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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】カバー、シール構造および産業機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/12 20060101AFI20240501BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20240501BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20240501BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20240501BHJP
   F16N 31/00 20060101ALI20240501BHJP
   F16N 33/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B23Q11/12 Z
B23Q11/08 Z
B25J19/00 Z
F16H57/04 Z
F16N31/00 Z
F16N33/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024505596
(86)(22)【出願日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2023037524
【審査請求日】2024-01-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 諒
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107289115(CN,A)
【文献】特開2005-177914(JP,A)
【文献】特開2020-116716(JP,A)
【文献】特開2022-155816(JP,A)
【文献】特開2022-085273(JP,A)
【文献】特開平11-254377(JP,A)
【文献】特開2016-017300(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113007332(CN,A)
【文献】国際公開第2023/275972(WO,A1)
【文献】中国実用新案第207261144(CN,U)
【文献】特開2015-145719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/08、12
B25J 19/00
F16H 57/04
F16J 12/00
F16N 31/00、33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械本体の密閉された被潤滑部から潤滑材を排出するための排脂口の周囲の空間を開放可能に閉塞するカバーであって、
前記産業機械本体に取り付けられた状態で、前記排脂口を露出させる貫通孔と、該貫通孔の周囲に全周にわたって設けられ前記排脂口の周囲に全周にわたって設けられた第1座面に対向させられる第1合わせ面と、前記第1座面の外側を全周にわたって取り囲む位置に設けられた第2座面に全周にわたって対向して配置される第2合わせ面とを備え、
前記第1合わせ面が、前記第1座面との間において圧縮される第1シール部材によって、前記貫通孔の周囲を全周にわたって密封可能であるカバー。
【請求項2】
前記第1合わせ面に、前記貫通孔の周囲を全周にわたって取り囲み、前記第1シール部材を収容可能な第1シール溝が設けられている請求項1に記載のカバー。
【請求項3】
前記第2合わせ面に、全周にわたって延び、前記第2座面との間で圧縮される第2シール部材を収容する第2シール溝が設けられている請求項2に記載のカバー。
【請求項4】
前記第2座面に、周方向に間隔を開けて複数のネジ孔が設けられ、
前記第2合わせ面に、前記ネジ孔に対応する位置に設けられボルトを貫通させる複数のボルト孔が設けられている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカバー。
【請求項5】
前記第1シール部材がOリングである請求項1から請求項のいずれか1項に記載のカバー。
【請求項6】
前記第1合わせ面および前記第2合わせ面が同一平面上に配置されている請求項1から請求項のいずれか1項に記載のカバー。
【請求項7】
産業機械本体の密閉された被潤滑部から潤滑材を排出するための排脂口の周囲の空間をカバーによって開放可能に閉塞するシール構造であって、
前記産業機械本体に備えられ、前記排脂口の周囲に全周にわたって設けられた第1座面および該第1座面の外側を全周にわたって取り囲む位置に設けられた第2座面と、
前記カバーに設けられ、前記産業機械本体に取り付けられた状態で、前記排脂口を露出させる貫通孔、前記第1座面に全周にわたって対向して配置される第1合わせ面および前記第2座面に全周にわたって対向して配置される第2合わせ面と、
