金属下層と、
を含む。
【0025】
特定の実施形態によれば、第二の不透明層は、第一の層と対向する不透明な黒い表面を含むか、又はその全体に不透明化のための黒い色素を含む。
【0026】
特定の実施形態によれば、第一のレーザビームは、可視波長スペクトルとは異なる第一の波長スペクトルである。
【0027】
特定の実施形態によれば、第一の穿孔の前記少なくとも第一の部分は、ホログラフィック構造の厚さ全体を通じて延び、第二の不透明層の前記下地領域を出現させる貫通穿孔である。
【0028】
特定の実施形態によれば、セキュリティ文書は、第三の層であって、第二の層と対向し、前記第二の層が第一の層と第三の層との間に挟まれるように配置される第三の層を含み、
-前記第三の層は透明であるか、又は第二の不透明層より薄い色であり、個人化画像の背景を形成し、
第二の層は、第一のレーザビームとは異なる第二のレーザビームにより形成される第二の穿孔を含み、第二の穿孔は、第一の穿孔の第二の部分の延長部内に位置付けられ、対向して配置された第一及び第二の穿孔が、ホログラフィック構造を通して、及び第二の不透明層を通して、前記第二の穿孔と対向する位置にある第三の層の下地領域により生成されるサブピクセル内の複数の明領域を局所的に出現させて、ピクセル配置と暗領域との、及び明領域との組み合わせから個人化画像を形成する。
【0029】
特定の実施形態によれば、第二の穿孔は、第二の層の厚さ全体を通じて延び、対向して配置された第一の穿孔の第二の部分と共に、第一及び第二の層を通して第三の不透明層の前記下地領域を出現させる貫通穿孔である。
【0030】
特定の実施形態によれば、明領域は暗領域より明るい領域である。
【0031】
本発明はまた、それに対応する製造方法にも関する。より具体的には、本発明は文書の製造方法に関し、これは、
-各々が異なる色の複数のサブピクセルを含むピクセル配置を形成する金属ホログラフィック構造を含む第一の層を供給するステップと、
-第一の層と対向して第二の層を位置付けるステップであって、前記第二の層は少なくとも可視波長スペクトルに対して不透明であるステップと、
-第一の層内に、第一のレーザビームによって第一の穿孔を形成するステップであって、第一の穿孔の少なくとも第一の部分は、ホログラフィック構造を通して、第一の穿孔の前記少なくとも第一の部分と対向する位置にある第二の不透明層の下地領域により生成されるサブピクセル内の複数の暗領域を局所的に出現させて、ピクセル配置と暗領域との組み合わせから個人化画像を形成するステップと、
を含む。
【0032】
特定の実施形態によれば、第一のレーザビームは、可視波長スペクトルとは異なる第一の波長スペクトルである。
【0033】
特定の実施形態によれば、製造方法は、
-第三の層を第二の層と対向して、前記第二の層が第一の層と第三の層との間に挟まれるように位置付けるステップであって、前記第三の層は透明であるか、又は第二の不透明層より薄い色であり、個人化画像の背景を形成するステップと、
-第二の層内に、第一のレーザビームとは異なる第二のレーザビームにより第二の穿孔を形成するステップであって、第二の穿孔は第一の穿孔の第二の部分の延長部に位置付けられ、それによって対向して配置された第一及び第二の穿孔は、ホログラフィック構造を通して、及び第二の不透明層を通して、前記第二の穿孔と対向する位置にある第三の層の下地領域により生成されるサブピクセル内の複数の明領域を局所的に出現させて、ピクセル配置と暗領域との、及び明領域との組み合わせから個人化画像を形成するステップと、
を含む。
【0034】
特定の実施形態によれば、第三の層は第一及び第二のレーザビームに対して透過性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】前述のように、裏材上へのカラーサブピクセルの行の印刷を概略的に表す。
図2】前述のように、個人化画像を形成するための既知の構造を概略的に表す。
図3】前述のように、画像の製造中に既知の構造内に発生する欠陥を表す。
図4】本発明の特定の実施形態による、個人化画像を含むセキュリティ文書を概略的に表す。
図5】本発明の特定の実施形態による、初期状態の多層構造を概略的に表す断面図である。
図6】本発明の特定の実施形態による、個人化画像を形成する多層構造を概略的に表す断面図である。
図7】本発明の特定の実施形態による、多層構造のホログラフィック層の中に形成される第一の穿孔を表す。
図8】本発明の特定の実施形態による、個人化前及び個人化後の多層構造を概略的に表す。
図9A】本発明の特定の実施形態による、不透明層を持たない多層構造により形成された画像と、不透明層が設けられた多層構造により形成される画像をそれぞれ表す。
図9B】本発明の特定の実施形態による、不透明層を持たない多層構造により形成された画像と、不透明層が設けられた多層構造により形成される画像をそれぞれ表す。
図10】本発明の特定の実施形態による、ホログラフィック構造のレリーフを概略的に表す。
図11A】本発明の特定の実施形態による、ピクセル及びサブピクセルの配置を概略的に表す。
図11B】本発明の特定の実施形態による、ピクセル及びサブピクセルの配置を概略的に表す。
図12A】本発明の特定の実施形態による、ピクセル及びサブピクセルの配置を概略的に表す。
図12B】本発明の特定の実施形態による、ピクセル及びサブピクセルの配置を概略的に表す。
図12C】本発明の特定の実施形態による、ピクセル及びサブピクセルの配置を概略的に表す。
図13】本発明の特定の実施形態による、個人化画像を形成する多層構造を概略的に表す断面図である。
図14】本発明の特定の実施形態による、製造方法を概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
前述のように、本発明は概してカラー画像の形成に関し、特にこのような画像を含むセキュリティ文書に関する。
【0037】
本発明は、ピクセル配置を形成する金属ホログラフィック層と金属ホログラフィック層と対向して配置された不透明層から安全にカラー画像を形成することを提案する。金属ホログラフィック層は穿孔(すなわち穴)を含み、それが穿孔と対向する位置にある不透明層の(対応する)下地領域により生成されるピクセル配置内の暗(不透明、非反射性)領域を局所的に出現させて、ピクセル配置と暗領域との組み合わせから個人化画像を形成する。
【0038】
本発明は特に、各々が異なる色の複数サブピクセルを含むピクセル配置を形成する金属ホログラフィック構造を含む第一の層と、第一の層と対向して位置付けられる第二の層と、を含むセキュリティ文書に関する。この第二の層は、少なくとも可視波長スペクトルに関して不透明である。第一の層は、第一のレーザビームによって形成される(すなわち、レーザエッチング)穿孔を含み、これらの穿孔(又は、それらの少なくとも一部)は、ホログラフィック構造を通して、穿孔と対向する位置にある第二の不透明層の(対応する)下地領域によって生成されるサブピクセル内の複数の暗(又は黒)領域を局所的に出現させて、ピクセル配置と暗領域との組み合わせから個人化画像を形成する。
【0039】
以下に説明するように、それゆえ、高品質(特に、高コントラストを有する)で、認証が容易であり、不正行為、変造、又は偽造のリスクに関して堅牢な個人化画像をカラー又は白黒で形成し、前述のように気泡(ブリスタ形成)を生じさせ、したがって構造の破壊又は不可逆的損傷の原因となるレーザ炭素化を必要とするレーザ加工可能層の使用を回避することが可能である。レーザ加工可能層を持たない個人化画像を形成することによって、強力なレーザを構造に照射するのを回避し、それゆえその完全性を保持することができる。
