(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/20 20060101AFI20240502BHJP
B60N 2/36 20060101ALI20240502BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
B60N2/20
B60N2/36
B60N2/22
(21)【出願番号】P 2020027794
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】田辺 仁一
(72)【発明者】
【氏名】三好 晃
(72)【発明者】
【氏名】古和 宗高
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-163125(JP,U)
【文献】実開昭58-044946(JP,U)
【文献】国際公開第2015/178359(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/043394(WO,A1)
【文献】実開昭58-003329(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
B60R 21/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションとシートバックとを備える乗物用シートにおいて、
前記シートバックは、前方に倒して前記シートクッションに重ね合わせることが可能とされており、
前記シートバックが前記シートクッションに重ね合わされた状態から回動しないように前記シートバックをロックして位置固定するロック機構を備え、
前方に倒れた前記シートバックが前記ロック機構によりロックされた状態では前記シートクッション又は前記シートバックが縮んだ状態になり、前方に倒れた前記シートバックの背面が略水平になるように構成されて
おり、
前記シートクッションの内部の前側部分に上下方向に伸縮可能な一の伸縮部材が配置されており、
前記一の伸縮部材は、前方に倒れた前記シートバックが前記ロック機構によりロックされた状態では縮んだ状態になり、前記シートバックが前記ロック機構によりロックされていない状態ではストッパに引っ掛かり阻害されるまで伸びた状態になり、
前記シートバックが後方に倒される動作に合わせて前記ストッパが後方に移動することに伴い、前記ストッパによる阻害がなくなることで前記一の伸縮部材が伸長して、前記シートクッションの前側部分が上方に盛り上がるように構成されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記ロック機構は、係合部と被係合部とを備え、
前記シートバックが前方に倒れて前記シートクッションに重ね合わされた状態で前記係合部が前記被係合部と係合することで、前記シートバックがロックされて位置固定されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記シートバックの背面側にレバーが設けられており、
前記レバーが、前記シートバック内に挿通されたワイヤを介して前記係合部と接続されており、
前記レバーが操作されると、前記ワイヤを介して前記係合部と前記被係合部との係合が解除されることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記シートクッションがフロアに対して移動せず、前記シートバックのみを前方に倒して前記シートクッションに重ね合わせることができるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前方に倒れた状態での前記シートバックの内部の前側部分に上下方向に伸縮可能な
他の伸縮部材が配置されており、
前記
他の伸縮部材は、
前方に倒れた前記シートバックが前記ロック機構によりロックされた状態では縮んだ状態になり、
前記シートバックが前記ロック機構によりロックされていない状態では伸びた状態になることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記
一の伸縮部材は、その収縮率を調整できるように構成されていることを特徴とする
請求項
1から請求項
5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記
一の伸縮部材の両端部分に板状部材がそれぞれ配置されており、両方又は少なくとも一方の前記板状部材が左右に分割されており、
分割された前記板状部材に、それぞれ前記
一の伸縮部材が配置されていることを特徴とする請求項
1から請求項
6のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記
一の伸縮部材は、エアセルを用いて構成されており、
前記エアセル内にエアバッグが配置されていることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記
一の伸縮部材は、エアセルを用いて構成されており、
前記エアセル内にインフレータが配置されていることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
シートクッションフレームと、前記シートクッションフレーム上に設けられたクッションパッドと、前記シートクッションフレームと前記クッションパッドを被覆してシート表面を構成する表皮とで構成されたシートクッションと、
シートバックフレームと、前記シートバックフレーム上に設けられたクッションパッドと、前記シートバックフレームと前記クッションパッドを被覆してシート表面を構成する表皮とで構成されたシートバックと、
を備える乗物用シートにおいて、
前記シートバックは、前方に倒して前記シートクッションに重ね合わせることが可能とされており、
前記シートバックが前記シートクッションに重ね合わされた状態から回動しないように前記シートバックをロックして位置固定するロック機構を備え、
前方に倒れた前記シートバックが前記ロック機構によりロックされた状態では前記シートクッション又は前記シートバックが縮んだ状態になり、前方に倒れた前記シートバックの背面が略水平になるように構成されて
おり、
前記シートクッションの内部の前側部分に上下方向に伸縮可能な伸縮部材が配置されており、
