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特許7481612取付構造、及び、取付構造を備えた乗物用シート
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  • 特許-取付構造、及び、取付構造を備えた乗物用シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】取付構造、及び、取付構造を備えた乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/54 20060101AFI20240502BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20240502BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
B60N2/54
B60N2/42
B60N2/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020021075
(22)【出願日】2020-02-11
(65)【公開番号】P2021126923
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 将一
(72)【発明者】
【氏名】野▲崎▼ 和義
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第00574241(GB,A)
【文献】実開昭52-074994(JP,U)
【文献】実開昭58-098237(JP,U)
【文献】実開平03-121926(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/00-7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートを支持する構造部材を、前記乗物用シートが載置されるフロアに取り付けるための取付構造であって、
前記フロアに取り付けられたフロア側ベース部と、
前記構造部材に取り付けられたシート側ベース部とを有し、
前記フロア側ベース部は、前記シート側ベース部を水平方向について拘束しつつ、上下方向に相対変位可能に支持し、
前記シート側ベース部と、前記フロア側ベース部との間には、前記シート側ベース部を前記フロア側ベース部に対して上方に付勢する圧縮コイルばねと、前記シート側ベース部の前記フロア側ベース部に対する上方向の変位を所定範囲に規制する規制手段とが設けられ
前記フロア側ベース部は、上下に延びる筒部と、前記筒部の外周面から外側に延出し、前記フロアに結合された脚部とを有し、
前記シート側ベース部は前記筒部の内孔に収容され、
前記筒部の内周面には内側に延びる第1舌片部が設けられ、
前記シート側ベース部の外周面には、前記筒部の側に延び、前記第1舌片部に上下に対峙する第2舌片部が設けられ、
前記圧縮コイルばねは、一端において前記第1舌片部に接続され、他端において前記第2舌片部に接続されていることを特徴とする取付構造。
【請求項2】
前記第1舌片部は前記筒部の内周面の下縁から内側に延び、
前記第2舌片部は前記第1舌片部の上方において、前記シート側ベース部の外周面の上縁から前記筒部の側に延び、
前記圧縮コイルばねは、下端において前記第1舌片部に接続され、上端において前記第2舌片部に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の取付構造。
【請求項3】
前記規制手段は、前記シート側ベース部の外面から前記筒部の内周面に向かって突出する当接部と、前記当接部の上方において前記筒部の内周面から内側に向かって突出し、前記シート側ベース部前記フロア側ベース部に対して上向きに相対移動したときに前記当接部に当接する被当接部とを含むことを特徴とする請求項2に記載の取付構造。
【請求項4】
前記筒部には左右方向に互いに近接する向きに突出する前記被当接部が設けられ、
前記シート側ベース部には、左右方向に相反する向きに突出する前記当接部が設けられ、
前記当接部の上面、及び、前記被当接部の下面はそれぞれ、左右方向外方に向かって下方に傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の取付構造。
【請求項5】
前記シート側ベース部には、前記構造部材が結合される取付部が、前後に並ぶように複数設けられていることを特徴とする請求項4に記載の取付構造。
【請求項6】
前記第1舌片部は前記筒部の前下縁、及び、後下縁それぞれから前後方向に対向する方向に延出し、
前記第2舌片部は前記シート側ベース部の外周面の前上縁、及び、後上縁それぞれから前後方向に離反する方向に延出し、
前記圧縮コイルばねは、前側の前記第1舌片部及び前側の前記第2舌片部と、後側の前記第1舌片部及び後側の前記第2舌片部との間にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項5に記載の取付構造。
【請求項7】
前記取付部はそれぞれ上下方向に貫通するボルト孔を含み、
前記当接部は、複数の前記ボルト孔に側面視で重なり合っていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の取付構造。
【請求項8】