【0040】
本発明はまた、このような個人化画像を形成する方法にも関する。
【0041】
本発明のその他の特徴と利点は、前述の図面に関して以下に説明される例示的な実施形態から明らかとなるであろう。
【0042】
本発明の以下の部分では、本発明の例示的な実施形態が、本発明の原理によるカラー画像を含む文書の場合について説明される。この文書は、冊子、カード、又はその他のタイプのあらゆる文書、いわゆるセキュリティ文書であり得る。本発明は特に、身分証明カード、クレジットカード、パスポート、運転免許証、セキュリティパス等のID文書中の身分証明画像の形成に使用される。本発明はまた、少なくとも1つのカラー画像を含むセキュリティ文書(紙幣、公証文書、公式証明書等)にも適用される。
【0043】
一般に、本発明による画像は何れの適当な裏材にも形成できる。
【0044】
同様に、後述の例示的な実施形態は身分証明画像の形成に関する。しかしながら、当該のカラー画像はいかなる種類のものとすることもできると理解されたい。これは例えば、当該の文書の保持者の肖像写真を示す画像とすることができるが、それにもかかわらず、他の実装も可能である。
【0045】
特に別段の明示がなされないかぎり、複数の図面を通じて共通する、又は同様の項目には同じ参照符号が付され、同じ又は同様の特徴を有しており、これらの共通の項目については一般に、簡潔にするために再度説明されることはない。
【0046】
前述のように、カラー画像IGは何れの裏材にも形成できる。図4は、特定の実施形態によるセキュリティ文書20を表し、これは文書本体21を含み、その中又は上に本発明の原理によるセキュリティ画像IGが形成される。
【0047】
以下の例示的な実施形態において、セキュリティ文書20は、例えば身分証明カード、身分証明パス、又はその他の形態のカードの形態をとるID文書であると仮定する。これらの例において、画像IGはカラー画像であり、そのパターンは文書の保持者の肖像写真に対応する。前述のように、それにもかかわらず、他の例も可能である。
【0048】
図5は、初期(ブランク)状態の多層構造22を表し、そこから図4に示されるような個人化カラー画像IGを形成できる。図6に関してさらに説明するように、この構造22は、個人化画像IGを形成するために個人化できる。
【0049】
図5に示されるように、構造22は、ホログラフィック層24(「第一の層」ともいう)と、ホログラフィック層24と対向して位置付けられた不透明層34(「第二の層」ともいう)を含む。この例において、ホログラフィック層24は不透明層34の上に配置されているが、1つ又は複数の中間層がホログラフィック層24と不透明層34との間に存在する変形型も可能である。
【0050】
ある変形型において、不透明層34は透明層によってホログラフィック層から離間される。不透明層とホログラフィック層との間に間隔を設けることにより、特に、後述のように(図13~14)不透明層もまたレーザにより穿孔又はエッチングされる特定の状況において最終画像内で色味変動効果を得ることを可能にできる。
【0051】
ホログラフィック層24は、ピクセル30の配置29を形成する金属ホログラフィック構造32を含み、これらのピクセル30の各々は異なる色の複数のサブピクセル31を含む。
【0052】
より詳しくは、ホログラフィック構造32は本質的に、形成しようとされるカラー画像IGのパターンを定義する情報をピクセル30が含まないという意味でブランクであるピクセルの配置29を形成する。後述するように、個人化カラー画像IGのパターンの出現は、このピクセルの配置29を暗領域(図6に示す)と組み合わせることによって実現される。
【0053】
ホログラフィック構造32は、入射光の回折、屈折、及び/又は反射によるホログラムの形態でピクセル30の配置29を生成する。ホログラムの原理は当業者の間でよく知られている。特定の項目についての復習の意味合いの情報は、後で参考までに提供する。ホログラフィック構造の例示的な実施形態は例えば、欧州特許第2 567 270 B1号明細書の文献に記載されている。
【0054】
図5に表されているように、ホログラフィック層24は層(又は下層)26のほか、レリーフ(又はレリーフ構造)30を含み、これには情報の三次元項目が含まれ、裏材としての役割を果たす層26の基礎の上に形成される。これらのレリーフ30は、凹部(「谷」ともいう)により分離される凸部(「山」とも呼ぶ)を形成する。
【0055】
ホログラフィック層22はいわゆる「高屈折率」層(又は下層)28をさらに含み、これはレリーフ30の屈折率n1より大きい屈折率n2を有する(ここで、レリーフ30は、裏材の役割を果たす層26の一体部分であり、レリーフ30と層26は同じ屈折率n1を有すると仮定される)。ここで、この高屈折率層28は、ホログラフィック層24のレリーフ30を覆う金属層であると考えられる。当業者であればわかるように、レリーフ30は層28と共にホログラムを生成するホログラフィック構造32を形成する(すなわち、ホログラフィック効果)。
【0056】
ホログラフィック構造32のレリーフ30は、例えばスタンピング樹脂の層(この例では層26に含まれる)を既知の方法でエンボス加工して、回折構造を生成することによって形成できる。それゆえ、レリーフ30のスタンピング表面は周期的アレイの形状を有し、その深さと周期はそれぞれ例えば100~数百ナノメートル程度とすることができる。このスタンピング面は、例えば金属材料の真空蒸着によって層34で被覆される。ホログラフィック効果は、レリーフ30と、ホログラフィック構造32を形成する層28の関連付けから得られる。
【0057】
ホログラフィック層24は、適当であれば、ホログラムの光学上の特徴を保持するために必要な、及び/又は全体の機械的及び化学的耐性を確保するその他の下層(図示せず)を含むことができる。
【0058】
高屈折率金属層28(図5)は、以下の材料の少なくとも1つを含み得る:アルミニウム、銀、銅、硫化亜鉛、酸化チタン等。
【0059】
本明細書に記載の例示的な実施形態において、ホログラフィック層24は透明であり、それによってピクセル30の配置29を生成するホログラフィック効果は、回折、反射、及び屈折により目に見える。
【0060】
ホログラフィック構造32は、当業者の間で知られている何れの適当な方法でも製作される。
【0061】
レリーフ30の屈折率はn1で示され、これは例えば波長λ=656nmで1.56程度である。
【0062】
ここで検討中の例(図5)において、層26は透明樹脂層である。ホログラフィック構造32は、薄膜28で被覆され、例えばアルミニウム又は硫化亜鉛で製作され、高い屈折率n2(n1に関して)、例えば硫化亜鉛の場合は波長λ=660nmで2.346を有する。薄膜28の厚さは例えば30~200nmである。
【0063】
層26は熱間成形可能な層とすることができ、それゆえ、ホログラフィック構造32のレリーフ30を、裏材としての役割を果たす層26のエンボス加工により形成できる。変形型では、ホログラフィック構造32のレリーフ30は、紫外線硬化法(UV)を用いて生成できる。これらの製造技術は当業者の間で知られているため、簡潔にするためにここではこれ以上詳しく説明しない。
【0064】