前記伸縮部材は、前方に倒れた前記シートバックが前記ロック機構によりロックされた状態では縮んだ状態になり、前記シートバックが前記ロック機構によりロックされていない状態ではストッパに引っ掛かり阻害されるまで伸びた状態になり、
前記シートバックが後方に倒される動作に合わせて前記ストッパが後方に移動することに伴い、前記ストッパによる阻害がなくなることで前記伸縮部材が伸長して、前記シートクッションの前側部分が上方に盛り上がるように構成されていることを特徴とする乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シート等の乗物用シートとして、いわゆるダイブダウンタイプの乗物用シートが知られている(例えば特許文献1参照)。
ダイブダウンタイプの乗物用シートは、シートバックを前方に倒して(いわゆるフォールダウン)シートクッションの上面に重ね合わせ、シートバックとシートクッションをともにさらに前方に倒してダイブダウンさせることができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の技術はハッチバックに適用したものであるが、例えば、この技術のうちフォールダウンの技術をセダン等に適用すると、
図20(A)に例示するセダンのシート100のシートクッション101やシートバック102は軟らかく可撓性に富むように形成されているため、
図20(B)に示すようにシートバック102をフォールダウンさせた際に、前方に倒したシートバック102がシートクッション101に押し戻されて上下に揺動する状態(いわばゆらゆらと動く状態)になる。
【0005】
しかし、前方に倒したシートバック102が上下に揺動すると、例えば、シートバック102の背面102a(
図20(B)の状態では上面側)の上側に荷物を載せる場合に荷物を載せにくくなったり載せた荷物が安定しない状態になったりする。また、例えば、シートバック102の背面102a上に人が横たわるような場合、横たわった姿勢が安定せず、不快感を与えてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、シートバックを前方に倒した場合に、前方に倒したシートバックがシートクッション上で上下に揺動することを抑制することが可能な乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
シートクッションとシートバックとを備える乗物用シートにおいて、
前記シートバックは、前方に倒して前記シートクッションに重ね合わせることが可能とされており、
前記シートバックが前記シートクッションに重ね合わされた状態から回動しないように前記シートバックをロックして位置固定するロック機構を備え、
前方に倒れた前記シートバックが前記ロック機構によりロックされた状態では前記シートクッション又は前記シートバックが縮んだ状態になり、前方に倒れた前記シートバックの背面が略水平になるように構成されており、
前記シートクッションの内部の前側部分に上下方向に伸縮可能な一の伸縮部材が配置されており、
前記一の伸縮部材は、前方に倒れた前記シートバックが前記ロック機構によりロックされた状態では縮んだ状態になり、前記シートバックが前記ロック機構によりロックされていない状態ではストッパに引っ掛かり阻害されるまで伸びた状態になり、
前記シートバックが後方に倒される動作に合わせて前記ストッパが後方に移動することに伴い、前記ストッパによる阻害がなくなることで前記一の伸縮部材が伸長して、前記シートクッションの前側部分が上方に盛り上がるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の乗物用シートにおいて、
前記ロック機構は、係合部と被係合部とを備え、
前記シートバックが前方に倒れて前記シートクッションに重ね合わされた状態で前記係合部が前記被係合部と係合することで、前記シートバックがロックされて位置固定されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の乗物用シートにおいて、
前記シートバックの背面側にレバーが設けられており、
前記レバーが、前記シートバック内に挿通されたワイヤを介して前記係合部と接続されており、
前記レバーが操作されると、前記ワイヤを介して前記係合部と前記被係合部との係合が解除されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、前記シートクッションがフロアに対して移動せず、前記シートバックのみを前方に倒して前記シートクッションに重ね合わせることができるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前方に倒れた状態での前記シートバックの内部の前側部分に上下方向に伸縮可能な他の伸縮部材が配置されており、
前記他の伸縮部材は、
前方に倒れた前記シートバックが前記ロック機構によりロックされた状態では縮んだ状態になり、
前記シートバックが前記ロック機構によりロックされていない状態では伸びた状態になることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、前記一の伸縮部材は、その収縮率を調整できるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記一の伸縮部材の両端部分に板状部材がそれぞれ配置されており、両方又は少なくとも一方の前記板状部材が左右に分割されており、
分割された前記板状部材に、それぞれ前記一の伸縮部材が配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記一の伸縮部材は、エアセルを用いて構成されており、
前記エアセル内にエアバッグが配置されていることを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記一の伸縮部材は、エアセルを用いて構成されており、
前記エアセル内にインフレータが配置されていることを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の発明は、
シートクッションフレームと、前記シートクッションフレーム上に設けられたクッションパッドと、前記シートクッションフレームと前記クッションパッドを被覆してシート表面を構成する表皮とで構成されたシートクッションと、
