(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】火災検知システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/10 20060101AFI20240501BHJP
G08B 17/107 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G08B17/10 H
G08B17/107 A
(21)【出願番号】P 2023048276
(22)【出願日】2023-03-24
(62)【分割の表示】P 2019019024の分割
【原出願日】2019-02-05
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2018025406
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100171446
【氏名又は名称】高田 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】長島 哲也
(72)【発明者】
【氏名】樋口 豊
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-143779(JP,A)
【文献】特開2000-011272(JP,A)
【文献】特公昭51-039774(JP,B2)
【文献】実開昭50-078094(JP,U)
【文献】特開平09-135919(JP,A)
【文献】特開昭62-207473(JP,A)
【文献】特開平11-339159(JP,A)
【文献】中国実用新案第207506876(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C2/00-99/00
B65G1/00-1/133
1/14-1/20
E04H5/00-5/12
7/00-7/32
12/00-14/00
G08B17/00-17/12
23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の空間に設けられた棚の収容区画を形成する中空のフレームであって、吸引された空気が流通する吸引管と、
前記吸引管に設けられた開口部と、
前記吸引された空気に含まれる煙の有無を検知する煙感知本体と、
を備える火災検知システム。
【請求項2】
前記煙感知本体は、
前記吸引管を介して前記開口部の周囲の空気を吸引する吸引部と、
前記吸引部により吸引された空気に光を照射する発光素子と、
前記発光素子により照射された光が前記吸引部により吸引された空気に含まれる粒子により散乱された散乱光を受光する受光素子と、
前記受光素子により受光された散乱光の光量を所定の時間積分する積分部と、
前記積分部による積分値に基づいて、吸引された気体に含まれる粒子の粒子濃度を判定する判定部と、
を備える請求項1に記載の火災検知システム。
【請求項3】
前記煙感知本体は、
前記発光素子により照射された光を、前記吸引部により吸引された空気の特定の領域に集光するレンズ、
を更に備える請求項2に記載の火災検知システム。
【請求項4】
前記吸引管は複数設けられ、
前記吸引管に、前記開口部を挟んで設けられた一組の切替弁と、
前記空間における監視区画を示す監視区画情報を取得する監視区画情報取得部と、
前記監視区画情報に基づいて、前記切替弁を制御する切替弁制御部と、
を更に備える請求項1から請求項3の何れか一項に記載の火災検知システム。
【請求項5】
間隔をあけて設置される二つの梁に支持される棚板であって、前記二つの梁の配列方向において一方の梁から他方の梁に向かうに従って、上方に向かうように下面が傾斜する棚板、を更に備える、
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の火災検知システム。
【請求項6】
前記吸引管は、前記二つの梁のうち、少なくとも前記他方の梁を中空とすることにより形成され、
前記開口部は、前記吸引管のうち、前記一方の梁に対向する部位に形成されている、
請求項5に記載の火災検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫等の空間内における火災の発生を検知する火災検知システムがある(特許文献1参照)。このような火災検知システムでは、天井付近の向かい合う壁面の一方に投光部を設け、他方の壁面に受光素子を設け、火災発生に伴う煙または熱を検知して垂下される可動片によって、受光素子に受光される光が減光されたことを検知した場合には、火災を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、監視対象の空間の床面から天井面までの高さがある程度高い場合、床面近傍において火災が発生した場合には、可動片を作動させるためには、火災により生じた熱が天井面まで到達して一定以上の温度まで到達する必要があり、可動片が作動するまでの時間が長引く。また、夏季等においては倉庫の屋根が熱せられることにより、天井付近の室温が上昇するため、火災による温度上昇であるか、単なる室温の上昇であるかの判断がつかないため、火災であるか否かを識別することが難しい。
一方、燻焼火災の場合には、煙が天井近傍に到達した場合には火災を検知可能である。しかし、上述したように夏季等においては倉庫の屋根が熱せられることにより、天井付近の室温が上昇するため、下層部分の空気よりも天井付近の室温が高温になることにより、高さ方向への空気循環が妨げられ、いわゆる境界層が形成される。この境界層内の空気温度が、燻焼火災等により発生する空気温度よりも高くなった場合、火災による煙は、境界層の下部で留まるため、天井まで上昇しないこととなり、天井に設けられた煙感知器による煙の検知が困難になってしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、床面から天井面までの高さが高い空間(以下、大空間という)において境界層を漂う煙を検知することができる火災検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態の火災検知システムは、監視対象の空間に設けられた棚の収容区画を形成する中空のフレームであって、吸引された空気が流通する吸引管と、前記吸引管に設けられた開口部と、前記吸引された空気に含まれる煙の有無を検知する煙感知本体と、を備える。
【0007】
また、本発明の一実施形態の火災検知システムでは、前記煙感知本体は、前記吸引管を介して前記開口部の周囲の空気を吸引する吸引部と、前記吸引部により吸引された空気に光を照射する発光素子と、前記発光素子により照射された光が前記吸引部により吸引された空気に含まれる粒子により散乱された散乱光を受光する受光素子と、前記受光素子により受光された散乱光の光量を所定の時間積分する積分部と、前記積分部による積分値に基づいて、吸引された気体に含まれる粒子の粒子濃度を判定する判定部と、を備える。
【0008】
また、本発明の一実施形態の火災検知システムでは、前記煙感知本体は、前記発光素子により照射された光を、前記吸引部により吸引された空気の特定の領域に集光するレンズ、を更に備える請求項10に記載の火災検知システム。
【0009】
また、本発明の一実施形態の火災検知システムでは、前記吸引管は複数設けられ、前記吸引管に、前記開口部を挟んで設けられた一組の切替弁と、前記空間における監視区画を示す監視区画情報を取得する監視区画情報取得部と、前記監視区画情報に基づいて、前記切替弁を制御する切替弁制御部と、を更に備える。
【0010】
また、本発明の一実施形態の火災検知システムでは、間隔をあけて設置される二つの梁に支持される棚板であって、前記二つの梁の配列方向において一方の梁から他方の梁に向かうに従って、上方に向かうように下面が傾斜する棚板、を更に備える。
