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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】モータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20240501BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K5/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024501963
(86)(22)【出願日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2023037026
【審査請求日】2024-01-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 和弘
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-244664(JP,A)
【文献】特開2005-353724(JP,A)
【文献】特開2014-136997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御盤の取付壁部に取付けられるべき取付部と、
前記取付壁部の一面側に配置されるべきモータ制御部と、
前記取付壁部の他面側に配置されるべき放熱器であって前記モータ制御部の熱を放熱する放熱器と、を具備し、
前記取付部は、前記放熱器に対面する第一部分と、前記取付壁部に対面する基部とを含んでおり、
前記放熱器は前記取付壁部に対して平行な平面に沿って突出する突出部を有しており、
さらに、
前記取付部の前記第一部分と前記放熱器との間に配置された第一シール部材と、
前記取付部の前記基部と前記取付壁部との間および前記放熱器の前記突出部と前記取付壁部との間に配置された共通の第二シール部材とを具備する、モータ制御装置。
【請求項2】
前記第一シール部材および前記第二シール部材は、前記モータ制御部から前記放熱器に向かう方向において互いに異なる位置にあるようにした、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記取付部の前記基部の前記取付壁部と対面する面と、前記放熱器の前記突出部の前記取付壁部と対面する面は、略同一平面上に位置する、請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記取付部の前記基部と前記放熱器の前記突出部との間には隙間が形成されている、請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記放熱器に対面する前記取付部の前記第一部分の縁部には、切欠が形成されている請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記取付部の第一部分に取付けられた前記放熱器を前記取付壁部に形成された開口部に通し、
前記開口部の周囲に前記第二シール部材を配置して、前記放熱器を前記制御盤に取付けるようにした、請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械装置、例えばモータ駆動装置においては、内部で生じた熱を放熱器により外部に放熱する必要がある。例えば特開2020-080646号公報には、放熱器を備えたインバータ装置が開示されており、再公表WO2015/053140号には、放熱器を備えた電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-080646号公報
【文献】再公表WO2015/053140号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械装置、例えばモータ駆動装置は、放熱器が結合される取付部(フランジ)を有している。モータ駆動装置を取付けるための制御盤の取付壁部には、放熱器を制御盤の外部に露出させるための開口部が形成されている。放熱器を制御盤の開口部に通して、モータ制御装置の取付部を制御盤の取付壁部に固定する。従って、モータ駆動装置から生じた熱を放熱器により制御盤の外部に放熱できる。
【0005】
制御盤の取付壁部よりもモータ駆動装置側は密閉されたクリーン領域である。これに対し、制御盤の取付壁部よりも放熱器側は、外部に露出している。そして、制御盤は汚染物質、例えば切削液ミストが浮遊する環境に配置される場合がある。
【0006】