前記脚部にはビードが設けられていることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか一つの項に記載の取付構造。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか一つの項に記載の前記取付構造を備えた乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートを乗物の客室を画定するフロアに取り付けるための取付構造、及び、その取付構造を備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車室を画定するフロアに取り付けられる車両用シートの取付部分に、急ブレーキや衝突等の際に乗員に加わる衝撃を吸収するための衝撃吸収構造が設けられたものが公知である(例えば、特許文献1)。特許文献1の衝撃吸収構造は、フロア上面に載置された板部材と、板部材の上方に設けられ、車両用シートが結合されたスペーサ板材とを接続する棒状の複数のリンク片を含む。衝撃吸収は、連結リンク片の塑性(及び/又は形態)変形及びばね変形によって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-123008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗物用シートをフロアに取り付ける取付構造では、衝突時に衝撃吸収を行うとともに、乗物の走行による弱い振動を吸収して、乗物用シートに伝わる振動を低減することが求められている。よって、乗物用シートの座り心地を高めるためには、乗物用シートとフロアとの取付構造が弾性変形しやすいことが望ましい。特許文献1に記載の衝撃吸収構造は、車両用シートが、弾性変形しにくい棒状のリンク片を介してフロアに結合されているため、振動が乗物用シートに伝わりやすいという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、上下方向の荷重に対してより効果的に衝撃吸収を行うことができ、且つ、フロアから伝わる振動を低減できる乗物用シートの取付構造と、その取付構造を備えた乗物用シートとを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の一態様は、乗物用シート(4)を支持する構造部材(16)を、前記乗物用シートが載置されるフロア(3)に取り付けるための取付構造(1)であって、前記フロアに取り付けられたフロア側ベース部(25)と、前記構造部材に取り付けられたシート側ベース部(26)とを有し、前記フロア側ベース部は、前記シート側ベース部を水平方向について拘束しつつ、上下方向に相対変位可能に支持し、前記シート側ベース部と、前記フロア側ベース部との間には、前記シート側ベース部を前記フロア側ベース部に対して上方に付勢する圧縮コイルばね(27)と、前記フロア側ベース部の前記シート側ベース部に対する上方向の変位を所定範囲に規制する規制手段(45)とが設けられていることを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、乗物用シートとフロアとが圧縮コイルばねによって接続されるため、圧縮コイルばねの変形によって衝撃吸収を行うことができる。更に、圧縮コイルばねの弾性変形によって、車体から乗物用シートに伝わる振動を低減することができる。
【0008】
また、上記の態様において、前記フロア側ベース部は、上下方向を軸線とする筒部(30)と、前記筒部の外周面から外側に延出し、前記フロアに結合された脚部(31)とを有し、前記シート側ベース部は前記筒部の内孔(33)に収容されているとよい。
【0009】
この態様によれば、シート側ベース部を水平方向について拘束することができる。
【0010】
また、上記の態様において、前記筒部の内周面には下縁から内側に延びる下側舌片部(41)が設けられ、前記シート側ベース部の外周面には、上縁から前記筒部の側に延び、前記下側舌片部に上下に対峙する上側舌片部(42)が設けられ、前記圧縮コイルばねは、上端において前記上側舌片部に接続され、下端において前記下側舌片部に接続されているとよい。
【0011】
この態様によれば、圧縮コイルばねを上側舌片部と下側舌片部との間に設けることによって、シート側ベース部をフロア側ベース部に対して上下方向に付勢することができる。これにより、乗物用シートに加わる上下方向の荷重を圧縮コイルばねの変形によって吸収することができる。
【0012】
また、上記の態様において、前記規制手段は、前記シート側ベース部の外面から前記筒部の内周面に向かって突出する当接部(47)と、前記当接部の上方において前記筒部の内周面から内側に向かって突出し、前記フロア側ベース部が前記シート側ベース部に対して上向きに相対移動したときに前記当接部に当接する被当接部(49)とを含むとよい。
【0013】
この態様によれば、フロア側ベース部に対するシート側ベース部の上方の移動範囲を制限することができる。
【0014】
また、上記の態様において、前記筒部には左右方向に互いに近接する向きに突出する左右一対の前記当接部が設けられ、前記フロア側ベース部には、左右方向に相反する向きに突出する左右一対の前記被当接部が設けられ、前記当接部の上面、及び、前記被当接部の下面はそれぞれ、左右方向外方に向かって下方に傾斜しているとよい。
【0015】
この態様によれば、シート側ベース部がフロア側ベース部に対して上方に移動すると、当接部の下面と被当接部の上面とが当接する。その後、シート側ベース部が更に上方に移動すると、被当接部の中央部分が当接部の中央部分に整合するように、シート側ベース部がフロア側ベース部に対して左右方向に案内される。これにより、後突等によって乗物用シートがフロアに対して上方に移動したときに、乗物用シートがフロアに対して左右方向への過度に移動することが防止でき、乗員の保護を図ることができる。
【0016】
また、上記の態様において、前記シート側ベース部には、前記構造部材が結合される取付部(39)が、前後に並ぶように複数設けられているとよい。
【0017】