シートバックフレームと、前記シートバックフレーム上に設けられたクッションパッドと、前記シートバックフレームと前記クッションパッドを被覆してシート表面を構成する表皮とで構成されたシートバックと、
を備える乗物用シートにおいて、
前記シートバックは、前方に倒して前記シートクッションに重ね合わせることが可能とされており、
前記シートバックが前記シートクッションに重ね合わされた状態から回動しないように前記シートバックをロックして位置固定するロック機構を備え、
前方に倒れた前記シートバックが前記ロック機構によりロックされた状態では前記シートクッション又は前記シートバックが縮んだ状態になり、前方に倒れた前記シートバックの背面が略水平になるように構成されており、
前記シートクッションの内部の前側部分に上下方向に伸縮可能な伸縮部材が配置されており、
前記伸縮部材は、前方に倒れた前記シートバックが前記ロック機構によりロックされた状態では縮んだ状態になり、前記シートバックが前記ロック機構によりロックされていない状態ではストッパに引っ掛かり阻害されるまで伸びた状態になり、
前記シートバックが後方に倒される動作に合わせて前記ストッパが後方に移動することに伴い、前記ストッパによる阻害がなくなることで前記伸縮部材が伸長して、前記シートクッションの前側部分が上方に盛り上がるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1、10に記載の発明によれば、シートバックを前方に倒してシートクッションに重ね合わせると、ロック機構が働いてシートバックがシートクッションに重ね合わされた状態から回動しないようにシートバックがロックされて位置固定されるため、シートバックを前方に倒した場合に、前方に倒したシートバックがシートクッション上で上下に揺動することを抑制することが可能となる。
そのため、例えばセダンのシートのようにシートクッションやシートバックが軟らかく可撓性に富むように形成されているような場合であっても、ロック機構により、前方に倒したシートバックがシートクッション上で上下に揺動することが的確に抑制される。
また、前方に倒されてロックされたシートバックの背面(上面)が略水平になるため、例えば、その上に載せた荷物が傾かなくなり安定した状態で荷物を載せることが可能となる。
また、この発明によれば、シートクッションの内部の前側部分に上下方向に伸縮可能な伸縮部材(一の伸縮部材)が、シートバックが前方に倒されてロックされた状態では縮んだ状態になるため、シートクッションの前側部分が上方に盛り上がっていても、前方に倒されたシートバックをロックする際、シートバックの背面(上面)を略水平にすることが可能となる。
そして、シートバックが後方に倒されてリクライニング動作した際に、伸縮部材(一の伸縮部材)が伸長してシートクッションの前側部分が上方に盛り上がるため、乗員の体がシートバックに対して相対的に下がってしまうことが抑制され、乗員がリラックスした姿勢を取ることが可能となる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、シートバックが前方に倒れてシートクッションに重ね合わされた状態でロック機構の係合部が被係合部と係合するため、シートバックを確実にロックして位置固定することが可能となる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、シートバックの背面側に設けられたレバーを操作するとロック機構の係合部と被係合部との係合が解除されるため、前方に倒されたシートバックのロックを乗員等が容易に解除することが可能となる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、乗物用シートが、前述した特許文献1に記載されているようにダイブダウン型である場合は勿論、シートバックを前方に倒すだけのフォールダウン型であってもその有益な作用効果を発揮させることが可能となる。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、シートバック内部の前側部分に上下方向に伸縮可能な他の伸縮部材が、シートバックが前方に倒されてロックされた状態では縮んだ状態になるため、シートクッションの前側部分が上方に盛り上がっていても、シートバック側が、シートクッションの前側部分の盛り上がり部分に対応するように変形するため、前方に倒されたシートバックをロックする際、シートバックの背面(上面)を略水平にすることが可能となる。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、乗員の好みにあわせて一の伸縮部材の収縮率を変えることが可能となり、乗物用シートが乗員にとって座り心地がよいものになる。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、分割された板状部材が各一の伸縮部材によりそれぞれ独立に動くため、乗員の身体に個体差がある場合であっても、乗員の好みにあわせた座り心地にすることが可能となる。
【0028】
請求項8に記載の発明によれば、一の伸縮部材を構成するエアセルのエアバッグを配置することで、シートクッションの内部の前側部分に、エアセルを含む一の伸縮部材とエアバッグとをともに配置することが可能となり、一の伸縮部材とエアバッグとをそれぞれ適切に作動させることが可能となる。
【0029】
請求項9に記載の発明によれば、一の伸縮部材を構成するエアセルをエアバッグとして使うことが可能となり、シートクッションの内部の前側部分に配置されたエアセルを、一の伸縮部材やエアバッグとしてそれぞれ適切に作動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態に係る乗物用シートの構成を示す側面図である。
【
図3】(A)シートバックがロック機構によりロックされた状態を示す側面図であり、(B)(A)におけるロック機構を含む部分の拡大図である。
【
図4】(A)伸縮部材としてのバネが内蔵されたシートクッションにシートバックを重ね合わせた状態を側方から見た部分断面図であり、(B)シートバックがロックされた状態を側方から見た部分断面図である。
【
図5】シートバックの背面側に設けられたレバーなどの例を示す図である。
【
図6】(A)シートクッションに伸縮部材としてのバネが内蔵されたシートバックを重ね合わせた状態を側方から見た部分断面図であり、(B)シートバックがロックされた状態を側方から見た部分断面図である。
