(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】電源回路、電源回路の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
H02M3/28 S
(21)【出願番号】P 2023000341
(22)【出願日】2023-01-05
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】安藤 勉
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-176587(JP,A)
【文献】特開平7-123718(JP,A)
【文献】特開2022-6847(JP,A)
【文献】特開平5-38151(JP,A)
【文献】特開2016-1980(JP,A)
【文献】特開2021-35200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1チョークコイル、第2チョークコイル、第3チョークコイル、第1ダイオード、第2ダイオード、第3ダイオード、第4ダイオード、第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子、第4スイッチング素子、第1コンデンサ、第2コンデンサ、第3コンデンサ、第4コンデンサ、第1トランス、および第2トランスを備え、
前記第1チョークコイルの第1端子は、直流電圧源の正電圧側の端子に接続され、
前記第1チョークコイルの第2端子は、前記第1ダイオードのアノードおよび前記第3ダイオードのアノードに接続され、
前記第1ダイオードのカソードは、前記第1コンデンサの第1端子および前記第1スイッチング素子の第1端子に接続され、
前記第2ダイオードのアノードは、前記第2コンデンサの第1端子および前記第2スイッチング素子の第1端子に接続され、
前記第3ダイオードのカソードは、前記第3コンデンサの第1端子および前記第3スイッチング素子の第1端子に接続され、
前記第4ダイオードのアノードは、前記第4コンデンサの第1端子および前記第4スイッチング素子の第1端子に接続され、
前記第1コンデンサの第2端子は、前記第2コンデンサの第2端子および前記第1トランスの第1端子に接続され、
前記第3コンデンサの第2端子は、前記第4コンデンサの第2端子および前記第2トランスの第1端子に接続され、
前記第2チョークコイルの第1端子は、前記第1トランスの第2端子に接続され、
前記第3チョークコイルの第1端子は、前記第2トランスの第2端子に接続され、
前記第1スイッチング素子の第2端子は、前記第2スイッチング素子の第2端子、前記第3スイッチング素子の第2端子、前記第4スイッチング素子の第2端子、前記第2チョークコイルの第2端子、および前記第3チョークコイルの第2端子に接続され、
前記第2ダイオードのカソードは、前記第4ダイオードのカソードおよび前記直流電圧源の負電圧側の端子に接続されている
電源回路。
【請求項2】
前記直流電圧源は、
交流電圧を出力する交流電圧源と、
前記交流電圧を直流電圧に整流する整流回路と、
を備える請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子それぞれをオン状態またはオフ状態に制御する制御部、
を備える請求項1または請求項2に記載の電源回路。
【請求項4】
出力電圧を検知し、出力電圧が規定値になるようにスイッチング周波数を調整し、基準周波数信号を前記制御部に出力する周波数制御部、
を備え、
前記制御部は、
前記周波数制御部が出力した前記基準周波数信号を用いて、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子それぞれをオン状態またはオフ状態に制御する、
請求項3に記載の電源回路。
【請求項5】
第1チョークコイル、第2チョークコイル、第3チョークコイル、第1ダイオード、第2ダイオード、第3ダイオード、第4ダイオード、第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子、第4スイッチング素子、第1コンデンサ、第2コンデンサ、第3コンデンサ、第4コンデンサ、第1トランス、および第2トランスを備え、前記第1チョークコイルの第1端子は、直流電圧源の正電圧側の端子に接続され、前記第1チョークコイルの第2端子は、前記第1ダイオードのアノードおよび前記第3ダイオードのアノードに接続され、前記第1ダイオードのカソードは、前記第1コンデンサの第1端子および前記第1スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第2ダイオードのアノードは、前記第2コンデンサの第1端子および前記第2スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第3ダイオードのカソードは、前記第3コンデンサの第1端子および前記第3スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第4ダイオードのアノードは、前記第4コンデンサの第1端子および前記第4スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第1コンデンサの第2端子は、前記第2コンデンサの第2端子および前記第1トランスの第1端子に接続され、前記第3コンデンサの第2端子は、前記第4コンデンサの第2端子および前記第2トランスの第1端子に接続され、前記第2チョークコイルの第1端子は、前記第1トランスの第2端子に接続され、前記第3チョークコイルの第1端子は、前記第2トランスの第2端子に接続され、前記第1スイッチング素子の第2端子は、前記第2スイッチング素子の第2端子、前記第3スイッチング素子の第2端子、前記第4スイッチング素子の第2端子、前記第2チョークコイルの第2端子、および前記第3チョークコイルの第2端子に接続され、前記第2ダイオードのカソードは、前記第4ダイオードのカソードおよび前記直流電圧源の負電圧側の端子に接続される電源回路を制御する制御方法であって、
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子それぞれをオン状態またはオフ状態に制御する
電源回路の制御方法。
【請求項6】