このような場合に、モータ駆動装置の取付部と制御盤の取付壁部との間にシール部材、例えばパッキンを配置して密閉することが望まれる。また、取付部と放熱器との間にもシール部材、例えばシール剤を同様に配置することが望まれている。
【0007】
それゆえ、複数のシール部材を備えたモータ駆動装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1番目の態様によれば、制御盤の取付壁部に取付けられるべき取付部と、前記取付壁部の一面側に配置されるべきモータ制御部と、前記取付壁部の他面側に配置されるべき放熱器であって前記モータ制御部の熱を放熱する放熱器と、を具備し、前記取付部は、前記放熱器に対面する第一部分と、前記取付壁部に対面する基部とを含んでおり、前記放熱器は前記取付壁部に対して平行な平面に沿って突出する突出部を有しており、さらに、前記取付部の前記第一部分と前記放熱器との間に配置された第一シール部材と、前記取付部の前記基部と前記取付壁部との間および前記放熱器の前記突出部と前記取付壁部との間に配置された共通の第二シール部材とを具備する、モータ制御装置が提供される。
【0009】
本開示の目的、特徴及び利点は、添付図面に関連した以下の実施形態の説明により一層明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本開示に基づくモータ駆動装置の斜視図である。
図1B】本開示に基づくモータ駆動装置を含む制御盤の簡略化した側断面図である。
図2】モータ駆動装置の部分斜視図である。
図3A】第一の実施形態に基づくモータ駆動装置の正面図である。
図3B図3Aに示されるモータ駆動装置の頂面図である。
図3C図3Bの部分拡大図である。
図4A】第二の実施形態に基づくモータ駆動装置の正面図である。
図4B図4Aに示されるモータ駆動装置の頂面図である。
図4C図4Bの部分拡大図である。
図5A図3Cと同様な他の部分拡大図である。
図5B図4Cと同様な他の部分拡大図である。
図6A図3Cと同様なさらに他の部分拡大図である。
図6B図4Cと同様なさらに他の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。図1Aは本開示に基づくモータ駆動装置の斜視図であり、図1Bは本開示に基づくモータ駆動装置を含む制御盤の簡略化した側断面図である。
【0012】
図1Aに示されるように、機械装置、例えばモータ駆動装置1は制御盤11内に備えられたモータ制御部10(図1Aには示さない)と、放熱器14とを主に含んでいる。放熱器14の上方にはファンFが備えられている。図1Bに示されるように、制御盤11は、建物の壁12または他の機械に隣接して設置されている。制御盤11は、例えばNC工作機械の強電制御盤であり、モータ駆動装置1は、例えばサーボモータ21を制御するためのモータ制御部10(パワー素子)、モータ制御部10を冷却するための放熱器14、例えばヒートシンクを備えている。
【0013】
本実施形態の制御盤11の筐体は、図1Bに示されるように互いに平行に配置された前壁部11aおよび後方の取付壁部11bを有する。取付壁部11bは建物の壁12に対向して配置されている。一方、前壁部11aは、制御盤11の操作者が制御盤11内のモータ駆動装置1や、不図示の計器類およびスイッチ類などを視認および操作できるように、例えば透明窓を備えた扉からなる。図1Bに示されるように、モータ制御部10は取付壁部11bの一側に配置されており、放熱器14は取付壁部11bの他側に配置されている。
【0014】
さらに、モータ制御部10の一側には、モータ制御部10を制御盤11の取付壁部11bの前面11b1に取付けるためのフランジ状の取付部13が設けられている。また、放熱器14は、モータ制御部10を冷却するため、モータ制御部10の一側に概ね対応した形状であることが好ましい。さらに、放熱器14はアルミニウムや銅などの熱伝導性に優れた金属であることが好ましい。
【0015】
簡潔にする目的で図1Bにおいて放熱器14のファンFは省略されている。放熱器14は、例えば所定の間隔を置いて配置されていて上下方向に延びる矩形状の複数の冷却フィンを備えている。勿論、放熱器14はそのような冷却フィンを備えるものに限定されず、モータ制御部10から外部へ熱を逃がす効果を奏するものならばどのような構造でも構わない。例えば、金属ブロックの表面に円柱形状または円錐形状の複数の凸部を形成することによって放熱器14が構成されていてもよい。
【0016】