前記第1合わせ面と前記第1座面との間において圧縮されることにより、前記貫通孔の周囲を全周にわたって密封可能な第1シール部材とを備えるシール構造。
【請求項8】
前記第1合わせ面または前記第1座面に、前記排脂口の周囲を全周にわたって取り囲み、前記第1シール部材を収容可能な第1シール溝が設けられている請求項7に記載のシール構造。
【請求項9】
前記第2合わせ面または前記第2座面に、全周にわたって延び、前記第2座面との間で圧縮される第2シール部材を収容する第2シール溝が設けられている請求項8に記載のシール構造。
【請求項10】
前記第2座面に、周方向に間隔を開けて複数のネジ孔が設けられ、
前記第2合わせ面に、前記ネジ孔に対応する位置に設けられボルトを貫通させる複数のボルト孔が設けられている請求項7から請求項9のいずれか1項に記載のシール構造。
【請求項11】
前記第1シール部材がOリングである請求項7から請求項のいずれか1項に記載のシール構造。
【請求項12】
前記第1座面および前記第2座面が同一平面上に配置されている請求項7から請求項のいずれか1項に記載のシール構造。
【請求項13】
産業機械本体と、該産業機械本体に取り付けられるカバーと、該カバーと前記産業機械本体との間に挟まれる第1シール部材とを備え、
前記産業機械本体が、密閉された被潤滑部から潤滑材を排出するための排脂口の周囲に全周にわたって設けられた第1座面と、該第1座面の外側を全周にわたって取り囲む位置に設けられた第2座面とを備え、
前記カバーが、前記産業機械本体に取り付けられた状態で、前記排脂口を露出させる貫通孔と、前記第1座面に全周にわたって対向して配置される第1合わせ面と、前記第2座面に全周にわたって対向して配置される第2合わせ面とを備え、
前記第1シール部材が、前記第1合わせ面と前記第1座面との間において圧縮されることにより、前記貫通孔の周囲を全周にわたって密封可能である産業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カバー、シール構造および産業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、減速機等の密閉された被潤滑部に対してグリス等の潤滑材が注入され、使用されてきた古い潤滑材を排脂口から排出する潤滑材排出構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この潤滑材排出構造は、排脂口に接続されたチューブと、チューブの先端を開放可能に閉塞するプラグと、潤滑材非交換時にチューブを排脂口に接続した状態のまま収容するカバーとを備えている。カバーに孔を設け、チューブの先端のプラグをカバーから露出させておくことにより、カバーを取り外すことなく、プラグを取り外して開放されたチューブの先端から潤滑材を排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-177914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この構造では、チューブ、排脂口にチューブを接続するための接続部品、チューブの先端にプラグを着脱可能に取り付けるための継手およびチューブを取り付ける作業が必要である。したがって、部品点数、加工工数および組立工数を低く抑え、低コストで、交換時に排出される潤滑材によって内側を汚すことなく、容易に交換作業を行うことが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、産業機械本体の密閉された被潤滑部から潤滑材を排出するための排脂口の周囲の空間を開放可能に閉塞するカバーであって、前記産業機械本体に取り付けられた状態で、前記排脂口を露出させる貫通孔と、該貫通孔の周囲に全周にわたって設けられ前記排脂口の周囲に全周にわたって設けられた第1座面に対向させられる第1合わせ面と、前記第1座面の外側を全周にわたって取り囲む位置に設けられた第2座面に全周にわたって対向して配置される第2合わせ面とを備え、前記第1合わせ面が、前記第1座面との間において圧縮される第1シール部材によって、前記貫通孔の周囲を全周にわたって密封可能であるカバーである。
【0006】
また、本開示の他の態様は、産業機械本体の密閉された被潤滑部から潤滑材を排出するための排脂口の周囲の空間をカバーによって開放可能に閉塞するシール構造であって、前記産業機械本体に備えられ、前記排脂口の周囲に全周にわたって設けられた第1座面および該第1座面の外側を全周にわたって取り囲む位置に設けられた第2座面と、前記カバーに設けられ、前記産業機械本体に取り付けられた状態で、前記排脂口を露出させる貫通孔、前記第1座面に全周にわたって対向して配置される第1合わせ面および前記第2座面に全周にわたって対向して配置される第2合わせ面と、前記第1合わせ面と前記第1座面との間において圧縮されることにより、前記貫通孔の周囲を全周にわたって密封可能な第1シール部材とを備えるシール構造である。