引き続き図5を参照すると、ホログラフィック層に関して位置付けられる第二の層34は、少なくとも可視波長スペクトルに関して不透明(非反射性)である。換言すれば、第二の層34は少なくとも可視スペクトルの波長を吸収する。これは例えば、暗い層(例えば黒)である。本明細書において、可視スペクトルはほぼ400~800ナノメートル(nm)、又はより正確には真空中で380~780nmであると考えられる。しかしながら、この第二の層34は他の波長、特に赤外線に対しては透過性を有することができる点に留意されたい。
【0065】
特定の実施形態によれば、不透明層34は、セキュリティ文書20内に形成される、特に前記不透明層から始まるセキュリティ画像IG(図4)の黒の濃度が、不透明層34を持たない(それとは別の)ホログラフィック層24の黒の本来の濃度より高い、というものである。当業者の間でよく知られているように、黒の濃度は、適当な測定器(例えば、比色計又は分光計)によって測定可能である。
【0066】
特定の例によれば、不透明層34はホログラフィック層24と対向する不透明な黒い表面を含み、及び/又はその全体に黒若しくは不透明にする黒い(又は濃い色の)色素を含む。不透明層34は特に、黒インク又は、その全体が黒若しくは不透明化する(又は濃い色の)色素で染色された材料を含み得る。
【0067】
前述のように、ホログラフィック構造32は本質的に、形成しようとするカラー画像IGのパターンを定義する情報をピクセル30が含まないかぎり、ブランクであるピクセルの構成29を形成する。図5に示される初期状態(個人化前)では、したがって、構造22はいかなる個人化画像IGも形成していない。図6に示されるように、特定の実施形態では、例えば作り出したい個人化画像IGのパターンを出現させるために、ピクセルの配置29を暗領域と組み合わせることによって多層構造を個人化することができる。
【0068】
より詳しくは、図6に示されるように、多層構造22のホログラフィック層24は第一のレーザビームLS1により形成される(すなわち、レーザエッチング)穿孔(すなわち、穴)40をさらに含む。穿孔40は、本発明の意味における「第一の穿孔」を構成する。後述のように、特定の実施形態によれば、その他の種類の穿孔も形成できる。
【0069】
第一の穿孔40は、ホログラフィック層24がレーザの穿孔効果により破壊又は除去される領域を構成する。
【0070】
これらの穿孔40(又は、後述のようにこれらの少なくとも一部)は、ホログラフィック構造32を通して、穿孔40と対向する位置にある不透明層34の(対応する)下地領域41により生成されるサブピクセル31内の暗領域(不透明、非反射)42を局所的に出現させて、ピクセル30の配置29と暗領域42との組み合わせに基づいて、個人化カラー画像IGを形成する。
【0071】
図6に示される例において、穿孔40は、ホログラフィック構造32の厚さ全体(より一般的には、ホログラフィック層24の厚さ全体)通じて延び、ピクセル30の配置29のレベルで不透明層34の下地領域40を出現させる貫通穿孔である。換言すれば、これらの穿孔40をレーザによりホログラフィック層24の厚さにわたって形成することにより、不透明層34の下地領域41を露出させて、サブピクセル31の全部又は一部に暗(又は不透明)領域42を生成することができる。
【0072】
それゆえ、穿孔40はホログラフィック構造32の複数のサブピクセル31の全部又は一部を占める。すると、第二の層34の不透明な性質から、サブピクセル31の穿孔部分において暗(又は、不透明)領域42を生成させる。
【0073】
これを行うために、穿孔40は各種の形状及び寸法を有することができ、これらは場合に応じて変更できる。
【0074】
より具体的には、穿孔40は、ホログラフィック層24により形成されるピクセル30の少なくとも一部において相互に関してサブピクセル31の比色寄与度を変化させることによってピクセル30の色を選択し、暗領域42と組み合わせられたピクセルの配置29に基づいて、個人化画像IGを出現させるように配置される。
【0075】
ホログラフィック層24のレーザ穿孔により、ホログラフィック構造32の、より詳しくはレリーフ30及び/又は前記レリーフを覆う層28の形状の局所的な除去(又は変形)が行われる。これらの局所的な破壊により、対応するピクセル及びサブピクセル内の光の挙動(すなわち、光の反射、回折、透過、及び/又は屈折)が変化することになる。
【0076】
穿孔によってサブピクセル31の全部又は一部を局所的に破壊することにより、及びその代わりに不透明層34の暗又は不透明部分を出現させることにより、最終画像IGの視覚的レンダリングにおいて、特定のサブピクセルの比色寄与度を相互に関して変化させることによってピクセル30内にグレイの陰影(又は、カラーの陰影)が生成される。暗領域42を作り出すことにより、特に、光の透過を変調させて、ピクセル30の少なくとも一部について、1つ又は複数のサブピクセルが当該のピクセルの少なくとも1つおきの隣接するサブピクセルのそれに関して増大又は減少された比色寄与度(又は重さ)を有するようにすることができる。
【0077】
特に、ピクセル30の少なくとも一部の中の1つ又は複数のサブピクセル31を部分的又は全体的に選択的に説明することによって、その領域のホログラフィック効果が変調する。ホログラフィック効果は、ホログラフィック構造27の穿孔領域では排除されるか、又は軽減され、それによって、少なくとも部分的に穿孔されたサブピクセル31の、当該のピクセル30の少なくとも1つおきの隣接するサブピクセル31に関する相対的な色寄与度が低下する(又は、さらには完全に排除される)。
【0078】
ここでは、このように作られる画像IGは、カラーサブピクセル31の比色寄与度の選択的な変調から得られるカラー画像であると仮定する。しかしながら、例えばサブピクセル31の色を相応に調整することにより、同様にしてグレイスケールの個人化画像IGを生成することもできる点に留意されたい。
【0079】
ホログラフィック構造32に穿孔(すなわち穴)40を形成するために使用されるレーザビームLS1(「第一のレーザビーム」ともいう)は、好ましくは可視波長スペクトルとは異なる第一の波長スペクトルSP1である。そのために、例えばYAGレーザ(例えば、波長1064nm)、青色レーザ、UVレーサ等を使用することができる。さらに、例えば1kHz~100kHzのパルス周波数を印加することも可能であるが、その他の構成も想定可能である。当業者の裁量でレーザビームLS1の構成を状況に応じて選択できる。
【0080】
さらに、ホログラフィック層24(及び、より具体的にはホログラフィック構造32)がレーザビームLS1により送達されるエネルギを少なくとも部分的に吸収して、前述の穿孔40を形成することが必要である。換言すれば、第一のレーザビームLS1は、ホログラフィック構造32により少なくとも部分的に吸収される波長スペクトルSP1により特徴付けられる。ホログラフィック層24の材料は相応に選択される。
【0081】
特定の例によれば、ホログラフィック構造32を形成する材料は、これらが可視スペクトルの光を吸収しないように選択される。このようにして、可視スペクトル範囲外で発せられるレーザビームによって穿孔40を形成し、ホログラフィック効果によって人間の目に見える個人化画像IGを生成することが可能となる。材料の例は後述する(透明ポリカーボネート、PVC、透明グルー等)。
【0082】
しかしながら、スペクトルSP1は好ましくは、光線LS1が不透明層34により吸収されないように選択される。
【0083】
