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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】通信管理装置および通信管理方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/02 20090101AFI20240501BHJP
   H04W 48/20 20090101ALI20240501BHJP
   H04W 88/18 20090101ALI20240501BHJP
【FI】
H04W24/02
H04W48/20
H04W88/18
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024009141
(22)【出願日】2024-01-25
【審査請求日】2024-01-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397036309
【氏名又は名称】株式会社インターネットイニシアティブ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】柿島 純
【審査官】永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】特許第7418649(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0092610(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0120519(US,A1)
【文献】特開2018-156385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末が、第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと、各基地局の通信エリアに在圏している回数を示す第1観測データを取得するように構成された第1取得部と、
前記通信端末が前記第1ウェブサイトにアクセスした回数を、前記第1ウェブサイトを含む全てのウェブサイトにアクセスする回数で割った値に基づく確率分布を事前分布とし、かつ、前記第1観測データに基づいて得られた、前記通信端末が前記第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと前記各基地局の通信エリアに在圏している回数を、前記通信端末が前記第1ウェブサイトにアクセスしている回数で割った値に基づく確率分布を尤度関数とし、前記尤度関数は前記各基地局に対応して求められ、前記事前分布に対して前記尤度関数で更新した事後分布である、前記通信端末が前記各基地局の通信エリアに在圏している条件のもと前記第1ウェブサイトにアクセスする回数に基づく確率分布を、ベイズ推定により前記各基地局に対応して推定するように構成された学習部と、
前記各基地局に対応して推定された前記事後分布の値を比較し、値が最大となる事後分布に対応する、前記通信端末が在圏する通信エリアの基地局を特定するように構成された特定部と、
特定された基地局の情報を通信制御情報として出力するように構成された出力部と
を備える通信管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信管理装置において、
さらに、前記通信端末が前記第1ウェブサイトにアクセスした回数を示す第2観測データを取得するように構成された第2取得部を備え、
前記事前分布は、前記第1観測データに基づいて設定される
ことを特徴とする通信管理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の通信管理装置において、
前記学習部は、前記第1観測データに基づいて、最尤推定法を用いて推定された前記尤度関数を最大にするパラメータを、前記事後分布を最大にするパラメータとして推定することで、前記事後分布を推定する
ことを特徴とする通信管理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の通信管理装置において、
さらに、前記通信制御情報に基づいて、前記第1ウェブサイトを提供する複数のクラウド拠点のクラウドのうち、前記特定された基地局からの物理的な距離が最も短いクラウド拠点のクラウドの情報を取得するように構成された第3取得部と、
前記第3取得部によって取得された前記クラウド拠点のクラウドの情報に応じて、所定の通信規格のコアネットワークに対して、前記通信端末の接続先を前記クラウド拠点のクラウドとする指示を行うように構成された通信制御部と
を備える通信管理装置。
【請求項5】
請求項2に記載の通信管理装置において、
さらに、加入者識別情報を有する前記通信端末が在圏した通信エリアの基地局および在圏した時間を示す在圏ログを、所定の通信規格のコアネットワークから収集するように構成された第1収集部と、
前記第1収集部によって取得された前記在圏ログに含まれる前記加入者識別情報に割り当てられた端末IPアドレスを前記コアネットワークから収集するように構成された第2収集部と、
前記第2収集部によって収集された前記端末IPアドレスに基づいて、前記加入者識別情報ごとの、サイトIPアドレスを有するウェブサイトへのアクセス時間を含むアクセスログを前記コアネットワークから収集するように構成された第3収集部と
を備え、
前記第1取得部は、前記第1収集部によって収集された前記在圏ログと、前記第3収集部によって収集された前記アクセスログとに基づいて、前記第1観測データを取得し、
前記第2取得部は、前記第3収集部によって収集された前記アクセスログに基づいて、前記第2観測データを取得する
ことを特徴とする通信管理装置。
【請求項6】
通信端末が、第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと、各基地局の通信エリアに在圏している回数を示す第1観測データを取得する第1取得ステップと、
前記通信端末が前記第1ウェブサイトにアクセスした回数を、前記第1ウェブサイトを含む全てのウェブサイトにアクセスする回数で割った値に基づく確率分布を事前分布とし、かつ、前記第1観測データに基づいて得られた、前記通信端末が前記第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと前記各基地局の通信エリアに在圏している回数を、前記通信端末が前記第1ウェブサイトにアクセスしている回数で割った値に基づく確率分布を尤度関数とし、前記尤度関数は前記各基地局に対応して求められ、前記事前分布に対して前記尤度関数で更新した事後分布である、前記通信端末が前記各基地局の通信エリアに在圏している条件のもと前記第1ウェブサイトにアクセスする対応する確率分布を、ベイズ推定により前記各基地局に対応して推定する学習ステップと、
前記各基地局に対応して推定された前記事後分布の値を比較し、値が最大となる事後分布に対応する、前記通信端末が在圏する通信エリアの基地局を特定する特定ステップと、
特定された基地局の情報を通信制御情報として出力する出力ステップと
を備える通信管理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の通信管理方法において、
さらに、前記通信端末が前記第1ウェブサイトにアクセスした回数を示す第2観測データを取得する第2取得ステップを備え、