第1チョークコイル、第2チョークコイル、第3チョークコイル、第1ダイオード、第2ダイオード、第3ダイオード、第4ダイオード、第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子、第4スイッチング素子、第1コンデンサ、第2コンデンサ、第3コンデンサ、第4コンデンサ、第1トランス、および第2トランスを備え、前記第1チョークコイルの第1端子は、直流電圧源の正電圧側の端子に接続され、前記第1チョークコイルの第2端子は、前記第1ダイオードのアノードおよび前記第3ダイオードのアノードに接続され、前記第1ダイオードのカソードは、前記第1コンデンサの第1端子および前記第1スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第2ダイオードのアノードは、前記第2コンデンサの第1端子および前記第2スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第3ダイオードのカソードは、前記第3コンデンサの第1端子および前記第3スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第4ダイオードのアノードは、前記第4コンデンサの第1端子および前記第4スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第1コンデンサの第2端子は、前記第2コンデンサの第2端子および前記第1トランスの第1端子に接続され、前記第3コンデンサの第2端子は、前記第4コンデンサの第2端子および前記第2トランスの第1端子に接続され、前記第2チョークコイルの第1端子は、前記第1トランスの第2端子に接続され、前記第3チョークコイルの第1端子は、前記第2トランスの第2端子に接続され、前記第1スイッチング素子の第2端子は、前記第2スイッチング素子の第2端子、前記第3スイッチング素子の第2端子、前記第4スイッチング素子の第2端子、前記第2チョークコイルの第2端子、および前記第3チョークコイルの第2端子に接続され、前記第2ダイオードのカソードは、前記第4ダイオードのカソードおよび前記直流電圧源の負電圧側の端子に接続される電源回路において、
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子それぞれをオン状態またはオフ状態に制御することをコンピュータに実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路、電源回路の制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンバータ電源回路に関して、関連する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の関連する電源回路では、チョークコイルに蓄積したエネルギーを放出する際に、トランスの1次側漏れインダクタンスにより電流が抑制され、チョークコイルの両端にサージ電圧が発生する。このサージ電圧の発生を制御するためには、例えば、スイッチング素子とコンデンサからなるスイッチスナバー回路が必要となる。
【0005】
また、特許文献1に記載の関連する電源回路には、スイッチング素子がオン時に流れる電流波形は矩形になることから、スイッチング損失が大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電源回路におけるスイッチング損失を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電源回路は、第1チョークコイル、第2チョークコイル、第3チョークコイル、第1ダイオード、第2ダイオード、第3ダイオード、第4ダイオード、第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子、第4スイッチング素子、第1コンデンサ、第2コンデンサ、第3コンデンサ、第4コンデンサ、第1トランス、および第2トランスを備え、前記第1チョークコイルの第1端子は、直流電圧源の正電圧側の端子に接続され、前記第1チョークコイルの第2端子は、前記第1ダイオードのアノードおよび前記第3ダイオードのアノードに接続され、前記第1ダイオードのカソードは、前記第1コンデンサの第1端子および前記第1スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第2ダイオードのアノードは、前記第2コンデンサの第1端子および前記第2スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第3ダイオードのカソードは、前記第3コンデンサの第1端子および前記第3スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第4ダイオードのアノードは、前記第4コンデンサの第1端子および前記第4スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第1コンデンサの第2端子は、前記第2コンデンサの第2端子および前記第1トランスの第1端子に接続され、前記第3コンデンサの第2端子は、前記第4コンデンサの第2端子および前記第2トランスの第1端子に接続され、前記第2チョークコイルの第1端子は、前記第1トランスの第2端子に接続され、前記第3チョークコイルの第1端子は、前記第2トランスの第2端子に接続され、前記第1スイッチング素子の第2端子は、前記第2スイッチング素子の第2端子、前記第3スイッチング素子の第2端子、前記第4スイッチング素子の第2端子、前記第2チョークコイルの第2端子、および前記第3チョークコイルの第2端子に接続され、前記第2ダイオードのカソードは、前記第4ダイオードのカソードおよび前記直流電圧源の負電圧側の端子に接続されている。
【0008】
本発明の一態様に係る電源回路の制御方法は、第1チョークコイル、第2チョークコイル、第3チョークコイル、第1ダイオード、第2ダイオード、第3ダイオード、第4ダイオード、第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子、第4スイッチング素子、第1コンデンサ、第2コンデンサ、第3コンデンサ、第4コンデンサ、第1トランス、および第2トランスを備え、前記第1チョークコイルの第1端子は、直流電圧源の正電圧側の端子に接続され、前記第1チョークコイルの第2端子は、前記第1ダイオードのアノードおよび前記第3ダイオードのアノードに接続され、前記第1ダイオードのカソードは、前記第1コンデンサの第1端子および前記第1スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第2ダイオードのアノードは、前記第2コンデンサの第1端子および前記第2スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第3ダイオードのカソードは、前記第3コンデンサの第1端子および前記第3スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第4ダイオードのアノードは、前記第4コンデンサの第1端子および前記第4スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第1コンデンサの第2端子は、前記第2コンデンサの第2端子および前記第1トランスの第1端子に接続され、前記第3コンデンサの第2端子は、前記第4コンデンサの第2端子および前記第2トランスの第1端子に接続され、前記第2チョークコイルの第1端子は、前記第1トランスの第2端子に接続され、前記第3チョークコイルの第1端子は、前記第2トランスの第2端子に接続され、前記第1スイッチング素子の第2端子は、前記第2スイッチング素子の第2端子、前記第3スイッチング素子の第2端子、前記第4スイッチング素子の第2端子、前記第2チョークコイルの第2端子、および前記第3チョークコイルの第2端子に接続され、前記第2ダイオードのカソードは、前記第4ダイオードのカソードおよび前記直流電圧源の負電圧側の端子に接続される電源回路を制御する制御方法であって、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子それぞれをオン状態またはオフ状態に制御することを含む。