この態様によれば、乗物用シートの構造部材及びフロアをより強固に結合させることができる。
【0018】
また、上記の態様において、前記下側舌片部は前記筒部の前下縁、及び、後下縁それぞれから前後方向に対向する方向に延出し、前記上側舌片部は前記シート側ベース部の外周面の前上縁、及び、後上縁それぞれから前後方向に離反する方向に延出し、前記圧縮コイルばねは、前側の前記下側舌片部及び前側の前記上側舌片部と、後側の前記下側舌片部及び後側の前記上側舌片部との間にそれぞれ設けられているとよい。
【0019】
この態様によれば、シート側ベース部の前部及び後部をフロア側ベース部に圧縮コイルばねを介して支持させることができる。また、圧縮コイルばねが前後に並んで配置されるため、左右に並んで配置される場合に比べて、取付構造の左右方向の幅を小さくすることができる。
【0020】
また、上記の態様において、前記取付部はそれぞれ上下方向に貫通するボルト孔(39)を含み、前記当接部は、複数の前記ボルト孔に側面視で重なり合っているとよい。
【0021】
この態様によれば、構造部材を取付部に容易に結合させることができる。更に、当接部がボルト孔に側面視で重なり合うように設けられることによって、シート側ベース部の剛性を高めることができる。
【0022】
また、上記の態様において、前記脚部にはビード(37)が設けられているとよい。
【0023】
この態様によれば、脚部の剛性を高めることができる。
【0024】
また、乗物用シートであって、上記の態様の取付構造を備えているとよい。
【0025】
この態様によれば、上下方向の荷重に対してより効果的に衝撃吸収を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
上記課題を解決するために本発明の一態様は、乗物用シートを支持する構造部材を、前記乗物用シートが載置されるフロアに取り付けるための取付構造であって、前記フロアに取り付けられたフロア側ベース部と、前記構造部材に取り付けられたシート側ベース部とを有し、前記フロア側ベース部は、前記シート側ベース部を水平方向について拘束しつつ、上下方向に相対変位可能に支持し、前記シート側ベース部と、前記フロア側ベース部との間には、前記シート側ベース部を前記フロア側ベース部に対して上方に付勢する圧縮コイルばねと、前記フロア側ベース部の前記シート側ベース部に対する上方向の変位を所定範囲に規制する規制手段とが設けられている態様によれば、圧縮コイルばねは、変形するときの単位体積当たりの弾性エネルギーは他のばね部品と比較して大きいため、取付構造の小型化を図ることができるとともに、より効果的に衝撃吸収を行うことができる。
【0027】
また、上記の態様において、前記フロア側ベース部は、上下方向を軸線とする筒部と、前記筒部の外周面から外側に延出し、前記フロアに結合された脚部とを有し、前記シート側ベース部は前記筒部の内孔に収容されている態様によれば、シート側ベース部を水平方向について拘束することができる。
【0028】
上記の態様において、前記筒部の内周面には下縁から内側に延びる下側舌片部が設けられ、前記シート側ベース部の外周面には、上縁から前記筒部の側に延び、前記下側舌片部に上下に対峙する上側舌片部が設けられ、前記圧縮コイルばねは、上端において前記上側舌片部に接続され、下端において前記下側舌片部に接続されている態様によれば、上側舌片部と下側舌片部との間に圧縮コイルばねを設けることによって、シート側ベース部をフロア側ベース部に対して上下方向に付勢することができる。
【0029】
上記の態様において、前記規制手段は、前記シート側ベース部の外面から前記筒部の内周面に向かって突出する当接部と、前記当接部の上方において前記筒部の内周面から内側に向かって突出し、前記フロア側ベース部が前記シート側ベース部に対して上向きに相対移動したときに前記当接部に当接する被当接部とを含むと態様によれば、フロア側ベース部に対するシート側ベース部の上方の移動範囲を制限することができる。
【0030】
また、上記の態様において、筒部には左右方向に互いに近接する向きに突出する左右一対の当接部が設けられ、フロア側ベース部には、左右方向に相反する向きに突出する左右一対の被当接部が設けられ、当接部の上面、及び、被当接部の下面はそれぞれ、左右方向外方に向かって下方に傾斜している態様によれば、シート側ベース部がフロア側ベース部に対して上方に移動すると、当接部の下面と被当接部の上面とが当接する。その後、シート側ベース部が更に上方に移動すると、被当接部の中央部分が当接部の中央部分に整合するように、シート側ベース部がフロア側ベース部に対して左右方向に案内される。これにより、後突等によって乗物用シートがフロアに対して上方に移動したときに、乗物用シートがフロアに対して左右方向への過度に移動することが防止でき、乗員の保護を図ることができる。
【0031】
上記の態様において、前記シート側ベース部には、前記構造部材が結合される取付部が、前後に並ぶように複数設けられている態様によれば、乗物用シートの構造部材及びフロアをより強固に結合させることができる。
【0032】
また、上記の態様において、前記下側舌片部は前記筒部の前下縁、及び、後下縁それぞれから前後方向に対向する方向に延出し、前記上側舌片部は前記シート側ベース部の外周面の前上縁、及び、後上縁それぞれから前後方向に離反する方向に延出し、前記圧縮コイルばねは、前側の前記下側舌片部及び前側の前記上側舌片部と、後側の前記下側舌片部及び後側の前記上側舌片部との間にそれぞれ設けられている態様によれば、シート側ベース部の前部及び後部をフロア側ベース部に圧縮コイルばねを介して支持させることができる。また、圧縮コイルばねが前後に並んで配置されるため、左右に並んで配置される場合に比べて、取付構造の左右方向の幅を小さくすることができる。
【0033】