前記事前分布は、前記第2観測データに基づいて設定される
ことを特徴とする通信管理方法。
【請求項8】
請求項6に記載の通信管理方法において、
前記学習ステップは、前記第1観測データに基づいて、最尤推定法を用いて推定された前記尤度関数を最大にするパラメータを、前記事後分布を最大にするパラメータとして推定することで、前記事後分布を推定する
ことを特徴とする通信管理方法。
【請求項9】
請求項6に記載の通信管理方法において、
さらに、前記通信制御情報に基づいて、前記第1ウェブサイトを提供する複数のクラウド拠点のクラウドのうち、前記特定された基地局からの物理的な距離が最も短いクラウド拠点のクラウドの情報を取得する第3取得ステップと、
前記第3取得ステップで取得された前記クラウド拠点のクラウドの情報に応じて、所定の通信規格のコアネットワークに対して、前記通信端末の接続先を前記クラウド拠点のクラウドとする指示を行う通信制御ステップと
を備える通信管理方法。
【請求項10】
請求項7に記載の通信管理方法において、
さらに、加入者識別情報を有する前記通信端末が在圏した通信エリアの基地局および在圏した時間を示す在圏ログを、所定の通信規格のコアネットワークから収集する第1収集ステップと、
前記第1収集ステップで取得された前記在圏ログに含まれる前記加入者識別情報に割り当てられた端末IPアドレスを前記コアネットワークから収集する第2収集ステップと、
前記第2収集ステップで収集された前記端末IPアドレスに基づいて、前記加入者識別情報ごとの、サイトIPアドレスを有するウェブサイトへのアクセス時間を含むアクセスログを前記コアネットワークから収集する第3収集ステップと
を備え、
前記第1取得ステップは、前記第1収集ステップで収集された前記在圏ログと、前記第3収集ステップで収集された前記アクセスログとに基づいて、前記第1観測データを取得し、
前記第2取得ステップは、前記第3収集ステップで収集された前記アクセスログに基づいて、前記第2観測データを取得する
ことを特徴とする通信管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信管理装置および通信管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、クラウド等のアクセスログを解析することで、各通信端末がアクセス要求を行ったクラウド上のファイルを特定できる技術が知られている。特許文献1に開示された技術によれば、ウェブサーバなどのサーバ単位または複数のサーバを一元管理する推定装置によってアクセスログが記録され、特定のウェブサイト等にアクセスした複数の通信端末の各々のアクセス傾向を分析する。このようなアクセス傾向の分析結果は、ウェブサイト等のサービスを提供する側が、ユーザに対してより個別化したサービスを提供するために活用されていた。
【0003】
しかし、特許文献1が開示するアクセスログは、各通信端末がアクセスし得る任意の複数のウェブサイトのアクセスを記録したログではない。また、特許文献1が開示するアクセスログは、無線アクセスネットワーク(RA)あるいはコアネットワーク側で、通信端末の移動にともなって切り替わる各基地局からどのウェブサイトにアクセスされたのかを記録したものでもない。そのため、特許文献1が開示するアクセスログやその分析結果は、伝送遅延時間短縮のための、例えば、MEC(Multi-access Edge Computing)に代表されるエッジコンピューティングなどに活用することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-156385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の技術によれば、伝送遅延時間を短縮するために、基地局単位でユーザのアクセス傾向を把握することができなかった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、伝送遅延時間を短縮するために、基地局単位でユーザのアクセス傾向を把握することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る通信管理装置は、通信端末が、第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと、各基地局の通信エリアに在圏している回数を示す第1観測データを取得するように構成された第1取得部と、前記通信端末が前記第1ウェブサイトにアクセスした確率分布を事前分布とし、かつ、前記第1観測データに基づいて得られた、前記通信端末が前記第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと前記各基地局の通信エリアに在圏している確率分布を尤度関数とし、前記事前分布に対して前記尤度関数で更新した事後分布である、前記通信端末が前記各基地局の通信エリアに在圏している条件のもと前記第1ウェブサイトにアクセスする確率分布を、ベイズ推定により推定するように構成された学習部と、推定された前記事後分布の値が最大となる事後分布における、前記通信端末が在圏する通信エリアの基地局を特定するように構成された特定部と、特定された基地局の情報を通信制御情報として出力するように構成された出力部とを備える。
【0008】
また、本発明に係る通信管理装置において、さらに、前記通信端末が前記第1ウェブサイトにアクセスした回数を示す第2観測データを取得するように構成された第2取得部を備え、前記事前分布は、前記第2観測データに基づいて設定してもよい。
【0009】
また、本発明に係る通信管理装置において、本発明に係る通信管理装置は、前記学習部は、前記第1観測データに基づいて、最尤推定法を用いて推定された前記尤度関数を最大にするパラメータを、前記事後分布を最大にするパラメータとして推定していてもよい。
【0010】
また、本発明に係る通信管理装置において、さらに、前記通信制御情報に基づいて、前記第1ウェブサイトを提供する複数のクラウド拠点のクラウドのうち、前記特定された基地局からの物理的な距離が最も短いクラウド拠点のクラウドの情報を取得するように構成された第3取得部と、前記第3取得部によって取得された前記クラウド拠点のクラウドの情報に応じて、所定の通信規格のコアネットワークに対して、前記通信端末の接続先を前記クラウド拠点のクラウドとする指示を行うように構成された通信制御部とを備えていてもよい。
【0011】
また、本発明に係る通信管理装置において、さらに、加入者識別情報を有する前記通信端末が在圏した通信エリアの基地局および在圏した時間を示す在圏ログを、所定の通信規格のコアネットワークから収集するように構成された第1収集部と、前記第1収集部によって取得された前記在圏ログに含まれる前記加入者識別情報に割り当てられた端末IPアドレスを前記コアネットワークから収集するように構成された第2収集部と、前記第2収集部によって収集された前記端末IPアドレスに基づいて、前記加入者識別情報ごとの、サイトIPアドレスを有するウェブサイトへのアクセス時間を含むアクセスログを前記コアネットワークから収集するように構成された第3収集部とを備え、前記第1取得部は、前記第1収集部によって収集された前記在圏ログと、前記第3収集部によって収集された前記アクセスログとに基づいて、前記第1観測データを取得し、前記第2取得部は、前記第3収集部によって収集された前記アクセスログに基づいて、前記第2観測データを取得してもよい。
