IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴィアサット,インコーポレイテッドの特許一覧

特許7481539フェーズドアレイアンテナシステムの作動方法
<>
  • 特許-フェーズドアレイアンテナシステムの作動方法 図1
  • 特許-フェーズドアレイアンテナシステムの作動方法 図2
  • 特許-フェーズドアレイアンテナシステムの作動方法 図3
  • 特許-フェーズドアレイアンテナシステムの作動方法 図4
  • 特許-フェーズドアレイアンテナシステムの作動方法 図5
  • 特許-フェーズドアレイアンテナシステムの作動方法 図6
  • 特許-フェーズドアレイアンテナシステムの作動方法 図7
  • 特許-フェーズドアレイアンテナシステムの作動方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】フェーズドアレイアンテナシステムの作動方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20240501BHJP
   H01Q 3/26 20060101ALI20240501BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H04B7/06 950
H01Q3/26 Z
H04B7/08 800
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023081489
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2020547183の分割
【原出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2023103403
(43)【公開日】2023-07-26
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】62/648,527
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/123,582
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513180451
【氏名又は名称】ヴィアサット,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ViaSat,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブエル、ケニス、ヴィ.
(72)【発明者】
【氏名】リプトン、ロナルド、エス.
(72)【発明者】
【氏名】トリパシー、アシュツクマール、ジェイ.
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0309325(US,A1)
【文献】特表2016-536818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H01Q 3/26
H04B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェーズドアレイアンテナシステムの作動方法であって、
ビーム信号及び制御信号を複合多重化信号で通信する工程であって、前記制御信号は複数の制御回路のうちの第1の制御回路に関連付けられており、前記ビーム信号及び前記制御信号は、重なり合わない周波数帯域を占有する、工程と、
前記複合多重化信号を、ビーム形成ネットワークを用いて複数の素子信号ポートの各々における複数の個別信号に変換する工程と、
前記複数の個別信号を、前記ビーム形成ネットワークに接続された複数の制御回路のうちのいくつかの制御回路に対応する複数の素子信号ポートを介して通信する工程であって、前記複数の個別信号の各個別信号は、複数の素子ビーム信号のそれぞれの素子ビーム信号と、複数の素子制御信号のそれぞれの素子制御信号とを含む、工程と、
前記第1の制御回路において、それぞれの素子制御信号を前記複数の個別信号のうちの第1の個別信号から獲得する工程と、
それぞれの素子制御信号に少なくとも部分的に基づいて第1の調整された素子ビーム信号を獲得するために、前記第1の制御回路において第1の素子ビーム信号を調整する工程と、
前記第1の制御回路において、前記第1の調整された素子ビーム信号を通信する工程と、
複数の制御回路の各々を、それぞれの素子制御信号に基づいて同期する工程であって、当該同期する工程では、前記第1の制御回路においてクロック信号を、前記制御信号のキャリア周波数に少なくとも部分的に基づいて生成する、工程と
を含む作動方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1の制御回路において、アドレス情報を前記それぞれの素子制御信号から獲得する工程であって、前記アドレス情報は、前記制御信号が意図されている制御回路のアドレスを含む、工程と、
前記第1の制御回路において、前記第1の制御回路のアドレスを前記アドレス情報と比較する工程であって、前記調整する工程は、当該比較に少なくも部分的に基づく、工程とをさらに含む方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記アドレス情報は、少なくとも1つのエラー訂正ビットを含む、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、
前記第1の制御回路のアドレスを、行分圧器によって得られた行電圧、列分圧器によって得られた列電圧、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上に少なくとも部分的に基づいて識別する工程であって、各行分圧器は複数の行分圧器素子を備え、各列分圧器は複数の列分圧器素子を備える、工程をさらに含む方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、
前記第1の制御回路のアドレスを、当該第1の制御回路の複数のアドレスピンのそれぞれの接続に少なくとも部分的に基づいて識別する工程をさらに含む方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記制御信号は、複数の制御回路の各々に対する制御情報を含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記第1の制御回路において、制御情報を複数の制御回路の各々に対して、前記それぞれの素子制御信号から復調する工程をさらに含む方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記ビーム信号及び前記制御信号を、電力信号と多重化し、複合多重化信号を生成する工程をさらに含む方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
前記第1の制御回路において、前記電力信号を前記第1の個別信号から分離する工程、及び
前記第1の制御回路に、分離された電力信号を供給する工程をさらに含む方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記調整する工程は、振幅調整を前記第1の素子ビーム信号に適用すること、位相調整を前記第1の素子ビーム信号に適用すること、又は両者の組み合わせを適用することを含む、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、
前記制御信号を通信する工程は、複合多重化信号を獲得するために前記制御信号を前記ビーム信号と多重化すること、及び
前記第1の調整された素子ビーム信号をアンテナ素子から対応の第1の制御回路に通信することを含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
ビームに対する走査角方向を決定する工程、及び
前記ビーム信号および前記制御信号を多重化する工程であって、前記制御信号は前記ビームに対するビーム形成係数を含む、工程をさらに含む方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、
複数のビーム方向を決定する工程、及び
前記ビーム信号および前記制御信号を多重化する工程であって、前記制御信号は、複数のビーム方向のための第1の制御回路に対する複数のビーム形成係数を含む、工程をさらに含む方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
前記ビーム信号を、前記第1の制御回路に関連付けられた付加的な制御信号と多重化する工程であって、前記付加的な制御信号は、複数のビーム形成係数からビーム形成係数を選択するための指示子を含む、工程をさらに含む方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、
前記複数のビーム方向は、ステップトラック又は円錐走査に対応する、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、
1つ以上の受信素子ビーム信号を前記第1の制御回路で受信する工程、及び
それぞれの素子制御信号に少なくとも部分的に基づいて1つ以上の調整された受信素子ビーム信号を獲得するために、前記第1の制御回路において1つ以上の受信素子ビーム信号を調整する工程を含む方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
1つ以上の調整された受信素子ビーム信号を制御信号により多重化信号に多重化する工程と、
当該多重化信号を前記ビーム形成ネットワークに通信する工程と、
前記ビーム形成ネットワークにおいて、前記多重化信号の1つ以上の調整された受信素子ビーム信号を受信されたビーム信号に合成する工程と
をさらに含む方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、
前記ビーム形成ネットワークは、プリント回路基板(PCB)の1つ以上の層を有し、前記第1の制御回路は、前記プリント回路基板の第1の層上に位置しており、第1の制御回路による通信は、前記プリント回路基板の第2の層上に位置するアンテナ素子を介する通信を含む、方法。
【請求項19】
請求項2に記載の方法であって、
前記制御信号は、変調された制御情報を含む複数のコマンドを含み、かつ前記変調された制御情報は、複数の制御回路に関連付けられたアドレス情報を含む、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、
制御信号を獲得するために複数のコマンドを変調する工程であって、前記複数のコマンドは、前記第1の制御回路に対する制御情報を含む第1のコマンドを含む、工程と、
前記第1の制御回路において、複数のコマンドを獲得するためにそれぞれの素子制御信号を復調する工程と、
前記第1の制御回路のアドレスにマッチングする前記第1のコマンドの復調されたアドレスに少なくとも部分的に基づいて、前記第1のコマンドから制御情報を獲得する工程であって、前記制御情報に少なくとも部分的に基づいて第1の調整された素子ビーム信号を獲得するために、前記第1の制御回路において、第1の素子ビーム信号を調整する、工程と
をさらに含む方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
フェーズドアレイアンテナは、いくつかの無線通信システムで使用することができる。フェーズドアレイアンテナは、フェーズドアレイアンテナの各個々のアンテナ素子の位相及び/又は振幅関係を操作することによって、異なる方向に1つ以上のビームを向けるように構成することができる。例えば、フェーズドアレイアンテナは、動作中に1つ以上のビームを標的に向けるように構成することができる。場合によっては、フェーズドアレイアンテナは、移動システム、例えば車両に搭載してもよい。しかしながら、場合によっては、アンテナシステムの全体的なコストを比較的低く保つことが望ましい場合がある。これらの場合、堅牢な性能を維持するフェーズドアレイアンテナの費用効率が高く比較的コンパクトなアーキテクチャが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【0002】
フェーズドアレイアンテナシステムが記載されている。フェーズドアレイアンテナシステムは、1つ以上の素子信号ポートにおける1つ以上の素子信号と、ビーム形成ネットワークの共通信号ポートにおけるビーム信号とを変換するためのビーム形成ネットワークを含むことができる。ビーム形成ネットワークは、プリント回路基板(printed circuit board、PCB)の1つ以上の層に配置することができる。
【0003】
フェーズドアレイアンテナシステムは、制御信号をコントローラから素子信号ポートに提供するための第1の信号ルーティング回路(例えば、ダイプレクサ)を含んでもよく、ビーム形成ネットワークは、制御信号を1つ以上の素子信号ポートの各々に分配することができる。フェーズドアレイアンテナシステムは、PCBの第1の層に配置された1つ以上の制御回路を含んでもよく、各制御回路は、1つ以上の素子信号ポートの対応する素子信号ポートに接続された第1のポートと、対応するアンテナ素子に接続された第2のポートとを含むことができる。それぞれのアンテナ素子は、PCBの第2の層に配置されたそれぞれの制御回路に対応することができる。
【0004】
1つ以上の制御回路の各々は、第1のポートに接続された第2の信号ルーティング回路(例えば、第2のダイプレクサ)を含むことができる。第2の信号ルーティング回路は、第1のポートと第2のポートとの間で伝達される1つ以上の素子信号のうちの対応する素子信号に対する素子信号経路を確立することができる。第2の信号ルーティング回路は、第1のポートを介して受信された制御信号の制御信号経路を更に確立することができる。1つ以上の制御回路の各々は、素子信号経路及び制御信号経路に沿って信号調整回路を更に含んでもよい。信号調整回路は、制御信号に基づいて、対応する素子信号を(例えば、位相又は振幅について)調整することができる。
【0005】
説明される方法及び装置の適用性の更なる範囲は、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、及び図面から明らかになるであろう。説明の範囲内の様々な変更及び修正が当業者には明らかとなるので、詳細な説明及び具体例は、単に例示として与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示の実施形態の性質及び利点の更なる理解は、以下の図面を参照することによって実現することができる。添付の図面では、類似の構成要素又は特徴部は、同じ参照ラベルを有することができる。更に、同じ種類の様々な構成要素は、類似の構成要素の中で区別するダッシュ及び第2のラベルによる参照ラベルに従うことによって区別され得る。第1の参照ラベルのみが本明細書で使用される場合、説明は、第2の参照ラベルに関係なく、同じ第1の参照ラベルを有する類似の構成要素のうちのいずれか1つに適用可能である。