【0007】
また、本開示の他の態様は、産業機械本体と、該産業機械本体に取り付けられるカバーと、該カバーと前記産業機械本体との間に挟まれる第1シール部材とを備え、前記産業機械本体が、密閉された被潤滑部から潤滑材を排出するための排脂口の周囲に全周にわたって設けられた第1座面と、該第1座面の外側を全周にわたって取り囲む位置に設けられた第2座面とを備え、前記カバーが、前記産業機械本体に取り付けられた状態で、前記排脂口を露出させる貫通孔と、前記第1座面に全周にわたって対向して配置される第1合わせ面と、前記第2座面に全周にわたって対向して配置される第2合わせ面とを備え、前記第1シール部材が、前記第1合わせ面と前記第1座面との間において圧縮されることにより、前記貫通孔の周囲を全周にわたって密封可能である産業機械である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係るカバー、シール構造および産業機械を説明する部分的な縦断面図である。
図2図1のカバーおよび産業機械の部分的な側面図である。
図3図1のカバーを取り付した状態の産業機械本体の部分的な側面図である。
図4図2のカバーの背面図である。
図5図1のカバー、シール構造および産業機械を説明する部分的な分解縦断面図である。
図6図1の産業機械における排脂作業を説明する部分的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態に係るカバー12、シール構造30および産業機械について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態においては、産業機械としてロボット1を例に挙げて説明する。
【0010】
ロボット1としては、任意の形式のロボットを採用できるが、ここでは、垂直6軸多関節型ロボットのように、水平な軸線回りに回転駆動される少なくとも1つの回転関節を備えるロボットを用いて説明する。
産業機械としては、ロボット1の他、工作機械、あるいは射出成形機のように、減速機3等の密閉された被潤滑部4を備え、被潤滑部4から使用済みの潤滑材を排出する排脂口5aが備えられた任意の産業機械を想定することができる。
【0011】
ロボット1は、図1に示すように、床面等の被設置面に固定されるベース(図示略)に対して、鉛直軸線回りに回転可能に支持された旋回胴(産業機械本体)2を備える。また、ロボット1は、旋回胴2に対して水平軸線A回りに回転可能に支持される第1アーム(図示略)を備える。
【0012】
旋回胴2と第1アームとの間には、図示しないモータの回転を減速して、旋回胴2に対して第1アームを水平軸線A回りに回転駆動する減速機3が備えられている。減速機3は、内部に減速機構(図示略)を備え、減速機構を潤滑するためのグリス等の潤滑材が充填される。これにより、減速機3は、そのケース、旋回胴2および第1アームによって密封された被潤滑部4を構成している。
【0013】
旋回胴2には、減速機3の内部とロボット1の外部とを連通する排脂孔5が設けられている。排脂孔5の先端の排脂口5aは、旋回胴2の鉛直な側面に開口し、通常状態では、着脱可能なプラグ6によって閉塞されている。排脂孔5は、例えば、図1および図2に示すように、減速機3の径方向の外形の内側であって、水平軸線Aよりも高い位置に設けられている。この位置は、減速機3において推奨される潤滑材の充填レベルに一致している。
【0014】
本実施形態においては、旋回胴2および減速機3は、水平軸線Aを含む領域に、水平軸線Aに沿って貫通する中央開口2a,3aを備えている。中央開口2a,3aは、図1に示すように、例えば、ベース側から立ち上がってきた線条体7を貫通させる。
【0015】
線条体7は、図1には1本のみ示されているが、例えば、第1アームの先端側に配置されているモータを駆動するためのケーブル、送水用または送気用のチューブ等を複数本備えてもよい。線条体7は、旋回胴2に固定された図示しない板金に、例えば、図示しないナイロンバンド等の固定具によって、その長手方向の途中位置を旋回胴2に固定された後に中央開口2a,3aを貫通するように配線される。
【0016】
旋回胴2は、後述するカバー12を取り付けるための座面(第1座面および第2座面)8,9を備える。図3に示すように、第1座面8は、排脂口5aを全周にわたって取り囲む位置に設けられ、鉛直方向に延びる、機械加工された平面である。第2座面9も、鉛直方向に延びる、機械加工された平面であり、環状に形成され、その内側縁は、旋回胴2の内部空間Mを外部に開口させる開口部10を形成する。
【0017】
カバー12を取り外した状態の開口部10内には、ベース側に続く空間、旋回胴2に減速機3を取り付けるための取付ボルト11および中央開口2aが配置されている。すなわち、旋回胴2からカバー12を取り外した状態では、第2座面9の内側に開口している開口部10を経由して、旋回胴2への減速機3の取り付け作業、線条体7の配線作業等を行うことができる。