【0009】
本発明の一態様に係るプログラムは、第1チョークコイル、第2チョークコイル、第3チョークコイル、第1ダイオード、第2ダイオード、第3ダイオード、第4ダイオード、第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子、第4スイッチング素子、第1コンデンサ、第2コンデンサ、第3コンデンサ、第4コンデンサ、第1トランス、および第2トランスを備え、前記第1チョークコイルの第1端子は、直流電圧源の正電圧側の端子に接続され、前記第1チョークコイルの第2端子は、前記第1ダイオードのアノードおよび前記第3ダイオードのアノードに接続され、前記第1ダイオードのカソードは、前記第1コンデンサの第1端子および前記第1スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第2ダイオードのアノードは、前記第2コンデンサの第1端子および前記第2スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第3ダイオードのカソードは、前記第3コンデンサの第1端子および前記第3スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第4ダイオードのアノードは、前記第4コンデンサの第1端子および前記第4スイッチング素子の第1端子に接続され、前記第1コンデンサの第2端子は、前記第2コンデンサの第2端子および前記第1トランスの第1端子に接続され、前記第3コンデンサの第2端子は、前記第4コンデンサの第2端子および前記第2トランスの第1端子に接続され、前記第2チョークコイルの第1端子は、前記第1トランスの第2端子に接続され、前記第3チョークコイルの第1端子は、前記第2トランスの第2端子に接続され、前記第1スイッチング素子の第2端子は、前記第2スイッチング素子の第2端子、前記第3スイッチング素子の第2端子、前記第4スイッチング素子の第2端子、前記第2チョークコイルの第2端子、および前記第3チョークコイルの第2端子に接続され、前記第2ダイオードのカソードは、前記第4ダイオードのカソードおよび前記直流電圧源の負電圧側の端子に接続される電源回路において、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子それぞれをオン状態またはオフ状態に制御することをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、電源回路におけるスイッチング損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る電源回路の構成の一例を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る電源回路の動作を示すタイムチャートの一例を示す図である。
【
図3】第2実施形態に係る電源回路の構成の一例を示す図である。
【
図4】第2実施形態に係る電源回路におけるスイッチング素子の動作の一例を示す図である。
【
図5】第3実施形態に係る電源回路の構成の一例を示す図である。
【
図6】第4実施形態に係る電源回路の構成の一例を示す図である。
【
図7】第5実施形態に係る電源回路の構成の一例を示す図である。
【
図8】第6実施形態に係る電源回路の構成の一例を示す図である。
【
図9】第7実施形態に係る電源回路の構成の一例を示す図である。
【
図10】第8実施形態に係る電源回路の構成の一例を示す図である。
【
図11】第9実施形態に係る電源回路の構成の一例を示すブロック図である。
【
図12】第1実施形態から第9の実施形態のいずれかに係る電源回路のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
【0013】
〔第1実施形態〕
図1から
図2を参照して、第1実施形態を説明する。
【0014】
(電源回路1の構成)
図1は、第1実施形態による電源回路1の構成の一例を示す図である。電源回路1は、
図1に示すように、直流電圧源Ei、チョークコイルL1(第1チョークコイルの一例)、チョークコイルL2(第2チョークコイルの一例)、チョークコイルL3(第3チョークコイルの一例)、ダイオードD1(第1ダイオードの一例)、D2(第3ダイオードの一例)、D3(第2ダイオードの一例)、D4(第4ダイオードの一例)、D5、D6、D7、D8、スイッチング素子Q1(第1スイッチング素子の一例)、Q2(第1スイッチング素子の一例)、Q3(第2スイッチング素子の一例)、Q4(第2スイッチング素子の一例)、コンデンサC1(第1コンデンサの一例)、C2(第1コンデンサの一例)、C3(第2コンデンサの一例)、C4(第2コンデンサの一例)、C5、トランスT1、T2を備える。電源回路1において、スイッチング素子Q1~Q4のいずれか1つ、整流ダイオードDQ1~DQ4のいずれか1つ、および、電圧平滑用コンデンサCQ1~CQ4のいずれか1つの組合せは、それぞれ、電源回路1における力率を1.0に近づけるための力率改善(PFC;Power Factor Correction)回路を構成する。
【0015】
直流電圧源Eiの第1端子は、チョークコイルL1の第1端子に接続される。直流電圧源Eiの第2端子は、ダイオードD2のカソードおよびダイオードD4のカソードに接続される。チョークコイルL1の第2端子は、ダイオードD1のアノードおよびダイオードD3のアノードに接続される。
【0016】
ダイオードD1のカソードは、コンデンサC1の第1端子およびスイッチング素子Q1の第1端子に接続される。ダイオードD2のアノードは、コンデンサC2の第1端子およびスイッチング素子Q2の第1端子に接続される。ダイオードD3のカソードは、コンデンサC3の第1端子およびスイッチング素子Q3の第1端子に接続される。
【0017】
ダイオードD4のアノードは、コンデンサC4の第1端子およびスイッチング素子Q4の第1端子に接続される。ダイオードD5のアノードはトランスT1の第1端子に接続される。チョークコイルL2の第1端子は、トランスT1の第2端子に接続され、チョークコイルL3の第1端子は、トランスT2の第2端子に接続される。
【0018】
ダイオードD5のカソードは、コンデンサC5の第1端子、ダイオードD6のカソード、ダイオードD7のカソード、およびダイオードD8のカソードに接続される。ダイオードD6のアノードは、トランスT1の第2端子に接続される。
【0019】
ダイオードD7のアノードは、トランスT2の第1端子に接続される。ダイオードD8のアノードは、トランスT2の第2端子に接続される。コンデンサC1の第2端子は、コンデンサC2の第2端子およびトランスT1の第3端子に接続される。
【0020】
コンデンサC3の第2端子は、コンデンサC4の第2端子およびトランスT2の第3端子に接続される。コンデンサC5の第2端子は、トランスT1の第4端子およびトランスT2の第4端子に接続される。