また、上記の態様において、前記取付部はそれぞれ上下方向に貫通するボルト孔を含み、前記当接部は、複数の前記ボルト孔に側面視で重なり合っている態様によれば、構造部材を取付部に容易に結合させることができる。更に、当接部がボルト孔に側面視で重なり合うように設けられることによって、シート側ベース部の剛性を高めることができる。
【0034】
また、上記の態様において、前記脚部にはビードが設けられている態様によれば、脚部の剛性を高めることができる。
【0035】
また、乗物用シートであって、上記の取付構造を備えている態様によれば、上下方向の荷重に対してより効果的に衝撃吸収を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明に係る取付構造が設けられた乗物用シートの斜視図
図2】第1実施形態に係る左前シートレッグの斜視図
図3図2のIII-III断面図
図4図2のIV-IV断面図
図5】第2実施形態に係る左後シートレッグの斜視図
図6】第3実施形態に係る左後シートレッグの斜視図
図7】第4実施形態に係る左後シートレッグの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して、本発明に係る取付構造を自動車に設けられた乗物用シートを取付けるための取付構造に適用した実施形態を説明する。
【0038】
<<第1実施形態>>
図1に示すように、本発明に係る取付構造1は、車室2の底部を画定するフロア3上に、乗物用シート4を取り付けるために用いられるものである。乗物用シート4は運転席の側方に設けられた助手席を構成している。以下では、乗物用シート4に着座した乗員から見た方向を基準として、前後、左右、及び上下方向をそれぞれ定めて説明を行う。
【0039】
乗物用シート4は車両の前方を向くように(より詳細には着座した乗員が車両の前方に向くように)フロア3の上面に、スライド移動可能に取り付けられている。乗物用シート4は着座者の臀部を支持するシートクッション5と、シートクッション5の後部に設けられ、背凭れとして機能するシートバック6と、各シートバック6の上部に設けられたヘッドレスト7とを備えている。
【0040】
シートクッション5は略上下方向を向く面を有する略直方体状をなしている。シートクッション5の上面は乗員1人分の着座面9を構成している。着座面9は左右方向略中央において下方に凹み、後方に向かってやや下方に傾斜している。これにより、着座面9は乗員の臀部及び大腿部に対応する形状をなしている。乗員が着座するときには、着座面9には乗員の臀部及び大腿部が配置される。
【0041】
シートバック6は上下に延び、略前後方向を向く面を有する略直方体状をなしている。シートバック6の前面はそれぞれ乗員の背中を支持する支持面10を構成している。支持面10は左右方向略中央において後方に凹み、上方に向かってやや後方に傾斜している。これにより、支持面10は乗員の背中に対応する形状をなし、支持面10に乗員の背中が支持される。
【0042】
ヘッドレスト7は、シートバック6の上端に2つのピラー11を介して接続されている。ヘッドレスト7は着座した乗員の頭部の後方となる位置に配置されている。
【0043】
乗物用シート4の下側にはレール装置15が設けられている。レール装置15はフロア3に取付構造1を介して取り付けられる装置であって、乗物用シート4をフロア3に対して前後にスライド移動可能となるように下側から支持している。
【0044】
レール装置15は、前後に延在する左右一対のロアレール16と、ロアレール16にそれぞれ、その延在方向に摺動可能に支持される左右一組のアッパレール17(構造部材)とを含む。ロアレール16はそれぞれ取付構造1を介してフロア3に取り付けられている。左右のアッパレール17の上方にはシートクッション5が設けられている。左右のアッパレール17はそれぞれシートクッション5の骨格となるフレームに連結している。
【0045】
取付構造1は、ロアレール16の前端及び後縁と、フロア3との間にそれぞれ設けられたシートレッグ21を含む。シートレッグ21は、ロアレール16をフロア3に取り付けるための金属製のブラケットであり、左側のロアレール16の前端に設けられたシートレッグ21(以下、左前シートレッグ21FL)と、右側のシートレッグ21の前縁に設けられたシートレッグ21(以下、右前シートレッグ21FR)とは、概ね左右対称をなしている。左側のロアレール16の後端に設けられたシートレッグ21(以下、左後シートレッグ21RL)と、右側のロアレール16の後端に設けられたシートレッグ21(図示せず)とは、同様に概ね左右対称をなしている。
【0046】
本発明に係るシートレッグ21にはそれぞれ、フロア3から伝わる衝撃を吸収することによって、乗員を保護するための衝撃吸収構造が設けられている。次に、図2図3、及び図4を参照して、シートレッグ21の構造について説明する。以下では、左前シートレッグ21FLについて詳細に説明するが、他のシートレッグ21についても同様の構成を有しているため、説明を省略する。
【0047】
図2に示すように、シートレッグ21は、フロア3に取り付けられたフロア側ベース部25と、ロアレール16に結合されたシート側ベース部26と、シート側ベース部26及びフロア側ベース部25を接続する圧縮コイルばね27(図3参照)とを備えている。
【0048】
フロア側ベース部25は、上下方向に延びる筒状の筒部30と、筒部30の外周面から外側に延出してフロア3に締結された脚部31とを有している。
【0049】
筒部30は上下方向を軸線とする内孔33を備え、前後方向及び左右方向を向く外面を有する四角筒状をなしている。筒部30の内孔33は前後方向に延びる長円状の断面を有している。脚部31は筒部30の前面下縁から前方斜め下側に向かって延び、前方側に屈曲して、フロア3に沿って前方に延びている。脚部31の前部には上下に貫通するボルト孔34が設けられ、ボルト孔34に貫通するボルト35(図1参照)によって脚部31はフロア3に締結されている。