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明に係る通信管理方法は、通信端末が、第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと、各基地局の通信エリアに在圏している回数を示す第1観測データを取得する第1取得ステップと、前記通信端末が前記第1ウェブサイトにアクセスした確率分布を事前分布とし、かつ、前記第1観測データに基づいて得られた、前記通信端末が前記第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと前記各基地局の通信エリアに在圏している確率分布を尤度関数とし、前記事前分布に対して前記尤度関数で更新した事後分布である、前記通信端末が前記各基地局の通信エリアに在圏している条件のもと前記第1ウェブサイトにアクセスする確率分布を、ベイズ推定により推定する学習ステップと、推定された前記事後分布の値が最大となる事後分布における、前記通信端末が在圏する通信エリアの基地局を特定する特定ステップと、特定された基地局の情報を通信制御情報として出力する出力ステップとを備える。
【0013】
また、本発明に係る通信管理方法において、さらに、前記通信端末が前記第1ウェブサイトにアクセスした回数を示す第2観測データを取得する第2取得ステップを備え、前記事前分布は、前記第2観測データに基づいて設定してもよい。
【0014】
また、本発明に係る通信管理方法において、前記学習ステップは、前記第1観測データに基づいて、最尤推定法を用いて推定された、前記尤度関数を最大にするパラメータを、前記事後分布を最大にするパラメータとして推定することで、前記事後分布を推定してもよい。
【0015】
また、本発明に係る通信管理方法において、さらに、前記通信制御情報に基づいて、前記第1ウェブサイトを提供する複数のクラウド拠点のクラウドのうち、前記特定された基地局からの物理的な距離が最も短いクラウド拠点のクラウドの情報を取得する第3取得ステップと、前記第3取得ステップで取得された前記クラウド拠点のクラウドの情報に応じて、所定の通信規格のコアネットワークに対して、前記通信端末の接続先を前記クラウド拠点のクラウドとする指示を行う通信制御ステップとを備えていてもよい。
【0016】
また、本発明に係る通信管理方法において、さらに、加入者識別情報を有する前記通信端末が在圏した通信エリアの基地局および在圏した時間を示す在圏ログを、所定の通信規格のコアネットワークから収集する第1収集ステップと、前記第1収集ステップで取得された前記在圏ログに含まれる前記加入者識別情報に割り当てられた端末IPアドレスを前記コアネットワークから収集する第2収集ステップと、前記第2収集ステップで収集された前記端末IPアドレスに基づいて、前記加入者識別情報ごとの、サイトIPアドレスを有するウェブサイトへのアクセス時間を含むアクセスログを前記コアネットワークから収集する第3収集ステップとを備え、前記第1取得ステップは、前記第1収集ステップで収集された前記在圏ログと、前記第3収集ステップで収集された前記アクセスログとに基づいて、前記第1観測データを取得し、前記第2取得ステップは、前記第3収集ステップで収集された前記アクセスログに基づいて、前記第2観測データを取得してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、通信端末が第1ウェブサイトにアクセスした確率分布を事前分布とし、かつ、通信端末が第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと各基地局の通信エリアに在圏している確率分布を尤度関数とし、事前分布に対して尤度関数で更新した事後分布である、通信端末が各基地局の通信エリアに在圏している条件のもと第1ウェブサイトにアクセスする確率分布をベイズ推定により推定する。そのため、伝送遅延時間を短縮するために、基地局単位でユーザのアクセス傾向を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る通信管理装置を含む通信管理システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施の形態に係る通信管理装置が備える収集部の構成を示すブロック図である。
図3図3は、本実施の形態に係る通信管理装置がAMFから収集する在圏ログのデータ構造を説明するための図である。
図4図4は、本実施の形態に係る通信管理装置がSMFから収集する端末IPアドレスが記憶されたテーブルのデータ構造を説明するための図である。
図5図5は、本実施の形態に係る通信管理装置がDNSから収集するアクセスログのデータ構造を説明するための図である。
図6図6は、本実施の形態に係る通信管理装置が記憶する第2記憶部のデータ構造を説明するための図である。
図7図7は、本実施の形態に係る通信管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図8図8は、本実施の形態に係る通信管理装置による推定処理を示すフローチャートである。
図9図9は、本実施の形態に係る通信管理装置による推定処理を示すフローチャートである。
図10図10は、本実施の形態に係る通信管理システムによる通信制御処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1から図10を参照して詳細に説明する。
【0020】
[通信管理システムの構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る通信管理装置1を備える通信管理システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る通信管理システムは、例えば、5Gモバイル通信ネットワークに設けられ、移動通信を行う通信端末2が特定のウェブサイトにアクセスする場合に、どの基地局BSを経由してアクセスするのかを確率モデルに基づいて推定する。さらに、通信管理システムは、通信端末2が、特定された基地局BSから物理的な距離が最も短いクラウド拠点のクラウド50と通信するように通信制御を行う。
【0021】
通信管理システムは、推定装置1Aと通信制御装置1Bとを備える通信管理装置1、5Gモバイル通信に対応する通信端末2、複数の基地局BS0~BSn、コアネットワーク4、および複数のクラウド50を備える。
【0022】
通信端末2は、SIM20を備え、スマートフォンなどの携帯通信端末、タブレット型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータなどとして実現される。SIM20の契約プロファイルには、ユーザの加入者識別情報が格納され、携帯電話の回線契約に割り当てられる加入者識別番号(IMSI:International Mobile Subscriber Identity)、加入者であるユーザの電話番号(MSISDN:Mobile Subscriber International Subscriber Directory Number)、SIMカード番号(ICCID:Integrated Circuit Card Identifier)などの識別子情報が含まれる。通信端末2は、SIM20のIMSIによって一意に識別される。
【0023】
通信端末2には、さらに、端末を一意に識別する端末IPアドレスが割り当てられている。端末IPアドレスは、ローカルIPアドレスやグローバルIPアドレスを用いることができる。なお、通信端末2は、m台(mは正の整数)存在する。
