(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】吸着ノズル装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
B25J15/06 A
(21)【出願番号】P 2022560779
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2021040369
(87)【国際公開番号】W WO2022097632
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2020186706
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】潘超
(72)【発明者】
【氏名】本脇 淑雄
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-192492(JP,A)
【文献】特開2017-113870(JP,A)
【文献】特開2008-264973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを真空吸着するための吸着ノズル装置において、
大径パイプと、
前記大径パイプの先端に装着される大径ノズルと、
前記大径パイプに同軸で挿入され、前記大径パイプとの間に間隙を設けるために前記大径パイプの内径より外径が短い小径パイプと、
前記小径パイプの先端に装着される小径ノズルと、
前記大径パイプと前記小径パイプとを相対的に移動自在に支持する支持機構とを具備し、
前記大径パイプと前記小径パイプとの相対的移動に伴って、前記大径ノズルに対して前記小径ノズルが突出する状態と引き込まれる状態とで変化するともに、前記大径ノズルの後端内縁に対して前記小径ノズルの外周面が密接することにより前記大径パイプと前記小径パイプとの間の間隙が閉塞されて気体が流通する流路の流路断面積が前記小径パイプの内径断面積に設定される状態と、前記大径ノズルの後端内縁に対して前記小径ノズルの外周面が離間して前記大径パイプと前記小径パイプとの間の間隙が開放され、前記流路断面積が前記大径ノズルの内径断面積に設定される状態と、前記大径ノズルの後端内縁に対して前記小径ノズルの外周面が接近して前記流路断面積が前記大径ノズルの内径断面積未満であって前記小径ノズルの内径断面積超える面積範囲内の値に設定される状態とで変化する、吸着ノズル装置。
【請求項2】
前記小径ノズルは、先端の外径が前記大径ノズルの内径より短く、後端の外径が前記大径ノズルの内径より長い円錐台形状を有する、請求項1記載の吸着ノズル装置。
【請求項3】
前記小径ノズルにおいて外径が前記大径ノズルの内径に一致する位置より先端部分の長さは、前記大径ノズルの長さより長い、請求項2記載の吸着ノズル装置。
【請求項4】
前記大径パイプの後方部分に接続され、前記大径パイプの内部に連通する気密室を構成する接続ブロックをさらに備え、
前記小径パイプにはその内部を前記気密室に連通する連通孔が開けられる、請求項1乃至3のいずれか一項記載の吸着ノズル装置。
【請求項5】
前記小径パイプの先端であって、前記小径ノズルの内部には、前記ワークの進入を防止するための進入防護ブラケットが装備される、請求項1乃至4のいずれか一項記載の吸着ノズル装置。
【請求項6】
ワークを真空吸着するための吸着ノズル装置において、
大径パイプと、
前記大径パイプの先端に装着される大径ノズルと、
前記大径パイプに挿入され、前記大径パイプとの間に間隙を設けるために前記大径パイプの内径より外径が短い小径パイプと、
前記小径パイプの先端に装着される小径ノズルと、
前記大径パイプと前記小径パイプとを相対的に移動自在に支持する支持機構とを具備し、
前記大径パイプと前記小径パイプとの相対的移動に伴って、気体が流通する流路の流路断面積が前記小径ノズルの内径断面積と前記大径ノズルの内径断面積との間で連続的に変化する、吸着ノズル装置。
【請求項7】
ワークを吸着するための吸着ノズル装置において、
順次挿入される口径の異なる複数のパイプと、
前記複数のパイプの先端にそれぞれ装着される口径の異なる複数のノズルと、
前記複数のパイプを相対的に移動自在に支持する支持機構とを具備し、
前記複数のパイプは間隙を隔てて順次挿入され、
前記複数のパイプの相対的移動に伴って、前記複数のノズルの一が選択的に突出
し、