ポリカーボネート又は他の何れかの適当な材料で製作される追加の層(図示せず)を多層構造22の何れかの側にさらに堆積させて、特にアセンブリを保持し得る。特に、それゆえ、透明層をホログラフィック層24の上面に堆積させることができる。
【0084】
一般に、本発明により、有利な点として、カラーの陰影を作り出して、不透明層の被覆されたままの不透明領域とホログラフィック層により形成されるピクセルの配置との間の相互作用により保護されるカラー画像を形成することができる。前述のようにこれらの不透明領域を穿孔により出現させて、入射光を方向付け、又はその通過を慎重に選択しなければ、ピクセルは、このアセンブリにカラー画像を特徴付ける情報がないかぎり、ブランク配置しか形成しない。ピクセルの視覚的外観を個人化し、それゆえ最終的なカラー画像を出現させるのは、サブピクセルの選択された配置に応じて構成される穿孔40である。
【0085】
このように不透明層を使ってグレイ又はカラーの陰影を発生させることにより、安全で、高い画像品質(特に、高いコントラスト)を有する個人化画像を形成し、他方で、前述のように構造の個人化中の構造的欠陥(ブリスタ形成の問題)の原因となるレーザ加工可能層の使用を回避できる。この方式により、1つ又は複数のレーザ加工可能層の使用を不要にすることができる。
【0086】
前述のように、多層構造内のレーザ加工可能層のレーザ炭化によって不透明領域を作るには、構造に高いパワーを送達する必要があり、それによって顕著な加熱及び気泡の形成という結果がもたらされ、これらは特に金属ホログラフィック構造にとって破壊的である。本発明により、このような気泡を発生させるリスクのあるものより低パワーのレーザビームを使用するか、又は少なくともそれより低いレーザパワーを照射することが可能となる。より低いレーザパワーで加工することによって、金属ホログラフィック構造の物理的完全性が保持される。
【0087】
特定の例によれば、穿孔40は、第一のレーザビームLS1をホログラフィック層24に、それを超えると前述のプリスタ形成効果が発生する可能性のある第一の閾値より低いか、それと等しいパワーで照射することによって形成され、それにより、構造22に損傷を与える原因となる気泡が生成されないことを確実にすることができる。しかしながら、この第一の、より低いパワー閾値は可変的であり、使用の各々のケースに依存する(特に、ホログラフィックの種類と使用されるレーザの特徴に依存する)。この第一の値は当業者により、特に、それを超えるとレーザが構造を破壊させることになる(気泡の出現)ようなレーザパワーを特定することを可能にする適切な実験的設計により特定できる。
【0088】
有利な点として、高品質の個人化画像IGを生成するために、ホログラム内にレーザにより形成される穴40の大きさを微細に構成できる。
【0089】
さらに、より低いレーザパワーを使用することによって、使用するレーザの寿命を延ばし、したがって製造コストを削減することが可能となる。レーザ不感材料(すなわち、レーザの効果により局所的に不透明化する能力を持たない)の使用によっても、製造コストを限定できる。
【0090】
ホログラフィックレーザの使用により、最終的な画像のより高い画像品質、すなわちより高い全体的な輝度(より高い明るさ、より鮮鋭な色)と、よりよい彩度調整能力を得ることができる。それゆえ、例えば印刷画像と比較して、色域が改善された高品質のカラー画像を形成できる。
【0091】
ホログラフィック構造を使ったピクセル配置を形成は、この手法によればそのように形成されるピクセルとサブピクセルの位置決めがより高精度化されるという点で有利である。この手法により、特にサブピクセル間の重複又はミスアラインメントを回避でき、これは全体的な視覚的レンダリングを改善する。
【0092】
本発明により、認証が容易で、変造及び不正な複製に対する耐性を有する個人化画像を生成することができる。本発明によって実現できる画像の複雑さと安全性のレベルは、画像の視覚的レンダリングの品質を犠牲にせずに得られる。
【0093】
さらに、本発明により、観察又は照明角度が変わったときの色味変動効果の出現を限定できる。特に、この色味変動効果の抑制は、不透明な黒い層とホログラムとの間隔が比較的小さい(例えば、間隔が100μm以下、好ましくは0μm~250μmの範囲)である場合、及び/又は特定の実施状況において黒い層の厚さが薄いことによりこの効果を限定する場合に実現できる。不透明な黒い層とホログラムとの間の間隔が250μmの数値を超えると、ホログラフィック構造のピクセルの大きさを顕著に大きくして、ホログラムの色味変動を限定することが必要となる可能性があり、その結果、最終的な画像の解像度が低下する。
【0094】
図5及び6に関して先に説明した実施形態では、不透明層34が多層構造22内に、それもこの多層構造22の一部であるホログラフィック層24と対向するように堆積させられる点に留意されたい。前述のように、不透明層22はホログラフィック層24の上又は下に直接固定又は形成でき、また、適当であれば、少なくとも1つの透明層で不透明層22をホログラフィック層22から区別できる。
【0095】
より一般的には、セキュリティ文書20(図4)の製作には、不透明層34をホログラフィック層24と対向するように位置付けて、特に前述のように暗領域42を出現させることができる必要がある。それに対して、不透明層34とホログラフィック層24が1つの同じ多層構造の一部であることは必須ではない。
【0096】
それゆえ、図5及び6の実施形態の変形型によれば、ホログラフィック層24と不透明層34はセキュリティ文書20の異なる部分に位置付けられ、これらの部分は移動可能であって、それにより不透明層34を、それがホログラフィック層24と対向して、暗領域42を出現させて、そのようにして個人化画像IGを形成するように位置付けることができる。
【0097】
それゆえ、セキュリティ文書20は例えば冊子(例えばパスポート)の形態をとることができ、その第一のページがホログラフィック層24を含み、別のページは透明層34を含み、これら両方のページが移動可能で、それによって不透明層34は、それがホログラフィック層24と対向して個人化画像IGを出現させるように位置付けることができる。特定の例によれば、第一のページは透明な窓を含み、その中にホログラフィック層24が配置され、不透明層34はこの第一のページに隣接するページに位置付けられる。このようにして、個人化画像IGは、背後に位置付けられた不透明層による反射によって、及び黒い層を使用しない場合には透過によっても読み取ることができる。この変形型によれば特に、レーザによる穿孔をホログラフィック層及び不透明層に行う場合(図13~14に関して後述する)、これらの穿孔を異なるステップで行うことが可能となり、それにより2回のレーザエッチング間の干渉(摂動)が限定される(それにより、ホログラフィック層のレーザ穿孔は不透明層に影響を与えず、またその逆である)。特に、ホログラフィック層と不透明層を物理的に分離することは、これら2回のレーザエッチングを別々に行いたい場合に有利である可能性があり、それは、特に同一のレーザを使って不透明層とホログラフィック層をエッチングし、他方で上述の相互摂動の問題を回避することができるからである。
【0098】
図7は、図5~6に関して先に説明したホログラフィック構造32の中にレーザビームLS1により形成される穿孔40を有する図である。この例では、穿孔は様々な大きさを有し、直径はほぼ9~35マイクロメートル(μm)である。
【0099】