【0007】
図1】本開示の態様による衛星通信システムの図を示す。
【0008】
図2】本開示の態様による、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャの例示的な図を示す。
【0009】
図3】本開示の態様による、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャのビーム形成ネットワークの例示的な図を示す。
【0010】
図4】本開示の態様による、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャの例示的な図を示す。
図5】本開示の態様による、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャの例示的な図を示す。
図6】本開示の態様による、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャの例示的な図を示す。
【0011】
図7】本開示の態様による、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャの多層プリント回路基板(PCB)の例示的な図を示す。
【0012】
図8】本開示の態様による、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャのアドレス復号器の例示的な図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
記載される特徴は、一般的に、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャに関する。フェーズドアレイアンテナは、フェーズドアレイアンテナの各個々のアンテナ素子の位相及び/又は振幅関係を操作することによって、異なる方向に1つ以上のビームを向けるように構成することができる。例えば、フェーズドアレイアンテナは、動作中に1つ以上のビームを衛星に向けるように(例えば、衛星を能動的に追跡するように)構成することができる。いくつかのこのような用途では、ロバスト性を維持するフェーズドアレイアンテナの比較的低コストのアーキテクチャが望ましい。例えば、費用効率の高いフェーズドアレイアンテナは、衛星用ユーザ住宅端末用途、商業的及び個人的自動車用途などにおける経済的な組み込みを容易にする。更に、例えば、UAV及び比較的小型の有人航空機(例えば、ローカルジェット及びビジネスジェット)などのいくつかの用途では、比較的小型かつよりコンパクトなフェーズドアレイアンテナアーキテクチャは、比較的小型の、より軽い、及び/又はより費用効率の高い製品を容易にする。
【0014】
このようなフェーズドアレイアンテナのサイズ及び製造コストを低減する1つの方法は、フェーズドアレイアンテナのための制御回路アーキテクチャの設計のサイズ及び製造コストを低減することである。フェーズドアレイアンテナ制御回路は、プリント回路基板(PCB)の1つ以上の層にわたって製造することができる。制御回路アーキテクチャの複雑性及びPCBの印刷層の数が増加するにつれて、フェーズドアレイアンテナの全体的な製造コストも一般的に増加する。分散制御回路アーキテクチャは、複数の分散された制御回路及び対応するアンテナ素子への信号経路を提供することができ、1つの信号経路は、アンテナ素子への又はアンテナ素子からの素子信号により多重化された、制御回路に対する制御信号を伝達するのに使用することができる。このアーキテクチャは、例えば、比較的少数のPCB層を使用することができ、そのようなPCBベースのフェーズドアレイアンテナシステムの全体的な複雑性及び製造コストを低減することができる。
【0015】
本明細書に説明される技法は、ビーム形成ネットワークと、フェーズドアレイアンテナのそれぞれ個々のアンテナ素子との間の信号経路に沿って分散された1つ以上の制御回路の各々に対して制御信号及び素子信号の両方を伝達する共有信号経路を使用する分散制御回路アーキテクチャを提供することができる。場合によっては、フェーズドアレイアンテナは、送信フェーズドアレイアンテナ、受信フェーズドアレイアンテナであってもよく、又は両方の動作を実行してもよい。ビーム形成ネットワークは、共通信号ポートにおけるビーム信号と、フェーズドアレイアンテナの特定のアンテナ素子に対応するそれぞれの素子信号ポートにおける1つ以上の素子信号とを変換することができる。例えば、送信フェーズドアレイアンテナの場合、ビーム形成ネットワークは、送信ビーム信号を、アンテナアレイのそれぞれのアンテナ素子によって送信される複数の送信素子信号に変換することができる。追加的に又は代替的に、受信フェーズドアレイアンテナの場合、ビーム形成ネットワークは、アンテナアレイのそれぞれのアンテナ素子によって受信された複数の受信素子信号を受信ビーム信号に変換することができる。
【0016】
ビーム形成ネットワークは、共通信号ポートにおいてビーム信号により多重化された制御信号を、フェーズドアレイアンテナの特定のアンテナ素子に対応するそれぞれの素子信号ポートに更に分配することができる。制御信号は、ビーム形成ネットワークによって、それぞれの信号経路を介してそれぞれの素子信号ポートで制御回路にルーティングすることができる。制御回路は各々、信号経路を介してビーム形成ネットワークのそれぞれの素子信号ポートに接続された第1のポートと、信号経路を介してアンテナアレイのそれぞれのアンテナ素子に接続された第2のポートとを有する。場合によっては、制御信号は、例えば、ビーム形成ネットワークの素子ポートから制御回路の第1のポートで受信された信号上で、素子信号と多重化してもよい。制御回路は各々、素子信号により多重化された制御信号を抽出し、素子信号に調整を適用するように構成してもよい。具体的には、制御回路は、対応する素子信号の信号経路と、制御回路の第1のポートを介して各々受信された対応する制御信号の信号経路とを確立するためのルーティング回路を含むことができる。制御回路は、それぞれの制御信号に基づいて素子信号を調整するために、1つ又は両方の経路に沿った信号調整回路を更に含むことができ。したがって、ビーム形成ネットワークから1つの対応する制御回路を通過する単一の信号経路を、各アンテナ素子の制御信号及び素子信号の両方に使用することができる。このため、多数のPCB層を含むPCBの複雑性を低減することができ、フェーズドアレイアンテナの製造コストを低下させることができる。
【0017】
本説明は、実施例を提供し、本明細書で説明される原理の実施形態の範囲、適用性、又は構成を制限することを意図するものではない。むしろ、以下の説明は、本明細書で説明される原理の実施形態を実施するのを可能にする説明を当業者に提供するであろう。要素の機能及び配置において様々な変更が行われてもよい。
【0018】
したがって、様々な実施形態は、適宜、様々な手順又は構成要素を省略、置換、又は追加してもよい。例えば、方法は、説明されるものとは異なる順序で実行されてもよく、様々なステップが追加され、省略され、又は組み合わされてもよいことを理解されたい。また、特定の実施形態に関して説明される態様及び要素は、様々な他の実施形態において組み合わされてもよい。また、以下のシステム、方法、デバイス、及びソフトウェアは、個別に又は集合的に、より大きいシステムの構成要素であってもよく、他の手順が、それらのアプリケーションに優先するか、又は他の方法でそれらのアプリケーションを修正してもよいことを理解されたい。
【0019】
図1は、本開示の態様による衛星通信システム100の図を示す。衛星通信システム100は、衛星105、ゲートウェイ115、ゲートウェイアンテナシステム110、及び航空機130を含む。ゲートウェイ115は、1つ以上のネットワーク120と通信する。動作時において、衛星通信システム100は、衛星105及びゲートウェイ115を通じて航空機130とネットワーク120との間の双方向通信を提供する。
【0020】
衛星105は、任意の好適な種類の通信衛星であってよい。いくつかの実施例では、衛星105は、静止軌道又は静止地球軌道(geostationary earth orbit、GEO)にあり得る。他の実施例では、衛星105に対して任意の適切な軌道(例えば、低地球軌道(low earth orbit、LEO)、中地球軌道(medium earth orbit、MEO)など)が使用されてもよい。衛星105は、所定の地理的サービスエリア内の複数のサービスビームカバレッジエリアに対してサービスを提供するように構成されたマルチビーム衛星であってもよい。いくつかの実施例では、衛星通信システム100は、複数の衛星105を含む。
【0021】
ゲートウェイアンテナシステム110は、双方向通信が可能であり、衛星通信システム100と確実に通信するために適切な送信電力及び受信感度を備えて設計される。衛星通信システム100は、1つ以上のビーム150を通じて信号を送受信することによってゲートウェイアンテナシステム110と通信することができる。ゲートウェイ115は、ゲートウェイアンテナシステム110を使用して衛星通信システム100との間で信号を送受信する。ゲートウェイ115は、1つ以上のネットワーク120に接続されている。ネットワーク120は、ローカルエリアネットワーク(local area network、LAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(metropolitan area network、MAN)、広域ネットワーク(wide area network、WAN)、又は任意の他の好適な公衆ネットワーク又はプライベートネットワークを含んでもよく、インターネット、電話ネットワーク(例えば、公衆交換電話ネットワーク(Public Switched Telephone Network、PSTN)など)などのような他の通信ネットワークに接続されてもよい。
【0022】
航空機130は、アンテナアレイ140、例えば、パッチアンテナのアレイを含む機内通信システムを含む。航空機130の機内通信システムは、モデム(図示せず)を介して、航空機130の通信デバイスに通信サービスを提供することができる。通信デバイスは、モデムを通じてネットワーク120に接続及びアクセスすることができる。例えば、モバイルデバイスは、有線又は無線であり得るモデムへのネットワーク接続を介して、1つ以上のネットワーク120と通信することができる。無線接続は、例えば、米国電気電子学会(Institute of Electrical and Electronics Engineers、IEEE)802.11(Wi-Fi)、又は他の無線通信技術などの無線ローカルエリアネットワーク(wireless local area network、WLAN)技術であってもよい。
【0023】
航空機130は、アンテナアレイ140を使用して、1つ以上のビーム160を介して衛星105と通信することができる。アンテナアレイ140は、航空機130の機体の外側に取り付けてもよい。場合によっては、アンテナアレイ140は、フェーズドアレイアンテナである。フェーズドアレイアンテナは、フェーズドアレイアンテナの個々のアンテナの位相及び/又は振幅関係を操作することによって、1つ以上のビーム160を特定の方向に向けるように構成することができる。例えば、アンテナアレイ140は、動作中に、1つ以上のビーム160を衛星に向けるように(例えば、衛星を能動的に追跡するように)構成することができる。アンテナアレイ140は、衛星105からの通信信号の受信、衛星105への通信信号の送信、又は衛星105との双方向通信(すなわち、通信信号を送受信)のために使用することができる。アンテナアレイ140は、国際電気通信連合(International Telecommunications Union、ITU)Ku、K、又はKaバンド、例えば、約17~31ギガヘルツ(GHz)で動作することができる。あるいは、アンテナアレイ140は、Cバンド、Xバンド、Sバンド、Lバンドなどのような他の周波数帯域で動作してもよい。単一のアンテナアレイ140が図示されているが、場合によっては、通信のために2つ以上のアンテナアレイ140を使用してもよい。
【0024】
アンテナアレイ140は、ハウジング又はエンクロージャ内にあってもよく、これは、アンテナアレイ140を環境要因から保護することができ、通信信号を実質的に減衰させない材料又は材料(複数)で構成することができる。加えて、アンテナアレイ140は、船内、車両、又は地上ベースの静止システムなど、航空機130の機内以外にも他の用途に使用してもよい。いくつかのそのような用途では、ロバスト性を維持するフェーズドアレイアンテナの比較的低コストのアーキテクチャが望ましい場合がある。例えば、費用効率の高いフェーズドアレイアンテナは、衛星用住宅ユーザ端末用途、商業的及び個人的自動車用途などにおける経済的な組み込みを容易にする。更に、例えば、UAV及び比較的小型の有人航空機(例えば、ローカルジェット及びビジネスジェット)などのいくつかの用途では、比較的小型かつよりコンパクトなフェーズドアレイアンテナアーキテクチャは、比較的小型の、より軽い、及び/又はより費用効率の高い製品を容易にする。例えば、フェーズドアレイアンテナ用のハウジングは、機械的にジンバル式の受動アンテナアレイに使用されるレドームよりも実質的に小さくなり得る。
【0025】
このようなフェーズドアレイアンテナのサイズ及び製造コストを低減する1つの方法は、フェーズドアレイアンテナのための制御回路アーキテクチャの設計のサイズ及び製造コストを低減することである。フェーズドアレイアンテナ制御回路は、PCBの1つ以上の層にわたって製造することができる。制御回路アーキテクチャの複雑性及びPCBの印刷層の数が増加するにつれて、フェーズドアレイアンテナの全体的な製造コストも一般的に増加する。分散多重化制御及び素子信号アーキテクチャは、複数の分散制御回路及び対応するアンテナ素子に対する制御信号を、同じ信号経路上のアンテナ素子を介した送信又は受信のための素子信号と多重化することができる。このアーキテクチャは、例えば、比較的少数のPCB層を使用することができ、そのようなPCBベースのフェーズドアレイアンテナシステムの全体的な複雑性及び製造コストを低減し得る。
【0026】
