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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】燃料噴射システム
(51)【国際特許分類】
   F02M 51/02 20060101AFI20240502BHJP
   F02M 51/06 20060101ALI20240502BHJP
   F02M 61/14 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
F02M51/02 F
F02M51/06 M
F02M61/14 320A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021102756
(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公開番号】P2023001806
(43)【公開日】2023-01-06
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(72)【発明者】
【氏名】田村 亮
(72)【発明者】
【氏名】尾曽 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】長井 順太郎
(72)【発明者】
【氏名】松延 新吾
(72)【発明者】
【氏名】天呑 将成
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-211677(JP,A)
【文献】特開2007-138825(JP,A)
【文献】米国特許第11274642(US,B1)
【文献】特開2017-187011(JP,A)
【文献】特開2006-123624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射システムであって、
前記エンジンのシリンダヘッドに固定されるブラケットと、
前記ブラケットに支持されるとともに第1締結部材を用いて前記ブラケットに固定され燃料ポンプから供給される前記燃料を蓄圧する燃料蓄圧装置と、
前記燃料蓄圧装置に直接的に接続されるとともに前記シリンダヘッドに装着され前記燃料蓄圧装置から供給される前記燃料を前記燃焼室に噴射するインジェクタと、
前記インジェクタに接続されるとともに前記ブラケットに固定され前記インジェクタに対して電力を供給するハーネスと、
を備え
前記ブラケットは、第2締結部材を用いて前記シリンダヘッドに固定され、前記第1締結部材と噛み合う第1固定部と、前記第2締結部材が通る孔を有する第2固定部と、互いに隣り合う前記第1固定部と前記第2固定部とを接続し補強する補強部と、を有し梯子状または格子状に形成されてなることを特徴とする燃料噴射システム。
【請求項2】
前記ハーネスは、前記ハーネスが前記インジェクタに接続された接続部に隣接する位置で前記ブラケットに固定されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射システム。
【請求項3】
複数の前記インジェクタを備え、
前記ハーネスは、前記複数のインジェクタの配列方向に沿って延在し、互いに隣り合う前記複数のインジェクタ同士の間の位置で前記ブラケットに固定されたことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料噴射システム。
【請求項4】
前記ハーネスを保持し、前記ブラケットに装着されて前記ハーネスを前記ブラケットに固定させる保持部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の燃料噴射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コモンレールを備えた内燃機関が開示されている。特許文献1に記載されたコモンレールは、コモンレールの円筒体に一体的に形成された2つの取付部を介してヘッドカバー下部に固定されており、インジェクタに対して高圧の燃料を供給する。特許文献1に記載されたインジェクタは、シリンダヘッドに装着されており、コモンレールから供給される高圧の燃料をシリンダ内に向けて噴射する。特許文献1に記載された内燃機関では、コモンレールとインジェクタとは、燃料配管により互いに接続されている。
【0003】
特許文献1に記載された内燃機関では、インジェクタに対して電力を供給するハーネスと、ハーネスを収容するハーネスホルダと、がさらに設けられている。特許文献1に記載されたハーネスホルダは、インジェクタの配列方向に沿って延在し、固定手段により内燃機関本体に固定されている。
【0004】
特許文献2には、複数のインジェクタに燃料を供給するデリバリパイプのハーネス支持構造が開示されている。特許文献2に記載されたハーネスの支持構造では、インジェクタ駆動用のハーネスを配索させるためのハーネス用ブラケットが設けられている。ハーネス用ブラケットは、一方の端部においてデリバリパイプの外周面に当接して固着されており、他方の端部においてフック部によりハーネスを把持している。
【0005】
このように、インジェクタに対して電力を供給するハーネス、すなわちインジェクタ駆動用のハーネスは、内燃機関本体やデリバリパイプ(すなわち燃料配管)に固定されている。しかし、ハーネスが内燃機関本体や燃料配管に固定されると、内燃機関本体や燃料配管の振動がハーネスに伝わり、ハーネスの振動が増幅するおそれがある。ハーネスの振動が増幅すると、ハーネスがインジェクタに接続された部分において断線や劣化が生じてハーネスの耐久性が低下したり、騒音が増幅したりするおそれがある。
【0006】
また、インジェクタ駆動用のハーネスは、例えばハーネス固定用のステーなどに固定されることがある。しかし、ハーネス固定用のステーなどが設置されると、部品点数が増えるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6468687号公報
【文献】特開2003-83197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、部品点数が増えることを抑えつつインジェクタ駆動用のハーネスの振動を抑えることができる燃料噴射システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、エンジンの燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射システムであって、前記エンジンのシリンダヘッドに固定されるブラケットと、前記ブラケットに支持されるとともに固定され燃料ポンプから供給される前記燃料を蓄圧する燃料蓄圧装置と、前記燃料蓄圧装置に直接的に接続されるとともに前記シリンダヘッドに装着され前記燃料蓄圧装置から供給される前記燃料を前記燃焼室に噴射するインジェクタと、前記インジェクタに接続されるとともに前記ブラケットに固定され前記インジェクタに対して電力を供給するハーネスと、を備えたことを特徴とする本発明に係る燃料噴射システムにより解決される。