穿孔40は、ホログラフィック層24の中に様々に配置できる点に留意されたい。特定の例によれば、穿孔40の大きさ及び/又は穿孔の数を変化させて、透明層34の下地領域41を出現させたい(すなわち、露出させたい)ピクセルの配置29の特定の領域の必要な穴密度を得ることができる。特に、穿孔40は例えば、行と列のマトリクス(直交又はそれ以外)に配置され得る。特定の例によれば、穿孔40は一定の直径を有する。これは、穴40の数と位置を変化させて、所望のカラーの陰影が得られるようすることによる。
【0100】
図8は、図5に関して述べたブランク状態の(すなわち、穿孔40を持たない)ピクセル30の配置29及び図6関して説明した、暗又は透明領域42により個人化画像IGを出現させることによって個人化されたピクセル30の配置29を概略的に示す。
【0101】
図9A及び9Bは、多層構造22内のピクセルの配置29の下にある不透明層34の、個人化画像IGの生成への寄与を示している。
【0102】
より具体的には、図9Aは本発明の概念により生成される個人化画像の例を示す。この例において、個人化画像は白黒の人の顔である。図9Bは、今度はピクセルの配置29の下の透明層34がない、取得された画像を示している。図からわかるように、透明層34は最終的な画像IGにおいて高いコントラストを提供し、それゆえ画像品質を大幅に改善する。
【0103】
図10は、凸部と凹部を含むホログラフィック構造32のレリーフ30の例を示す。本発明の範囲内で、ホログラフィック構造の様々な形状と寸法が可能である。
【0104】
引き続き図5~6を参照すると、ホログラフィック層24は他の各種の層で被覆し、又はそれと組み立てることができる。さらに、前述のように、ホログラフィック層24はピクセル30の配置29を形成する。各ピクセル30は複数のカラーサブピクセル31を含む。
【0105】
図11A及び11Bは特定の例を示しており、それによれば、各ピクセル30は3つのサブピクセル31を含む。しかしながら、ピクセル及びサブピクセルの数、形状、及びより一般的に構成は、状況に応じて変更できる。
【0106】
外からの観察者OBはそれゆえ、ホログラフィック層24のホログラフィック構造32からの光の屈折、反射、及び/又は回折に基づいて、特定の観察方向に沿ってピクセルの配置29を見ることができる。
【0107】
より正確には、各ピクセル30はホログラフィック層12内にあるホログラフィック構造32のある領域により形成される。ここではホログラフィック構造32のレリーフ30(図5~6)はサブピクセルの平行な行34を形成すると考えられるが、その他の実施例も可能である。各ピクセル30について、その成分であるサブピクセル31はそれゆえ、それぞれの行34の一部によって形成され、この部分は回折及び/又は反射によって前記サブピクセルに対応する色を生成するように構成されたそれぞれのホログラフィックアレイ(又はあるホログラフィックアレイの一部)を構成する。
【0108】
ここで検討される例において、ピクセル30はそれゆえ、異なる色の3つのサブピクセルを含んでいるが、その他の例も可能である。各サブピクセル31は単色と仮定される。各ホログラフィックアレイは、各サブピクセル31において、所定の観察角度に対応する色を生成するように構成され、この色は別の観察角度からでは変化する。例えば、各ピクセル30のサブピクセル31はそれぞれ、所定の観察角度に応じた異なる基本色(例えば、緑/赤/青又はシアン/イエロ/マゼンタ)を有すると仮定される。
【0109】
図11A及び11Bに示されるように、3つの行34に対応するホログラフィックアレイは、同一のピクセル30のサブピクセル31を形成し、所望の異なる色を生成するように特定の幾何学的仕様を有する。特に、この例において3つのサブピクセル31を形成するホログラフィックアレイは、lで示される幅と、pで示される各ホログラフィックアレイ間ピッチを有する。
【0110】
それゆえ、各ピクセル30が4つのサブピクセル31で構成される特定の例によれば、同一のピクセル内のサブピクセルの色のうちの1つの理論上の最大彩度調整能力Sを以下のように設定できる:
【数1】
【0111】
例えば、l=60μm、p=10μmであり、その結果、理論上の最大彩度調整能力S=0.21と考えることができる。
【0112】
サブピクセル31を形成するホログラフィックアレイをピッチpがゼロになりやすくなるように形成でき、それによってサブピクセルの色の理論上の最大彩度調整能力を高めることができる(すると、Sは0.25になりやすい)。
【0113】
特定の例によれば、ピッチはp=0に設定され、それによって理論上の最大彩度調整能力Sを0.25と等しくすることができる。この場合、図11A及び11Bに示されるサブピクセルの行34は連続的となる(サブピクセルの行間に間隔又は白い領域がない)。
【0114】
それゆえ、本発明により、連続的なサブピクセルの行、すなわち相互に隣接して、各行間に分離のための白い領域を残す必要がないか、適当であれば、サブピクセルの行間に分離のための白い領域は残されるが限定的な寸法である(小さいピッチp)ような行を形成することが可能となる。ホログラフィックアレイのこの特定の構成により、ホログラフィック構造を使用しない従来の画像形成方法と比較して、最終的なIGの品質を実質的に向上させる(より高い彩度を有する)ことが可能となる。これは、ホログラフィック構造の形成によって、サブピクセルの従来の印刷(オフセット又はその他の方法による)の場合より、より高精度のサブピクセルの位置決めと改善された均一性を実現できることから、可能となる。
【0115】
前述のように、ホログラフィック層24により形成されるピクセル30の配置29(図5~6)は別の形態をとることができる。例示的な実施形態を以下に説明する。
【0116】
一般に、ピクセルの配置29は、サブピクセル31がホログラフィック層24内で均一に分散されるように構成できる。サブピクセル31は例えば、サブピクセルの平行な行又は六角形の形状のアレイ(ベイヤ型)を形成でき、他の例も可能である。
【0117】
サブピクセル31は例えば、直交マトリクスを形成できる。
【0118】
ピクセル30は、ピクセルの配置29内に均一に分散させることができ、サブピクセル31の同じパターンがホログラフィック層24の中で周期的に繰り返される。
【0119】
さらに、ピクセルの配置29の各ピクセル30は、各サブピクセル31が当該の前記ピクセル内の1つの色を有するように構成できる。特定の例によれば、ピクセルの配置29内の各ピクセル30はカラーサブピクセルの同じパターンを形成する。
【0120】
次に、セキュリティ文書20(図4)の中に実装できるピクセルの構成(又はタイリング)29の具体的な例について、図12A図12B、及び12Cを参照しながら説明する。これらの実装はここで非限定的な例として示されているにすぎず、特にピクセル及びサブピクセルの配置のほか、これらのサブピクセルに割り当てられる色の点で、多くの変形型が可能である点に留意すべきである。
【0121】
図12Aに示される第一の例によれば、ピクセルの配置29のピクセル30は長方形(又は正方形)の形状であり、異なる色の3つのサブピクセル31a、31b、及び31c(まとめて31と示す)を含む。図12A~12Bについてすでに説明したように、サブピクセル31は各々、サブピクセルの行34の一部により形成できる。この例において、タイリング29はそれゆえ、相互に関して直交するピクセル30の行と列のマトリクスを形成する。
【0122】