【0011】
また、本発明の一実施形態の火災検知システムでは、前記吸引管は、前記二つの梁のうち、少なくとも前記他方の梁を中空とすることにより形成され、前記開口部は、前記吸引管のうち、前記一方の梁に対向する部位に形成されている。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、この発明によれば、大空間において境界層を漂う煙を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態の火災検知システム1が適用される大空間2の斜視図である。
【
図2】第1の実施形態の火災検知システム1が適用される大空間2の平面図及び側面図である。
【
図3】第2の実施形態の火災検知システム1Aが適用される集煙板付き煙感知器30の側面図、及び大空間2の平面図である。
【
図4】第2の実施形態の火災検知システム1Aが適用される大空間2の側面図である。
【
図5】第3の実施形態の火災検知システム1Bが適用される大空間2の側面図である。
【
図6】第3の実施形態の変形例1における火災検知システム1Cが適用される大空間2の側面図である。
【
図7】第3の実施形態の変形例2における火災検知システム1Dが適用される大空間2の平面図である。
【
図8】第4の実施形態における火災検知システム1Eが適用される大空間2の側面図である。
【
図9】第4の実施形態における火災検知システム1Eが適用される大空間2の平面図である。
【
図10】
図9に示す大空間2のA-A線断面図である。
【
図11】第4の実施形態における煙感知本体5の構成例を示すブロック図である。
【
図12】第4の実施形態における煙感知部52の構成例を示すブロック図である。
【
図13】第4の実施形態における散乱特性情報記憶部525に記憶される情報の構成例を示す図である。
【
図14】第4の実施形態における制御装置6の構成例を示すブロック図である。
【
図15】第4の実施形態における火災検知システム1Eの動作例を示すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態による火災検知システムについて図面を参照して説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態の火災検知システム1が適用される大空間2の斜視図である。 大空間2は、例えば、体育館、倉庫、劇場、展示会場等、従来の住居などにより想定された天井高さを有する空間(以下、従来の空間という)よりも天井が高い空間である。大空間2は、高い天井を有する空間であればよく、必ずしも平面方向に広い面積を有する空間である必要はない。例えば、大空間2は、上階と下階とが繋がったマンションのエントランスホールや、吹き抜けを有する戸建て住宅の玄関やリビングなどであってもよい。
【0016】
大空間2が従来の空間よりも高い天井を有している。このため、所定の天井高さ(例えば、20m)以上の天井高さを有する空間に設置が義務付けられている火災検知器(不図示)が、大空間2の天井面、又は天井面に近い位置に設置される。このような従来から設置が義務付けられた火災検知器により、大空間2の天井面、及び天井面に近い所定の位置における火炎や煙の検知が可能となる。以下の説明において、従来から設置が義務付けられた火災検知器により火炎や煙の検知が可能な領域を「天井部」と称する。天井部は、例えば、
図1の天井面から所定の距離Dまでの領域である。また、天井部は、例えば、天井面から天井高さの80%の高さ以上の位置までの領域である。
【0017】
大空間2においては、従来の空間における天井高さ以上に床面から天井までの距離が大きい。このため、大空間2の床面付近で火災による煙や熱が発生すると、煙や熱気流が上昇する流れが生じ、周囲の空気との境界がラッパ状の形状の外郭を持つプルームが発生する。発生したプルームの中の煙が上昇して天井部に到達するまでの時間は、天井高さのある大空間2においては、従来の空間の場合よりも長い時間を要する。火災は、時間の経過に伴い次第に拡大していき、火災の拡大に伴い、プルームも太さを増す性質を有している。つまり、大空間2では、床面付近で発生したプルームの中の煙が天井部に設けられた火災検知器により検知された時点において、火災が、比較的消火することが容易な初期段階を超えて大きく成長してしまう場合が考えられる。火災検知器によりプルームの中の煙が検知された時点で火災が大きく成長していた場合には、天井に設置されたスプリンクラー(不図示)等を動作させても消火できないことがあり得る。
また、大空間2では、床面から天井までの距離が大きいために、高さ方向に温度差が生じ易く、床面から天井までの間に温度の異なる層(境界層)が形成され、温度の異なる層の境界面では空気の循環が妨げられ得る。このような場合、大空間2の床面付近で発生したプルームが、境界面で上昇を妨げられてしまい、プルームが天井まで到達しないことが想定される。このような場合、従来の天井部に設けられた火災検知器では、火炎等の検知が困難となり得る。本実施形態の火災検知システム1では、大空間2の天井部より下部の領域、つまり、従来の設置が義務付けられている火災検知器では火炎や煙の検知が困難となり得る領域における煙の検知を可能とする。
【0018】
図1に示すように、実施形態の大空間2では、天井部よりも下部の高さ方向のいずれかの位置に煙感知器10が設けられる。以下、この実施形態において、煙感知器10が減光式の煙感知器である場合を例示して説明するが、これに限定されず、煙感知器10は所謂スポット型の煙感知器であってもよいし、吸引型の煙感知器であってもよい。なお、スポット型の煙感知器、吸引型の煙感知器については、他の実施例で詳しく説明する。
【0019】
なお、
図1では、ラック棚などの収容区画が設けられていない場合を例示しているが、大空間2に収容区画が設けられていてもよい。この場合、煙感知器10は、ラック棚とラック棚との間の通路や、ラック棚の上面より上側の空間等、収容区画ではない非収容区画を検知範囲とする。
【0020】
減光式の煙感知器10は煙を検知する。
図1に示すように、投光部11と受光部12とを備える。例えば、投光部11と受光部12とが所定の距離を隔てるように設置されることで、減光式の煙感知器10は煙を検知する。
図1の例では、大空間2において、投光部11は左側の壁面に、受光部12は右側の壁面にそれぞれ設置される。
投光部11は、受光部12に向けて監視光線を照射する。また、受光部は、投光部11により照射された監視光線を受光する。投光部11により照射された監視光線は、煙がない状態であればそのまま減光することなく受光部12に到達する。しかし、投光部11により照射された監視光線は、監視光線の光軸上に煙がある状態では、煙がない状態と比較して減光される。減光式の煙感知器10は、受光部12に到達した監視光線の光量を測定し、測定結果に基づいて煙の有無を判定する。減光式の煙感知器10は、例えば受光部12に到達した監視光線の光量が所定の閾値未満である場合、煙があると判定する。
【0021】
図2は、第1の実施形態の火災検知システム1が適用される大空間2の平面図及び側面図である。
図2(a)は大空間2の平面図、
図2(b)は大空間2の側面図を示す。
図2(a)に示すように、大空間2の左側の壁面に複数の投光部11(投光部11-1~11-7)、右側の壁面に複数の受光部12(受光部12-1~12-7)がそれぞれ設けられ、それぞれの対となる投光部11と受光部12とが減光式の煙感知器10(煙感知器10-1~10-N)を構成している。(但し、Nは1~7の整数である)。投光部11の各々は、例えば、z軸方向に同じ位置、y軸方向に互いに距離Eだけ離間した位置に設けられ、x軸方向に平行に監視光線を照射するように設置される。これにより、減光式の煙感知器10の各々は、軸方向に大空間2の長手方向の距離であってy軸方向に距離Eである平面を含む領域であって、お互いが重複しない領域における煙をそれぞれ検知する。つまり、実施形態の火災検知システム1では、平面上において互いに異なる領域が検知対象となるように設置される。これにより、平面方向に互いに異なる領域の煙を検知することが可能となる。