【
図7】
図6(A)のシートクッションを上方から見た図であり、(A)バネが単数設けられた場合、(B)バネが複数設けられた場合を示す図である。
【
図8】分割された板状部材等を上方から見た図であり、(A)板状部材を2分割した状態、(B)3分割した状態を示す図である。
【
図9】(A)乗物用シートに設けられたストッパの例を側方から見た部分断面図であり、(B)上方から見た図である。
【
図10】
図9(A)の乗物用シートのシートバックを後方に倒してリクライニング動作させた際の状態を側方から見た部分断面図である。
【
図11】(A)伸縮部材としてのエアセルが内蔵されたシートクッションにシートバックを重ね合わせた状態を側方から見た部分断面図であり、(B)シートバックがロックされた状態を側方から見た部分断面図である。
【
図12】
図11(A)のシートクッションを上方から見た図であり、(A)エアセルが単数設けられた場合、(B)エアセルが複数設けられた場合を示す図である。
【
図13】複数のエアセルが管等で連結された状態を上方から見た図である。
【
図14】シートクッション内の伸縮部材としてのエアセルとシートバック内に配置したエアセルとが管等で連結された状態を側方から見た部分断面図である。
【
図15】
図14に示した構成の変形例を表す部分断面図である。
【
図16】(A)伸縮部材としてのエアセルとバネが内蔵されたシートクッションにシートバックを重ね合わせた状態を側方から見た部分断面図であり、(B)シートバックがロックされた状態を側方から見た部分断面図である。
【
図17】
図16(A)のシートクッションを上方から見た図であり、(A)バネが単数設けられた場合、(B)バネが複数設けられた場合を示す図である。
【
図18】(A)エアセルの内部にエアバッグを配置した状態を側方から見た部分断面図であり、(B)(A)のシートクッションを上方から見た図である。
【
図19】(A)エアセルの内部にインフレータを配置した状態を側方から見た部分断面図であり、(B)(A)のシートクッションを上方から見た図である。
【
図20】(A)セダンのシートの例を示す側面図であり、(B)シートバックをフォールダウンさせた状態を表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
なお、以下では、乗物用シートが車両用のシートである場合について説明するが、乗物用シートは例えば航空機用のシートや船舶用のシート等であってもよく、本発明は、乗物用シートが車両用のシートである場合に限定されない。
また、以下では、シートがフロントシートである場合について説明するが、シートはリアシート等であってもよい。
【0032】
図1は、本実施形態に係る乗物用シートの構成を示す側面図である。なお、
図1以下の各図ではヘッドレスト等の図示が省略されている。また、
図1中のFはフロアを表す。
図1に示すように、乗物用シート10(以下、シート10という。)は、乗員の臀部や大腿部を支持するシートクッション11と、シートクッション11の後方で起立して乗員の背もたれとなるシートバック15と、シートバック15の上部に設けられて乗員の頭部を支持する図示しないヘッドレストと、を備えている。
なお、この他、ネックレストやアームレスト、フットレスト、オットマン等の補助支持部を備えていてもよい。
【0033】
シートクッション11は、骨格となるシートクッションフレーム12と、シートクッションフレーム12上に設けられたクッションパッド13と、シートクッションフレーム12とクッションパッド13を被覆してシートの表面を構成する表皮14で主に構成されている。
また、シートバック15も、骨格となるシートバックフレーム16と、シートバックフレーム16上に設けられたクッションパッド17と、シートバックフレーム16とクッションパッド17を被覆してシートの表面を構成する表皮18で主に構成されている。なお、シートバックフレーム16の上部には、図示しないヘッドレストのヘッドレストピラーを保持するヘッドレストピラー保持部19が設けられている。
【0034】
シートクッションフレーム12の後端部とシートバックフレーム16の下端部との間には、シートクッションフレーム12に対するシートバックフレーム16の角度を変更させるためのリクライニング機構20が設けられており、シートクッションフレーム12とシートバックフレーム16とはリクライニング機構20を介して互いに連結されている。
また、リクライニング機構20は図示しない巻きバネが内蔵されており、シートバックフレーム16(シートバック15)は、リクライニング機構20を中心に図中時計回りに回る方向に付勢されている。
そして、シートバック15は、リクライニング機構20を中心として回動可能とされており、前方に倒してシートクッション11に重ね合わせることができるようになっている(後述する
図3(A)参照)。
【0035】
本実施形態では、シート10には、シートバック15が前方に倒されてシートクッション11に重ね合わされた状態になった場合に、その状態から回動しないように(すなわちその状態で上下に揺動しないように)シートバック15をロックして位置固定するためのロック機構30が設けられている。
なお、以下では、ロック機構30がシートクッションフレーム12やシートバックフレーム16の内側に設けられている場合について説明するが、ロック機構30はそれらの外側に設けられていてもよい。また、ロック機構30をリクライニング機構20の部分に設けるように構成する(すなわちリクライニング機構20がロック機構の機能を兼ねるように構成する)ことも可能である。
【0036】
本実施形態では、ロック機構30は、係合部と被係合部とを備え、シートバック15が前方に倒れてシートクッション11に重ね合わされた状態で係合部が被係合部と係合することで、シートバック15がロックされて、その状態から回動しないように位置固定されるようになっている。
【0037】
以下、
図2に基づいてロック機構30の具体的な構成例について説明する。
なお、以下では、係合部(後述する凸状部材33)がシートクッションフレーム12に固定され、被係合部(後述する円板31の切り欠き32)がシートバックフレーム16に設けられている場合について説明するが、係合部がシートバックフレーム16に設けられ、被係合部がシートクッションフレーム12に設けられていてもよい。