図12Bは、規則的タイリングの他の例を表す上面図であり、各ピクセル30は31a~31cで示され、各々が異なる色の3つのサブピクセル31で構成される。サブピクセル31はここでは六角形の形状である。
【0123】
図12Cは、規則的タイリングの他の例を表す上面図であり、各ピクセル30は31a~31dで示され、各々が異なる色の4つのサブピクセル31で構成される。サブピクセル31はここでは三角形の形状である。
【0124】
検討中のピクセルの配置の各々について、各ピクセル30の形状と寸法及び、適当であればサブピクセル間に存在する分離のための白い領域の寸法を調整して、所望の色の最大彩度レベルと所望の輝度レベルを実現することができる。
【0125】
次に、特定の実施形態による多層構造23を図13を参照しながら説明する。この多層構造23は、個人化画像IGを形成するために実行される。
【0126】
多層構造23は、図5~6に関して前述した多層構造22と同様であり、主として、後述のように、多層構造23が不透明層34の下に第三の層50を含む点と不透明層34が穿孔52を含む点が異なる。
【0127】
より詳しくは、多層構造23は不透明層34と対向して配置された第三の層50を含み、この不透明層34はホログラフィック層26と第三の層50の間に配置される。
【0128】
第三の層50は透明な層又は、不透明層34より薄い(より明るい)色であり、最終的な個人化画像IGの背景を形成する。
【0129】
さらに、不透明層34は、ホログラフィック構造32内に穿孔40を形成するために使用された第一のレーザビームLS1とは異なる第二のレーザビームLS2により形成される(すなわち、レーザエッチング)穿孔(すなわち、穴)52を含む。不透明層34に形成された穿孔52は、本発明の意味における第二の穿孔を構成する。
【0130】
ここで、第二の穿孔52は不透明層34がレーザ穿孔効果(穴の形成)により破壊又は除去される領域を構成する。変形型において、これらの第二のレーザ穿孔52はそれ自体が穴を形成するのではなく、レーザLS2により引き起こされる化学反応により、前記不透明層34の中に存在する不透明化色素(例えば、不透明化黒色素)の光に対する応答を変調させるように変化した物理-化学特性を有する不透明層34の領域を構成する(いわゆる「フォトブリーチング」法)。それゆえ、適当なレーザビームLS2の効果により(波長及び/又は加えられるエネルギ密度に応じて)その黒い色を(少なくとも部分的に)失う不透明化色素を含む不透明層34を使用することが可能となる。このようにして、不透明層34の明領域はレーザビームLS2によって選択的に生成できる。
【0131】
これらの第二の穿孔54は第一の穿孔40の一部の延長部分に位置付けられ、それによって相互に対向する第一及び第二の穿孔40、52は、ホログラフィック構造32及び不透明層34を通して、サブピクセル31の明領域56であって、第二の穿孔52と対向する位置にある第三の層50の(対応する)下地領域54により生成され明領域を局所的に出現させ、それゆえ、ピクセル30の配置29と暗領域42及び明領域56との組み合わせから個人化画像IGを形成する。
【0132】
それゆえ、この特定の実施形態において、穿孔40の一部、いわゆる第一の部分(すなわち、それらの1つ又は複数)のみがホログラフィック構造32を通して、これらの第一の穿孔40と対向する位置にある不透明層34の下地領域41により生成されるサブピクセル31内の複数の暗(又は不透明)領域42を局所的に出現させる。さらに、穿孔40の他の部分(すなわち、それらの1つ又は複数)、いわゆる第二の部分は、第三の層50内に形成される第二のそれぞれの穿孔54と対向して、又はそれと整列して配置される。それゆえ、相互に対向して配置される第一及び第二の穿孔40、52は共同で、ホログラフィック層22及び不透明層34の中に貫通穿孔を形成し、それによって共同で第三の背景層50の下地領域54を露出させることが可能となる。それゆえ、第二の穿孔52と対向し、露出されるこれらの下地領域54は、外からの観察者OBの視点から、ピクセル30の配置29、暗領域42、及び明領域56の組み合わせにより形成される個人化画像IGの中の明領域(高輝度の領域又は明るい領域とも呼ばれる)56を生成する。
【0133】
第二の穿孔52の大きさと寸法は状況に応じて変更できる点に留意されたい。これらは第一の穿孔40の延長部に配置されているが、それらが対向する第二の穿孔52が第一の穿孔40と同じ直径を有する必要はない。しかしながら、個人化画像IGの中に第三の層50の下地領域54が現れるようにするためには、各第二の穿孔52の少なくとも一部が第一の対応する穿孔40の少なくとも一部と対向して配置されることは必要である。
【0134】
図13に示される例において、第二の穿孔52は、(下地領域41のレベルで)第二の不透明層34の厚さ全体に延びて、対向して配置された第一の穿孔40と共に、ピクセル30の配置29のレベルで第三の層50の下地領域54を出現させる貫通穿孔である。換言すれば、これらの第二穿孔52をレーサによって第三の層50の厚さにわたり形成することによって、第三の層50の下地領域54が露出され、サブピクセル31の全部又は一部において、暗領域42に関して明るい領域を生成することができる。
【0135】
特定の例によれば、明領域56は暗領域42より明るい(又はより高輝度の)領域である。
【0136】
特定の例によれば、このように生成されたカラー画像IGは、少なくとも1つの暗又は不透明領域42(それぞれの穿孔40により出現させられる)と少なくとも1つの明領域56(相互に対向して配置される穿孔40と穿孔52との共同で出現させられる)を含む。
【0137】
特定の例によれば、第一及び第二の穿孔40、52は、1つ又は複数の第一の穿孔40が、不透明層34の下地領域41により生成される1つの(又は複数の)暗領域42と第三の層50の下地領域54により生成される1つの(又は複数の)明領域56の両方を出現させるように構成される。
【0138】
それゆえ、第一の穿孔40と同様の原理により、第二の穿孔52は、ホログラフィック層24により形成されるピクセル30の少なくとも一部において、サブピクセル31の比色寄与度を相互に関して変更することによってピクセル30の色を選択し、ピクセルの配置29に基づいて、今度は暗領域42と明領域56との組み合わせにより、個人化画像IGを出現させるように配置される。
【0139】
暗領域42の代わりに明領域56を出現させることによって、最終的な画像IGの視覚的レンダリングにおいて、特定のサブピクセルの比色寄与度を相互に関して変更することによってピクセル30内のグレイの陰影(又はカラーの陰影)を調整することができる。明領域56の生成により、特に特定のサブピクセル31の少なくとも一部を明るくすることができる。
【0140】
前述のように、ここでは、このように生成された画像IGはサブピクセル31の色の比色寄与度を選択的に変調させることから得られるカラー画像であると仮定される。しかしながら、個人化画像IGは例えばサブピクセル31の色を相応に調整することによって、グレイスケールでも同様に作成できる点に留意されたい。
【0141】
前述のように、不透明層34内に2つの穿孔(すなわち穴)52を形成するために使用されるレーザビームLS2(「第二のレーザビーム」ともいう)は、ホログラフィック構造32内に第一の穿孔40を形成するために使用される第一の光線LS1とは異なる。第一及び第二のレーザビームLS1、LS2は好ましくは、異なる波長スペクトルを有する。それゆえ、ホログラフィック構造32と透明層34のうちの一方に穿孔を選択的に形成し、他方には穿孔しないことが可能である。