【0050】
本実施形態では、図2に示すように、脚部31にはその外周縁に沿ってビード37が設けられている。これにより、脚部31の剛性が高められている。
【0051】
シート側ベース部26は上下方向に延びる略角柱状をなしている。シート側ベース部26は筒部30の内孔33に収容されている。これにより、シート側ベース部26は前後左右方向にその移動方向が拘束され、筒部30に対して上下方向に相対変位可能に支持されている。
【0052】
シート側ベース部26にはロアレール16に結合するための上下に貫通するボルト孔39(取付部)が2つ前後に並設されている。ボルト孔39を貫通するボルト(図示せず)によって、ロアレール16はシート側ベース部26に締結されている。
【0053】
図3は、図2のIII-IIIに沿って、フロア側ベース部25を切断したときの、シートレッグ21の断面図を示している。図3に示すように、筒部30の内周面には、前下縁及び後下縁からそれぞれ、前後方向に沿って、互いに近接する方向に延出する一対の下側舌片部41が設けられている。シート側ベース部26の外周面には、前上縁、及び、後上縁からそれぞれ、前後方向に沿って、互いに離反する方向に延出する上側舌片部42が設けられている。前側の下側舌片部41(以下、前下側舌片部41F)及び前側の上側舌片部42(以下、前上側舌片部42F)は上下に揃う位置にあり、上下に対峙している。後側の下側舌片部41(以下、後下側舌片部41R)及び後側の上側舌片部42(以下、後上側舌片部42R)もまた同様に、上下に揃う位置にあり、上下に対峙している。このように、下側舌片部41が上側舌片部42の下方であって、上下に揃う位置に設けられているため、シート側ベース部26のフロア側ベース部25に対する下方への移動が所定範囲に制限される。これにより、シート側ベース部26がフロア側ベース部25に対して下方に脱落することが防止できる。
【0054】
圧縮コイルばね27はそれぞれ上下方向を軸線とする螺旋状をなす金属製の線状部材によって構成されている。本実施形態では、シートレッグ21は2つの圧縮コイルばね27を備えている。圧縮コイルばね27はそれぞれ前下側舌片部41Fと前上側舌片部42Fとの間、及び、後下側舌片部41Rと後上側舌片部42Rとの間に設けられている。これにより、圧縮コイルばね27はそれぞれボルト孔39の前方及び後方に位置している。一方の圧縮コイルばね27(以下、前圧縮コイルばね27F)は上端において前上側舌片部42Fに結合し、下端において前下側舌片部41Fに結合している。他方の圧縮コイルばね27(以下、後圧縮コイルばね27R)は上端において後上側舌片部42Rに結合し、下端において後下側舌片部41Rに結合している。このように、上側舌片部42と下側舌片部41との間に圧縮コイルばね27が設けられることによって、シート側ベース部26はフロア側ベース部25に対して上方向に付勢されている。
【0055】
図4は、図2のIV-IVに沿って、シートレッグ21を切断したときの断面図を示している。図4に示すように、シートレッグ21には、シート側ベース部26フロア側ベース部25に対する上方向の変位を所定範囲に規制する規制手段45が設けられている。より詳細には、規制手段45は、シート側ベース部26に設けられた当接部47と、筒部30に設けられた被当接部49とを含む。
【0056】
当接部47はシート側ベース部26の左右側面にそれぞれ設けられている。当接部47はそれぞれシート側ベース部26の左右外側面から筒部30の内周面に向かって左右方向に離反する向きに突出している。当接部47の上面はそれぞれ左右方向外方に向かって下方に傾斜している。
【0057】
図3に示すように、当接部47は側面視でボルト孔39に重なるように設けられている。本実施形態では、当接部47は2つのボルト孔39にそれぞれ重なるように形成されている。このように、当接部47をシート側ベース部26に設けることによって、シート側ベース部26の剛性を高めることができ、シート側ベース部26のボルト孔39を設けることによるシート側ベース部26の剛性の低下が補填されている。
【0058】
筒部30には左右一対の被当接部49が設けられている。被当接部49は左右対称をなし、筒部30の左右内側面からそれぞれ左右方向に沿って互いに相反する向きに突出している。被当接部49はそれぞれ対応する当接部47の上側に位置し、シート側ベース部26フロア側ベース部25に対して上向きに相対移動したときに当接部47に当接する。これにより、シート側ベース部26フロア側ベース部25に対する上方向の変位が所定範囲に規制することができ、シート側ベース部26を水平方向について拘束することがで
きる。
【0059】
被当接部49の下面はそれぞれ、左右方向外方に向かって下方に傾斜している。これにより、被当接部49が対応する当接部47に当接すると、シート側ベース部26が筒部30の左右方向略中央部に案内される。
【0060】
本実施形態では、圧縮コイルばね27にはそれぞれ、スペーサ51が設けられている。スペーサ51は、圧縮コイルばね27を構成する螺旋状の線状部材の間に嵌め込まれた部材であり、互いに所定の間隔で配置された複数の柱体を含む。各柱体の間には隙間が設けられ、各柱体は上下方向に圧縮伸長変形可能となっている。スペーサ51は金属製であってもよく、また、樹脂製であってもよい。
【0061】
次に、シートレッグ21の製造方法について説明する。シートレッグ21は、3Dプリンタによって造形される。製造に用いる3Dプリンタとしては、熱溶解積層法に基づくものであってもよく、光造形法やレーザ焼結法に基づくものであってもよい。
【0062】