【0024】
基地局BS0~BSn(nは正の整数)は、5G方式に対応した無線基地局で構成され、通信エリアに在圏する通信端末2とコアネットワーク4との間の通信を中継する。基地局BS0~BSnは、バックホールリンクなどのネットワークLを介してコアネットワーク4と接続する。以下において、基地局BS1~BSnを区別しない場合には、基地局BSと総称する場合がある。
【0025】
コアネットワーク4は、通信管理装置1とLANやWANなどのネットワークNWを介して接続されている。コアネットワーク4は、U-plane内の複数のUPF(User Plane Function)40、C-plane内のノードである複数のAMF(Access and Mobility Management Function)41、SMF(Session Management Function)42、およびDNS(Domain Name System)43を備える。なお、コアネットワーク4が備える他の機能については図示を省略している。
【0026】
UPF40は、ユーザプレーン機能であり、無線アクセスネットワーク(RAN)と、インターネットなどのデータネットワークとの間のデータパケットを処理する。本実施の形態では、単一のC-planeで複数のUPF40の制御が可能である。また、複数のUPF40は、5Gモバイル通信ネットワークにおいて、物理的に異なる位置に配置された装置である。各UPF40は、インターネット上の各クラウド50と接続され、通信端末2は、各UPF40を介して、各クラウド50が提供するウェブサイトにアクセスすることができる。
【0027】
AMF41は、アクセスおよび移動管理装置であり、各エリアに移動した通信端末2の登録や無線接続を管理する。本実施の形態では、AMF41は、複数台設けられ、各々は、通信管理装置1との通信を行うための通信インターフェース41aを備える。図3は、AMF41が管理する在圏ログのテーブル410を示す。在圏ログは、通信端末2のIMSIと、通信端末2が在圏した通信エリアの基地局BSと、在圏した時間であるタイムスタンプとが関連付けられた情報である。例えば、通信端末2のIMSI1には、通信端末2による移動に応じて切り替わった基地局BS0~BSnと、それぞれの基地局BS0~BSnに在圏した時間がタイムスタンプとして記録されている。
【0028】
SMF42は、セッション管理機能であり、通信端末2からインターネット等のデータネットワーク間のPDU(Packet Data Unit)セッションの確立、変更、リリース等を行う。本実施の形態に係るSMF42は、通信管理装置1と通信を行うための通信インターフェース42aを備える。また、SMF42は、図4のテーブル420に示すように、通信端末2のIMSIと、IMSIに割り当てられた端末IPアドレスと、通信端末2が使用しているUPF40とが関連付けられた情報を記憶する。
【0029】
DNS43は、ドメイン名システムであり、ドメイン名とIPアドレスとを紐づけし、IPネットワーク上で管理する。本実施の形態に係るDNS43は、通信インターフェース43aを備え、通信インターフェース43aを介して通信管理装置1と通信を行う。また、本実施の形態に係るDNS43は、通信端末2がアクセス要求したウェブサイトのサイトIPアドレスのアクセスログを記憶する。図5に示すようにDNS43は、通信端末2の端末IPアドレスと、ウェブサイトのサイトIPアドレスと、端末IPアドレスによってサイトIPアドレスにアクセスされた時間を示すタイムスタンプとを関連付けたテーブル430を記憶する。
【0030】
クラウド50は、所定のウェブサイトやウェブアプリケーションなどを提供し、各々のクラウド50は、地理的に互いに離れたクラウド拠点を有する。クラウド拠点とは、各クラウド50を構成する物理的な機器が配置された地理的な位置あるいは領域を示す。各クラウド50は、サーバ、データセンタ、MECサーバなどのエッジサーバとすることができる。図1の例では、クラウド1、クラウド2、およびクラウドZ(Zは正の整数)の各々は、サイトIPアドレス「サイトIP1」の第1ウェブサイトを提供するクラウド拠点として地理的に互いに離れた位置に分散配置されている。
【0031】
例えば、図1に示すように、IMSI1および端末IP1が割り当てられている通信端末2が基地局BS0の通信エリアに在圏している。通信端末2は、基地局BS0およびUPF40を介していずれかのクラウド50に接続し、サイトIP1の第1ウェブサイト「www.111」にアクセスする。図1の例では、基地局BS0-UPF40-クラウド50間の距離は、次の通りとなっている。[基地局BS0-UPF_1-クラウド1間の距離R1]>[基地局BS0-UPF_2-クラウド2間の距離R2]>[基地局BS0-UPF_Z-クラウドZ間の距離RZ]。したがって、通信端末2がサイトIP1の第1ウェブサイトにアクセスする場合、基地局BS0から最短経路をとるUPF_Nを介してクラウドZと通信を行うことで、MECを利用した遅延時間の抑制が可能となる。
【0032】
他方において、ユーザのアクセス傾向に応じて、通信端末2は特定の基地局BSを介して、より頻繁に特定のウェブサイトにアクセスする場合がある。例えば、近年のリモートワークでは、通信端末2に紐づけられたユーザは、自宅に居ながら勤務先の会社の所定のウェブサイトにアクセスする。このような場合、ユーザは、会社の位置にある基地局BSではなく、自宅に近い基地局BSを介してより頻繁に会社のウェブサイトにアクセスする。本実施の形態に係る通信管理システムでは、このようにユーザ毎、すなわち通信端末2ごとの基地局BS単位でのデータネットワークのアクセス傾向をベイズ推定により推定し、通信端末2が所定のウェブサイトにアクセスする確率が最も高い経由基地局BSを特定する。さらに、通信管理システムは、特定された基地局BSから最短経路にあるクラウド拠点のクラウド50で通信端末2が通信を行うように通信制御を行う。
【0033】
[通信管理装置の機能ブロック]
通信管理装置1は、推定装置1Aおよび通信制御装置1Bを備える。推定装置1Aは、ベイズ推定を用いて、各通信端末2が各基地局BSの通信エリアに在圏する条件のもと特定のウェブサイトにアクセスする確率分布をベイズ推定により推定し、推定結果に基づいて、各通信端末2が所定のウェブサイトにアクセスする確率が最も高い経由基地局BSを特定する。通信制御装置1Bは、各通信端末2が、推定装置1Aで特定された基地局BSから最短距離のクラウド拠点のクラウド50と通信するように通信制御を行う。
【0034】
なお、以下では、通信管理装置1が、m台の通信端末2のうち、IMSI1および端末IP1が割り当てられている通信端末2が、第1~第kウェブサイトのうち、第1ウェブサイトにアクセスする際に経由する確率が最も高い基地局BSを特定する場合について例示して説明する。
【0035】
推定装置1Aは、収集部10、第1取得部11A、第2取得部11B、学習部12、特定部13、出力部14、および第1記憶部15を備える。収集部10は、図2に示すように、第1収集部10A、第2収集部10B、および第3収集部10Cを備える。
【0036】
収集部10は、一定期間ごとの通信端末2の在圏ログ、および通信端末2のウェブサイトのアクセスログを収集する。収集部10は、例えば、1日単位や1か月単位などの任意に設定された期間のログを収集することができる。
【0037】