【0018】
本実施形態においては、第1座面8と第2座面9とは同一平面上に設けられ、図3に示すように、相互に連続している。第2座面9には、カバー12を取り付けるためのネジ孔13が、周方向に間隔を開けて複数設けられている。
【0019】
ロボット1は、さらに、旋回胴2に取り付けられる本実施形態に係るカバー12と、カバー12と旋回胴2との間を密封する第1シール部材14および第2シール部材15とを備えている。
カバー12は、図4に示すように、旋回胴2に取り付けたときに、排脂口5aを露出させる貫通孔16と、第1座面8に全周にわたって対向して配置される第1合わせ面17と、第2座面9に全周にわたって対向して配置される第2合わせ面18とを備える。第1合わせ面17および第2合わせ面18として、具体的には、カバー12をダイカストで製作して加工レスの面を採用してもよいし、カバー12に対して加工することによって形成された加工面を採用してもよい。
【0020】
貫通孔16は、図1に示すように、カバー12の第1合わせ面17側から外面側に向かって漸次広がる形状を有する。本実施形態においては、第1合わせ面17と第2合わせ面18とは分離しているが同一平面上に設けられている。
【0021】
また、第1合わせ面17には、貫通孔16の周囲を全周にわたって取り囲む円環状の第1シール溝19が設けられている。第2合わせ面18は、第2座面9に対向して配置したときに、第2座面9のネジ孔13に対応する位置に設けられた複数のボルト孔21を備える。また、第2合わせ面18は、全てのボルト孔21よりも第2合わせ面18の内側縁側に、内側縁に沿って形成された環状の第2シール溝20を備える。
【0022】
第1シール部材14は、第1シール溝19に収容されるゴム製のOリングである。
第2シール部材15は、第2シール溝20に収容されるOリングと同様の横断面および材質からなり、第2シール溝20の形状に合わせて予め成形された環状のシール部材である。
【0023】
本実施形態に係るシール構造30は、上述したように、旋回胴2に設けられた第1座面8および第2座面9と、カバー12に設けられた貫通孔16、第1合わせ面17および第2合わせ面18と、第1シール部材14および第2シール部材15とを備える。
【0024】
本実施形態に係るカバー12、シール構造30および産業機械の作用について、以下に説明する。
本実施形態によれば、旋回胴2からカバー12を取り外すことにより、旋回胴2の内部空間Mが開口部10によって開放されるので、開口部10を経由して、減速機3の取り付け、取り外し作業、線条体7の配線作業等を行うことができる。
また、本実施形態に係るカバー12を旋回胴2に取り付けることにより、開口部10を閉塞して内部空間Mを密閉された状態に画定し、開口部10内に配置されているベースに続く空間および線条体7等の内部構造を隠すことができる。
【0025】
カバー12を旋回胴2に取り付けるには、図5に示すように、カバー12に設けられた第1シール溝19に第1シール部材14を収容し、第2シール溝20に第2シール部材15を収容する。第1シール部材14および第2シール部材15は、その弾性により、あるいは、付加的に使用されるグリス等の粘着性によって、第1シール溝19および第2シール溝20内にそれぞれ収容状態に保持される。
【0026】
この状態で、カバー12の第1合わせ面17および第2合わせ面18を、旋回胴2の第1座面8および第2座面9にそれぞれ対向させ、カバー12のボルト孔21を通したボルト22を、対応するネジ孔13に締結していく。これにより、第1座面8に第1合わせ面17が、第2座面9に第2合わせ面18がそれぞれ近接させられていく。その結果、第1シール部材14が第1シール溝19と第1座面8との間、第2シール部材15が第2シール溝20と第2座面9との間で、それぞれ圧縮される。
【0027】
すなわち、本実施形態によれば、図1および図2に示すように、カバー12を旋回胴2に取り付けると、旋回胴2に設けられている排脂口5aが、カバー12の貫通孔16内部に配置され、外部に対して露出する。また、旋回胴2とカバー12との隙間は、第1シール部材14および第2シール部材15によって全周にわたって密封される。
【0028】
減速機3等の被潤滑部4からの排脂作業を行うには、図6に示すように、カバー12を旋回胴2に取り付けたままの状態で、貫通孔16を経由して排脂口5aからプラグ6を取り外し、図示しない給脂口から新たな潤滑材を充填していく。これにより、被潤滑部4内に充填されていた使用済みの古い潤滑材が、排脂口5aから押し出されて、カバー12の貫通孔16を経由してロボット1の外部に排出される。すなわち、被潤滑部4内の潤滑材が新たな潤滑材に置き換わり、所定の充填レベルまで充填される。
【0029】