【0021】
スイッチング素子Q1の第2端子は、スイッチング素子Q2の第2端子、スイッチング素子Q3の第2端子、スイッチング素子Q4の第2端子、チョークコイルL2の第2端子、チョークコイルL3の第2端子、トランスT1の第5端子、およびトランスT2の第5端子に接続される。
【0022】
なお、コンデンサC5の第1端子および第2端子間に負荷LDが接続される。また、トランスT1の第4端子は、トランスT1の2次巻線のセンタータップである。また、トランスT2の第4端子は、トランスT2の2次巻線のセンタータップである。
【0023】
また、スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4それぞれの第3端子は、各スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4のオン状態からオフ状態またはオフ状態からオン状態への切り替わりを制御するために用いられる端子である。スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4のそれぞれは、例えば、NMOS(Negative-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタである。
【0024】
(電源回路1の動作)
次に、第1実施形態に係る電源回路1の動作について説明する。
図2は、第1実施形態に係る電源回路1の動作を示すタイムチャートの一例を示す図である。なお、スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4のそれぞれは、NMOSトランジスタであるものとする。
【0025】
図2のタイムチャートのAの期間では、スイッチング素子Q1、Q4がオン、スイッチング素子Q2、Q3がオフ状態により、電流は、入力電源ラインのプラス側、チョークコイルL1、ダイオードD1、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q4、ダイオードD4を通って入力電源ラインのマイナス側に流れる。
【0026】
これによりチョークコイルL1は入力電源電圧と同等の電圧が印加されエネルギーを蓄積する。またスイッチング素子Q1がオン状態であることから、コンデンサC1に蓄積されていた電荷はスイッチング素子Q1、チョークコイルL2、トランスT1の1次巻き線に流れ、コンデンサC1に蓄積されていたエネルギーがトランスT1を介して2次側に伝達し、ダイオードD5を通して負荷に供給される。
【0027】
またスイッチング素子Q4がオンしていることからコンデンサC4に蓄積された電荷はトランスT2の1次巻き線、チョークコイルL3、スイッチング素子Q4に流れることにより、コンデンサC4に蓄積されたエネルギーがトランスT2を介して2次側に伝達し、ダイオードD8を通して負荷に供給される。
【0028】
次に、
図2に示すタイムチャートの期間Bにおける電源回路1の動作について説明する。期間Aから期間Bに切り替わると、スイッチング素子Q3の第3端子に印加される電圧は、
図2に示すようにLowレベルの電圧からHighレベルの電圧に切り替わる。
【0029】
また、期間Aから期間Bに切り替わると、スイッチング素子Q4の第3端子に印加される電圧は、
図2に示すようにHighレベルの電圧からLowレベルの電圧に切り替わる。そのため、スイッチング素子Q1およびQ3は、オン状態になる。また、スイッチング素子Q2およびQ4は、オフ状態になる。その結果、チョークコイルL1に印加されている電圧は途切れる。
【0030】
そして、チョークコイルL1に蓄積されているエネルギーにより、ダイオードD1、コンデンサC1、コンデンサC2、ダイオードD2を通って電流が流れる。この電流により、コンデンサC1およびC2は、充電される。また、この場合、ダイオードD3、コンデンサC3、コンデンサC4、ダイオードD4にも電流が流れる。この電流により、コンデンサC3およびC4は、充電される。
【0031】
コンデンサC1に蓄積された電荷は、
図2に示すタイムチャートの期間Aと同様に、スイッチング素子Q1、チョークコイルL2、トランスT1の1次巻線に流れる。そして、トランスT1の2次巻線には、トランスT1の1次巻線数と2次巻線数との比に応じた電流が流れる。トランスT1の2次巻線に流れる電流は、ダイオードD6を通って負荷LDに供給される。
【0032】
また、スイッチング素子Q3はオン状態であるため、コンデンサC3に蓄えられていた電荷は、スイッチング素子Q3、チョークコイルL2、トランスT2の1次巻線を通って流れる。そして、トランスT2の2次巻線には、トランスT2の1次巻線数と2次巻線数との比に応じた電流が流れる。トランスT2の2次巻線に流れる電流は、ダイオードD7を通って負荷LDに供給される。
【0033】
次に、
図2に示すタイムチャートの期間Cにおける電源回路1の動作について説明する。期間Bから期間Cに切り替わると、スイッチング素子Q1の第3端子に印加される電圧は、
図2に示すようにHighレベルの電圧からLowレベルの電圧に切り替わる。また、期間Bから期間Cに切り替わると、スイッチング素子Q2の第3端子に印加される電圧は、
図2に示すようにLowレベルの電圧からHighレベルの電圧に切り替わる。
【0034】
そのため、スイッチング素子Q1およびQ4は、オフ状態になる。また、スイッチング素子Q2およびQ3は、オン状態になる。その結果、コンデンサC3に蓄積されている電荷は、スイッチング素子Q3、チョークコイルL3、トランスT2の1次巻線を通って流れる。そして、トランスT2の2次巻線には、トランスT2の1次巻線数と2次巻線数との比に応じた電流が流れる。トランスT2の2次巻線に流れる電流は、ダイオードD7を通って負荷LDに供給される。
【0035】
また、スイッチング素子Q1はオン状態からオフ状態に切り替わり、スイッチング素子Q2は、オフ状態からオン状態に切り替わる。そのため、チョークコイルL1は、ダイオードD3、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q2、ダイオードD2を介して直流電圧源EiからダイオードD2およびD3の順方向電圧を減じた電圧が印加され、エネルギーを蓄積する。
【0036】
また、スイッチング素子Q2はオン状態であるため、コンデンサC2に蓄積されている電荷は、トランスT1の1次巻線、チョークコイルL2、スイッチング素子Q2を流れる。そして、トランスT1の2次巻線には、トランスT1の1次巻線数と2次巻線数との比に応じた電流が流れる。トランスT1の2次巻線に流れる電流は、ダイオードD6を通って負荷LDに供給される。
【0037】
次に、
図2に示すタイムチャートの期間Dにおける電源回路1の動作について説明する。期間Cから期間Dに切り替わると、スイッチング素子Q3の第3端子に印加される電圧は、
図2に示すようにHighレベルの電圧からLowレベルの電圧に切り替わる。また、期間Cから期間Dに切り替わると、スイッチング素子Q4の第3端子に印加される電圧は、