図2はモータ駆動装置の部分斜視図である。図1Aに示されるモータ駆動装置1のハウジングおよびファンFを排除すると、図2に示される状態となる。図1Bから分かるように、取付壁部11bには開口部16が形成されている。そして、モータ制御部10は制御盤11内に配置されるものの、モータ制御部10の取付部13に取付けられた放熱器14は開口部16を通って制御盤11外(特に制御盤11の後側)に配置されている。そのため、取付壁部11bの開口部16は、放熱器14よりも大きく形成されている。さらに、その開口部16よりも一回り大きく取付部13が形成されている。
【0017】
このように取付部13および開口部16の各寸法を規定することにより、放熱器14だけを制御盤11外に出しつつ、モータ制御部10の取付部13を制御盤11の取付壁部11bの前面11b1に当接および固定できるようにしている。このため、放熱器14を清掃したい場合には、清掃作業者は制御盤11の前側から取付部13にアクセスして、取付部13とともに放熱器14を着脱することもできる。
【0018】
図3Aは第一の実施形態に基づくモータ駆動装置の正面図であり、図3B図3Aに示されるモータ駆動装置の頂面図であり、図3C図3Bの部分拡大図である。図3Aおよび後述する図4Aには複数のモータ制御部10が示されているが、モータ駆動装置1は少なくとも一つのモータ制御部10を含むものとする。取付部13は、少なくとも一つのモータ制御部10を備えるのに十分な寸法を有している。
【0019】
図3Bおよび図3Cに示されるように、取付部13の断面は少なくとも一つの略L字形状を含む。取付部13は、放熱器14に対面する第一部分13aと、制御盤11の取付壁部11bに対面する第二部分13bとを含んでいる。図3C等から分かるように、第一部分13aはモータ制御部10から放熱器14に向かう方向において上流側に位置しており、第二部分13bはこの方向において第一部分13aよりも下流側に位置している。つまり、この方向において、取付部13の第一部分13aおよび第二部分13bは互いに異なる位置に在る。
【0020】
第一部分13aおよび第二部分13bは基部13cにより互いに連結されている。第一部分13aは基部13cの一端から、取付壁部11bに対して平行な平面において取付部13の中心に向かって延びている。第二部分13bは基部13cの他端から、第一部分13aとは反対方向に延びている。基部13cは第一部分13aおよび第二部分13bに対して垂直に延びている。また、第一部分13a、第二部分13bおよび基部13cは一体的に形成されるのが好ましい。
【0021】
図1Bを再び参照すると、制御盤11は閉鎖されているので、モータ制御部10は密閉されたクリーン領域にある。これに対し、放熱器14は開口部16を通じて制御盤11の外部に露出している。従って、制御盤11が汚染物質、例えば切削液ミストが浮遊する環境に配置される場合には、そのような汚染物質が取付部13や開口部16等を通ってモータ制御部10に到達する可能性がある。
【0022】
この点に関し、本開示においては、図3Cに示されるように、取付部13の第一部分13aと放熱器14との間に第一シール部材61が配置されている。第一シール部材61は、例えば樹脂製のシール剤である。あるいは、第一シール部材61は、第一部分13aに対応する外形を有する枠状の樹脂製シートであってもよい。第一シール部材61を配置するために、第一部分13aの下面および/または放熱器14の上面には、第一シール部材61に対応した形状の凹部が形成されていてもよい。また、第一部分13aと放熱器14との間に第一シール部材61が介在している状態で、第一部分13aと放熱器14とをネジ等の留め具で固定するようにしてもよい。
【0023】
さらに、取付部13の第二部分13bと取付壁部11bとの間には、第二シール部材62が配置されている。第二シール部材62は、第二部分13bに対応する外形を有するパッキンまたはOリングでありうる。あるいは、第二シール部材62も、第一シール部材61と同様な樹脂製のシール剤であってもよい。また、第二部分13bと取付壁部11bとの間に第二シール部材62が介在している状態で、第二部分13bと取付壁部11bとをネジ等の留め具で固定するようにしてもよい。
【0024】
このように本開示のモータ駆動装置1は、取付部13と放熱器14との間をシールする第一シール部材61と取付部13と取付壁部11bとの間をシールする第二シール部材62とを備えている。従って、制御盤11外部の汚染物質が取付部13と放熱器14との間および/または取付部13と取付壁部11bとの間を通って制御盤11内に進入することはできない。このため、汚染物質が制御盤11内のモータ制御部10の動作に影響を与えることはない。さらに、図1Bに一点鎖線により示されるような壁面パネル22を制御盤11の外面に取付けることにより、汚れた外気が制御盤11内に導入される可能性を低減させるようにしてもよい。