前記突出した複数のノズルの一に応じて、前記間隙が開放され、気体が前記間隙及び前記突出した複数のノズルの一が装着される前記複数のパイプの一の内側を流通する状態と、前記間隙が閉鎖され、前記気体が前記突出した複数のノズルの一が装着される前記複数のパイプの一の内側を流通する状態とが切り替わる、吸着ノズル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、ワークを真空吸着するための吸着ノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを好適に真空吸着するためには、ワークの大きさに応じた口径の吸着ノズルに適宜交換する必要がある。従来、口径の異なる複数の吸着ノズルを回転盤に取り付けて、回転盤の回転によって吸着ノズルを切り替えることができるように構成されているものがある。
【0003】
しかし、当該構成では、複数の吸着ノズルを回転盤上に周設する必要があり、装置全体のサイズが大きくなり、ノズルを狭い場所に差し入れてワークを吸着することが困難になる場合があった。また回転盤及びその回転機構等が必要とされるため重量増加及びそれに伴う慣性の増大により、高速での移動が困難であった。
【0004】
また口径の異なる複数のノズルのいずれかを突出させる構造も提案されているが(特許文献1参照)、この構造では、流路が最小径のノズルの内径断面積に固定されるので、ワークの重量に応じて流量を最適化することが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ワークに応じて口径の異なるノズルを選択でき、狭い場所にも差し入れることができ、それらを軽量化とともに実現することができ、さらにノズル選択に伴って流量を変動させることのできるノズル装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るワークを真空吸着するための吸着ノズル装置は、大径パイプと、大径パイプの先端に装着される大径ノズルと、大径パイプに同軸で挿入され、大径パイプとの間に間隙を設けるために大径パイプの内径より外径が短い小径パイプと、小径パイプの先端に装着される小径ノズルと、大径パイプと小径パイプとを相対的に移動自在に支持する支持機構とを具備する。大径パイプと小径パイプとの相対的移動に伴って、大径ノズルに対して小径ノズルが突出する状態と引き込まれる状態とで変化するとともに、大径ノズルの後端内縁に対して小径ノズルの外周面が密接することにより大径パイプと小径パイプとの間の間隙が閉塞されて気体が流通する流路の流路断面積が小径パイプの内径断面積に設定される状態と、大径ノズルの後端内縁に対して小径ノズルの外周面が離間して大径パイプと前記小径パイプとの間の間隙が開放され、流路断面積が大径ノズルの内径断面積に設定される状態と、大径ノズルの後端内縁に対して小径ノズルの外周面が接近して流路断面積が大径ノズルの内径断面積未満であって小径ノズルの内径断面積超える面積範囲内の値に設定される状態とで変化する。
【発明の効果】
【0008】
本態様によれば、ワークに応じて口径の異なるノズルを選択でき、狭い場所にも差し入れることができ、それらを軽量化とともに実現することができる。さらに大径パイプと小径パイプとの相対的移動に伴って、気体が流通する流路の流路断面積を連続的に変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は一実施形態に係る吸着ノズル装置を装備したエンドエフェクタ全体の斜視図である。
【
図3】
図3は
図2のワーク進入防護ブラケットの斜視図である。
【
図6D】
図6Dは
図1の吸着ノズル装置の変形例において、第3状態に対応する流路断面積を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係るワークを真空吸着するための吸着ノズル装置を説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る吸着ノズル装置1は、ロボットアームの先端に取り付けられる真空吸着用のエンドエフェクタ(単にハンドともいう)に組み込まれる。吸着ノズル装置1は、長尺円管(以下、大径パイプという)3を有している。この大径パイプ3の先端にはノズル(大径ノズルという)5が装着される。大径パイプ3には後述する大径パイプ3より小径の長尺円管(小径パイプ)が同軸で挿入される。この小径パイプの先端には小径ノズル7が装着される。大径ノズル5と小径ノズル7とはそれぞれ空気非透過性であって弾性を有する典型的にはウレタンや合成ゴム等の樹脂素材で成形される。
【0012】
小径パイプの外径は大径パイプ3の内径より短く、大径パイプ3と小径パイプとの間には間隙が設けられる。詳細は後述するが、大径パイプ3に対して小径パイプは中心軸に沿って移動自在に設けられ、その移動に伴って、小径ノズル7が大径パイプ3の内部に引き込まれて、大径ノズル5が小径ノズル7に対して突出する状態と、大径ノズル5に対して小径ノズル7が突出する状態とで変化する。