本明細書に説明される技法は、共有信号経路を使用する分散多重化制御及び素子信号アーキテクチャを提供する。この共有信号経路は、ビーム形成ネットワークとフェーズドアレイアンテナのそれぞれの個々のアンテナ素子との間の信号経路に沿って分散された1つ以上の制御回路の各々に対して制御信号及び素子信号の両方を伝達する。説明した分散多重化制御及び素子信号アーキテクチャでは、信号経路は、制御回路の制御データを含む制御信号を伝達することができ、この制御信号は、それぞれのアンテナ素子を介した送信又は受信のために、素子信号(すなわち、無線周波数(radio frequency、RF)信号)と多重化(例えば、周波数領域多重化(frequency-domain multiplexing、FDM)などを介して)されている。そうすることで、単一の信号経路を、各アンテナ素子に対して制御信号及び素子信号の両方に使用することができ、例えば、別個の専用の制御信号経路と素子信号経路を設けなくてもよい。例えば、以下で更に説明するように、単一の信号経路が、対応するアンテナ素子に送信される素子信号又はそれから送信される素子信号と多重化された制御情報を伝達することができる。例えば、制御信号は、ビーム形成ネットワークから同じ方向に送信素子信号と多重化することができる。あるいは制御信号は、ビーム形成ネットワーク内で組み合わされた受信素子信号により多重化してもよい。説明された技法によれば、多数のPCB層を含むPCBの複雑性を低減することができ、フェーズドアレイアンテナの製造コストを低下させることができる。
【0027】
図2は、本開示の態様による、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャの例示的な図200を示す。フェーズドアレイアンテナは、図1を参照して説明したように、1つ以上のアンテナアレイ140のである。図2のフェーズドアレイアンテナは、図1を参照して説明したように、衛星105に通信信号を送信するための送信フェーズドアレイアンテナの例であってよい。
【0028】
図2に示すように、回路アーキテクチャは、第1のルーティング回路205-a、ビーム形成ネットワーク210-a、複数の制御回路215、及び複数のアンテナ素子220を含む。図2の例では、第1の制御回路215-aと、対応する第1のアンテナ素子220-aと、第2の制御回路215-bと、対応する第2のアンテナ素子220-bとが示されている。しかしながら、アンテナ素子220に対して任意の数Nの制御回路215を同様に実装することができることを理解されたい。したがって、第1の制御回路215-aは、「制御回路1」と称される場合があり、第2の制御回路215-bは、「制御回路N」と称される場合がある。アンテナ素子220を介して伝達される素子信号は、所望の特性を有するアンテナビームを形成するように構成することができる(例えば、各アンテナ素子220を介して伝達される個々の素子信号は、アンテナビームを所望の方向に向けるために、他のアンテナ素子220を介して伝達される個々の素子信号に対して特定の位相及び/又は振幅を有するように構成することができる)。図2に示すように、制御回路215とアンテナ素子220との間には1対1の対応がある(すなわち、各アンテナ素子220には異なる制御回路215が接続されている)。しかしながら、場合によっては、1つの制御回路215が、複数のアンテナ素子220の間で共有されてもよい(すなわち、1つの制御回路215が、複数のアンテナ素子220に接続され、それぞれの信号を提供してもよい)ことを理解されたい。
【0029】
上述のように、フェーズドアレイアンテナは、フェーズドアレイアンテナ及び対応する制御アーキテクチャがPCBの1つ以上の層上にプリントされるか、ないしは別の方法で形成されるPCBベースのアンテナシステムであってよい。PCBは、1つ以上のPCB層にわたる信号経路(例えば、導電線、トレース、異なるPCB層上のトレースを接続するビア、又は平面)を含むことができる。例えば、信号経路は、1つ以上の導電線及び接地平面又は接地線からなるPCB伝送線路を含むことができる。本明細書に記載されるように、層は、導電性材料の単一層(導電線及び/又は1つ以上の接地面及び/又は1つ以上の接地線を含み得る)を指す場合がある。例えば、「2層PCB」は、誘電体基板によって分離された導電性材料の2つの層を含み、「4層PCB」は、3つの誘電体基板などによって分離された導電性材料の4つの層を含む)。PCB内に伝送線路を形成する導電信号線及び接地線又は平面の層の数は、伝送線路の種類(例えば、マイクロストリップ、ストリップライン、コプレーナ導波路など)に基づいて変化し得る。例えば、PCB内の伝送線路は、1つの導電線層と、導電線層と同じ層内、又は異なる層内の1つ以上の接地線又は平面とを含んでもよい。信号経路は、接続された構成要素又はポート間で、制御信号、ビーム信号、素子信号などのような信号を伝達することができ、信号経路は、同じ又は異なる層内にある1つ以上のPCB伝送線路を含むことができる。
【0030】
送信フェーズドアレイアンテナとして構成される場合、フェーズドアレイアンテナは、ボアサイト(例えば、標的衛星を追跡する方向)に対して所望の走査角方向でビームを送信するように構成することができる。第1のルーティング回路205-a(例えば、ダイプレクサ又は他のマルチプレクサ、若しくは他の種類の信号ルーティング回路)は、送信ビーム信号236-aを、例えば送信プロセッサから受信することができ、これがフェーズドアレイアンテナによって送信ビームとして送信される。第1のルーティング回路205-aは、更に制御データ226-aをコントローラ225-aから受信することができる。制御データ226-aは、送信ビームを所望の走査角方向に送信するために、(後述するように)それぞれの制御回路によって適用されるN個の制御回路215のうちの1つ以上に対する調整値(例えば、振幅及び/又は位相)を指示することができる。
【0031】
フェーズドアレイアンテナは、制御データ226-aを変調して制御信号231-aを形成する変調器230-a(例えば、振幅シフトキーイング(amplitude shift keying、ASK)、又は位相シフトキーイング(phase shift keying、PSK)変調器)を含むことができる。変調器230-aは、コントローラ225-aから受信した制御データ226-aを変調し、変調制御信号231-aを第1のルーティング回路205-aに引き渡すことができる。場合によっては、変調器230-aは、コントローラ225-aの内部に、又はその構成要素として実装してもよい。場合によっては、制御信号231-a及び送信ビーム信号236-aは、重なり合わない異なる周波数範囲を占有してもよい。第1のルーティング回路205-aのマルチプレクサは、例えば、FDMを使用して、送信ビーム信号236-a(中心周波数ftxを有する)及び制御信号231-a(中心周波数fを有する)を多重化し、送信ビーム信号236-a及び制御信号231-aを含む複合多重化信号241-aを形成することができる。第1のルーティング回路205-aとして別の可能な実現形態を使用してもよい。例えば、図2では、第1のルーティング回路205-aは、各入力について1つずつの帯域通過フィルタ、全部で2つの帯域通過フィルタ235を含むダイプレクサ(すなわち、2つの入力端を有するマルチプレクサ)である。第1の帯域通過フィルタ235-aは、第1の周波数範囲の信号が通過することを可能にし、第1の周波数範囲は、少なくとも送信ビーム信号236-aの周波数範囲に対応する。送信ビーム信号236-aは、例えば、変調送信ビーム信号であってもよく、変調送信信号ビーム信号は、送信ビーム信号としてキャリア周波数ftxにより変調されている。ftxに等しい中心周波数を有するとして示されているが、第1の周波数範囲が(例えば、制御信号231-aを除外して)送信ビーム信号236-aの通過を可能にする限り、第1の帯域通過フィルタの中心周波数は、送信ビーム信号のキャリア周波数ftxと同じでなくてもよい。第2の帯域通過フィルタ235-bは、第2の周波数範囲の信号が通過することを可能にし、第2の周波数範囲は、少なくとも制御信号231-aの周波数範囲に対応する。制御信号231-aは、例えば、変調制御信号であってもよく、制御データ226-aが制御信号としてキャリア周波数fにより変調されており、制御信号のキャリア周波数は、送信ビーム信号のキャリア周波数とは異なる。fに等しい中心周波数を有するとして示されているが、第2の周波数範囲が(例えば、送信ビーム信号236-aを除外して)制御信号231-aの通過を可能にする限り、第2の帯域通過フィルタの中心周波数は、制御信号のキャリア周波数fと同じでなくてもよい。
【0032】
あるいは、制御信号231-aの搬送波が送信ビーム信号236-aの搬送波よりも低い周波数である他の実施形態では、高域通過信号経路を、第1の帯域通過フィルタ235-aの代わりに形成してもよく、低域通過信号経路を、第2の帯域通過フィルタ235-bの代わりに使用してもよい。高域通過信号経路は、例えば、PCBトレースを使用して形成してもよく、高周波数範囲内の信号が通過することを可能にし、ここで、この高周波数範囲は、送信ビーム信号236-a(例えば、変調送信ビーム信号)に対して十分である。低域通過信号経路は、例えば、コンデンサ及びインダクタなどの構成要素を使用して形成してもよく、低周波数範囲内の信号が通過することを可能にし、ここで、この低周波数範囲は、制御信号231-a(例えば、変調制御信号)に対して十分である。
【0033】
第1のルーティング回路205-aは、制御信号231-aと多重化された送信ビーム信号236-aを含む複合多重化信号241-aを、ビーム形成ネットワーク210-aの共通信号ポート240-aに提供することができる。ビーム形成ネットワーク210-aは、1つ以上のPCBデバイダの段(例えば、均等なやり方及び/又は不均等なやり方、同相及び/又は位相外れ、若しくは組み合わせ)を含むことができ、それは、複合多重化信号241-aを分割して、ビーム形成ネットワーク210-aの対応する出力素子信号ポート245(例えば、素子信号ポート245-a及び素子信号ポート245-b)で個々の出力信号246(例えば、出力信号246-a及び出力信号246-b)を形成する。すなわち、ビーム形成ネットワーク210-aは、複合多重化信号241-aを個々の出力信号246に分割することができ、各個々の出力信号246は、それぞれ送信ビーム信号236-a及び制御信号231-aのコピーである個々の素子信号及び個々の制御信号を含む。1つ以上のPCBデバイダの段は、フェーズドアレイアンテナの全体ビーム形成の一部として、個々の出力信号246の個々の素子信号間に相対的な振幅及び/又は位相シフトを提供することができる。そのような場合、個々の出力信号246の個々の制御信号はまた、1つ以上のPCBデバイダの段により相対的な振幅及び/又は位相シフトを受ける。しかしながら、振幅及び/又は位相シフトにおけるそのような相対的シフトは、個々の制御信号の搬送波に適用されるため、制御データ226-aには影響を与えない。加えて、必要とされる精度が個々の素子信号に対して必要とされるものよりも著しく低くなり得るため、これらのシフトは、同期のための個々の制御信号の搬送波の復元に影響しないことがある(以下で論じられる)。制御データ226-aは、制御回路215の各々に関する情報(例えば、シリアルデータ)を含んでもよく、ビーム形成ネットワーク210-aは、制御データ226-aを、アンテナ素子220の各々に対応する素子信号ポート245の各々にコピーすることができる(例えば、制御データ226-aを搬送する制御信号231-aを含む複合多重化信号241-aを分割することによって)。それぞれの素子信号ポート245における各個々の出力信号246に含まれる個々の素子信号は、その後、対応する素子信号ポート245に接続された対応する制御回路215によって調整され、対応するアンテナ素子220によって送信される。
【0034】
素子信号ポート245における個々の出力信号246の各々は、個々の制御信号(例えば、制御信号231-aのコピー)と多重化された個々の素子信号(例えば、送信ビーム信号236-aのコピー)を含むことができる。個々の制御信号は、対応する制御回路215によって使用され、対応する個々の素子信号に適切な調整(例えば、振幅及び/又は位相)を適用することができる。すなわち、ビーム形成ネットワーク210-aは、複合多重化信号241-aを分割して、各素子信号ポート245において、各々が個々の制御信号及び個々の素子信号を含む個々の出力信号246を形成することができる。ビーム信号及び制御信号を多重化することによって、ビーム形成ネットワーク210-aを使用して、素子信号及び各制御回路215の対応する素子信号のための制御データを示す制御信号を形成及び分配することができる。そうすることで、単一の信号経路を、ビーム形成ネットワーク210-a内の各アンテナ素子に対する制御信号及び素子信号の両方に使用することができ、例えば、別個の専用の制御線及び素子線を設ける必要がない。これにより、多数のPCB層を含むPCBの複雑性を低減することができ、フェーズドアレイアンテナの製造コストを低下させることができる。
【0035】
各制御回路215は、ビーム形成ネットワーク210-aの対応する素子信号ポート245に接続された第1のポート248(例えば、第1のポート248-a及び第1のポート248-b)及び対応するアンテナ素子220(又は、場合によっては、複数のアンテナ素子220)に接続された第2のポート249(例えば、第2のポート249-a及び第2のポート249-b)を含むことができる。各制御回路215は、第2のルーティング回路250(例えば、ダイプレクサ又は他のマルチプレクサ、若しくは他の種類の信号ルーティング回路)を含むことができ、この第2のルーティング回路250は、制御回路215の第1のポート248と第2のポート249との間の素子信号経路251(例えば、素子信号経路251-a及び素子信号経路251-b)及び制御回路215の第1のポート248と調整回路265との間の制御信号経路252(例えば、制御信号経路252-a及び制御信号経路252-b)を確立する。
【0036】
図2に示すように、第2のルーティング回路250の各々は、受信した個々の出力信号を対応する個々の素子信号及び制御信号に多重分離する(例えば、周波数多重分離を介して)ダイプレクサである。信号を多重化する第1のルーティング回路205-aを参照して対応して説明されるように、第2のルーティング回路250は、信号を多重分離するために、類似の構成要素を使用して、類似の逆動作を実行することができる。例えば、第2のルーティング回路250-aは、それぞれ、素子信号及び制御信号のための第1の帯域通過フィルタ235-c及び第2の帯域通過フィルタ235-dを含むことができる。すなわち、第1の帯域通過フィルタ235-cは、第1の周波数範囲の信号が通過することを可能にし、この第1の周波数範囲は、少なくとも素子信号(例えば、変調送信ビーム信号)の周波数範囲に対応する。ftxに等しい中心周波数を有するとして示されているが、第1の周波数範囲が(例えば、制御信号231-aを除外して)素子信号の通過を可能にする限り、第1の帯域通過フィルタ235-cの中心周波数は、素子信号のキャリア周波数ftxと同じでなくてもよい。第2の帯域通過フィルタ235-dは、第2の周波数範囲内の信号が通過することを可能にし、第2の周波数範囲は、少なくとも制御信号231-a(例えば、変調制御信号)の周波数範囲に対応する。fに等しい中心周波数を有するとして示されているが、第2の周波数範囲が(例えば、素子信号を除外して)制御信号231-aの通過を可能にする限り、第2の帯域通過フィルタ235-dの中心周波数は、制御信号のキャリア周波数fと同じでなくてもよい。同様に、第2のルーティング回路250-bは、それぞれ素子信号及び制御信号のための第1の帯域通過フィルタ235-e及び第2の帯域通過フィルタ235-fを含むことができる。第1のルーティング回路205を参照して上述したように、他のPCBトレース、高域及び低域通過フィルタを含む構成要素、コンデンサ、インダクタなどの使用を含めて、他の潜在的な実現形態を使用してもよい。