【0142】
ここで検討中の例において、第二のレーザビームLS2は波長SP2の第二のスペクトルであり、これは第二の不透明層34により少なくとも部分的に吸収されて、第二の穿孔52を生成することができる。換言すれば、第二のレーザビームLS2は、第二の層34により少なくとも部分的に吸収される波長スペクトルSP2により特徴付けられる。第三の層50の材料はそれゆえ、相応に選択される。特に、第三の層50は不透明層34のための裏打ち層として機能するため、その特徴は、この第三の層50がレーザLS1及び/又はLS2によるエッチング中にその物理的又は機械的特性を保持するように選択しなければならない。したがって、第三の層50の組成は、ホログラフィック層及び不透明層の種類と材料のほか、使用されるレーザSP1及びSP2の特徴にも依存する。
【0143】
他方で、第二のスペクトルP2は好ましくは、第二のビームLS2がホログラフィック構造32により吸収されないように選択される(この変形型も可能ではある)。
【0144】
さらに、この例において、第三の層50は第二及び第三のレーザビームLS1、LS2を透過させると考えられる。換言すれば、第三の層50はレーザビームLS1及びLS2を吸収せず、それによって穿孔40及び52が形成される際にこの背景層に影響を与えないようにすることが可能となる。
【0145】
第二の穿孔52を形成するために、例えばYAG型、青色レーザ、UVレーザ等のレーザLS2を使用することができる。さらに、例えば1kHz~100kHzのパルス周波数を印加することも可能であるが、他の構成も想定され得る。当業者はその裁量により、特定の状況に応じてレーザビームLS1の構成を選択できる。
【0146】
それゆえ、不透明層と、不透明層より薄い(又は明るい)色の背景層を使用することにより、有利な点として、色域をさらに増大させることができ、これは、このようにしてグレイの陰影により個人化画像の繊細さが実現されるからである。また、構造全体がより複雑化することによって、より強化されたセキュリティレベルも得ることができ、それと同時に、前述のように構造上の欠陥(ブリスタ形成の問題)を発生させるレーザ加工可能層の使用が回避される。
【0147】
特定の例によれば、第二の穿孔52は第二のレーザビームLS2を不透明層34に、それを超えると前述のブリスタ形成効果が発生し得る第二の閾値以下のパワーで照射することにより形成され、それによって、構造23に損傷を与えうる気泡が生成されないことを確実にできる。第一のレーザビームLS1と同様に、この第二のレーザパワーの閾値は可変的であり、使用の各ケースに依存する(特に、ホログラム及び不透明層の種類と、使用されるレーザの特性に依存する)。この第二の閾値は当業者により、特に、それを超えるとレーザが構造を破壊させる(気泡の出現)レーザパワーを特定するのを可能にする適切な実験的設計によって特定できる。
【0148】
さらに、本発明はまた、前述の実施形態の何れかによる個人化画像IGを製造する製造方法にも関する。また、多層構造22及び23に関して、より一般的には本発明のコンセプトによる個人化画像に関して前述した様々な変形型及び技術的利点は、このような画像又は構造を得るための本発明の製造方法にも同様に当てはまる。
【0149】
次に、特定の実施形態による、前述のカラー画像IGの製造方法を図14に関して説明する。例えば、カラー画像IGは図4に示される文書20に形成されると仮定される。
【0150】
供給ステップS2中、前述の第一のホログラフィック層22がこのように供給される。このホログラフィック層32はしたがって、各々が異なる色の複数のサブピクセル31を含むピクセル30の配置29を形成する金属ホログラフィック構造32を含む。特に図5~6に関して前述したホログラフィック層22(ピクセルの配置29を含む)の様々な特徴と変形型は製造方法にも同様に当てはまる。
【0151】
特定の例によれば、供給ステップS2は、ホログラフィックアレイのレリーフ30を形成する樹脂下層26を供給し、樹脂下層26のレリーフ30の上に金属下層28を形成することを含み、金属下層28は樹脂下層のそれより高い屈折率を有する(図5~6)。
【0152】
層26(図4)は例えば熱変形可能層とすることができ、それゆえ、ホログラフィック構造32のレリーフ30は、裏材の役割を果たす層26をエンボス加工することにより形成できる。変形型において、ホログラフィック構造32のレリーフ30は、前述のようにUV硬化法を使って製作できる。これらの製造技術は当業者の間で知られており、これについては簡略化するために以下でこれ以上詳しく説明しない。
【0153】
ホログラフィック層24を裏材(図示せず)に接着させるために、接着剤及び/又はグルー層(図示せず)も使用できる。
【0154】
位置付けステップS4中、第二の層34は第一のホログラフィック層22と対向するように位置付けられ(又は堆積され、又は形成され)、この第二の層34は前述のように、少なくとも可視波長スペクトルに対して不透明である。特に図5~6に関して前述した不透明層24の様々な特徴と変形型は製造方法にも同様に当てはまる。
【0155】
穿孔ステップS6中、第一の穿孔(すなわち穴)40が第一のレーザビームLS1によって第一のホログラフィック層22に形成される(図6)。第一の穿孔40はそれゆえ、ホログラフィック構造32の複数のサブピクセル31の全部又は一部を占める。第一の穿孔40の少なくとも第一の部分は、ホログラフィック構造を通して、サブピクセル31の幾つかの暗(又は不透明)領域42であって、第一の穿孔40の前記少なくとも第一の部分と対向する位置にある第二の不透明層34の下地領域41により生成される(又は創出される)暗領域を局所的に出現させて、ピクセルの配置29と暗領域42の組み合わせから個人化画像IGを形成する。
【0156】
ステップS6が完了すると、このようにして多層構造22が図6に関して前述したように得られる。
【0157】
特に図5~6に関して前述した第一の穿孔40の様々な特徴と変形型は製造方法にも同様に当てはまる。
【0158】
特定の例によれば、各第一の穿孔40は不透明層34の下地領域41へと開き、最終的な画像IG内に、複数の対応する暗領域を出現させる。しかしながら、前述のように、第一の穿孔40の非ゼロ部分が不透明層34の中に形成された第二の穿孔52と対向して配置され、ピクセル30の配置29内の明領域56を出現させる変形型も可能である。
【0159】
前述のように、ここで穿孔40は、ホログラフィック構造32の厚さにわたって(より一般的にはホログラフィック層24の厚さにわたって)延び、ピクセル30の配置29のレベルで不透明層34の下地領域40を出現させる貫通穿孔である。換言すれば、ホログラフィック構造24の厚さ内にレーザによりこれらの穿孔40を形成することにより、不透明層34の下地領域41を露出させ、サブピクセル31の全部又は一部に暗(又は不透明)領域42を生成することができる。
【0160】
このように生成された個人化画像IGは、カラーサブピクセル31の比色寄与度の選択的変調から得られるカラー画像である。しかしながら、例えばサブピクセル31の色を相応に調整することによって、グレイの陰影で個人化画像IGを同様に生成することができる点に留意されたい。
【0161】