【0013】
また、大径ノズル5が小径ノズル7に対して突出する状態では、大径ノズル5に対して小径ノズル7が離間して、大径パイプ3と小径パイプとの間の間隙空間は開放され、それにより気体(空気)が流通する流量が決定される主たる変数である流路断面積としては、大径ノズル5の内径断面積に確保される。一方、大径ノズル5に対して小径ノズル7が突出する状態では、大径ノズル5に小径ノズル7が密接して、大径パイプ3と小径パイプとの間の間隙空間は閉鎖され、それにより流路断面積としては小径ノズル7の内径断面積に縮小される。さらに大径ノズル5に小径ノズル7が接近した状態では、大径ノズル5に対する小径ノズル7の距離に応じて流路断面積としては大径ノズル5の内径断面積と小径ノズル7の内径断面積との間で連続的に変化する。
【0014】
このように本実施形態では、大径パイプ3に対する小径パイプの相対的移動に伴って、大径ノズル5と小径ノズル7とを選択することができ、さらに流路断面積を大径ノズル5の内径断面積と小径ノズル7の内径断面積との間で連続的に変化させることができる。以下詳細に説明する。
【0015】
大径パイプ3の後端には接続ブロック8が接続される。接続ブロック8は中空構造であり、内部に気密室(密閉室)が形成される。接続ブロック8には真空ホース11を介して真空エジェクタ9が接続される。真空エジェクタ9のジョイントは真空ホース12を介してハンドベース15に開けられたジョイント17に接続される。ジョイント17には真空ホースを介して外部の真空ポンプに接続される。外部の真空ポンプから供給された圧縮空気は真空エジェクタ9の内部で真空圧力を発生させ、サイレンサ13を介して排気ダクトから排気される。真空エジェクタ9の内部で発生した真空圧力により、接続ブロック8の内部の気密室及び大径パイプ3の内部の空気が吸い込まれる。それにより接続ブロック8の内部の気密室及び大径パイプ3の内部が大気圧より低い真空状態に形成され、大径ノズル5又は小径ノズル7にワークが吸着される。
【0016】
電動アクチュエータ19は大径パイプ3に対して小径パイプを移動するために吸着ノズル装置1に取り付けられる。ハンドベース15には例えばバラ積されたワークをそのままの状態で頂点検出するためのセンサボックス21が取り付けられる。
【0017】
図2に示すように、大径パイプ3の後端に接続ブロック8が接続され、Oリング25で密封される。大径パイプ3には小径パイプ23が挿入され、小径パイプ23は大径パイプ3と同軸になるようにボールプランジャ27で位置決めされている。小径パイプ23の外径は、大径パイプ3の内径より短く、大径パイプ3と小径パイプとの間には間隙空間29が形成される。この間隙空間29は大径パイプ3の後端開口を介して接続ブロック8の内部の気密室31と連通している。小径パイプ23の中程には連通孔33が開けられており、小径パイプ23の内部空間は連通孔33を介して大径パイプ3と小径パイプとの間の間隙空間29に連通し、さらに間隙空間29を介して気密室31に連通している。小径パイプ23には封止材32が嵌め込まれている。小径パイプ23の内部空間は気密室31及び間隙空間29とともに真空状態に設定される。
【0018】
小径パイプ23はその後方部分において、接続ブロック8の後端開口に取り付けられたリニアブッシュ35に中心軸に沿って前後に移動自在に支持される。リニアブッシュ35は、ボールプランジャ27とともに大径パイプ3と小径パイプ23とを相対的に移動自在に支持する支持機構を構成する。接続ブロック8の後端にはバックプレート37がOリング39を挟んで取り付けられる。バックプレート37に開けられた貫通孔にはOリング40を挟んで小径パイプ23が挿入されている。Oリング40により接続ブロック8の内部の気密室31の気密状態を確保したまま小径パイプ23が前後に移動することができる。
【0019】
小径パイプ23の後端はバックプレート37を貫通する孔から突出し、その後端は可動プレート41に固定される。可動プレート41はリニアガイド43に中心軸に沿って前後に移動自在に支持され、電動アクチュエータ19の作動部に接続される。電動アクチュエータ19により可動プレート41が前後に移動すると、それに伴って小径パイプ23が大径パイプ3に対して相対的に移動する。小径パイプ23が大径パイプ3に対して相対的に移動する構造を例示したが、大径パイプ3が小径パイプ23に対して相対的に移動する構造であってもよいし、大径パイプ3と小径パイプ23との両方が移動してそれらの相対的移動を実現する構造であってもよい。
【0020】