【0010】
本発明に係る燃料噴射システムによれば、燃料ポンプから供給される燃料を蓄圧する燃料蓄圧装置は、エンジンのシリンダヘッドに固定されるブラケットに支持されるとともに固定される。また、燃料蓄圧装置から供給される燃料をエンジンの燃焼室に噴射するインジェクタは、燃料蓄圧装置に直接的に接続されるとともにシリンダヘッドに装着される。インジェクタに対して電力を供給するハーネス、すなわちインジェクタ駆動用のハーネスは、インジェクタに接続されており、ブラケットに固定されている。ここで、前述した通り、ブラケットは、シリンダヘッドに固定されている。また、燃料蓄圧装置は、シリンダヘッドに固定されたブラケットに固定され、インジェクタと直接的に接続されている。そのため、ハーネスがインジェクタに接続された部分と、ハーネスがブラケットに固定された部分と、は互いにブラケットと燃料蓄圧装置とインジェクタとを介して同一振動系になる。これにより、本発明に係る燃料噴射システムは、インジェクタ駆動用のハーネスの振動を抑えることができる。また、ハーネスの振動が抑えられるため、本発明に係る燃料噴射システムは、ハーネスがインジェクタに接続された部分における断線や劣化を抑えるとともにハーネスの耐久性が低下することを抑え、騒音が増幅することを抑えることができる。さらに、ハーネスは、ハーネス固定用の特別な部品ではなく、燃料蓄圧装置を支持するブラケットに固定される。そのため、本発明に係る燃料噴射システムは、部品点数が増えることを抑えつつインジェクタ駆動用のハーネスの振動を抑えることができる。
【0011】
本発明に係る燃料噴射システムにおいて、好ましくは、前記ハーネスは、前記ハーネスが前記インジェクタに接続された接続部に隣接する位置で前記ブラケットに固定されたことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る燃料噴射システムによれば、ハーネスは、ハーネスがインジェクタに接続された接続部に隣接する位置でブラケットに固定されている。そのため、ハーネスがブラケットに固定された部分は、ハーネスとインジェクタとの接続部の近くの位置でハーネスを支持することができる。これにより、本発明に係る燃料噴射システムは、インジェクタ駆動用のハーネスの振動をより一層抑えることができる。
【0013】
本発明に係る燃料噴射システムにおいて、好ましくは、複数の前記インジェクタを備え、前記ハーネスは、前記複数のインジェクタの配列方向に沿って延在し、互いに隣り合う前記複数のインジェクタ同士の間の位置で前記ブラケットに固定されたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る燃料噴射システムによれば、ハーネスは、複数のインジェクタの配列方向に沿って延在し、互いに隣り合う複数のインジェクタ同士の間の位置でブラケットに固定されている。そのため、ハーネスがブラケットに固定された部分は、複数のインジェクタの配列方向に沿って延在したハーネスのうち、ハーネスとインジェクタとの接続部の近くの位置でハーネスを支持することができる。これにより、本発明に係る燃料噴射システムは、インジェクタ駆動用のハーネスの振動をより一層抑えることができる。
【0015】
本発明に係る燃料噴射システムは、好ましくは、前記ハーネスを保持し、前記ブラケットに装着されて前記ハーネスを前記ブラケットに固定させる保持部材をさらに備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る燃料噴射システムによれば、ハーネスを保持する保持部材は、ブラケットに装着されてハーネスをブラケットに固定させる。そのため、ハーネスは、より確実にブラケットに固定されるとともに、簡易的な構造によりブラケットに固定される。これにより、本発明に係る燃料噴射システムは、部品点数が増えることを抑えつつハーネスを保持部材によりブラケットにより確実に固定させ、ハーネスの振動を抑えることができる。
【0017】
本発明に係る燃料噴射システムにおいて、好ましくは、前記燃料蓄圧装置は、第1締結部材を用いて前記ブラケットに固定され、前記ブラケットは、第2締結部材を用いて前記シリンダヘッドに固定され、前記第1締結部材と噛み合う第1固定部と、前記第2締結部材が通る孔を有する第2固定部と、互いに隣り合う前記第1固定部と前記第2固定部とを接続し補強する補強部と、を有し梯子状または格子状に形成されてなることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る燃料噴射システムによれば、燃料蓄圧装置は、第1締結部材を用いてブラケットに固定される。ブラケットは、第2締結部材を用いてシリンダヘッドに固定される。また、ブラケットは、第1締結部材と噛み合う第1固定部と、第2締結部材が通る孔を有する第2固定部と、互いに隣り合う第1固定部と第2固定部とを接続し補強する補強部と、を有し梯子状または格子状に形成されている。これにより、本発明に係る燃料噴射システムは、梯子状または格子状に形成されたブラケットを用いて、燃料蓄圧装置およびインジェクタの固定構造の補強を図りつつ、部品点数が増えることを抑え、ハーネスの振動を抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、部品点数が増えることを抑えつつインジェクタ駆動用のハーネスの振動を抑えることができる燃料噴射システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る燃料噴射システムを備えたエンジンを表す斜視図である。
図2】本実施形態に係る燃料噴射システムを備えたエンジンを表す分解図である。
図3】本実施形態に係る燃料噴射システムを拡大して表した斜視図である。
図4】本実施形態に係る燃料噴射システムを図3に表した矢印A11の方向に向かって眺めたときの平面図である。
図5】本実施形態のブラケットを表す平面図である。
図6】本実施形態に係る燃料噴射システムを斜め上方から眺めたときの斜視図である。
図7】本実施形態のブラケットとシリンダヘッドとの間の配置関係を表す上面図である。
図8】本実施形態のシリンダヘッドを表す上面図である。