S6においてホログラフィック構造32の中に穿孔40を形成するために使用される第一のレーザビームLS1は好ましくは、可視波長スペクトルとは異なる第一の波長スペクトルSP1である。そのために、例えばYAGレーザ(1064nm)、青色レーザ、UVレーザ等を使用できる。さらに、例えば1kHz~100kHzのパルス周波数を印加することも可能であるが、その他の構成も想定可能である。当業者はその裁量により、具体的な状況に応じてレーザビームLS1の構成を選択できる。
【0162】
さらに、前述のように、穿孔40を生成するためには、ホログラフィック層24(より具体期には、ホログラフィック構造32)がレーザビームLS1により送達されるエネルギを少なくとも部分的に吸収することが必要である。換言すれば、第一のレーザビームLS1は、ホログラフィック構造32より少なくとも部分的に吸収される波長スペクトルSP1により特徴付けられる。したがって、ホログラフィック層24の材料は相応に選択される。
【0163】
特定の例によれば、ホログラフィック構造32を形成する材料は、これらが可視スペクトルの光を吸収しないように選択される。これらは、特に身分証明文書において使用されるもののような透明材料とすることができる。それゆえ、ホログラフィック構造32は以下の材料の少なくとも1つから形成される:透明ポリカーボネート、PVC、透明グルー等。このようにして、可視スペクトルの範囲外で発するレーザビームLS1によって穿孔40を生成し、ホログラフィック効果により人間の目に見える個人化画像IGを生成することが可能である。
【0164】
しかしながら、スペクトルSP1は好ましくは、ビームLS1が不透明層34により吸収されないように選択される。
【0165】
ポリカーボネート又はその他の適当な材料で製作される追加の層(図示せず)もまた、このように得られた多層構造22(図6)の何れかの側に堆積させて、特にアセンブリを保護し得る。特に、それゆえ、透明層をホログラフィック層24の上面に形成できる。
【0166】
前述のように、本発明により、適度なレーザパワーで加工し、それゆえ安全で高品質の個人化画像を形成しながら、構造内に破壊的な気泡を発生させるリスクのある過熱状態を生じさせないようにすることが可能となる。
【0167】
さらに、前述のように、後述のステップS10及びS12を実行することにより、図14に示される製造方法を続け、図6に示される多層構造22から、図13に示される多層構造23を製造することが可能である。それゆえ、特にこのように生成される個人化画像IGの品質と安全性をさらに高めるために、暗領域42の代わりに、ピクセルの配置29内に1つ又は複数の明領域56を形成することができる。
【0168】
特定の実施形態によれば、形成S6ステップが完了すると、ステップS10(図14)中に第三の層50はそれゆえ第二の不透明層34と対向するように位置付けられ(又は堆積させられ)、それによってこの第二の不透明層34は第一のホログラフィック層22と第三の層50との間に挟まれる。この第三の層50は、透明であるか又は第二の不透明層34より薄い(又は明るい)色であり、形成しようとする個人化画像IGに関する背景を形成する。
【0169】
図13に関して説明した背景層50の様々な特徴と変形型が、製造方法にも同様に当てはまる。
【0170】
形成ステップS12(図14)中に、第二の穿孔52は、第一の穿孔40を形成するためにS6で使用された第一のレーザビームLS1とは異なる第二のレーザビームLS2によって第二の不透明層34の中に形成される。第二の穿孔40は、S6中に形成された1つ又は複数の第一の穿孔40の延長部内に位置付けられ、それによって相互に対向して配置された第一及び第二の穿孔40、52は、ホログラフィック構造32を通して、及び第二の不透明層34を通して、第二の穿孔52と対向する位置にある第三の背景層50の下地領域54により生成されるサブピクセル31内の複数の明領域56を局所的に出現させ、このようにして、ピクセル30の配置29と暗領域42及び明領域56との組み合わせから個人化画像IGを形成する。
【0171】
図14に関して説明した第二の穿孔52の様々な特徴と変形型が、製造方法にも同様に当てはまる。
【0172】
それゆえ、この変形型では、S6で形成された第一の穿孔40の非ゼロ部分(例えば、第一の穿孔40の第一の群)は不透明層34のそれぞれの下地領域41へと開いて、最終画像IG内に対応する暗領域42を出現させることと、S6中に形成された第一の穿孔52の他の、いわゆる第二の非ゼロ部分(例えば、第一の穿孔40の第二の群)は第二の穿孔52と対向して位置付けられ、第二の穿孔52と共に、最終画像IG内に対応する明領域56を出現させることが考えられる。
【0173】
前述のように、S12で不透明層34に2つの穿孔(すなわち穴)52を形成するために使用される第二のレーザビームLS2は、ホログラフィック構造32内に第一の穿孔40を形成するためにS6で使用される第一のビームLS1とは異なる。第一及び第二のレーザビームLS1、LS2は好ましくは、異なる波長スペクトルを有する。
【0174】
それゆえ、ホログラフィック構造32及び不透明層34のうちの一方に、他方には影響を与えることなく、穿孔を選択的に形成することができる。
【0175】
ここで検討中の例において、第二のレーザビームLS2は、第二の不透明層34により少なくとも部分的に吸収されて、第二の穿孔52を生成することのできる第二の波長スペクトルSP2である。換言すれば、第二のレーザビームLS2は、第二の層34により少なくとも部分的に吸収される波長スペクトルSP2により特徴付けられる。前述のように、したがって、第三の層50の材料は相応に選択される。
【0176】
しかしながら、第二のスペクトルSP2は好ましくは、第二のビームLS2がホログラフィック構造32により吸収されないように選択される(この変形型も可能ではある)。
【0177】
さらに、この例では第三の層が第一及び第二のレーザビームLS1、LS2に対して透過性を有すると考えられる。換言すれば、第三の層50はレーザビームLS1及びLS2を吸収せず、それによって穿孔40及び52が形成される際にこの背景層には影響を与えないようにすることができる。しかしながら、変形型も可能である。それゆえ、第三の層50は、必ずしもレーザLS1及びLS2を透過させず、この第三の層50によるビームLS1及びLS2の吸収は、その物理的完全性(機械的耐性及び色に関する耐性)50が保持されるように低くなければならない。
【0178】
第二の穿孔52を形成するために、例えばYAG型、青色レーザ、UVレーザ等のレーザLS2を使用することができる。さらに、例えば1kHz~100kHzのパルス周波数を印加することもできるが、その他の構成も想定され得る。当業者はその裁量により、特定の状況に応じてレーザビームLS1の構成を選択できる。
【0179】
図14に示される製造方法のステップが実行される順序は、場合に応じて変えられる点に留意されたい。それゆえ、例えば穿孔40及び52(ステップS6及びS12:図14)は、ステップS2、S4、S6、及びS10を実行した後で形成することが可能である。同様にして、穿孔40及び52は、何れの順序でも同時に形成できる(S6、S12)。
【0180】
当業者であれば、本明細書に記載した実施形態及び変形型は本発明の非限定的な実施例を構成するにすぎないことがわかるであろう。特に、当業者であれば、非常に特定的な要求事項を満たすために、上述の特徴及び実施形態の何れの適応又はそれらの組み合わせも着想し得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13
図14