接続ブロック8の側壁は開口され、接続部45が嵌め込まれる。接続部45には継手46を介して真空ホース11が接続される。それにより接続ブロック8の内部は真空エジェクタ9の内部に連通する。
【0021】
小径パイプ23の先端であって、小径ノズル7の内側には、気体(空気)の流通を阻害せず、極小ワークの小径ノズル7及び小径パイプ23への進入を防護するための進入防護ブラケット2が取り付けられている。
図3に示すように進入防護ブラケット2としては例えば円環台座4に複数のU字形線材6が互いに間隔を隔てて周設されてなる。
【0022】
図4に示すように、大径パイプ3の先端には大径ノズル5がその後方部分51において嵌め込まれる。大径ノズル5の先端部分53は先細りの円錐台形状を有し、その前後にわたって円筒形状の孔55が貫通される。大径ノズル5の先端部分53はノズルとしての本体部分である。以下、先端部分53と後方部分51を区別しないで単に大径ノズル5と称するときは、その先端部分53を表すものとする。なお、ここでは大径パイプ3の先端に大径ノズル5を結合する構造として、大径ノズル5の後方部分51を大径パイプ3の先端に嵌め込む構造を例示したが、その構造には限定されることはなく、大径ノズル5の先端部分53の後端面を大径パイプ3の先端面に直接結合する等任意の構造が採用され得る。
【0023】
小径パイプ23の先端には小径ノズル7がその後方部分71において嵌め込まれる。小径ノズル7の先端部分73も先細りの円錐台形状を有し、その前後にわたって円筒形状の孔75が貫通される。小径ノズル7の先端部分73はノズルとしての本体部分である。以下、先端部分73と後方部分71を区別しないで単に小径ノズル7と称するときは、その先端部分73を表すものとする。なお、同様に、小径パイプ23の先端に小径ノズル7を結合する構造としては、小径ノズル7の後方部分71を小径パイプ23の先端に嵌め込む構造に限定されることはなく、小径ノズル7の先端部分73の後端面を小径パイプ23の先端面に直接結合する等任意の構造が採用され得る。
【0024】
小径ノズル7の口径(内径)ID1は、大径ノズル5の口径(内径)ID2よりも短く構成される。小径ノズル7の円錐台形状をなす先端部分73の後端の外径OD12は、大径ノズル5の内径ID2よりも長く、且つともに円形であることから、小径ノズル7の先端部分73の外周面は大径ノズル5の先端部分53の後端内縁57に当接することができる。また大径ノズル5と小径ノズル7とは空気非透過性であって弾性を有する樹脂素材で成形されているので、小径ノズル7の先端部分73の外周面が大径ノズル5の先端部分53の後端内縁57に密接し、大径パイプ3と小径パイプ23との間の間隙空間29を閉塞することができる。
【0025】
小径ノズル7の先端部分73の外周面が大径ノズル5の先端部分53の後端内縁57に密接したとき、つまり小径ノズル7の先端部分73の外径が大径ノズル5の内径ID2に一致したとき、その位置から先端までの小径ノズル7の部分的な長さL1は、大径ノズル5の先端部分53の長さL2よりも長く構成される。それにより小径ノズル7がその先端部分73の外周面が大径ノズル5の先端部分53の後端内縁57に密接する可動範囲の限界まで前方に移動したとき、小径ノズル7の先端が大径ノズル5より突出することができる。
【0026】
図5Aは大径ノズル5が小径ノズル7より突出した状態(大口径状態)を示し、
図5Bは小径ノズル7が大径ノズル5より突出した状態(小口径状態)を示し、
図5Cは小径ノズル7の先端部分が大径ノズル5に部分的に重なった状態(中口径状態)を示している。
図6Aは
図5Aの部分拡大図を示し、
図6Bは
図5Bの部分拡大図を示し、
図6Cは
図5Cの部分拡大図を示している。
【0027】
図5A、
図6Aに示すように、小径パイプ23を可動範囲の限界付近まで引き戻すことにより、大径ノズル5を小径ノズル7より突出させることができる。大径ノズル5の外径OD2は小径ノズル7の外径OD1よりも大きいので、比較的大型のワークを吸着するのに適している。このとき小径ノズル7の先端部分73は大径ノズル5の先端部分53の後端内縁57から最大距離で離間し、大径パイプ3と小径パイプ23との間隙空間29は開放されるので、吸着ノズル装置1としての流路口径としては大径ノズル5の内径に等価になる。このときの気体が流通する流路の断面積(流路断面積)としては、(ID2/2)
2×πにより与えられる。従って流量としては吸着ノズル装置1の最大値を示し、大きく、そして重いワークを吸着することができる。
【0028】
図5B、
