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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】工作機械の制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B23G 1/16 20060101AFI20240501BHJP
   B23G 1/02 20060101ALI20240501BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20240501BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B23G1/16 A
B23G1/02 A
B23Q15/00 303B
G05B19/18 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022533931
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2021023927
(87)【国際公開番号】W WO2022004546
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2020112599
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森田 有紀
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特許第6001633(JP,B2)
【文献】特開昭62-224520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23G 1/02,1/16;
B23Q 15/00;
G05B 19/18,19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸と送り軸との同期運転を制御する工作機械の制御装置であって、
タップ加工プログラムに基づき主軸指令及び送り軸指令を作成する数値制御部と、
前記主軸指令に従って前記主軸の回転動作を制御する主軸制御部と、
前記主軸の回転位置を検出する回転検出部と、
前記回転位置に基づいて、前記送り軸指令に従って前記送り軸の送り動作を制御する送り軸制御部と、を備え、
前記数値制御部は、
加工開始位置から目標位置まで任意の回数で切り込み動作及び引き抜き動作を行う際に、前記切り込み動作及び前記引き抜き動作における前記主軸の回転量及び最高回転速度を前記タップ加工プログラムから取得し、前記主軸の前記回転量及び前記最高回転速度を前記主軸指令として前記主軸制御部に送る主軸指令出力部を有し、
前記主軸制御部は、
前記最高回転速度を目標値として前記加工開始位置から前記目標位置に向かって前記主軸を、駆動源の許容電流を最大限に利用した最大能力で加速回転させる初期動作制御部と、
前記最大能力での加速回転中に前記回転位置に基づいて最大加速度を検出する最大加速度検出部と、
前記回転量及び前記回転位置に基づいて、現在位置から前記目標位置に至るまでの前記主軸の残回転量を検出する残回転量検出部と、
前記回転位置に基づいて前記主軸の現在速度を検出する現在速度検出部と、
前記最大能力での加速回転の後に、前記最大加速度、前記残回転量及び前記現在速度に基づいて、前記主軸を前記最大加速度に対応する最大減速度で減速回転させて前記目標位置に到達させる位置決め動作制御部と、
を有する、制御装置。
【請求項2】
前記主軸指令出力部は、前記主軸制御部による前記主軸の移動開始前に、前記切り込み動作及び前記引き抜き動作における前記主軸の前記回転量及び前記最高回転速度を前記タップ加工プログラムから取得し、前記主軸の前記回転量及び前記最高回転速度を前記主軸指令として前記主軸制御部に送る、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記主軸制御部は、前記主軸指令出力部から送られた次の切り込み動作又は次の引き抜き動作における前記主軸の回転量及び前記最高回転速度を前記主軸指令として、他の主軸指令に先行して前記主軸の移動を開始する、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記主軸の前記回転量及び前記最高回転速度は、前記切り込み動作又は前記引き抜き動作中の所定の位置において変更され、
前記主軸指令出力部は、
前記主軸の変更前の第1の回転量、変更後の第2の回転量、変更前の第1の最高回転速度及び変更後の第2の最高回転速度を前記タップ加工プログラムから取得し、
前記第1の回転量、前記第2の回転量、前記第1の最高回転速度及び前記第2の最高回転速度を前記主軸指令として前記主軸制御部に送る、