図2に示すようにLowレベルの電圧からHighレベルの電圧に切り替わる。そのため、スイッチング素子Q1およびQ3は、オフ状態になる。
【0038】
また、スイッチング素子Q2およびQ4は、オン状態になる。スイッチング素子Q1およびQ2はオン状態であり、タイムチャートの期間Cと同様であるため、コンデンサC2に蓄積された電荷は、トランスT1の1次巻線を流れる。そして、トランスT1の2次巻線には、トランスT1の1次巻線数と2次巻線数との比に応じた電流が流れる。トランスT1の2次巻線に流れる電流は、ダイオードD6を通って負荷LDに供給される。
【0039】
また、スイッチング素子Q3はオン状態からオフ状態に切り替わり、スイッチング素子Q4はオフ状態からオン状態に切り替わる。そのため、チョークコイルL1に印加されている電圧は途切れる。そして、チョークコイルL1に蓄積されているエネルギーにより、ダイオードD1、コンデンサC1、コンデンサC2、ダイオードD2を通って電流が流れる。この電流により、コンデンサC1およびC2は、充電される。
【0040】
また、この場合、ダイオードD3、コンデンサC3、コンデンサC4、ダイオードD4にも電流が流れる。この電流により、コンデンサC3およびC4は、充電される。スイッチング素子Q4はオフ状態からオン状態に切り替わるため、コンデンサC4に蓄えられている電荷は、トランスT2の1次巻線、チョークコイルL3、スイッチング素子Q4を通って流れる。そして、トランスT2の2次巻線には、トランスT2の1次巻線数と2次巻線数との比に応じた電流が流れる。トランスT2の2次巻線に流れる電流は、ダイオードD8を通って負荷LDに供給される。
【0041】
電源回路1は、上述した期間Aから期間Dまでの動作を繰り返して、動作を継続する。以上のことから、チョークコイルL1に蓄積されているエネルギーが放出される場合、チョークコイルL1から流れ出す電流に制限はなく、コンデンサC1、C2、C3、C4に電流が流れることができる。
【0042】
そのため、チョークコイルL1の両端に発生するサージ電圧は抑制される。その結果、サージ電圧を抑制するためのサージ電圧抑制回路が不要となる。また、スイッチング素子Q1、Q2、コンデンサC1、C2、チョークコイルL2、トランスT1からなる電流共振型ハーフブリッジ回路は、スイッチング素子Q1、Q2が交互にデューティ50%でオン、オフすることからスイッチング周波数を可変することにより出力電圧を安定化することかできる。
【0043】
スイッチング素子Q3、Q4、コンデンサC3、C4、チョークコイルL3、トランスT2からなる電流共振型ハーフブリッジ回路についても同様に、スイッチング素子Q3、Q4が交互にデューティ50%でオン、オフすることからスイッチング周波数を可変することにより出力電圧を安定化することかできる。また、トランスT1、T2の1次側及び2次側に流れる電流波形は、コンデンサC1、C2とチョークコイルL2の共振現象及びコンデンサC3、C4とチョークコイルL3の共振現象により正弦波状になることからスイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4に流れる電流波形も正弦波を含む電流波形となりスイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4のスイッチング時に発生するスイッチング損失が低減される。
【0044】
以上の通り、スイッチング素子Q1、Q2とスイッチング素子Q3、Q4を位相制御することにより、入力電流を正弦波に制御することが可能となり、かつスイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4のスイッチング周波数を可変することにより、出力電圧Voを安定化することができる。またスイッチング素子の損失も低減することができる。
【0045】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
【0046】
トランスを有する絶縁型昇圧回路では、チョークコイルと直列にトランスの1次巻き線が接続されるため、チョークコイルの状態がエネルギー蓄積から放出に遷移した時トランスの1次巻き線の漏れインダクタンスによりチョークコイルから流れ出る電流が制限され、チョークコイルにサージ電圧が発生する。関連する技術では、スイッチング素子にサージ電圧が印加されることからスイッチング素子を保護するためのスイッチスナバー等のサージ抑制回路が必要になる。加えて、関連する絶縁型昇圧回路では、スイッチング素子がオン時に流れる電流波形は矩形波状になることから、スイッチング時に発生するスイッチング損失が大きくなるという問題があった。
【0047】
一方、本実施形態の構成によれば、チョークコイルL1と直列にコンデンサC1、C2、C3、C4が接続されることにより、チョークコイルL1のエネルギー放出時の電流は制限なくコンデンサC1、C2、C3、C4に流れることができ、チョークコイルL1に発生するサージ電圧を抑制することが可能となる。また、スイッチング素子Q1、Q2及びコンデンサC1、C2、チョークコイルL2、トランスT1からなる電流共振型ハーフブリッジ回路とスイッチング素子Q3、Q4及びコンデンサC3、C4、チョークコイルL3、トランスT2からなる電流共振型ハーフブリッジ回路により、スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4に流れる電流は、共振現象による正弦波状の波形となるため、電流波形の立ち上がりが遅くなる。その結果スイッチング損失が低減される。
【0048】
〔第2実施形態〕
図3から
図4を参照して、第2実施形態を説明する。
【0049】
(電源回路2の構成)
図3は、第2実施形態に係る電源回路2の構成の一例を示す図である。
図3に示すように、電源回路2は、第1実施形態1に係る電源回路1(
図1)に対して、整流回路BD1を追加されている。
【0050】
入力交流電源VIの一方に整流回路BD1の一方の入力端子を接続し、入力交流電源VIの他方を整流回路BD1の他方の入力端子に接続する。整流回路のカソード側にチョークコイルL1の一方を接続し、チョークコイルL1の他方をダイオードD1及びダイオードD3のアノード側に接続する。ダイオードD1のカソード側にスイッチング素子Q1の一方を接続しスイッチング素子Q1の他方とスイッチング素子Q2の一方を接続する。スイッチング素子Q2の他方とダイオードD2のアノード側を接続する。ダイオードD1のカソード側とコンデンサC1の一方を接続し、コンデンサC1の他方とコンデンサC2の一方を接続する。コンデンサC2の他方とダイオードD2のアノード側を接続する。
【0051】
スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2の接続点とチョークコイルL2の一方を接続し、チョークコイルL2の他方とトランスT1の1次巻き線の一方を接続し、トランスT1の1次巻き線の他方とコンデンサC1とコンデンサC2の接続点に接続する。ダイオードD3のカソード側にスイッチング素子Q3の一方を接続しスイッチング素子Q3の他方とスイッチング素子Q4の一方を接続する。スイッチング素子Q4の他方とダイオードD4のアノード側を接続する。ダイオードD3のカソード側とコンデンサC3の一方を接続し、コンデンサC3の他方とコンデンサC4の一方を接続する。コンデンサC4の他方とダイオードD4のアノード側を接続する。