図6Bに示すように、小径ノズル7の先端部分73の外周面が大径ノズル5の先端部分53の後端内縁57に密接するまで、小径パイプ23を大径パイプ3に対して前方に移動したとき、小径ノズル7が大径ノズル5より突出する。小径ノズル7の外径OD1は大径ノズル5の外径OD2よりも小さいので、比較的小型のワークを吸着するのに適している。このとき大径パイプ3と小径パイプ23との間の間隙空間29は閉塞されるので、吸着ノズル装置1としての流路口径としては小径ノズル7の内径に一致する。流路断面積としては、(ID1/2)
2×πにより与えられる。流量としては吸着ノズル装置1の最小値を示し、小さく、そして軽いワークを好適に吸着することができる。
【0029】
図5C、
図6Cに示すように、小径ノズル7の先端部分73の外周面が大径ノズル5の先端部分53の後端内縁57から可動範囲の最大距離で離間する位置(
図6A)と、小径ノズル7の先端部分73の外周面が大径ノズル5の先端部分53の後端内縁57に密接する位置(
図6B)との間の任意の位置で停止させるように、小径パイプ23を移動させる。このとき小径ノズル7の先端部分73が大径ノズル5の先端部分53に対して部分的に重なり、気体は小径ノズル7の内周面で規定される円領域と、大径ノズル5の先端部分53の内周面と小径ノズル7の先端部分73の外周面とで規定される円環領域とになる。
【0030】
小径ノズル7の先端部分73の外周面と、大径ノズル5の先端部分53の後端内縁57との間の距離GDは、小径ノズル7の先端部分73が円錐台形状であるので、両者の位置関係、つまり小径パイプ23の移動に応じて連続的に変化する。小径パイプ23が最も引き込まれた位置から前方に移動するとき、小径ノズル7の先端部分73の外周面は、大径ノズル5の先端部分53の後端内縁57に少しずつ接近し、当該距離GDは少しずつ短くなる。それに応じて大径ノズル5の流路断面積“(ID2/2)2×π”が狭められ、流量も減少する。つまり小径パイプ23の移動に応じて、小径ノズル7の先端部分73の外周面と大径ノズル5の先端部分53の後端内縁57との間隙GDが連続的に変化し、それに伴って流路断面積は、最大の流路断面積“(ID2/2)2×π”と、最小の流路断面積“(ID1/2)2×π”との間で連続的に変化し、流量も連続的に変化する。小径パイプ23を移動し、適当な位置で停止させることにより、ワークの重量に応じて流量を調整し、その吸引力を最適化することができる。
【0031】
なお、
図6Dに示すように大径ノズル5の先端に小径ノズル7の先端を揃えることにより、ワークに対するノズル接触面積を最大化することもできる。
【0032】
このように本実施形態によれば、大径パイプと小径パイプの相対的位置を変化させて、大径ノズルに対して小径ノズルを微妙に出し入れすることにより、ワークに対するノズルの接触面積を2段階さらに3段階で切り替えることができ、それとともに流路断面積(流量)を大径ノズルの口径に応じた最大流路断面積と、小径ノズルの口径に応じた最小流路断面積との間で連続的に調整することができ、ワークを安定的に吸着することができる。
【0033】
また大径パイプと小径パイプとの相対的な位置を変化させる簡易な構造の導入により、吸着ノズル装置を小型軽量化することができ、重量や慣性を低減することが可能となり、従来より、高速な吸着搬送動作実現できる。
【0034】
さらに大径ノズルと小径ノズルの選択は、大径パイプと小径パイプとの相対的な移動により実現している。従来のようにノズル交換機構やノズルに移動機構を直接装備する必要がないため、ノズル箇所の小型化を実現できる。また大径ノズルと小径ノズルを大径パイプと小径パイプの先端に装着しているのので、ノズルを狭い場所に差し入れることができる。
【0035】
上述では、吸着ノズル装置はパイプ及びノズルの二重管構造として説明したが、それを超える多重感構造であってもよい。つまり、吸着ノズル装置は、順次挿入される口径の異なる複数のパイプと、複数のパイプの先端にそれぞれ装着される口径の異なる複数のノズルと、複数のパイプを相対的に移動自在に支持する支持機構とを具備するものであってもよい。支持機構等基本的な構造は上記同様である。この多重管構造では、複数のパイプの相対的移動に伴って、複数のノズルの一が選択的に突出するとともに、流路断面積が当該突出した複数のノズルの一の内径断面積に設定される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0037】
1…吸着ノズル装置、2…進入防護ブラケット、3…大径パイプ、5…大径ノズル、7…小径ノズル、8…接続ブロック、23…小径パイプ、25…Oリング、27…ボールプランジャ、29…間隙空間、31…気密室、32…封止材、33…連通孔、35…リニアブッシュ、37…バックプレート、40…Oリング、41…可動プレート、43…リニアガイド、45…接続部、46…継手。