請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記主軸の前記回転量及び前記最高回転速度は、前記引き抜き動作後の前記切り込み動作中の前記所定の位置において変更され、
前記所定の位置は、直前の前記引き抜き動作における前記目標位置であり、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
主軸と送り軸との同期運転を制御する工作機械の制御方法であって、
加工開始位置から目標位置まで任意の回数で切り込み動作及び引き抜き動作を行う際に、前記切り込み動作及び前記引き抜き動作における前記主軸の回転量及び最高回転速度をタップ加工プログラムから取得するステップと、
前記最高回転速度を目標値として前記加工開始位置から前記目標位置に向かって前記主軸を、駆動源の許容電流を最大限に利用した最大能力で加速回転させるステップと、
前記最大能力での加速回転中に前記主軸の回転位置フィードバック値に基づいて最大加速度を検出するステップと、
前記回転量及び前記回転位置フィードバック値に基づいて、現在位置から前記目標位置に至るまでの前記主軸の残回転量を検出するステップと、
前記回転位置フィードバック値に基づいて前記主軸の現在速度を検出するステップと、
前記最大能力での加速回転の後に、前記最大加速度、前記残回転量及び前記現在速度に基づいて、前記主軸を前記最大加速度に対応する最大減速度で減速回転させて前記目標位置に到達させるステップと、
を備える制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、主軸と送り軸との同期運転によりタップ加工を行う工作機械において、加工精度を向上させる又はサイクルタイムを短縮させるために様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1は、簡単な構成で、主軸の加速能力を最大限に発揮させる制御を行ってサイクルタイムを短縮することができる制御装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-78223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような工作機械の制御装置において、サイクルタイムを更に短縮するために、パスの動作終了から次のパスの動作開始までの指令待ち時間をより低減することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る制御装置は、主軸と送り軸との同期運転を制御する工作機械の制御装置であって、タップ加工プログラムに基づき主軸指令及び送り軸指令を作成する数値制御部と、前記主軸指令に従って前記主軸の回転動作を制御する主軸制御部と、前記主軸の回転位置を検出する回転検出部と、前記回転位置に基づいて、前記送り軸指令に従って前記送り軸の送り動作を制御する送り軸制御部と、を備える。前記数値制御部は、加工開始位置から目標位置まで任意の回数で切り込み動作及び引き抜き動作を行う際に、前記切り込み動作及び前記引き抜き動作における前記主軸の回転量及び最高回転速度を前記タップ加工プログラムから取得し、前記主軸の前記回転量及び前記最高回転速度を前記主軸指令として前記主軸制御部に送る主軸指令出力部を有する。前記主軸制御部は、前記最高回転速度を目標値として前記加工開始位置から前記目標位置に向かって前記主軸を、駆動源の許容電流を最大限に利用した最大能力で加速回転させる初期動作制御部と、前記最大能力での加速回転中に前記回転位置に基づいて最大加速度を検出する最大加速度検出部と、前記回転量及び前記回転位置に基づいて、現在位置から前記目標位置に至るまでの前記主軸の残回転量を検出する残回転量検出部と、前記回転位置に基づいて前記主軸の現在速度を検出する現在速度検出部と、前記最大能力での加速回転の後に、前記最大加速度、前記残回転量及び前記現在速度に基づいて、前記主軸を前記最大加速度に対応する最大減速度で減速回転させて前記目標位置に到達させる位置決め動作制御部と、を有する、制御装置。
【0006】