【0052】
スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4の接続点とチョークコイルL3の一方を接続し、チョークコイルL3の他方とトランスT2の1次巻き線の一方を接続し、トランスT2の1次巻き線の他方とコンデンサC3とコンデンサC4の接続点を接続する。ダイオードD2のカソード側及びダイオードD4のカソード側と整流回路BD1のアノード側を接続する。またスイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2の接続点とスイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4の接続点を接続する。トランスT1の二次巻き線は、センタータップ巻き線としセンタータップ巻き線の一方をダイオードD5のアノード側に接続し、センタータップ巻き線の他方をダイオードD6のアノード側に接続する。ダイオードD5のカソード側とダイオードD6のカソード側及びコンデンサC5の一方を接続し出力電圧Voのプラス側とし負荷に接続する。
【0053】
また、トランスT1の2次巻き線のセンタータップ部とコンデンサC5の他方を接続する。トランスT2の二次巻き線は、センタータップ巻き線としセンタータップ巻き線の一方をダイオードD7のアノード側に接続し、センタータップ巻き線の他方をダイオードD8のアノード側に接続する。ダイオードD7のカソード側とダイオードD8のカソード側及びコンデンサC6の一方を接続する。トランスT2の2次巻き線のセンタータップ部とコンデンサC6の他方を接続する。トランスT2のセンタータップ部とコンデンサC6の他方を出力電圧Voのマイナス側とし負荷に接続する。また、コンデンサC5の他方とコンデンサC6の一方を接続する。
【0054】
また、スイッチング素子Q1、Q2、Q3及びQ4のそれぞれのスイッチング素子と並列に接続されているダイオード、コンデンサはスイッチング素子の寄生ダイオード及び寄生容量を表す。周波数制御部200は、出力電圧Voのプラス側の電圧を入力し、力率改善回路制御部100に基準周波数信号fswを出力する。力率改善回路制御部100は、周波数制御部の出力である基準周波数信号fswを入力し、またチョークコイルL1に流れる電流を電流検出部で検出した信号を入力する。また整流回路BD1のカソード電圧である入力電圧全波整流電圧を入力する。また、コンデンサC1、コンデンサC2間の電圧Vc1+Vc2及びコンデンサC3、コンデンサC4間の電圧Vc1+Vc2を入力し、スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4のそれぞれのオン、オフ信号を出力する。
【0055】
(電源回路2の動作)
次に、第2実施形態に係る電源回路2の動作について説明する。
【0056】
周波数制御部200は、出力電圧Voを検知し、出力電圧が規定値になるようにスイッチング周波数を調整し、基準周波数信号fswを力率改善回路制御部100に出力する。
【0057】
力率改善回路制御部100は、周波数制御部200から出力される基準周波数信号fswを入力し、この基準周波数をスイッチング周波数とし、整流回路BD1のカソード側から入力電圧を検知し、電流検出部からチョークコイルL1に流れる電流を検知する。また、コンデンサC1とコンデンサC2の両端の電圧(Vc1+Vc2)とコンデンサC3とコンデンサC4の両端の電圧(Vc3+Vc4)を検知し、チョークコイルL1に流れる電流波形が整流回路BD1のカソード側の電圧波形と同等になるようまた、Vc1+Vc2、Vc3+Vc4の電圧が規定値になるようスイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4のオン、オフ時間を制御する。
【0058】
図4は、本実施形態におけるスイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4の動作の一例を示す。
【0059】
スイッチング素子Q1及びQ2はオンデュ-ティが50%の周波数で交互にスイッチングし、スイッチング素子Q1がオンの時はスイッチング素子Q2がオフ、スイッチング素子Q1がオフの時はスイッチング素子Q2がオンとなるよう動作する。またスイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2は同時にオンとならないようデットタイムを設けて動作する。
【0060】
スイッチング素子Q3及びQ4についても同様にオンデュ-ティが50%の周波数で交互にスイッチングし、スイッチング素子Q3がオンの時、スイッチング素子Q4がオフ、スイッチング素子Q3がオフの時はスイッチング素子Q4がオンとなるよう動作する。スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q4は同時にオンとならないようデットタイムを設けて動作する。
【0061】
出力電圧Vo及び入力電流Iinの制御は、スイッチング素子Q1、Q2からなるスイッチ動作とスイッチング素子Q3、Q4からなるスイッチ動作の位相差をPWM制御することにより行う。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q4がオンとなっているまたはスイッチング素子Q3とQ2がオンとなっている時間がチョークコイルL1にエネルギーを蓄える時間となり、それ以外の時間はチョークコイルL1に蓄積されたエネルギーを放出する時間となる。
【0062】
チョークコイルL1にエネルギーを蓄積する時比率を制御することにより出力電圧値及び入力電流値を規定値に制御することができる。入力交流電源は、整流回路BD1により全波整流されるためチョークコイルL1の入力側に印加される電圧は、正弦波のマイナス側をプラス側に折り返した全波整流波形となる。
【0063】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
【0064】
トランスを有する絶縁型昇圧回路では、チョークコイルと直列にトランスの1次巻き線が接続されるため、チョークコイルの状態がエネルギー蓄積から放出に遷移した時トランスの1次巻き線の漏れインダクタンスによりチョークコイルから流れ出る電流が制限され、チョークコイルにサージ電圧が発生する。関連する技術では、スイッチング素子にサージ電圧が印加されることからスイッチング素子を保護するためのスイッチスナバー等のサージ抑制回路が必要になる。加えて、関連する絶縁型昇圧回路では、スイッチング素子がオン時に流れる電流波形は矩形波状になることから、スイッチング時に発生するスイッチング損失が大きくなるという問題があった。
【0065】