【0037】
第1の制御回路215-aでは、制御信号経路252-aは、復調器255-a及びアドレス復号器260-aに制御信号を提供することができる。復調器255-aは、制御信号経路252-aで伝達される制御信号を復調して制御情報を得ることができる。制御情報は、ビーム形成ネットワーク210-aによって制御回路215の各々に分配される、制御回路215の各々に対するコマンドを含むことができる。種々異なる制御回路215に対するコマンドを、制御情報内で連続的に送信してもよい。すなわち、それ自体の制御データを受信することに加えて、制御回路215-aは、他の制御回路215の各々に対する(例えば、制御回路215-bに対する)制御情報を受信及び復調してもよい。制御情報は、対応する制御情報が意図されている特定の制御回路215のアドレスを識別するアドレス情報を含んでもよい(例えば、ヘッダ内に)。アドレス復号器260-aは、制御回路215-aの既知のアドレス(以下で更に論じられる)を制御データ226-aのアドレス情報と比較して、特定の制御回路215-aを意図する制御情報を識別し、特定された制御情報を信号経路253-aを介して対応する調整回路265-aに提供することができる。第2の制御回路215-bは、第1の制御回路215-aと同様に動作することができ、第2の制御回路215-bは同様に、復調器255-b、アドレス復号器260-b、及び調整回路265-bを含む(例えば、識別された制御情報を信号経路253-bを介して調整回路265-bに同様に提供するために)。
【0038】
調整回路265の各々(例えば、調整回路265-a及び調整回路265-b)は、1つ以上の回路要素(例えば、1つ以上の位相シフタ270、1つ以上の増幅器275など)を含むことにより、識別された制御情報(例えば、ビーム係数など)に基づいて、対応する素子信号に対して振幅及び/又は位相の適切な調整を提供することができる。図2は、調整回路265-aの詳細を示す。図示の例では、調整回路265-aは、制御情報によって指示されるように対応する素子信号に位相シフトを適用する位相シフタ270-aを含む。図示の実施例では、調整回路265-aは、調整された素子信号を形成するために、制御情報によって指示されるように位相シフトされた位相シフタからの信号を増幅する増幅器275-aを更に含む。調整された素子信号は、制御回路215の第2のポート249を介して、送信のために対応するアンテナ素子220に提供することができる。調整回路265-aは、同様に動作して、素子信号を調整して第2のアンテナ素子220-bに提供することができる。調整された素子信号をフェーズアレイアンテナのアンテナ素子220の各々により送信することによって、所望の走査角方向(例えば、標的衛星の方向、又は他の受信デバイスの方向)に送信される送信ビームが共に形成される。
【0039】
アドレスを割り当てるための様々な技法、及び制御回路215の各々のアドレス復号器260が、対応して割り当てられたアドレスを決定することができる技法について説明する。一例示的実現形態では、制御回路215の各々は、アンテナアレイにわたって同一であってもよい。したがって、特定の制御回路215は、予め設定された情報若しくは他の区別可能な情報又は特徴を有さなくてもよい場合があるが、これらの情報又は特徴は、アンテナアレイPCB上でそれらのそれぞれの場所に設置する前に、対応して割り当てられたアドレスを決定するために使用することができる。この場合、アレイアンテナPCB上の様々な場所は、アレイにわたるアドレス指定スキームを示す異なる特徴を含むことができる。これらの特徴は、対応する制御回路215に割り当てられたアドレスを決定するためにアドレス復号器260によって使用してもよい。
【0040】
一例示的実現形態では、制御回路215のアドレスは、プルアップ/ダウン又はオープン/ショートアドレスストラッピングを使用して設定することができる。例えば、特定の制御回路215は、複数のアドレスピンを含んでもよく、アンテナアレイPCB上の特定の場所に配置してもよい。場合によっては、アドレスピンのデフォルト構成をプルアップしてもよく(例えば、制御回路215の内部抵抗器を介して)、PCB上の場所に従って、接地ビアの一意の組み合わせが、特定のアドレスピンをプルダウンしてもよい。例えば、第1のセットのアドレスピンが、制御回路215の行アドレスに対応してもよく、第2のセットのピンが、制御回路215の列アドレスに対応してもよい。そして、結果として得られるプルアップ及びプルダウンされたアドレスピンのシーケンスが、その制御回路215に対する一意のアドレスを示すことができる。
【0041】
追加的に又は代替的に、各制御回路215は、例えばアナログデジタル変換器(ADC)を使用してアドレス電圧レベルを読み取ることによって、それ自体のアドレスを識別することができる。例えば、図8を参照して更に説明されるように、行及び列の各々の分圧器素子(例えば、抵抗分圧器)は、供給電圧を分圧することができ、対応する行及び列電圧を、制御回路215においてADCによって読み取ることができる。アンテナアレイPCBは、供給電圧を、特定の行を示す対応する行電圧に分圧する行ごとの1つの分圧器素子と、供給電圧を、特定の列を示す対応する列電圧に分圧する列ごとの1つの分圧器素子とを含んでもよい。次いで、各制御回路215は、対応する行電圧を受け取る行アドレスピンと、対応する列電圧を受け取る列アドレスピンとを含むことができる。次いで、ADCを使用して、行及び列アドレスピンにおいてこれらの電圧を読み取ることができる。そうすることにより、いくつかの他の技法と比較して使用される抵抗器の数を低減することができる。加えて、この説明された実現形態は、プルアップ/ダウン又はオープン/ショートアドレスストラッピングを使用する場合と比較して、比較的少数のピンを使用することができ、それは各制御回路215に対するPCB面積又はコストを低減することができる。
【0042】
場合によっては、制御回路が制御情報(例えば、振幅及び/又は位相の特定のビーム調整係数)を誤って復号されたアドレスに適用するように、制御回路215のアドレスが選択されてしまう(例えば、連続する行及び列のアドレスを使用して)ことがあるが、制御回路によって適用されるこの制御情報は、隣接する制御回路215のうちの1つを意図していることが多い。場合によっては、行及び列アドレス指定は、連続する行又は列のアドレスが、2ビット以上は異ならないこと(例えば、ハミング距離が1つ(1)に等しい)、及び連続しない任意の2つの行又は列が、異なるビットを2つ以上は有しないこと(例えば、ハミング距離が1つ(1)より大きい)を保証してもよい。この場合、制御回路215が、単一ビットエラーの結果としてアドレスを誤って復号する場合、制御回路215は、行及び/又は列ごとに、最も近い隣接する制御回路215に対して意図された調整(例えば、位相及び/又は振幅の)を適用し、これは、一部のアンテナアレイのRFビーム形成性能を実質的に劣化させない。例えばこのことは、アンテナアレイに誤ったアドレスが使用されなかった場合には、2倍の大きさのアンテナアレイのアンテナ素子のグループと同様の性能になることがある。場合によっては、制御データのアドレスは、誤ったアドレス復号の確率を低減するために、1つ以上のエラー訂正ビットにより符号化してもよい。例えば、制御データのアドレスは、ハミング符号、リードソロモン符号、などのような線形ブロック符号に従って送信してもよい。
【0043】
場合によっては、制御回路215及びコントローラ225-aは双方向通信をサポートしてもよい。例えば、制御回路215の各々はまた、変調器(図示せず)を有してもよく、それは復調器255の一部、又は別個の構成要素であってもよい。コントローラ225-aは、制御回路215のうちの1つから構成値(例えば、制御情報)を読み取るためのコマンドを送信してもよく、次いで、アドレス指定された制御回路215は、応答(例えば、構成値)により信号を変調し、変調された信号をそれぞれの素子信号ポート245において個々の出力信号246上に多重化することによって反応することができる。変調された信号は、次いで、ビーム形成ネットワーク210-a及び第1のルーティング回路205-aを介してコントローラ225-aに伝達することができ、このコントローラはその後、信号を復調し、応答を復号することができる。したがって双方向通信は、制御回路215の構成をチェックすること、若しくは、試験又はデバッグの目的のために制御回路215から他の状態情報を読み取ることを可能にする。
【0044】
場合によっては、復調器255は、搬送波(例えば、制御信号のための搬送波)を復元して、別の制御回路215を同期させるためのクロック信号を形成してもよい。例えば、復調器255-aは、搬送波復元ループ又は他の搬送波復元技法を使用することができる(例えば、制御信号搬送波と局部発振器との間の周波数差及び/又は位相差を補償する)。復調器255-aは、次いで、復元された波形に基づいてクロック信号をセットすることができる。このようにして、クロック信号は、フェーズドアレイアンテナの制御回路215の各々の間で同期化することができる。したがって制御信号はコヒーレント変調を使用することができ、復調器255において同期したクロック信号は、コヒーレント復調を使用して制御信号231-aを復調することができる。
【0045】
図3は、本開示の態様による、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャのビーム形成ネットワーク305の例示的な図300を示す。図3に示すビーム形成ネットワークは、少なくとも図2及び図4図7を参照して説明されるビーム形成ネットワークの一例である。
【0046】
ビーム形成ネットワーク305は、図2を参照して説明したような入力共通信号ポートの例であり得る共通ポート310を示す。ビーム形成ネットワーク305はまた、「素子ポート1」~「素子ポートN」とラベル付けされた複数の素子ポート315を示す。これら素子ポートは、図2を参照して説明したように、複数の制御回路1~Nに対応する。素子ポート315は、図2を参照して説明されたような素子信号ポートの一例である。
【0047】
ビーム形成ネットワーク305の例示的な図300は、コンバイナ/デバイダの3つの段(例えば、PCB内に形成されたPCBコンバイナ/デバイダ)を示す。すなわち、共通ポート310で受信した入力信号は、まず2つの信号に分割することができ、次いで、各信号は、図示された8つの素子ポート315で出力信号を形成するように更に2回連続して分割することができる。反対に、8つの素子ポート315で受信した信号は、ビーム形成ネットワーク305によって組み合わされて、共通ポート310において合成信号を形成することができる。場合によっては、これらのコンバイナ/デバイダは、均等なやり方及び/又は不均等なやり方、同相及び/又は位相外れ、若しくは任意の組み合わせであってもよい。しかしながら、これはPCBコンバイナ/デバイダの一例のネットワークにすぎず、ビーム形成ネットワーク305は、様々な構成において、より少数の、又はより多数のそのようなコンバイナ/デバイダを含んでもよいことを理解されたい。
【0048】
図4は、本開示の態様による、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャの例示的な図400を示す。フェーズドアレイアンテナは、図1を参照して説明したようなアンテナアレイ140のうちの1つ以上の例であり、図2を参照して説明したような、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャである。図4のフェーズドアレイアンテナは、図1を参照して説明したような、衛星105に通信信号を送信するための送信フェーズドアレイアンテナの例であり、図2を参照して説明したような、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャである。
【0049】
図4のフェーズドアレイアンテナのための回路アーキテクチャは、本明細書に別途記載のない限り、図2を参照して説明したような類似又は対応する構成要素と実質的に同じ方式で動作することができる。図4では、フェーズドアレイアンテナは、ビーム信号、素子信号、及び制御信号を伝達することに加えて、電源405を含む。この電源405は、電力信号408を発生し、この電力信号408は、信号経路上で伝達され、ビーム信号、素子信号、及び制御信号と多重化することができる。
【0050】
図4に示すように、回路アーキテクチャは、第1のルーティング回路205-b、ビーム形成ネットワーク210-b、複数の制御回路215、及び複数のアンテナ素子220を含む。図4の例では、第1の制御回路215-cと、対応する第1のアンテナ素子220-cと、第2の制御回路215-dと、対応する第2のアンテナ素子220-dとが示されている。しかしながら、アンテナ素子220のための任意の数Nの制御回路215を同様に実装することができることを理解されたい。図4に図解するように、制御回路215とアンテナ素子220との間には1対1の対応がある(すなわち、各アンテナ素子220には異なる制御回路215が接続されている)。しかしながら、場合によっては、1つの制御回路215を、複数のアンテナ素子220の間で共有してもよい(すなわち、1つの制御回路215が、複数のアンテナ素子220に接続され、それぞれの信号を複数のアンテナ素子220に提供してもよい)ことを理解されたい。構成要素の各々は、信号経路を介して接続することができる。
【0051】
第1のルーティング回路205-b(例えば、ダイプレクサ又は他のマルチプレクサ、若しくは他の種類の信号ルーティング回路)は、例えば送信プロセッサから送信ビーム信号236-bを受信して、フェーズドアレイアンテナによって送信ビームとして送信することができる。第1のルーティング回路205-bは、制御データ226-bをコントローラ225-aから更に受信することができる。制御データ226-bは、送信ビームを所望の走査角方向に送信するために、それぞれの制御回路によって適用されるN個の制御回路215のうちの1つ以上に対して調整値(例えば、振幅及び/又は位相)を指示することができる。
【0052】