【0038】
図2の構成例では、シートクッションフレーム12とシートバックフレーム16とを連結する連結回動軸21あるいはシートバックフレーム16に円板31が取り付けられており、シートクッションフレーム12に対してシートバックフレーム16が回動すると、それに合わせて円板31が回動する。
そして、円板31の周縁部の一部に切り欠き32が設けられており、この切り欠き32がロック機構30の被係合部とされる(以下、被係合部32という。)。
【0039】
また、シートクッションフレーム12には、上向きの凸状部材33を収容するケース34が取り付けられている。凸状部材33は、ケース34に内蔵された図示しないバネにより上向きに付勢されており、円板31の切り欠き32(被係合部32)以外の側面部分では、凸状部材33の上端部がバネの付勢力により円板31の側面部分に押し付けられている。
この構成例では、この凸状部材33が係合部に相当する(以下、係合部33という。)。
【0040】
この状態で、シートクッションフレーム12に対してシートバックフレーム16が回動すると、係合部33(凸状部材33)は、それに合わせて回動する円板31の側面部分に押し付けられた状態で側面部分と摺動する。
なお、図示を省略するが、係合部33(凸状部材33)の上端部分に回転部材を取り付けるなどして係合部33の上端部が回転するように構成し、上記のように円板31の側面部分と係合部33とが摺動するように構成する代わりに、円板31の回動に合わせて係合部33の上端部が回転するように構成することも可能である。
【0041】
そして、
図3(A)、(B)に示すように、乗員等によりシートクッション11(シートクッションフレーム12)に対してシートバック15(シートバックフレーム16)が前方に倒れる位置まで回動されると、被係合部32(円板31の切り欠き32)が係合部33(凸状部材33)の真上の位置に移動してくる。
すると、係合部33(凸状部材33)がケース34内のバネの付勢力により上方に移動して被係合部32(円板31の切り欠き32)に嵌り込む。
【0042】
このロック機構30の構成例では、このようにして、シートバック15が前方に倒れてシートクッション11に重ね合わされた状態で係合部33(凸状部材33)が被係合部32(円板31の切り欠き32)と係合するようになっている。
逆に言えば、シートクッション11に対してシートバック15が前方に倒れる位置まで回動された際に係合部33が被係合部32と係合するような位置に被係合部32すなわち円板31の切り欠き32が設けられる。
【0043】
そして、このように係合部33が被係合部32に係合することで、シートバックフレーム16がシートクッションフレーム12に対して回動できない状態になる。
そのため、このロック機構30の構成例により、シートバック15がシートクッション11に重ね合わされた状態(
図3(A)参照)から回動しないようにシートバック15がロックされて位置固定されるようになっている。
【0044】
なお、ロック機構30は、上記の構成例に限定されず、シートバック15を前方に倒してシートクッション11に重ね合わせた際に、シートバック15がその状態から回動して起立しないようにシートバック15をロックして位置固定することができる機構であれば、どのような機構も採用することが可能である。
【0045】
一方、
図3(A)等に示したように、シートバック15を前方に倒してロック機構30でロックした状態で、シートバック15の背面15aが水平でないと(やや傾斜していると)、シートバック15の背面15a上に載せた荷物が傾くなどするため、前方に倒したシートバック15の背面15aが略水平になる方が好ましい場合がある。
【0046】
そのため、本実施形態では、シート10は、シートバック15が前方に倒れてロック機構30によりロックされた状態で、その背面15aが略水平になるように構成されている。
このように、前方に倒れてロックされたシートバック15の背面15aが略水平になれば、シートバック15の背面15a上に載せた荷物が傾かなくなる等の利点がある。
【0047】
シートバック15を前方に倒した状態でシートバック15の背面15aが傾斜する原因の1つは、
図3(A)等に示したように、シートクッション11の前側部分が上側に盛り上がっていることが挙げられる。
そこで、本実施形態では、
図4(A)に示すように、シートクッション11内部の前側部分に、上下方向に伸縮可能な伸縮部材40が配置されている。
【0048】
この場合、伸縮部材40をバネ40Aで構成することができる。
そして、例えば
図4(A)に示すように、シートクッション11内部の前側部分に空洞を設け、空洞の上側(天井部分)と下側(底部分)にそれぞれ板状部材41A、41Bを配置する。そして、上下の板状部材41A、41Bの間に伸縮部材40を介在させるように配置する。
【0049】
そして、
図4(A)に示すように、シートバック15がロック機構30によりロックされていない状態では伸縮部材40が伸びた状態になり、シートクッション11の前側部分が上側に盛り上がった状態が維持される。
しかし、
図4(B)に示すように、前方に倒れされたシートバック15がロック機構30によりロックされた状態では伸縮部材40が縮んだ状態になる。
【0050】
そのため、このように構成することで、
図1等に示したようにシートクッション11の前側部分が上側に盛り上がっている場合でも、シートバック15が前方に倒れてロック機構30によりロックされた状態では伸縮部材40が縮んでシートクッション11の前側部分の盛り上がりが抑制される。
そのため、
図4(B)に示したように、シートバック15が前方に倒れてロック機構30によりロックされた状態でその背面15aが略水平になる状態を実現することが可能となる。
【0051】
以上のように、本実施形態に係るシート10(乗物用シート10)によれば、シートバック15を前方に倒してシートクッション11に重ね合わせると、ロック機構30が働いてシートバック15がシートクッション11に重ね合わされた状態から回動しないようにシートバック15がロックされて位置固定される。
そのため、シートバック15を前方に倒した場合に、前方に倒したシートバック15がシートクッション11上で上下に揺動することを抑制することが可能となる。
【0052】