一方、本実施形態の構成によれば、チョークコイルL1と直列にコンデンサC1、C2、C3、C4が接続されることにより、チョークコイルL1のエネルギー放出時の電流は制限なくコンデンサC1、C2、C3、C4に流れることができ、チョークコイルL1に発生するサージ電圧を抑制することが可能となる。また、スイッチング素子Q1、Q2及びコンデンサC1、C2、チョークコイルL2、トランスT1からなる電流共振型ハーフブリッジ回路とスイッチング素子Q3、Q4及びコンデンサC3、C4、チョークコイルL3、トランスT2からなる電流共振型ハーフブリッジ回路により、スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4に流れる電流は、共振現象による正弦波状の波形となるため、電流波形の立ち上がりが遅くなる。その結果スイッチング損失が低減される。
【0066】
さらに、力率改善回路制御部100では、整流回路BD1のカソード電圧、チョークコイルL1の電流、コンデンサC1、C2の両端の電圧(Vc1+Vc2)及びコンデンサC3、C4の両端の電圧(Vc3+Vc4)をモニタし、チョークコイルL1に流れる電流波形が、入力電圧波形と同等になるよう、スイッチング素子Q1、Q2とスイッチング素子Q3、Q4の位相を制御することができる。
【0067】
〔第3実施形態〕
図5を参照して、第3実施形態を説明する。
【0068】
(電源回路3の構成)
図5は、第3実施形態に係る電源回路3の構成の一例を示す図である。
【0069】
図5に示すように、電源回路3は、第2実施形態に係る電源回路2に対して、コンデンサC1、コンデンサC2間と並列に容量の大きなコンデンサC9を追加するとともに、コンデンサC3、コンデンサC4間と並列に容量の大きなコンデンサC10を追加した回路である。
【0070】
本実施形態の構成によれば、コンデンサC1とコンデンサC2の端子間の電圧Vc1+Vc2、およびコンデンサC3、コンデンサC4の端子間の電圧Vc3+Vc4は、容量の大きなコンデンサC9及びC10によりリップル電圧が小さくなり、出力電圧Voの安定度を向上させることができる。
【0071】
〔第4実施形態〕
図6を参照して、第4実施形態を説明する。
【0072】
(電源回路4の構成)
図6は、第4実施形態に係る電源回路4の構成を示す図である。
【0073】
図6に示すように、電源回路4は、第2実施形態に係る電源回路2に対して、チョークコイルL2と直列にコンデンサC7を追加するとともに、チョークコイルL3と直列にコンデンサC8を追加した回路である。
【0074】
関連する技術では、コンデンサC1とコンデンサC2の端子間の電圧(Vc1+Vc2)、および、コンデンサC3とコンデンサC4の端子間の電圧(Vc3+Vc4)のリップル電圧をどちらも小さくするために、コンデンサC1、C2及びコンデンサC3、C4の容量を大きくする。このとき、スイッチング素子Q1、Q2、コンデンサC1、C2、チョークコイルL2、およびトランスT1からなる電流共振型ハーフブリッジ回路の共振周波数と、スイッチング素子Q3、Q4、コンデンサC3、C4、チョークコイルL3、およびトランスT2からなる電流共振型ハーフブリッジ回路の共振周波数が大きくなってしまう。
【0075】
本実施形態の構成によれば、コンデンサC7、C8を追加することにより、共振周波数を調整し出力電圧を安定化することができる。
【0076】
〔第5実施形態〕
図7を参照して、第5実施形態を説明する。
【0077】
(電源回路5の構成)
図7は、第5実施形態に係る電源回路5の構成を示す図である。
【0078】
図7に示すように、電源回路5は、第4実施形態に係る電源回路4に対して、スイッチング素子Q2のドレインとスイッチング素子Q4のドレイン間にコンデンサC11を追加した回路である。
【0079】
本実施形態の構成によれば、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q4がオンとなる時間とスイッチング素子Q3及びスイッチング素子Q2がオンとなる時間にばらつきが生じた場合、コンデンサC8の両端に発生する電圧により、チョークコイルL1に流れるリップル電流のばらつきを抑える効果がある。
【0080】
〔第6実施形態〕
図8を参照して、第6実施形態を説明する。
【0081】
(電源回路6の構成)
図8は、第6実施形態に係る電源回路6の構成を示す図である。
【0082】
図8に示すように、電源回路6は、第4実施形態に係る電源回路4に対して、トランスT1及びトランスT2の2次側の整流回路の接続を直列接続から並列接続に変更した回路である。
【0083】
本実施形態の構成によれば、2次整流回路を並列接続したことにより、2次側の整流素子による損失を低減することが可能となる。
【0084】
〔第7実施形態〕
図9を参照して、第7実施形態を説明する。
【0085】
(電源回路7の構成)
図9は、第7実施形態に係る電源回路7の構成を示す図である。
【0086】
図9に示すように、電源回路7は、第4実施形態に係る電源回路4に対して、トランスT1及びトランスT2の2次側の巻き線を単一巻き線とし、2次側の整流回路をダイオードD5、D6、D7、D8及びダイオードD9、D10、D11、D12からなる全波整流回路に変更したものである。
【0087】
本実施形態の構成によれば、2次側整流ダイオードの耐圧を下げることができるため、高電圧出力に適する。
【0088】
〔第8実施形態〕
図10を参照して、第8実施形態を説明する。
【0089】
(電源回路8の構成)
図10は、第7実施形態に係る電源回路8の構成を示す図である。
【0090】
図10に示すように、電源回路8は、第4実施形態に係る電源回路4から、周波数制御部200を削除し、出力電圧を検知した信号を直接、力率改善回路制御部100に入力した回路である。
【0091】
スイッチング素子Q1、Q2、コンデンサC1、C2、C7、チョークコイルL2、およびトランスT1からなる電流共振型ハーフブリッジ回路と、スイッチング素子Q3、Q4、コンデンサC3、C4、C8、チョークコイルL3、およびトランスT2からなる電流共振型ハーフブリッジ回路において、コンデンサC1、C2、C3、C4の値は同じであり、またコンデンサC7、C8の値は同じ、かつ、チョークコイルL2、L3の値も同じである。
【0092】
コンデンサC1、C2、C3、C4の値を、コンデンサC7、C8の値よりも十分大きな値とし、コンデンサC7とチョークコイルL2から決まる共振周波数を、力率改善回路制御部100のスイッチング周波数に設定する。
【0093】
本実施形態の構成によれば、トランスT1、T2の1次巻き線に流れる電流は、正弦波状になり、スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4に流れる電流波形も正弦波を含む波形となり、スイッチング時に発生するスイッチング損失が低減される。力率改善回路制御部100は、入力電流制御の周波数帯域を確保するため、出力電圧制御の周波数帯域は10Hz程度と低くなり、負荷電流変動時の応答特性が悪くなるが、負荷変動の小さいバッテリ充電等の回路として使用可能である。
【0094】
〔第9実施形態〕
図11を参照して、第9実施形態を説明する。
【0095】