フェーズドアレイアンテナは、制御データ226-bを変調して制御信号231-bを形成する変調器230-bを含むことができる。変調器230-bは、コントローラ225-bから受信した制御データ226-bを変調し、変調制御信号231-bを第1のルーティング回路205-bに引き渡すことができる。場合によっては、変調器230-bは、コントローラ225-bの内部に又はその構成要素として実装してもよい。第1のルーティング回路205-bのマルチプレクサは、送信ビーム信号236-b(中心周波数ftxを有する)及び制御信号231-b(中心周波数fを有する)を多重化して、送信ビーム信号236-b及び制御信号231-bを含む複合多重化信号241-bを形成することができる。図4では、第1のルーティング回路205-bは、各入力について1つずつ、計2つの帯域通過フィルタ235-1を含むダイプレクサである。第1の帯域通過フィルタ235-gは、第1の周波数範囲の信号が通過することを可能にし、第1の周波数範囲は、少なくとも送信ビーム信号236-b(例えば、変調送信ビーム信号)の周波数範囲に対応する。ftxに等しい中心周波数を有するとして示されているが、第1の周波数範囲が送信ビーム信号236-bの通過を(例えば、制御信号231-bを除外して)可能にする限り、第1の帯域通過フィルタ235-gの中心周波数は、送信ビーム信号のキャリア周波数ftxと同じでなくてもよい。第2の帯域通過フィルタ235-hは、第2の周波数範囲内の信号が通過することを可能にし、第2の周波数範囲は、少なくとも制御信号231-b(例えば、変調制御信号)の周波数範囲に対応する。fに等しい中心周波数を有するとして示されているが、第2の周波数範囲が制御信号231-bの通過を(例えば、送信ビーム信号236-bを除外して)可能にする限り、第2の帯域通過フィルタ235-hの中心周波数は、制御信号のキャリア周波数fと同じでなくてもよい。上述のように、第1のルーティング回路205-bとして別の可能な実現形態を使用してもよい。
【0053】
第1のルーティング回路205-bは、電源405から電力信号408を更に受信することができる。図4では、電源405(例えば、DC電源、又は他の電圧源若しくは電流源)は、電力信号408(例えば、DC信号)を発生する。電力信号408は、第1のルーティング回路205-b内のインダクタ410-a(又は別の種類のチョーク素子)を通過することができる。インダクタは、制御信号231-b及び送信ビーム信号236-bが信号経路を通って電源405に流れるのを阻止する。第1のルーティング回路205-bは、ビーム信号236-b及び制御信号231-bの信号経路から電力信号408を阻止する阻止コンデンサ415-aを更に含むことができる。第1のルーティング回路205-bは、送信ビーム信号236-b、制御信号231-b、及び電力信号408の各々を含む複合多重化信号241-bを出力する。
【0054】
第1のルーティング回路205-bは、制御信号231-bと多重化された送信ビーム信号236-bを含む複合多重化信号241-bを、ビーム形成ネットワーク210-bの共通信号ポート240-bに提供することができる。ビーム形成ネットワーク210-bは、複合多重化信号241-bを分割して、ビーム形成ネットワーク210-bの対応する出力素子信号ポート245(例えば、素子信号ポート245-c及び素子信号ポート245-d)において個々の出力信号246(例えば、出力信号246-c及び出力信号246-d)を形成する、1つ以上のPCBデバイダの段を含むことができる。すなわち、ビーム形成ネットワーク210-bは、複合多重化信号241-bを個々の出力信号246に分割することができ、各個々の出力信号246は、それぞれ、送信ビーム信号236-b及び制御信号231-bのコピーである個々の素子信号及び個々の制御信号を含む。1つ以上のPCBデバイダの段は、フェーズドアレイアンテナの全体ビーム形成の一部として、個々の出力信号246の個々の素子信号間に相対的な振幅及び/又は位相シフトを提供することができる。そのような場合、個々の出力信号246の個々の制御信号はまた、1つ以上のPCBデバイダの段により相対的な振幅及び/又は位相シフトを受ける。しかしながら、振幅及び/又は位相シフトにおけるそのような相対的シフトは、個々の制御信号の搬送波に適用されるため、制御データ226-bには影響を与えない。加えて、必要とされる精度が個々の素子信号に対して必要とされるものよりも著しく低くなり得るため、これらのシフトは、同期のための個々の制御信号の搬送波の復元に影響しない可能性がある(以下で論じられる)。制御データ226-bは、制御回路215の各々に関する情報(例えば、シリアルデータ)を含んでもよく、ビーム形成ネットワーク210-bは、共通信号ポート240-bで受信した制御データ226-bを、アンテナ素子220の各々に対応する素子信号ポート245の各々にコピーすることができる(例えば、制御データ226-bを伝達する制御信号231-aを含む複合多重化信号241-bを分割することによって)。それぞれの素子信号ポート245における各個々の出力信号246に含まれる個々の素子信号は、その後、対応する素子信号ポート245に接続された対応する制御回路215によって調整され、対応するアンテナ素子220によって送信することができる。
【0055】
素子信号ポート245における個々の出力信号246の各々は、個々の制御信号(例えば、制御信号231-bのコピー)と多重化された個々の素子信号(例えば、送信ビーム信号236-bのコピー)、及び電力信号408を含むことができる。制御信号を、対応する制御回路215によって使用して、対応する素子信号に適切な調整(例えば、振幅及び/又は位相)を適用することができる。すなわち、ビーム形成ネットワーク210-bは、複合多重化信号241-bを分割して、各素子信号ポート245において個々の制御信号及び個々の素子信号を形成することができる。個々の制御信号を、対応する素子信号により多重化して、多重化された個々の出力信号246を形成することができる。ビーム信号及び制御信号を多重化することによって、ビーム形成ネットワーク210-bを使用して、素子信号及び各制御回路215の対応する素子信号のための制御データを指示する制御信号を形成し、分配することができる。
【0056】
各制御回路215は、ビーム形成ネットワーク210-bの対応する素子信号ポート245に接続された第1のポート248(例えば、第1のポート248-c及び第1のポート248-d)及び対応するアンテナ素子220に接続された第2のポート249(例えば、第2のポート249-c及び第2のポート249-d)を含むことができる。各制御回路215は、第2のルーティング回路250(例えば、ダイプレクサ又は他のマルチプレクサ、若しくは他の種類の信号ルーティング回路)を含むことができ、第2のルーティング回路250は、制御回路215の第1のポート248と第2のポート249との間の素子信号経路251(例えば、素子信号経路251-c及び素子信号経路251-d)及び制御回路215の第1のポート248と調整回路265との間の制御信号経路252(例えば、制御信号経路252-c及び制御信号経路252-d)を確立する。
【0057】
図4に示すように、第2のルーティング回路250の各々は、受信した個々の出力信号を対応する個々の素子及び制御信号に多重分離するダイプレクサである。信号を多重化する第1のルーティング回路205-bを参照して対応して説明したように、第2のルーティング回路250は、信号を多重分離するために、類似の構成要素を使用して、類似の逆動作を実行することができる。例えば、第2のルーティング回路250-cは、それぞれ、素子信号及び制御信号のための第1の帯域通過フィルタ235-i及び第2の帯域通過フィルタ235-jを含むことができる。同様に、第2のルーティング回路250-dは、それぞれ、素子信号及び制御信号のための第1の帯域通過フィルタ235-k及び第2の帯域通過フィルタ235-lを含むことができる。ftxに等しい中心周波数を有するとして示されているが、素子信号が通過することを(例えば、制御信号を除外して)可能にする限り、第1の帯域通過フィルタ235-i及び235-kの中心周波数は、送信ビーム信号のキャリア周波数ftxと同じでなくてもよい。同様に、第2の帯域通過フィルタ235-j及び235-lの中心周波数は、fに等しいものとして示されるが、制御信号が通過することを(例えば、素子信号を除外して)可能にする限り、制御信号のキャリア周波数fと同じでなくてもよい。上述のように、例えば、他のPCBトレース、高域及び低域通過フィルタを含む構成要素、コンデンサ、インダクタなどの使用を含めて、第2のルーティング回路250のために別の可能な実現形態を使用してもよい。
【0058】
場合によっては、制御回路215の各々は、制御回路215及び他の構成要素に電力を供給するための電力信号を得るために、多重化された電力信号を分離するデカプラを含むことができる。各々の制御回路215内の第2のルーティング回路250は、インダクタ410(例えば、インダクタ410-b及びインダクタ410-c)、又は電力信号が通過することを可能にする別の種類のチョーク素子を含んでもよく、電力信号は、次に制御回路215の様々な他の構成要素に提供され、他の構成要素に電力を提供する。第2のルーティング回路250は、信号経路からそれぞれのアンテナ素子220への電力信号408を阻止する阻止コンデンサ415(例えば、コンデンサ415-b及びコンデンサ415-c)を更に含むことができる。
【0059】
例えば、第1の制御回路215-cでは、制御信号経路252-cは、復調器255-c及びアドレス復号器260-cに制御信号を提供することができる。復調器255-cは、制御信号経路252-c上で伝達される制御信号を復調して制御情報を得ることができる。制御情報は、ビーム形成ネットワーク210-bによって制御回路215の各々に分配される、制御回路215の各々に対するコマンドを含むことができる。異なる制御回路215に対するコマンドは、制御情報において連続的に送信することができる。すなわち、制御回路215-cは、それ自体の制御データを受信することに加えて、他の制御回路215の各々に対する(例えば、制御回路215-dに対する)制御情報を受信及び復調してもよい。制御情報は、対応する制御情報が意図されている特定の制御回路215のアドレスを識別するアドレス情報を含んでもよい(例えば、ヘッダ内に)。アドレス復号器260-cは、制御回路215-cの既知のアドレス(以下で更に論じられる)を制御データ226-bのアドレス情報と比較して、特定の制御回路215-cを意図する制御情報を識別し、特定された制御情報を信号経路253-cを介して対応する調整回路265-cに提供することができる。第2の制御回路215-dは、第1の制御回路215-cと同様に動作することができ、第2の制御回路215-bは同様に、復調器255-d、アドレス復号器260-d、及び調整回路265-dを含む(例えば、識別された制御情報を信号経路253-dを介して調整回路265-dに同様に提供するために)。
【0060】
調整回路265の各々(例えば、調整回路265-c及び調整回路265-d)は、1つ以上の回路要素(例えば、1つ以上の位相シフタ270、1つ以上の増幅器275など)を含むことにより、識別された制御情報に基づいて、対応する素子信号に対して振幅及び/又は位相の適切な調整を提供することができる。図4は、調整回路265-cの詳細図を示す。図示の例では、調整回路265-cは、制御情報によって指示される位相シフトを対応する素子信号に適用する位相シフタ270-bを含む。図示の実施例では、調整回路265-cは、制御情報によって指示されるように位相シフトされた、位相シフタからの信号を増幅する増幅器275-bを更に含み、調整された素子信号を形成する。調整された素子信号は、制御回路215の第2のポート249を介して、送信のために対応するアンテナ素子220に提供することができる。フェーズアレイアンテナのアンテナ素子220の各々による、調整された素子信号の送信は、共に、所望の走査角方向に送信される送信ビームを形成する。
【0061】
場合によっては、制御回路215の各々は、複数のビーム形成レジスタのセットを含むことができる。いくつかの実施例では、制御回路215の各々は、二重バッファビーム形成レジスタを含み、それにより、現在の状態で動作している間に、次のビームポインティング状態のために、次の調整値(すなわち、送信ビームのための次のビーム方向)をロードすることができる。これは、例えば、フェーズドアレイアンテナが、2つの異なる受信デバイス間でポインティング方向を切り替える(例えば、衛星ハンドオーバのために)状況において、フェーズドアレイアンテナがポインティング方向を比較的迅速に変更することを可能にする。更に、これは、ビーム形成係数が周波数に依存しており、例えば、2つの異なる周波数帯域間を交互に切り替える間に、周波数ホッピングがビームの方向を維持するために実行される場合に、フェーズドアレイアンテナが受信デバイスの追跡方向を維持するのを容易する。いくつかの実施例では、制御回路の各々は、ミスポインティング補正(例えば、ステップトラック、円錐走査、モノパルス追跡を介して)に使用されるビームの係数を記憶するために複数のレジスタのセットを含むことができる。例えば、制御回路の各々は、現在のビームに対する円錐走査動作に関連付けられた係数のセットを記憶してもよい。円錐走査は、異なる角度オフセットに従ってアンテナビームを標的方向から意図的に離れるように向け、信号属性を測定し(例えば、送信された信号の信号強度を示す受信信号又はフィードバックを介して)、改善された信号属性が走査オフセットで発見された場合には、アンテナビームを新しい標的方向に調整することができる。各ミスポインティング補正動作が実行され、円錐走査の結果として標的に向けられた新たなビームが選択されると、係数のセットは、次の円錐走査操作のための新たな係数のセットにより更新することができる。場合によっては、アドレスヘッダの一部(例えば、10ビット)を予約しておき、「送信有効化/無効化」及び/又は「受信有効化/無効化」などのグローバルコマンド、特定のレジスタ(例えば、二重バッファビーム形成レジスタのためのレジスタA及びB)からのバッファされたビームの重み付けを有効にするコマンド、及びフェーズドアレイアンテナのための他のコマンドとして使用してもよい。
【0062】
場合によっては、制御回路215及びコントローラ225-bは双方向通信をサポートしてもよい。例えば、制御回路215の各々はまた、変調器(図示せず)を有してもよく、それは変調器の一部、又は別個の構成要素であってもよい。コントローラ225-bは、構成値(例えば、制御情報)を制御回路215のうちの1つから読み取るためのコマンドを送信することができ、次いで、アドレス指定された制御回路215は、応答(例えば、構成値)により信号を変調し、変調された信号をそれぞれの素子信号ポート245において個々の出力信号246に多重化することによって反応することができる。変調された信号は、次いで、ビーム形成ネットワーク210-b及び第1のルーティング回路205-bを介してコントローラ225-bに伝達することができ、コントローラはその後、信号を復調し、応答を復号することができる。このため、双方向通信は、制御回路215の構成をチェックすること、若しくは、試験又はデバッグの目的のために制御回路215から他の状態情報を読み取ることを可能にする。
【0063】