【0022】
ここで、減光式の煙感知器10が配置される間隔(
図2(a)における距離E)は、例えば、比較的容易に消火することが可能な初期状態におけるプルームの直径と同程度かそれ以下としてよい。実験によれば、比較的容易に消火することが可能な初期状態におけるプルームの直径は4m程度である。減光式の煙感知器10が4m以下の間隔で配置されることで、大空間2にプルームが発生した場合であっても、発生したプルームを初期状態のうちに検知することが可能となる。
【0023】
図2(b)に示すように、大空間2には、高さ方向において互いに異なる位置に複数の減光式の煙感知器10が設置される。
図2(b)では、大空間2の高さ方向(z軸方向)に、複数の減光式の煙感知器10(減光式の煙感知器10-7、10-8)が所定の距離Fの間隔をあけて設置された例を示している。これにより、減光式の煙感知器10の各々は、大空間2における高さ方向において異なる領域の煙を検知することができる。減光式の煙感知器10が配置される間隔(
図2(b)における距離F)は、大空間2に境界層が形成されることにより、床面付近で発生した火災による煙が天井部にまで上昇しない可能性を考慮して決定されるようにしてよい。例えば、減光式の煙感知器10は、高さ方向に互いに10m程度離間して大空間2に設置される。
境界層の高さ方向の距離(層の厚み)は、大空間2を形成する建築物の構造や用途、及び周囲の環境や季節により変動する。例えば、一般の住居用の建築物と比較して屋根部が薄い部材である工場や倉庫等においては、夏季における日光の照射により屋根部の温度が上昇することから境界層の厚みは大きくなる。一方、屋根等に断熱部材が用いられるホテル等においては、空間における高さ方向に温度差が生じ難いことから、境界層は薄くなる。
減光式の煙感知器10、例えば、大空間2に形成される温度の異なる層の境界面付近に設けられることが望ましい。季節により境界層の厚みが変動することを考慮すれば、境界層が最も薄い場合における温度の異なる層の境界面の位置、及び境界層が最も厚い場合における温度の異なる層の境界面の位置の各々の近傍にそれぞれ減光式の煙感知器10が設けられることが望ましい。つまり、距離Fは、大空間2に生じる境界層の厚みの変動により決定されてよい。
【0024】
なお、上記では、減光式の煙感知器10が平面方向において配置される間隔は、初期状態のプルームの直径程度に限定されることはない。また、減光式の煙感知器10が高さ方向において配置される間隔は、初期の段階でプルームが上昇する距離に限定されることはない。減光式の煙感知器10が配置される間隔は、大空間2の平面方向の面積や、形状、大空間2に設置される棚や什器等に応じて任意に決定されてよい。
【0025】
火災検知システム1では、例えば、監視光線の光軸方向が、大空間2の長手方向に沿うように減光式の煙感知器10が設けられる。これにより、同じ数の減光式の煙感知器10が短手方向に監視光線が照射されるように設置された場合に比べて、監視光線が照射される距離が長くなるように設置することができ、より広い範囲に対して煙の検知をすることができる。また、火災検知システム1では、監視光線が遮蔽物に遮られないように減光式の煙感知器10を設置する。例えば、大空間2が、棚などが設置された倉庫等である場合、棚板や荷物により監視光線が遮られてしまうことが考えられる。このような場合、通路や、荷物を収納する棚が設けられていない見通しのある領域が減光式の煙感知器10の検知範囲となるようにする。
【0026】
以上説明したように、第1の実施形態の火災検知システム1では、大空間2の天井部より下部の領域における高さ方向のいずれかの位置に減光式の煙感知器10が設けられる。 天井付近の室温の上昇により境界層が形成され、高さ方向への空気循環が妨げられることで煙が天井部まで上昇せずに中空を漂う場合には、従来の天井に設置した火災検知器では煙を検知することができない。この場合であっても、第1の実施形態の火災検知システム1では、大空間2の天井部より下部に減光式の煙感知器10が設けられるため、このような中空を漂う煙を検知することができる。これにより、従来の火災検知器では検知することが困難な境界層を漂う煙を検知することができる。
また、第1の実施形態の火災検知システム1では、床面付近で火災が発生した場合であっても、床面付近から天井まで煙が上昇する前に、天井部より下部に設けられた減光式の煙感知器10により煙を検知することができ、早期に火災を検知することが可能である。
【0027】
また、第1の実施形態の火災検知システム1では、減光式の煙感知器10は、高さ方向において互いに異なる位置に複数設けられるようにしてもよい。これにより、第1の実施形態の火災検知システム1では、天井付近の室温の上昇により形成された境界層の位置が、その日の気温の上昇具合に応じて異なる場合であっても、当該境界層を漂う煙を検知することができる。
また、第1の実施形態の火災検知システム1では、平面上において異なる領域が検知対象となるように設置されてもよい。これにより、火災の初期状態におけるプルームの直径程度の間隔で複数の減光式の煙感知器10を設置すれば、比較的容易に消火することが可能な初期の状態で煙を検知することができ、早期に火災を検知できる。
【0028】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について、
図3及び
図4を用いて説明する。
第2の実施形態の火災検知システム1Aにおいて、煙感知器10Aがスポット型の煙感知器である点において、上記の第1の実施形態と相違する。第2の実施形態の火災検知システム1Aでは、例えば、大空間2は、複数の棚3(
図3(b)参照)を備えるラック倉庫である。また、本実施形態において、上述した第1の実施形態と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
図3は、第2の実施形態の集煙板付き煙感知器30の側面図、及び火災検知システム1Aが適用される大空間2の平面図である。
図3(a)は集煙板付き煙感知器30の側面からみた概略断面図、
図3(b)は火災検知システム1Aが適用される大空間2の平面図を示す。
図4は、第2の実施形態の火災検知システム1Aが適用される大空間2の側面図を示す。
【0029】
図3(a)に示すように、第2の実施形態では、集煙板付き煙感知器30が設けられる。集煙板付き煙感知器30は、スポット型の煙感知器の一例であり、例えば、スポット型の煙感知器10Aと集煙板20とを備える。
煙感知器10Aは、例えば、煙感知器10Aの内部にそれぞれ離間して設けられた発光部と受光部とを備える。スポット型の煙感知器10Aでは、受光部は発光部が照射する監視光線の光軸方向とは異なる位置に設けられる。このため、受光部は煙のない通常の状態において発光部により照射された監視光線を受光しないが、煙感知器10Aの内部に煙が入った場合には煙により乱反射された監視光線を受光する。煙感知器10Aは、受光部に到達した監視光線の光量を測定することにより、煙の有無を判定する。煙感知器10Aは、例えば受光部に到達した監視光線の光量が所定の閾値以上である場合、煙があると判定する。
【0030】
集煙板20は、