図9】本実施形態の燃料蓄圧装置を斜め下方から眺めたときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0022】
図1は、本発明に係る燃料噴射システムを備えたエンジンを表す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る燃料噴射システムを備えたエンジンを表す分解図である。
図1および図2では、説明の便宜上、エンジンのシリンダヘッドの下方に設けられた部品(例えばシリンダブロックおよびクランクケース等)を省略している。また、図2では、説明の便宜上、燃料配管61を省略している。
【0023】
図1および図2に表したエンジン2は、例えば、産業用ディーゼルエンジンであり、建設機械、農業機械、芝刈り機のような産業用機械に搭載される。エンジン2は、直列の多気筒エンジンであり、図1および図2に表した例では直列の3気筒エンジンである。エンジン2は、例えば副室式(IDI:Indirect Injection)のディーゼルエンジンである。但し、本実施形態に係るエンジン2は、直列の3気筒エンジンに限定されるわけではない。また、本実施形態に係るエンジン2は、副室式のディーゼルエンジンに限定されるわけではない。
【0024】
エンジン2は、シリンダヘッド21と、ヘッドカバー22と、吸気マニホルド23と、燃料噴射システム3と、を備える。燃料噴射システム3は、シリンダヘッド21の上部に設けられている。なお、本願明細書において、上下方向とは、エンジン2が建設機械、農業機械、芝刈り機のような産業用機械に搭載された状態において産業用機械の上下方向に相当するものとする。
【0025】
本実施形態に係る燃料噴射システム3は、ブラケット5と、燃料蓄圧装置6と、インジェクタ7と、ハーネス8と、を備える。
【0026】
ブラケット5は、複数の第2締結部材59を用いてシリンダヘッド21の上部に固定されている。本実施形態に係る燃料噴射システム3では、ブラケット5は、3つの第2締結部材59を用いてシリンダヘッド21に固定されている。具体的には、第2締結部材59は、ブラケット5の第2固定部52(図5参照)に形成された孔521(図5参照)を上方から下方に向かって通り、シリンダヘッド21の上部に形成された雌ネジ213に噛み合う。これにより、ブラケット5は、複数の第2締結部材59を用いてシリンダヘッド21に締結される。ブラケット5の詳細については、後述する。
【0027】
燃料蓄圧装置6は、いわゆるコモンレール式燃料噴射装置であり、燃料ポンプ(図示せず)により昇圧され燃料配管61を通して供給された燃料をコモンレールにおいて蓄圧する。燃料蓄圧装置6は、複数の第1締結部材62を用いてブラケット5に固定されている。本実施形態に係る燃料噴射システム3では、燃料蓄圧装置6は、3つの第1締結部材62を用いてブラケット5に固定されている。具体的には、第1締結部材62は、燃料蓄圧装置6に設けられた孔63(図9参照)を上方から下方に向かって通り、ブラケット5の第1固定部51に形成された雌ネジ511に噛み合う。これにより、燃料蓄圧装置6は、複数の第1締結部材62を用いてブラケット5に締結される。図2に表したブラケット5では、3つの第1固定部51のうち両端の2つの第1固定部51において、凹部513が雌ネジ511の上部に形成されている。凹部513の詳細については、後述する。
【0028】
インジェクタ7は、図2に表したように、燃料蓄圧装置6に直接的に接続されている。前述したように、図1および図2に表したエンジン2は、直列の3気筒エンジンである。そのため、本実施形態に係る燃料噴射システム3では、3つのインジェクタ7が燃料蓄圧装置6に直接的に接続され、配列方向A1に沿って並んで配置されている。また、インジェクタ7は、シリンダヘッド21に装着される。具体的には、図2に表したように、インジェクタ7の下部が、シリンダヘッド21に形成された挿入孔212に挿入される。図2に表したエンジン2では、スリーブ211が挿入孔212に圧入されシリンダヘッド21に固定されている。そのため、図2に表したエンジン2では、スリーブ211に設けられた孔が、挿入孔212の一部を形成する。スリーブ211は、挿入孔212に対するインジェクタ7の挿入位置を決める。なお、スリーブ211は、必ずしも設けられていなくともよい。
【0029】
ハーネス8は、カプラなどと呼ばれる接続部81においてインジェクタ7に接続され、インジェクタ7に対して電力を供給する。例えば、インジェクタ7は、エンジン回転数に関する検出信号やアクセル開度に関する検出信号などに基づいて電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)により制御された電力であってハーネス8を介して供給された電力によりニードル弁を開き、燃料蓄圧装置6から供給された燃料をエンジン2の燃焼室215(図7および図8参照)に噴射する。例えば、図7および図8に表した燃焼室215は、シリンダヘッド21に設けられた副室(すなわち副燃焼室)である。但し、本実施形態のインジェクタ7が燃料を噴射する燃焼室は、副室だけに限定されるわけではない。このように、ハーネス8は、インジェクタ7を駆動するためのハーネス、すなわちインジェクタ駆動用のハーネスである。
【0030】
ハーネス8は、保持部材82に保持され、保持部材82を介してブラケット5に固定されている。具体的には、図1および図2に表したように、保持部材82は、ハーネス8を保持し、保持部材82の突起部821がブラケット5の第3固定部53に形成された孔531に挿入されることにより、ブラケット5に装着されている。これにより、ハーネス8は、保持部材82を介してブラケット5に固定される。保持部材82としては、例えば、ハーネス8の外周に取り付けられてハーネス8を保持する結束バンドなどが挙げられる。但し、ハーネス8は、結束バンドだけに限定されるわけではない。
【0031】
図3は、本実施形態に係る燃料噴射システムを拡大して表した斜視図である。
図4は、本実施形態に係る燃料噴射システムを図3に表した矢印A11の方向に向かって眺めたときの平面図である。
図5は、本実施形態のブラケットを表す平面図である。
【0032】
まず、図5を参照して、本実施形態のブラケットの詳細を説明する。
図5に表したように、本実施形態のブラケット5は、梯子状または格子状に形成されている。具体的には、ブラケット5は、第1固定部51と、第2固定部52と、第3固定部53と、第1補強部541と、第2補強部542と、第3補強部543と、を有する。
【0033】