本開示に係る制御方法は、主軸と送り軸との同期運転を制御する工作機械の制御方法であって、加工開始位置から目標位置まで任意の回数で切り込み動作及び引き抜き動作を行う際に、前記切り込み動作及び前記引き抜き動作における前記主軸の回転量及び最高回転速度をタップ加工プログラムから取得するステップと、前記最高回転速度を目標値として前記加工開始位置から前記目標位置に向かって前記主軸を、駆動源の許容電流を最大限に利用した最大能力で加速回転させるステップと、前記最大能力での加速回転中に前記主軸の回転位置フィードバック値に基づいて最大加速度を検出するステップと、前記回転量及び前記回転位置フィードバック値に基づいて、現在位置から前記目標位置に至るまでの前記主軸の残回転量を検出するステップと、前記回転位置フィードバック値に基づいて前記主軸の現在速度を検出するステップと、前記最大能力での加速回転の後に、前記最大加速度、前記残回転量及び前記現在速度に基づいて、前記主軸を前記最大加速度に対応する最大減速度で減速回転させて前記目標位置に到達させるステップと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、指令待ち時間をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】制御装置の概要を示す図である。
図2】第1実施形態に係る制御装置によるタップ加工について説明する図である。
図3】第1実施形態に係る制御装置によるタップ加工の処理を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る制御装置によるタップ加工について説明する図である。
図5】第2実施形態に係る制御装置によるタップ加工の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。図1は、制御装置200の概要を示す図である。図1に示すように、制御装置200は、主軸101と送り軸105との同期運転によりタップ加工を行う工作機械(例えば旋盤、ボール盤、マシニンングセンタ等)において、送り軸105が、タップ加工プログラム500で指定されるねじピッチを考慮しながら、主軸101の回転動作に追従するように動作する同期運転(いわゆるマスター・スレーブ同期方式)を制御する装置である。
【0010】
制御装置200は、数値制御部210と、主軸制御部220と、回転検出部230と、送り軸制御部240とを備える。
【0011】
数値制御部210は、主軸指令出力部211と、プログラム解釈部212と、送り軸指令出力部213とを備える。数値制御部210は、公知のCNC(computerized numerical control)装置のハードウェア構成を有することができる。
【0012】
主軸指令出力部211は、タップ加工の開始に先立ち、プログラム解釈部212が解釈したタップ加工プログラム500の指令値から、加工開始位置(回転位置)から目標ねじ深さ(回転位置)に至る間の主軸101の総回転量Sと、最高回転速度Vとを取得して、これら総回転量Sと最高回転速度Vとを主軸指令CSとして主軸制御部220に送る。
【0013】
例えばタップ加工プログラム500が、主軸101の最高回転速度(この例では1分間当りの最大回転数)Vを3000rev/minとして、ねじピッチ1.25mm、ねじ深さ30mmの雌ねじを加工する指令を含む場合、加工開始位置から目標ねじ深さに至る間の主軸101の総回転量Sは、30÷1.25=24(rev)となる。よって、主軸指令出力部211は、最高回転速度V=3000(rev/min)と総回転量S=24(rev)とを主軸制御部220に通知する。このように主軸指令CSは、主軸101を目標ねじ深さまで回転運動させるための位置指令や加減速指令を含まないものとなっている。
【0014】
また、主軸指令出力部211は、加工開始位置から目標位置まで任意の回数で切り込み動作及び引き抜き動作を行う際に、切り込み動作及び引き抜き動作における主軸101の回転量S及び最高回転速度Vをタップ加工プログラム500から取得する。そして、主軸指令出力部211は、主軸101の回転量S及び最高回転速度Vを主軸指令として主軸制御部220に送る。
【0015】
具体的には、主軸指令出力部211は、主軸制御部220による主軸101の移動開始前に、切り込み動作及び引き抜き動作における主軸の回転量S及び最高回転速度Vをタップ加工プログラム500から取得し、主軸101の回転量S及び最高回転速度Vを主軸指令として主軸制御部220に送る。
【0016】
また、主軸制御部220は、主軸指令出力部211から送られた回転量S及び最高回転速度Vとしての主軸指令によって、数値制御部210からの指令に先行して主軸101の移動を開始する。
【0017】
プログラム解釈部212は、タップ加工プログラム500を解釈する。
送り軸指令出力部213は、プログラム解釈部212の解釈に従い送り軸指令CFを作成して、送り軸制御部240に送り軸指令CFを送る。
【0018】
主軸制御部220は、初期動作制御部221と、最大加速度検出部222と、残回転量検出部223と、現在速度検出部224と、位置決め動作制御部225とを備えている。
初期動作制御部221は、主軸指令出力部211から送られた最高回転速度Vを目標値とする速度制御により加工開始位置から主軸101を、駆動源の許容電流を最大限に利用した最大能力で加速回転させる。
【0019】