場合によっては、復調器255は、搬送波(例えば、制御信号のための搬送波)を復元して、異なる制御回路215を同期させるためのクロック信号を形成してもよい。例えば、復調器255-eは、搬送波復元ループ又は他の搬送波復元技法を使用することができる(例えば、制御信号搬送波と局部発振器との間の周波数差及び/又は位相差を補償する)。復調器255-eは、次いで、復元された波形に基づいてクロック信号をセットすることができる。このようにして、クロック信号を、フェーズドアレイアンテナの制御回路215の各々の間で同期化することができる。したがって制御信号はコヒーレント変調を使用することができ、復調器255における同期したクロック信号は、コヒーレント復調を使用して制御信号231-bを復調することができる。
【0064】
図5は、本開示の態様による、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御信号及び素子信号のための回路アーキテクチャの例示的な図500を示す。このフェーズドアレイアンテナは、図1を参照して説明したようなアンテナアレイ140の1つ以上の例である。図5のフェーズドアレイアンテナは、図1を参照して説明したように、衛星105から通信信号を受信するための受信フェーズドアレイアンテナの一例である。
【0065】
図5のフェーズドアレイアンテナのための回路アーキテクチャは、本明細書に別途記載のない限り、図2図4を参照して説明したような類似又は対応する構成要素と実質的に類似の方式で動作することができる。図示されていないが、場合によっては、図5のフェーズドアレイアンテナは、例えば、図4を参照して同様に説明されるような、電力信号を形成及び引き渡してもよい。図5のフェーズドアレイアンテナは、図2及び図4において説明された送信フェーズドアレイアンテナではなく、受信フェーズドアレイアンテナの一例である。受信フェーズドアレイアンテナでは、素子信号は、アンテナ素子220で受信され、送信信号とは反対方向の信号経路を通って伝搬する。すなわち、アンテナ素子220は、対応する受信素子信号266(例えば、受信素子信号266-a及び受信素子信号266-b)を送信デバイス(例えば、衛星)から受信することができ、これは、対応する制御回路215を通じてビーム形成ネットワーク210-cに提供される。ビーム形成ネットワーク210-cは、これらの素子信号を組み合わせて、受信ビーム信号を形成することができ、これは、第1のルーティング回路205-cを通して、フェーズアレイアンテナが搭載された航空機(又は他の車両)のプロセッサ及び他のデバイスに引き渡される。
【0066】
図5に示すように、回路アーキテクチャは、第1のルーティング回路205-c、ビーム形成ネットワーク210-c、複数の制御回路215、及び複数のアンテナ素子220を含む。図5の例では、第1の制御回路215-eと、対応する第1のアンテナ素子220-eと、第2の制御回路215-fと、対応する第2のアンテナ素子220-fとが示されている。しかしながら、アンテナ素子220のために任意の数Nの制御回路215を同様に実装することができることを理解されたい。図5に図解するように、制御回路215とアンテナ素子220との間には1対1の対応がある(すなわち、各アンテナ素子220には異なる制御回路215が接続されている)。しかしながら、場合によっては、1つの制御回路215を、複数のアンテナ素子220の間で共有してもよい(すなわち、1つの制御回路215が、複数のアンテナ素子220に接続され、複数のアンテナ素子からそれぞれの信号を受信することができる)ことを理解されたい。構成要素の各々は、信号経路を介して接続される。
【0067】
本明細書に記載されるように、制御回路215、ビーム形成ネットワーク210-c、第1のルーティング回路205-c、コントローラ225-a、並びに他の構成要素及び信号経路の各々は双方向通信をサポートすることができる。例えば、上述のように、制御回路215の各々はまた、変調器(図示せず)を含んでもよく、変調器は、復調器255の一部、又は別個の構成要素であってもよい。コントローラ225-cは、構値(例えば、制御情報)を制御回路215のうちの1つから読み取るためのコマンドを送信してもよく、次いで、アドレス指定された制御回路215は、応答(例えば、構成値)により信号を変調し、変調された信号をビーム形成ネットワーク510-cのそれぞれの素子信号ポート245において個々の出力信号に多重化することによって反応することができる。変調された信号は、次いで、ビーム形成ネットワーク210-c及び第1のルーティング回路205-cを介してコントローラ225-aに伝達することができ、コントローラはその後、信号を復調し、応答を復号することができる。したがって双方向通信は、制御回路215の構成をチェックすること、若しくは、試験又はデバッグの目的のために制御回路215から他の状態情報を読み取ることを可能にする。加えて、受信フェーズドアレイアンテナの場合、双方向通信は、一方向に制御信号を伝達し、反対方向に受信素子信号を提供する信号経路をサポートすることができる。
【0068】
受信フェーズドアレイアンテナでは、アンテナ素子220は、送信デバイス(例えば、衛星)からそれぞれの受信素子信号266を受信し、受信素子信号を制御回路215に提供することができる。上述したように、各制御回路215は、ビーム形成ネットワーク210-cの対応する素子信号ポート245に接続された第1のポート248(例えば、第1のポート248-e及び第1のポート248-f)と、対応するアンテナ素子220に接続された第2のポート249(例えば、第2のポート249-e及び第2のポート249-f)を含むことができる。各制御回路215は、第2のルーティング回路250(例えば、ダイプレクサ又は他のマルチプレクサ、若しくは他の種類の信号ルーティング回路)を含むことができ、第2のルーティング回路250は、制御回路215の第1のポート248と第2のポート249との間の素子信号経路251(例えば、素子信号経路251-e及び素子信号経路251-f)及び制御回路215の第1のポート248と調整回路265との間の制御信号経路252(例えば、制御信号経路252-e及び制御信号経路252-f)を確立する。
【0069】
以下で説明するように、調整回路265において受信素子信号に調整を適用して、調整された素子信号を形成することができる。各第2のルーティング回路250は、対応する調整回路265から対応する第1のポート248に、対応する調整された素子信号(中心周波数frxを有する)を提供し、一方また、対応する第1のポート248から対応する制御信号経路252に、制御信号(中心周波数fを有する)を提供することができる。したがって、対応する第1のポート248とビーム形成ネットワーク210-cの対応する素子信号ポート245との間の信号経路は、調整された素子信号及び制御信号を含む多重化された信号を含む。図5において、第2のルーティング回路250の各々は、信号の各々について1つずつ、計2つの帯域通過フィルタ235を含むダイプレクサである。例えば、第2のルーティング回路250-eにおいて、第1の帯域通過フィルタ235-oは、第1の周波数範囲の信号が通過することを可能にし、第1の周波数範囲は、少なくとも受信素子信号の周波数範囲に対応する。例えば、受信素子信号は、受信素子信号のキャリア周波数frxで変調された変調信号を含む変調受信信号である。frxに等しい中心周波数を有するとして示されているが、第1の周波数範囲が受信素子信号の通過を(例えば、制御信号を除外して)可能にする限り、第1の帯域通過フィルタ235-oの中心周波数は、受信素子信号のキャリア周波数frxと同じでなくてもよい。第2の帯域通過フィルタ235-pは、第2の周波数範囲が通過することを可能にし、第2の周波数範囲は、少なくとも制御信号(例えば、変調制御信号)の周波数範囲に対応する。fに等しい中心周波数を有するとして示されているが、第2の周波数範囲が制御信号の通過を(例えば、受信素子信号を除外して)可能にする限り、第2の帯域通過フィルタ235-pの中心周波数は、制御信号のキャリア周波数fと同じでなくてもよい。同様に、第2のルーティング回路250-fは、それぞれ、素子信号及び制御信号のための第1の帯域通過フィルタ235-q及び第2の帯域通過フィルタ235-rを含むことができる。
【0070】
例えば、第1の制御回路215-eにおいて、制御信号経路252-eは、復調器255-e及びアドレス復号器260-eに制御信号を提供することができる。復調器255-eは、制御信号経路252-e上で伝達される制御信号を復調して制御情報を得ることができる。制御情報は、ビーム形成ネットワーク210-cによって制御回路215の各々にコピーされる、制御回路215の各々に対するコマンド(例えば、シリアルデータ)を含んでもよい。すなわち、制御回路215-eは、それ自体の制御データを受信することに加えて、他の制御回路215の各々について(例えば、制御回路215-fについて)の制御情報を受信及び復調してもよい。制御情報は、対応する制御情報が意図されている特定の制御回路215のアドレスを識別するアドレス情報を含んでもよい(例えば、ヘッダ内に)。アドレス復号器260-eは、制御回路215-eの既知のアドレス(以下で更に論じられる)を制御データ226-cのアドレス情報と比較して、特定の制御回路215-eを意図する制御情報を識別し、特定された制御情報を信号経路253-eを介して対応する調整回路265-eに提供することができる。第2の制御回路215-fは、第1の制御回路215-eと同様に動作することができ、第2の制御回路215-fは同様に、復調器255-f、アドレス復号器260-f、及び調整回路265-fを含む(例えば、識別された制御情報を信号経路253-fを介して調整回路265-fに同様に提供するために)。
【0071】
調整回路265の各々(例えば、調整回路265-e及び調整回路265-f)は、1つ以上の回路要素(例えば、1つ以上の位相シフタ270、1つ以上の増幅器275など)を含むことにより、識別された制御情報に基づいて、対応する個々の受信素子信号に対して振幅及び/又は位相の適切な調整を提供して、個々の調整された素子信号を形成することができる。図5は、調整回路265-eの詳細を示す。図示の例では、調整回路265-eは、位相シフタ270-cを含み、この位相シフタは、対応する受信素子信号に制御情報によって指示される位相シフトを適用する。図示の例では、調整回路265-eは、位相シフタが制御情報によって指示されるように位相シフトを適用する前に、最初に個々の受信素子信号を増幅する増幅器275-eを更に含む。調整は、調整された素子信号を形成するために受信素子信号266-aに適用することができる。調整された素子信号は、上述のように、第2のルーティング回路250-eに提供することができる。
【0072】
第2のルーティング回路250は、制御信号と双方向に多重化された調整された素子信号を、ビーム形成ネットワーク210-cの素子信号ポート245(この場合、素子信号に関しては入力ポートであり、制御信号に関しては出力ポート)に提供することができる。ビーム形成ネットワーク210-aは、1つ以上のPCBコンバイナ/デバイダの段を含むことができ、これは、共通信号ポート240-cに受信ビーム信号を提供するために個々の素子信号を組み合わせる。他方の方向では、第1のルーティング回路205-aが、ビーム形成ネットワーク210-cの共通信号ポート240-cに制御信号231-cを提供することができる。ビーム形成ネットワーク210-cは、共通信号ポート240-cで受信した制御データ226-cを含む制御信号231-cを、アンテナ素子220の各々に対応する素子信号ポート245の各々にコピーすることができる。ビーム形成ネットワーク210-cは、それに応じて、ビーム形成ネットワーク210-cの素子信号ポート245(例えば、素子信号ポート245-e及び素子信号ポート245-f)において、個々の組み合わされた(又は多重化された)信号247(例えば、合成信号247-a及び合成信号247-b)中に個々の制御信号を形成することができる。
【0073】
要するに、それぞれの素子信号ポート245における各双方向合成信号247は、制御回路215からビーム形成ネットワーク210-cへの入力としての個々の受信素子信号と、ビーム形成ネットワーク210-cから制御回路215への出力としての個々の制御信号(例えば、制御信号231-cのコピー)とを含むことができる。共通信号ポート240-cにおける双方向合成信号は、第1のルーティング回路205-cへのビーム形成ネットワーク210-cの出力としての複合受信ビーム信号と、ビーム形成ネットワーク210-cへの第1のルーティング回路205-cからの出力としての制御信号231-cのコピーとを含むことができる。
【0074】
第1のルーティング回路205-cは、ビーム形成ネットワーク210-cから受信ビーム信号を受信することができる。第1のルーティング回路205-aは、コントローラ225-cから制御データ226-cを更に受信することができる。制御データ226-aは、本明細書で説明されるように、所望で受信ビームを受信するために、調整回路265によって適用される調整値(例えば、振幅及び/又は位相)を指示することができる。
【0075】
フェーズドアレイアンテナは、制御データ226-cを変調して制御信号231-cを形成する変調器230-cを含むことができる。変調器230-cは、コントローラ225-cから受信した制御データ226-cを変調し、変調制御信号231-cを第1のルーティング回路205-cに引き渡すことができる。場合によっては、変調器230-cは、コントローラ225-cに、又はその構成要素として実装してもよい。第1のルーティング回路205-cのマルチプレクサは、ビーム形成ネットワーク210-cから受信ビーム信号を受信し、変調器230-cから制御信号231-c(中心周波数fcを有する)を受信することができる。したがって、第1のルーティング回路205-cとビーム形成ネットワーク210-cとの間の信号経路は、受信ビーム信号及び制御信号231-cを含む複合多重化信号241-cを含む。次いで、第1のルーティング回路205-cは、フェーズドアレイアンテナによって受信された情報を処理するために、例えば、受信プロセッサに受信ビーム信号237-aを送信する。
【0076】
図5に示すように、第1のルーティング回路205-cは、2つの帯域通過フィルタ235を含むダイプレクサとして実現される。第1の帯域通過フィルタ235-mは、第1の周波数範囲の信号が通過することを可能にし、第1の周波数範囲は、少なくとも受信ビーム信号の周波数範囲に対応する。例えば、受信ビーム信号は、受信ビーム信号のキャリア周波数frxで変調された変調信号を含む変調受信ビーム信号である。frxに等しい中心周波数を有するとして示されているが、第1の周波数範囲が受信ビーム信号の通過を(例えば、制御信号を除外して)可能にする限り、第1の帯域通過フィルタ235-mの中心周波数は、受信ビーム信号のキャリア周波数frxと同じでなくてもよい。第2の帯域通過フィルタ235-nは、第2の周波数範囲の信号が通過することを可能にし、第2の周波数範囲は、少なくとも制御信号231-c(例えば、変調制御信号)の周波数範囲に対応する。fに等しい中心周波数を有するとして示されているが、第2の周波数範囲が制御信号の通過を(例えば、受信ビーム信号を除外して)可能にする限り、第2の帯域通過フィルタ235-nの中心周波数は、制御信号のキャリア周波数fと同じでなくてもよい。上述のように、第1のルーティング回路205-cとして別の可能な実現形態を使用してもよい。