図3(a)に示すように、集煙板20は、例えばドーム状の集煙板である。集煙板20は、自身の内側面が大空間2の床面側となるように設けられる。また、集煙板20の内側であって、平面から見た面の中心部には、煙感知器10Aが設けられる。 集煙板20の中央に煙感知器10Aが設けられることにより、床面側から上昇した煙が集煙板20に到達すると、煙は集煙板20の内周の周縁側から中央側に集められて煙感知器10Aの内部に到達する。これにより、集煙板20がない煙感知器が用いられた場合に比べて平面方向において広い範囲に煙を検知し易くなる。
【0031】
図3(b)に示すように、火災検知システム1Aでは、複数の棚3(棚3-1、3-2)が設置される。棚3の各々は、棚の正面がx軸方向に平行となるように、互いに所定の距離Gをあけて設置され、棚3-1と棚3-2との間には吹き抜けの空間Mが形成される。また、棚3の各々には、集煙板付き煙感知器30が、集煙板20の外周部を空間Mに張り出すようにして設けられている。
図3(b)の例では、棚3‐1に集煙板付き煙感知器30-1~30-3が、棚3‐2に集煙板付き煙感知器30-4~30-6がそれぞれ設けられる。
【0032】
集煙板付き煙感知器30は、例えば、棚3の棚板の下面側に設置され、棚板の下側、及び空間Mの棚板より下部における煙を検知する。例えば、ラック倉庫では、床上に生じた煙が荷物や棚板に遮られ、上昇を阻まれて棚板の下面を漂ったり、空間Mの境界層により上昇を阻まれた煙が中空の棚板の下部付近を漂ったりすることが考えられるが、集煙板付き煙感知器30が棚板の下面側に、集煙板20の外周部を空間Mに張り出すように設けられることで、集煙板付き煙感知器30の下側の煙を検知することができる。
また、ラック倉庫においては、棚板は、板状部材ではなく棒状の部材により形成することで棚板として機能させてもよい。この場合、荷物を載置する面に平行に、網状や線状又はトラス状の骨格構造が形成される。このような場合には、煙が棚板に遮られることはないが、棚板に荷物が載置された場合には、その荷物により煙が遮られることが考えられる。このような場合にも、棚板の下面側に集煙板付き煙感知器30を設けることで、荷物の下面を漂う煙を検知可能とする。
【0033】
図4に示すように、棚3-3には、高さ方向に複数の棚板が設けられてもよい。この場合、実施形態の火災検知システム1Aでは、棚板で高さ方向に区分けされた収容区画S(収容区画S-1~S-3)には、複数の集煙板付き煙感知器30が設けられる。
図4の例では、棚3-3の最も高い位置に設けられた収容区画S-1には集煙板付き煙感知器30-4~30-6が、2番目に高い位置に設けられた収容区画S-2には集煙板付き煙感知器30-7~30-9が、最も低い位置に設けられた収容区画S-3には集煙板付き煙感知器30-10~30-12がそれぞれ設けられる。収容区画Sごとに、一つ又は複数の集煙板付き煙感知器30が設置されることにより、それぞれの収容区画Sの全体における煙を検知することができる。
【0034】
なお、
図4では、収容区画Sの各々について、二つの柱Hの間(例えば、柱H-1とH-2の間、柱H-2とH-3の間)のそれぞれに一つの集煙板付き煙感知器30が設置された例を示したが、棚3-3に設けられた複数の柱H(柱H-1~H-4)は、棚板を支持する柱であり、収容区画Sを収容区画Sの側面に平行な面で仕切るものではない。
【0035】
また、上述した実施形態では大空間2がラック倉庫に棚3が設置されて形成される場合を例示して説明したが、これに限定されることはなく、大空間2は、ホテルやショッピングビルに形成される吹き抜け等のように、周囲を複数のフロアにより囲まれて形成される空間であってもよい。このようなホテル等の建築物においても集煙板20の外周部が各フロアから吹き抜け部に張り出すようにして設けられることで、大空間2の中空に漂う煙を検知することができ、火災の早期発見を実現することができる。
【0036】
以上説明したように、第2の実施形態の火災検知システム1Aでは、煙感知器10Aは、スポット型の煙感知器であり、スポット型の煙感知器10Aは、内側面が床面側となるように設けられたドーム状の集煙板20の内側面に収容されるようにして設けられる。これにより、第2の実施形態の火災検知システム1Aでは、集煙板20に到達した煙を集めて煙感知器10Aに感知させることができ、集煙板20がない煙感知器が用いられた場合に比べて平面方向において広い範囲の煙を検知することが可能となる。
【0037】
なお、上述した第2の実施形態では、集煙板20がドーム型形状である場合を例示して説明したが、これに限定されることはない。集煙板20は、少なくとも棚3に載置される荷物の出し入れの妨げとならない形状であればよく、例えば、円錐型の形状であってもよいし、角錐型の形状であってもよし、その他の形状であってもよい。
【0038】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の火災検知システム1Bでは、煙感知器10Bが吸引式の煙感知器である点において、上述の実施形態と相違する。また、本実施形態において、上述した第1の実施形態と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
図5は、第3の実施形態の火災検知システム1Bが適用される大空間2の側面図である。
図5に示すように、第3の実施形態の火災検知システム1Bでは、煙感知器10Bは、例えば、大空間2の床面近傍に配置される。煙感知器10Bは、主管13と、切替弁14と、複数の吸引管15(吸引管15-1~15-6)を備える。
切替弁14は、例えば、大空間2の天井部近傍に設けられる。切替弁14の一方側の接続部には、煙感知器10Bが主管13を介して接続される。切替弁14の他方側の接続部には、複数の吸引管15が接続される。
吸引管15の各々は、大空間2における煙を吸引する領域の各々の平面上の位置付近まで、天井部に沿うようにして水平方向(x軸方向)に延びるように配置されており、さらに吸引管は、高さ方向(z軸方向)において床面側に延びるように配設される。吸引管15の先端は、煙を吸引する領域の高さに配置され開口する開口部が形成される。このように吸引管15は、それぞれ監視対象である空間の高さ方向または水平方向において互いに異なる領域に対して開口部が設けられるように、複数配置される。
【0039】
また、
図5に示すように、大空間2に棚3が設けられ、高さ方向に複数の収容区画S(収容区画S-1~S-3)が設けられる場合、高さ方向の任意の位置、あるいは棚3の各段の棚板の下面側に吸引管15の開口部が設けられるようにしてもよい。これにより、高さ方向のいずれかの収容区画Sの領域を対象として、当該領域における煙を対応する吸引管15の開口部により吸引することが可能となる。また、棚板に板状の部材が用いられずに、棚板が棒状の部材を並行に配置して形成される場合もある。そのような場合には、棚3の収容区画Sの上面側に開口部が設けられるように吸引管15をそれぞれ配置するようにしてもよい。
【0040】
また、高さ方向に異なる収容区画S毎に、複数の吸引管15の開口部が設けられるようにしてもよい。
図5では、収容区画S-1に吸引管15-1、15-4の各々の開口部、収容区画S-2に吸引管15-2、15-5の各々の開口部、収容区画S-3に吸引管15-3、15-6の各々の開口部がそれぞれ設けられた例を示す。収容区画Sに、吸引管15の開口部が設けられることにより、収容区画Sの各々における煙の検知をすることが可能となる。
【0041】
なお、
図5では、
図4と同様に、収容区画Sの各々に複数の柱H(柱H-1~H-6)が設けられているが、柱Hの各々は板状の部材ではなく、収容区画Sを収容区画Sの側面に平行な面で複数の区画に仕切るものではない。
【0042】
吸引式の煙感知器10Bは、内部に吸気ファンを有しており、この吸気ファンにより吸気することで、各吸引管15の開口部付近からそれぞれ吸引された空気を煙感知器10Bに対して導入する。これにより、煙感知器10Bは、大空間2における各領域を対象として煙の検知をする。