第1収集部10Aは、加入者識別情報であるIMSIを有する通信端末2が在圏した通信エリアの基地局BS0~BSnおよび在圏した時間を示す在圏ログを、コアネットワーク4から収集する。より具体的には、第1収集部10Aは、コアネットワーク4のAMF41が記憶するテーブル410(図3)を参照し、通信端末2ごとの在圏ログを収集する。
【0038】
第2収集部10Bは、第1収集部10Aによって収集された通信端末2の在圏ログに含まれているIMSIに割り当てられた端末IPアドレスをコアネットワーク4から収集する。より具体的には、第2収集部10Bは、コアネットワーク4のSMF42が記憶するテーブル420(図4)を参照し、通信端末2のIMSIに割り当てられた端末IPアドレスを収集する。
【0039】
第3収集部10Cは、第2収集部10Bで収集された通信端末2の端末IPアドレスに基づいて、IMSIごとの、サイトIPアドレスを有する各ウェブサイトへのアクセス時間を含むアクセスログをコアネットワーク4から収集する。より具体的には、第3収集部10Cは、コアネットワーク4が備えるDNS43が記憶するテーブル430(図5)を参照し、通信端末2の端末IPアドレスをキーとして、アクセスログを収集する。
【0040】
第1取得部11Aは、通信端末2が、第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと、各基地局BS0~BSnの通信エリアに在圏している回数を示す第1観測データを取得する。第1取得部11Aは、第1収集部10Aによって収集された在圏ログと、第3収集部10Cによって収集されたアクセスログとに基づいて、第1観測データを取得する。また、第1取得部11Aは、後述の学習部12における推定処理で用いる訓練データとして、一定の条件を満たす十分なデータ数の第1観測データを取得することができる。
【0041】
第2取得部11Bは、通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスした回数を示す第2観測データを取得する。第2取得部11Bは、第3収集部10Cによって収集されたアクセスログに基づいて、第2観測データを取得する。通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスする際に経由する基地局BSは、複数の基地局BS0~BSnのうちのどの基地局BSであってもよく、第2観測データにおいて基地局BSは特定されていない。
【0042】
学習部12は、通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスした確率分布を事前分布とし、かつ、第1観測データに基づいて得られた、通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと各基地局BS0~BSnの通信エリアに在圏している確率分布を尤度関数とし、事前分布に対して尤度関数で更新した事後分布である、通信端末2が各基地局BS0~BSnの通信エリアに在圏している条件のもと第1ウェブサイトにアクセスする確率分布を、ベイズ推定により推定する。学習部12は、事前分布を第2観測データに基づいて設定してもよい。
【0043】
本実施の形態では、学習部12は、さらに一定の条件のもと、最尤推定法を用いて推定された尤度関数を最大にするパラメータを、事後分布を最大するパラメータとして推定することで、確率モデルの事後分布を推定する。
【0044】
前述したように、本実施の形態に係る通信管理装置1は、尤度と確率モデル、すなわちパラメータの事前分布とから、ベイズの定理により、事後分布を推定するベイズ推定を採用する。以下、学習部12がベイズ推定で用いる確率モデルのパラメータについて説明する。
【0045】
学習部12は、まず、事象Xを、ある原因となった事象とする。また、事象Yを、原因により起きたと想定される事象とする。事象X、Yは確率変数として扱われる。具体的には、事象Xは、あるIMSIおよび端末IPアドレスが割り当てられている通信端末2が特定のウェブサイトにアクセスしている事象として定義される。一例として、事象Xは、IMSI1および端末IP1が割り当てられている通信端末2が、第1~第kウェブサイトのうち、サイトIP1の第1ウェブサイトにアクセスしている事象として説明される。
【0046】
一方、事象Yは、あるIMSIおよび端末IPアドレスが割り当てられている通信端末2が各基地局BS0~BSnの通信エリアに在圏している事象として定義される。例えば、事象Yは、IMSI1および端末IP1が割り当てられている通信端末2が、複数の基地局BS0~BSnのうち、基地局BS0の通信エリアに在圏している事象として説明される。
【0047】
学習部12は、事象Xが発生する確率分布P(X)を、観測データが与えられる前のパラメータの分布である事前分布として設定する。例えば、学習部12は、第2取得部11Bによって取得された第2観測データに基づいて、通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスしている確率分布P(X)を設定することができる。
【0048】
具体的には、学習部12は、一定期間において、通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスしている回数(第2観測データ)を、第1~第kウェブサイトまでの全てのウェブサイトにアクセスする回数で割った値に基づいて、事前分布P(X)を設定することができる。第1~第kウェブサイトまでの全てのウェブサイトにアクセスする回数は、第3収集部10Cによって収集された通信端末2のアクセスログによって得られる値である。学習部12は、例えば、1日単位や1か月単位など任意に設定された期間の事前分布P(X)を設定することができる。
【0049】
学習部12は、さらに、観測データの表現方法である尤度関数P(Y|X)を設定する。尤度関数P(Y|X)は、パラメータの値が条件付けされているときに、観測データの事象Yがどれだけモデルから発生しやすいかを表す。具体的には、通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと、基地局BS0の通信エリアに在圏している確率分布として表される。
【0050】
学習部12は、尤度関数P(Y|X)を設定する際に、第1取得部11Aが取得した、通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと基地局BS0の通信エリアに在圏している回数(第1観測データ)を、通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスしている回数で割った値に基づいて設定することができる。通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスしている回数は、第3収集部10Cにより収集されるログに基づいてカウントされる。
【0051】
学習部12は、ベイズの定理を利用して、尤度関数、事前分布、および第1観測データおよび第2観測データから得られる情報を反映させ、事象Yが発生した条件のもと事象Xが発生する確率である事後分布P(X|Y)を推定することができる。前述したように、事後分布P(X|Y)は、IMSI1および端末IP1が割り当てられている通信端末2が、基地局BS0の通信エリアに在圏している条件のもと、第1ウェブサイトにアクセスする確率分布である。本実施の形態では、次式(1)のベイズの定理に基づいた、次式(2)で表されるベイズ推定式に基づいて事後分布P(X|Y)が推定される。