【0077】
図6は、本開示の態様による、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャの例示的な図600を示す。フェーズドアレイアンテナは、図1を参照して説明したように、アンテナアレイ140のうちの1つ以上の例である。図6のフェーズドアレイアンテナは、図1を参照して説明したように、衛星105に通信信号を送信し、衛星105から通信信号を受信することができる送信/受信フェーズドアレイアンテナの一例である。
【0078】
図6のフェーズドアレイアンテナのためのアーキテクチャは、本明細書に別途記載のない限り、図2図5を参照して説明したような類似又は対応する構成要素と実質的に類似の方式で動作し得る。図6は、1つの制御回路215-gのみを示しているが、図2図5のように任意の数Nの制御回路215が存在し得ることを理解するべきである。
【0079】
図6に示すように、アンテナ素子220-gは、受信調整回路265-gに接続された信号経路を有する受信アンテナ素子220である。アンテナ素子220-hは、送信調整回路265-hに接続された信号経路を有する送信アンテナ素子220である。図6は、別個の送信アンテナ素子220及び受信アンテナ素子220を示しているが、単一のアンテナ素子220を送信及び受信の両方に使用することができることを理解されたい。
【0080】
図6に示すように、回路アーキテクチャは、第1のルーティング回路205-d、ビーム形成ネットワーク210-d、制御回路215-g、及び複数のアンテナ素子220を含む。図6の例では、制御回路215-a及び対応する受信アンテナ素子220-g並びに送信アンテナ素子220-hが示されている。しかしながら、アンテナ素子220のための任意の数Nの制御回路215を同様に実装することができることを理解されたい。図6に図解するように、制御回路215とアンテナ素子220との間には1対2の対応がある。しかしながら、場合によっては、1つの制御回路215を、複数の受信及び送信アンテナ素子220で共有してもよい(すなわち、1つの制御回路215が、複数の受信アンテナ素子220に接続され、複数の受信アンテナ素子220からそれぞれの信号を受信するか、又は複数の送信アンテナ素子220へ信号を提供することができる)ことを理解されたい。構成要素の各々は、信号経路を介して接続される。
【0081】
第1のルーティング回路205-d(例えば、ダイプレクサ又は他のマルチプレクサ、若しくは他の種類の信号ルーティング回路)は、例えば送信プロセッサから送信ビーム信号236-cを受信して、フェーズドアレイアンテナによって送信ビームとして送信することができる。第1のルーティング回路205-dは、本明細書に記載されるように、フェーズドアレイアンテナによって受信された、ビーム形成ネットワーク210-dからの受信ビーム信号を受信することができる。第1のルーティング回路205-dは、コントローラ225-dからの制御データ226-dを含む制御信号231-dを変調器230-dから更に受信することができる。制御データ226-dは、N個の制御回路215のうちの1つ以上に対する調整値(例えば、振幅及び/又は位相)を指示することができ、この調整値は、所望の走査角方向で送信ビーム信号を送信し、かつ受信ビーム信号を受信するために、それぞれの制御回路によって適用される。
【0082】
フェーズドアレイアンテナは、制御データ226-dを変調して制御信号231-dを形成する変調器230-dを含むことができる。変調器230-dは、コントローラ225-dから受信した制御データ226-aを変調し、変調制御信号231-dを第1のルーティング回路205-dに引き渡すことができる。場合によっては、変調器230-dは、コントローラ225-dの内部に、又はその構成要素として実装してもよい。上述のように、第1のルーティング回路205-dへの入力は、送信ビーム信号236-c(中心周波数ftxを有する)、複合受信ビーム信号(中心周波数frxを有する)、及び制御信号231-d(中心周波数fを有する)を含むことができる。したがって図6に示すように、複合多重化信号241-dは双方向信号であり、制御信号及び送信ビーム信号が一方向(第1のルーティング回路205-dからビーム形成ネットワーク210-dへの方向)にあり、受信ビーム信号が反対方向(ビーム形成ネットワーク210-dから第1のルーティング回路205-dへの方向)にある。
【0083】
第1のルーティング回路205-dは、送信ビーム信号236-c及び制御信号231-dを含む複合多重化信号241-dの構成成分を形成することができる。複合多重化信号241-dは、ビーム形成ネットワーク210-dから第1のルーティング回路205-dへの他方の方向で信号経路上を伝搬する複合受信ビーム信号の上に多重化することができる。第1のルーティング回路205-dは、フェーズドアレイアンテナによって受信された情報を処理するために、例えば、受信プロセッサに受信ビーム信号237-bを更に送信することができる。
【0084】
図6に示すように、第1のルーティング回路205-dは、各それぞれの信号ついて1つずつ、計3つの帯域通過フィルタ235を含むトリプレクサ(又は、ダイプレクサの組み合わせ)である。第1の帯域通過フィルタ235-sは、第1の周波数範囲の信号が通過することを可能にし、第1の周波数範囲は、少なくとも送信ビーム信号236-c(例えば、変調送信ビーム信号)の周波数範囲に対応する。ftxに等しい中心周波数を有するとして示されているが、第1の周波数範囲が送信ビーム信号236-cの通過を(例えば、制御信号231-d及び変調受信ビーム信号を除外して)可能にする限り、第1の帯域通過フィルタ235-sの中心周波数は、送信ビーム信号のキャリア周波数ftxと同じでなくてもよい。第2の帯域通過フィルタ235-tは、第2の周波数範囲の周波数帯域が通過することを可能にし、第2の周波数範囲は、少なくとも受信ビーム信号237-b(例えば、変調受信ビーム信号)の周波数範囲に対応する。frxに等しい中心周波数を有するとして示されているが、第2の周波数範囲が受信ビーム信号236-aの通過を(例えば、制御信号及び送信ビーム信号を除外して)可能にする限り、第2の帯域通過フィルタ235-tの中心周波数は、受信ビーム信号のキャリア周波数frxと同じでなくてもよい。第3の帯域通過フィルタ235-uは、第3の周波数範囲の信号が通過することを可能にし、第3の周波数範囲は、少なくとも制御信号231-d(例えば、変調制御信号)の周波数範囲に対応する。fに等しい中心周波数を有するとして示されているが、第3の周波数範囲が制御信号の通過を(例えば、送信ビーム信号及び受信ビーム信号を除外して)可能にする限り、第3の帯域通過フィルタ235-uの中心周波数は、制御信号のキャリア周波数fと同じでなくてもよい。上述のように、第1のルーティング回路205-dとして別の可能な実現形態を使用してもよい。
【0085】
第1のルーティング回路205-dは、制御信号231-dと多重化された送信ビーム信号236-cを、ビーム形成ネットワーク210-dの共通信号ポート240-dに提供することができる。逆方向において、受信ビーム信号237-bはまた、複合多重化信号241-dと多重化して、第1のルーティング回路205-dによって受信することができる。ビーム形成ネットワーク210-dは、1つ以上のPCBコンバイナ/デバイダ段を含むことができ、PCBコンバイナ/デバイダ段は、複合多重化信号241-cの送信構成成分を分割して、ビーム形成ネットワーク210-dの出力素子信号ポート245に個々の出力信号246を形成する。すなわち、ビーム形成ネットワーク210-dは、複合多重化信号241-dを個々の出力信号246(例えば、個々の出力信号246-g)に分割することができ、各出力信号246は、個々の送信素子信号(例えば、送信ビーム信号236-cのコピー)及び個々の制御信号(例えば、制御信号231-dのコピー)を含む。1つ以上のPCBデバイダ段は、個々の出力信号246の個々の素子信号間に相対的な振幅及び/又は位相シフトを提供することができる。これは、フェーズドアレイアンテナのビーム形成全体の一部として行われる。そのような場合、個々の出力信号246の個々の制御信号はまた、1つ以上のPCBデバイダの段により相対的な振幅及び/又は位相シフトを受ける。しかしながら、振幅及び/又は位相シフトにおけるそのような相対的シフトは、個々の制御信号の搬送波に適用されるため、制御データ226-dに影響を与えない。加えて、必要とされる精度が個々の素子信号に対して必要とされるものよりも著しく低くなり得るため、これらのシフトは、同期のための個々の制御信号の搬送波の復元に影響しない可能性がある(以下で論じられる)。制御データ226-dは、制御回路215の各々に関する情報(例えば、シリアルデータ)を含んでもよく、ビーム形成ネットワーク210-dは、共通信号ポート240-dで受信した制御信号231-dを素子信号ポート245にコピーすることができる。それぞれの素子信号ポート245における各個々の出力信号246に含まれる個々の送信素子信号は、その後、対応する素子信号ポート245に接続された対応する制御回路215によって調整され、対応するアンテナ素子220によって送信される。同様に、逆方向において、ビーム形成ネットワーク210-dは、素子信号ポート245において受信された個々の調整された素子信号を組み合わせて、共通信号ポート240-dにおいて受信ビーム信号237-bを提供する。
【0086】
素子信号ポート245-gにおける送信及び受信の個々の出力信号246-gは、個々の制御信号(例えば、制御信号231-dのコピー)と多重化された個々の素子信号(例えば、送信及び受信素子信号)を含む。制御信号は、対応する制御回路215によって使用され、対応する送信及び受信素子信号に適切な調整(例えば、振幅及び/又は位相)を適用する。すなわち、ビーム形成ネットワーク210-cは、複合多重化信号241-cを分割して、素子信号ポート245-gにおいて個々の制御信号及び個々の送信素子信号を形成する。逆方向で、複合多重化信号241-dを分割するPCBコンバイナ/デバイダの同じ段を使用して、ビーム形成ネットワーク210-dは、素子信号ポート245における個々の受信素子信号を組み合わせて、共通信号ポート240-dにおいて複合受信ビーム信号237-bを提供する。個々の制御信号は、対応する受信及び送信素子信号と多重化され、多重化された個々の出力信号246-gを形成する。素子信号及び制御信号を多重化することによって、ビーム形成ネットワーク210-dを使用して、送信素子信号と、制御回路215-gの各アンテナ素子220の対応する素子信号の各々に対する制御データを指示する制御信号とを形成及び分配することができる。
【0087】
制御回路215-gは、ビーム形成ネットワーク210-dの対応する素子信号ポート245-gに接続された第1のポート248-g、受信アンテナ素子220-gに接続された第2のポート249-g、及び送信アンテナ素子220-hに接続された第3のポート254を含む。制御回路215-gは、制御回路215-gの第1のポート248-gと第2のポート249-gとの間に受信素子信号経路251-gを確立する第2のルーティング回路250-g(例えば、トリプレクサ又は他のマルチプレクサ、若しくは他の種類の信号ルーティング回路)、制御回路215-gの第1のポート248-gと第3のポート254との間の送信素子信号経路251-h、及び制御回路215-gの第1のポート248-gと調整回路265(例えば、受信調整回路265-g及び送信調整回路265-h)との間の制御信号経路252-gを含む。
【0088】
図6に示すように、第2のルーティング回路250-gは、送信素子信号及び制御信号を対応する個々の素子及び制御信号に多重分離する(例えば、周波数多重分離により)トリプレクサである。信号を多重化する第1のルーティング回路205-dを参照して対応して説明されるように、第2のルーティング回路250-gは、信号を多重分離するために、類似の構成要素を使用して、類似の逆動作を実行することができる。第2のルーティング回路250-gは、受信調整回路265-gを介して受信アンテナ素子220-gから調整された受信素子信号を更に受信することができる。第2のルーティング回路250-gは、第1の帯域通過フィルタ235-vを含み、それは、第1の周波数範囲の信号が通過することを可能にし、第1の周波数範囲は、少なくとも送信素子信号(例えば、変調送信ビーム信号)の周波数範囲に対応する。ftxに等しい中心周波数を有するとして示されているが、第1の周波数範囲が、送信素子信号の通過を(例えば、制御信号及び変調受信ビーム信号を除外して)可能にする限り、第1の帯域通過フィルタ235-vの中心周波数は、送信ビーム信号のキャリア周波数ftxと同じでなくてもよい。第2の帯域通過フィルタ235-wは、第2の周波数範囲の周波数が通過することを可能にし、第2の周波数範囲は、少なくとも受信素子信号(例えば、変調受信ビーム信号)の周波数範囲に対応する。frxに等しい中心周波数を有するとして示されているが、第2の周波数範囲が受信素子信号の通過を(例えば、制御信号及び送信ビーム信号を除外して)可能にする限り、第2の帯域通過フィルタ235-wの中心周波数は、受信素子信号のキャリア周波数frxと同じでなくてもよい。第3の帯域通過フィルタ235-xは、第3の周波数範囲の信号が通過することを可能にし、第3の周波数範囲は、少なくとも制御信号(例えば、変調制御信号)の周波数範囲に対応する。fに等しい中心周波数を有するとして示されているが、第3の周波数範囲が制御信号の通過を(例えば、送信ビーム信号及び受信ビーム信号を除外して)可能にする限り、第3の帯域通過フィルタ235-xの中心周波数は、制御信号のキャリア周波数fと同じでなくてもよい。第2のルーティング回路250-gは、個々の出力信号246-gを用いて、調整された受信要素信号を、ビーム形成ネットワーク210-dの出力素子信号ポート245-gに提供するために、調整された受信素子信号を反対方向に提供する。上述したように、他のPCBトレース、高域及び低域通過フィルタを含む構成要素、コンデンサ、インダクタなどの使用を含めて、他の潜在的な実現形態を使用してもよい。
【0089】