この場合において、本実施形態によれば、排脂口5aの周囲においては、旋回胴2とカバー12との隙間が第1シール部材14によって全周にわたって密封されている。したがって、排脂口5aから押し出された潤滑材は、旋回胴2とカバー12との隙間を通して旋回胴2の内部空間M内に入ることなく、矢印に示すように、全て、貫通孔16を経由して外部に排出される。
【0030】
すなわち、本実施形態に係るカバー12、シール構造および産業機械によれば、旋回胴2の第1座面8とカバー12の第1合わせ面17との間に配置される第1シール部材14によって、排脂口5aの周囲を直接密封する。これにより、従来必要であったチューブ、排脂口5aにチューブを接続するための接続部品、チューブの先端にプラグ6を着脱可能に取り付けるための継手およびチューブ等の取付作業が不要である。
【0031】
したがって、部品点数、加工工数および組立工数を低く抑え、コストを削減することができるという利点がある。そして、チューブ等を用いなくても、交換時に排出される潤滑材によって旋回胴2の内側、例えば、線条体7等を汚すことなく、容易に潤滑材の交換作業を行うことができる。
【0032】
排脂口5aを密封する第1シール部材14と、開口部10全体を密封する第2シール部材15とを別々に設けたので、旋回胴2の内部空間Mの高い密封性が要求されない用途においては、第2シール部材15を使用しないこともできる。例えば、ミストや塵埃等が少ない環境下で使用されるロボットでは、第2シール部材15を不要として、過剰な保護によるコストの上昇を抑えることができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、旋回胴2の第1座面8および第2座面9を同一平面内に配置したので、加工が容易である。また、カバー12の第1合わせ面17および第2合わせ面18も同一平面内に配置したので、加工が容易である。
また、カバー12の貫通孔16が外側に向かって広がる形状を有するので、外側からのプラグ6の取り外し作業が容易であり、かつ、排脂口5aから排出される潤滑材を流出させ易く、拭き取り除去し易い。
【0034】
なお、旋回胴2の第1座面8および第2座面9、カバー12の第1合わせ面17および第2合わせ面18は、それぞれ同一平面内に配置されていなくてもよい。カバー12を旋回胴2に取り付けたときに、第1座面8に第1合わせ面17、第2座面9に第2合わせ面18が密接させられる位置に配置されていれば、同一平面内に配置されていなくてもよい。
【0035】
また、本実施形態においては、第1シール溝19および第2シール溝20の両方を有するカバー12を採用したが、これに代えて、第1シール溝19のみを備えていてもよい。上述したように、旋回胴2の内部空間Mを密封することが要求されない用途においては、第2シール部材15を取り付ける第2シール溝20自体がなくてもよい。
【0036】
また、本実施形態においては、第1シール部材14および第2シール部材15としてOリングまたはこれと同等のシール部材を採用したが、これに代えて、平板状のガスケットを採用してもよい。第1シール部材14としてOリングを採用し、第2シール部材15としてガスケットを採用する場合には、上述したように、カバー12の第2シール溝20はなくてもよい。また、第1シール部材14および第2シール部材15の両方ともガスケットを採用する場合には、第1シール溝19および第2シール溝20が両方ともなくてもよい。
【0037】
また、カバー12の第1合わせ面17に第1シール溝19、第2合わせ面18に第2シール溝20を設ける場合を例示したが、これに代えて、旋回胴2の第1座面8に第1シール溝19、第2座面9に第2シール溝20を設けてもよい。
【0038】
旋回胴2と第1アームとの間の減速機3における排脂口5aを例に挙げたが、他の関節における減速機、ギヤボックス等の被潤滑部に適用してもよい。また、産業機械として垂直6軸多関節型ロボットを例示したが、他の形式のロボット、工作機械あるいは射出成形機等の他の産業機械に適用してもよい。
【0039】
以上、本開示の各実施形態について詳述したが、本開示は上述した個々の実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、または、請求の範囲に記載された内容とその均等物から導き出される本発明の思想および趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、置き換え、変更、部分的削除等が可能である。例えば、上述した実施形態において、各動作の順序や各処理の順序は、一例として示したものであり、これらに限定されるものではない。
【0040】
上記実施形態および変形例に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
産業機械本体の密閉された被潤滑部から潤滑材を排出するための排脂口の周囲の空間を開放可能に閉塞するカバーであって、
前記産業機械本体に取り付けられた状態で、前記排脂口を露出させる貫通孔と、該貫通孔の周囲に全周にわたって設けられ前記排脂口の周囲に全周にわたって設けられた第1座面に対向させられる第1合わせ面と、前記第1座面の外側を全周にわたって取り囲む位置に設けられた第2座面に全周にわたって対向して配置される第2合わせ面とを備え、