【0025】
図4Aは第二の実施形態に基づくモータ駆動装置の正面図であり、図4B図4Aに示されるモータ駆動装置の頂面図であり、図4C図4Bの部分拡大図である。図4A等に示されるモータ駆動装置1’は、図3A等に示されるモータ駆動装置1よりも小型である。
【0026】
図3B図4Bとにおいて同一規格のモータ制御部10を使用しており、従って、モータ制御部10の幅W0は変化していない。このため、第二の実施形態における放熱器14’の幅W2を極端に低下させることはできず、従って、少なくともモータ制御部10の幅W0以上の幅W2を有する放熱器14’を使用する必要がある。図3Bにおける放熱器14の幅W1と、図4Bにおける放熱器14’の幅W2とを比較すると、これら幅の比W2/W1は0.7~0.9である。なお、本願明細書における「幅」とは、モータ制御部10から放熱器14に向かう方向に対して垂直な方向、且つ図1Bにおける高さ方向に対して垂直な方向における長さを意味する。例えば放熱器14が複数のフィンを備えている場合には、「幅」は複数のフィンの延びる方向に対して垂直な方向である。
【0027】
このように、モータ制御部10の幅W0を変化させることはできず、且つ、放熱器14’の幅W2を極端に小さくできない。従って、モータ駆動装置1を小型化するためには、取付部13’の幅を小さくする必要がある。
【0028】
このため、図4Cに示される取付部13’は、前述したのと同様な第一部分13a’および基部13c’のみからなり、第二部分13bを備えていない。このため、取付部13’の基部13c’の端部が取付壁部11bに対面するようになる。取付部13’が第二部分13bを備えていないことから、取付部13’は取付部13よりも小さくなり、その結果、モータ駆動装置1全体が小さくなる。なお、第二の実施形態において基部13c’を第二部分13bと適宜読み替えるようにしてもよい。
【0029】
前述した図3Cにおいては、第二シール部材62の全幅部分は取付部13の第二部分13bに当接している。従って、図3Cにおいては、第二シール部材62は十分なシール性能を呈することができる。
【0030】
ここで、図3Cに示される第二シール部材62の幅は、図4Cに示される第二シール部材62の幅に概ね等しい。また、基部13c’の幅は基部13cの幅と同じである。しかしながら、取付部13’が第二部分13bを備えていないので、第二シール部材62は取付部13’の基部13c’と取付壁部11bとの間にのみ当接することになりうる。そのような場合には、第二シール部材62は十分なシール性能を呈することができない。
【0031】
このような事態に対処するために、図4Cにおいては、放熱器14’の側部に突出部14aが設けられている。突出部14aは、モータ制御部10に係合する放熱器14’の一部分の外周部全体に設けられるのが好ましい。言い換えれば、突出部14aは、取付壁部11bに対して平行な平面に沿って突出する。図4Cから分かるように、突出部14aは取付部13’の基部13cに対面するように形成される。そして、突出部14aの下端は基部13c’の下端と同一平面であるか、または略同一平面であるのが好ましい。
【0032】
突出部14aを備えることにより、単一の第二シール部材62の全幅部分のうちの一部分は取付部13の基部13c’に当接すると共に、他の部分は放熱器14’の突出部14aに当接するようになる。従って、共通の第二シール部材62が、複数の部材(基部13c’および突出部14a)に当接することになる。言い換えれば、単一の第二シール部材62は複数の部材(基部13c’および突出部14a)に跨がって配置されることになる。
【0033】
その結果、図4Cに示される構成においては、取付部13の基部13c’と放熱器14’の突出部14aとの合計の幅は、第二シール部材62の全幅に概ね相当する。このため、第一の実施形態の図3Cに示される第二シール部材62と同じ寸法の第二シール部材62を第二の実施形態で使用することができる。従って、第二の実施形態においても第二シール部材62は十分なシール性能を呈することができる。
【0034】
これに対し、図面には示さないものの、突出部14aが存在しない場合には、第二シール部材62の全幅部分のうちの一部分のみが、基部13c’に当接するので、この一部分のみがシール性能を呈することになる。そのような場合には、第二シール部材62としてのシール性能が低下することが分かるであろう。
【0035】