作業者は、まず、フロア3やシートの形状に合わせて、スペーサ51を除くシートレッグ21の3次元CADデータを作成する。その後、作業者は、積層造形によって作成不能な形状(例えば、オーバーハングやブリッジ等)がある場合には、3次元CADデータにサポート材61を追加する。サポート材61の形状としては、箱形のものであってよい。本実施形態では、脚部31の下側(図2の二点鎖線部分を参照)と、圧縮コイルばね27を構成する線状部材の間とにサポート材61が設けられる。
【0063】
次に、サポート材61の追加が完了すると、作業者は追加完了後の3次元CADデータを造形ツールパスデータに変換した後、ツールパスデータを3次元プリンタに読み込ませる。その後、3次元プリンタによって、造形を行う。熱溶解積層法に基づく3次元プリンタを用いる場合には、3次元プリンタは押出ノズルを1本備えたものであってもよく、押出ノズルが2本以上備えたものであってもよい。押出ノズルを1本備えた3次元プリンタによって造形を行う場合には、金属微粒子を含む熱可塑性の金属フィラメントを用い、サポート材61を互いに所定の間隔で配置された複数の柱材によって形成するとよい。押出ノズルを2本以上備えた3次元プリンタを用いて造形を行う場合には、水溶性の素材(例えば、ポリビニルアルコール等)を用いてサポート材61を形成し、金属微粒子を含む熱可塑性の金属フィラメントを用いて他の部分を形成するとよい。本実施形態では、シートレッグ21は、ステンレス鋼部品製作用金属フィラメントを用いて、押出ノズルを1本備えた3次元プリンタによって造形される。
【0064】
3次元プリンタによって造形した後、作業者は、サポート材61の除去を行う。サポート材61を金属によって形成した場合には、作業者は、手作業によって、また、必要に応じてピンセットはやニッパーを用いて、脚部31の下側のサポート材61の除去を行う。但し、作業者は、圧縮コイルばね27の線状部材の間のサポート材61を残して、スペーサ51とする。これにより、製造工程が簡素になる。
【0065】
水溶性の素材を用いてサポート材61を形成した場合には、作業者は、造形後、水につけることによってサポート材61の除去を行うとよい。
【0066】
次に、このように構成した取付構造1の効果について説明する。車両の走行等によって、乗員に下方に向く荷重が加わると、シートクッション5はフロア3の側(下側)に押し出される。これにより、シート側ベース部26には下方に向く荷重が加わって、圧縮コイルばね27が圧縮されて変形する。圧縮コイルばね27の変形によって荷重が吸収されて、乗員に加わる衝撃が低減される。
【0067】
本実施形態では、フロア3と乗物用シート4とが圧縮コイルばね27を介して接続され、フロア3から乗物用シート4に伝わる振動が圧縮コイルばね27の弾性変形によって吸収される。これにより、例えば、フロア3と乗物用シート4とが弾性変形しにくい部材(例えば、板材や棒状部材等)によって接続されている場合に比べて、乗物用シート4に伝わる振動を低減することができる。よって、乗物用シート4の座り心地を向上させることができる。
【0068】
圧縮コイルばね27は、一般に、変形するときの単位体積当たりの弾性エネルギーが他のばね部品(例えば、板ばね)と比較して大きい。よって、シートレッグ21を小型化しつつ、他のばね部品を用いた場合に比べて弾性変形によってより効果的に荷重を吸収することができる。よって、乗員に加わる振動や衝撃を他のばね部品を用いた場合に比べてより効果的に低減することができる。
【0069】
後突時に、乗員に後方への荷重が加わって、乗員の頭部が後方に移動し、乗物用シート4に左右方向を軸線として回転させる向きに荷重が加わることがある。このとき、シートクッション5には、左右方向に延び、その後部を通過する軸線を中心として回転させる向きに荷重が加わる。これにより、シートクッション5の前部は上方に向く荷重を受けて上方に持ち上げられ、当接部47は上方に移動して被当接部49に当接する。当接部47が被当接部49に当接することによって、シートクッション5の上方への移動が規制される。よって、乗員の大腿部が上方に跳ね上げられ難くなり、乗員をより確実に保護することができる。
【0070】
当接部47に上方に向く荷重が加わって、当接部47が上方に移動すると、当接部47の上面と被当接部49の下面とが当接する。これにより、当接部47は筒部30の左右方向略中央に案内される。これにより、後突等によって乗物用シート4がフロア3に対して上方に移動したときに、乗物用シート4のフロア3に対して左右方向への過度な移動を防止することができるため、乗員の保護を図ることができる。
【0071】
本実施形態では、シート側ベース部26に2つのボルト孔39が設けられている。これにより、ロアレール16とシート側ベース部26とをより強固に結合させることができる。また、ボルト孔39が前後に並ぶように配置されることによって、乗物用シート4に左右方向を軸線として回転させる向きに荷重によって、ロアレール16とシート側ベース部26とが分離することをより確実に防止することができる。
【0072】
シート側ベース部26の前部及び後部がそれぞれフロア側ベース部25に圧縮コイルばね27を介して接続されている。これにより、シート側ベース部26の前部及び後部がそれぞれフロア側ベース部25に圧縮コイルばね27を介して支持される。これにより、前部のみ、又は、後部のみを圧縮コイルばね27を介してフロア側ベース部25に支持させた場合に比べて、シート側ベース部26がフロア側ベース部25に直接接触し難くなり、シート側ベース部26にフロア側ベース部25から荷重が伝わりにくくなる。よって、乗員に加わる衝撃をより低減することができる。
【0073】