最大加速度検出部222は、最大能力での加速回転中に回転位置FBSに基づいて最大加速度A0(min-1/s)を検出する。
残回転量検出部223は、主軸指令出力部211から送られた総回転量Sと、回転検出部230から出力される回転位置FBSとに基づいて、現在位置(回転位置)から目標ねじ深さに至るまでの主軸101の残回転量Sr(rev)を検出する。
【0020】
現在速度検出部224は、回転検出部230から出力される回転位置FBSに基づき、主軸101の現在速度Vc(min-1)を検出する。現在速度Vcが、最高回転速度Vに達したときに主軸101の回転を加速回転から最高回転速度Vの回転とする。
【0021】
位置決め動作制御部225は、最大能力での加速回転の後に、最大加速度A0と、残回転量Srと、現在速度Vcとに基づいて、主軸101を最大加速度に対応する最大減速度で減速回転させて目標ねじ深さに到達させるための位置制御を実行する。
【0022】
一実施形態では、位置決め動作制御部225は、主軸101を最大加速度に対応する最大減速度で減速回転させるとともに、目標ねじ深さで停止させるように構成できる。また、一実施形態では、位置決め動作制御部225は、主軸101を目標ねじ深さで停止させることなく(つまり加速度を零にすることなく)、減速回転における最大減速度A0(負の値)と同じ逆回転の加速度A0(負の値)で、主軸101を予め定めた回転位置まで加速逆回転させるように構成されてもよい。
る。
【0023】
また、主軸制御部220は、回転検出部230が検出した主軸101の回転位置FBS(すなわちフィードバック値)を用いて、一般的なフィードバック制御によりトルク指令値を主軸101に送り、主軸101の回転動作を制御する。
【0024】
回転検出部230は、主軸101の動作位置を検出するエンコーダ等の位置検出器102の出力から、回転位置FBSを取得することができる。
【0025】
送り軸制御部240は、送り軸指令出力部213から送られた送り軸指令CFに従って、送り軸105の動作位置を検出するエンコーダ等の位置検出器102からの送り位置のフィードバック値に加えて、主軸101の回転位置FBSを用いて、フィードバック制御により主軸101の動作に追従する送り軸105の送り動作を制御する。なお、送り軸制御部240は、ワークに対して送り軸105をZ方向に対して直線送りしている。しかし、ワーク又は工具をX軸方向及びY軸方向に対して送り動作させる2つの送り軸を制御する2つの送り軸制御部をさらに備えていてもよい。
【0026】
主軸制御部220が主軸の加工開始位置から目標ねじ深さまでの回転動作を制御する間、送り軸制御部22は、主軸101の回転位置FBSを用いて、送り軸105を主軸12の動作に追従するように制御して送り動作を行わせる。数値制御部210は、主軸制御部220がタップ加工処理を実行する間、主軸制御部220から通知される残回転量Srを監視して、残回転量Srが第1の所定値(零に近い極小値)以下になったときに、タップ加工が目標ねじ深さに達したと判断する。
【0027】
<第1実施形態>
図2は、第1実施形態に係る制御装置200によるタップ加工について説明する図である。
制御装置200は、加工開始位置から目標位置(穴底)まで任意の回数で切り込み動作及び引き抜き動作を行うことによってタップ加工を行う。
【0028】
図2に示すように、主軸制御部220は、タップ加工開始位置から第1の目標位置まで切り込み動作を主軸101の回転量S0及び最高回転速度V0によって行う。
次に、主軸制御部220は、切り込み動作が終了した第1の目標位置から第2の目標位置まで引き抜き動作を主軸101の回転量S1及び最高回転速度V1によって行う。
【0029】
次に、主軸制御部220は、引き抜き動作が終了した第2の目標位置から第3の目標位置まで切り込み動作を主軸101の回転量S3及び最高回転速度V0によって行う。
【0030】
このようにタップ加工は、切込み動作及び引き抜き動作を繰り返すことによって行われ、最終的に主軸101は、目標位置(穴底)に到達する。なお、図2に示す例では、切り込み動作における最高回転速度は、V0であり、引き抜き動作における最高回転速度は、V1である。
【0031】
図3は、第1実施形態に係る制御装置200によるタップ加工の処理を示すフローチャートである。
ステップS1において、主軸指令出力部211は、主軸制御部220による主軸101の回転制御の開始前に、切り込み動作及び引き抜き動作における主軸101の回転量S0,S1,S2・・・及び最高回転速度V0,V1をタップ加工プログラム500から取得する。そして、主軸指令出力部211は、切り込み動作及び引き抜き動作における主軸101の回転量S0,S1,S2・・・及び最高回転速度V0,V1を主軸指令として主軸制御部220に送る。
【0032】