制御回路215-gでは、制御信号経路252-gは、復調器255-g、アドレス復号器260-g、並びにそれぞれの受信及び送信調整回路265を経過する。復調器255-gは、制御信号経路252-g上で伝達される制御信号を復調して制御情報を得ることができる。制御情報は、ビーム形成ネットワーク210-dによって制御回路215の各々に分配される、制御回路215に対するコマンドを含んでもよい。すなわち、制御回路215-gは、それ自体の制御データを受信することに加えて、他の制御回路215の各々についての制御情報を受信及び復調してもよい。制御情報は、対応する制御情報が意図されている特定の制御回路215のアドレスを識別するアドレス情報を含んでもよい(例えば、ヘッダ内に)。アドレス復号器260-gは、制御回路215-gの既知のアドレス(以下で更に論じる)を、制御データ226-d内のアドレス情報と比較して、特定の制御回路215-g及びその対応する受信アンテナ素子220-g並びに送信アンテナ素子220-hのために意図されている制御情報を識別する。アドレス復号器260-gは、信号経路253を介して、対応する調整回路265に識別された制御情報を提供する。例えば、アドレス復号器260-gは、受信ビーム調整のための制御情報を信号経路253-gを介して受信調整回路265-gに提供し、信ビーム調整のための制御情報を信号経路253-hを介して送信調整回路265-hに提供する。本明細書に記載されるように、調整回路265は、識別された制御情報に基づいて、対応する素子信号に対する振幅及び/又は位相の適切な調整を提供するために、1つ以上の回路要素(例えば、1つ以上の位相シフタ270、1つ以上の増幅器275など)を含むことができる。フェーズアレイアンテナのアンテナ素子220の各々について素子信号に調整を適用することにより、所望の走査角方向に送信及び受信ビームが形成される。
【0090】
場合によっては、制御回路215-g及びコントローラ225-dは、更なる双方向通信(例えば、素子信号の双方向通信に加えて制御情報の双方向通信)をサポートしてもよい。例えば、制御回路215-gはまた、変調器(図示せず)を有してもよく、変調器は復調器255-gの一部、又は別個の構成要素であってもよい。コントローラ225-dは、構成値(例えば、制御情報)を制御回路215のうちの1つ(例えば、制御回路215-g)から読み取るためのコマンドを送信してもよく、アドレス指定された制御回路215は、応答(例えば、構成値)により信号を変調し、変調された信号を、それぞれの素子信号ポート245-gにおいて個々の出力信号246-gに多重化することによって反応してもよい。変調された信号は、次いで、ビーム形成ネットワーク210-d及び第1のルーティング回路205-dを介してコントローラ225-dに伝達され、コントローラはその後、信号を復調し、応答を復号する。このため、更なる双方向通信は、制御回路215-gの構成をチェックすること、又は、試験若しくはデバッグの目的のために制御回路215から他の状態情報を読み取ることを可能にする。
【0091】
図7は、本開示の態様による、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャの多層PCB705の例示的な図700を示す。フェーズドアレイアンテナは、図1を参照して説明したようなアンテナアレイ140のうちの1つ以上の例であり、図2及び図4図6を参照して説明したような、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャである。図7のフェーズドアレイアンテナは、図1を参照して説明したような、衛星105に通信信号を送信するための送信フェーズドアレイアンテナの例であり、図2図4、及び図6を参照して説明したような、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のための回路アーキテクチャの例である。図7のフェーズドアレイアンテナのための回路アーキテクチャは、図2図4、及び/又は図6を参照して説明したような類似又は対応する構成要素と実質的に同じ方式で動作する。更に、図7は、フェーズドアレイアンテナの送信動作を示すが、図5を参照して説明したように、フェーズドアレイアンテナは受信のために構成してもよい。
【0092】
図7に示すように、多層PCB705は、1つ以上のセクション710を含むことができ、このセクションは、制御回路を含む第1のセクション710-a、ビーム形成ネットワークを含む第2のセクション710-b、及びアンテナ素子220を含む第3のセクション710-cを含む。各セクション710は、1つ以上のPCB層を含むことができる。これらの3つのセクションは、記載された回路アーキテクチャのための多層PCB705の実現例の1つにすぎず、例えば、異なるセクション710に異なるPCB層上で異なる構成要素を有するなど、他の実現形態を使用してもよいことを理解されたい。
【0093】
図7に示される実施例では、第1のルーティング回路205-e及び制御回路215の各々は、多層PCB705の底部層の底部側に配置されている。信号経路708(例えば、信号経路1)は、第1のルーティング回路205-eからアンテナ素子220-iへの破線として示されている。第1のルーティング回路205-eは、複合多重化信号715(送信ビーム信号及び制御信号を含む)をビア720-aに出力し、ビア720-aは、層725上の導電トレースに接続されている。信号経路708は、複合多重化信号715を伝達し、複合多重化信号715を分割してそれぞれの素子信号ポート245において個々の多重化信号を形成する複数のPCBデバイダ段730の段を含むビーム形成ネットワークに入力する。例えば、ビーム形成ネットワークの第1のPCBデバイダ730-aは、第1の多重化制御及び素子信号を、第1のアンテナ素子220-iを目的として第1の制御回路215-hを介して第1の素子信号ポート245-hに提供し、ビーム形成ネットワークの第2のPCBデバイダ730-bは、第2の多重化制御及び素子信号を、第2のアンテナ素子220-jを目的として第2の制御回路215-iを介して第2の素子信号ポート245-iに提供する。
【0094】
図7の例示的な実現形態に示すように、素子信号ポート245-h(すなわち、出力ポート1)において、個々の多重化信号718は、アンテナ素子220-iを目的とする多重化された個々の制御及び素子信号を搬送することができる。ビア720-bは、ビーム形成ネットワークの素子信号ポート245-hに接続されており、個々の多重化信号718(すなわち、素子信号1及び対応する制御信号を含む個々の多重化信号1)を制御回路215-h(すなわち、制御回路1)の入力端に伝達する。上述のように、制御回路215-hは、制御信号を復調し、それにアドレス指定された制御情報を識別することができる。制御回路215-hは、識別された制御情報を対応する調整回路に提供することができる。この調整回路は、調整された個々の素子信号722を形成するために、制御情報に基づいて、素子信号1の位相及び/又は振幅を調整する。調整された個々の素子信号722は、制御回路215-hの出力端においてビア720-cに提供され、送信のためにアンテナ素子220-iに伝達される。
【0095】
図8は、本開示の態様による、フェーズドアレイアンテナ用の分散多重化制御及び素子信号のためのアドレス指定アーキテクチャの例示的な図800を示す。アドレス指定アーキテクチャは、図2及び図4図6を参照して説明したような、アドレス復号器260のうちの1つ以上のためのアドレス指定アーキテクチャの例である。例示的な図800は、アンテナアレイのPCB上で行及び列に配列された複数の制御回路215-jを図解する。
【0096】
アンテナアレイの各制御回路215-jは、例えばADCを使用してアドレス電圧レベルを読み取ることによって、それ自体のアドレスを認識することができる。図8に示すように、アドレス指定アーキテクチャは、列分圧器805及び行分圧器810を含む。列分圧器805は、供給電圧820-aから電圧接地825までに1つ以上の列815を含むことができる。列分圧器805は、数mの列分圧器素子830(例えば、抵抗分圧器)を含んでもよく、列分圧器素子830の組み合わせは、供給電圧を分圧して、各列815について結果として生じる列電圧850を得ることができる。行分圧器810はまた、供給電圧820-bから電圧接地825までに数nの行835を含むことができる。行分圧器810は、1つ以上の行分圧器素子840(例えば、抵抗分圧器)を含んでもよく、行分圧器素子840の組み合わせは、供給電圧を分圧して、各行835について結果として生じる行電圧855を得ることができる。
【0097】
各制御回路215-jは、列電圧850のうちの1つに接続された列815のうちの1つの位置に配置することができる。同様に、各アドレス素子845は、行電圧855のうちの1つに接続された行835のうちの1つの位置にある。このようにして、各制御回路215-jを、行アドレス及び列アドレスのそれぞれの一意の組み合わせに配置することができる。各制御回路215-jは、対応する行電圧を受け取る行アドレスピンと、対応する列電圧を受け取る列アドレスピンとを含むことができる。次いで、ADCを使用して、行及び列アドレスピンでこれらの電圧を読み取り、こうして、対応するアンテナ素子を意図する特定の制御情報(例えば、振幅及び/又は位相についての特定のビーム調整係数)を識別することができる。図示されたアドレス指定アーキテクチャは、プルアップ/ダウン又はオープン/ショートアドレスストラッピングを使用する場合と比較して、比較的少ないピン数を使用することができ、それは各制御回路に対するPCB面積及びコストを低減する。
【0098】
上述のように、場合によっては、制御回路が制御情報を誤って復号されたアドレスに適用するように、制御回路のアドレスが(例えば、連続する行及び列のアドレスを使用して)選択されてしまうことがあるが、制御回路によって適用されるこの制御情報は、隣接する制御回路のうちの1つを意図している可能性が高い(すなわち(m,n)の制御回路が、(m,n+1)又は(m,n-1)のアンテナ素子を意図する制御情報を適用することがある)。さらに、行及び列電圧レベルが制御回路のアドレス指定に使用される場合、行又は列アドレス電圧を読み取る際のエラーが、隣接又は近接する制御回路のために意図されている制御情報に適用されることもある。これらの場合、例えば、隣接する制御回路215の制御情報によって指示される調整であっても、制御回路215の実際の位置について指示される調整とは実質的に異ならない場合がある。例えば、1つの制御回路215が、行及び/又は列ごとに、最も近い隣接する制御回路215に対して意図された(例えば、位相及び/又は振幅の)調整を適用しても、これは、一部のアンテナアレイのRFビーム形成性能を実質的に低下させない場合がある。
【0099】
場合によっては上述のように、制御信号とビーム信号を、ビーム形成ネットワークに同時に提供してもよい。しかしながら場合によっては、コントローラは、制御信号を連続的に、及び/又はビーム信号と同時に提供しなくてもよい。むしろ場合によっては、コントローラは、必要に応じて適時に制御情報を提供し、フェーズドアレイアンテナを再構築して所望の走査角方向を変更することができる。
【0100】
本明細書の開示に関連して説明される様々な例示的なブロック及び構成要素(例えば、コントローラ225、変調器230、及び/又は第1のルーティング回路205並びに制御回路215の様々な構成要素の各々)は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)、特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field-programmable gate array、FPGA)又は他のプログラム可能な論理デバイス、ディスクリートゲート又はトランジスタ論理、ディスクリートハードウェア構成要素、又は本明細書に記載の機能を実行するように設計されたそれらの任意の組み合わせ、を用いて実装又は実行されてもよい。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであってもよいが、代替的に、プロセッサは、任意の従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、又はステートマシンであってもよい。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組み合わせ、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組み合わせたマイクロプロセッサ、又は任意の他のそのような構成として実装されてもよい。
【0101】
添付の図面に関連して上記で説明された詳細な説明は、例示的な実施形態を説明しており、実施され得るか、又は特許請求の範囲内にある唯一の実施形態を表すものではない。本明細書を通して使用される「例」という用語は、「例、実例、又は例証としての役割を果たす」を意味し、「好ましい」又は「他の実施形態より有利」ではない。詳細な説明は、記載された技法の理解を提供する目的のための具体的な詳細を含む。しかしながら、これらの技法は、これらの具体的な詳細を伴わずに実践されてもよい。いくつかの例では、説明されている実施形態の概念を不明瞭にすることを避けるために、周知の構造及びデバイスがブロック図の形態で示されている。
【0102】
情報及び信号は、様々な異なる技術及び技法のいずれかを使用して表すことができる。例えば、上記の説明全体を通して参照され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、記号、及びチップは、電圧、電流、電磁波、磁場又は粒子、光学場又は粒子、若しくはこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0103】
本明細書に記載される機能は、異なる材料、特徴、形状、サイズなどを用いて様々な方法で実装されてもよい。他の例及び実装形態は、本開示及び添付の特許請求の範囲内にある。機能を実装する特徴部はまた、機能の部分が異なる物理的位置に実装されるように分散されることを含めて、様々な位置に物理的に位置決めされてもよい。また、特許請求の範囲を含めて、本明細書で使用されるとき、項目のリスト(例えば、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」などの語句によって前置きされた項目のリスト)において使用される「又は」は、例えば、「少なくとも1つのA、B、又はC」のリストが、A又はB又はC又はAB又はAC又はBC又はABC(すなわち、A及びB及びC)を意味するように、離接的なリストを示す。
【0104】
本開示の前の説明は、当業者が本開示を作製又は使用することを可能にするために提供されている。本開示に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかとなり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の範囲から逸脱することなく他の変形形態に適用され得る。したがって、本開示は、本明細書に記載される実施例及び設計に限定されるべきではなく、本明細書に開示される原理及び新規の特徴と一致する最も広い範囲を与えられるものである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8