【0052】
【数1】
【0053】
上式(1)の分母にP(Y)=ΣP(Y|X)P(X)を代入すると、次式(2)で表される。
【0054】
【数2】
【0055】
上式(2)の下段のベイズ推定式の分母において例示する、「第1ウェブサイト以外のサイトにアクセス中、基地局BS0の通信エリアに在圏している回数」は、IMSIをキーとして第1収集部10Aによって収集された在圏ログのタイムスタンプと、第3収集部10Cによって収集されたアクセスログのタイムスタンプとの比較に基づいてカウントされる。また、「第1ウェブサイト以外のサイトにアクセスしている回数」は、第3収集部10Cによって収集されたアクセスログに基づいてカウントされる値である。
【0056】
上式(1)のベイズの定理、および上式(2)のベイズ推定式では、一般に、訓練データのデータ数Nが十分に大きい場合(N→∞)には、尤度関数P(Y|X)が事前分布P(X)より支配的になるため最尤推定法で得られるパラメータに一致する。すなわち、事後分布P(X|Y)≒尤度関数P(Y|X)の関係で近似することができる。したがって、学習部12は、尤度関数P(Y|X)の回帰問題として、事後分布P(X|Y)の推定を行うことができる。
【0057】
この場合、学習部12は、通信端末2が基地局BS0の通信エリアに在圏している回数である事象Yを、観測点xにおける観測値tとして、次式(3)のM次多項式で表した関数f(x)で近似する。
【数3】
【0058】
上式(3)において、xは、観測点の集合体である。上式(3)のパラメータwは、次式(4)で表される。
【数4】
【0059】
上式(4)においてΦは、次式(5)で表される。
【数5】

すなわち、Φは、N個の観測点xについて、それぞれを0~M乗した値を並べた行列である。
【0060】
上式(4)のtは、観測点xのそれぞれで算出された事象Y、すなわち観測データに含まれる目的変数を並べたベクトルt=(t,・・・,tを表す。具体的には、第1観測データが、各観測点xで通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスし、かつ、基地局BS0の通信エリアに在圏していることを示す場合にはt=1、それ以外の場合はt=0とする。例えば、観測点が4(N=4)の場合、t=(1,0,0,1)等として表される。
【0061】
学習部12は、観測点xの数Nとして、例えば、1万個(1分単位)を用いることができる。この場合、(x,・・・,x)=(1,・・・,10000)となる。より詳細には、1万個の観測点xの観測値tには、通信端末2が第1~第kウェブサイトにアクセスし、かつ、基地局BS0~BSnの通信エリアに在圏するあらゆる組み合わせに係るケースが含まれる。具体的には、1万個の観測点xにおける観測値tのうち、例えば、2000個の観測値tが、通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスし、かつ、基地局BS0の通信エリアに在圏する値を示す場合があるとする。この場合、1万個のうち、例えば、別の3000個の観測値tは、通信端末2が第2ウェブサイトにアクセスし、かつ、別の基地局BS1の通信エリアに在圏する値を示す場合があり得る。
【0062】
ここで、観測値tの分散σは次式(6)で表される。
【数6】
【0063】
学習部12は、例えば、1分単位で1万個の観測点xを周期Nとして、観測点xで観測値tが得られる確率に基づいて、周期Nの事後分布P(X|Y)を次式(7)により推定する。観測点xで観測値tをとる確率は、次式(7)の正規分布に従う。
【0064】
【数7】
【0065】
したがって、学習部12は、上式(7)のP(t|f(x)、σ)が最大となるような値tを、観測点xにおける事後分布P(X|Y)の推定値とする。例えば、上式(7)の観測点xでの観測値tの値を、0、1として順次代入していき、確率Pが最大となる値を、観測値tの推定値、すなわち事後分布P(X|Y)の推定値とすることができる。
【0066】
学習部12は、複数の基地局BS0~BSnの各々について、事象Yの設定を変更して、各基地局BS0~BSnについての事後分布P(X|Y)を推定する。さらに、学習部12は、m台の通信端末2、および第1~第kウェブサイトの各々についても、事象Xおよび事象Yの設定を変更し、それぞれの場合についての事後分布P(X|Y)を推定することができる。
【0067】
特定部13は、学習部12によって推定された事後分布P(X|Y)の値が最大となる事後分布P(X|Y)における、通信端末2が在圏する通信エリアの基地局BSを特定する。具体的には、特定部13は、学習部12によって推定された、各基地局BS~BSnに対応する事後分布P(X|Y)の値を比較し、事後分布P(X|Y)の値が最大となる事後分布P(X|Y)における基地局BSを特定する。
【0068】
例えば、特定部13は、通信端末2が基地局BS0の通信エリアに在圏している条件のもと第1ウェブサイトにアクセスする第1の事後分布P(X|Y)、通信端末2が基地局BS1の通信エリアに在圏している条件のもと第1ウェブサイトにアクセスする第2の事後分布P(X|Y)、および通信端末2が基地局BSnの通信エリアに在圏している条件のもと第1ウェブサイトにアクセスする第nの事後分布P(X|Y)の値を比較する。第1の事後分布P(X|Y)が最大値である場合には、特定部13は、対応する基地局BS0を特定することができる。
【0069】
出力部14は、特定された基地局BSの情報を通信制御情報として出力する。具体的には、出力部14は、通信制御装置1Bに、通信制御情報を送出する。
【0070】
第1記憶部15は、上式(2)のベイズ推定式、および上式(3)~(7)の最尤推定法に係る式を記憶する。また、第1記憶部15は、第1観測データおよび第2観測データを記憶する。
【0071】
次に、通信管理装置1が備える通信制御装置1Bの構成について説明する。図1に示すように、通信制御装置1Bは、第3取得部16、第2記憶部17、および通信制御部18を備える。通信制御装置1Bは、推定装置1Aから出力された通信制御情報に基づいて、通信端末2に対する通信制御処理を行う。
【0072】
第3取得部16は、出力部14からの通信制御情報に基づいて、第1ウェブサイトを提供する複数のクラウド拠点のクラウド50のうち、特定部13によって特定された基地局BS0からの物理的な距離が最も短いクラウド拠点のクラウド50の情報を取得する。第3取得部16は、第2記憶部17から、最短経路にあるクラウド拠点のクラウド50の情報を取得する。
【0073】
第2記憶部17は、図6のテーブル170を記憶する。テーブル170は、各基地局BS0~BSnと、UPF_1~UPF_Nの各々と、サイトIP1~サイトIPkの各々を提供するクラウド拠点であるクラウド1~クラウドZとの間の物理的な距離を記憶する。サイトIP1~サイトIPkは第1~第kウェブサイトに対応する識別情報である。テーブル170は複数の通信端末2で共有される情報である。ここで、一例として、通信端末2がサイトIP1にアクセスする経由基地局BSは、基地局BS0と推定された場合について考える。
【0074】
この場合、第3取得部16は、図6に示すテーブル170の破線の領域で示される、基地局BS0-UPF_1-クラウド1間の距離30kmと、基地局BS0-UPF_2-クラウド2間の距離20kmと、および基地局BS0-UPF_Z-クラウドZ間の距離3kmとを比較する。なお、クラウド1~クラウドZは、それぞれがサイトIP1のクラウド拠点である。図6に示すように、通信端末2は、基地局BS0から、UPF_Nを介してクラウドZと通信を行う場合に最短経路をとる。したがって、第3取得部16は、第2記憶部17からUPF_Nの情報を取得する。