また、圧縮コイルばね27F、27Rは前後に並んで配置されている。よって、圧縮コイルばね27F、27Rが左右に並んで配置されている場合に比べて、シートレッグ21(すなわち、取付構造1)の左右方向の幅を小さくすることができる。
【0074】
本実施形態では、シートレッグ21の左右方向の幅はロアレール16の左右方向の幅に等しい。このように、シートレッグ21の左右方向の幅をロアレール16の左右方向の幅に整合させることで、シートクッション5の下側の空間にシートレッグ21が突出することが防止できる。これにより、シートクッション5の下側の空間を、例えば物を収容する収容空間として、利用しやすくなる。
【0075】
本実施形態では、シートレッグ21は3次元プリンタによって作成される。その際、作業者は、脚部31の下側のサポート材61のみを除去して、圧縮コイルばね27の線状部材の間のサポート材61を残す。これにより、シートレッグ21の製造工程が簡素になる。また、圧縮コイルばね27の線状部材の間のサポート材61は上下方向に圧縮伸長変形可能となっているため、衝撃吸収機構として機能する。よって、シートレッグ21によって乗員に加わる衝撃をより効果的に吸収させることができる。
【0076】
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係る取付構造70は、シートクッション5に加わる水平面内の荷重を吸収できる点が、第1実施形態に係る取付構造1とは異なる。
【0077】
第2実施形態に係る取付構造70は、第1実施形態と同様に、ロアレール16をフロア3に取り付けるためのシートレッグ71を含む。シートレッグ71は、図5に示すように、第1実施形態と同様に、フロア3に取り付けられたフロア側ベース部25と、ロアレール16に取り付けられたシート側ベース部26とを含む。フロア側ベース部25は第1実施形態と同様に、上下方向に貫通する内孔33を有する四角筒状の筒部30と、脚部31とを含んでいる。シート側ベース部26は筒部30に上下方向に相対変位可能に収容されている。
【0078】
筒部30の内周面と、シート側ベース部26の外周面との間の隙間Aには、圧縮コイルばね72が複数設けられている。本実施形態では、筒部30の内周面と、シート側ベース部26の外周面との間の隙間Aには、4つの圧縮コイルばね27が設けられている。圧縮コイルばね27はそれぞれ、上面視で、筒部30の内周面(以下、筒部内周面30S)とシート側ベース部26の外周面(以下、ベース外周面26S)とを前後、及び左右に接続している。より具体的には、圧縮コイルばね72はそれぞれ、筒部内周面30Sの前側及びベース外周面26Sの前側と、筒部内周面30Sの後側及びベース外周面26Sの後側と、筒部内周面30Sの左側部分及びベース外周面26Sの左側面と、筒部内周面30Sの右側部分及びベース外周面26Sの右側面とを接続している。
【0079】
本実施形態では、シート側ベース部26にはその外周面から径外方に向けて突出する係合突起73が複数設けられている。筒部30には係合突起73に整合する位置に、径方向に水平方向に貫通する係合孔74が複数設けられている。係合突起73は対応する係合孔74に突入している。本実施形態では、係合突起73は水平方向に延びる円柱状をなし、係合孔74は上下方向に延びる長穴状をなしている。係合突起73及び係合孔74の係合によって、フロア側ベース部25のシート側ベース部26に対する上下方向の変位が所定範囲に規制されている。換言すれば、係合突起73と係合孔74とによって、フロア側ベース部25のシート側ベース部26に対する上下方向の変位を所定範囲に規制する規制手段45が構成されている。
【0080】
次に、第2実施形態に係る取付構造70の効果について説明する。筒部30とシート側ベース部26との間には、両者を左右、及び前後に接続する圧縮コイルばね72が設けられている。これにより、車両走行時や衝突時に、シートクッション5に前後方向、又は、左右方向に向く荷重が加わって、シートクッション5がフロア3に対して移動すると、圧縮コイルばね72が圧縮又は伸長し、荷重が吸収される。これにより、乗員に加わる衝撃を低減することができる。
【0081】
また、車両の走行によって、フロア3から乗物用シート4に振動が伝達する場合がある。本実施形態では、シートクッション5がフロア3に対して前後、及び左右に移動すると、圧縮コイルばね72が圧縮又は伸長し、荷重が吸収されるため、第1実施形態と同様に、フロア3から乗物用シート4に伝わる振動を低減することができる。
【0082】
<<第3実施形態>>
第3実施形態に係る取付構造80は、第2実施形態に係る取付構造70と同様にシートレッグ81を含み、図6に示すように、シートレッグ81に圧縮コイルばね27の代わりに複数の板ばね82が設けられている点が異なる。他の構成については第2実施形態と同様であるため、他の構成については説明を省略する。
【0083】
板ばね82は、上面視でV字状(くの字状)をなす金属片によって構成されている。板ばね82はそれぞれ筒部内周面30Sとベース外周面26Sとを接続している。板ばね82は少なくとも4個以上設けられているとよく、より好ましくは20個以上設けられているとよい。板ばね82はそれぞれ、筒部30とシート側ベース部26との間の隙間Aに沿って並ぶように配置されている。
【0084】
本実施形態では、筒部内周面30Sの左側部分及びベース外周面26Sの左側面と、筒部内周面30Sの右側部分及びベース外周面26Sの右側面とがそれぞれ7つの板ばね82によって左右に接続されている。筒部内周面30Sの左側部分及びベース外周面26Sの左側面を接続する板ばね82と、筒部内周面30Sの右側部分及びベース外周面26Sの右側面を接続する板ばね82とは、上面視で、シート側ベース部26の略中央を中心とする点対称をなすように配置されている。
【0085】