なお、第二の実施形態において、取付部13’の基部13c’と放熱器14’の突出部14aとの合計の幅を更に大きくすると共に、第二シール部材62の幅も相応に大きくするようにしてもよい。この場合には、シール性能を向上させられるのが分かるであろう。この目的のために、取付部13’が第二部分13bを有するようにしてもよい。
【0036】
さらに、図4Cに示されるように、基部13c’と突出部14aとの間には、隙間Gが形成される場合がある。隙間Gの縁部は第二シール部材62に位置している。このような隙間Gが形成される場合には、第二シール部材62と基部13c’との間、および第二シール部材62と突出部14aとの間の二箇所に、シール部分が確保されることとなり、さらに高いシール性能を確保することができる。
【0037】
ところで、図5A図3Cと同様な他の部分拡大図である。図5Aにおいて、第一シール部材61としてシール剤を使用する場合には、シール剤の一部が、取付部13の第一部分13aと放熱器14との間の隙間から漏出して、溜まり部61aが形成される場合がある。ただし、図5Aに示されるように、取付部13の第一部分13aとモータ制御部10との間の距離が十分に確保できている場合には、溜まり部61aが形成されたとしても、溜まり部61aはモータ制御部10に到達せず、従って、大きな問題はない。
【0038】
しかしながら、図4Cに示されるように、モータ駆動装置1’を小型化する場合には、第一部分13a’とモータ制御部10との間の距離が小さくなる。そのように小型化されたモータ駆動装置1’においては、溜まり部61aがモータ制御部10に近接するので、溜まり部61aのシール剤がモータ制御部10の下面に浸入し、その結果、モータ制御部10の実装が困難になる可能性がある。
【0039】
このため、第二の実施形態においては取付部13’の第一部分13a’に切欠60が形成されている。図4Cに示されるように、切欠60は、モータ制御部10側において放熱器14’に当接する第一部分13a’の縁部に形成されている。
【0040】
図5B図4Cと同様な他の部分拡大図である。図5Bにおいても、シール剤の一部が、取付部13’の第一部分13a’と放熱器14’との間の隙間から漏出して、溜まり部61bが同様に形成されている。しかしながら、切欠60が形成されているので、溜まり部61bの一部分は切欠60内に留まり、溜まり部61bの他の部分のみが第一部分13a’の外部に出現することになる。つまり、切欠60によって、多量のシール剤が取付部13’の外部に漏出するのを抑えることが可能となる。その結果、溜まり部61bがモータ制御部10に到達するのを避けられ、モータ制御部10の実装が困難になることを防止できる。
【0041】
さらに、図6A図3Cと同様なさらに他の部分拡大図である。図6Aに示される取付部13の第二部分13bの下面には、少なくとも一つのスリット71が形成されている。第二部分13bの下面に形成されるスリット71の深さは、第二部分13bの厚みの半分より小さいのが好ましい。これらスリット71の入口は第二シール部材62に当接している。このような場合には、第二シール部材62と第二部分13bとの間に複数のシール部分が確保されることとなり、さらに高いシール性能を確保することができる。
【0042】
さらに、図6B図4Cと同様なさらに他の部分拡大図である。図6Bに示される取付部13’の基部13c’の下面には、少なくとも一つのスリット72が形成されている。さらに、同様なスリット72が突出部14aの下面に形成されている。なお、図6Bでは一つのスリット72が突出部14aの下面に形成されているが、複数のスリット72が突出部14aの下面に形成されていてもよい。基部13c’または突出部14aの下面に形成されるスリット72の深さは、前述したスリット71と同程度であるのが好ましい。
【0043】
前述したのと同様に、これらスリット72の入口は第二シール部材62に当接している。このような場合にも、第二シール部材62と基部13c’との間に複数のシール部分が確保されることとなり、さらに高いシール性能を確保することができる。
【0044】
なお、少なくとも一つのスリット72が基部13c’の下面および突出部14aの下面のうちの一方にのみ形成されていてもよい。さらに、スリット71、72の代わりに、複数の溝を第二部分13bおよび基部13c’の下面に形成してもよい。そのような場合にも概ね同様な効果が得られるのが分かるであろう。
【0045】
さらに、取付部13の構成は前述した形状に限られない。例えば、図3Cに示される第一の実施形態において、取付部13が第二部分13bを備えておらず、基部13cの下面が第二シール部材62の幅に対応した幅を有していてもよい。同様に、図4Cに示される取付部13’が第二シール部材62に当接する第二部分13bを有していてもよい。これらの場合であっても、本開示の範囲に含まれる。