【0075】
通信制御部18は、第3取得部16によって取得されたクラウドZの情報に応じて、コアネットワーク4に対して、通信端末2の接続先を、クラウドZとする指示を行う。より具体的には、通信制御部18は、コアネットワーク4のSMF42に対して、IMSI1に係る通信端末2がUPF_Nで通信を行うよう指示を送る。通信制御部18による通信制御により、通信端末2は、基地局BS0から、UPF_Nを介してサイトIP1のクラウド拠点であるクラウドZと通信を行うことで、基地局BS0から最短経路でサイトIP1にアクセスすることができる。
【0076】
[通信管理装置のハードウェア構成]
次に、上述した機能を有する通信管理装置1を実現するハードウェア構成の一例について、図7を用いて説明する。
【0077】
図7に示すように、通信管理装置1は、例えば、バス101を介して接続されるプロセッサ102、主記憶装置103、通信インターフェース104、補助記憶装置105、入出力I/O106を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。
【0078】
主記憶装置103には、プロセッサ102が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。プロセッサ102と主記憶装置103とによって、図1に示した推定装置1Aの収集部10、第1取得部11A、第2取得部11B、学習部12、特定部13、通信制御装置1Bの第3取得部16、通信制御部18など通信管理装置1の各機能が実現される。
【0079】
通信インターフェース104は、通信管理装置1と各種外部電子機器との間をネットワーク接続するためのインターフェース回路である。
【0080】
補助記憶装置105は、読み書き可能な記憶媒体と、その記憶媒体に対してプログラムやデータなどの各種情報を読み書きするための駆動装置とで構成されている。補助記憶装置105には、記憶媒体としてハードディスクやフラッシュメモリなどの半導体メモリを使用することができる。
【0081】
補助記憶装置105は、通信管理装置1が実行するベイズ推定および最尤推定プログラムを格納するプログラム格納領域を有する。また、補助記憶装置105は、通信端末2の通信制御を行うための通信制御プログラムを格納する領域を有する。補助記憶装置105によって、図1で説明した第1記憶部15、第2記憶部17が実現される。さらには、例えば、上述したデータやプログラムなどをバックアップするためのバックアップ領域などを有していてもよい。
【0082】
入出力I/O106は、外部機器からの信号を入力したり、外部機器へ信号を出力したりする入出力装置である。
【0083】
表示装置107は、有機ELや液晶ディスプレイなどのディスプレイで構成される。
【0084】
なお、推定装置1Aおよび通信制御装置1Bをそれぞれ別個のハードウェア構成としてもよく、その場合、推定装置1Aおよび通信制御装置1Bの各々が、図7に示すハードウェア構成を備える。
【0085】
[通信管理装置の動作]
次に、上述した構成を有する通信管理装置1の動作を、図8および図9のフローチャートを参照して説明する。図8および図9は、推定装置1Aによる推定処理を示すフローチャートである。
【0086】
まず、図8に示すように、収集部10が備える第1収集部10Aは、AMF41から通信端末2の在圏ログを収集する(ステップS1)。より具体的には、第1収集部10Aは、AMF41のテーブル410を参照し、通信端末2に割り当てられているIMSI1が在圏する通信エリアの基地局BS0~BSnおよび在圏した時間を示すタイムスタンプを収集する。
【0087】
次に、収集部10が備える第2収集部10Bは、SMF42から通信端末2の端末IPアドレスを取得する(ステップS2)。具体的には、第2収集部10Bは、SMF42のテーブル420を参照し、通信端末2のIMSI1に割り当てられている端末IP1を取得する。
【0088】
次に、収集部10が備える第3収集部10Cは、DNS43から、通信端末2によるウェブサイトのアクセスログを収集する(ステップS3)。より具体的には、第3収集部10Cは、DNS43が記憶するテーブル430を参照し、ステップS2で取得された端末IP1によるウェブサイトのサイトIPアドレスの指定とタイムスタンプとを収集する。
【0089】
続いて、第1取得部11Aは、通信端末2が、第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと、各基地局BS0~BSnの通信エリアに在圏している回数を示す第2観測データを取得する(ステップS4)。第1取得部11Aは、第1収集部10Aによって収集された在圏ログと、第3収集部10Cによって収集されたアクセスログとに基づいて、第1観測データを取得する。また、第1取得部11Aは、後述の学習部12における推定処理に用いる訓練データとして、所定の条件を満たす十分なデータ数の第1観測データを取得することができる。第1観測データにより、尤度関数P(Y|X)が設定される。
【0090】
第2取得部11Bは、通信端末2が特定のウェブサイトにアクセスした回数を示す第2観測データを取得する(ステップS5)。第2取得部11Bは、第3収集部10Cによって収集されたアクセスログに基づいて、第2観測データを取得する。第2観測データにおいては、通信端末2が第1~第kウェブサイトにアクセスする際に経由する基地局BSは、複数の基地局BS0~BSnのうちのどの基地局BSであってもよく、また特定される必要はない。第2観測データにより、事前分布P(X)を設定することができる。
【0091】
次に、学習部12は、第2観測データに基づいて得られた、通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスした確率分布を事前分布P(X)とし、かつ、第1観測データに基づいて得られた、通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと各基地局BS0~BSnの通信エリアに在圏している確率分布を尤度関数P(Y|X)とし、事前分布P(X)に対して尤度関数P(Y|X)で更新した事後分布P(X|Y)を推定する(ステップS6)。事後分布P(X|Y)は、通信端末2が各基地局BS0~BSnの通信エリアに在圏している条件のもと第1ウェブサイトにアクセスする確率分布である。
【0092】
ここで、図9を参照して、学習部12による最尤推定法を用いた事後分布P(X|Y)の推定処理について説明する。まず、学習部12は、事象Yの観測値tを上式(3)の関数f(x)で近似する(ステップS60)。また、ステップS12において、学習部12は、上式(6)に従って分散σを計算する。
【0093】
次に、学習部12は、上式(7)の正規分布に従った、観測点xで観測値tが得られる確率Pを用いて、周期Nの観測点xの事後分布P(X|Y)を推定する(ステップS61)。具体的には、学習部12は、上式(7)に、例えば、0.1刻みの値(0.1,0.2,・・・,0.9,1)を観測値tの値として順次代入し、最も確率が高い値を観測値tとし、観測値tに基づいて事後分布P(X|Y)を推定する。その後、処理は、図8のステップS7に移る。
【0094】