【0043】
また、煙感知器10Bは、切替弁14を制御することにより、所定の時間毎、あるいは特定のタイミングで吸引する対象の吸引管15を切り替え、各吸引管15から吸引された空気を順に煙感知器10Bの内部に導入する。これにより、大空間2における選択された吸引管15の開口部付近における領域を検知対象として、選択的に煙を検知することができる。
また、煙感知器10Bは、いずれの吸引管15が選択されたかを切り替え指示に基づいて識別することで、大空間2における何処の領域において煙が検知されたか、あるいは検知されなかったかを認識することができる。
【0044】
煙感知器10Bは、切替弁14に対し、例えば所定時間毎(例えば5秒毎など)に吸引管15の切り替えを指示するようにしてもよい。例えば、吸引管15の開口部から煙感知器10Bまでの吸引管15及び主管13の合計の距離が100m程度である場合、開口部近傍の空気が煙感知器10Bに到達するまでの時間は、数十秒程度(20秒から30秒程度)である。このように、煙感知器10Bは、吸引管15及び主管13の距離に基づいて、切替弁14を切り替えることにより、開口部近傍の空気を煙感知器10Bの内部に確実に導入することができ、より正確に煙の検知をすることが可能となる。
【0045】
また、煙感知器10Bは、ある吸引管15からの煙が所定の煙濃度以上の値を示した場合、切替弁14を制御し、当該所定の煙濃度以上の値が示された煙を吸引した吸引管15、及びその周辺の吸引管15からの煙に限定して煙感知を行うようにしてもよい。火災が疑われる領域に限定して煙感知を行うことで、火災感知の精度を高め、警報の時間を早めることができる。
【0046】
また、大空間2(監視領域)を複数の区間に分割し、分割した区間の各々に煙感知器10Bを割り当て、複数の煙感知器10Bにより、監視するようにしてもよい。一台の煙感知器10Bで切り替える吸引管15の数が増加すると、全ての吸引管15を順次切り替えて煙の有無を判定するのに時間がかかり、一本の吸引管15について確認する時間の間隔が伸びてしまい、早期に火災が検知できなくなる場合が考えられるが、このように大空間2を複数の領域に分けて、複数台の煙感知器10Bにより建物全体を監視することで、吸引管15の各々を短い周期で確認することができ、早期に火災を検知することが可能となる。
なお、監視領域は、高さ方向(縦方向)に分けてもよいし、平面方向(横方向)に分けてもよいし、高さ方向及び水平方向に分けてもよい。
【0047】
以上説明したように、第3の実施形態の火災検知システム1Bでは、吸引式の煙感知器10Bは、互いに異なる領域の空気を吸引する開口部を有する複数の吸引管15を備え、複数の吸引管15により吸引された空気を切替えることにより、異なる領域の各々における煙を検知する。これにより、第3の実施形態の火災検知システム1Bでは、大空間2における異なる領域の各々に発生した煙を検知することができる。
【0048】
(第3の実施形態の変形例1)
第3の実施形態の変形例1では、一本の吸引管15に複数の開口部が設けられる点において上述した第3の実施形態と相違する。
図6は、第3の実施形態の変形例1における火災検知システム1Cが適用される大空間2の側面図である。
【0049】
図6に示すように、本変形例では互いに高さ方向に異なる領域の各々に、平面方向に沿って、それぞれ一本の吸引管15が設けられる。つまり、収容区画S-1には吸引管15-1、収容区画S-2には吸引管15-2、及び収容区画S-3には吸引管15-3が、それぞれx軸方向に沿って設けられる。各々の吸引管15には複数の開口部150~154が設けられ、各々の開口部の周辺における空気を吸引することができる。例えば、吸引管15-1において、開口部150が収容区画S-1における柱H-1とH-2との間の付近、開口部151が収容区画S-1における柱H-2とH-3との間の付近、開口部152が収容区画S-1における柱H-3とH-4との間の付近、開口部153が収容区画S-1における柱H-4とH-5との間の付近、及び開口部154が収容区画S-1における柱H-5とH-6との間の付近の各々における空気を吸引することができる。これにより収容区画Sに一本の吸引管15を設ければ、収容区画Sの全体を監視することができ、収容区画Sに複数の吸引管15を設ける場合と比較して、システムを簡略化することが可能となる。
【0050】
なお、上記では各々の吸引管15が平面方向(横方向)のx軸方向に沿って設けられる場合を例示して説明したが、吸引管15はy軸方向に沿って設けられてもよい。この場合、各々の吸引管15が高さ方向に異なる収容区画S-1~S-3の各々の領域を監視することができる。
【0051】
また、吸引管15が高さ方向(縦方向)であるz軸方向に沿って設けられてもよい。例えば、柱H-1とH-2との間の領域において吸引管15が高さ方向に沿って設けられた場合、吸引管15は、柱H-1とH-2との間の領域における収容区画S-1から収容区画S-3までの空間を監視することができる。
また、本変形例で説明したような複数の開口部を有する吸引管15が、平面方向(又は高さ方向)に複数設けられてもよい。
以上説明したように、実施形態3の変形例1においては、吸引管15に複数の開口部を設けることにより、複数の開口部を設けない場合と比較して、より少ない数の吸引管15で、より広い領域を監視することが可能となる。
【0052】
(第3の実施形態の変形例2)
第3の実施形態の変形例2では、複数台の吸引式の煙感知器10Bにおいて互いの監視領域が交差するように吸引管15が設けられる点において上述した第3の実施形態と相違する。
図7は、第3の実施形態の変形例2における火災検知システム1Dが適用される大空間2の平面図である。
【0053】
図7に示すように、本変形例の火災検知システム1Dでは、複数の煙感知器10B(煙感知器10B-1、10B-4、及び10B-5)が、互いの吸引管15がx軸に沿って、間隔をあけて設けられる。また、複数の煙感知器10B(煙感知器10B-6~10B-9)が、互いの吸引管15がy軸に沿って間隔をあけて設けられる。つまり、本変形例の火災検知システム1Dでは、複数の煙感知器10Bが、互いの監視領域が交差するように設けられる。
【0054】
本変形例では、煙感知器10Bの各々を管理する管理装置100を備える。
管理装置100は、煙感知器10Bの各々からの検知結果を取得する。管理装置100は、取得した検知結果に基づいて、煙が検知された場所を特定する。管理装置100は、例えば、煙感知器10B-4と煙感知器10B-7との両方から、共に煙が検知された場合、煙感知器10B-4と煙感知器10B-7との監視領域が交差する場所、つまり領域Kで煙が検知されたと判定する。
実施形態3の変形例2においては、管理装置100により煙が検知された場所を特定することができるため、発生した火災に対して早期により確実な消火活動を行うことが可能となる。
【0055】
なお、上述した変形例では、煙感知器10Bの監視領域がx軸方向、又はy軸方向に沿って設けられる場合を例示して説明したが、これに限定されることはなく、少なくとも煙感知器10Bの互いの監視領域が高いに異なる方向に沿って設けられていればよい。
【0056】
なお、上述した実施形態3において、吸引管15は、円筒型の形状であってもよいし、断面が多角形(三角形や方形、及びその他の多角形を含む)の形状であってもよい。
また、上述した実施形態3では、吸引管15が略直線の筒状形状である場合を例示して説明したが、吸引管15は屈曲部を有していてもよい。この場合、吸引管15は、例えば大空間2の平面における外周部の内側を囲むようにループ状に配管されてもよいし、多数の屈曲部が設けられて、S字状、或いはクランク状に張り巡らされて配管されてもよい。 また、吸引管15は分岐していてもよい。一本の吸引管15をトーナメント表のようなツリー形状に分岐させ、各々の分岐先に開口部が設けられるようにしてもよい。