筒部内周面30Sの前側部分及びベース外周面26Sの前面と、筒部内周面30Sの後側部分及び後側のベース外周面26Sとがそれぞれ、5つの板ばね82によって前後に接続されている。筒部内周面30Sの前側部分及びベース外周面26Sの前面を接続する板ばね82と、筒部内周面30Sの後側部分及びベース外周面26Sの後面を接続する板ばね82とは、上面視で、シート側ベース部26の略中央を中心とする点対称をなすように配置されている。
【0086】
第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、シート側ベース部26には係合突起73が設けられ、筒部30には係合孔74が設けられていてもよい。係合突起73と係合孔74とによって、フロア側ベース部25のシート側ベース部26に対する上下方向の変位を所定範囲に規制する規制手段45を構成することができる。
【0087】
次に、第3実施形態に係る取付構造80の効果について説明する。筒部30とシート側ベース部26との間には、両者を左右、及び前後に接続する板ばね82が設けられている。これにより、車両走行時や衝突時に、シートクッション5に前後方向、又は、左右方向に向く荷重が加わって、シートクッション5がフロア3に対して移動すると、板ばね82が圧縮又は伸長し、荷重が吸収される。これにより、乗員に加わる衝撃を低減することができる。
【0088】
<<第4実施形態>>
第4実施形態に係る取付構造90は、第3実施形態に係る取付構造80に比べて、シートレッグ91に設けられた板ばね92の配置が異なり、他の構成については、第3実施形態と同様であるため、他の構成については説明を省略する。
【0089】
図7に示すように、板ばね92は第3実施形態と同様に、上面視でV字状をなす金属片によって構成されている。板ばね92はそれぞれ、筒部内周面30Sとベース外周面26Sとを接続し、筒部内周面30Sとベース外周面26Sとの間の隙間Aの全周に渡って周方向に並ぶように配置されている。本実施形態では、板ばね92はそれぞれ概ね間隔が等しくなるように配置されている。第4実施形態においても、第3実施形態と同様に、シート側ベース部26には係合突起73が設けられ、筒部30には係合孔74が設けられていてもよい。係合突起73と係合孔74とによって、フロア側ベース部25のシート側ベース部26に対する上下方向の変位を所定範囲に規制する規制手段45を構成することができる。
【0090】
次に、第4実施形態に係る取付構造90の効果について説明する。筒部30とシート側ベース部26との間には、板ばね92が周方向に並ぶように配置されている。これにより、シートクッション5に右斜め前、左斜め前、右斜め後ろ、又は、左斜め後ろに向く荷重が加わったときに、対応する方向に延びる板ばね92が圧縮、伸長される。これにより、筒部30とシート側ベース部26とを前後又は左右方向に接続する板ばね92のみが設けられている場合に比べて、より多方向からの衝撃を吸収することができる。よって、乗員に衝撃が伝わり難くなり、乗員をより効果的に保護することができる。
【0091】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記実施形態では、サポート材61は複数の柱体によって形成されていたが、この態様には限定されない。圧縮コイルばね27に設けられるサポート材61は、例えば、多数の空孔を含む1つ又は複数の柱体によって形成されて、製造工程において除去されることなく、残されてもよい。また、圧縮コイルばね27の内孔にも、サポート材61が設けられ、製造工程において除去されることなく、残されてもよい。
【0092】
上記実施形態において、下側舌片部41は筒部30に、上側舌片部42はシート側ベース部26にそれぞれ設けられていたが、この態様には限定されない。例えば、上側舌片部42が筒部30に設けられ、下側舌片部41がシート側ベース部26に設けられ、圧縮コイルばね27は上端において上側舌片部42に、下端おいて下側舌片部41にそれぞれ接続されていてもよい。
【0093】
上記実施形態において、取付構造1、70、80、90は、乗物用シート4を自動車の車室2を画定するフロア3に取り付けるために用いられていたが、この態様には限定されない。例えば、取付構造1、70、80、90は、バスや電車等の車両や、飛行機、船舶等の乗物用シート4を、客室を画定するフロアに載置して取り付けるために用いられてもよい。
【0094】
上記実施形態において、取付構造1、70、80、90はフロア3とロアレール16とを結合させるために用いられていたが、この態様には限定されない。例えば、取付構造1、70、80、90はフロア3と乗物用シート4を支持する構造部材とを結合させるために用いられていればよく、より具体的には例えば、シートレッグ21、71、81、91は、フロア3とシートクッション5に結合された部材(例えば、シートクッションフレームに固定されたブラケット等)とを結合させるために用いられていてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 :第1実施形態に係る取付構造
3 :フロア
4 :乗物用シート
16 :ロアレール(構造部材)
21 :シートレッグ
27 :圧縮コイルばね
30 :筒部
31 :脚部
33 :内孔
37 :ビード
39 :ボルト孔
41 :下側舌片部
42 :上側舌片部
45 :規制手段
47 :当接部
49 :被当接部
70 :第2実施形態に係る取付構造
71 :シートレッグ
72 :圧縮コイルばね
73 :係合突起
74 :係合孔
80 :第3実施形態に係る取付構造
81 :シートレッグ
82 :板ばね
90 :第4実施形態に係る取付構造
91 :シートレッグ
92 :板ばね
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7