ステップS2において、主軸制御部220は、主軸101の回転量S0及び最高回転速度V0を主軸指令として、主軸101の移動を開始する。
【0033】
ステップS3において、主軸制御部220は、タップ加工開始位置から第1の目標位置まで切り込み動作を主軸101の回転量S0及び最高回転速度V0によって行う。
【0034】
ステップS4において、主軸制御部220は、主軸101が回転量S0を移動完了したか否かを判定する。主軸101が回転量S0を移動完了した場合(YES)、処理は、ステップS5へ移る。主軸101が回転量S0を移動完了していない場合(NO)、処理は、ステップS3へ戻る。
【0035】
ステップS5において、ステップ3における切込み動作の終了後、すなわち回転量S0の移動完了後、主軸制御部220は、主軸指令出力部211から送られた回転量S1及び最高回転速度V1を主軸指令として、数値制御部210からの指令に先行して主軸101の移動を開始する。
【0036】
ステップS6において、主軸制御部220は、切り込み動作が終了した第1の目標位置から第2の目標位置まで引き抜き動作を主軸101の回転量S1及び最高回転速度V1によって行う。
【0037】
ステップS7において、主軸制御部220は、主軸101が回転量S1を移動完了したか否かを判定する。主軸101が回転量S1を移動完了した場合(YES)、処理は、ステップS8へ移る。主軸101が回転量S1を移動完了していない場合(NO)、処理は、ステップS6へ戻る。
【0038】
ステップS8において、ステップ6における引き抜き動作の終了後、すなわち回転量S1の移動完了後、主軸制御部220は、主軸指令出力部211から送られた回転量S2及び最高回転速度V0を主軸指令として、数値制御部210からの指令に先行して主軸101の移動を開始する。
【0039】
ステップS9において、主軸制御部220は、引き抜き動作が終了した第2の目標位置から第3の目標位置まで切込み動作を主軸101の回転量S2及び最高回転速度V0によって行う。
【0040】
そして、処理は、主軸101が穴底へ到達するまで、ステップS3からステップS9までと同様の処理を繰り返し、処理は、その後、ステップS10へ移る。
【0041】
ステップS10において、主軸101が穴底へ到達した後、主軸制御部220は、主軸指令出力部211から送られた回転量Sn及び最高回転速度V1を主軸指令として、主軸101のタップ加工開始位置への移動を開始する。
【0042】
ステップS11において、主軸制御部220は、穴底からタップ加工開始位置まで引き抜き動作を主軸101の回転量Sn及び最高回転速度V1によって行う。
そして、主軸制御部220は、主軸101がタップ加工開始位置へを移動完了したか否かを判定する。主軸101がタップ加工開始位置へ移動完了した場合(YES)、処理は、その後終了する。主軸101がタップ加工開始位置へ移動完了していない場合(NO)、処理は、ステップS11を繰り返す。
【0043】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る制御装置200によるタップ加工の処理について説明する。
第2実施形態は、切り込み動作又は引き抜き動作において回転量及び最高回転速度が変更される点が第1実施形態とは異なる。
【0044】
具体的には、主軸101の回転量及び最高回転速度は、切り込み動作又は引き抜き動作中の所定の位置において変更される。
そして、主軸指令出力部211は、主軸101の変更前の第1の回転量、変更後の第2の回転量、変更前の第1の最高回転速度及び変更後の第2の最高回転速度をタップ加工プログラム500から取得する。そして、主軸指令出力部211は、第1の回転量、第2の回転量、第1の最高回転速度及び第2の最高回転速度を主軸指令として主軸制御部220に送る。
【0045】
より具体的には、主軸101の回転量及び最高回転速度は、引き抜き動作後の切り込み動作中の所定の位置において変更され、所定の位置は、直前の引き抜き動作における目標位置であってもよい。ここで、引き抜き動作後の切り込み動作において、制御装置200は、引き抜き動作の目標位置(到達位置)から切り込み動作を開始する。
【0046】
引き抜き動作が行われた部分は、既に加工済みであるため、工具は、加工済みの部分をなぞり、切り込み動作は、無負荷加工となる。そのため、加工済みの部分における主軸101の最高回転速度は、切削速度よりも早い速度とすることができ、サイクルタイムを更に短縮することができる。
【0047】
また、主軸101の回転量及び最高回転速度は、切り込み動作後の引き抜き動作中の所定の位置において変更されてもよい。
【0048】
図4は、第2実施形態に係る制御装置200によるタップ加工について説明する図である。図4に示すように、主軸制御部220は、タップ加工開始位置から第1の目標位置まで切り込み動作を主軸101の回転量S0及び最高回転速度V0によって行う。