第1固定部51は、第1締結部材62の雄ネジと噛み合う雌ネジ511を有する。図5に表したように、本実施形態のブラケット5は、3つの第1固定部51を有する。3つの第1固定部51は、3つのインジェクタ7の配列方向A1に沿って互いに並んで配置されている。図5に表したように、3つの第1固定部51のうち両端の2つの第1固定部51において、凹部513が雌ネジ511の上部に形成されている。凹部513は、本発明の「案内部材」の一部を構成し、インジェクタ7の挿入方向および第1締結部材62の進行方向と平行な内周面を有する。言い換えれば、凹部513の軸は、インジェクタ7の挿入方向および第1締結部材62の進行方向と平行である。
【0034】
なお、凹部513は、3つの第1固定部51のうち両端の2つの第1固定部51に形成されることに限定されるわけではなく、凸部64(図3参照)に対応して形成されていればよい。例えば、凹部513は、3つの第1固定部51の全てにおいて、雌ネジ511の上部に形成されていてもよい。また、凹部513は、水平方向における案内精度および位置決め精度を一層向上するために、3つの第1固定部51のうち少なくとも2つの第1固定部51に形成されることが望ましい。例えば、凹部513は、3つの第1固定部51のうち中央の第1固定部51と両端いずれかの第1固定部51とにおいて、雌ネジ511の上部に形成されていてもよい。また、凹部513は、凸部64に対応して形成されていればよく、必ずしも雌ネジ511の上部に形成されていなくともよく、雌ネジ511の軸に対して同軸上に形成されていなくともよい。
【0035】
第2固定部52は、第2締結部材59の例えば雄ネジが通過可能な孔521を有する。図5に表したように、本実施形態のブラケット5は、3つの第2固定部52を有する。3つの第2固定部52は、3つのインジェクタ7の配列方向A1に沿って互いに並んで配置されているとともに、3つのインジェクタ7の配列方向A1に交差する方向において3つの第1固定部51から離れて配置されている。
【0036】
第3固定部53は、保持部材82の突起部821を挿入可能な孔531を有する。図5に表したように、本実施形態のブラケット5は、3つの第3固定部53を有する。3つの第3固定部53は、3つのインジェクタ7の配列方向A1に沿って互いに並んで配置されているとともに、3つのインジェクタ7の配列方向A1に交差する方向において3つの第1固定部51から離れて配置されている。また、第3固定部53は、第2固定部52の近傍に設けられている。
【0037】
第1補強部541は、互いに隣り合う第1固定部51と第2固定部52とを接続し、ブラケット5を補強している。第2補強部542は、互いに隣り合う第1固定部51同士を接続し、ブラケット5を補強している。第3補強部543は、互いに隣り合う第2固定部52同士を接続し、ブラケット5を補強している。
本実施形態のブラケット5は、以上説明した構造を有し、梯子状または格子状に形成されている。
【0038】
続いて、図3および図4を参照して、ブラケット5と燃料蓄圧装置6との組付けについて説明する。
図1および図2に関して前述したように、本実施形態のインジェクタ7は、燃料蓄圧装置6に直接的に接続されている。図3および図4に表したように、燃料蓄圧装置6が第1締結部材62を用いてブラケット5に締結される際には、インジェクタ7は、例えばインジェクタ7に装着されたOリング(図示せず)などにより燃料蓄圧装置6の挿入孔66(図9参照)に予め保持されている。
【0039】
図4に表したように、板バネなどの付勢部材72がインジェクタ7に取り付けられている。インジェクタ7がシリンダヘッド21に装着されている状態(図1および図2参照)では、付勢部材72は、燃料蓄圧装置6およびシリンダヘッド21に付勢力を与えている。図4に表したように、インジェクタ7がシリンダヘッド21に装着される前の状態であって、インジェクタ7が燃料蓄圧装置6の挿入孔66に保持された状態では、インジェクタ7は、燃料蓄圧装置6から僅かに浮いた状態になっている。すなわち、燃料蓄圧装置6に対するインジェクタ7の位置は、決まっていない。また、シリンダヘッド21に対するインジェクタ7の位置も、決まっていない。その後、燃料蓄圧装置6が第1締結部材62を用いてブラケット5に締結されると、付勢部材72が燃料蓄圧装置6およびシリンダヘッド21に付勢力を与えながら、インジェクタ7が燃料蓄圧装置6とシリンダヘッド21との間に挟設される。このとき、燃料蓄圧装置6およびシリンダヘッド21に対するインジェクタ7の位置が決まる。
【0040】
ここで、インジェクタ7が燃料蓄圧装置6に保持された状態であるとともに、インジェクタ7の位置が決まっていない状態において、燃料蓄圧装置6が第1締結部材62を用いてブラケット5に締結されると、燃料蓄圧装置6に直接的に接続されたインジェクタ7に例えば曲げ荷重などが加わるおそれがある。インジェクタ7に例えば曲げ荷重などが加わると、インジェクタ7に歪みが生ずるおそれがある。インジェクタ7に歪みが生ずると、インジェクタ7の姿勢が、設計された姿勢からずれて、燃料噴射量に影響を及ぼすおそれがある。インジェクタ7の燃料噴射量は、エンジン2の性能や排ガス性能に影響を及ぼす。そのため、インジェクタ7は、設計された姿勢を保った状態で組付けられることが望ましい。
【0041】
これに対して、本実施形態に係る燃料噴射システム3では、図3および図4に表したように、燃料蓄圧装置6が、凸部64を有する。凸部64は、前述した凹部513と同様に、本発明の「案内部材」の一部を構成する。すなわち、本発明の「案内部材」は、凸部64と凹部513とを有する。凸部64は、凹部513に対応して形成され、凹部513に嵌まる。言い換えれば、凹部513は、凸部64に対応して形成され、凸部64に嵌められる。
【0042】
凸部64は、燃料蓄圧装置6に設けられていてもよく、ブラケット5に設けられていてもよい。つまり、凸部64は、燃料蓄圧装置6およびブラケット5のいずれか一方に設けられている。凹部513は、燃料蓄圧装置6に設けられていてもよく、ブラケット5に設けられていてもよい。つまり、凹部513は、燃料蓄圧装置6およびブラケット5のいずれか他方に設けられている。図3および図4に表した例では、凸部64が燃料蓄圧装置6に設けられ、凹部513がブラケット5に設けられている。
【0043】
例えば、凸部64は、凹部513に嵌まるパイプピンである。図3および図4に表した例では、凸部64としてのパイプピンは、第1締結部材62の例えば雄ネジが通過可能な内径を有する中空の棒状に形成されている。凸部64の一端側の外周面が燃料蓄圧装置6の孔63(図9参照)に圧入され固定されており、凸部64の他端側の外周面がブラケット5に形成された凹部513に嵌まる。なお、前述したように、ブラケット5が凸部64を有していてもよい。この場合には、凸部64の一端側の外周面がブラケット5の凹部513に圧入され固定されており、凸部64の他端部の外周面が燃料蓄圧装置6の孔63(すなわち凹部)に嵌まる。以下の説明では、燃料蓄圧装置6が凸部64を有し、ブラケット5が凹部513を有している場合を例に挙げる。