図8に戻り、学習部12は、全ての基地局BS0~BSnについての、事後分布P(X|Y)を算出すると(ステップS7:YES)、特定部13は、事後分布P(X|Y)の値が最大の値となる基地局BSを特定する(ステップS8)。一方、学習部12は、全ての基地局BS0~BSnについての事後分布P(X|Y)が算出されていない場合(ステップS7:NO)、ステップS4からステップS6までの処理を繰り返す。
【0095】
その後、出力部14は、ステップS8で特定された基地局BSの情報を、通信制御情報として通信制御装置1Bに出力する(ステップS9)。
【0096】
[通信管理システムの動作シーケンス]
次に、通信管理装置1が備える通信制御装置1Bの通信制御処理を、図10の通信管理システムの動作シーケンスを参照して説明する。まず、通信端末2は、在圏する通信エリアの基地局BS0を介して、さらにUPF_1を介してクラウド1と通信し、サイトIP1の第1ウェブサイトにアクセスしている(ステップS100)。なお、ステップS100では、通信端末2の通信開始時にランダムに割り当てられたUPF_1によりクラウド1に接続している。
【0097】
次に、コアネットワーク4が備えるSMF42は、IMSI1を有する通信端末2が、UPF_1を介してサイトIP1にアクセスしているとの情報を通信管理装置1に対して通知する(ステップS101)。SMF42はテーブル420を参照して通知を行う。通信管理装置1の第1取得部11Aおよび第2取得部11Bは、SMF42からの通知を取得する。
【0098】
次に、通信管理装置1が備える通信制御装置1Bは、推定装置1Aの出力部14から出力された通信制御情報を取得する(ステップS102)。例えば、通信制御情報として、通信端末2が、基地局BS0の通信エリアに在圏する条件のもと、サイトIP1の第1ウェブサイトにアクセスする確率分布の値が最も高いとの情報が取得される。
【0099】
次に、通信制御装置1Bの第3取得部16は、ステップS102で取得された基地局BS0の情報に基づいて、サイトIP1の第1ウェブサイトを提供するクラウド50のうち、基地局BS0からの物理的な距離が最短となるクラウド拠点のクラウドZに接続するUPF_Nの情報を取得する(ステップS103)。具体的には、第3取得部16は、第2記憶部17が記憶するテーブル170を参照し、サイトIP1の第1ウェブサイトのクラウド拠点のクラウド1~クラウドZのうち、基地局BS0-UPF40-クラウド50間の物理的な距離が最短となるUPF_Nを選択する。
【0100】
次に、通信制御装置1Bの通信制御部18は、SMF42に対してIMSI1に係る通信端末2が、UPF_Nを使用して通信すべきことを示す通信制御指示を送出する(ステップS104)。続いて、SMF42は、通信制御指示に応じて、UPF_Nに対してIMSI1の通信端末2とのセッション確立の指示を送出する(ステップS105)。次に、セッション確立指示を受け取ったUPF_Nは、通信端末2とのセッションを確立する(ステップS106)。
【0101】
その後、UPF_Nは、通信端末2とセッションが確立したことを示す通知をSMF42に送出する(ステップS107)。次に、SMF42は、IMSI1に係る通信端末2に対してUPF_Nとの通信を行うよう指示を行う(ステップS108)。その後、通信端末2は、通信指示に応じて基地局BS0からUPF_NおよびクラウドZとの通信を行い、サイトIP1の第1ウェブサイトにアクセスする(ステップS109)。
【0102】
以上説明したように、本実施の形態に係る通信管理装置1によれば、通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスした確率分布を事前分布とし、かつ、第1観測データに基づいて得られた、通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと各基地局BS0~BSnの通信エリアに在圏している確率分布を尤度関数とし、事前分布に対して尤度関数で更新した事後分布である、通信端末2が各基地局BS0~BSnの通信エリアに在圏している条件のもと第1ウェブサイトにアクセスする確率分布を推定する。そのため、伝送遅延時間の短縮のために、基地局BS0~BSn単位でユーザのアクセス傾向を把握することができる。
【0103】
また、本実施の形態に係る通信管理装置1によれば、通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスする確率が最も高い基地局BS0を特定する。そのため、MECを利用して、通信端末2が、基地局BS0から最短距離にあるクラウド拠点のクラウド50と通信を行うように通信管理を行うことができる。その結果として、通信端末2の通信における伝送遅延を抑制することができる。
【0104】
また、本実施の形態に係る通信管理装置1によれば、ベイズ推定の特別な場合における最尤推定法を利用するため、事象Xの観測データおよび尤度関数P(Y|X)に基づいて、事後分布P(X|Y)を推定することができる。
【0105】
なお、上述の実施の形態では、5Gに準拠する通信管理システムである場合を例示したが、6G等に準拠する通信管理システムであってもよい。
【0106】
また、上述した通信管理装置1では、推定装置1Aと通信制御装置1Bとが一つの装置内に設けられている場合について説明した。しかし、推定装置1Aと通信制御装置1Bとは、ネットワーク上に分散して独立した装置として構成されていてもよい。また、推定装置1Aおよび通信制御装置1Bが備える各機能部についてもそれぞれがネットワーク上に分散して構成する場合が含まれる。
【0107】
以上、本発明の通信管理装置および通信管理方法における実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0108】
1…通信管理装置、1A…推定装置、1B…通信制御装置、10…収集部、10A…第1収集部、10B…第2収集部、10C…第3収集部、11A…第1取得部、11B…第2取得部、12…学習部、13…特定部、14…出力部、15…第1記憶部、16…第3取得部、17…第2記憶部、18…通信制御部、2…通信端末、20…SIM、4…コアネットワーク、40…UPF、41…AMF、42…SMF、43…DNS、50…クラウド、101…バス、102…プロセッサ、103…主記憶装置、41a、42a、43a、104…通信インターフェース、105…補助記憶装置、106…入出力I/O、BS0~BSn…基地局、L、NW…ネットワーク。
【要約】
【課題】伝送遅延時間を短縮するために、基地局単位でユーザのアクセス傾向を把握することを目的とする。
【解決手段】
通信管理装置1は、通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスした確率分布を事前分布とし、かつ、第1観測データに基づいて得られた、通信端末2が第1ウェブサイトにアクセスしている条件のもと各基地局BS0~BSnの通信エリアに在圏している確率分布を尤度関数とし、事前分布に対して尤度関数で更新した事後分布である、通信端末2が各基地局BS0~BSnの通信エリアに在圏している条件のもと第1ウェブサイトにアクセスする確率分布を、ベイズ推定により推定する学習部12と、推定された事後分布の値が最大となる事後分布における、通信端末2が在圏する通信エリアの基地局BSを特定する特定部13とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10