次に、主軸制御部220は、切り込み動作が終了した第1の目標位置から第2の目標位置まで引き抜き動作を主軸101の回転量S1及び最高回転速度V1によって行う。
【0049】
次に、主軸制御部220は、引き抜き動作が終了した第2の目標位置から切り込み動作が終了した第1の目標位置まで切り込み動作を主軸101の回転量S2及び最高回転速度V1によって行う。
更に、主軸制御部220は、第1の目標位置から第3の目標位置まで切り込み動作を主軸101の回転量S3及び最高回転速度V0によって行う。
【0050】
このように既に切り込みが完了している第2の目標位置から第1の目標位置までの切り込み動作を回転量S2及び最高回転速度V1によって行うことにより、実際の切り込み動作における最高回転速度V0よりも早い速度で主軸101を移動することができる。
【0051】
このようタップ加工は、切込み動作及び引き抜き動作を繰り返すことによって行われ、最終的に主軸101は、目標ねじ深さ(穴底)に到達する。
【0052】
図5は、第2実施形態に係る制御装置200によるタップ加工の処理を示すフローチャートである。
ステップS21において、主軸指令出力部211は、主軸制御部220による主軸101の回転制御の開始前に、主軸制御部220による主軸101の回転制御の開始前に、切り込み動作及び引き抜き動作における主軸101の回転量S0,S1,S2,S3・・・及び最高回転速度V0,V1をタップ加工プログラム500から取得する。そして、主軸指令出力部211は、切り込み動作及び引き抜き動作における主軸101の回転量S0,S1,S2,S3・・・及び最高回転速度V0,V1を主軸指令として主軸制御部220に送る。
【0053】
ステップS22において、主軸制御部220は、主軸101の回転量S0及び最高回転速度V0を主軸指令として、主軸101の移動を開始する。
【0054】
ステップS23において、主軸制御部220は、タップ加工開始位置から第1の目標位置まで切り込み動作を主軸101の回転量S0及び最高回転速度V0によって行う。
【0055】
ステップS24において、主軸制御部220は、主軸101が回転量S0を移動完了したか否かを判定する。主軸101が回転量S0を移動完了した場合(YES)、処理は、ステップS25へ移る。主軸101が回転量S0を移動完了していない場合(NO)、処理は、ステップS23へ戻る。
【0056】
ステップS25において、ステップ13における切込み動作の終了後、すなわち回転量S0の移動完了後、主軸制御部220は、主軸指令出力部211から送られた回転量S1及び最高回転速度V1を主軸指令として、数値制御部210からの指令に先行して主軸101の移動を開始する。
【0057】
ステップS26において、主軸制御部220は、切り込み動作が終了した第1の目標位置から第2の目標位置まで引き抜き動作を主軸101の回転量S1及び最高回転速度V1によって行う。
【0058】
ステップS27において、主軸制御部220は、主軸101が回転量S1を移動完了したか否かを判定する。主軸101が回転量S1を移動完了した場合(YES)、処理は、ステップS28へ移る。主軸101が回転量S1を移動完了していない場合(NO)、処理は、ステップS26へ戻る。
【0059】
ステップS28において、ステップ16における引き抜き動作の終了後、すなわち回転量S1の移動完了後、主軸制御部220は、主軸指令出力部211から送られた回転量S2及び最高回転速度V1、並びに回転量S3及び最高回転速度V0を主軸指令として、数値制御部210からの指令に先行して主軸101の移動を開始する。
【0060】
ステップS29において、主軸制御部220は、引き抜き動作が終了した第2の目標位置から切り込み動作が終了した第1の目標位置まで切り込み動作を主軸101の回転量S2及び最高回転速度V1によって行う。
更に、主軸制御部220は、第1の目標位置から第3の目標位置まで切り込み動作を主軸101の回転量S3及び最高回転速度V0によって行う。
【0061】
そして、処理は、主軸101が穴底へ到達するまで、ステップS23からステップS29までと同様の処理を繰り返し、処理は、その後、ステップS30へ移る。
【0062】
ステップS30において、主軸101が穴底へ到達した後、主軸制御部220は、主軸指令出力部211から送られた回転量Sn及び最高回転速度V1を主軸指令として、主軸101のタップ加工開始位置への移動を開始する。
【0063】
ステップS31において、主軸制御部220は、穴底からタップ加工開始位置まで引き抜き動作を主軸101の回転量Sn及び最高回転速度V1によって行う。
そして、主軸制御部220は、主軸101がタップ加工開始位置へを移動完了したか否かを判定する。主軸101がタップ加工開始位置へ移動完了した場合(YES)、処理は、その後終了する。主軸101がタップ加工開始位置へ移動完了していない場合(NO)、処理は、ステップS31を繰り返す。