【0044】
なお、凸部64は、パイプピンであることに限定されるわけではない。凸部64は、凹部513に嵌まる形状を有していればよく、中実の棒状部材であってもよい。例えば、凸部64は、スリーブでもよく、カラーでもよい。凸部64の縦断面形状は、特には限定されない。
【0045】
図3に表したように、本実施形態に係る燃料噴射システム3では、複数の凸部64が設けられている。具体的には、図3に表したように、2つの凸部64が、燃料蓄圧装置6の3つの孔63のうち両端の2つの孔63に固定されている。そして、2つの凸部64のそれぞれは、ブラケット5に形成された2つ凹部513のそれぞれに嵌まる。
【0046】
なお、凹部513に関して前述した場合と同様に、凸部64は、燃料蓄圧装置6の3つの孔63のうち両端の2つの孔63に固定されることに限定されるわけではなく、凹部513に対応して設けられていればよい。例えば、凸部64は、燃料蓄圧装置6の3つの孔63の全てに固定されていてもよい。また、凸部64は、水平方向における案内精度および位置決め精度を一層向上するために、燃料蓄圧装置6の3つの孔63のうち少なくとも2つの孔63に固定されることが望ましい。例えば、凸部64は、燃料蓄圧装置6の3つの孔63のうち中央の孔63と両端いずれかの孔63とに固定されていてもよい。
【0047】
図4に表したように、凸部64は、燃料蓄圧装置6の締結面631(図9参照)から突出した状態で燃料蓄圧装置6の孔63に固定されている。ここで、インジェクタ7がシリンダヘッド21の挿入孔212に挿入されシリンダヘッド21に装着される際、凸部64は、シリンダヘッド21に対するインジェクタ7の位置が決まる前に、ブラケット5の凹部513に嵌まり始める。本実施形態に係る燃料噴射システム3では、インジェクタ7がシリンダヘッド21の挿入孔212に挿入され、インジェクタ7の位置決め面71がシリンダヘッド21の位置決め面214に接触することで、シリンダヘッド21に対するインジェクタ7の位置が決まる。
【0048】
具体的には、図4に表したように、インジェクタ7がシリンダヘッド21の挿入孔212に挿入される際、凸部64の先端部641とブラケット5の締結面512(すなわちブラケット5の凹部513の入口面)との間の距離D1は、インジェクタ7の位置決め面71とシリンダヘッド21の位置決め面214(すなわちシリンダヘッド21の挿入孔212の入口面)との間の距離D2よりも短い。そのため、インジェクタ7がシリンダヘッド21の挿入孔212に挿入されると、インジェクタ7の位置決め面71がシリンダヘッド21の位置決め面214に接触する前に、凸部64がブラケット5の凹部513に嵌まり始める。これにより、凸部64および凹部513は、シリンダヘッド21に対するインジェクタ7の位置が決まる前に、インジェクタ7をシリンダヘッド21の装着位置に案内し始めることができる。
【0049】
また、前述したように、凹部513は、シリンダヘッド21の挿入孔212に対するインジェクタ7の挿入方向と平行な内周面を有する。言い換えれば、凹部513の軸は、シリンダヘッド21の挿入孔212に対するインジェクタ7の挿入方向と平行である。そのため、凸部64が凹部513に嵌まる方向は、シリンダヘッド21の挿入孔212に対するインジェクタ7の挿入方向と平行である。そのため、燃料蓄圧装置6がブラケット5に組付けられ固定される方向は、シリンダヘッド21の挿入孔212に対するインジェクタ7の挿入方向と平行である。
【0050】
これにより、燃料蓄圧装置6は、凸部64および凹部513によりインジェクタ7をシリンダヘッド21の装着位置に案内しつつ、シリンダヘッド21の挿入孔212に対するインジェクタ7の挿入方向と平行に進行しブラケット5に組付けられ固定される。このようにして、凸部64および凹部513を有する案内部材は、凸部64が凹部513に嵌まることにより、インジェクタ7をシリンダヘッド21の装着位置により確実に案内することができる。つまり、燃料蓄圧装置6がブラケット5に組付けられる際、およびインジェクタ7がシリンダヘッド21に装着される際、凸部64および凹部513を有する案内部材は、挿入ガイドとして利用される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る燃料噴射システム3によれば、燃料ポンプから供給される燃料を蓄圧する燃料蓄圧装置6は、エンジン2のシリンダヘッド21に固定されるブラケット5に支持されるとともに固定される。また、燃料蓄圧装置6から供給される燃料をエンジン2の燃焼室215(図7および図8参照)に噴射するインジェクタ7は、燃料蓄圧装置6に直接的に接続されるとともにシリンダヘッド21に装着される。ここで、燃料蓄圧装置6およびブラケット5の少なくともいずれか(本実施形態では燃料蓄圧装置6およびブラケット5の両方)は、インジェクタ7をシリンダヘッド21の装着位置に案内する案内部材(凸部64および凹部513)を有する。そのため、燃料蓄圧装置6がブラケット5に組付けられ固定される際に、シリンダヘッド21に対するインジェクタ7の位置が決まっていない状態であっても、燃料蓄圧装置6は、凸部64および凹部513によりインジェクタ7をシリンダヘッド21の装着位置に案内しつつブラケット5に組付けられ固定される。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、燃料蓄圧装置6がブラケット5に組付けられ固定される際、およびインジェクタ7がシリンダヘッド21に装着される際、燃料蓄圧装置6に接続されたインジェクタ7に曲げ荷重などが加わることを抑えることができ、インジェクタ7に歪みが生ずることを抑えることができる。
【0052】
また、燃料蓄圧装置6が凸部64および凹部513によりインジェクタ7をシリンダヘッド21の装着位置に案内しつつブラケット5に組付けられ固定されるため、専用治具および特殊工具が不要である。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、ブラケット5に対する燃料蓄圧装置6の組付け工程およびシリンダヘッド21に対するインジェクタ7の組付け工程において工程数が増加することを抑えることができる。また、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、市場におけるアフターメンテナンスの際に専用治具および特殊工具を不要とすることができる。