【0057】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。本実施形態では、火災検知システム1において、大空間2に設けられた棚のフレームを、吸引型の煙感知における吸引管として利用する点において上述した実施形態と相違する。
【0058】
第4の実施形態における火災検知システム1Eが適用される大空間2について、
図8~
図10を用いて説明する。
図8は、大空間2の側面図である。
図9は、大空間2の平面図である。
図10は、
図9に示す大空間2のA-A線断面図である。本実施形態では、
図8から
図19のX軸方向を左右方向、Y軸方向を奥行方向、Z軸方向を高さ方向とする。
【0059】
図8に示すように、火災検知システム1Eは、例えば、大空間2と、大空間2に設けられた棚4と、煙感知本体5と、制御装置6とを備える。
大空間2は、棚4(ラック)が設けられた所謂ラック倉庫である。
棚4は、大空間2に搬入された荷物を保管するための複数の収容区画(
図8における、区画(丸囲みA)~区画(丸囲みF))を備えた棚である。
煙感知本体5は、吸引した空気に含まれる煙の有無(煙濃度)を検知する。
制御装置6は、後述する切替部43を制御し、特定の区画における煙を検知する。
【0060】
棚4は、例えば、棚4の長手方向が大空間2の左右方向に沿うように設けられる。なお、大空間2に複数の棚4が設けられていてもよい。
【0061】
棚4は、例えば、吸引管41(吸引管41-1~41-6)と、開口部42(開口部42-1から42-6)と、切替部43(切替部43-1~43-9)と、棚板T(棚板T-1~T6)とを備える。
本実施形態では、棚4の枠(フレーム)が中空の部材で構成され、内部を吸引された空気が流通する吸引管として機能する。すなわち、高さ方向に立設される棚4の柱が吸引管41-1~41-3として機能し、横方向に配置される梁が吸引管41-4~41-6として機能する。
なお、吸引管41-1~41-6は、それぞれ独立した配管であってもよいし、吸引管41-1~41-6の全部又は一部が、ユニット化されていてもよい。
【0062】
吸引管41には貫通孔が形成され、貫通孔に開口部42が設けられている。
開口部42は、棚4の高さ方向、及び水平方向(横方向、及び奥行方向)において、互いに異なる位置に複数設けられてもよいし、棚4に一つだけ設けられていてもよい。
本実施形態では、横方向に配置された吸引管41-4において、互いに異なる位置に開口部42-1、42-4が設けられ、吸引管41-4とは異なる高さで横方向に配置された吸引管41-5において、互いに異なる位置に開口部42-2、42-5が設けられている。また、吸引管41-4、41-5とは異なる高さで横方向に配置された吸引管41-6において、互いに異なる位置に開口部42-3、42-6が設けられている。
【0063】
なお、開口部42は、左右方向の吸引管41だけでなく、高さ方向の吸引管41に形成されていてもよい。また、開口部42は、吸引管41に一つ形成されていてもよいし、複数形成されていてもよい。吸引管41に複数の開口部42が形成される場合には、所定の間隔を開けて均等に形成されていてもよいし、不均等な間隔で形成されていてもよい。この場合の吸引管41に形成される開口部42の数は、吸引能力、及び煙を検知する感度、或いは収容区画Sの広さ等に応じて任意に決定されてよい。
また、開口部42の開口の方向は、任意の方向であってよいが、空気中に含まれる煙以外の粒子(例えば、埃など)が吸引した空気に含まれることを抑制する方向であることが望ましい。例えば、開口部42の開口は、高さ方向上向き(Z軸正方向)以外の方向が望ましい。すなわち、左右方向や奥行方向、或いは高さ方向下向き(Z軸負方向)であることが望ましい。
【0064】
切替部43は、吸引管41に、開口部42を挟んで設けられ、制御装置60の制御により開放又は閉鎖する。開口部42の両側にある切替部43のうち少なくとも一方が開放されることにより吸引管41に開口部42の周辺の空気を吸引することができる。
【0065】
切替部43は、棚4の高さ方向、及び水平方向において、互いに異なる位置に複数設けられてもよいし、棚4に一つだけ設けられていてもよい。
本実施形態では、床面から高さ方向に立設された吸引管41-1において、互いに異なる高さに切替部43-1~43-3が設けられ、吸引管41-1とは横方向に異なる位置に立設された吸引管41-2おいて、互いに異なる高さに切替部43-4~43-6が設けられている。また、吸引管41-1、41-2とは横方向に異なる位置に立設された吸引管41-3において、互いに異なる高さに切替部43-7~43-9が設けられている。
【0066】
図9に示すように、棚4は、吸引管41の奥行方向に、柱H(柱H-1、H-3)、及び梁Rからなる枠(フレーム)が設けられる。
なお、ここでは奥行方向に設けられたフレームが吸引管として利用されないものとするが、この奥行方向のフレームが、手前側のフレームと同様に吸引管として用いられてもよい。
図9に示すように、棚板Tは、正面が水平方向(左右方向及び奥行方向)に、手前側のフレームと奥側のフレームとの間に設けられる。
図10に示すように、棚板Tは、例えば、上面が水平方向(xy平面の方向)に沿うように形成される。また、棚板Tは、裏面が奥行側から手前側に向かう方向(y軸正側からy軸負側に向かう方向)において、梁Rから吸引管41-4に向かうにしたがって上方(z軸正方向)に向かって傾斜するように形成される。この場合において、吸引管41-4は、棚板Tの裏面が上方に傾斜していく側の端部、つまり棚板Tのz軸正側の端部に設けられる。また、開口部42-1は、吸引管41-4において梁Rと対抗する部位に形成される。また、開口部42-4も同様に、吸引管41-4において梁Rと対抗する部位に形成される。
これにより、棚板Tの裏側が集煙板として機能する。つまり、棚板Tの下側から上昇してきた煙は奥行側から手前側に集められて開口部42の周辺に到達し、棚板Tの裏側が傾斜していない場合と比較して煙を検知し易くなる。
【0067】
図11は、第4の実施形態における煙感知本体5の構成例を示すブロック図である。煙感知本体5は、例えば、吸引部51と、煙感知部52と、通信部53と、表示部54とを備える。
吸引部51は、開口部42が設けられた区画の周辺の空気、吸引管41を介して吸引し、吸引した空気を煙感知部52へ供給する。
煙感知部52は、吸引部51により供給された空気中の煙の有無(煙濃度)を検知する。
通信部53は、制御装置6と通信する。通信部53は、煙感知部52により感知された結果を制御装置6に送信する。
【0068】
表示部54は、煙感知部52による感知結果に応じた信号を表示する。表示部54による表示は、検知した煙の煙濃度に応じた表示であり、例えば、煙濃度が警報レベル、警戒レベル、注意レベルの何れかである場合に、そのレベルが表示された箇所に設けられたLED(Light Emitting Diode)を点灯させることによりそのレベルを表示する。
【0069】
また、表示部54は、電源が入っているか否かを示す表示や、各種のエラー表示をしてもよい。各種のエラー表示とは、例えば、煙感知本体5における吸引力の低下や、吸引管41に異物が吸引されたこと等を知らせる表示である。これにより、煙感知本体5における各種のエラーについて、煙感知本体5を操作するユーザに通知することができる。
【0070】
また、表示部54は、煙濃度の変化をリアルタイムに示す表示をしてもよい。この表示は、例えば、煙濃度をバーグラフにより示す表示であり、煙濃度の増大又は減少を、バーグラフの長さの増大又は減少により示す表示である。これにより、感知された煙濃度の変化がユーザに視認し易くなるようにすることができる。
【0071】