【0064】
以上説明したように、上述した実施形態によれば、工作機械の制御装置200は、タップ加工プログラム500に基づき主軸指令及び送り軸指令を作成する数値制御部210と、主軸指令に従って主軸101の回転動作を制御する主軸制御部220と、主軸101の回転位置を検出する回転検出部230と、回転位置に基づいて、送り軸指令に従って送り軸の送り動作を制御する送り軸制御部240と、を備える。数値制御部210は、加工開始位置から目標位置まで任意の回数で切り込み動作及び引き抜き動作を行う際に、切り込み動作及び引き抜き動作における主軸101の回転量及び最高回転速度をタップ加工プログラム500から取得し、主軸101の回転量及び最高回転速度を主軸指令として主軸制御部220に送る主軸指令出力部211を有する。
【0065】
これにより、主軸制御部220は、事前に送られた主軸101の回転量及び最高回転速度を用いることによって、切り込み動作又は引き抜き動作の完了後に、次の引き抜き動作又は切り込み動作における主軸101の移動を開始することができる。そのため、制御装置200は、主軸制御部220における指令待ち時間をより低減することができる。したがって、制御装置200は、タップ加工のサイクルタイムを短縮することができる。
【0066】
また、主軸指令出力部211は、主軸制御部220による主軸101の移動開始前に、切り込み動作及び引き抜き動作における主軸101の回転量及び最高回転速度をタップ加工プログラム500から取得し、主軸101の回転量及び最高回転速度を主軸指令として主軸制御部220に送る。
【0067】
これにより、主軸制御部220は、主軸101の移動開始前に、主軸101の回転量及び最高回転速度を取得することによって、切り込み動作又は引き抜き動作の完了後に、次の引き抜き動作又は切り込み動作における主軸101の移動を開始することができる。そのため、制御装置200は、主軸制御部220における指令待ち時間をより低減することができる。
【0068】
また、主軸制御部220は、主軸指令出力部211から送られた回転量及び最高回転速度を主軸指令として、数値制御部210からの指令に先行して主軸101の移動を開始する。これにより、制御装置200は、主軸制御部220における指令待ち時間をより低減することができる。
【0069】
また、主軸101の回転量及び最高回転速度は、切り込み動作又は引き抜き動作中の所定の位置において変更される。主軸指令出力部211は、主軸101の変更前の第1の回転量、変更後の第2の回転量、変更前の第1の最高回転速度及び変更後の第2の最高回転速度をタップ加工プログラム500から取得する。そして、主軸指令出力部211は、第1の回転量、第2の回転量、第1の最高回転速度及び第2の最高回転速度を主軸指令として主軸制御部220に送る。
【0070】
これにより、制御装置200は、切り込み動作又は引き抜き動作中に主軸101の回転量及び最高回転速度を変更することにより、タップ加工のサイクルタイムを更に短縮することができる。
【0071】
また、主軸101の回転量及び最高回転速度は、引き抜き動作後の切り込み動作中の所定の位置において変更され、所定の位置は、直前の前記引き抜き動作における目標位置である。これにより、制御装置200は、引き抜き動作後の切り込み動作中に主軸101の回転量及び最高回転速度を変更することにより、タップ加工のサイクルタイムを更に短縮することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の制御装置200は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。また、上記の制御装置200により行なわれる制御方法も、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0073】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【0074】
また、上述した各実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記各実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【符号の説明】
【0075】
200 制御装置
210 数値制御部
211 主軸指令出力部
212 プログラム解釈部
213 送り軸指令出力部
220 主軸制御部
221 初期動作制御部
222 回転量検出部
223 残回転量検出部
224 現在速度検出部
225 位置決め動作制御部
230 回転検出部
240 送り軸制御部
図1
図2
図3
図4
図5