【0053】
また、凸部64および凹部513を有する案内部材は、凸部64が凹部513に嵌まることにより、インジェクタ7をシリンダヘッド21の装着位置により確実に案内することができる。つまり、燃料蓄圧装置6がブラケット5に組付けられる際、およびインジェクタ7がシリンダヘッド21に装着される際、凸部64および凹部513を有する案内部材は、挿入ガイドとして利用される。そのため、燃料蓄圧装置6がブラケット5に組付けられ固定される際に、シリンダヘッド21に対するインジェクタ7の位置が決まっていない状態であっても、燃料蓄圧装置6は、凸部64および凹部513によりインジェクタ7をシリンダヘッド21の装着位置により確実に案内することができる。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、燃料蓄圧装置6がブラケット5に組付けられ固定される際、およびインジェクタ7がシリンダヘッド21に装着される際、燃料蓄圧装置6に接続されたインジェクタ7に曲げ荷重などが加わることをより一層抑えることができ、インジェクタ7に歪みが生ずることをより一層抑えることができる。
【0054】
また、凸部64が凹部513に嵌まる方向は、シリンダヘッド21の挿入孔212に対するインジェクタ7の挿入方向と平行である。そのため、燃料蓄圧装置6がブラケット5に組付けられ固定される方向は、シリンダヘッド21の挿入孔212に対するインジェクタ7の挿入方向と平行である。そのため、燃料蓄圧装置6は、凸部64および凹部513によりインジェクタ7をシリンダヘッド21の装着位置に案内しつつ、シリンダヘッド21の挿入孔212に対するインジェクタ7の挿入方向と平行に進行しブラケット5に組付けられ固定される。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、燃料蓄圧装置6がブラケット5に組付けられ固定される際、およびインジェクタ7がシリンダヘッド21に装着される際、燃料蓄圧装置6に接続されたインジェクタ7に曲げ荷重などが加わることをより一層抑えることができ、インジェクタ7に歪みが生ずることをより一層抑えることができる。
【0055】
また、案内部材は、複数の凸部64と、複数の凹部513と、を有する。複数の凸部64のそれぞれは、複数の凹部513のそれぞれに嵌まる。そのため、複数の凸部64および複数の凹部513は、燃料蓄圧装置6がブラケット5に組付けられる際、およびインジェクタ7がシリンダヘッド21に装着される際、複数の位置において挿入ガイドとして利用される。そのため、燃料蓄圧装置6は、複数の凸部64および複数の凹部513により複数の位置でインジェクタ7をシリンダヘッド21の装着位置に案内しつつブラケット5に組付けられ固定される。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、専用治具および特殊工具を用いることなく、燃料蓄圧装置6に接続されたインジェクタ7に曲げ荷重などが加わることをより一層抑えることができ、インジェクタ7に歪みが生ずることをより一層抑えることができる。
【0056】
また、インジェクタ7がシリンダヘッド21に装着される際、凸部64および凹部513は、シリンダヘッド21に対するインジェクタ7の位置が決まる前にインジェクタ7をシリンダヘッド21の装着位置に案内し始めることができる。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、燃料蓄圧装置6がブラケット5に組付けられ固定される際、およびインジェクタ7がシリンダヘッド21に装着される際、燃料蓄圧装置6に接続されたインジェクタ7に曲げ荷重などが加わることをより一層抑えることができ、インジェクタ7に歪みが生ずることをより一層抑えることができる。
【0057】
さらに、インジェクタ7が燃料蓄圧装置6に直接的に接続されているため、燃料の圧力損失が生ずることを抑え、例えば燃料配管やインジェクタ固定用ブラケットなどの部品点数を削減することができる。ここで、インジェクタ7が直接的に接続された燃料蓄圧装置6を支持するブラケット5は、第1締結部材62と噛み合う第1固定部51と、第2締結部材59が通る孔521を有する第2固定部52と、互いに隣り合う第1固定部51と第2固定部52とを接続し補強する第1補強部541と、を有し梯子状または格子状に形成されている。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、梯子状または格子状に形成されたブラケット5を用いて、燃料蓄圧装置6およびインジェクタ7の固定構造を補強することができる。梯子状または格子状に形成されたブラケット5により、燃料蓄圧装置6およびインジェクタ7の固定構造の強度が向上するため、燃料噴射システム3に生ずる振動を低減することができる。また、燃料噴射システム3に生ずる振動を低減できるため、燃料噴射システム3に生ずる騒音を低減することができる。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、燃料の圧力損失が生ずることを抑え、部品点数を削減することができるとともに、振動および騒音を低減することができる。
【0058】
また、ブラケット5は、互いに隣り合う第1固定部51と第2固定部52とを接続し補強する第1補強部541と、互いに隣り合う第1固定部51同士を接続し補強する第2補強部542と、互いに隣り合う第2固定部52同士を接続し補強する第3補強部543と、を有し、梯子状または格子状に形成されている。そのため、燃料蓄圧装置6およびインジェクタ7の固定構造の強度がさらに向上する。そのため、燃料噴射システム3に生ずる振動をより一層低減することができる。また、燃料噴射システム3に生ずる振動をより一層低減できるため、燃料噴射システム3に生ずる騒音をより一層低減することができる。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、燃料の圧力損失が生ずることを抑え、部品点数を削減することができるとともに、振動および騒音をより一層低減することができる。
【0059】