そのため、例えばセダンのシートのようにシートクッション11やシートバック15が軟らかく可撓性に富むように形成されているような場合であっても、ロック機構30により、前方に倒したシートバック15がシートクッション11上で上下に揺動することが的確に抑制される。
そのため、例えば、前方に倒したシートバック15の背面15a(
図3(A)参照)の上に荷物を載せても、荷物を載せにくくなったり載せた荷物が安定しない状態になったりすることを抑制することができる。また、例えば、シートバック15の背面15a上に人が寝るような場合でも、寝た姿勢が安定し、不快感を与えることを抑制することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態に係るシート10(乗物用シート10)では、前方に倒されてロックされたシートバック15の背面(上面)が略水平になるため、例えば、その上に載せた荷物が傾かなくなり安定した状態で荷物を載せることが可能となる。
【0054】
なお、本実施形態では、
図1に示したように、シート10がフロアFに取り付けられていてシートクッション11がフロアFに対して移動せず、シートバック15のみを前方に倒してシートクッション11に重ね合わせることができるように構成されている場合(すなわちシート10がフォールダウン型である場合)について説明したが、前述した特許文献1に記載されたダイブダウン型のシート10にも適用できる。
この点は、以下の変形例等においても同様である。
【0055】
そして、本発明は、シート10をフォールダウンさせた場合もダイブダウンさせた場合も、いずれの場合もその有益な作用効果を発揮して、シートバック15を前方に倒してフォールダウンやダイブダウンさせた場合に、前方に倒したシートバック15がシートクッション11上で上下に揺動することを適切に抑制することが可能となる。
【0056】
一方、シートバック15をシートクッション11の上面に重ね合わせた状態(
図3(A)、(B)等参照)からシートバック15を起立させる場合には、係合部33(凸状部材33)と被係合部32(円板31の切り欠き32)との係合を解除する必要がある。
そのため、本実施形態では係合を解除するために以下の機構を有している。
【0057】
すなわち、
図5に示すように、シートバック15の背面15a側にレバー23が設けられており、レバー23が、シートバック15内に挿通されたワイヤ24を介して係合部33(凸状部材33)と接続されている(
図2参照)。
本実施形態では、ワイヤ24は、インナーワイヤ24aがアウターワイヤ24b内に挿通されたコントロールワイヤで形成されており、乗員等が前方に倒れた状態のシートバック15の背面15aのレバー23を操作すると、アウターワイヤ24b内でインナーワイヤ24aが移動して係合部33(凸状部材33)が下方に移動する。
【0058】
そのため、本実施形態では、レバー23が操作されるとワイヤ24を介して係合部33と被係合部32との係合が解除されるようになっている。
係合部33と被係合部32との係合が解除されると、シートクッション11に対してシートバック15が揺動可能な状態になるため、乗員等が容易にシートバック15を起こして起立させることができる。なお、係合部33と被係合部32との係合が解除された時点で、リクライニング機構20の巻きバネや、ロック機構30に設けた図示しない巻きバネ等の力で、シートバック15が自動的に起立するように構成することも可能である。
【0059】
また、レバー23を操作して係合部33と被係合部32との係合を解除するように構成する代わりに、例えば、
図4(B)に示したようにロックされて背面15aが略水平の状態のシートバック15を、さらに下方に押し込むことでロックが解除される(係合部33と被係合部32との係合が解除される)ように構成することも可能である。
このように、ロックを解除する機構は、レバー23やワイヤ24を用いた場合に限定されない。
【0060】
[変形例]
次に、本発明に係るシート10(乗物用シート10)の変形例について説明する。
例えば、上記のように伸縮部材40をシートクッション11に設ける代わりに、前方に倒れた状態でのシートバック15の内部の前側部分に上下方向に伸縮可能な伸縮部材40が配置するように構成することも可能である。
この場合、例えば
図6(A)に示すように、前方に倒れた状態でのシートバック15内部の前側部分に空洞を設け、空洞の下側(底部分)と上側(天井部分)にそれぞれ板状部材42A、42Bを配置する。そして、上下の板状部材42A、42Bの間に伸縮部材40を介在させるように配置する。
【0061】
そして、
図6(A)に示すように、シートバック15がロック機構30によりロックされていない状態では伸縮部材40が伸びた状態になり、前方に倒れた状態でのシートクッション11の前側部分の形状が維持される。
しかし、
図6(B)に示すように、前方に倒れされたシートバック15がロック機構30によりロックされた状態では伸縮部材40が縮んだ状態になる。
【0062】
そのため、このように構成することで、
図1等に示したようにシートクッション11の前側部分が上側に盛り上がっている場合でも、シートバック15が前方に倒れてロック機構30によりロックされた状態では伸縮部材40が縮んで、シートクッション11の前側部分の盛り上がり部分に対応するように、倒れた状態でのシートバック15の前側部分が変形する。
そのため、
図6(B)に示したように、シートバック15が前方に倒れてロック機構30によりロックされた状態でその背面15aが略水平になる状態を実現することが可能となる。
【0063】
なお、
図4(A)、(B)や
図6(A)、(B)では、伸縮部材40であるバネ40Aを1本だけ配置した場合を示したが、バネ40Aを複数本配置するように構成することも可能である。
また、例えば複数本のバネ40Aのうち、伸縮部材40として機能するバネ40Aの本数を変えるなどして、伸縮部材40の収縮率(この場合はバネ40Aの弾性率)を調整することができるように構成することも可能である。このように伸縮部材40の収縮率を調整可能に構成すれば、乗員の好みにあわせて伸縮部材40の収縮率を変えることが可能となり、シート10を乗員にとって座り心地がよいものにすることが可能となる。
【0064】
ところで、
図6(A)、(B)に示したシートバック15の場合も同様であるが、例えば
図4(A)、(B)に示したシートクッション11を上方から見た場合、