なお、通信部53は、上述した表示部54により表示される内容を、制御装置6に送信するようにしてもよい。
【0072】
また、表示部54は、制御装置6による煙感知本体5における制御の内容を表示するようにしてもよい。例えば、表示部54は、吸引管41や切替部43の切替状況を表示してもよい。
具体的に、表示部54は、吸引管41の配置を示す配置図を表示する。そして、表示部54は、切替部43の切替状況に応じて、煙の吸引経路となる吸引管41を、煙の吸引経路とならない吸引管41と異なる色で表示する。
また、表示部54は、収容区画を示す側面図や平面図を表示する。そして、表示部54は、切替部43の切替状況に応じて、煙を吸引する区画(煙感知を行う領域)を、煙を吸引しない区画(煙感知を行わない区画)と異なる色で表示する。
また、表示部54は、煙発報がなされたか否かを表示してもよい。煙発報は、煙濃度が一定の閾値を超えた場合に、受信機に送信(発報)される情報である。煙発報は、例えば、受信機が大空間2に設けられた発信機(不図示)等から受信し、制御装置6を介して煙感知本体5に通知される。
【0073】
また、表示部54は、上述した各表示を、所定の操作で切替えて表示するようにしてもよい。この場合、例えば、煙感知本体5は、操作ボタン等からなる入力部(不図示)を備える。入力部の操作ボタンは各表示に対応して設けられている。表示部54は、操作ボタンが押下されたことを示す操作情報を入力部から取得し、取得した操作情報に応じて表示を切り替える。
【0074】
図12は、第4の実施形態の煙感知部52の構成例を示す図である。
煙感知部52は、例えば、発光素子520と、受光素子521と、光量変換部522と、積分部523と、判定部524と、散乱特性情報記憶部525とを備える。
【0075】
発光素子520は、吸引された空気(以下、単に空気とも称する)の進行方向に対して所定の照射角で光を照射するように配置される。発光素子520は、空気の流れる空間における所定の領域Pに、所定波長の光を照射する。なお、発光素子520と領域Pとの間にレンズが設けられてもよい。当該レンズは、領域Pに光を集光する。これにより、領域Pに照射される光の光量を大きくして、後述する散乱光の光量を大きくすることができる。
【0076】
受光素子521は、発光素子520による光を直接受光しない位置に配置される。本実施形態では、受光素子521は、空気の流れ方向に沿った方向からの光を受光するように配置される。つまり、受光素子551は、発光素子520により照射された光が領域Pの空気に含まれる煙により散乱した光のうち、散乱角度θで散乱した散乱光を受光する。
【0077】
光量変換部522は、受光素子551により受光された光の光量を電圧信号に変換する。光量変換部522は、例えば光量に比例する電圧信号を出力する光電素子を含んで構成され、光量を電圧に変換した信号を積分部523に出力する。
積分部523は、光量変換部522からの光量に応じた電圧信号を、所定の時間区間(例えば、数10秒間)において加算することにより積分する。この積分に用いる所定の時間区間は、煙感知本体5の吸引能力や煙を検知する感度に応じて任意に定められてよい。積分部523は積分した積分値を判定部524に出力する。
【0078】
散乱特性情報記憶部525は、積分値と煙濃度が対応付けられた情報を記憶する。
図13は、第4の実施形態の散乱特性情報記憶部525の構成例を示す図である。
散乱特性情報記憶部525は、例えば、積分値と、煙濃度と、感知レベルとの各項目を有する。積分値には、光量変換部522により受光された光量(を電圧に変換した電圧値)を所定の時間区間において積分した積分値が示される。煙濃度には、積分値に対応する煙濃度が示される。煙濃度と積分値との関係は、例えば、既知の煙濃度の空気を吸引させた場合の積分値を予め導出することにより規定する。感知レベルには、煙濃度に対応するレベルが、例えば、注意レベル、警戒レベル、及び警報レベルの三段階により示される。ここでは、煙濃度1%以上3%未満が注意レベル、煙濃度3%以上7%未満が警戒レベル。煙濃度7%以上が警報レベルであることを示している。
【0079】
判定部524は、積分部523からの積分値に基づいて、散乱特性情報記憶部525を参照する。判定部524は、積分値に対応づけられた煙濃度に基づいて、積分部523からの積分値に対応する煙濃度を判定する。判定部524は、例えば、積分部523からの積分値がM1以上M2未満である場合、煙濃度1%以上3%未満であると判定する。
【0080】
或いは、判定部524は、M1とM2との間を補間(例えば、線形補間)することにより、煙濃度1%以上3%未満の間にある、積分部523からの積分値に応じた煙濃度を判定するようにしてもよい。
判定部524は、取得した煙濃度を通信部53及び表示部54に出力する。
【0081】
図14は、第4の実施形態における制御装置6の構成例を示すブロック図である。制御装置6は、例えば、監視区画情報取得部61と、特定部62と、切替弁制御部63と、感知結果取得部64と、火災情報通信部65と、制御部66と、監視区画情報記憶部67とを備える。
【0082】
監視区画情報取得部61は、棚4において監視する区画(監視区画)を示す情報を取得する。監視する区画は、棚4における収容区画であり、例えば、区画(丸囲みA)~区画(丸囲みF)の何れかである。監視区画情報取得部61は、例えば、予め監視区画情報記憶部67に記憶された監視区画を参照することにより監視区画を示す情報を取得する。或いは、監視区画情報取得部61は、受信機や、倉庫の管理者や警備員などの入力操作により入力された監視区画を示す情報を取得するようにしてもよい。
【0083】
特定部62は、監視区画情報取得部61により取得された監視区画を示す情報に基づいて、開放又は閉鎖する切替部43を特定する。
まず、特定部62は、監視区画を示す情報に基づいて、監視区画に対応する開口部42を特定する。例えば、区画(丸囲みA)が監視区画である場合、開口部42-4を監視区画に対応する開口部42として特定する。
次に、特定部62は、監視区画に対応する開口部42の周辺の空気を吸引するための切替部43-1~43-9の各々の制御を判定する。例えば、特定部62は、開口部42-4の周辺の空気を吸引すると判定した場合、切替部43-1~43-6を閉鎖すると判定する。また、特定部62は、切替部43-7を開放し、切替部43-8を高さ方向に開放し、切替部43-9を切替部43-8から煙感知本体5の方向に開放すると判定する。
【0084】
なお、監視区画における空気を吸引する際に、吸引された空気が吸引管41を流通する距離が長くなるほど、吸引された空気が開口部42から煙感知本体5に到達させるために要する吸引力が大きくなる。このため、特定部62は、開口部42から煙感知本体5に到達するまでに経由する吸引管41の距離が、最短となるように切替部43を制御することが好ましい。
【0085】
また、開口部42から煙感知本体5に到達するまでに経由する吸引管41に、別の開口部42が設けられていた場合、当該別の開口部42からも空気が吸引されてしまう。この対策として、開口部42を開閉可能な開閉部とし、特定部62が開閉部の開閉を制御するようにしてもよい。
【0086】
また、棚4の左右方向、或いは高さ方向の吸引管41毎に煙感知本体5を設けるようにしてもよい。例えば、吸引管41-4、41-5、41-6の各々に煙感知本体5を設けるようにしても良い。この場合、特定部62は、開口部42から煙感知本体5に到達するまでに経由する吸引管41の距離が、最短となるようにするために複雑な処理をする必要がなくなり切替部43の切替制御を簡素化することが可能である。
【0087】
また、このように、複数の煙感知本体5が設けられた場合、感知結果である警報信号や煙濃度を示す信号を、互いに移報するようにしてもよい。
【0088】
切替弁制御部63は、特定部62の判定に基づいて、切替部43の切替弁の開放又は閉鎖を制御する。