また、第1締結部材62は、上方から燃料蓄圧装置6に形成された孔63を通りブラケット5の第1固定部51に噛み合う。第2締結部材59は、上方からブラケット5の第2固定部52に形成された孔521を通りシリンダヘッド21に噛み合う。そのため、作業者は、ブラケット5をシリンダヘッド21に組付け固定する作業を行う際、第2締結部材59を上方から孔521を通してシリンダヘッド21に噛み合わせ、ブラケット5をシリンダヘッド21に容易に締結させることができる。また、作業者は、インジェクタ7が直接的に接続された燃料蓄圧装置6をブラケット5に組付け固定する作業を行う際、第1締結部材62を上方から燃料蓄圧装置6の孔63を通してブラケット5の第1固定部51に噛み合わせ、インジェクタ7が直接的に接続された燃料蓄圧装置6をブラケット5に容易に締結させることができる。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、組立性の容易化を図り、作業性の向上を図ることができる。
【0060】
また、インジェクタ7が挿入される挿入孔212に対するインジェクタ7の挿入位置を決めるスリーブ211が、シリンダヘッド21の挿入孔212に圧入されている。そのため、スリーブ211は、インジェクタ7の位置をより正確に決めることができるとともに、スリーブ211自身が挿入孔212において回転することを抑えることができる。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、インジェクタ7の耐久性および信頼性の向上を図ることができる。
【0061】
図6は、本実施形態に係る燃料噴射システムを斜め上方から眺めたときの斜視図である。
図1および図2に関して前述したように、ハーネス8は、カプラなどと呼ばれる接続部81においてインジェクタ7に接続されるとともに、保持部材82を介してブラケット5に固定されている。図6に表したように、ハーネス8は、接続部81に隣接する位置でブラケット5の第3固定部53に固定されている。具体的には、ハーネス8は、複数のインジェクタ7の配列方向A1に沿って延在し、互いに隣り合う複数のインジェクタ7同士の間の位置でブラケット5の第3固定部53に固定されている。
【0062】
ここで、インジェクタ駆動用のハーネスが例えばヘッドカバー22(図1参照)や燃料配管61などに固定されると、シリンダヘッド21や燃料配管61などの振動がハーネスに伝わり、ハーネスの振動が増幅するおそれがある。ハーネスの振動が増幅すると、ハーネスの耐久性が低下したり、騒音が増幅したりするおそれがある。また、インジェクタ駆動用のハーネスが例えばハーネス固定用のステーなどに固定されると、部品点数が増える。
【0063】
これに対して、本実施形態に係る燃料噴射システム3によれば、ハーネス8(すなわちインジェクタ駆動用のハーネス)は、インジェクタ7に接続されており、ブラケット5に固定されている。図1および図2に関して前述したように、ブラケット5は、シリンダヘッド21に固定されている。また、燃料蓄圧装置6は、シリンダヘッド21に固定されたブラケット5に固定され、インジェクタ7と直接的に接続されている。そのため、ハーネス8がインジェクタ7に接続された部分と、ハーネス8がブラケットに固定された部分と、は互いにブラケット5と燃料蓄圧装置6とインジェクタ7とを介して同一振動系になる。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、インジェクタ駆動用のハーネス8の振動を抑えることができる。また、ハーネス8の振動が抑えられるため、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、ハーネス8の接続部81における断線や劣化を抑えるとともにハーネス8の耐久性が低下することを抑え、騒音が増幅することを抑えることができる。さらに、ハーネス8は、ハーネス固定用の特別な部品ではなく、燃料蓄圧装置6を支持するブラケット5に固定される。そのため、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、部品点数が増えることを抑えつつインジェクタ駆動用のハーネス8の振動を抑えることができる。
【0064】
また、ハーネス8がインジェクタ7に接続された接続部81に隣接する位置でブラケット5に固定されている。そのため、ハーネス8がブラケット5に固定された部分は、ハーネス8とインジェクタ7との接続部81の近くの位置でハーネス8を支持することができる。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、インジェクタ駆動用のハーネス8の振動をより一層抑えることができる。
【0065】
また、ハーネス8は、複数のインジェクタ7の配列方向A1に沿って延在し、互いに隣り合う複数のインジェクタ7同士の間の位置でブラケット5に固定されている。そのため、ハーネス8がブラケット5に固定された部分は、複数のインジェクタ7の配列方向A1に沿って延在したハーネス8のうち、ハーネス8とインジェクタ7との接続部81の近くの位置でハーネス8を支持することができる。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、インジェクタ駆動用のハーネス8の振動をより一層抑えることができる。
【0066】
また、ハーネス8を保持する保持部材82は、ブラケット5に装着されてハーネス8をブラケット5に固定させる。そのため、ハーネス8は、より確実にブラケット5に固定されるとともに、簡易的な構造によりブラケット5に固定される。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、部品点数が増えることを抑えつつハーネス8を保持部材82によりブラケット5により確実に固定させ、ハーネス8の振動を抑えることができる。
【0067】
図7は、本実施形態のブラケットとシリンダヘッドとの間の配置関係を表す上面図である。
図8は、本実施形態のシリンダヘッドを表す上面図である。
【0068】
図1および図2に関して前述したように、ブラケット5は、第2締結部材59を用いてシリンダヘッド21の上部に固定されている。このとき、図7に表したように、ブラケット5は、シリンダヘッド21に設けられた燃焼室215の上方を跨いでシリンダヘッド21の上部に載置されている。図7に表した例では、ブラケット5の第2固定部52および第3補強部543が、シリンダヘッド21に設けられた燃焼室215の上方を跨いでいる。但し、ブラケット5のうち燃焼室215を跨ぐ部位は、第2固定部52および第3補強部543に限定されるわけではない。
【0069】
図8に表したように、シリンダヘッド21は、載置面216を有する。ブラケット5は、シリンダヘッド21の載置面216に載置され、シリンダヘッド21に固定されている。図8に表したように、載置面216は、シリンダヘッド21に設けられた燃焼室215の上方を跨ぐ領域に設けられている。例えば、図7および図8に表した燃焼室215は、シリンダヘッド21の内部に形成された副室(すなわち副燃焼室)である。