前記第1合わせ面が、前記第1座面との間において圧縮される第1シール部材によって、前記貫通孔の周囲を全周にわたって密封可能であるカバー。
【0041】
(付記2)
前記第1合わせ面に、前記貫通孔の周囲を全周にわたって取り囲み、前記第1シール部材を収容可能な第1シール溝が設けられている付記1に記載のカバー。
【0042】
(付記3)
前記第2合わせ面に、全周にわたって延び、前記第2座面との間で圧縮される第2シール部材を収容する第2シール溝が設けられている付記2に記載のカバー。
【0043】
(付記4)
前記第2座面に、周方向に間隔を開けて複数のネジ孔が設けられ、
前記第2合わせ面に、前記ネジ孔に対応する位置に設けられボルトを貫通させる複数のボルト孔が設けられている付記1から付記3のいずれか1項に記載のカバー。
【0044】
(付記5)
前記第1シール部材がOリングである付記1から付記4のいずれか1項に記載のカバー。
【0045】
(付記6)
前記第1合わせ面および前記第2合わせ面が同一平面上に配置されている付記1から付記5のいずれか1項に記載のカバー。
【0046】
(付記7)
産業機械本体の密閉された被潤滑部から潤滑材を排出するための排脂口の周囲の空間をカバーによって開放可能に閉塞するシール構造であって、
前記産業機械本体に備えられ、前記排脂口の周囲に全周にわたって設けられた第1座面および該第1座面の外側を全周にわたって取り囲む位置に設けられた第2座面と、
前記カバーに設けられ、前記産業機械本体に取り付けられた状態で、前記排脂口を露出させる貫通孔、前記第1座面に全周にわたって対向して配置される第1合わせ面および前記第2座面に全周にわたって対向して配置される第2合わせ面と、
前記第1合わせ面と前記第1座面との間において圧縮されることにより、前記貫通孔の周囲を全周にわたって密封可能な第1シール部材とを備えるシール構造。
【0047】
(付記8)
前記第1合わせ面または前記第1座面に、前記排脂口の周囲を全周にわたって取り囲み、前記第1シール部材を収容可能な第1シール溝が設けられている付記7に記載のシール構造。
【0048】
(付記9)
前記第2合わせ面または前記第2座面に、全周にわたって延び、前記第2座面との間で圧縮される第2シール部材を収容する第2シール溝が設けられている付記8に記載のシール構造。
【0049】
(付記10)
前記第2座面に、周方向に間隔を開けて複数のネジ孔が設けられ、
前記第2合わせ面に、前記ネジ孔に対応する位置に設けられボルトを貫通させる複数のボルト孔が設けられている付記7から付記9のいずれか1項に記載のシール構造。
【0050】
(付記11)
前記第1シール部材がOリングである付記7から付記10のいずれか1項に記載のシール構造。
【0051】
(付記12)
前記第1座面および前記第2座面が同一平面上に配置されている付記7から付記11のいずれか1項に記載のシール構造。
【0052】
(付記13)
産業機械本体と、該産業機械本体に取り付けられるカバーと、該カバーと前記産業機械本体との間に挟まれる第1シール部材とを備え、
前記産業機械本体が、密閉された被潤滑部から潤滑材を排出するための排脂口の周囲に全周にわたって設けられた第1座面と、該第1座面の外側を全周にわたって取り囲む位置に設けられた第2座面とを備え、
前記カバーが、前記産業機械本体に取り付けられた状態で、前記排脂口を露出させる貫通孔と、前記第1座面に全周にわたって対向して配置される第1合わせ面と、前記第2座面に全周にわたって対向して配置される第2合わせ面とを備え、
前記第1シール部材が、前記第1合わせ面と前記第1座面との間において圧縮されることにより、前記貫通孔の周囲を全周にわたって密封可能である産業機械。
【符号の説明】
【0053】
1 ロボット(産業機械)
2 旋回胴(産業機械本体)
4 被潤滑部
5a 排脂口
8 座面(第1座面)
9 座面(第2座面)
12 カバー
13 ネジ孔
14 第1シール部材
15 第2シール部材
16 貫通孔
17 第1合わせ面
18 第2合わせ面
19 第1シール溝
20 第2シール溝
21 ボルト孔
22 ボルト
【要約】
産業機械本体の密閉された被潤滑部から潤滑材を排出するための排脂口の周囲の空間を開放可能に閉塞するカバーであって、産業機械本体に取り付けられた状態で、排脂口を露出させる貫通孔と、貫通孔の周囲に全周にわたって設けられ排脂口の周囲に全周にわたって設けられた第1座面に対向させられる第1合わせ面と、第1座面の外側を全周にわたって取り囲む位置に設けられた第2座面に全周にわたって対向して配置される第2合わせ面とを備え、第1合わせ面が、第1座面との間において圧縮される第1シール部材によって、貫通孔の周囲を全周にわたって密封可能であるカバーである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6