図7(A)、(B)に示すように、板状部材41A、41Bは、シートクッション11内部の前側部分に左右に広がるように配置され、上下の板状部材41A、41Bの間に単数(
図7(A)参照)又は複数(
図7(B)参照)の伸縮部材40が配置されている。伸縮部材40は3個以上配置されていてもよい。
なお、
図7(A)、(B)以下のシートクッション11を上方から見た各図において符号12Aで示される部材は、シートクッションフレーム12に設けられたSバネを表す。また、
図7(A)、(B)等では伸縮部材40がSバネ12Aの上側(すなわち下にSバネ12Aがある所)に配置されている場合が示されているが、伸縮部材40は、Sバネ12Aの上側ではない所(すなわち下にSバネ12Aがない所)に配置されていてもよい。
【0065】
一方、
図8(A)に示すように、板状部材41A、41Bを左右に分割するように構成することも可能である。また、
図8(B)に示すように3分割にしたり、あるいはそれ以上の数に分割するように構成することも可能である。そして、分割された板状部材41A、41Bにはそれぞれ伸縮部材40が配置されており、分割された板状部材41A、41Bや各伸縮部材40がそれぞれ独立に(すなわち分割された他の板状部材41A、41B等とは独立に)動く。
このように構成すれば、乗員の身体に個体差がある場合であっても、分割された板状部材41A、41Bがそれぞれ独立に動くため、乗員の好みにあわせた座り心地にすることが可能となる。
【0066】
なお、上記の場合に、各伸縮部材40でそれぞれ収縮率(例えばバネ40Aの弾性率)をそれぞれ異なる収縮率に調整することも可能である。
また、板状部材41A、41Bを両方とも分割することも可能であるが、例えば、シート10に着座した乗員の身体から遠い方の板状部材41Bは分割せず、着座した乗員の身体に近い方の板状部材41Aだけを分割するように構成することも可能である。
さらに、
図6(A)、(B)に示したようにシートバック15側に板状部材42A、42Bを配置する場合も以上と同様に構成することができる。
【0067】
また、例えば、
図1に示したシート10に図示しない乗員が着座した状態でシートバック15を後方に倒してリクライニング動作させると、シートバック15が後方に倒れるに従って乗員の体がシートバック15に対して相対的に下がってしまい、乗員がリラックスした姿勢になれない場合がある。
そこで、例えば
図4(A)、(B)に示したシート10において、シートバック15が後方に倒れてリクライニング動作すると、伸縮部材40が伸長して、シートクッション11の前側部分が上方に盛り上がるように構成することが可能である。
【0068】
具体的には、例えば、
図4(A)に示したシート10(すなわちロック機構30によるロックが掛かっていない状態のシート10)において、伸縮部材40で上側の板状部材41Aを上方に付勢する状態にする。
そして、
図9(A)、(B)に示すように、シートバック15が後方に倒されていない状態では、上側の板状部材41Aがストッパ43に引っ掛かり、伸縮部材40に付勢されていても上側の板状部材41Aが上方に移動しないように、ストッパ43を配置する。ストッパ43の少なくとも上側は、板状部材41Aに上側から引っ掛かるように屈曲されている。
【0069】
なお、ストッパ43は、
図9(B)に示したように板状部材41A、41Bの左右のいずれか一方だけでなく両方に配置するように構成してもよい。
また、例えば、ストッパ43を前後に複数個配置してもよい。
【0070】
そして、シートバック15が後方に倒されてリクライニング動作すると、
図10に示すように、その動作にあわせてストッパ43が後方に移動する。そのため、上側の板状部材41Aの上方への移動が阻害されなくなるため、伸縮部材40が伸長して、上側の板状部材41Aが上方に移動する。
例えばこのように構成することで、シートバック15が後方に倒れてリクライニング動作すると、伸縮部材40が伸長して、上側の板状部材41Aが上方に移動するため、シートクッション11の前側部分が上方に盛り上がる。
【0071】
このように、シート10に図示しない乗員が着座した状態でシートバック15を後方に倒してリクライニング動作させると、シートクッション11の前側部分が上方に盛り上がる。
そのため、シートバック15が後方に倒れても乗員の体がシートバック15に対して相対的に下がってしまうことが抑制され、乗員はリラックスした姿勢を取ることが可能となる。
【0072】
ところで、以上では、伸縮部材40をバネ40Aで構成した場合について説明したが、伸縮部材40として、バネ40Aの代わりに、例えば
図11(A)、(B)に示すように、エアセル40Bを用いるように構成することも可能である。
エアセル40Bは、流体(ここでは空気であるが、液体でもよい。)が内部に封入されることにより膨張する袋体である。
【0073】
そして、エアセル40Bが膨張したり収縮したりすることで、伸縮部材40の伸長及び収縮を実現することができる。
なお、伸縮部材40としてエアセル40Bを用いる場合、
図12(A)に示すように、エアセル40Bをシートクッション11の右端付近から左端付近にわたって1個だけ配置するように構成することも可能であるが、
図12(B)に示すように、複数個配置するように構成することも可能である。
【0074】
このように、伸縮部材40としてエアセル40Bを用いる場合も、前述した伸縮部材40としてバネ40Aを用いる場合(
図4(A)、(B)や
図6(A)~
図10参照)と全く同様に伸縮部材40として機能させることが可能であり、伸縮部材40としてバネ40Aを用いた場合と全く同様の有益な作用効果を発揮させることが可能となる。
【0075】
伸縮部材40としてエアセル40Bを用いる場合、エアセル40Bの膨張や収縮をエアコンプレッサ等により機械的に行うように構成することが可能である。
また、例えば、
図8(A)に示したように板状部材41A(及び板状部材41B)を左右に分割するように構成する場合には、
図13に示すように、分割された各部分に伸縮部材40としてのエアセル40Bをそれぞれ配置し、それらを管44A等で連結して互いの間で空気が流通することができるように構成すれば、例えばシートクッション11に着座した乗員が右や左に体重をかけることで一方のエアセル40Bから他方のエアセル40Bに空気が自然に流通するため、乗員の好みにあわせた座り心地にすることができる。
【0076】
また、例えば、