切替弁制御部63と切替部43との間における、切替弁の開放又は閉鎖を制御する信号の通信は、赤外線やBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信網を利用した無線通信であってもよいし、吸引管41の中空部分を利用して配線した制御線などを介した有線通信であってもよい。
【0089】
感知結果取得部64は、煙感知本体5から感知結果を取得する。感知結果取得部64は感知結果を火災情報通信部65に出力する。
火災情報通信部65は、感知結果取得部64により取得された感知結果と、監視区画を示す情報とを対応付けた情報を、受信機に送信する。また、火災情報通信部65は、煙感知本体5の表示部54に表示された内容を示す情報を受信機に送信するようにしてもよい。
【0090】
制御部66は、制御装置6を統括的に制御する。制御部66は、例えば、監視区画情報取得部61により取得された監視区画を示す情報を特定部62に出力させる。制御部66は、特定部62により特定された切替部43の制御を示す情報を、切替弁制御部63に出力させる。
【0091】
監視区画情報記憶部67は、監視区画に関する情報を記憶する。監視区画に関する情報には、監視する区画を示す情報、複数の監視区画について監視の順序を示す情報等がふくまれていてもよい。
【0092】
図15は、第4の実施形態における火災検知システム1Eの動作例を示すシーケンスチャートである。
まず、制御装置6は、監視区画情報取得部61により監視区画を示す監視区画情報を取得する(ステップS1)。
次に、制御装置6は、特定部62により、監視区画情報に基づく監視区画を特定する(ステップS2)。特定部62は、監視区画情報に基づいて空気を吸引する区画の開口部42を特定し、特定した開口部42から吸引する空気を煙感知本体5に供給するための切替部43の制御を判定する。
次に、制御装置6は、切替弁制御部63により、特定部62による切替弁の開放又は閉鎖の判定に基づいて切替部43を制御する(ステップS3)。
そして、制御装置6は、煙感知本体5に煙を検知する命令を送信する(ステップS4)。
【0093】
煙感知本体5は、制御装置6からの煙を検知する命令を受信した場合、吸引部51により吸引を行う(ステップS5)。
次に、煙感知本体5は、煙感知部52の受光素子521により吸引した空気に光を照射した場合の散乱光を受光する(ステップS6)。
次に、煙感知本体5は、積分部523により受光した光量を所定時間区間において積分する(ステップS7)。
次に、煙感知本体5は、判定部524により積分値から煙濃度を判定する(ステップS8)。
そして、煙感知本体5は、判定した煙濃度を、制御装置6に送信する(ステップS9)。
【0094】
制御装置6は、煙感知本体5から煙濃度を受信し(ステップS10)、受信した煙濃度と、監視区画とを対応付けた情報を受信機に送信する(ステップS11)。なお、ステップS11において、制御装置6は、煙感知本体5の表示部54に表示された内容を示す情報を受信機に送信してもよい。
制御装置6は、ステップS11に示す処理を実行した後、ステップS2に戻り監視対象とした区画を監視する処理を続行する。
或いは、制御装置6は、ステップS11を実行後、監視する区画を変更する必要があるか否かを判定する処理を行った後に、ステップS2に戻るようにしてもよい。制御装置6は、監視する区画を変更する場合、ステップS2において変更後の監視区画を特定する。制御装置6は、監視する区画を変更しない場合、ステップS4に戻るようにしてもよい。 制御装置6は、例えば、監視する区画を変更する必要があるか否かを、煙感知本体5から受信した煙濃度に応じて判定する。例えば、制御装置6は、煙濃度が煙の発生が疑われる濃度を示している場合に監視する区画を変更しないと判定する。これにより、その後の帰趨、つまり煙が成長していくのか、煙が消えて感知されなくなるのかを早期に検知することが可能となる。
【0095】
以上説明したように、第4の実施形態における火災検知システム1Eは、大空間2に設けられた棚の収容区画を形成する中空のフレームであって、吸引された空気が流通する吸引管41と、吸引管41に設けられた開口部42と、吸引された空気に含まれる煙の有無を検知する煙感知本体5と、を備える。これにより、第4の実施形態における火災検知システム1Eは、上述した効果と同様の効果を奏する他、ラックのフレームを吸引管として利用することにより、棚に吸引管を配管する手間やコストをかけることなく、また、吸引管を別途設けることにより収容区画のスペースを狭めることなく、煙感知を行うことが可能である。
【0096】
また、第4の実施形態における火災検知システム1Eでは、煙感知本体5は、吸引管41を介して開口部42の周囲の空気を吸引する吸引部51と、吸引部51により吸引された空気に光を照射する発光素子520と、発光素子520により照射された光が吸引部51により吸引された空気に含まれる粒子により散乱された散乱光を受光する受光素子521と、受光素子521により受光された散乱光の光量を所定の時間積分する積分部523と、積分部523による積分値に基づいて、吸引された気体に含まれる粒子の粒子濃度を判定する判定部524と、を備える。これにより、第4の実施形態における火災検知システム1Eでは、積分値を用いて煙濃度を判定することができ、開口部42から所定の時間区間に吸引された空気中に含まれる煙の有無に基づいて火災の発生を検知することが可能となる。
【0097】
また、第4の実施形態における火災検知システム1Eでは、煙感知部52は、発光素子520により照射された光を、吸引部51により吸引された空気の特定の領域に集光するレンズ、を更に備える。これにより、特定の領域に照射される光の光量を大きくして、後述する散乱光の光量を大きくすることができ、受光光量を増加させてより精度よく煙を検知することが可能となる。
また、第4の実施形態における火災検知システム1Eでは、吸引管41は複数設けられ、吸引管41に、開口部を挟んで設けられた一組の切替弁と、大空間2における監視区画を示す監視区画情報を取得する監視区画情報取得部61と、監視区画情報に基づいて、切替弁を制御する切替弁制御部63と、を更に備える。これにより、第4の実施形態における火災検知システム1Eでは、監視区画に応じて切替部43の切替弁の開放又は閉鎖を制御することが可能となり、開口部42から煙感知本体5に至るまでの吸引管41の距離を最短として、最小の吸引力で所望の監視区画における空気を吸引することができる。
【0098】
(第4の実施形態の変形例)
上述した第4の実施形態では、制御装置6が煙濃度を受信する度にその情報を受信機に送信する態様を例に説明した。しかしながら、これに限定されない。制御装置6は、煙感知本体5から受信した煙濃度が所定の閾値以上である場合に、受信機に情報を送信するようにしてもよい。
この場合、例えば、制御装置6の感知結果取得部64は、煙感知本体5による感知結果を制御部66に出力する。制御部66は、感知結果に含まれる煙濃度と所定の閾値とを比較する。制御部66は、比較した結果に応じて、煙濃度が所定の閾値以上である場合に感知結果を火災情報通信部65に出力する。火災情報通信部65は、制御部66から取得した感知結果と、監視区画を示す情報とを対応付けた情報を受信機に送信する。
【0099】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0100】
1…火災検知システム、2…大空間、3…棚、10…煙感知器、20…集煙板、30…集煙板付き煙感知器、4…棚、41…吸引管、42…開口部、43・・・切替部、5…煙感知本体、52…煙感知部、520…発光素子、521…受光素子、523…積分部、524…判定部、6…制御装置、61…監視区画情報取得部、62…特定部、63…切替弁制御部