【0070】
ここで、図1図6に関して前述したように、インジェクタ7は、シリンダヘッド21の上部に装着されている。また、燃料蓄圧装置6および燃料配管61は、シリンダヘッド21から上方に離れた位置に設けられている。そのため、ブラケット5が存在しない場合には、シリンダヘッド21の上部および上方に、比較的多くの空間が存在することになる。そうすると、燃焼室215において発生する燃焼騒音がシリンダヘッド21の上方に漏れやすくなる場合がある。
【0071】
これに対して、本実施形態に係る燃料噴射システム3によれば、燃料蓄圧装置6を支持するブラケット5は、エンジン2の燃焼室215の上方を跨いでシリンダヘッド21の上部に載置されており、シリンダヘッド21の上部に固定されている。このように、ブラケット5は、エンジン2の燃焼室215の上方を跨いだ状態でシリンダヘッド21の上部に載置され固定されているため、エンジン2の燃焼室215において発生する燃焼騒音がシリンダヘッド21の上方に漏れることを抑えることができる。また、燃料蓄圧装置6を支持するブラケット5は、シリンダヘッド21の上部に固定された重量物として機能し、シリンダヘッド21に固定された部分において減衰効果を発揮する。そのため、ブラケット5は、エンジン2の燃焼室215において発生する燃焼騒音を遮る機能すなわち遮音機能を有する。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、エンジン2の燃焼室215において発生する燃焼騒音を低減することができる。
【0072】
また、燃焼室215がシリンダヘッド21の内部に形成された副室である場合には、ブラケット5は、副室において発生する燃焼騒音がシリンダヘッド21の上方に漏れることを副室の直上において抑えることができる。また、燃料蓄圧装置6を支持するブラケット5は、シリンダヘッド21の上部に固定された重量物として機能し、シリンダヘッド21に固定された部分において減衰効果を発揮する。そのため、ブラケット5は、副室において発生する燃焼騒音を遮る機能すなわち遮音機能を有する。これにより、燃焼室215がシリンダヘッド21の内部に形成された副室である場合において、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、副室式エンジンの副室において発生する燃焼騒音を効率的に低減することができる。
【0073】
また、シリンダヘッド21は、ブラケット5が載置される載置面216を有する。そのため、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、ブラケット5がシリンダヘッド21に組付けられ固定されるときにブラケット5に歪みが生ずることを抑え、ブラケット5をシリンダヘッド21の上部に対して安定的に固定させることができる。また、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、シリンダヘッド21の上部に対するブラケット5の組付け性を向上させることができる。さらに、燃焼室215がシリンダヘッド21の内部に形成された副室である場合には、シリンダヘッド21の載置面216は、副室式エンジンのシリンダヘッド21に設けられた副室の上方を跨ぐ領域に設けられている。そのため、ブラケット5は、副室の上方を跨ぐ領域に設けられた載置面216に副室の上方を跨いだ状態で安定的に載置され、シリンダヘッド21の上部に安定的に固定される。これにより、ブラケット5は、副室における燃焼によって生ずる振動がシリンダヘッド21の上方に伝わることを抑えることができる。これにより、燃焼室215がシリンダヘッド21の内部に形成された副室である場合において、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、副室において発生する燃焼騒音および副室における燃焼によって生ずる振動を低減することができる。
【0074】
図9は、本実施形態の燃料蓄圧装置を斜め下方から眺めたときの斜視図である。
なお、図9では、説明の便宜上、孔63に圧入され固定された凸部64を省略している。
【0075】
図3および図4に関して前述したように、凸部64(図9では図示せず)が、燃料蓄圧装置6の孔63に圧入され固定されている。孔63の周囲には、締結面631が設けられている。締結面631は、燃料蓄圧装置6が第1締結部材62を用いてブラケット5に締結される際に、ブラケット5の締結面512(図4参照)に接触する面である。
【0076】
また、インジェクタ7(図9では図示せず)が、燃料蓄圧装置6の挿入孔66に挿入され、燃料蓄圧装置6に直接的に接続されている。インジェクタ7の端部は、例えばインジェクタ7に装着されたOリングなどにより挿入孔66に液密に挿入され保持されている。これにより、インジェクタ7は、燃料蓄圧装置6の挿入孔66を通して供給された燃料を燃焼室215に噴射する。挿入孔66の周囲には、位置決め面661が設けられている。位置決め面661は、インジェクタ7に装着された付勢部材72に接触し、インジェクタ7の位置を決める面である。
【0077】
図9に表したように、孔63の周囲に形成された締結面631は、挿入孔66の周囲に形成された位置決め面661と同一面である。これにより、本実施形態に係る燃料噴射システム3は、組立性の容易化を図り、作業性の向上を図ることができるとともに、インジェクタ7が直接的に接続された燃料蓄圧装置6をブラケット5に安定的に固定することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0079】
2:エンジン、 3:燃料噴射システム、 5:ブラケット、 6:燃料蓄圧装置、 7:インジェクタ、 8:ハーネス、 21:シリンダヘッド、 22:ヘッドカバー、 23:吸気マニホルド、 51:第1固定部、 52:第2固定部、 53:第3固定部、 59:第2締結部材、 61:燃料配管、 62:第1締結部材、 63:孔、 64:凸部、 66:挿入孔、 71:位置決め面、 72:付勢部材、 81:接続部、 82:保持部材、 211:スリーブ、 212:挿入孔、 213:雌ネジ、 214:位置決め面、 215:燃焼室、 216:載置面、 511:雌ネジ、 512:締結面、 513:凹部、 521:孔、 531:孔、 541:第1補強部、 542:第2補強部、 543:第3補強部、 631:締結面、 641:先端部、 661:位置決め面、 821:突起部、 A1:配列方向、 D1、D2:距離

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9