図14に示すように、シートクッション11の内部に伸縮部材40としてのエアセル40Bを配置するとともに、シートバック15の内部にもエアセル45を配置する。そして、エアセル40Bとエアセル45とをそれらを管44B等で連結して互いの間で空気が流通することができるように構成すれば、シートバック15を後方に倒してリクライニング動作させると、図示しない乗員の上半身の重量がシートバック15のエアセル45にかかる。
【0077】
そのため、管44B等を介してシートバック15のエアセル45からシートクッション11のエアセル40Bに空気が移動するため、エアセル40Bが膨らんで(すなわち伸縮部材40が伸長して)、シートクッション11の前側部分が上方に盛り上がる。そのため、シート10に図示しない乗員が着座した状態でシートバック15を後方に倒してリクライニング動作させると、シートクッション11の前側部分が上方に盛り上がる。
このように、エアセル40B内の空気をエアコンプレッサ等で機械的に出し入れしなくても(すなわちエアコンプレッサ等を設けなくても)、エアセル40B等の構造を工夫することで、エアセル40Bを膨張させたり収縮させたりすることができる。
【0078】
なお、
図14では、管44Bがシートクッション11やシートバック15の内部を通るように配置された場合を示したが、例えば
図15に示すように、管44Bの一部がシートクッション11やシートバック15の外側に出るように配置することも可能である。
【0079】
また、伸縮部材40としてバネ40Aとエアセル40Bを併用するように構成することも可能である。
図6(A)、(B)等に示した場合も同様であるが、例えば
図4(A)、(B)に示したようにシートクッション11内部の前側部分にバネ40Aを配置する際に、
図16(A)に示すように、バネ40Aをエアセル40B内に入れた状態で配置するように構成することが可能である。この場合、バネ40Aとエアセル40Bとで伸縮部材40が形成される。
【0080】
なお、伸縮部材40としてバネ40Aとエアセル40Bを併用する場合、シートクッション11を上方から見ると
図17(A)、(B)に示すような状態になる。
また、この場合、エアセル40Bには、エアコンプレッサ等は取り付けられておらず(エアコンプレッサ等は取り付けることも可能である。)、エアセル40Bの側面等に、エアセル40B内の空気を外に排出したり外気をエアセル40B内に取り込んだりするための図示しない通気口が設けられている。
【0081】
このように、伸縮部材40としてバネ40Aとエアセル40Bとを併用する場合も、前述した伸縮部材40としてバネ40Aを用いる場合(
図4(A)、(B)や
図6(A)~
図10参照)やエアセル40Bを用いる場合(
図11(A)~
図15参照)と全く同様に伸縮部材40として機能させることが可能であり、伸縮部材40としてバネ40Aを用いた場合と全く同様の有益な作用効果を発揮させることが可能となる。
【0082】
また、このように構成すると、シートバック15が前方に倒されてロック機構30によりロックされた状態(
図16(B)参照)では、バネ40Aが押し縮められるとともにエアセル40B内の空気が押し出されてエアセル40Bが収縮する。
また、シートバック15のロックが解除されると(
図16(A)参照)、バネ40Aが伸長して板状部材41Aやエアセル40Bの上側を押し上げる。そのため、エアセル40B内に外気が取り込まれるため、エアセル40Bを膨張させることが可能となる。
【0083】
このように、この場合も、エアセル40B内の空気をエアコンプレッサ等で機械的に出し入れしなくても(すなわちエアコンプレッサ等を設けなくても)、エアセル40Bを膨張させたり収縮させたりすることが可能となる。
【0084】
一方、例えば、車両が衝突した際に、シート10に着座した乗員の腰や臀部が前にずれるとシートベルトが乗員の首に引っ掛かるなどの問題が生じるため、シートクッション11の内部の前側部分にエアバッグが設けられる場合がある。
そこで、
図11(A)、(B)等に示したように伸縮部材40がエアセル40Bを用いて構成されている場合(
図16(A)、(B)等に示したように伸縮部材40としてエアセル40Bとバネ40Aとを併用する場合などを含む。)、例えば
図18(A)、(B)に示すように、エアセル40Bの内部にエアバッグ46を配置するように構成することが可能である。
【0085】
その際、例えば、エアセル40Bの上側部分の左右方向の中心部分に脆弱な部分を設けておき、エアバッグ46が膨らむとエアセル40Bがその脆弱な部分から破れて、エアバッグ46がシートクッション11の上面を突き破って上方に突出するように構成される。
このように構成すれば、シートクッション11の内部の前側部分に、エアセル40Bを含む伸縮部材40とエアバッグ46とをともに配置することが可能となり、伸縮部材40とエアバッグ46とをそれぞれ適切に作動させることが可能となる。
【0086】
また、上記のようにエアセル40Bの内部にエアバッグ46を配置する代わりに、例えば
図19(A)、(B)に示すように、エアセル40Bの内部にインフレータ47を配置するように構成することが可能である。
この場合、例えば
図19(B)に示すように、インフレータ47をエアセル40B内部の中央部分に配置し、エアセル40Bの上側部分の中央部分を強い圧力を受けた際に膨らむように構成すれば、インフレータ47が爆発するとエアセル40Bの上側部分の中央部分が上方に膨らんでシートクッション11の上面を突き破って上方に突出する。
そのため、このように構成すれば、エアセル40Bをエアバッグとして使うことが可能となり、シートクッション11の内部の前側部分に配置されたエアセル40Bを、伸縮部材40やエアバッグとしてそれぞれ適切に作動させることが可能となる。
【0087】
なお、本発明は上記の実施形態や変形例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0088】
10 シート(乗物用シート)
11 シートクッション
12 シートクッションフレーム
13 クッションパッド
14 表皮
15 シートバック
15a 背面
16 シートバックフレーム
17 クッションパッド
18 表皮
23 レバー
24 ワイヤ
30 ロック機構
32 切り欠き(被係合部)
33 凸状部材(係合部)
40 伸縮部材
40B エアセル
41A、41B、42A、42B 板状部材
46 エアバッグ
47 インフレータ
F フロア