本実施形態9に係る電源回路9は、第1チョークコイルL1、第2チョークコイルL2、第3チョークコイルL3、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2、第3ダイオードD3、第4ダイオードD4、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2、第3コンデンサC3、第4コンデンサC4、第1トランスT1、および第2トランスT2を備え、第1チョークコイルL1の第1端子は、直流電圧源の正電圧側の端子に接続され、第1チョークコイルL1の第2端子は、第1ダイオードD1のアノードおよび第3ダイオードD3のアノードに接続され、第1ダイオードD1のカソードは、第1コンデンサC1の第1端子および第1スイッチング素子Q1の第1端子に接続され、第2ダイオードD2のアノードは、第2コンデンサC2の第1端子および第2スイッチング素子Q2の第1端子に接続され、第3ダイオードD3のカソードは、第3コンデンサC3の第1端子および第3スイッチング素子Q3の第1端子に接続され、第4ダイオードD4のアノードは、第4コンデンサC4の第1端子および第4スイッチング素子Q4の第1端子に接続され、第1コンデンサC1の第2端子は、第2コンデンサC2の第2端子および第1トランスT1の第1端子に接続され、第3コンデンサC3の第2端子は、第4コンデンサC4の第2端子および第2トランスT2の第1端子に接続され、第2チョークコイルL2の第1端子は、第1トランスT1の第2端子に接続され、第3チョークコイルL3の第1端子は、第2トランスT2の第2端子に接続され、第1スイッチング素子Q1の第2端子は、第2スイッチング素子Q2の第2端子、第3スイッチング素子Q3の第2端子、第4スイッチング素子Q4の第2端子、第2チョークコイルL2の第2端子、および第3チョークコイルL3の第2端子に接続され、第2ダイオードD2のカソードは、第4ダイオードD4のカソードおよび直流電圧源の負電圧側の端子に接続されている。
【0096】
本実施形態の構成によれば、第1チョークコイルL1と直列に第1~第4コンデンサC1~C4が接続されることにより、第1チョークコイルL1のエネルギー放出時の電流は制限なく第1~第4コンデンサC1~C4に流れることができ、第1チョークコイルL1に発生するサージ電圧を抑制することが可能となる。また、第1~第2スイッチング素子Q1~Q2及び第1~第2コンデンサC1~C2、第2チョークコイルL2、第1トランスT1からなる電流共振型ハーフブリッジ回路と第3~第4スイッチング素子Q3~Q4及び第3~第4コンデンサC3~C4、第3チョークコイルL3、第2トランスT2からなる電流共振型ハーフブリッジ回路により、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4に流れる電流は、共振現象による正弦波状の波形となるため、電流波形の立ち上がりが遅くなる。その結果スイッチング損失が低減される。
【0097】
なお、本発明の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0098】
(コンピュータ905)
本発明のいくつかの実施形態について上で説明したが、上述の電源回路1~9、あるいはその他の制御装置は、その内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータの具体例を以下に示す。
【0099】
図12は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータ905の構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ905は、CPU906、メインメモリ907、ストレージ908、インターフェース909を備える。
【0100】
例えば、上述の電源回路1~9のいずれか、あるいはその他の制御装置のそれぞれは、コンピュータ905に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ908に記憶されている。CPU906は、プログラムをストレージ908から読み出してメインメモリ907に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU906は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ907に確保する。
【0101】
ストレージ908の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ908は、コンピュータ905のバスに直接、接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース909または通信回線を介してコンピュータ905に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ905に配信される場合、配信を受けたコンピュータ905が当該プログラムをメインメモリ907に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ908は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0102】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、発明の範囲を限定しない。これらの実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、省略、置き換え、変更を行ってよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、例えば、電源装置、またはバッテリ充電器に利用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1~9 電源回路
100 力率改善回路制御部
200 周波数制御部
CT 制御部
BD1 整流回路
DT 電流検出部
Ei 直流電圧源
LD 負荷
C1~C11 コンデンサ
D1~D12 ダイオード
L1~L3 チョークコイル
Q1~Q4 スイッチング素子
T1、T2 トランス
905 コンピュータ
906 CPU
907 メインメモリ
908 ストレージ
909 インターフェース
【要約】 (修正有)
【課題】スイッチング損失を低減する電源回路、電源回路の制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】電源回路1において、L1の第1端子はE1の端子に接続され、L1の第2端子はD1及びD3の各アノードに接続され、D1のカソードはC1の第1端子及びQ1の第1端子に接続され、D2のアノードはC2の第1端子及びQ2の第1端子に接続され、D3のカソードはC3の第1端子及びQ3の第1端子に接続され、D4のアノードはC4の第1端子及びQ4の第1端子に接続され、C1の第2端子はC2の第2端子及びT1の第1端子に接続され、C3の第2端子はC4の第2端子及びT2の第1端子に接続され、L2の第1端子はT1の第2端子に接続され、L3の第1端子はT2の第2端子に接続され、Q1の第2端子はQ2、Q3及びQ4の各第2端子、L2及びL3の各第2端子に接続され、D2のカソードはD4のカソード及びE1の負端子に接続される。
【選択図】
図1