【0046】
以上説明した少なくとも一つの実施形態の効果としては、複数のシール部材を備えたモータ駆動装置を提供することができる。このため、外部の汚染物質がモータ制御部を汚染するのを避けられる。
【0047】
本開示の実施形態について詳述したが、本開示は上述した個々の実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、または請求の範囲に記載された内容とその均等物から導き出される本発明の思想および趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、置き換え、変更、部分的削除などが可能である。例えば、上述した実施形態において、各動作の順序や各処理の順序は、一例として示したものであり、これらに限定されるものではない。また、上述した実施形態の説明に数値又は数式が用いられている場合も同様である。さらに、前述した実施形態の幾つかを適宜組み合わせることは本開示の範囲に含まれる。
【0048】
上記実施形態および変型例に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
制御盤(11)の取付壁部(11b)に取付けられるべき取付部(13’)と、
前記取付壁部(11b)の一面側に配置されるべきモータ制御部(10)と、
前記取付壁部(11b)の他面側に配置されるべき放熱器であって前記モータ制御部(10)の熱を放熱する放熱器(14’)と、を具備し、
前記取付部(13’)は、前記放熱器(14’)に対面する第一部分(13a’)と、前記取付壁部(11b)に対面する基部(13c’)とを含んでおり、
前記放熱器(14’)は前記取付壁部(11b)に対して平行な平面に沿って突出する突出部(14a)を有しており、
さらに、
前記取付部(13’)の前記第一部分(13a’)と前記放熱器(14’)との間に配置された第一シール部材(61)と、
前記取付部(13’)の前記基部(13c’)と前記取付壁部(11b)との間および前記放熱器(14’)の前記突出部(14a)と前記取付壁部(11b)との間に配置された共通の第二シール部材(62)とを具備する、モータ制御装置。
(付記2)
前記第一シール部材(61)および前記第二シール部材(62)は、前記モータ制御部(10)から前記放熱器(14)に向かう方向において互いに異なる位置にあるようにした、付記1に記載のモータ制御装置。
(付記3)
前記取付部(13’)の前記基部(13c’)の前記取付壁部(11b)と対面する面と、前記放熱器(14)の前記突出部(14a)の前記取付壁部(11b)と対面する面は、略同一平面上に位置する、付記1又は2に記載のモータ制御装置。
(付記4)
前記取付部(13’)の前記基部(13c’)と前記放熱器(14)の前記突出部(14a)との間には隙間(G)が形成されている、付記1から3のいずれかに記載のモータ制御装置。
(付記5)
前記放熱器(14’)に対面する前記取付部(13’)の前記第一部分(13a’)の縁部には、切欠(60)が形成されている付記1から4のいずれかに記載のモータ制御装置。
(付記6)
前記取付部(13’)の第一部分(13a’)に取付けられた前記放熱器(14’)を前記取付壁部(11b)に形成された開口部(16)に通し、
前記開口部(16)の周囲に前記第二シール部材(62)を配置して、前記放熱器(14’)を前記制御盤(11)に取付けるようにした、付記1から5のいずれかに記載のモータ制御装置。
【符号の説明】
【0049】
1、1’ モータ駆動装置
10 モータ制御部
11 制御盤
11a 前壁部
11b 取付壁部
11b1 前面
12 建物の壁
13、13’ 取付部
13a、13a’ 第一部分
13b 第二部分
13c、13c’ 基部
14、14’ 放熱器
16 開口部
21 サーボモータ
22 壁面パネル
61 第一シール部材
62 第二シール部材
61a、61b 溜まり部
71、72 スリット
【要約】
モータ制御装置は、制御盤の取付壁部に取付けられるべき取付部と、取付壁部の一面側に配置されるべきモータ制御部と、取付壁部の他面側に配置されるべき放熱器とを含む。取付部は、放熱器に対面する第一部分と、取付壁部に対面する基部とを含む。放熱器は取付壁部に対して平行な平面に沿って突出する突出部を有する。モータ制御装置は、取付部の第一部分と放熱器との間に配置された第一シール部材と、取付部の基部と取付壁部との間および放熱器の突出部と取付壁部との間に配置された共通の第二シール部材とを更に含む。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B